JPH1012288A - 円筒形空気電池およびその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 電気特性にすぐれた円筒形空気電池とその製
造方法を提供する。 【解決手段】 酸素ガス還元能を有する触媒層と、金属
集電体と、撥水膜とから構成される中空の円筒形空気極
の内部にセパレータおよび負極合剤を配置し、更に空気
取り入れ孔を有する封口部材を用いて封口することによ
り形成される円筒形空気電池７０で、円筒形空気極の両
端を開口端とし、更に、開口端は円筒形空気極の内部に
セパレータ８および負極合剤９を配置した後、開口端の
円周に沿って開口端挟み込み構造を有する金属封止部材
により封口して円筒形空気電池を構成する。金属封止部
材は、中空の円筒形空気極の構成部材である金属集電体
１と圧接すると共に、導電性を有する外装缶１２とも圧
接し、更に、外装缶１２が正極端子板１６に接続され
て、正極の集電を行う構成とする。前記金属封止部材の
開口端挟み込み構造は、その断面形状がコの字状、或い
はＵ字状とする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は円筒形空気電池に関
し、更に詳しくは電池の内部構造を改良して耐漏液特
性、放電特性、短絡電流特性に優れた円筒形空気電池と
その製造方法の提供に関する。

【０００２】

【従来の技術】近年の携帯型電子機器の普及に伴い、円
筒形空気電池はアルカリ乾電池に替わって、高容量で、
且つ大電流負荷に対応できる電池として期待されてい
る。

【０００３】円筒形空気電池とは、負極合剤を中央部に
配置し、その外側にセパレータを介して空気極層を設け
た発電部位を外装缶内に挿入し、更に、この外装缶およ
びガスケット等の封口部材により発電部位を外装缶内に
封入して構成されているものである。尚、前記外装缶に
は空気極層に空気を供給するための空気孔を有してい
る。

【０００４】つぎに、従来の円筒形空気電池の構成例に
ついて、図４を参照して説明する。同図（ａ）は従来の
円筒形空気電池の一部を破断し、その内部を示した図で
あり、同図（ｂ）は同図（ａ）に示すＢ部の拡大図であ
る。

【０００５】円筒形空気電池８０の空気極は中空円筒形
状で、図４（ｂ）に示すように金属集電体１と、酸素還
元能を有する空気極触媒層２と、撥水膜３との３層から
構成されている。この空気極の正極端子板２１側の開口
端は、ガスケット２５の所定の位置に埋設され、また、
金属集電体１の内壁には不織布等からなる有底円筒形の
セパレータ８が、その底部を正極端子板２１側にして装
着されている。このセパレータ８の内部に粒状亜鉛、水
酸化カリウム水溶液、増粘材等からなるゲル状の負極合
剤９が配置されている。

【０００６】また、空気極の負極端子板２０側の開口端
は、ガスケット２４が所定の位置に配置され、更に、負
極端子板２０側の金属補強部材２２と正極端子板２１側
の金属補強部材２３、および、負極端子板２０と正極端
子板２１とを配置してから、空気孔１９を有する円筒状
の外装缶１２を被せ、ビード加工による溝部２７とカシ
メによる封口部２８を設けて電池内部の構成部材を封入
し、円筒形空気電池８０が構成されている。

【０００７】尚、負極の集電は負極合剤９中に挿入され
る釘状の負極集電体１４と負極端子板２０とを電気的に
接続して行われ、また、正極の集電は空気極の金属集電
体１と、正極端子板２１に固着している金属補強部材２
３とをリード線２６により接続して行われている。尚、
空気電池は使用時まで空気孔１９を塞いでおく必要があ
るが、図４にはこのためのシール部材の図示を省略して
いる。

【０００８】しかしながら上述した従来の構成での空気
極の固定は、その開口端を負極端子板２０側のガスケッ
ト２４への埋設と、外装缶１２のカシメ封口に伴うガス
ケット２４、およびガスケット２５での圧接によるだけ
であり、従って電池の放電が進行して負極合剤９の体積
が膨張するに伴い、電池の内圧が上昇して空気極の固定
部位からの電解液漏出が認められていた。特にこの漏出
は過放電の領域において発生し易いものであり、また、
電解液の漏出に伴い電池内部に存在する電解液が不足
し、電池の放電持続時間を低下させていた。

