JP5849995B2 - 金属空気電池 - Google Patents
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Description
金属空気電池は、一般的に、導電性材料(例えば炭素材料)及びバインダーを含む空気極と、負極活物質(金属や合金等)を含む負極と、空気極及び負極の間に介在する電解質とを備える構造を有する。電解質が電解液である場合、通常、電解液は、絶縁性の多孔質体であるセパレータに含浸された状態で、空気極と負極との間に配置される。
特許文献1には、酸素を正極活物質として利用する空気電池であって、空気電極と、該空気電極に貼着されたセパレータとを有し、多孔性フィルムと織布若しくは不織布との積層体をセパレータとして用いた空気電池が開示されている。
本発明は上記実情を鑑みて成し遂げられたものであり、本発明の目的は、放電容量の高い金属空気電池を提供することである。
前記電解質層が、多孔質構造を有するセパレータと、該セパレータ内に含浸された電解液とを有し、
前記セパレータは、前記負極側の表面における前記電解液との接触角が30〜50度の範囲内であり、前記空気極側の表面における前記電解液との接触角が60〜80度の範囲内であることを特徴とする。
本発明では、上記セパレータを用いることによって、電解液をセパレータから空気極へ供給しつつ、セパレータ内の負極側にも電解液を保持することができるため、金属空気電池の放電容量を高くすることができる。
前記電解質層が、多孔質構造を有するセパレータと、該セパレータ内に含浸された電解液とを有し、
前記セパレータは、前記負極側の表面における前記電解液との接触角が、前記空気極側の表面における前記電解液との接触角よりも小さいことを特徴とする。
金属空気電池20は、空気極層2及び空気極集電体4を備える空気極6、負極層3及び負極集電体5を備える負極7、並びに、空気極6及び負極7に挟持される電解質層1を備えている。電解質層1は、セパレータ8と該セパレータ8に含浸された電解液(図示せず)とを有している。セパレータ8は、第1の多孔質体8aと第2の多孔質体8bとが積層した積層構造を有しており、セパレータ8の負極7側表面を構成する第2の多孔質体8bは、セパレータ8の正極6側表面を構成する第1の多孔質体8aよりも、セパレータ8に含浸された電解液との接触角が小さくなっている。空気極6、負極7及び電解質層1は電池ケース9に収納されている。尚、図1においては、空気極集電体4が点在しているように見えるが、これは空気極集電体4の一部がメッシュ状であることを示している。電池ケース9は、空気極集電体4のメッシュ部の少なくとも一部に重なるように開口した酸素取り込み孔10を有しており、外部からの酸素取り込みが可能となっている。
一般的に空気極層は多孔質構造を有することから、空気極は内部に電解液を保持し易い。セパレータから弾かれた電解液が空気極に供給されると、空気極は電解液で良く濡れ、その結果、放電時の空気極は、電解液を介して負極から移動してきた金属イオンを受け取り易くなり、均一に金属イオンが供給される。
一方、一般的に負極層は金属箔、金属板等を用いて構成されるため、負極は内部に電解液を保持し難い。そのため、セパレータで弾かれた電解液は負極側よりも空気極側へ流れやすく、セパレータの負極側領域において電解液の液枯れが生じ易くなる。その結果、負極と電解液との接触性が低下し、放電時の負極は、負極で発生した金属イオンを、電解液を介して空気極に渡し難くなり、電池の放電容量が低下すると考えられる。
すなわち、本発明では、負極側の表面における電解液との接触角が、空気極側の表面における電解液との接触角よりも小さいセパレータを用いる。本発明の金属空気電池において、セパレータの空気極側の表面は、電解液との濡れ性が相対的に低く、電解液を弾き易い。そのため、空気極に電解液を供給し、空気極を電解液で良く濡れさせることができる。一方、セパレータの負極側の表面は、電解液との濡れ性が相対的に高く、電解液を弾き難い。そのため、セパレータの負極側領域において電解液が保持された状態を保つことができる。その結果、空気極と負極との間で、電解液を介する金属イオンの移動が円滑に行われるようになり、電池の放電容量を高くすることができる。
尚、本発明において、金属空気電池とは、空気極層において、正極活物質である酸素の酸化還元反応が行われ、負極層において、金属の酸化還元反応が行われ、空気極層と負極層との間に介在する電解質によって金属イオンが伝導される電池を指す。金属空気電池の種類としては、例えば、リチウム空気電池、ナトリウム空気電池、カリウム空気電池、マグネシウム空気電池、カルシウム空気電池、亜鉛空気電池、アルミニウム空気電池、鉄空気電池等を挙げることができる。また、本発明の金属空気電池は、二次電池であっても一次電池であってもよい。
