JP2014093227A - 空気電池用空気極、及び当該空気極を備える空気電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】空気電池に使用される空気極であって、前記空気極は、少なくとも導電性材料、及び無機フッ化物を含有し、前記導電性材料及び前記無機フッ化物の総含有量を100質量%としたとき、前記無機フッ化物の含有割合が11〜22質量%であることを特徴とする、空気電池用空気極。
【選択図】図2
Description
2Li→2Li++2e− (I)
式(I)で生じる電子は、外部回路を経由し、外部の負荷で仕事をした後、空気極に到達する。そして、式(I)で生じたリチウムイオン(Li+)は、負極と空気極に挟持された電解質内を、負極側から空気極側に電気浸透により移動する。
2Li++O2+2e−→Li2O2 (II)
2Li++1/2O2+2e−→Li2O (III)
生じた過酸化リチウム(Li2O2)及び酸化リチウム(Li2O)は、固体として空気極に蓄積される。
充電時においては、負極において上記式(I)の逆反応、空気極において上記式(II)及び(III)の逆反応がそれぞれ進行し、負極において金属リチウムが再生するため、再放電が可能となる。
本発明は、上記実状を鑑みて成し遂げられたものであり、空気電池に使用されることにより従来の空気電池よりも電流密度を高くできる空気極、及び当該空気極を備える空気電池を提供することを目的とする。
本発明の空気電池用空気極は、少なくとも導電性材料、及び無機フッ化物を含有し、前記導電性材料及び前記無機フッ化物の総含有量を100質量%としたとき、前記無機フッ化物の含有割合が11〜22質量%であることを特徴とする。
本発明者は、空気極内に、酸素との分子結合が期待できる無機フッ化物を混合することにより、空気極内の酸素拡散が促進されることを見出した。本発明者は、鋭意努力の結果、特定の含有割合の無機フッ化物を空気極中に配合させることによって、従来の空気電池よりも電流密度を高くできることを見出し、本発明を完成させた。
ところで、特許文献1に記載されているように、従来の空気電池の空気極には、PTFE等のフッ素を含んだ結着剤を用いることが知られている。しかし、上記の酸素拡散の効果を得るために、空気極中の結着剤の含有割合を増やした場合、空気極の密度が高くなって空気極の気孔率が低下する結果、従来の二次電池よりも電池の特性が低下するおそれがある。
そこで、本発明においては、PTFEのような結着性を有する有機フッ化物ではなく、結着性を有しない無機フッ化物を空気極に混合することにより、空気極内の気孔率を保ちつつも、空気極内の酸素供給及び拡散を促進させることができた。
本発明に好適に使用される空気極層は、少なくとも導電性材料及び無機フッ化物を含有する。空気極層は、さらに、必要に応じて結着剤や触媒を含有していても良い。
導電性材料として炭素材料を用いる場合には、1cc/g以上の高い細孔容積を有する炭素材料が望ましい。
空気極層における導電性材料の含有量としては、例えば、空気極層全体の質量を100質量%としたとき、10〜90質量%、中でも50〜80質量%であることが好ましい。導電性材料の含有量が少なすぎると、反応場が減少し、電池容量の低下が生じる可能性があり、導電性材料の含有量が多すぎると、相対的に触媒の含有量が減り、充分な触媒機能を発揮できない可能性があるからである。
本発明に使用される無機フッ化物は、フッ化アルミニウム(AlF3)、フッ化ケイ素(SiF4)、フッ化鉄(III)(FeF3)、フッ化カルシウム(CaF2)、フッ化マグネシウム(MgF2)、又はフッ化チタン(IV)(TiF4)であることが好ましい。これらの無機フッ化物は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの無機フッ化物の中でも、フッ化アルミニウム(AlF3)を使用することがより好ましい。
導電性材料及び無機フッ化物の総含有量を100質量%としたとき、無機フッ化物の含有割合は、13質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。また、無機フッ化物の当該含有割合は、20質量%以下であることが好ましく、18質量%以下であることがより好ましい。
導電性材料、無機フッ化物、及び結着剤の総含有量を100質量%としたとき、無機フッ化物の含有割合は、12質量%以上であることが好ましく、14質量%以上であることがより好ましい。また、無機フッ化物の当該含有割合は、18質量%以下であることが好ましく、16質量%以下であることがより好ましい。
