JP2013161608A - 電解液および当該電解液を用いた金属空気電池 - Google Patents

電解液および当該電解液を用いた金属空気電池 Download PDF

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Abstract

【課題】出力特性を向上することができる金属空気電池用電解液を提供することを目的とする。
【解決手段】金属空気電池に使用される電解液であって、電解液の溶媒として少なくともグライムと、電解液の溶質として少なくともアルカリ金属塩と、を含むことを特徴とする金属空気電池用電解液を提供することにより、上記課題を解決する。
【選択図】図1

Description

本発明は、金属空気電池等に使用される電解液に関する。
近年携帯用電子機器の小型化は急速に進んでおり、その電源も高エネルギー密度化が要求されている。正極活物質に空気中の酸素を用いる空気電池は、現在、広く使用されているリチウム二次電池と比較して高容量で、次世代電源として有望である。空気電池としては、例えば、リチウム空気電池、マグネシウム空気電池、亜鉛空気電池等の金属空気電池が知られている。
従来から、金属空気電池の電解液に着目し、金属空気電池の性能を向上させる試みがなされている。例えば、特許文献1では、空気極と、負極と、空気極を浸漬する空気極側電解液と、負極を浸漬する負極側電解液と、空気極側電解液及び負極側電解液が混合しないように配置された固体電解質層を有し、空気極に対して電解液および空気の界面である浸漬面が相対的に移動するように形成されていることを特徴とする金属空気電池において、揮発性の低い疎水性イオン性液体を空気極側電解液として用いることにより、電解液量の経時的減少を少なくし、浸漬面の移動を制御し易くし、空気極にアルカリ金属イオンおよび酸素の両者を安定的に必要量供給することを可能にし、放電反応の反応速度を向上させることで、金属空気電池の性能を向上させている。
特開2011−003313号公報
しかしながら、疎水性イオン性液体を電解液として用いた金属空気電池は、疎水性イオン性液体の粘度が高いため、酸素供給性が十分でなく出力が低いという金属空気電池特有の問題がある。また、前記金属空気電池は、放電生成物を分解しにくいため、クーロン効率が低いという問題がある。
本発明は、上記実情を鑑み成し遂げられたものであり、電池の出力特性の向上効果が得られる金属空気電池用電解液を提供することを目的とし、さらに好ましくは出力特性の向上且つクーロン効率の向上の両効果が得られる金属空気電池用電解液を提供することを目的とする。
本発明においては、金属空気電池に使用される電解液であって、電解液の溶媒として少なくともグライムと、電解液の溶質として少なくともアルカリ金属塩と、を含むことを特徴とする金属空気電池用電解液を提供する。
本発明においては、前記グライムに対する前記アルカリ金属塩の混合比が、モル換算で0.25〜1.5であることが好ましい。
本発明においては、前記グライムが下記式(1)で表される少なくとも一種であることが好ましい。
R−(OCHCH−OR 式(1)
ここで、Rは、炭素数1〜9のハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいシクロヘキシル基のいずれかであり、xは1〜5である。
本発明においては、前記アルカリ金属塩がリチウム塩であることが好ましい。
本発明においては、前記金属空気電池がリチウム空気電池であることが好ましい。
本発明においては、空気極、負極、及び、前記電解液を含む金属空気電池を提供する。
本発明によれば、金属空気電池の出力特性を向上することができる電解液を提供することができる。
また、本発明の好ましい実施形態においては、金属空気電池の出力特性を向上し、それと同時に、金属空気電池のクーロン効率を向上することができる電解液を提供することができる。
I−V特性の測定結果を示す図である。 サイクリックボルタンメトリーの測定結果を示す図である。 放電生成物の分解効率の測定結果を示す図である。
本発明は、金属空気電池に使用される電解液であって、電解液の溶媒として少なくともグライムと、電解液の溶質として少なくともアルカリ金属塩と、を含むことを特徴とする金属空気電池用電解液を提供する。
以下、本発明の構成及び実施態様について詳しく説明する。なお本発明は、図面及び実施例などにより詳しく説明されるが、本発明はこれら図面及び実施例に限定されない。
本発明者は、電解液の溶媒としてグライムと電解液の溶質としてアルカリ金属塩を金属空気電池用電解液として用いることで、酸素供給性の向上による出力特性の向上効果が得られること、また、グライムとアルカリ金属塩の混合比を調節することで、出力特性の向上効果に加えて、放電生成物の分解効率の向上によるクーロン効率の向上効果が得られることを発見した。