電解質層は、空気極層及び負極層の間に保持され、空気極層及び負極層との間で金属イオンを交換する働きを有する。
電解質層は、多孔質構造を有するセパレータと、該セパレータ内に含浸された電解液とを有する。
セパレータは、電解液を保持し且つ空気極と負極との絶縁性を確保する機能を有する。電解液保持の観点から、セパレータは、多孔質構造を有する。また、絶縁性確保の観点から、セパレータは、通常、絶縁性材料で形成される。
セパレータの多孔質構造は、電解液を保持することができれば特に限定されず、例えば、構成繊維が規則正しく配列されたメッシュ構造、構成繊維がランダムに配列された不織布構造、独立孔や連結孔を有する三次元網目構造等が挙げられる。
接触角とは、固体の液体による濡れ性を表わす尺度であり、固体表面上に液滴が接している状況で、液滴の縁から液滴の表面に引いた接線と固体表面との成す角度である。接触角が大きい固体は濡れ性が低く、接触角が小さい固体は濡れ性が高い。
本発明において、セパレータ表面における電解液との接触角は、液滴法等の一般的な方法により算出することができる。図2は、接触角の測定原理を説明する図であって、固体表面上に電解液の液滴が接している状態を示している。図2において、接触角θは、液滴31の端点35から液滴表面に引いた接線33と固体表面32との成す角である。そして、液滴31の端点35と頂点36とを結ぶ直線34と固体表面32との成す角をθ’とした場合に、接触角θ=2θ’が成り立つ。このことから、液滴31の半径rと液滴31の高さhとを用いてθ’を求め、接触角θを算出することができる。
接触角は、液滴法等による測定を一回のみ行って算出した値を採用してもよいし、セパレータ表面の一ヶ所又は複数箇所において、測定を複数回行って算出した値の平均値を採用してもよい。尚、接触角測定に使用する電解液は、金属空気電池においてセパレータに含浸される電解液である。
セパレータの接触角の具体的な値は、負極側の表面における電解液との接触角の方が、空気極側の表面における電解液との接触角よりも小さければ、特に限定されない。電池の放電容量の向上の観点から、空気極側の表面における電解液との接触角は、60〜80度の範囲内であることが好ましく、負極側の表面における電解液との接触角は、30〜50度の範囲内であることが好ましい。
尚、本発明において、多孔質層とは、多孔質構造を有する単層構造の多孔質体のことをいう。また、負極側表面を構成する多孔質層の厚さと、空気極側表面を構成する多孔質層の厚さの比率は特に限定されない。
2層以上の多孔質層を積層する方法は特に限定されず、一般的な方法、例えば、接着、溶接等の方法が挙げられる。
表面処理の方法は、表面処理の前後で多孔質体表面と電解液との接触角を変化させることができるものであれば、特に限定されない。例えば、具体的には酸やアルカリ等による薬剤処理、コロナ放電処理法、プラズマ処理法、機械的粗面化法、紫外線酸化法等が挙げられる。
セパレータの厚さは、特に限定されるものではなく、例えば、0.1〜100μmの範囲が好ましい。
セパレータの多孔度としては、30〜90%であることが好ましく、45〜70%であることがより好ましい。多孔度が低すぎるとイオン拡散を阻害する傾向があり、高すぎると強度が低下する傾向がある。
電解液としては、水系電解液、非水系電解液を挙げることができる。
電解液の粘度は、特に限定されないが、例えば、0.1〜200Pa・sの範囲が好ましい。セパレータに対する電解液の含有率は、特に限定されないが、例えば10〜80%の範囲が好ましい。
非水溶媒としては、特に限定されず、例えば、エチレンカーボネート[EC]、プロピレンカーボネート[PC]、ブチレンカーボネート[BC]、ビニレンカーボネート、ジメチルカーボネート[DMC]、エチルメチルカーボネート[EMC]、ジエチルカーボネート[DEC]、メチルプロピルカーボネート、イソプロピオメチルカーボネート、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル、γ−ブチロラクトン、酢酸エチル、酢酸メチル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル[DME]、アセトニトリル[AcN]、ジメチルスルホキシド[DMSO]、ジメトキシメタン、1,3−ジメトキシプロパン、ジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル[TEGDME]及びこれらの混合物等を挙げることができる。