【０００９】更に、リード線２６を用いた正極の集電
は、そのリード線２６の接続作業が技術的に難しく、ま
た、接続部の接触抵抗のバラツキが大きいため、電流特
性が一定にならず、不良の発生が起こりやすいものであ
った。尚、放電の進行により電池の内圧が上昇する理由
は、負極の亜鉛粉が電池の放電反応に伴って酸化亜鉛に
変化し、負極中の固形成分の体積が膨張するためであ
る。

【００１０】

【発明が解決しようとする課題】従って本発明の課題
は、耐漏液特性、特に過放電での耐漏液特性に優れ、且
つ放電特性、短絡電流特性に優れた円筒形空気電池を提
供し、また、正極の集電における接触抵抗のバラツキを
低減する円筒形空気電池の製造方法を提供する。

【００１１】

【課題を解決するための手段】本発明は上記課題に鑑み
成されたものであり、酸素ガス還元能を有する触媒層
と、金属集電体と、撥水膜とから構成される中空の円筒
形空気極の内部にセパレータおよび負極合剤を配置し、
更に空気取り入れ孔を有する封口部材を用いて封口する
ことにより形成される円筒形空気電池において、前記円
筒形空気極の両端を開口端とし、更に、前記開口端は、
前記円筒形空気極の内部にセパレータおよび負極合剤を
配置した後、開口端の円周に沿って開口端挟み込み構造
を有する金属封止部材により封口した円筒形空気電池を
構成する。

【００１２】また、前記金属封止部材は、中空の円筒形
空気極の構成部材である金属集電体と圧接すると共に、
導電性を有する封口部材とも圧接し、更に、前記封口部
材が電極端子板に接続されて、正極の集電を行う構成と
する。

【００１３】また、前記金属封止部材の開口端挟み込み
構造は、その断面形状がコの字状、或いはＵ字状とす
る。

【００１４】更に、前記円筒形空気極の内部にセパレー
タおよび負極合剤を配置し、前記金属封止部材により前
記円筒形空気極の開口端を封口して発電ユニットを形成
し、その後、前記発電ユニットを電池外装構成部材に組
み込み円筒形空気電池を製造して上記課題を解決する。

【００１５】本発明によると、中空の円筒形空気極の開
口端が正極端子板側および負極端子板側の金属封止板に
よって強固に固定されると共に、正極の電気的接続をバ
ラツキが少なく、また低抵抗で行うことができる。従っ
て、電池放電の進行に伴って上昇する電池内圧の影響に
よる電解液の漏液を防止し、また、集電のための接触が
良好になり、電流特性が向上する。

【００１６】

【発明の実施の形態】本発明の実施例の形態例について
図１ないし図３を参照して説明する。図１は本発明の実
施例に用いる円筒形空気極を示し、同図（ａ）はその断
面図であり、同図（ｂ）は同図（ａ）に示すＡ部の拡大
図である。図２はこの実施例に用いるインナーセルを示
し、同図（ａ）はその断面図であり、同図（ｂ）は同図
（ａ）に示す正極端子板側および負極端子板側の封止部
の封止前の拡大図であり、同図（ｃ）はその封止後の拡
大図である。また、図３はこの実施例における円筒形空
気電池の構成を示す、一部を破断した図である。

【００１７】まず、円筒形空気極について図１を参照し
て説明する。酸素還元能を有する二酸化マンガンと活性
炭、更に固形分６０％のポリテトラフルオロエチレンの
分散液を各々の固形比で２０：５０：３０になるように
混合し、ペースト状の触媒層混合物を得た。この触媒層
混合物を、表面にニッケルメッキを施した中空の円筒形
ステンレスネットの金属集電体１に塗着し、これを乾燥
後プレスロール工程を経て、厚さが０．７ｍｍの円筒形
の空気極触媒層２を作製した。その後、空気極触媒層２
を撥水機能を有する厚さ０．１ｍｍの円筒状の多孔性Ｐ
ＴＦＥ膜からなる撥水膜３に挿入し、プレスロール工程
を用いて、撥水膜３と空気極触媒層２とを圧着し円筒形
空気極５０を作製した。

【００１８】つぎに、インナーセルについて図２を参照
して説明する。上述したように作製された円筒形空気極
５０の封止部６の開口端に、断面が「コの字状」の開口
端挟み込み部を有する金属封止板７を配置し、更に、こ
の金属封止板７の開口端挟み込み部を円筒形空気極５０
の開口端の円周に沿って、円筒形空気極５０を圧縮する
方向にカシメることにより、円筒形空気極５０に金属封
止板７を強固に装着する。このとき、円筒形空気極５０
の封止部６の開口端に現れている金属集電体１の円周部
は金属封止板７と直接接触する。