本発明において「放電生成物の分解効率」は、サイクリックボルタンメトリー測定における初回の電位走査時に得られるサイクリックボルタモグラムから、下記式(2)により求めることが可能である。
放電生成物の分解効率(%)={(正方向電位走査時の酸化電気量)/(負方向電位走査時の還元電気量)}×100 式(2)
(上記式(2)中、「正方向電位走査時の酸化電気量」とは、初回の電位走査時における、電極電位を正方向に電位走査した時に得られるサイクリックボルタモグラムの酸化波の面積値を、「負方向電位走査時の還元電気量」とは、初回の電位走査時における、電極電位を負方向に電位走査した時に得られるサイクリックボルタモグラムの還元波の面積値を、それぞれ示す。)
なお、本発明における「クーロン効率」とは、充電容量に対する放電容量の割合のことをいう。
本発明の電解液の溶媒であるグライムは、アルカリ金属イオンと強く配位することでカチオンとして存在するためイオン性液体として機能する。イオン性液体は、揮発性が低いため、電解液量の経時的減少を少なくすることができる。
また、グライムとアルカリ金属塩とを混合することにより、グライムのエーテル構造の酸素部分がアルカリ金属イオンに配位し、電解液中の少なくとも一部に錯体が形成されると考えられる。この錯体形成によりアルカリ金属イオンと酸素分子が相互作用することにより、酸素供給性が向上したと考えられる。
さらに、溶媒にグライムを用いることにより、グライムのエーテル構造の酸素部分が放電生成物と配位することで、放電生成物のイオン結合を弱めることができる。その結果、放電生成物を分解しやすくなり、クーロン効率が向上したと考えられる。
なお、電解液中の錯体形成は、必ずしも、アルカリ金属イオンとグライムが1:1で特定の構造をとって他から遊離しているというように明確な形態が決まるものではないと推測される。グライムのエーテル部分とアルカリ金属イオンとが相互に弱い結合を保ちながら、1:1の錯体のような形態を含みつつ、全体が何らかの錯構造を形成し、まとまりをなしていると思われる。そして、このような全体のまとまりが本発明の効果に寄与していると考えられる。
また、グライムは低コストであるため、電池の低コスト化が容易である。
以下、本発明の電解液の材料について説明する。
(電解液の溶媒)
本発明の電解液は、溶媒として少なくともグライムを使用する。グライムは、直鎖状のグリコールジエーテルの総称である。グライムは分子内に極性があり、電池に使用されるアルカリ金属塩を溶解させるのに適している。
本発明の電解液に用いられるグライムは、下記式(1)で示される少なくとも一種が好ましい。グライムは、一種が単独で使用されても、二種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
R−(OCHCH−OR 式(1)
ここで、Rは、炭素数1〜9のハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基、およびハロゲン原子で置換されていてもよいシクロヘキシル基のいずれかであり、xは1〜5である。
上記式中のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等が挙げられる。これらのアルキル基は、任意の位置がハロゲン原子で置換されていてもよい。アルキル基の数が9を超えると、グライムの極性が弱くなるため、アルカリ金属塩の溶解性が低下する傾向がある。そのため、アルキル基の炭素数は少ない方が好ましく、好ましくはメチル基およびエチル基であり、最も好ましくはメチル基である。
ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基としては、特に限定されないが、2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2−ブロモフェニル基、3−ブロモフェニル基、4−ブロモフェニル基、2,4−ジブロモフェニル基、2−ヨードフェニル基、3−ヨードフェニル基、4−ヨードフェニル基、2,4−ヨードフェニル基等が挙げられる。
ハロゲン原子で置換されていてもよいシクロヘキシル基としては、特に限定されないが、2−クロロシクロヘキシル基、3−クロロシクロヘキシル基、4−クロロシクロヘキシル基、2,4−ジクロロシクロヘキシル基、2−ブロモシクロヘキシル基、3−ブロモシクロヘキシル基、4−ブロモシクロヘキシル基、2,4−ジブロモシクロヘキシル基、2−ヨードシクロヘキシル基、3−ヨードシクロヘキシル基、4−ヨードシクロヘキシル基、2,4−ジヨードシクロヘキシル基等が挙げられる。
エチレンオキシド単位の繰り返し数を表わすxについては、1〜5が好ましく、2〜5がより好ましく、4が特に好ましい。
(電解液の溶質)