イオン液体としては、例えば、N,N,N−トリエチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド[TMPA−TFSA]、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド[PP13−TFSA]、N−メチル−N−プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド[P13−TFSA]、N−メチル−N−ブチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド[P14−TFSA]、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド[DEME−TFSA]等の脂肪族4級アンモニウム塩や、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート[EMIBF4]、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド[EMITFSA]、1−アリル−3−エチルイミダゾリウムブロマイド[AEImBr]、1−アリル−3−エチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート[AEImBF4]、1−アリル−3−エチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド[AEImTFSA]、1,3−ジアリルイミダゾリウムブロマイド[AAImBr]、1,3−ジアリルイミダゾリウムテトラフルオロボラート[AAImBF4]、1,3−ジアリルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド[AAImTFSA]等のアルキルイミダゾリウム4級塩等が挙げられる。
非水溶媒は、1種のみを用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
非水系電解液において、非水溶媒に対する電解質塩の含有量は、特に限定されないが、例えば0.1〜1mol/kgの範囲内とすることができる。
ポリマー電解質(ゲル電解質)は、通常、非水系電解液にポリマーを添加してゲル化したものである。例えば、リチウム空気電池のゲル電解質は、上述した非水系電解液に、ポリエチレンオキシド[PEO]、ポリアクリロニトリル[PAN]又はポリメチルメタクリレート[PMMA]等のポリマーを添加し、ゲル化することにより得られる。
硫化物系固体電解質としては、例えば、Li2S−P2S5、Li2S−P2S3、Li2S−P2S3−P2S5、Li2S−SiS2、Li2S−Si2S、Li2S−B2S3、Li2S−GeS2、LiI−Li2S−P2S5、LiI−Li2S−SiS2−P2S5、Li2S−SiS2−Li4SiO4、Li2S−SiS2−Li3PO4、Li3PS4−Li4GeS4、Li3.4P0.6Si0.4S4、Li3.25P0.25Ge0.76S4、Li4−xGe1−xPxS4等を例示することができる。
酸化物系固体電解質としては、例えば、リン酸リチウムオキシナイトライド[LiPON]、Li1.3Al0.3Ti0.7(PO4)3、La0.51Li0.34TiO0.74、Li3PO4、Li2SiO2、Li2SiO4等を例示することができる。
空気極は、少なくとも導電性材料を含む空気極層を有するものである。空気極層では、供給された酸素(活物質)と金属イオンとの反応(金属酸化物や金属水酸化物の生成、分解等)が起こる。
空気極層における導電性材料の含有量としては、例えば、空気極層全体の質量を100質量%としたとき、10〜99質量%、中でも50〜95質量%であることが好ましい。
触媒としては、例えば、コバルトフタロシアニン、マンガンフタロシアニン、ニッケルフタロシアニン、スズフタロシアニンオキサイド、チタンフタロシアニン、ジリチウムフタロシアニン等のフタロシアニン系化合物;コバルトナフトシアニン等のナフトシアニン系化合物;鉄ポルフィリン等のポリフィリン系化合物;MnO2、La0.8Sr0.2CoO3、CeO2、Co3O4、NiO、V2O5、Fe2O3、ZnO、CuO、LiMnO2、Li2MnO3、LiMn2O4、Li4Ti5O12、Li2TiO3、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、LiNiO2、LiVO3、Li5FeO4、LiFeO2、LiCrO2、LiCoO2、LiCuO2、LiZnO2、Li2MoO4、LiNbO3、LiTaO3、Li2WO4、Li2ZrO3、NaMnO2、CaMnO3、CaFeO3、MgTiO3、KMnO2等の金属酸化物;Au、Pt、Ag等の貴金属;これらの複合物等が挙げられる。
