JP4395899B2 - 空気電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は空気中の酸素を正極活物質とする空気電池に関し、さらに詳しくは漏液特性を含む保存特性を向上させた空気電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の携帯用電子機器の普及に伴い、携帯用電源としての電池への要求は高まり、特に、より軽く、より小さく、且つ、より長く使える電池、即ち、高エネルギー密度電池の登場が期待されている。
【0003】
空気電池は正極活物質に空気中の酸素を用いることから、電池内に正極活物質を充填しない電池である。この電池の正極には、一般的なアルカリ電池用正極に比べて極めて薄い、空気中の酸素を反応させるための特殊な多孔体電極(以下、「空気極」と記す)が用いられる。従って、負極充填に供される容積が他の電池系に比べて極めて大きく、空気電池の電池容量は、例えばアルカリ乾電池と比べても約2倍になり、エネルギー密度の高い電池となるものである。このようなことから、携帯用電源として空気電池は極めて優れた1次電池であり、特にそのボタン形空気電池は補聴器やポケットベル用の電源として盛んに用いられてきているところである。
【0004】
従来例
つぎに、図6および図7を参照して従来のボタン形の空気電池について説明する。図6は空気電池の側面図であり、図7は従来の空気電池であって、同図(a)は空気極の構成を示し、また、同図(b)は図6のAで示す部位の断面図である。
【0005】
〔空気極の作成〕
まず、空気極の作成について説明する。
β−マンガン酸化物粉末(MnO2 )と、導電材料(活性炭:カーボンブラック=1:1の混合物)と、撥水性のフッ素樹脂結着剤として固形分60重量%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の水性ディスパージョンとを、MnO2 :導電材料:PTFE=2:2:1の割合で混合し、ペースト状の触媒層組成物を形成する。
【0006】
図7(a)に示すように、上述したようにして形成した触媒層組成物31を、集電体32であるニッケルメッキを施したシート状のステンレス(SUS304)のネットに、0.5mmの厚さで塗着し乾燥して触媒層シート33を構成する。つぎに、この触媒層シート33に厚さ0.1mmの多孔性PTFE膜34を圧着させた後、直径22.5mmの円形に打ち抜いて空気極15を形成する。
【0007】
〔電池の作成〕
つぎに、上述したようにして形成した空気極15を用いた電池の作成について説明する。
図7(b)に示すように、鉄にニッケルメッキを施し、空気孔11を有する正極ケース12に、空気を拡散させる空気拡散材13、多孔性PTFE膜14、空気極15、微細孔ポリプロピレンフィルムからなるセパレータ16、天然パルプ材からなる電解液保持部材17を順に積層する。また、亜鉛合金粒とゲル化剤と水酸化カリウム溶液との混合物よりなるゲル状の負極合材18を銅/SUS/ニッケルのクラッド材からなる負極カップ19に入れ、ナイロンからなるガスケット20を介して正極ケース12に収納し、カシメて固定する。さらに、空気孔シール21で空気孔11を封止して直径23mm、高さ3mmのボタン形空気電池6を作成する。
【0008】
さて、上述したようにして作成されたボタン形の空気電池6は空気極15の側面において集電体32と正極ケース12とを接触させて集電していた。しかしながら、集電体32は金属製のネットであるため、これにより構成されている空気極15は強度が弱く、正極ケース12と強い接触を得ようとすると空気極15が変形してしまうという問題があった。このため十分な電気的接続をとることが困難で、内部抵抗が大きくなっていた。
【0009】
また、空気電池は空気極に絶縁体である結着剤を多量に入れる必要があるために、これによる内部抵抗の増加があり、負荷特性が悪いものであった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の課題は、内部抵抗が小さくて放電容量が大きく、さらに耐漏液性に優れた空気電池を提供しようとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題に鑑み成されたものであり、撥水膜と触媒層と集電ネットを積層塗着してなる空気極を正極とし、セパレータを介して負極合材が配設される空気電池において、空気極周辺部に金属リングを設け、金属リングを介して空気極と正極端子との間の電気的接続を得る構成であり、金属リングは断面がコの字状であり、空気極の周辺部が金属リングコの字状の凹部に配設され、圧接された構成であり、金属リングの内周部に絶縁材が塗布されている空気電池を構成する。
【0014】
また、前記金属リングの内周部がガスケットによって覆われる空気電池を構成する。
