JPH10144309A - アルカリ二次電池の電極の製造方法 - Google Patents

アルカリ二次電池の電極の製造方法

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JPH10144309A
JPH10144309A JP8293487A JP29348796A JPH10144309A JP H10144309 A JPH10144309 A JP H10144309A JP 8293487 A JP8293487 A JP 8293487A JP 29348796 A JP29348796 A JP 29348796A JP H10144309 A JPH10144309 A JP H10144309A
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千浩 堀元
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浩一 武田
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浩 中原
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瀬山  幸隆
Hiroshi Kawamura
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 予め一酸化コバルトのみを分散させておくこ
とにより、この一酸化コバルトの凝集体をもとの微細な
粒子に分離して活物質の利用率を高めることができるア
ルカリ二次電池の電極の製造方法を提供する。 【解決手段】 一酸化コバルトの粉体を水と混合しボー
ルミルを用いて分散させることにより一酸化コバルトペ
ーストを生成する工程(S1)と、この一酸化コバルト
ペーストに、増粘剤としてのCMC水溶液と水酸化ニッ
ケルを主体とする活物質とPTFEのディスパージョン
を添加することにより活物質ペーストを生成する工程
(S2〜S4)と、この活物質ペーストを電極の基体に
担持させる工程(S5)とを備える。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水酸化ニッケルを
主体とする活物質を用いたアルカリ二次電池の電極の製
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】アルカリ二次電池(アルカリ電解液系の
二次電池)は、水酸化ニッケル[Na(OH)2 ]を主
体とする活物質を用いた電極を使用する。また、このよ
うな電極では、活物質の集電性を高めて利用率を向上さ
せるために、導電材として一酸化コバルト等のコバルト
化合物を添加する場合がある。
【0003】活物質に一酸化コバルトを添加する従来の
電極の製造方法は、まず活物質である水酸化ニッケル
(粒径数10μm)の粉体に一酸化コバルト等のコバル
ト化合物の粉体と水を混ぜて合わせて混練し、また、必
要に応じて導電助剤(金属ニッケル)や増粘剤(糊剤)
や結着剤(バインダ)を添加して活物質ペーストを生成
する。そして、この活物質ペーストを電極の基体である
薄板基板に塗布したり三次元多孔体基板に充填して乾燥
させることにより電極を完成する。薄板基板とは、たと
えばパンチングメタルやエキスパンドメタルや金属銅等
である。三次元多孔体基板とは、発泡状金属(例えば発
泡ニッケル)や不織布状金属(例えばニッケル繊維フェ
ルト)等のように微細な導電性の金属骨格や金属繊維が
三次元状のネットワークを形成した多孔質の基体であ
る。従って、これらの電極の基体に設けられた多数の微
小孔に活物質の粒子を入れ込むことにより、この活物質
からの集電を行うことができるようになる。ただし、活
物質のみを入れ込んだのでは、各活物質の間やこの活物
質と基体との間の導電性があまり良くないために、導電
材として一酸化コバルト等のコバルト化合物や金属ニッ
ケルを添加して集電を効率良く行えるようにする。
【0004】例えば、特公平5−26304号公報に
は、水酸化ニッケルの粉体に一酸化コバルトの粉体を1
0wt%(重量%)混合して粉砕し、増粘剤としてCM
C(カルボキシ・メチル・セルローズ)の水溶液を加え
て活物質ペーストを生成し、この活物質ペーストを三次
元多孔体基板に充填する電極の製造方法が記載されてい
る。
【0005】また、特公平5−65988号公報には、
