JP2020185654A - 超砥粒メタルボンド砥石 - Google Patents
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Abstract
【課題】低強度のメタルボンドで超砥粒を結合させた超砥粒メタルボンド砥石を提供する。【解決手段】カップ砥石10のセグメント砥石(超砥粒メタルボンド砥石)14のメタルボンド20は、錫、または錫を主成分とする金属のいずれかの低融点金属Bと、低融点金属Bよりも高い融点を有する銅、鉄、ニッケル、コバルト、銀、タングステン、又はそれらを主成分とする金属のいずれかの高融点金属Aとを、主成分とするものであり、低融点金属Bは、0.1〜100μmの平均粒径を有し、低融点金属Bの粒子22内には高融点金属Aが拡散されている固相焼結体が得られる。これにより、従来の超砥粒メタルボンド砥石よりも低強度のメタルボンド20で超砥粒を結合させたセグメント砥石(超砥粒メタルボンド砥石)14が得られる。【選択図】図4
Description
本発明は、メタルボンドを用いて超砥粒を結合した超砥粒メタルボンド砥石に関するものである。
一般に、メタルボンド砥石のメタルボンドには、主成分として銅、鉄、コバルト、ニッケル等の金属が用いられており、それら金属の粉末を混合したメタルボンドにダイヤモンドやCBN砥粒のような超砥粒を固着させてメタルボンド砥石が作製されている。通常のメタルボンド砥石では、混合した金属を充分に相互に拡散させて、高強度、高硬度のメタルボンドとしている。このため、メタルボンド砥石のメタルボンドは組織が密になっており、ビトリファイド砥石やレジノイド砥石などの他の砥石と比較して、研削加工において耐摩耗性に優れるが、切れ味が低いという特徴がある。この切れ味の改善のために、フィラー材や気孔をメタルボンド内に形成したメタルボンド砥石が、提案されている。たとえば、特許文献1および特許文献2に記載されたメタルボンド砥石がそれである。
特許文献1および特許文献2に記載されたメタルボンド砥石は、砥石の切れ味の向上や切粉の排出性向上を目的として、フィラー材や気孔をメタルボンドに添加したものである。これらのメタルボンド砥石では、切れ味は向上するが、メタルボンドの強度が低下して欠けが発生し易くなるという問題があった。また、砥粒のまわりにフィラー材や気孔が形成されてしまうと、砥粒とメタルボンドとの接触面積が小さくなることにより、砥粒の保持力が低下するという問題があった。さらに、フィラー材や気孔がメタルボンドと比較して軟質であるため、選択的に摩耗が進行する。これにより、メタルボンドの表面に大きな気孔が発生してしまい、そこでの切粉の滞留により、メタルボンドの摩耗が促進されてしまう。気孔内からも切粉によるメタルボンドの摩耗が発生することで、メタルボンド砥石自体の寿命が低下することも課題である。
上記メタルボンド砥石で研削加工する場合、加工の進行に伴う砥粒の磨滅や目詰まりの発生によって切れ味の低下が発生するので、その砥石の切れ味を回復させるために砥石を用いてドレス作業を行なうことがある。この場合、ドレス作業において、ビトリファイド砥石やレジノイド砥石などの他の砥石と比較して、メタルボンド砥石は固いため、ドレスが難しいといった問題もある。
これに対して、特許文献3では、相対的に高い融点を有する金属粒子内に、液相化された相対的に低い融点を有する金属が拡散することで焼結する液相焼結であって、錫の溶融層中に存在するコバルト粒子に対する錫の拡散深さをコバルトの平均半径の60%以下としたメタルボンドを用いることによって、メタルボンドの弾性を高め、強度を低下させることで、平滑に摩耗した砥粒を適度に脱落させて目替わりを促進させ、安定した連続加工を可能とするメタルボンド砥石が提案されている。
しかしながら、特許文献3に記載のメタルボンド砥石のメタルボンドは、高融点のコバルトが主成分であることから、焼結させるために比較的高い温度でホットプレスを行なうことを必要とし、最も低強度となる焼結条件としたとしてもメタルボンドの強度が充分に低下させることができない。これにより、引用文献3のメタルボンド砥石は高強度となる傾向があって、砥粒の目替わりが充分に得られず、連続加工が必ずしも可能となる訳ではなかった。