【0015】
また、前記金属リングの内周部がガスケットによって覆われていると共に、前記金属リングの内周部に絶縁材が塗布されている空気電池を構成する。
【0016】
また、前記金属リングの外周側面部がガスケットと当接する空気電池を構成する。
【0017】
また、前記金属リングの外周側面部がガスケットと当接する構成であると共に、前記金属リングの内周部がガスケットによって覆われている空気電池を構成する。
【0018】
さらに、前記金属リングの外周側面部がガスケットと当接し、前記金属リングの内周部がガスケットによって覆われている構成であると共に、前記金属リングの内周部に絶縁材が塗布されている空気電池を構成して、上記課題を解決する。
【0019】
本発明の構成によると、空気極の外周部に金属リングを設け、空気極と正極端子との電気的接続を金属リングを介して行なうと共に、ガスケットの形状、および絶縁材の配設により、強度の向上と接触抵抗の低下、および、耐漏液性が向上する。
【0020】
【発明の実施の形態】
つぎに、実施の形態について、図1ないし図5を参照して説明する。尚、図1ないし図5は図6に示すA部の断面図であって、それぞれ本発明の第1の実施例、および第1の比較例から第4の比較例の構成を示すものである。
【0021】
<第1の比較例>
図1に示すように、打ち抜いて作成した空気極15の外周に、断面がコの字状の金属リング22を配置し、空気極15の集電体32と金属リング22、および正極ケース12と金属リング22との接触を十分に確保した。その他は従来例と同様にしてボタン形の空気電池1を作成した。
【0022】
<第1の実施例>
図2に示すように、打ち抜いて作成した空気極15の外周に、断面がコの字状の金属リング22を配置し、空気極15の集電体32と金属リング22、および正極ケース12と金属リング22との接触を十分に確保し、さらに、金属リング内周部23の円周上に絶縁材であるアスファルト25を塗布した。その他は従来例と同様にしてボタン形の空気電池2を作成した。
【0023】
<第2の比較例>
図3に示すように、打ち抜いて作成した空気極15の外周に、断面がコの字状の金属リング22を配置し、空気極15の集電体32と金属リング22、および正極ケース12と金属リング22との接触を十分に確保し、さらに、金属リング内周部23を覆うようにガスケット20を形成した。その他は従来例と同様にしてボタン形の空気電池3を作成した。
【0024】
<第3の比較例>
図4に示すように、打ち抜いて作成した空気極15の外周に、断面がコの字状の金属リング22を配置し、空気極15の集電体32と金属リング22、および正極ケース12と金属リング22との接触を十分に確保し、さらに、金属リング外周部24を覆うようにガスケット20を形成した。その他は従来例と同様にしてボタン形の空気電池4を作成した。尚、この場合、空気極15の直径は従来例の22.5mmよりも小さくなる。
【0025】
<第4の比較例>
図5に示すように、打ち抜いて作成した空気極15の外周に、断面がコの字状の金属リング22を配置し、空気極15の集電体32と金属リング22、および正極ケース12と金属リング22との接触を十分に確保し、さらに、金属リング内周部23、および金属リング外周部24を覆うようにガスケット20を形成した。その他は従来例と同様にしてボタン形の空気電池5を作成した。尚、この場合、空気極15の直径は従来の22.5mmよりも小さくなる。
【0026】
つぎに、上述したようにして作成した空気電池1〜5、および比較のために従来例の空気電池6の各1000個について、つぎの条件で試験を行ない平均値を求めた。その結果を表1、および表2に示す。
【0027】
まず、保存前の特性試験として、得られた各空気電池を室温下で2週間エージング後、重負荷閉回路電圧特性試験、内部抵抗値特性試験、重負荷放電特性試験を行い、また、保存後の特性試験として、60℃の温度下で100日経過後、重負荷閉回路電圧特性試験、内部抵抗値特性試験、重負荷放電特性試験、および耐漏液試験を行なった。
【0028】
<重負荷閉回路電圧特性試験>
空気孔シールを開封し10分後に、電池に20Ωの負荷抵抗を5秒間接続し、そのときの閉路電圧を測定した。この場合、電池電圧は高いほど好ましい。
【0029】
<内部抵抗値特性試験>
空気孔シールを開封し10分後に、電池に1μA、1kHzの交流電流を印加し、このときの交流抵抗を測定した。この場合、抵抗値が小さいほど好ましい。
【0030】
<重負荷放電特性試験>
空気孔シールを開封し10分後に、電池に42Ωの負荷抵抗を接続し、電池電圧が0.9Vを下回るまでの放電容量を測定した。この場合、数値が大きいほど放電容量が大きく、好ましい。
【0031】
<耐漏液試験>