【００１９】つぎに、金属封止板７に固定された円筒形
空気極５０の内側に、天然パルプ材の不織布からなる有
底円筒状のセパレータ８を空気極触媒層２に当接するよ
うに挿入し、更に、このセパレータ８の内側に粒状亜
鉛、水酸化カリウム水溶液、増粘材等からなるゲル状の
負極合剤９を充填する。

【００２０】更に、負極合剤９を充填した円筒形空気極
５０の封止部４の開口端を、上述した封止部６と同様に
固定する。即ち、円筒形空気極５０の封止部４の開口端
に、断面が「コの字状」の開口端挟み込み部を有する金
属封止板５を配置し、更に、この金属封止板５の開口端
挟み込み部を円筒形空気極５０の開口端の円周に沿っ
て、円筒形空気極５０を圧縮する方向にカシメることに
より、円筒形空気極５０に金属封止板５を強固に装着す
る。

【００２１】尚、図２（ｂ）は封止部４または封止部６
の封止前の状態であって、円筒形空気極５０の円周部が
金属封止板５または金属封止板７の開口端挟み込み部に
挿入された状態を示し、図２（ｃ）はこの封止部４また
は封止部６がカシメられて円筒形空気極５０の円周部と
金属封止板５または金属封止板７が圧接した状態を示し
ている。これらの図より円筒形空気極５０と金属封止板
５または金属封止板７は強固に固着することが分かる。

【００２２】上述した工程により円筒形空気極５０の内
側にセパレータ８および負極合剤９を配置した発電ユニ
ットを作製し、これをインナーセル６０とした。

【００２３】尚、金属封止板５、および金属封止板７に
はニッケルメッキを表面に施したステンレス鋼板を用い
た。また、金属封止板５の中央には孔が設けられてい
て、この孔にナイロンの絶縁部材１０が圧入されてい
る。また、絶縁部材１０の中央には図３に示す負極集電
体１４を挿入するための貫通孔１１が設けられている。
この絶縁部材１０は金属封止板５と負極合剤９との接触
防止を目的とするものであり、これは負極合剤９中の粒
状亜鉛が金属封止板５と接触することにより局部電池を
構成し、負極活物質である亜鉛の放電容量が低下するこ
とを防止するためである。

【００２４】つぎに、円筒形空気電池の作製について図
３を参照して説明する。上述のように作製したインナー
セル６０を、側面に空気を取り入れるための空気孔１９
を有した外装缶１２内に金属封止板７を正極端子板１６
側にして挿入し、この外装缶１２の負極端子板１５側の
開口部にガスケット１３を、更に、負極集電体１４を溶
接した負極端子板１５を順次組み込み、その後、外装缶
１２の封口部１８をカシメて封口することにより、外径
が１４ｍｍ、高さが５０ｍｍの円筒形空気電池７０を作
製した。尚、外装缶１２は正極端子おも兼ねているもの
である。

【００２５】正極の集電はインナーセル６０の金属封止
板５と金属封止板７とが外装缶１２の内壁面に強く圧接
されることで確保している。即ち、円筒形空気極５０の
金属集電体１と正極端子板１６は金属封止板５と金属封
止板７、および外装缶１２を介して低接触抵抗で接続さ
れることになる。一方、負極の集電は釘状の負極集電体
１４がガスケット１３の中央部に形成された貫通孔１７
および絶縁部材１０の貫通孔１１に順次圧入されて負極
合剤９に達することで確保している。

【００２６】上述した方法により作製された円筒形空気
電池７０と、従来例で示した円筒形空気電池８０を比較
例として、つぎに示す特性の測定を行った。尚、それぞ
れの特性測定には各々の電池を１０個ずつ用いた。

【００２７】耐漏液特性については、１０Ω負荷で５０
０時間放電後の過放電状態における漏液発生の個数を調
べた。その結果、表１に示すように本発明による実施例
では漏液の発生は無く、一方、従来例では４個が確認さ
れた。

【００２８】

【表１】

【００２９】放電特性については、１０Ω負荷で０．９
Ｖの終止電圧になるまでの持続時間を測定した。その結
果、表２に示すように本発明による実施例は比較例より
も持続時間が長く、また、持続時間のバラツキも小さい
ことが確認された。

【００３０】

【表２】

【００３１】短絡電流特性については、１０ｍΩ負荷、
１００ｍ秒の放電における出力電流を測定した。その結
果、表３に示すように本発明による実施例は比較例より
も出力電流は大きく、また、出力電流のバラツキも小さ
いことが確認された。