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、さらに低強度のメタルボンドで超砥粒を結合させた超砥粒メタルボンド砥石を提供することにある。
本発明者等は、上記事情を背景として種々検討を重ねた結果、メタルボンドを構成する焼結金属の材料として、一般的に強度が低すぎてメタルボンドに不向きな錫を主とする低融点金属の粒子と、錫よりも融点は高いが錫に対して比較的反応性(拡散性)の高い銅、鉄、ニッケル、コバルト、銀、タングステンのいずれかの高融点金属の粒子とを用いて、高融点金属の融点よりは低い焼成温度を用いて焼成を進行させると、前記低融点金属の粒子状態が維持されつつ、前記低融点金属の粒子内に前記高融点金属が拡散されることで焼成が行なわれ、従来のメタルボンド砥石よりも低強度のメタルボンド砥石が得られることを見いだした。また、上記焼成(拡散)温度を変化させると、低融点金属の粒子内での前記高融点金属の拡散深さが変化してメタルボンドの焼き固め具合すなわちメタルボンドの強度を調整でき、適度に低強度のメタルボンド砥石が得られることを見いだした。本発明は、このような知見に基づいて為されたものである。
すなわち、第1発明の要旨とするところは、(a)超砥粒と、前記超砥粒を結合するメタルボンドとを有する超砥粒メタルボンド砥石であって、(b)前記メタルボンドは、錫、または錫を主成分とする金属のいずれかの低融点金属と、前記低融点金属よりも高い融点を有する銅、鉄、ニッケル、コバルト、銀、タングステン、又はそれらを主成分とする金属のいずれかの高融点金属とを、主成分とするものであり、(c)前記低融点金属は、0.1〜100μmの平均粒径を有し、(d)前記低融点金属の粒子内には前記高融点金属が拡散されていることにある。
第2発明の要旨とするところは、前記低融点金属の粒子に対する前記高融点金属の拡散深さは、前記低融点金属の粒子の平均半径の10%〜90%であることにある。
第3発明の要旨とするところは、前記メタルボンドに対する前記高融点金属の割合は、40重量%〜90重量%であることにある。
第4発明の要旨とするところは、前記高融点金属の粒子形状は、楔形状または球形状であり、前記低融点金属の粒子形状は、球形状であることにある。
第1発明の超砥粒メタルボンド砥石では、メタルボンドは、錫、または錫を主成分とする金属のいずれかの低融点金属と、前記低融点金属よりも高い融点を有する銅、鉄、ニッケル、コバルト、銀、タングステン、又はそれらを主成分とする金属のいずれかの高融点金属とを、主成分とする金属のいずれかの低融点金属とを、主成分とするものであり、前記低融点金属は、0.1〜100μmの平均粒径を有し、前記低融点金属の粒子内には前記高融点金属が拡散されている固相焼結体が得られる。これにより、従来のメタルボンド砥石よりも低強度のメタルボンドで超砥粒を結合させた超砥粒メタルボンド砥石が得られる。このようにメタルボンドが低強度側とされると、メタルボンド中の軟質金属すなわち低融点金属の粒子が選択的に摩耗し、凹形状となってチップポケットを形成することで、研削加工時の切粉の排出性が向上させられる。また、メタルボンドの表面に凹凸が形成されることにより超砥粒の突出し量が多くなって切れ味が向上する利点もある。さらに、焼成(拡散)温度を変化させると、低融点金属の粒子内での高融点金属の拡散深さが変化してメタルボンドの焼き固め具合すなわちメタルボンドの強度を調整でき、適度に低強度の超砥粒メタルボンド砥石が得られる。
また、第1発明の超砥粒メタルボンド砥石では、前記低融点金属は、0.1〜100μmの平均粒径を有するので、好適な拡散状態が得られ、低強度のメタルボンドで超砥粒を結合させた超砥粒メタルボンド砥石が得られる。低融点金属の平均粒径が0.1μmを下まわると、前記低融点金属の粒子に対する前記高融点金属の拡散反応が温度に対して敏感に促進されて、拡散状態の調節が困難となる。反対に、低融点金属の平均粒径が100μmを上まわると、低融点金属の粒子の中心側まで拡散が進行し難くなり、拡散状態の調節が困難となる。
第2発明の超砥粒メタルボンド砥石では、前記低融点金属の粒子に対する前記高融点金属の拡散深さは、前記低融点金属の粒子の平均半径の10%〜90%である。前記低融点金属の粒子に対する前記高融点金属の拡散深さが浅くなるにつれて前記メタルボンドを低強度とすることができるので、拡散深さを変化させることで、前記超砥粒メタルボンド砥石の砥粒の目替わりを充分とし且つ連続加工を可能とするように研削性能を調整することができる。
