JP3745424B2 - 電池の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、端子と、端子と同極性の電極とを帯状のタブで電気的に接続する構造を有する電池の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
携帯用電気機器等に用いられる電池として、マンガン電池や、アルカリマンガン電池のような炭素棒か、または集電棒により活物質と端子とを電気的に接続するもの、リチウム電池、アルカリ二次電池に代表される正極と負極との間にセパレータを介装して作製された電極群が金属ケース内に収納され、前記金属ケースの開口部に取付けられる正極端子を持つ封口板と前記金属ケース内に収納された正極とが帯状タブにより電気的に接続された構造を有するものが知られている。
【0003】
前述した端子と電極が帯状タブにより電気的に接続された構造を有する電池は、例えば次に示す方法により製造される。まず、帯状タブを有する正極と負極との間にセパレータを介装して電極群を作製する。予め開口部を拡口することにより段部が形成された有底円筒状容器内に前記電極群を収納するか、または有底円筒状容器内に前記電極群を収納した後、前記容器に外部よりビード入れ等を行って段部を形成する。このようにして電極群が収納された容器内に電解液を注入する。その後、合成樹脂から形成された底部に穴を有する有底円筒状の絶縁ガスケット内に正極端子を有する封口板を収納する。この封口板の下面に前記帯状タブの先端を接続した後、前記封口板が収納された絶縁ガスケットを前記容器内の段部に載置する。ひきつづき、前記容器の開口部を縮径し、前記開口部の上端を内方に屈曲することにより折曲部を形成し、前記容器に前記封口板を前記絶縁ガスケットの反発弾性力によってかしめ固定することにより前記電池を製造する。
【0004】
前記封口板の下面と前記帯状タブの先端とは、従来、1点がスポット溶接によって固定されている。しかしながら、溶接面積がばらつきやすいため、溶接面積が小さくなった場合には電池の放電特性が低下するという問題点がある。
【0005】
このようなことから、前記封口板の下面と前記帯状タブの先端とを2点でスポット溶接によって固定することが行われている。スポット溶接は、前記封口板の下面に前記帯状タブの先端を配置し、前記封口板の上面に支持電極を配置し、かつ前記帯状タブの先端に2本のスポット電極を配置して前記2本のスポット電極で前記帯状タブの先端を加圧しながら前記支持電極と前記スポット電極間に溶接電流を流すことによって行われる。
【0006】
ところで、前記帯状タブは、ニッケルのような金属の薄板であるため、取り扱う際にしわや、歪みが生じやすい。一方、前記封口板は前記絶縁ガスケット内に収納されているため、前記封口板の下面の周縁は前記絶縁ガスケットの厚さ分突出している。従って、凹凸を有する面に帯状タブを配置するため、その分余計にしわや歪みが生じやすくなる。
【0007】
前記2本のスポット電極は一体化されており、2本が一緒に同距離上下動する。このようなスポット電極をしわや歪みが生じた帯状タブの先端に配置すると、いずれか一方の電極と前記帯状タブとの接触が不十分になるため、溶接電流にばらつきが生じ、溶接強度がばらつくという問題点が生じる。その結果、このような方法で製造された電池において、前記帯状タブと前記封口板の接続点のうち溶接強度が大きいほうに電流が集中するため、前記正極の集電効率が低下し、電池の作動電圧が低下する。また、前記電池が外部短絡されて前記帯状タブに異常電流が流れると、この異常電流は溶接強度が大きい接続点に集中するため、この接続点が過度に加熱され、結果として前記電池の温度が異常に高くなる恐れがある。
【0008】