まず平均粒径が20μm程度の水酸化ニッケルの粉体に
平均粒径が0.3〜1.0μm程度の一酸化コバルトの
粉体を4〜12wt%混合し、次に粉体の帯電現象によ
り一酸化コバルト粒子を水酸化ニッケル粒子の表面に付
着させ、さらに機械的衝撃によりこの一酸化コバルト粒
子を水酸化ニッケル粒子の表面層に埋め込み、これに増
粘剤としてCMCの1%水溶液を加えて活物質ペースト
を生成し、この活物質ペーストを三次元多孔体基板に充
填する電極の製造方法が記載されている。
【0006】ところで、一酸化コバルト自身は、ほとん
ど導電性がない。しかし、活物質に一酸化コバルトを添
加した電極にアルカリ電解液を注入すると、この一酸化
コバルト[CoO](2価)が電解液中に溶解しCo
(2価)のイオンとなって活物質の粒子間や電極の基体
との間に析出する。そして、最初の充電により、この水
酸化コバルト[Co(OH)2 ]が導電性のCoOOH
(3価)に変化して、活物質間や電極の基体との間に導
電性のネットワークを形成することができる。
【0007】上記従来の製造方法であっても、一酸化コ
バルトの粒径が十分小さければ(0.5〜2.0μm程
度)、図3に示すように、混練によって水酸化ニッケル
粒子1の表面全体に一酸化コバルト粒子2がほぼ均一に
分布して付着するので、アルカリ電解液を注入すること
により、これらの一酸化コバルト粒子2を溶解させて水
酸化ニッケル粒子1の周囲全体に水酸化コバルトとして
広く析出させることができる。従って、充電後には、導
電性のCoOOHが水酸化ニッケル粒子1,1間や電極
の基体との間の導電性のネットワークを確実に形成する
ことができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところが、一酸化コバ
ルトは、粒子が極めて凝集し易く、製造時に1μm前後
の粒径に形成したとしても、その後の保管や搬送等の際
に、各粒子が凝集し10μm前後の大きな粒子となるの
を避けることができない。従って、上記従来の製造方法
では、実際には図4に示すように、粒径が数10μmの
水酸化ニッケル粒子1の間に一酸化コバルトの10μm
前後の凝集体3がまばらに散在することになる。そし
て、この状態でアルカリ電解液を注入し充電を行って
も、水酸化コバルトが水酸化ニッケル粒子1の周囲全体
に析出せず、導電性のCoOOHが十分なネットワーク
を形成することができない。しかも、一酸化コバルトが
凝集体3の状態で電解液に十分に溶解できないために、
導電性に寄与しない無駄なものも多くなる。
【0009】このため、従来のアルカリ二次電池の電極
の製造方法では、一酸化コバルトが凝集体3の状態で活
物質である水酸化ニッケル粒子1と混練されるので、こ
の水酸化ニッケル粒子1,1間や電極の基体との間の導
電性を十分に高めることができず、活物質の利用率が低
下するという問題があった。しかも、この活物質の利用
率を無理に高めようとすると、必要以上に大量の一酸化
コバルトを添加せざるを得ず、この分だけ活物質の割合
が減少するので電池容量が低下するという問題が生じ
る。
【0010】例えば、特公平5−26304号公報に記
載された電極の製造方法では、水酸化ニッケルの粉体と
一酸化コバルトの粉体を混合して粉砕しているが、通常
の粉砕では一酸化コバルトの凝集体3をもとの細かい粒
子にまで分離させることはできないので、上記問題を回
避することはできない。しかも、この凝集体3を細かい
粒子にまで分離させるような粉砕を行ったとすると、活
物質である水酸化ニッケル粒子1まで破壊されるという
問題が生じる。
【0011】また、特公平5−65988号公報に記載
された電極の製造方法では、水酸化ニッケルの粉体に平
均粒径が0.3〜1.0μm程度の一酸化コバルトの粉
体を混合するとあるが、正確には平均粒径が0.3〜
1.0μm程度の一酸化コバルトを製造してから混合す
るのであり、一酸化コバルトの粉体を平均粒径が0.3
〜1.0μm程度のままで混合するのは極めて困難とな
る。即ち、実験室的には、製造した一酸化コバルトの粉
体を粒子が細かいままで直ちに混合することは可能では
あっても、現実の製造工程においては、一酸化コバルト
の製造後に保管や搬送等の工程を避けることはできず、
この間に一酸化コバルトが凝集を起こすために、実際に
はこれよりも粒径が大きい一酸化コバルトの凝集体3の
状態で混合することになる。
【0012】ここで、実験室的に一酸化コバルトの粉体
を凝集させることなく直ちに混合した場合に、一酸化コ