ここで、前記低融点金属の粒子に対する前記高融点金属の拡散深さが、前記低融点金属の粒子の平均半径の10%を下まわると、メタルボンドの強度が低くなり過ぎるため、メタルボンドの本来の特徴である高砥粒保持力が維持されることができず、研削加工中に砥粒が不要に脱落し、砥石寿命が短くなる。反対に、前記低融点金属の粒子に対する前記高融点金属の拡散深さが、前記低融点金属の粒子の平均半径の90%を超えると、メタルボンドの強度が高く且つ硬くなり過ぎて、従来のメタルボンド砥石と同様に、連続加工が困難となる。
第3発明の超砥粒メタルボンド砥石によれば、前記メタルボンドに対する前記高融点金属の割合は、40重量%〜90重量%であるので、メタルボンドの弾性率が安定して得られる。前記メタルボンドに対する前記高融点金属の割合が40重量%を下まわると、低融点金属の割合が支配的となって弾性が低くなり(塑性が高くなり)、研削加工時において砥粒がメタルボンド内に埋まり、研削性能が低下する。反対に、前記メタルボンドに対する前記高融点金属の割合が90重量%を上まわると、高融点金属の割合が支配的となり、充分な拡散を進行させる低融点金属が不足するため、拡散の進行度の調節が困難となる。
第4発明の超砥粒メタルボンド砥石によれば、前記高融点金属の粒子形状は、楔形状または球形状であり、前記低融点金属の粒子形状は、球形状であることにある。高融点金属が楔形状で低融点金属が球形状であると、高融点金属は低融点金属を包むようにして充填され易く、相互の接触面積が増加して拡散が容易となるので、拡散の進行度の調節が容易となる。高融点金属および低融点金属が共に球形状である場合には、最密充填になるために相互の接触面積が増加して拡散が容易となるので、拡散の進行度の調節が容易となる。
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例のカップ砥石10を示す斜視図である。カップ砥石10は、金属製たとえばアルミニウム製の円盤状の台金12と、台金12の下面の外周縁に沿って円環状に連ねて固着された複数個のセグメント砥石14とを備えている。セグメント砥石14は、台金12の下面の外周部において円環状に連なる研削面16をそれぞれ備えている。
台金12は、金属製厚肉円板状を成し、図示しない研削装置の主軸に取り付けられることにより、カップ砥石10が回転駆動される。カップ砥石10は、250mm程度の外径を有し、セグメント砥石14は3mm程度の厚みを有している。セグメント砥石14は、台金12の回転に伴って研削面16を被削材に摺接させ、その被削材を平面状に研削或いは平面研削する。
セグメント砥石14は、図2のSEM(走査型電子顕微鏡)写真に示すように、本発明の超砥粒メタルボンド砥石に対応し、CBN砥粒、ダイヤモンド砥粒などの超砥粒18と、超砥粒18を結合するメタルボンド20とを含む。メタルボンド20は、錫、又は錫を主成分とする低融点金属Bの粒子22と、銅、鉄、ニッケル、コバルト、銀、タングステン又はそれらを主成分とする金属など、錫に対して反応性(拡散性)が高く且つ錫よりも融点が高い高融点金属Aの粒子24とが、固相焼結させられたものである。メタルボンド20の低融点金属の粒子22内には、高融点金属Aが拡散した拡散層22aが形成されている。本実施例では、高融点金属Aの中では相対的に融点が低い銅が高融点金属Aとして用いられている。図3は、メタルボンド20の固相焼結を説明する模式図である。
セグメント砥石14のメタルボンド20において、錫を主成分とする低融点金属Bの粒子22は、0.1μm以上且つ100μm以下の平均粒径を有している。また、錫を主成分とする低融点金属Bの粒子22内に高融点金属Aが拡散した拡散層22aの拡散深さddは、錫を主成分とする低融点金属の粒子22の平均半径の10%以上且つ90%以下である。また、セグメント砥石14において、メタルボンド20に対する高融点金属Aの割合は、40重量%以上且つ90重量%以下である。