ところで、前記正極端子を有する封口板としては、帽子形の正極端子が溶接によって固定された封口板や、帽子形の正極端子がかしめ固定された封口板等が用いられている。前記帽子形の正極端子が溶接によって固定された封口板は、帽子形の正極端子がかしめ固定された封口板に比べて簡単に作製することができるため、広く用いられている。しかしながら、封口板に正極端子を溶接により固定すると、溶接条件によっては前記正極端子がやや傾いた状態で前記封口板に固定されることがある。このような封口板を電池に用いても電池特性に支障はないものの、前記封口板と前記帯状リードとを前述したスポット溶接によって2点で固定しようとすると、前記2本のスポット電極のうちの一方と前記帯状タブとの接触が不十分になるため、溶接強度がばらつき、前述したのと同様な問題が生じる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、溶接方法を改良することにより端子を有する封口板の端子部と帯状タブとを少なくとも二箇所で、かつ均等な溶接強度で固定した電池の製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る電池の製造方法は、帯状タブを有する一方極と他方極との間にセパレータを介装して作製された電極群及び電解液が他方極端子を兼ねる容器内に収納され、前記容器の開口部が一方極端子を有する封口板により封口されており、前記帯状タブの先端部と前記封口板の端子部とが二点以上で接続された構造を有する電池の製造方法において、
前記帯状タブの先端部と前記封口板の端子部との接続は、前記封口板を支持するための支持電極と、溶接箇所の凹凸に応じて移動距離を調節するための移動距離調節機構及び溶接箇所を加圧するための加圧機構を備える複数のポイント電極とを用い、前記封口板の前記端子部に前記帯状タブの先端部を配置し、前記封口板の前記端子部と反対側の面に前記支持電極を配置し、前記帯状タブの先端部に前記複数のポイント電極を前記移動距離調節機構によって前記先端部の凹凸に応じた距離移動させて当接させた後、前記加圧機構により前記複数のポイント電極に均等に圧力を加えながら前記支持電極と前記複数のポイント電極間に溶接電流を流すダイレクトスポット溶接を行う工程を具備する方法によって行うことを特徴とするものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る方法で製造された電池(例えば円筒形電池)を図1を参照して説明する。
負極端子を兼ねる有底円筒状の容器1内には、正極2とセパレータ3と負極4とを積層してスパイラル状に捲回することにより作製された電極群5が収納されている。前記正極2は、長手方向に沿う端部に形成されたリード部6と、前記リード部6に形成された帯状タブ7とを有する。前記負極4は、前記電極群5の最外周に配置されて前記容器1と電気的に接触している。電解液は、前記容器1内に収容されている。防爆機能及び正極端子を兼ねる封口部材8は、前記容器1の上部開口部に配置されている。底部に穴9が開口された有底円筒状をなす合成樹脂製の絶縁ガスケット10は、前記封口部材8の周縁と前記容器1の上部開口部内面の間に圧縮状態で配置されている。前記絶縁ガスケット10は、例えば、ナイロン6,6等のポリアミド系合成樹脂から形成することができる。このような絶縁ガスケット10の圧縮下において前記封口部材8は前記容器1にかしめ固定されている。図2に示すように前記封口部材8は、中央にガス抜き孔11を有する円形封口板12と、例えば合成ゴムからなる弾性弁体13と、複数のガス通過孔14が開口された帽子形の正極端子15とから構成されている。前記帯状タブ7は、先端の2点が前記封口板12の下面に固定されている。
【0012】
次いで、前述した電池の製造方法を説明する。
(第1工程)
前記リード部6及び前記帯状タブ7を有する正極2と前記負極4との間に前記セパレータ3を介在して最外周に前記負極4が位置するように電極群5を作製する。前記容器1内に前記電極群5及び前記電解液を収納する。
【0013】
次に、前記正極2、前記負極4、前記セパレータ3及び前記電解液について説明する。
1)正極2
前記正極2は、正極活物質を含むペーストが充填された集電体からなり、その長手方向に沿う端部にリード部6を有する。前記リード部6は帯状タブ7を有する。
【0014】
前記リード部6及び前記帯状タブ7は、例えば、ニッケルから形成することができる。
前記正極は、例えば、正極活物質と導電剤と結着剤と水とを含むペーストを調製した後、前記ペーストを集電体に充填し、これを乾燥した後、プレスで加圧成形することにより作製することができる。
【0015】