バルトの含有率と活物質の利用率との関係を調べると、
この含有率は2〜3wt%あれば利用率を90%以上に
することが可能となる。しかし、特公平5−26304
号公報の製造方法では一酸化コバルトの含有率を10w
t%とし、特公平5−65988号公報の製造方法でも
一酸化コバルトの含有率を4〜12wt%(10wt%
付近が最適)としている。また、この特公平5−659
88号公報では、活物質の利用率が90%を超えるには
一酸化コバルトの含有率を4wt%以上にする必要があ
るとする資料(公報の第6図)を開示している。即ち、
これらの製造方法では、一酸化コバルトの凝集を考慮し
ていないために、この一酸化コバルトを必要以上に多く
添加していることが分かる。従って、これら従来の製造
方法では、十分な活物質の利用率を得るために、大量の
一酸化コバルトを添加しなければならず、その分だけ活
物質の含有率が低下し電池容量が低下するという問題が
生じていた。
【0013】なお、上記問題は、導電材として一酸化コ
バルトを用いた場合に限らず、他のコバルト化合物を用
いた場合にも同様に発生する。
【0014】本発明は、かかる事情に鑑みてなされたも
のであり、予めコバルト化合物を水等と混合しボールミ
ル等を用いて分散させてから活物質と混合することによ
り、このコバルト化合物の凝集体を微細な粒子に分離し
て活物質の利用率を高めることができるアルカリ二次電
池の電極の製造方法を提供することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、上記課
題を解決するために、コバルト化合物を分散媒と混合
し分散させることによりコバルト化合物ペーストを生成
するコバルト化合物分散工程と、このコバルト化合物分
散工程によって生成されたコバルト化合物ペーストに水
酸化ニッケルを主体とする活物質、又は、この活物質と
添加剤を添加して混練することにより活物質ペーストを
生成する活物質ペースト生成工程と、この活物質ペース
ト生成工程によって生成された活物質ペーストを基体に
担持させることにより電極を形成する電極形成工程とを
備えたことを特徴とする。
【0016】の手段によれば、コバルト化合物分散工
程によりコバルト化合物を分散させるので、このコバル
ト化合物の凝集体をもとの粒径の小さい粒子に分離させ
たコバルト化合物ペーストを生成することができる。従
って、このコバルト化合物ペーストに活物質ペースト生
成工程で水酸化ニッケルを主体とする活物質を添加し混
練すると、活物質ペースト中の粒径の小さいコバルト化
合物を粒径の大きい活物質の表面全体に均一に付着させ
ることができ、これによって活物質の利用率を向上させ
ることができる。また、コバルト化合物の無駄もほとん
どなくなるので、活物質ペースト中に含まれる活物質の
割合を高め電池容量を向上させることができる。
【0017】なお、「担持」とは、活物質ペーストを電
極の基体に塗布したり充填等により保持させる行為をい
う。
【0018】また、前記のコバルト化合物分散工程
が、媒体型分散機又は連続式分散機であるボールミルを
用いてコバルト化合物を分散させるものであることを特
徴とする。
【0019】の手段によれば、媒体型分散機であるボ
ールミルによりコバルト化合物の分散を行うので、この
コバルト化合物の凝集体を確実にもとの粒径の小さい粒
子に分離することができる。なお、ここで言うボールミ
ルにはビーズミルも含まれる。
【0020】さらに、前記又はのコバルト化合物
が一酸化コバルトであることを特徴とする。
【0021】の手段によれば、最適な導電材を生成し
得る一酸化コバルトを用いることができる。
【0022】なお、他のコバルト化合物としては、水酸
化コバルトやサブオキサイト等を用いることが可能であ
る。
【0023】さらに、前記〜の分散液が水である
ことを特徴とする。
【0024】の手段によれば、分散液(分散媒)に水
を用いるので、電極形成工程で基体に担持させた活物質
ペーストを乾燥させる際に、この水を水蒸気として安全
に蒸発させることができ、この水蒸気の処理も容易とな
る。ただし、このように分散液に粘度の低い水を用いる
場合には、活物質ペースト生成工程でコバルト化合物ペ
ーストに添加剤として増粘剤を添加することが好まし
い。
【0025】さらに、前記〜の活物質ペースト生
成工程が、コバルト化合物ペーストに、まず添加剤とし
て増粘剤を添加して混練し、次に水酸化ニッケルを主体
とする活物質を添加して混練すると共に、添加剤として