ここで、低融点金属Bの粒子22内に高融点金属Aが拡散した拡散層22aの拡散深さdd(%)は、以下のように測定される。先ず、たとえば図2に示される走査型電子顕微鏡により観察した実観察像から、低融点金属Bの粒子22内に拡散した高融点金属Aの拡散幅d(μm)を所定数(たとえば5個)の低融点金属Bの粒子22について複数個所(たとえば3個所)で測定して平均値を求める。次いで、低融点金属Bの粒子22の平均粒径Da(μm)は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所、LA−960型)を用いて測定した。そして、平均粒径Daに対する低融点金属Bの粒子22内に拡散した高融点金属Aの拡散幅dの割合を、拡散深さdd(=(d/Da)×100)として算出する。
図4は、本発明の超砥粒メタルボンド砥石に対応するセグメント砥石14の製造工程を説明する図である。図4において、混合工程P1では、たとえば超砥粒18と、焼成によりメタルボンド(金属結合剤)20を構成するための焼結金属粉体材料すなわち錫を主成分とする低融点金属Bの粒子22および銅、又は銅を主成分とする高融点金属Aの粒子24と、必要に応じて添加される焼結助剤等とが、所定割合で調合された後、均一に混合される。
成形工程P2では、混合工程P1で混合された材料を所定の成形金型内に充填し、プレスによりセグメント砥石14と同様の所定厚みの円弧状に成形する。続く焼成工程P3では、焼結金属粉体材料を焼結するためにたとえば100から800℃の範囲内の予め設定された焼成温度で熱処理が施され、メタルボンド砥石であるセグメント砥石14が製造される。接着工程P4では、複数個のセグメント砥石14が図1に示すように台金12に接着される。そして、仕上げ工程P5において、台金12に接着されたセグメント砥石14の仕上げがドレッサを用いて行なわれる。
図5は、セグメント砥石14の構造的および機械的特徴を説明する模式図であり、図6はセグメント砥石14の特徴的な研削作用を説明する模式図である。図5は、焼成工程P3における焼成温度が高いことに由来して、焼成の進行が速やかとなって拡散深さdd(%)が増加するとともにメタルボンド20の強度が高くなり、焼成工程P3における焼成温度が低いことに由来して、焼成の進行が遅くなって拡散深さdd(%)が減少するとともにメタルボンド20の強度が低下するという現象を、模式的に示している。このことは、セグメント砥石14の製造時におけるメタルボンド20の固相焼結に際して、焼成温度を変化させることで、拡散深さdd(%)およびメタルボンド20の強度を制御(調節)することができることを示している。
図6の(a)、(b)、(c)は、セグメント砥石14の研削の進行に伴うセグメント砥石14の研削面の変化をそれぞれ示している。セグメント砥石14の研削時において、固相焼結されたメタルボンド20中の錫を主成分とする低融点金属Bの粒子22、特に高融点金属Aの拡散を受けていない中央の領域は、高融点金属Aの粒子24よりも軟質である錫を主成分とするために消耗し、その粒子22の消耗後にチップポケット30が局所的に形成される(図6の(a)および(b))。このチップポケット30が形成されると、切り屑がチップポケット30内に収容されて切り屑の排出性が高められると共に、超砥粒18の突出し量t1が、チップポケット30が無い場合の突出し量t2に比較して増加するので、セグメント砥石14の切れ味が向上する(図6の(c))。
次に、本発明者等が行なったセグメント砥石14の性能試験、すなわち砥石の抗折強度と拡散深さddの試験、高融点金属Aの割合と弾性率の試験、拡散深さddと研削性能の試験と、それらの結果を、以下に説明する。
(砥石の抗折強度と拡散深さddの試験)
図7に示された割合の材料を用いて、混合工程P1と同様に混合し、その混合材料を用いて長さ40mm×幅7mm×厚み4mmのテストピースを図4の成形工程P2で説明された方法にて複数個成形し、次いで、図4の焼成工程P3で説明された方法にて、異なる温度にて焼成し、低融点金属Bの粒子22内に高融点金属Aが拡散した拡散深さdd(%)が、0%、10%、30%、50%、90%、100%である、試料No.1、試料No.2、試料No.3、試料No.4、試料No.5、試料No.6をそれぞれ作製した。図8はそれらの試料No.1〜No.6の拡散深さddを示している。