本発明の電解液の溶質として使用するアルカリ金属塩は、MXで表わすことができ、Mはアルカリ金属、Xは対の陰イオンとなる物質である。アルカリ金属としては特に限定されず、通常の電池に支持塩や活物質として使用されているアルカリ金属がいずれも使用可能である。具体的には、Li、Na、K、RbおよびCsが挙げられる。より好ましくは、Li、NaおよびKであり、汎用性の点からLiが特に好ましい。
対の陰イオンであるXとしては、特に限定されないが、Cl、Br、I、BF、PF、PF(C、CFSO、CSO、ClO、CFCO、AsF、SbF、AlCl、N(CFSO、およびN(CSO等が挙げられる。好ましくはBF、PF、ClO、N(CFSO、およびN(CSOであり、N(CFSOが特に好ましい。上記アルカリ金属塩は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を混合物の形態で使用してもよい。
リチウム空気電池の場合、リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCl、等の無機リチウム塩が挙げられる。また、CHCOLi、リチウムビスオキサレートボレート(略称 LiBOB)、LiN(CFSO(略称 LiTFSA)、LiN(CSO(略称 LiBETA)等の有機リチウム塩を用いることもでき、LiTFSAが好ましい。
本発明の電解液において、グライムに対するアルカリ金属塩の混合比は、モル換算で0.25〜1.50であることが好ましく、クーロン効率向上の観点から0.75〜1.50であることがより好ましい。混合比が0.25を下回ると空気極上でグライムが酸化分解される恐れがある。一方で混合比が1.5を上回ると、アルカリ金属塩が溶解しきらず、電解液中に析出する可能性がある。
(電解液のグライム以外の溶媒)
本発明の電解液の溶媒は、少なくともグライムを含んでいれば、グライム以外の溶媒との混合溶媒であってもよい。グライム以外の溶媒としては、グライムと均一な混合溶媒を形成可能なものであれば特に限定されるものではなく、一般的な空気電池の電解液に用いられる非水溶媒と同様のものを用いることができる。例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、4−フルオロエチレンカーボネート等のカーボネート類、およびこれらの混合溶媒等が挙げられる。グライム以外の溶媒の種類としては、錯体形成に過度の影響を与えることのないように、グライムよりも極性の低いものを加えることが好ましい。
なお、電解液の溶媒中のグライムの含有量は、溶媒総重量に対して少なくとも30重量%以上含有されていればよく、40重量%以上含有されていることが好ましい。
(電解液の製造方法)
本発明の電解液は、溶媒であるグライムに、溶質であるアルカリ金属塩を混合して溶解させれば調製でき、特に混合方法等は限定されない。混合の際は、水の混入を防ぐために不活性ガス雰囲気下、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等の雰囲気下で混合することが好ましく、アルゴンガス雰囲気下がより好ましい。混合する際の温度は20〜80℃が好ましい。またアルカリ金属塩を溶解させるために、スターラー等を用いて攪拌してもよい。グライムの種類の選定、アルカリ金属塩とグライムの混合比等の条件は上記のとおりである。
以下、本発明の電解液を適用することのできる金属空気電池について説明する。
本発明の電解液を適用することのできる金属空気電池は、少なくとも空気極、負極および本発明の電解液を含むものであれば特に限定されない。
また、本発明の金属空気電池の種類としては、例えばリチウム空気電池、ナトリウム空気電池、カリウム空気電池等を挙げることができ、中でもリチウム空気電池が好ましい。
(空気極)
空気極は、少なくとも導電性材料を含む空気極層を有するものであり、通常、これに加えて空気極集電体、及び当該空気極集電体に接続された空気極リードを有するものである。空気極層では、供給された酸素(活物質)とアルカリ金属イオンが反応し、アルカリ金属酸化物やアルカリ金属水酸化物が生成する。
前記導電性材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば導電性炭素材料等を挙げることができる。導電性炭素材料としては特に限定されないが、金属酸化物や金属水酸化物が生成する反応場の面積や空間の観点から、高比表面積を有する炭素材料が好ましい。
具体的には、導電性炭素材料は10m/g以上、特に100m/g以上、さらに600m/g以上の比表面積を有することが好ましい。ここで、導電性材料の比表面積は、例えばBET法によって測定することができる。導電性材料の添加量は空気極層中に10重量%〜99重量%の範囲であることが好ましい。