前記正極活物質としては、例えば、ニッケル化合物を挙げることができる。前記ニッケル化合物としては、水酸化ニッケル、亜鉛及びコバルトが共沈された水酸化ニッケル、ニッケル酸化物等を挙げることができる。中でも、前記亜鉛及びコバルトが共沈された水酸化ニッケルを用いるのが好ましい。
【0016】
前記導電剤としては、例えば、コバルト化合物及び金属コバルトから選ばれる1種以上からなるものを用いることができる。前記コバルト化合物としては、例えば、水酸化コバルト(Co(OH)2 )、一酸化コバルト(CoO)等を挙げることができる。特に、水酸化コバルトか、一酸化コバルト、もしくは水酸化コバルト及び一酸化コバルトの両方からなる導電材を用いるのが好ましい。
【0017】
前記結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリプロピレン等の疎水性ポリマー、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、例えばポリアクリル酸ナトリウム(SPA)などのポリアクリル酸塩、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド等の親水性ポリマー、例えばラテックス等のゴム系ポリマー等を挙げることができる。
【0018】
前記集電体としては、例えば、ニッケル、ステンレスのような金属や、ニッケルメッキが施された樹脂等の耐アルカリ性材料から形成された網状、スポンジ状、繊維状、もしくはフェルト状の金属多孔体等を挙げることができる。
2)負極4
この負極4は、負極活物質を含むペーストが集電体に充填された構造を有することが好ましい。
【0019】
このような負極は、例えば、負極活物質と導電性材料と結着剤と水とを含むペーストを調製した後、前記ペーストを集電体に充填し、これを乾燥した後、プレスで加圧成形することにより作製することができる。
【0020】
前記負極活物質としては、充放電反応に直接関与する物質や、充放電反応に直接関与する物質を吸蔵・放出する物質を用いることができる。前者の例としては、例えば、金属カドミウム、水酸化カドミウムなどのカドミウム化合物の粉末等を挙げることができる。後者の例としては、例えば、水素を吸蔵放出する水素吸蔵合金等を挙げることができる。中でも、前記水素吸蔵合金を含む負極を備えた二次電池は、前記カドミウム化合物の粉末を含む負極を備えた二次電池に比べて大電流での放電が可能で、かつ環境汚染の恐れが少ないため、好適である。
【0021】
前記水素吸蔵合金としては、格別制限されるものではなく、電解液中で電気化学的に発生させた水素を吸蔵でき、かつ放電時にその吸蔵水素を容易に放出できるものであればよい。例えば、LaNi5 、MmNi5 (Mm;ミッシュメタル)、LmNi5 (Lm;ランタン富化したミッシュメタル)、またはこれらのNiの一部をAl、Mn、Co、Ti、Cu、Zn、Zr、Cr、Bのような元素で置換した多元素系のもの、もしくはTiNi系、TiFe系、ZrNi系、MgNi系のものを挙げることができる。中でも、一般式LmNix Mny Az (ただし、AはAl,Coから選ばれる少なくとも一種の金属、原子比x,y,zはその合計値が4.8≦x+y+z≦5.4を示す)で表される水素吸蔵合金を用いることが望ましい。このような組成の水素吸蔵合金を含む負極を備えた円筒形二次電池は、放電容量及び充放電サイクル寿命を向上することができる。
【0022】
前記導電性材料としては、例えば、ニッケル粉末、酸化コバルト、酸化チタン、カーボンブラック等を挙げることができる。特に、前記カーボンブラックを導電性材料として用いることが好ましい。
【0023】
前記結着剤としては、前述した正極で説明したのと同様なものを用いることができる。
前記集電体としては、例えば、パンチドメタル、エキスパンデッドメタル、穿孔剛板、ニッケルネットなどの二次元基板や、フェルト状金属多孔体や、スポンジ状金属基板などの三次元基板を挙げることができる。
3)セパレータ3
前記セパレータ3としては、例えば、ポリエチレン繊維製不織布、エチレン−ビニルアルコール共重合体繊維製不織布、ポリプロピレン繊維製不織布などのポリオレフィン繊維製不織布に親水性官能基が付与されたものや、例えばナイロン6,6などのポリアミド繊維製不織布を挙げることができる。前記ポリオレフィン繊維製不織布に親水性官能基を付与する方法としては、例えば、コロナ放電処理、スルホン化処理、グラフト共重合、界面活性剤や親水性樹脂の塗布などを挙げることができる。