図7に示された割合の材料を用いて、混合工程P1と同様に混合し、その混合材料を用いて長さ40mm×幅7mm×厚み4mmのテストピースを図4の成形工程P2で説明された方法にて複数個成形し、次いで、図4の焼成工程P3で説明された方法にて、異なる温度にて焼成し、低融点金属Bの粒子22内に高融点金属Aが拡散した拡散深さdd(%)が、0%、10%、30%、50%、90%、100%である、試料No.1、試料No.2、試料No.3、試料No.4、試料No.5、試料No.6をそれぞれ作製した。図8はそれらの試料No.1〜No.6の拡散深さddを示している。
次いで、上記試料No.1〜No.6のそれぞれについて、オートグラフ(精密万能試験機)にて3点曲げ試験(試料を支持する間隔L=30mmの抗折試験)を行なった。図9は、その試験結果を示している。図9において、縦軸は、試料No.4(拡散深さddが50%)の抗折強度の値を100としたときに相対値すなわち指数である。図9は、同じ材質のメタルボンドにおいて、低融点金属Bの粒子22内に高融点金属Aが拡散しない場合に比較して、低融点金属Bの粒子22内に高融点金属Aが拡散されると抗折強度が増加すること、および、拡散深さddが増加すると、抗折強度が高くなることを示している。すなわち、図9は、拡散深さddが10%以上且つ90%以下の範囲において、好適な強度が得られることを示している。拡散深さddが0%の場合は、充分な抗折強度が得られず、拡散深さ100%の場合は、抗折強度が高すぎる。
(高融点金属Aの割合と弾性率の試験)
図10に示された6種類の割合の材料を用いて、混合工程P1と同様に混合し、その混合材料を用いて長さ40mm×幅7mm×厚み4mmのテストピースを図4の成形工程P2で説明された方法にてそれぞれ複数個成形し、次いで、図4の焼成工程P3で説明された方法にて、所定の温度にて焼成して、低融点金属Bの粒子22内に高融点金属Aが拡散した拡散深さdd(%)がそれぞれ50%である、試料No.7、試料No.8、試料No.9、試料No.10、試料No.11、試料No.12をそれぞれ作製した。
図10に示された6種類の割合の材料を用いて、混合工程P1と同様に混合し、その混合材料を用いて長さ40mm×幅7mm×厚み4mmのテストピースを図4の成形工程P2で説明された方法にてそれぞれ複数個成形し、次いで、図4の焼成工程P3で説明された方法にて、所定の温度にて焼成して、低融点金属Bの粒子22内に高融点金属Aが拡散した拡散深さdd(%)がそれぞれ50%である、試料No.7、試料No.8、試料No.9、試料No.10、試料No.11、試料No.12をそれぞれ作製した。
次いで、上記試料No.7〜No.12のそれぞれについて、オートグラフ(精密万能試験機)を用いて3点曲げ試験(試料を支持する間隔L=30mmの抗折試験)を実施して弾性率を測定した。図11は、3点曲げ試験の結果を示している。図11において、縦軸は、試料No.9(銅が50重量%)の抗折強度の値を100としたときの相対値すなわち指数である。図11は、拡散深さddが同じメタルボンドにおいて、銅(高融点金属A)の割合が100重量%であると、弾性率が極端に低くなること、および、銅(高融点金属A)の割合が90重量%以下では、高い弾性率を安定して示すことを示している。すなわち、図11は、高融点金属である銅が30重量%且つ90重量%以下、若しくは、40重量%以上且つ90重量%以下の範囲において、好適な弾性率が得られることを示している。
(拡散深さddと研削性能の試験)
図8と同様に、図7に示された割合の材料を用いて、混合工程P1と同様に混合し、その混合材料を用いて外径18mm×厚み6mmのテストピースを図4の成形工程P2で説明された方法にて複数個成形し、次いで、図4の焼成工程P3で説明された焼成炉により、異なる温度にて焼成し、低融点金属Bの粒子22内に高融点金属Aが拡散した拡散深さdd(%)が、0%、10%、30%、50%、90%、100%である、試料No.13、試料No.14、試料No.15、試料No.16、試料No.17、試料No.18をそれぞれ作製した。図13はそれらの試料No.13〜No.18を示している。