【００３２】

【表３】

【００３３】これら測定の結果より、本発明による円筒
形空気電池は従来のものよりも、過放電後の漏液発生を
防止するとともに、放電特性、短絡電流特性について向
上していることが分かる。

【００３４】尚、金属封止板の空気極を挟み込む部位の
形状は「コの字状」に限ることなく、例えば「Ｕ字状」
等、空気極を挟み込み、カシメにより密封することがで
きる形状であれば良いことは当然である。また、金属封
止板と正極端子板との接続は直接接続することに限ら
ず、導電性を有する封口部品を介して行っても良い。

【００３５】

【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
円筒形空気極の内側にセパレータと負極合剤を配置し、
更に、断面が「コの字状」の空気極を挟み込む部位を有
する金属封止板を用いて、円筒形空気極の上下開口端の
円周部を強固にカシメて封止することができ、従って、
空気極開口端からの電解液の漏れを防止し、耐漏液特性
および放電特性に優れた円筒形空気電池を提供すること
ができる。

【００３６】また、インナーセルの円筒形空気極を固定
している正極端子板側の金属封止板が空気極の金属集電
体および正極端子を兼ねる外装缶と直接接触することに
より、接触抵抗を低減した、電流特性に優れた円筒形空
気電池を提供することができる。

【００３７】更に、セパレータおよび負極合剤を内包
し、金属封止板を装着したインナーセルを発電ユニット
とし、この発電ユニットを他の構成部品と共に順次組み
立てて円筒形空気電池を作製することにより、品質と製
造効率の向上を図ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明の実施例に用いる円筒形空気極を示
し、（ａ）はその断面図であり、（ｂ）は（ａ）に示す
Ａ部の拡大図である。

【図２】 本発明の実施例に用いるインナーセルを示
し、（ａ）はその断面図であり、（ｂ）は（ａ）に示す
正極端子板側および負極端子板側の封止部の封止前の拡
大図であり、（ｃ）はその封止後の拡大図である。

【図３】 本発明の実施例における円筒形空気電池の構
成を示す、一部を破断した図である。

【図４】 従来の円筒形空気電池の構成例を示し、
（ａ）は一部を破断し、その内部を示した図であり、
（ｂ）は（ａ）に示すＢ部の拡大図である。

【符号の説明】

１…金属集電体、２…空気極触媒層、３…撥水膜、４，
６…封止部、５，７…金属封止板、８…セパレータ、９
…負極合剤、１０…絶縁部材、１１，１７…貫通孔、１
２…外装缶、１３…ガスケット、１４…負極集電体、１
５，２０…負極端子板、１６，２１…正極端子板、１
８，２８…封口部、１９…空気孔、２２，２３…金属補
強部材、２４，２５…ガスケット、２６…リード線、２
７…溝部

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 酸素ガス還元能を有する触媒層と、金属
   集電体と、撥水膜とから構成される中空の円筒形空気極
   の内部にセパレータおよび負極合剤を配置し、更に空気
   取り入れ孔を有する封口部材を用いて封口することによ
   り形成される円筒形空気電池において、 前記円筒形空気極の両端を開口端とし、 更に、前記開口端は、前記円筒形空気極の内部にセパレ
   ータおよび負極合剤を配置した後、開口端の円周に沿っ
   て開口端挟み込み構造を有する金属封止部材により封口
   されることを特徴とする円筒形空気電池。
2. 【請求項２】 前記金属封止部材は、 中空の円筒形空気極の構成部材である金属集電体と圧接
   すると共に、導電性を有する封口部材とも圧接し、 更に、前記封口部材が電極端子板に接続されて、正極の
   集電を行う構成であることを特徴とする、請求項１に記
   載の円筒形空気電池。
3. 【請求項３】 前記金属封止部材の開口端挟み込み構造
   は、 その断面形状がコの字状であることを特徴とする、請求
   項１に記載の円筒形空気電池。
4. 【請求項４】 前記金属封止部材の開口端挟み込み構造
   は、 その断面形状がＵ字状であることを特徴とする、請求項
   １に記載の円筒形空気電池。
5. 【請求項５】 前記円筒形空気極の内部にセパレータお
   よび負極合剤を配置し、前記金属封止部材により前記円
   筒形空気極の開口端を封口して発電ユニットを形成し、 更に、前記発電ユニットを電池外装構成部材に組み込む
   ことを特徴とする、請求項１に記載した円筒形空気電池
   の製造方法。