4)電解液
前記電解液としては、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)の水溶液、水酸化リチウム(LiOH)の水溶液、水酸化カリウム(KOH)の水溶液、NaOHとLiOHの混合液、KOHとLiOHの混合液、KOHとLiOHとNaOHの混合液等のアルカリ電解液を用いることができる。
(第2工程)
前記防爆機能及び正極端子を兼ねる封口部材8を前記絶縁ガスケット10内に収納する。
(第3工程)
まず、この工程で用いる支持電極を図3を参照して説明する。
【0024】
前記支持電極16は、下端中央部に角形凹部17が形成された角柱形状をなす。このような構造の支持電極は、前記封口部材との接触面積が大きいため、溶接電流を分散させることができ、大電流が流れた際に生じる溶接不良を回避することができる。
【0025】
次いで、溶接箇所の凹凸に応じて移動距離を調節するための移動距離調節機構及び溶接箇所に均等に圧力を加える加圧機構を備える複数のポイント電極を図4を参照して説明する。
【0026】
前記移動距離調節機構及び前記加圧機構を兼ねるバランスヘッド18は、下端に2本のポイント電極19a,19bを有する。前記移動距離調節機構は、バランスヘッド18本体を下降させて前記2本のポイント電極19a,19bを下降させ、いずれか一方の電極が溶接箇所に当接すると、更にバランスヘッド18本体を下降させても当接された電極をその位置で固定したまま当接していない電極のみを下降させて溶接箇所に当接させるようになっている。
【0027】
前述した支持電極及びポイント電極を用いる溶接工程を説明する。
前述した図3に示すように前記支持電極17を前記封口部材8の封口板12に前記電極17の前記凹部16が前記正極端子15のトップを囲むように配置する。図5に示すように、前記封口板12の端子部である前記端子15と反対側の封口板面に前記帯状タブ7の先端部を配置する。前記端子部の周縁は前記ガスケット10が配置されており、中央付近に比べてガスケットの厚さ分突出しているため、前記帯状タブ7は前記端子部に少し折り曲げられた状態で配置される。前記バランスヘッド18本体を下降させて前記2本の電極19a,19bを下降させる。いずれか一方の電極が前記帯状タブ7の先端部に当接すると、前記移動距離調節機構が駆動されてもう片方の電極のみが下降して前述した図4に示すように前記2本の電極19a,19bが帯状タブ7の先端部に当接される。従って、前述したように帯状タブ7を配置することに起因して帯状タブ7にしわや歪みが生じた際や、溶接不良が生じた封口部材を用いた場合においても前記移動距離調節機構によって2本の電極19a,19bを溶接箇所の凹凸に応じた距離移動させて溶接箇所に当接させることができる。その結果、前記バランスヘッド18の前記加圧調節機構によって前記2本の電極19a,19bに均等に圧力を加えることができるため、前記電極17と前記2本の電極19a,19bとの間に溶接電流を流すと、均等に溶接電流が流れ、前記封口板12の端子部と前記帯状タブ7とを均等で、かつ高い溶接強度で固定することができる。従って、帯状タブの溶接点のうちの一点に電流が集中するのを回避することができるため、作動電圧が高く、かつ外部短絡の際の温度上昇が抑制された安全性が高い電池を実現することができる。
(第4工程)
前記絶縁ガスケット内に収納された封口部材を前記容器の前記段部に載置し、前記容器の開口部を縮径し、前記開口部の上端を内方に折り曲げて前記容器に前記封口部材を前記絶縁ガスケットを介してかしめ固定することにより円筒形電池を製造する。
【0028】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。
実施例
<ペースト式正極の作製>