図8と同様に、図7に示された割合の材料を用いて、混合工程P1と同様に混合し、その混合材料を用いて外径18mm×厚み6mmのテストピースを図4の成形工程P2で説明された方法にて複数個成形し、次いで、図4の焼成工程P3で説明された焼成炉により、異なる温度にて焼成し、低融点金属Bの粒子22内に高融点金属Aが拡散した拡散深さdd(%)が、0%、10%、30%、50%、90%、100%である、試料No.13、試料No.14、試料No.15、試料No.16、試料No.17、試料No.18をそれぞれ作製した。図13はそれらの試料No.13〜No.18を示している。
次いで、上記試料No.13〜No.18をカップホイールの台金(外径160mm×内径80mm×厚み26mm)に貼り着けて、図12に示す研削試験条件を用いて研削試験を行い、研削性能を評価した。図14は、各試料No.13〜No.18についての摩耗量を示している。図14の縦軸は、試料No.16(拡散深さddが50%)の摩耗量を100としたときの相対値すなわち指数である。図14は、同じ材質のメタルボンドにおいて、低融点金属Bの粒子22内に高融点金属Aが拡散しない試料No.13(拡散深さddが0%)の場合は、最も摩耗量が大きいこと、拡散深さddが増加するに伴ってメタルボンド砥石の摩耗量が減少すること、および拡散深さddが少ないほどドレス(目立ておよび整形)が容易となることを示している。すなわち、図14は、拡散深さddが10%以上且つ90%以下の範囲において、好適な研削性能が得られることを示している。
上述のように、本実施例のカップ砥石10のセグメント砥石(超砥粒メタルボンド砥石)14のメタルボンド20は、錫、または錫を主成分とする金属のいずれかの低融点金属Bと、低融点金属Bよりも高い融点を有する銅、鉄、ニッケル、コバルト、銀、タングステン、又はそれらを主成分とする金属のいずれかの高融点金属Aとを、主成分とするものであり、低融点金属Bは、0.1〜100μmの平均粒径を有し、低融点金属Bの粒子22内には高融点金属Aが拡散されている固相焼結体が得られる。これにより、従来のメタルボンド砥石よりも低強度のメタルボンド20で超砥粒を結合させたセグメント砥石(超砥粒メタルボンド砥石)14が得られる。このようにメタルボンド20が低強度側とされると、メタルボンド20中の軟質金属すなわち低融点金属の粒子Bが選択的に摩耗し、凹形状となってチップポケット30を形成することで、研削加工時の切粉の排出性が向上させられる。また、メタルボンド20の表面に凹凸が形成されることにより超砥粒18の突出し量が多くなって切れ味が向上する利点もある。さらに、焼成(拡散)温度を変化させると、低融点金属Bの粒子22内での高融点金属Aの拡散深さddが変化してメタルボンド20の焼き固め具合すなわちメタルボンド20の強度を調整でき、適度に低強度のセグメント砥石(超砥粒メタルボンド砥石)14が得られる
また、本実施例のセグメント砥石(超砥粒メタルボンド砥石)14のメタルボンド20では、低融点金属Bの粒子22は、0.1〜100μmの平均粒径を有することから、好適な拡散深さddが得られるので、低強度のメタルボンド20で超砥粒を結合させた超砥粒メタルボンド砥石が得られる。低融点金属Bの粒子22の平均粒径が0.1μmを下まわると、低融点金属Bの粒子22に対する高融点金属Aの拡散反応が温度に対して敏感に促進されて、拡散状態の調節が困難となる。反対に、低融点金属Bの粒子22の平均粒径が100μmを上まわると、低融点金属Bの粒子22の中心側まで拡散が進行し難くなり、拡散状態の調節が困難となる。
また、本実施例のセグメント砥石(超砥粒メタルボンド砥石)14のメタルボンド20では、低融点金属Bの粒子22に対する高融点金属Aの拡散深さddは、低融点金属Bの粒子22の平均半径の10%〜90%である。低融点金属Bの粒子22に対する高融点金属Aの拡散深さddが浅くなるにつれてメタルボンド20を低強度とすることができるので、拡散深さddを変化させることで、セグメント砥石(超砥粒メタルボンド砥石)14の超砥粒18の目替わりを充分とし且つ連続加工を可能とするように研削性能を調整することができる。
ここで、低融点金属Bの粒子22に対する高融点金属Aの拡散深さddが、低融点金属Bの粒子22の平均半径の10%を下まわると、メタルボンド20の強度が低くなり過ぎるため、メタルボンド20の本来の特徴である高砥粒保持力が維持されることができず、研削加工中に超砥粒18が不要に脱落し、砥石寿命が短くなる。反対に、低融点金属Bの粒子22に対する高融点金属Aの拡散深さddが、低融点金属Bの粒子22の平均半径の90%を超えると、メタルボンド20の強度が高く且つ硬くなり過ぎて、従来のメタルボンド砥石と同様に、連続切削が困難となる。