空気孔シールを貼ったまま、60℃の温度下で100日間放置し、その後、空気孔から電解液が漏れてきたものを漏液としてその個数を計数し、サンプル数n=1000に対する発生率を求めた。この場合、数値が小さいほど好ましい。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
表1に示すように、第1の実施例、第2の比較例〜第4の比較例のいずれも、保存前の閉回路電圧、内部抵抗、放電容量において従来例より優れていることが分かる。
【0035】
また、表2に示すように、第1の実施例、第2の比較例〜第4の比較例のいずれも、保存後の閉回路電圧、内部抵抗、放電容量、および耐漏液特性において従来例より優れていることが分かる。
【0036】
尚、第1の実施例で、金属リング内周部の円周上に絶縁材であるアスファルトを塗布したが、そのアスファルト系の絶縁材の他に、クロロスルホン化ポリエチレン系、ポリオレフィン系、ゴム系等の絶縁材を用いてもよい。
【0037】
また、第2の比較例〜第4の比較例で、ガスケットによって金属リングの内周部、および外周部を覆う構成をとったが、ガスケットの形状は図3〜図5に示す形状に限るものではない。
【0038】
また、ガスケットの材料も特に規定するものではなく、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリアミドイミド系、ゴム系等、いずれの材料を用いてもよい。さらに、ガスケットにはアスファルト系、クロロスルホン化ポリエチレン系、ポリオレフィン系、ゴム系等の液状パッキング材が塗布されていることがより好ましい。
【0039】
また、第2の比較例〜第4の比較例の構成において、金属リング内周部の円周上に絶縁材を塗布してもよい。
【0040】
また、金属リングの材料も特に限定するものではない。ニッケル、鉄−ニッケルメッキ、SUS304、SUS430、SUS312、およびこれらステンレス材料にニッケルメッキを施したものが好適である。
【0041】
さらに、実施例ではボタン形空気電池について説明したが、電池形状は特にこれに限定するものではなく、円筒形、角筒形等の筒形空気電池に用いても良いことは当然である。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように、空気極の外周部に金属リングを設け、空気極と正極ケースとの電気的接続を金属リングを介して行なうことにより、空気極の変形を生じさせることはなく、また、内部抵抗を低下させ、放電容量を増大させた空気電池が提供できる。
【0043】
また、本発明に係わるガスケットの形状、配置、および絶縁材を用いたシールにより空気電池の耐漏液性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係わる空気電池の第1の比較例であって、図6のAで示す部位の断面図である。
【図2】 本発明に係わる空気電池の第1の実施例であって、図6のAで示す部位の断面図である。
【図3】 本発明に係わる空気電池の第2の比較例であって、図6のAで示す部位の断面図である。
【図4】 本発明に係わる空気電池の第3の比較例であって、図6のAで示す部位の断面図である。
【図5】 本発明に係わる空気電池の第4の比較例であって、図6のAで示す部位の断面図である。
【図6】 空気電池の側面図である。
【図7】 従来の空気電池であって、図6のAで示す部位の断面図である。
Claims (6)
- 撥水膜と触媒層と集電ネットを積層塗着してなる空気極を正極とし、セパレータを介して負極合材が配設される空気電池において、
前記空気極周辺部に金属リングを設け、該金属リングを介して前記空気極と正極端子との間の電気的接続を得る構成であり、
前記金属リングは断面がコの字状であり、前記空気極の周辺部が前記金属リングコの字状の凹部に配設され、圧接された構成であり、
前記金属リングの内周部に絶縁材が塗布されていること
を特徴とする空気電池。 - 前記金属リングの内周部がガスケットによって覆われていること
を特徴とする、請求項1に記載の空気電池。 - 前記金属リングの内周部がガスケットによって覆われていると共に、前記金属リングの内周部に絶縁材が塗布されている
ことを特徴とする、請求項1に記載の空気電池。 - 前記金属リングの外周側面部がガスケットと当接する構成であること
を特徴とする、請求項1に記載の空気電池。 - 前記金属リングの外周側面部がガスケットと当接する構成であると共に、前記金属リングの内周部がガスケットによって覆われていること
を特徴とする、請求項1に記載の空気電池。 - 前記金属リングの外周側面部がガスケットと当接し、前記金属リングの内周部がガスケットによって覆われている構成であると共に、前記金属リングの内周部に絶縁材が塗布されていること
を特徴とする、請求項1に記載の空気電池。
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