高比表面積を有する導電性炭素材料としては、具体的にはカーボンブラック、グラファイト、アセチレンブラック、カーボンナノチューブおよびカーボンファイバー等を挙げることができる。
また、前記導電性材料は、触媒を担持したものであっても良い。
前記触媒としては、例えば、コバルトフタロシアニン、マンガンフタロシアニン、ニッケルフタロシアニン、スズフタロシアニンオキサイド、チタンフタロシアニン、ジリチウムフタロシアニン等のフタロシアニン系化合物;コバルトナフトシアニン等のナフトシアニン系化合物;鉄ポルフィリン等のポリフィリン系化合物;MnO、La0.8Sr0.2CoO、CeO、Co、NiO、V、Fe、ZnO、CuO、LiMnO、LiMnO、LiMn、LiTi12、LiTiO、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNiO、LiVO、LiFeO、LiFeO、LiCrO、LiCoO、LiCuO、LiZnO、LiMoO、LiNbO、LiTaO、LiWO、LiZrO、NaMnO、CaMnO、CaFeO、MgTiO、KMnO等の金属酸化物;Au、Pt、Ag等の貴金属;これらの複合物等が挙げられる。空気極層において、空気極触媒の含有量は、例えば、1重量%〜90重量%の範囲であることが好ましい。
前記空気極層は、導電性材料を固定化する結着剤を含有することが好ましい。前記結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)等を挙げることができる。前記空気極層に含まれる結着剤の含有量としては、特に限定されるものではないが、例えば、1〜40重量%であることが好ましく、特に10〜30重量%であることが好ましい。結着材含有量が、10重量%以上であることによって、空気極層の成形が容易になる。一方、結着材含有量が、30重量%以下であることによって、空気極の反応場を減少させることなく、所望の反応を効率よく進行させることができる。
空気極層の調製方法はスラリー法等が挙げられる。空気極層をスラリー法で調製する場合は、溶媒には沸点200℃以下の溶媒、例えば、アセトン、エタノール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等が挙げられる。スラリーの塗布方法は、ドクターブレード法、インクジェット法等が挙げられる。スラリーを集電体又はキャリアフィルムに塗布した後、乾燥させ、圧延、切断することで、空気極層を成形することができる。集電体として、多孔性金属を用いる場合にはスラリーを塗布することによって、空気極層の一部を集電体に浸透させることができる。また、スラリーを粘土状に調整した電極組成物を乾燥、圧延してフィルム状としたものを集電体に圧着する方法でもよい。空気極層の厚さは、空気電池の用途等により異なるものであるが、例えば2〜500μmの範囲内、特に5〜300μmの範囲内であることが好ましい。
前記空気極集電体としては、リチウム空気電池の動作範囲(2〜4.5V(vsリチウム))で安定して存在でき、所望の電子伝導性を有していれば、多孔質構造を有するものであっても、或いは緻密構造を有するものであってもよいが、空気(酸素)の拡散性の観点から、多孔質構造を有するものが好ましい。多孔質構造としては、例えば、構成繊維が規則正しく配列されたメッシュ構造、構成繊維がランダムに配列された不織布構造、独立孔や連結孔を有する三次元網目構造等が挙げられる。多孔質構造を有する集電体の気孔率は特に限定されないが、例えば、20〜99%の範囲であることが好ましい。
前記空気極集電体の材料としては、例えば、ステンレス、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン、銅等の金属材料、カーボンファイバー、カーボンペーパー等のカーボン材料、窒化チタン等の高電子伝導性セラミックス材料等が挙げられる。好ましい具体的な空気極集電体としては、カーボンペーパー、金属メッシュが挙げられ、メッシュ状のステンレスが特に好ましい。空気極集電体の厚さは、セルの拘束時に集電体自体が湾曲しない厚みであれば特に限定されないが、例えば、10〜1000μm、特に20〜400μmであることが好ましい。
(負極)
負極は、少なくともアルカリ金属元素を有する負極活物質を含有する負極層を有するものであり、通常、これに加えて負極集電体、及び当該負極集電体に接続された負極リードを有するものである。負極層では、空気極での反応に対応してアルカリ金属イオンの吸蔵・放出が行われる。
前記負極活物質としては、アルカリ金属イオンを吸蔵・放出することができるものであれば特に限定されるものではない。前記アルカリ金属イオンとしては、空気極と負極との間を移動し、起電力を生じさせるものであれば特に限定されるものではないが、具体的にはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン等を挙げることができ、中でもリチウムイオンが好ましい。