また、本実施例のセグメント砥石(超砥粒メタルボンド砥石)14では、メタルボンド20に対する高融点金属Aの割合は、40重量%〜90重量%であるので、メタルボンド20の弾性率が安定して得られる。メタルボンド20に対する高融点金属Aの割合が40重量%を下まわると、低融点金属Bの割合が支配的となって弾性が低くなり(塑性が高くなり)、研削加工時において超砥粒18がメタルボンド内に埋まり、研削性能が低下する。反対に、メタルボンド20に対する高融点金属Aの割合が90重量%を上まわると、高融点金属Aの割合が支配的となり、充分な拡散を進行させる低融点金属Bが不足するため、拡散の進行度の調節が困難となる。
本実施例のセグメント砥石(超砥粒メタルボンド砥石)14では、高融点金属Aの粒子形状は、楔形状または球形状であり、低融点金属の粒子形状は、球形状である。これにより、高融点金属Aが楔形状で低融点金属Bが球形状であると、高融点金属Aは低融点金属Bを包むようにして充填され易く、相互の接触面積が増加して拡散が容易となるので、拡散の進行度の調節が容易となる。高融点金属Aおよび低融点金属Bが共に球形状である場合には、最密充填になるために相互の接触面積が増加して拡散が容易となるので、拡散の進行度の調節が容易となる。
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、別の態様でも実施され得る。
たとえば、前述の実施例では、台金12に固定された円弧状のセグメント砥石14がメタルボンド砥石であったが、円盤状に形成されたメタルボンド砥石等の他の形状の砥石であってもよい。
また、セグメント砥石14において、砥石のうちの研削に関与する一部たとえば研削面16側の一部に形成された砥石層が、メタルボンド砥石であってもよい。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10:カップ砥石
12:台金
14:セグメント砥石(超砥粒メタルボンド砥石)
16:研削面
18:超砥粒
20:メタルボンド
22:低融点金属の粒子
24:高融点金属の粒子
22a:拡散層
30:チップポケット
A:高融点金属
B:低融点金属
12:台金
14:セグメント砥石(超砥粒メタルボンド砥石)
16:研削面
18:超砥粒
20:メタルボンド
22:低融点金属の粒子
24:高融点金属の粒子
22a:拡散層
30:チップポケット
A:高融点金属
B:低融点金属
Claims (4)
- 超砥粒と、前記超砥粒を結合するメタルボンドとを有する超砥粒メタルボンド砥石であって、
前記メタルボンドは、錫、または錫を主成分とする金属のいずれかの低融点金属と、前記低融点金属よりも高い融点を有する銅、鉄、ニッケル、コバルト、銀、タングステン、またはそれらを主成分とする金属のいずれかの高融点金属とを、主成分とするものであり、
前記低融点金属は、0.1〜100μmの平均粒径を有し、
前記低融点金属の粒子内には前記高融点金属が拡散されている
ことを特徴とする超砥粒メタルボンド砥石。 - 前記低融点金属の粒子に対する前記高融点金属の拡散深さは、前記低融点金属の粒子の平均半径の10%〜90%である
ことを特徴とする請求項1の超砥粒メタルボンド砥石。 - 前記メタルボンドに対する前記高融点金属の割合は、40重量%〜90重量%である
ことを特徴とする請求項1または請求項2の超砥粒メタルボンド砥石。 - 前記高融点金属の粒子形状は、楔形状または球形状であり、
前記低融点金属の粒子形状は、球形状である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1の超砥粒メタルボンド砥石。
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JP2019093233A JP2020185654A (ja) | 2019-05-16 | 2019-05-16 | 超砥粒メタルボンド砥石 |
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