水酸化ニッケル粉末90重量部および酸化コバルト粉末10重量部からなる混合粉体に、前記水酸化ニッケル粉末に対してカルボキシメチルセルロース0.3重量部、ポリテトラフルオロエチレンの懸濁液(比重1.5,固形分60重量%)を固形分換算で0.5重量部添加し、これら固形分に分散媒としての水を45重量部添加して混練することによりペーストを調製した。つづいて、このペーストを導電性基板としてのニッケルメッキ繊維基板にその長手方向側の端部を除いて充填した後、乾燥し、ローラプレスを行って圧延した。これのペースト未充填の箇所にリード部を有する帯状タブを抵抗溶接によって取り付けることによりペースト式正極を作製した。前記リード付きタブは、例えば、ニッケルから形成され、タブ部は厚さが0.15mmで、幅が4mmである。
【0029】
<ペースト式負極の作製>
市販のランタン富化したミッシュメタルLm及びNi、Co、Mn、Alを用いて高周波炉によって、LmNi4.0 Co0.4 Mn0.3 Al0.3 の組成からなる水素吸蔵合金を作製した。前記水素吸蔵合金を機械粉砕し、これを200メッシュのふるいを通過させた。得られた合金粉末100重量部に対してポリアクリル酸ナトリウム0.5重量部、カルボキシメチルセルロース(CMC)0.125重量部、ポリテトラフルオロエチレンのディスパージョン(比重1.5,固形分60wt%)を固形分換算で2.5重量部および導電材としてカーボン粉末1.0重量部を分散媒としての水50重量部と共に混合することによって、ペーストを調製した。このペーストをパンチドメタルに塗布、乾燥した後、加圧成形することによってペースト式負極を作製した。
【0030】
次いで、親水化処理が施されたポリオレフィン繊維製不織布からなるセパレータを前記負極と前記正極との間に介装し、渦巻状に捲回して電極群を作製した。予め開口部を拡口することにより前記開口部の下端に内方に突出した形状の段部が形成された負極端子を兼ねる有底円筒状容器内に前記電極群をに収納し、この容器内に7NのKOHおよび1NのLiOHからなる電解液を収容した。
【0031】
一方、図6に示す封口部材21を用意した。前記封口部材21は、ニッケルメッキが施された鋼から形成され、中央にガス通過孔22を有する円形封口板23と、前記封口板23上に前記ガス通過孔22を塞ぐように配置された弾性弁体24と、前記封口板上に前記弾性弁体を包囲するように抵抗溶接によってやや傾いた状態で固定され、複数のガス抜き孔25を有する正極端子キャップ26とから構成される。底部に円形穴を有する有底円筒形状をなし、ナイロン6,6製の絶縁ガスケット内に前記封口部材を載置した。
【0032】
図7に示すように前記絶縁ガスケット27内に収納された前記封口部材21の封口板23に前記支持電極17をその凹部16が前記正極端子26の突出部を囲むように配置し、前記封口板23の端子部、つまり前記端子26が固定された面と反対側の面に前記帯状タブ7の先端部を少し折り曲げた状態で配置した。前記バランスヘッド18本体を下降させて前記2本の電極19a,19bを下降させた。前記電極19aが前記帯状タブ7の先端部に当接すると、前記移動距離調節機構が駆動されてもう片方の電極19bのみが下降して前記2本の電極19a,19bが帯状タブ7の先端部に当接された。
【0033】
前記2本の電極19a,19bが帯状タブ7の先端部に当接されると、前記バランスヘッド18の前記加圧機構が駆動され、前記2本の電極19a,19bによって前記帯状タブ7の先端部が押圧されて前記帯状タブ7及び前記封口部材21が前記電極17と前記電極19a,19bとによって挟持され、2つの溶接点に均等に圧力が加えられた。この状態で前記電極17と前記電極19a,19bとの間に溶接電流を流し、前記帯状タブ7を前記封口部材21の前記封口板23の端子部にダイレクトスポット溶接によって固定した。前記絶縁ガスケット27内に収納された封口部材21を前記容器の前記段部に載置した後、前記開口部を縮径し、前記開口部の上端を内方に折り曲げて前記封口部材を前記ガスケットを介して前記容器にかしめ固定することにより前述した図1に示すAAサイズのニッケル水素二次電池を製造した。
比較例1
移動距離調節機構を持たない2本のポイント電極を用いた以外は、実施例と同様な方法により前述した図1に示すAAサイズのニッケル水素二次電池を製造した。
【0034】