結着剤を添加して混練することにより活物質ペーストを
生成する工程であることを特徴とする。
【0026】の手段によれば、まずコバルト化合物ペ
ーストに増粘剤を添加するので、分散液が水等の粘度の
少ないものである場合に、分散したコバルト化合物がペ
ースト中に沈降し分散液と分離するのを防止できる。ま
た、活物質と共に結着剤を添加するので、電極形成工程
で乾燥させた活物質ペーストが振動等により剥がれ易く
なるのを防止することができる。なお、の手段では、
活物質と結着剤の添加順序は問わない。また、上記の
手段では、活物質と添加剤の添加順序は問わず、これら
を同時に添加したり、活物質と添加剤の全部又は一部を
予め混練しておいてからまとめて添加するようにしても
よい。
【0027】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について
図面を参照して説明する。
【0028】図1〜図2は本発明の一実施形態を示すも
のであって、図1はアルカリ二次電池の電極の製造方法
を示す工程図、図2は一酸化コバルトの含有率に対する
活物質の利用率の変化を示す図である。
【0029】本実施形態のアルカリ二次電池の電極の製
造方法は、図1に示すように、まず最初の工程(コバル
ト化合物分散工程)において、一酸化コバルトの粉体を
水と混合し、ボールミルを用いて分散させることにより
一酸化コバルトペースト(コバルト化合物ペースト)を
生成する(S1)。
【0030】本実施形態では、導電材として一酸化コバ
ルト[CoO]を用いるが、水酸化コバルト[Co(O
H)2 ]やサブオキサイト等のコバルト化合物も同様に
用いることができる。一酸化コバルトの粉体は、1μm
前後の微細な粒子が凝集して平均粒径が8μm程度とな
ったものである。工業的に一般に入手可能な一酸化コバ
ルトの粉体は、このような凝集体となる。
【0031】水は、一酸化コバルトの粉体を分散させる
ための分散媒として用いる。従って、このS1の工程で
は、分散に必要最小限の量だけを用いる。ただし、この
水に代えて、有機溶媒等の他の分散液を用いることもで
きる。もっとも、水以外の分散液を用いる場合には、後
の工程でペーストを乾燥させる際に、この分散液を安全
に気化させるための防爆設備を設けたり、気化した分散
液を安全に処理し、又は、これを回収するための設備を
設ける必要が生じる。なお、一酸化コバルトは、この水
や有機溶媒等の分散液には溶解しない。
【0032】一酸化コバルトの粉体と水を混合してボー
ルミルで分散すると、平均粒径8μm程度の凝集体が平
均粒径0.5〜2μm程度の粒子に分離される。ボール
ミル(ビーズミルも含む)は、硬い球形等の多数の媒体
を粉体と共に攪拌してこの粉体を分散させる媒体型分散
機であり、サンドグラインダ等の連続式分散機等を用い
ることもできる。媒体としては、ジルコニアボールやジ
ルコニアビーズ、チタニアビーズ又はアルミナビーズ等
を用いることができる。また、この媒体は、球形に限ら
ず、楕円形やその他の形状とすることもできる。
【0033】次の工程(活物質ペースト生成工程の一
部)において、上記S1の工程で生成した一酸化コバル
トペーストに、少量のCMC(カルボキシ・メチル・セ
ルローズ)を水に溶いた水溶液を添加して混練する(S
2)。
【0034】CMCは、水溶性であるが、粉体のままで
添加すると、内部に粉の状態が残った固まりとなって溶
け難くなり易いために、予め水に溶いて水溶液として添
加する。また、一酸化コバルトペーストは水の含有量が
少ないので、後の工程で電極の基体に担持させるため
に、このCMC水溶液で希釈することにより一酸化コバ
ルトペーストを薄める役割も果たす。
【0035】上記CMCは、主として増粘剤(添加剤)
として添加する。即ち、一酸化コバルトは不溶性である
ため、水を混ぜてもペースト中に沈降し水と分離するお
それがある。そこで、少量のCMCを添加することによ
り、ペーストの粘度を高め一酸化コバルトを均一な状態
に保つようにする。ただし、次の工程で添加する活物質
のペースト中の割合をできるだけ多くするために、この
CMCの添加は必要最小限とする。また、このCMCに
代えて他の増粘剤を用いてもよく、一酸化コバルトが分
離するおそれがなければ、このような増粘剤を添加する
必要もない。例えば、上記分散液を水に代えてエチレン
グリコールやプロピレングリコールのような高粘度のア
ルコール類(有機溶媒)とする場合には、必ずしも増粘