空気極層における触媒の含有量は、例えば、空気極層全体の質量を100質量%としたとき、0〜90質量%、中でも1〜90質量%であることが好ましい。
空気極層における結着剤の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、空気極層全体の質量を100質量%としたとき、1〜40質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることが特に好ましい。
空気極層の厚さは、金属空気電池の用途等により異なるものであるが、例えば2〜500μmの範囲内、特に30〜300μmの範囲内であることが好ましい。
空気極集電体の厚さは、特に限定されないが、例えば、10〜1000μm、特に20〜400μmであることが好ましい。また、後述する電池ケースが空気極集電体としての機能を兼ね備えていてもよい。
負極は、少なくとも負極活物質を含有する負極層を有するものである。負極層では、通常、空気極での反応に対応して金属イオンの放出、必要に応じて吸蔵(二次電池の場合)が行われる。
前記金属イオンとしては、空気極と負極との間を移動し、起電力を生じさせるものであれば特に限定されるものではないが、具体的にはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アルミニウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、鉄イオン等を挙げることができる。
リチウム空気電池の負極活物質としては、一般的なリチウムイオン電池に用いられる負極活物質と同様のものを用いることができる。具体的には、金属リチウム、リチウムアルミニウム合金、リチウムスズ合金、リチウム鉛合金、リチウムケイ素合金等のリチウム合金、リチウムチタン酸化物等のリチウム含有金属酸化物、リチウムコバルト窒化物、リチウム鉄窒化物、リチウムマンガン窒化物等のリチウム含有金属窒化物等を挙げることができる。
本発明の金属空気電池は、通常、空気極、負極及び電解質層等を収納する電池ケースを有する。電池ケースの形状としては、例えば、コイン型、平板型、円筒型、ラミネート型等を挙げることができる。電池ケースは、大気開放型であっても、密閉型であってもよい。大気開放型の電池ケースは、外部から酸素を取り込むための孔を有し、少なくとも空気極層が十分に大気と接触可能な構造を有する。酸素取り込み孔には、酸素透過膜、撥水膜等を設けてもよい。密閉型の電池ケースは、酸素(空気)の導入管及び排気管を有していてもよい。
空気極に供給される酸素含有ガスとしては、空気、乾燥空気、純酸素等が挙げられ、乾燥空気、純酸素であることが好ましく、純酸素であることが特に好ましい。特に金属空気電池が二次電池の場合には、乾燥空気や純酸素を用いることによって、長期間にわたって電池の容量を維持することが可能になる。
空気極集電体及び負極集電体は、それぞれ、外部との接続部となる端子を有していてもよい。
まず、導電性材料としてケッチェンブラック(KetjenBlack International製、ECP600JD)を、結着剤としてPTFE(ダイキン工業株式会社製)をそれぞれ用意した。これらの材料を、ケッチェンブラックとPTFEの比率が、ケッチェンブラック:PTFE=90質量%:10質量%となるように混合した。得られた混合物を、ロールプレスにより圧延した後、乾燥させることによって、空気極層を作製した。
空気極集電体として、SUS304製100メッシュ(株式会社ニラコ製)を用意した。
セパレータとして、電解液との接触角が43.7度のポリエチレン製多孔質体と、電解液との接触角が71.3度のポリプロピレン製多孔質体との積層体を用意した。セパレータにおいて、ポリエチレン製多孔質体と、ポリプロピレン製多孔質体は、同じ膜厚(40μm)を有していた。セパレータに電解液を含浸させ、電解質層を作製した。
尚、セパレータ(多孔質体)表面と電解液との接触角は、液滴法により、セパレータ表面の数カ所に電解液を滴下し、測定された値の平均値を採用した。接触角測定装置としては、自動接触角計DM−301(協和界面科学株式会社製)を用いた。接触角の測定には、上記にて調製した電解液を用いた。