電極反応がよりスムーズに行われるという観点から、上述した導電性材料に触媒が担持されていてもよい。
空気極層の作製においてスラリーを調製する場合、スラリーの分散媒としては、沸点200℃以下の有機溶媒を用いることが好ましい。有機溶媒の例としては、アセトン、N−メチルピロリドン(NMP)等が挙げられる。
上記空気極層の厚さは、空気電池の用途等により異なるものであるが、例えば2〜500μm、中でも5〜300μmであることが好ましい。
空気極集電体の厚さは、例えば10〜1000μm、中でも20〜400μmであることが好ましい。
本発明の空気電池は、少なくとも空気極、負極、並びに、当該空気極及び当該負極の間に介在する電解質層を備える空気電池であって、前記空気極は上記空気電池用空気極であることを特徴とする。
空気電池100は、空気極層2及び空気極集電体4を備える空気極6、負極活物質層3及び負極集電体5を備える負極7、当該空気極6及び当該負極7に挟持される電解質層1、並びに、当該空気極6、当該負極7、及び当該電解質層1を収納する電池ケース8を備える。なお、図1においては、空気極集電体4が点在しているが、これは空気極集電体4の一部又は全部がメッシュ状であることを示すものである。また、電池ケース8は、空気極集電体4のメッシュ状の部分にほぼ重なるように空気孔を有する。
本発明の空気電池に使用される空気極は、上述した通りである。以下、本発明の空気電池を構成する他の部材である負極及び電解質層、並びに、本発明の空気電池に好適に使用されるセパレータ及び電池ケースについて、詳細に説明する。
リチウム元素を含有する合金としては、例えばリチウムアルミニウム合金、リチウムスズ合金、リチウム鉛合金、リチウムケイ素合金等を挙げることができる。また、リチウム元素を含有する金属酸化物としては、例えばリチウムチタン酸化物等を挙げることができる。また、リチウム元素を含有する金属窒化物としては、例えばリチウムコバルト窒化物、リチウム鉄窒化物、リチウムマンガン窒化物等を挙げることができる。また、負極活物質層には、固体電解質をコートしたリチウムを用いることもできる。
電解質層には、電解液、ゲル電解質、及び固体電解質等を用いることができる。これらは、1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
非水系電解液の種類は、伝導する金属イオンの種類に応じて、適宜選択することが好ましい。例えば、リチウム空気電池に用いる非水系電解液としては、通常、リチウム塩及び非水溶媒を含有したものを用いる。上記リチウム塩としては、例えばLiPF6、LiBF4、LiClO4及びLiAsF6等の無機リチウム塩;LiCF3SO3、LiN(SO2CF3)2(Li−TFSA)、LiN(SO2C2F5)2及びLiC(SO2CF3)3等の有機リチウム塩等を挙げることができる。上記非水溶媒としては、例えばエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチルカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、スルホラン、アセトニトリル(AcN)、ジメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,3−ジメトキシプロパン、ジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びこれらの混合物等を挙げることができる。非水系電解液におけるリチウム塩の濃度は、例えば0.5〜3mol/Lである。
上記非水溶媒のうち、上記式(II)又は(III)で表される酸素還元反応を進行させるために、酸素ラジカルに安定な電解液溶媒を用いることがより好ましい。このような非水溶媒の例としては、アセトニトリル(AcN)、1,2−ジメトキシエタン(DME)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−N−プロピルピペリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(PP13TFSA)、N−メチル−N−プロピルピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(P13TFSA)、N−ブチル−N−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(P14TFSA)等が挙げられる。これらの非水溶媒は、その高い酸素ラジカル耐性により、目的とする酸素還元反応以外の副反応を抑制することができる。