負極活物質としては、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウム等の金属単体又は、これらの金属を含有する合金材料、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、アルカリ金属イオンを吸蔵・放出する炭素物質等を例示することができ、中でも高容量化の観点から金属リチウムが好ましい。
本発明において、前記負極層は、少なくとも負極活物質を含有していれば良いが、必要に応じて、負極活物質を固定化する結着剤を含有していても良い。結着剤の種類、使用量等については、上述した空気極に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
前記負極集電体の材料としては、リチウム空気電池の動作範囲(2〜4.5V(vsリチウム))で安定して存在でき、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ステンレス、ニッケル、銅等を挙げることができる。前記負極集電体の形状としては、例えば箔状、板状およびメッシュ状等を挙げることができる。好ましい具体的な負極集電体としては、ステンレス、ニッケルが挙げられ、箔状のステンレスが特に好ましい。負極集電体の厚さは、セルの拘束時に集電体自体が湾曲しない厚みであれば特に限定されないが、例えば、10〜1000μm、特に20〜400μmであることが好ましい。
(セパレータ)
本発明の金属空気電池は、空気極と負極の間にセパレータを備えていてもよい。セパレータとしては、空気極と負極とを電気的に分離する機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等の多孔膜;アクリル樹脂等の樹脂不織布、ガラス繊維不織布、ポリプロピレン製不織布等の不織布;およびリチウムポリマー電池に使用されているポリマー材料等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、複合して用いてもよい。
(外装体)
本発明の金属空気電池は、通常、空気極、負極および電解液を収納する外装体を有する。外装体の形状としては、酸素取り込み孔があれば特に限定されないが、具体的にはコイン型、平板型、円筒型、ラミネート型等を挙げることができる。なお、外装体は、必要があれば、酸素透過膜、撥水膜を搭載していてもよい。
また、外装体は、大気開放型であってもよく、密閉型であってもよい。大気開放型の場合、少なくとも空気極が十分に大気と接触可能な構造を有する外装体である。一方、密閉型の場合、密閉型外装体に、空気供給管及び排出管を設けることが好ましい。この場合、供給・排出する気体は酸素濃度が高いことが好ましく、乾燥空気であってもよいが、純酸素であることがより好ましい。
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
本実施例においては、下記材料を用いてリチウム空気電池を作成した。
外装体はF型セル(北斗電工製)を用いた。
雰囲気ガスには純酸素(太陽日酸製、99.9%)を用いた。
空気極は、ケッチェンブラック(登録商標)ECP600JD(ケッチェンブラック・インターナショナル製):PTFEバインダー(ダイキン工業製)=90:10(重量比)で混合して、ロールプレスにより圧延、乾燥して得た。
負極には金属リチウム(本城金属製)を用いた。
電解液には、溶媒であるテトラエチレングリコールジメチルエーテル(G4)に溶質であるLiTFSA(キシダ化学製)をモル比1:1の割合で溶解させた非水電解液を用いた。
セパレータにはポリプロピレン製不織布を用いた。
集電体には、空気極側にSUS304製100メッシュ(ニラコ製)、負極側にSUS304箔(ニラコ製)を用いた。
F型セルに負極集電体および負極を設置し、セパレータを負極の上に設置し、調製した電解液をF型セルに注入し、セパレータの上に空気極および空気極集電体を設置した。そして、F型セルのガス溜めにSUS中空パイプを用いて純酸素を導入してリチウム空気電池を得た。
(実施例2)
電解液のG4とLiTFSAの混合モル比を2:3に変えたこと以外は実施例1と同様にしてリチウム空気電池を得た。
(実施例3)
電解液のG4とLiTFAの混合モル比を4:3に変えたこと以外は実施例1と同様にしてリチウム空気電池を得た。
(実施例4)
電解液のG4とLiTFAの混合モル比を2:1に変えたこと以外は実施例1と同様にしてリチウム空気電池を得た。
(実施例5)
電解液のG4とLiTFAの混合モル比を4:1に変えたこと以外は実施例1と同様にしてリチウム空気電池を得た。