すなわち、図8に示すように、中央に矩形の凹部31を有する角柱形支持電極32を前記封口部材21の封口板23に前記凹部31が前記端子26の突出部を囲むように配置し、前記封口板23の端子部である前記端子26と反対側の面に前記帯状タブ7の先端を少し折り曲げた状態で配置した。移動距離調節機構を持たない2本のポイント電極33a,33bを前記帯状タブ7の先端部に配置した。前記正極端子26が前記封口板23に傾いた状態で固定されているため、前記ポイント電極33bと前記封口板23との間に隙間が生じた。前記2本のポイント電極33a,33bにより前記帯状タブ7の先端を加圧しながら前記支持電極32と前記2本のポイント電極33a,33bとの間に溶接電流を流し、前記帯状タブ7を前記封口板23の端子部にダイレクトスポット溶接によって固定した。
比較例2
以下に説明するシリーズスポット溶接により封口部材21と前記帯状タブ7を二点で固定したこと以外は、実施例と同様な方法により前述した図1に示すAAサイズのニッケル水素二次電池を製造した。
【0035】
前述した図9に示すように、中央に矩形の凹部34が開口された角柱形状をなし、絶縁材料からなる支持部材35を前記封口板23に前記凹部34が前記端子26の突出部を囲むように配置し、前記封口板23の端子部としての前記端子26が固定された面と反対側の面に前記帯状タブ7の先端を少し折り曲げた状態で配置した。同時に、実施例と同様なバランスヘッドを備える2本のポイント電極36(−側),37(+側)を下降させて前記バランスヘッドの移動距離調節機構によって前記帯状タブ7の先端に前記2本のポイント電極36,37をそれぞれ当接させ、前記バランスヘッドの加圧機構によって前記各ポイント電極36,37に均等に圧力を加えながら前記2本のポイント電極36,37との間に溶接電流を流し、前記帯状タブ7を前記封口板23の端子部にシリーズスポット溶接によって固定した。
【0036】
得られた実施例1及び比較例1,2の二次電池についてそれぞれ100個用意し、引っ張り溶接強度及びそのばらつき(標準偏差σ)を調べ、その結果を下記表1に示す。
【0037】
また、得られた実施例1及び参照例1,2の二次電池について、0.3Cで150%充電を行った後、2Cで放電する際の中間放電作動電圧を測定し、その結果を下記表1に併記する。
更に、実施例1及び比較例1,2の二次電池について、外部短絡させた際の容器の壁面の温度を測定し、その結果を下記表1に併記する。
【0038】
【表1】
【0039】
表1から明らかなように、移動距離調節機構及び圧力調節機構を備える2本のポイント電極を用いるダイレクトスポット溶接によって封口板の端子部と帯状タブとを2点で固定した実施例1の二次電池は、封口板の端子部と帯状タブとを均等な、かつ高い溶接強度で固定できることがわかる。また、実施例の二次電池は、比較例1,2に比べて電池電圧が高く、外部短絡の際の異常電流による温度上昇を抑制できることがわかる。
【0040】
これに対し、実施例と同様にダイレクトスポット溶接ではあるものの移動距離調節機構を持たない2本のポイント電極を用いて封口板の端子部と帯状タブとを2点で固定する比較例1は、前記2本のポイント電極のうちの一方と帯状タブとの接触が不十分になるため、溶接電流がばらついてスプラッシュが発生し、溶接強度が低かった。一方、比較例2のようにシリーズスポット溶接によって封口板の端子部と帯状タブとを2点で固定すると、帯状タブの幅が狭いために電極間距離が小さくなり、無効電流が増大するため、溶接強度が著しく低くなった。
【0041】
なお、前記実施例では、ニッケル水素二次電池に適用して説明したが、ニッケルカドミウム二次電池、リチウム電池、リチウムイオン二次電池にも同様に適用することができる。
【0042】
前記実施例では、帯状タブを有する正極と負極との間にセパレータを介在して渦巻状に捲回することにより作製された渦巻形電極群を備える円筒形電池に適用した例を説明したが、前記正極と負極とをその間に前記セパレータを介在して交互に重ねることにより作製された積層構造の電極群を備える角形電池にも同様に適用することができる。
【0043】
前記実施例では、帯状タブとしてリード部を有するものを用いたが、リード部を持たないタブを用いても良い。
前記実施例では、帯状タブと封口板の端子部との接続点を二点にしたが、前記接続点は例えば三点、四点と二点より多くても良い。
【0044】