剤の添加は必要なくなる。なお、このCMCは、後の工
程でペーストを乾燥させた際に、結着剤としての役割も
ある程度果たすことができる。
【0036】さらに、次の工程(活物質ペースト生成工
程の主部)において、上記S2の工程でCMC水溶液を
添加したペーストに、活物質として水酸化ニッケルの粉
体を添加して混練し活物質ペーストを生成する(S
3)。
【0037】水酸化ニッケルの粉体は、平均粒径が数十
μm程度のものを用いる。活物質は、この水酸化ニッケ
ルを主体とするものであればよく、コバルトや亜鉛、カ
ドミウム、マグネシウムの水酸化物等を少量加えたもの
であってもよい。また、添加する活物質の量は、この活
物質に対する一酸化コバルトの含有率が2〜3wt%と
なるように定める。
【0038】さらに、次の工程(活物質ペースト生成工
程の一部)において、上記S3の工程で生成した活物質
ペーストに、PTFEのディスパージョンを添加して混
練する(S4)。
【0039】PTFE(ポリ・テトラ・フルオロ・エチ
レン)のディスパージョンは、PTFEの微細な粉体に
少量の水を添加した分散体である。このPTFEは、結
着剤(添加剤)として添加する。即ち、後の工程で活物
質ペーストを乾燥させた際に、活物質を電極の基体に結
着させ、容易には脱落しないようにするためのものであ
る。従って、このような結着剤も、活物質のペースト中
の割合をできるだけ多くするために、必要最小限の量の
み添加する。また、このPTFEに代えて、ポリエチレ
ンやフッ化エチレン、フッ化プロピレン共重合物等の他
のプラスチックを用いることもでき、活物質の脱落のお
それがないのであれば、このような結着剤を添加する必
要もなくなる。
【0040】そして、最後の工程(電極形成工程)にお
いて、上記S4の工程でPTFEのディスパージョンを
添加した活物質ペーストを基体に担持させて電極を完成
する(S5)。
【0041】電極の基体には、導電性の薄板基板三次元
多孔体基板が用いられる。活物質ペーストは、この薄板
基板に塗布したり三次元多孔体基板に充填し、水分を蒸
発させて乾燥することにより担持される。
【0042】上記構成により、平均粒径が8μm程度の
一酸化コバルトの凝集体は、S1の工程で分散されて平
均粒径が0.5〜2μm程度の小さい粒子に分離される
ので、S3の工程で平均粒径が数十μm程度の水酸化ニ
ッケルの粉体を添加して混練した際に、図3に示すよう
に、この一酸化コバルト粒子2が水酸化ニッケル粒子1
の表面全体にほぼ均一に分布して付着する。従って、こ
のようにして生成した活物質ペーストを電極の基体に担
持させてアルカリ電解液を注入すると、一酸化コバルト
粒子2が溶解して水酸化ニッケル粒子1の周囲全体に水
酸化コバルトとして広く析出し、充電後に変化した導電
性のCoOOHによって水酸化ニッケル粒子1,1間や
電極の基体との間に導電性のネットワークを確実に形成
することができる。そして、この導電性のネットワーク
が十分に形成されることにより、基体に担持させた活物
質の集電性を高め利用率を向上させることができる。
【0043】上記実施形態の製造方法と従来の製造方法
とにおいて、一酸化コバルトの含有率を変えて電極を製
造した場合の活物質の利用率の変化の一例を図2に示
す。従来の製造方法では、一酸化コバルトが凝集体とな
ってまばらに散在するので、活物質の利用率が全体に低
くなり、利用率を90%以上にするためには例えば4w
t%以上の一酸化コバルトを含有させる必要が生じる。
また、利用率をほぼ最大値に飽和させるためには、10
wt%程度以上添加する必要がある。
【0044】これに対して、本実施形態の製造方法で
は、2wt%以上の一酸化コバルトを含有させるだけ
で、利用率を90%以上に高めることができ、3wt%
以上の一酸化コバルトを含有させるだけで、利用率をほ
ぼ飽和させることができる。従って、本実施形態の製造
方法では、上記のように一酸化コバルトを2〜3wt%
含有させるのが適当である。即ち、一酸化コバルトの含
有率が2wt%未満では活物質の利用率が低くなりす
ぎ、3wt%を超える含有率では利用率が向上しないに
もかかわらず活物質の割合が低下し、無駄に電池容量を
減少させることになるからである。
【0045】なお、上記実施形態では、活物質ペースト
生成工程をS2〜S4の工程に分けたが、CMC水溶液
と活物質とPTFEのディスパージョンの全部又は一部
を同時に添加してこれらの工程を一体化してもよいし、
これらの工程の順序を入れ代えることもできる。また、