リチウム空気電池は、酸素取り込み孔を有する電池ケース(アルミラミネートフィルム製)内に収容した。このとき、空気極集電体が電池ケースの酸素取り込み孔の内側に配置されるように、リチウム空気電池を収容した。
セパレータとして、電解液との接触角が71.3度のポリプロピレン製多孔質体を2層積層させた積層体を用い、負極側の表面における電解液との接触角と、空気極側の表面における電解液との接触角が等しくなるようにしたこと以外は、実施例1と同様にリチウム空気電池を製造した。尚、2つのポリプロピレン製セパレータは、同じ膜厚(40μm)を有していた。
セパレータとして、電解液との接触角が43.7度のポリエチレン製多孔質体を2層積層させた積層体を用い、負極側の表面における電解液との接触角と、空気極側の表面における電解液との接触角が等しくなるようにしたこと以外は、実施例1と同様にリチウム空気電池を製造した。尚、2つのポリエチレン製セパレータは、同じ膜厚(40μm)を有していた。
電解質層を、電解液との接触角が71.3度のポリプロピレン製多孔質体が負極側、電解液との接触角が43.7度のポリエチレン製多孔質体が空気極側となるように配置し、負極側の表面における電解液との接触角が、空気極側の表面における電解液との接触角よりも大きくなるようにしたこと以外は、実施例1と同様にリチウム空気電池を製造した。
実施例1及び比較例1〜3のリチウム空気電池の放電試験を以下の条件にて行った。測定装置として、充放電測定装置(株式会社ナガノ製、BTS2004)を用いた。
・放電電流密度:0.3mA/cm2
・雰囲気ガス:純酸素(99.9%、太陽日酸株式会社製)
・雰囲気温度及び電池内圧力:60℃、101325Pa(1気圧)
尚、リチウム空気電池は、測定開始前に60℃の恒温槽にて3時間静置しておいた。放電試験結果を図3に示す。
比較例1では、セパレータとして、電解液との接触角が71.3度のポリプロピレン製多孔質体を2層積層させた積層体を用いたため、セパレータの表面は、電解液との濡れ性が低く、電解液を弾き易い。
そのため、セパレータは、空気極には、電解液を供給することができたものの、セパレータの負極側の領域では電解液の保持力が低いために、電解液の液枯れが生じたと考えられる。その結果、負極から空気極への電解液を介するリチウムイオンの移動性が低下し、電池の放電容量が極めて低くなったと考えられる。
そのため、セパレータ内に電解液が保持され、セパレータの負極側領域での液枯れは抑制することができたものの、空気極への電解液の供給が十分に行われずに、空気極を十分に濡らすことができなかったと考えられる。その結果、負極から空気極への電解液を介するリチウムイオンの移動が円滑に行われず、電池の放電容量が低くなったと考えられる。
そのため、セパレータの空気極側領域が電解液を保持し、空気極への電解液の供給が十分に行われずに、空気極を十分に濡らすことができなかったものの、空気極への電解液の過剰供給が抑制されたため、セパレータの負極側領域では液枯れが抑制されたと考えられる。その結果、負極から空気極への電解液を介するリチウムイオンの移動が円滑に行われず、電池の放電容量が低くなったと考えられる。
そのため、セパレータの負極側領域は電解液が保持された状態を維持しつつ、セパレータから空気極への電解液の供給が十分に行われ、空気極が電解液で十分に濡れたと考えられる。その結果、空気極と負極との間で、電解液を介する金属イオンの移動が円滑に行われ、電池の放電容量を高くすることができたと考えられる。
2 空気極層
3 負極層
4 空気極集電体
5 負極集電体
6 空気極
7 負極
8 セパレータ
8a 第1の多孔質体
8b 第2の多孔質体
9 電池ケース
10 酸素取り込み孔
20 金属空気電池
31 液滴
32 固体表面
33 接線
34 直線
35 端点
36 頂点
Claims (2)
- 空気極と、負極と、前記空気極及び前記負極との間に配置される電解質層とを備え、
前記電解質層が、多孔質構造を有するセパレータと、該セパレータ内に含浸された電解液とを有し、
前記セパレータは、前記負極側の表面における前記電解液との接触角が30〜50度の範囲内であり、前記空気極側の表面における前記電解液との接触角が60〜80度の範囲内であることを特徴とする金属空気電池。 - 前記セパレータは、前記電解液との接触角が異なる2層以上の多孔質層が積層された積層体であり、前記接触角が30〜50度の範囲内である前記多孔質層が前記負極側の表面に配置され、前記接触角が60〜80度の範囲内である前記多孔質層が前記空気極側の表面に配置された構造を有する、請求項1に記載の金属空気電池。
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