前記実施例では、防爆機構として、電池内のガス圧が所定の値以上になると開弁してガスを外部に放出し、その後は再び電池を密閉する復帰式の安全弁である弾性弁体を用いたが、前記防爆機構としては、非復帰式の安全弁である弁膜を用いても良い。前記弁膜は封口板と正極端子との間に前記封口板のガス抜き孔を覆うように配置すれば良い。
【0045】
前記実施例では、正極端子と封口板とが溶接により固定された構造を有する封口板を用いたが、封口板と正極端子とがかしめ固定により一体化された構造を有する封口板を用いることができる。
【0046】
前記実施例では、一方極端子を有する封口板を他方極端子を兼ねる容器の開口部に絶縁ガスケットを介してかしめ固定によって取り付ける構造の電池に適用した例を説明したが、前記封口板を前記容器にレーザシーム溶接によって取り付ける構造の電池にも同様に適用することができる。このような構造の電池では、前記封口板として中央に穴が開口された封口板と、前記封口板の穴に両端が前記封口板の上下面から突出するようにガラス製絶縁材を介してハーメチックシールによって取付けられた正極ピン端子とを有するものが用いられる。従って、帯状タブの先端部と前記封口板の端子部とを接続する場合には、前記封口板に支持電極をその凹部が前記正極ピン端子を囲むように配置し、前記支持電極が配置された面と反対側の面に突出された正極ピン端子の先端を前記封口板の端子部とし、前記端子部に前記帯状タブの先端部を配置する。前記帯状タブの先端部に複数のポイント電極をバランスヘッドの移動距離調節機構によって前記先端部の凹凸に応じた距離移動させて当接させた後、前記加圧機構により前記複数のポイント電極に均等に圧力を加えながら前記支持電極と前記複数のポイント電極間に溶接電流を流すダイレクトスポット溶接によって行えば良い。
【0047】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明の電池の製造方法によれば、端子を持つ封口板の端子部と帯状タブの先端部を少なくとも二箇所を均等で、かつ高い溶接強度で接続することができ、電池電圧等の電池特性を向上することができ、外部短絡の際の温度上昇を抑制することができ、電池の安全性及び信頼性を向上することができるという顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る方法により製造された電池(例えば円筒形電池)を示す断面図。
【図2】図1の防爆機能及び正極端子を兼ねる封口部材を示す拡大断面図。
【図3】本発明に係る製造方法の溶接工程を示す部分断面図。
【図4】本発明に係る製造方法の溶接工程を示す正面図。
【図5】本発明に係る製造方法の溶接工程における帯状タブの配置を示す平面図。
【図6】本発明に係る実施例で用いられる防爆機能及び正極端子を兼ねる封口部材を示す拡大断面図。
【図7】本発明に係る実施例の溶接工程を示す部分断面図。
【図8】比較例1における溶接工程を示す部分断面図。
【図9】比較例2における溶接工程を示す部分断面図。
【符号の説明】
7…帯状タブ、10…絶縁ガスケット、12…封口板、15…正極端子、16…支持電極、19b…ポイント電極。
Claims (1)
- 帯状タブを有する一方極と他方極との間にセパレータを介装して作製された電極群及び電解液が他方極端子を兼ねる容器内に収納され、前記容器の開口部が一方極端子を有する封口板により封口されており、前記帯状タブの先端部と前記封口板の端子部とが二点以上で接続された構造を有する電池の製造方法において、
前記帯状タブの先端部と前記封口板の端子部との接続は、前記封口板を支持するための支持電極と、溶接箇所の凹凸に応じて移動距離を調節するための移動距離調節機構及び溶接箇所を加圧するための加圧機構を備える複数のポイント電極とを用い、前記封口板の前記端子部に前記帯状タブの先端部を配置し、前記封口板の前記端子部と反対側の面に前記支持電極を配置し、前記帯状タブの先端部に前記複数のポイント電極を前記移動距離調節機構によって前記先端部の凹凸に応じた距離移動させて当接させた後、前記加圧機構により前記複数のポイント電極に均等に圧力を加えながら前記支持電極と前記複数のポイント電極間に溶接電流を流すダイレクトスポット溶接を行う工程を具備する方法によって行うことを特徴とする電池の製造方法。
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