CMC水溶液と活物質とPTFEのディスパージョンの
全部又は一部を別に混練して、一酸化コバルトペースト
に添加することもできる。
【0046】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
のアルカリ二次電池の電極の製造方法によれば、活物質
を添加する前にコバルト化合物のみを分散させるので、
この活物質の粒子を破壊することなく、コバルト化合物
の凝集体のみをもきの粒径の小さい粒子に分離させるこ
とができる。そして、このコバルト化合物の分散を行っ
たコバルト化合物ペーストに活物質を添加すると、粒径
の小さいコバルト化合物を粒径の大きい活物質の表面全
体に均一に付着させることができるので、この活物質の
利用率を向上させることができる。また、このことによ
り、コバルト化合物の無駄が減少し必要以上に含有率を
高めなくても良くなるので、基体に担持させる活物質ペ
ースト中の活物質の割合を増加させて電池容量を増大さ
せることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すものであって、アル
カリ二次電池の電極の製造方法を示す工程図である。
【図2】本発明の一実施形態を示すものであって、一酸
化コバルトの含有率に対する活物質の利用率の変化を示
す図である。
【図3】一酸化コバルトの凝集体をもとの粒径の小さい
粒子に分散した場合の水酸化ニッケル粒子との混練状態
を示す図である。
【図4】一酸化コバルトが粒径の大きい凝集体となった
場合の水酸化ニッケル粒子との混練状態を示す図であ
る。
【符号の説明】
1 水酸化ニッケル粒子 2 一酸化コバルト粒子 3 凝集体
フロントページの続き (72)発明者 武田 浩一 京都市南区吉祥院西ノ庄猪之馬場町1番地 日本電池株式会社内 (72)発明者 七元 克哉 京都市南区吉祥院西ノ庄猪之馬場町1番地 日本電池株式会社内 (72)発明者 中原 浩 京都市南区吉祥院西ノ庄猪之馬場町1番地 日本電池株式会社内 (72)発明者 瀬山 幸隆 京都市南区吉祥院西ノ庄猪之馬場町1番地 日本電池株式会社内 (72)発明者 河村 浩 京都市南区吉祥院西ノ庄猪之馬場町1番地 日本電池株式会社内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 コバルト化合物を分散媒と混合し分散さ
    せることによりコバルト化合物ペーストを生成するコバ
    ルト化合物分散工程と、 このコバルト化合物分散工程によって生成されたコバル
    ト化合物ペーストに水酸化ニッケルを主体とする活物
    質、又は、この活物質と添加剤を添加して混練すること
    により活物質ペーストを生成する活物質ペースト生成工
    程と、 この活物質ペースト生成工程によって生成された活物質
    ペーストを基体に担持させることにより電極を形成する
    電極形成工程とを備えたことを特徴とするアルカリ二次
    電池の電極の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記コバルト化合物分散工程が、媒体型
    分散機又は連続式分散機であるボールミルを用いてコバ
    ルト化合物を分散させるものである請求項1に記載のア
    ルカリ二次電池の電極の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記コバルト化合物が一酸化コバルトで
    ある請求項1又は請求項2に記載のアルカリ二次電池の
    電極の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記分散液が水である請求項1乃至請求
    項3のいずれかに記載のアルカリ二次電池の電極の製造
    方法。
  5. 【請求項5】 前記活物質ペースト生成工程が、コバル
    ト化合物ペーストに、まず添加剤として増粘剤を添加し
    て混練し、次に水酸化ニッケルを主体とする活物質を添
    加して混練すると共に、添加剤として結着剤を添加して
    混練することにより活物質ペーストを生成する工程であ
    る請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のアルカリ二
    次電池の電極の製造方法。
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