(比較例1)
電解液の溶媒としてN,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(DEMETFSA:関東化学製)を用いて、溶質であるLiTFSAを0.35mol/kg溶解させたイオン性液体を電解液として使用したこと以外は実施例1と同様にしてリチウム空気電池を得た。
(I−V特性評価)
電流−電圧(I−V)特性評価を行うために、下記条件にてI−V測定を実施した。
充放電I−V測定装置として、マルチチャンネルポテンショスタット/ガルバノスタット VMP3(Bio−Logic社製)を用いた。
電流印加時間/レスト時間は、30分/0.1秒で行った。
雰囲気温度は、60℃(試験開始前に恒温槽にて3時間静置)、セル内圧力は、酸素1気圧で行った。実施例1、実施例5および比較例1における電流密度に対する電圧の測定結果を図1に示した。
(電気化学測定)
下記条件にて電気化学測定を実施した。
測定方法はサイクリックボルタンメトリー(−1.7〜1.3Vv.s.Ag/Ag)を採用した。
測定セルとしては、作用電極にグラッシーカーボン(径3mm)、参照電極にAg/Ag、対極にNiを用いた。
測定装置としては、ポテンショスタット/ガルバノスタット(Solartron社製)を用いた。
測定は、温度25℃(測定開始前に恒温槽にて3時間静置)、酸素置換30minの雰囲気条件で行った。
代表例として、実施例1と比較例1におけるサイクリックボルタンメトリーの測定で得られたサイクリックボルタモグラムを図2に示した。
(放電生成物の分解効率)
サイクリックボルタンメトリーの測定で得られたサイクリックボルタモグラムから、初回の電位走査時における、電極電位を負方向に−0.5から−1.5Vまで電位走査して得られた還元波の面積値を還元電気量とし、電極電位を正方向に−0.5から0.8Vまで電位走査して得られた酸化波の面積値を酸化電気量として、上記式(2)を用いて実施例1〜5及び比較例1における放電生成物の分解効率を求めた。
実施例1〜5及び比較例1における、電解液の溶媒と溶質のモル比に対する放電生成物の分解効率の結果を図3に示した。
(測定結果)
図1のI−V測定結果に示すように、実施例1、実施例5と比較例1を比較すると、実施例1および実施例5の方が、比較例1よりも電圧を一定にした時の電流密度が高いことから酸素供給性が向上していることがわかる。
よって、G4とLiTFSAを電解液として用いることで、酸素供給性が向上しているため、リチウム空気電池の出力特性を向上することができることがわかる。
また、実施例1および実施例5の方が、比較例1よりも電流密度が高くなっても電圧の低下が少ないことから、イオン伝導性が向上していることもわかる。
図2に示すように、実施例1は、比較例1よりも酸化波が大きいことから、実施例1の方が比較例1よりも酸化電気量が大きいことがわかる。なお、図2において、酸化波は右上にピーク、還元波は左下にピークを示すものである。
図3に示すように、放電生成物の分解効率は実施例1が61%、実施例2が68%、実施例3が67%、実施例4が57%、実施例5が54%、比較例1が54%であることから、G4とLiTFSAのモル比が0.25〜1.5の範囲内であればリチウム空気電池の放電生成物の分解効率を向上することができることがわかる。

Claims (6)

  1. 金属空気電池に使用される電解液であって、電解液の溶媒として少なくともグライムと、電解液の溶質として少なくともアルカリ金属塩と、を含むことを特徴とする金属空気電池用電解液。
  2. 前記グライムに対する前記アルカリ金属塩の混合比が、モル換算で0.25〜1.5である、請求項1に記載の電解液。
  3. 前記グライムが下記式(1)で表される少なくとも一種である請求項1又は2に記載の電解液。
    R−(OCHCH−OR 式(1)
    (ここで、Rは、炭素数1〜9のハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいシクロヘキシル基のいずれかであり、xは1〜5である。)
  4. 前記アルカリ金属塩がリチウム塩である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電解液。
  5. 前記金属空気電池がリチウム空気電池である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電解液。
  6. 空気極、負極、及び、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電解液を含む金属空気電池。
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