硫化物系固体電解質としては、具体的には、Li2S−P2S5、Li2S−P2S3、Li2S−P2S3−P2S5、Li2S−SiS2、Li2S−Si2S、Li2S−B2S3、Li2S−GeS2、LiI−Li2S−P2S5、LiI−Li2S−SiS2−P2S5、Li2S−SiS2−Li4SiO4、Li2S−SiS2−Li3PO4、Li3PS4−Li4GeS4、Li3.4P0.6Si0.4S4、Li3.25P0.25Ge0.76S4、Li4−xGe1−xPxS4等を例示することができる。
酸化物系固体電解質としては、具体的には、LiPON(リン酸リチウムオキシナイトライド)、Li1.3Al0.3Ti0.7(PO4)3、La0.51Li0.34TiO0.74、Li3PO4、Li2SiO2、Li2SiO4等を例示することができる。
ポリマー電解質は、伝導する金属イオンの種類に応じて、適宜選択することが好ましい。例えば、リチウム空気電池のポリマー電解質は、通常、リチウム塩及びポリマーを含有する。リチウム塩としては、上述した無機リチウム塩及び有機リチウム塩の少なくともいずれか1つを使用できる。ポリマーとしては、リチウム塩と錯体を形成するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。
セパレータに使用できるこれらの材料は、上述した電解液を含浸させることにより、電解液の支持材として使用することもできる。
電池ケース内には、電池ケースの構造に応じて、酸素透過膜や、撥水膜を設けてもよい。
[実施例1]
まず、導電性材料としてケッチェンブラック(LION製、ECP600JD)を、無機フッ化物としてフッ化アルミニウム(AlF3)(和光純薬工業株式会社製)を、結着剤としてPTFE(ダイキン工業株式会社製)を、それぞれ用意した。これらの材料を、ケッチェンブラック:AlF3=89質量%:11質量%の含有比、且つ、ケッチェンブラック:AlF3:PTFE=80質量%:10質量%:10質量%の含有比となるように混合し、ロールプレスにより圧延し、乾燥させて、空気極層を作製した。
空気極集電体として、SUS304製100メッシュ(株式会社ニラコ製)を用意した。
N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(関東化学株式会社製、DEMETFSA)に、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(キシダ化学株式会社製)を0.32mol/kgの濃度となるように溶解させ、電解液とした。ポリオレフィン製セパレータに当該電解液を浸漬させたものを電解質層とした。当該電解質層を、気泡が入らないように、上記空気極と負極によって、重力方向略下側から、負極集電体、リチウム金属、電解質層、空気極層、及び空気極集電体の順となるように挟持し、実施例1のリチウム空気電池を製造した。以上の工程は、全て窒素雰囲気下のグローブボックス内で行った。
実施例1のリチウム空気電池は、電気化学セル内に配置した。実施例1のリチウム空気電池内に純酸素(大陽日酸株式会社製、純度:99.9%)を導入した。
実施例1において、空気極層中の材料の含有比を、ケッチェンブラック:AlF3=78質量%:22質量%の含有比、且つ、ケッチェンブラック:AlF3:PTFE=70質量%:20質量%:10質量%の含有比としたこと以外は、実施例1と同様に空気極層を作製した。
あとは、実施例1と同様に、空気極層、空気極集電体、負極、電解質層を用いて、実施例2のリチウム空気電池を製造した。なお、実施例2のリチウム空気電池には、実施例1のリチウム空気電池と同様の態様により純酸素を導入した。
まず、導電性材料としてケッチェンブラック(LION製、ECP600JD)を、結着剤としてPTFE(ダイキン工業株式会社製)を、それぞれ用意した。これらの材料を、ケッチェンブラック:PTFE=90質量%:10質量%の含有比となるように混合し、ロールプレスにより圧延し、乾燥させて、空気極層を作製した。すなわち、比較例1においては、空気極層の形成に無機フッ化物を使用しなかった。
あとは、実施例1と同様に、空気極層、空気極集電体、負極、電解質層を用いて、比較例1のリチウム空気電池を製造した。なお、比較例1のリチウム空気電池には、実施例1のリチウム空気電池と同様の態様により純酸素を導入した。
実施例1において、空気極層中の材料の含有比を、ケッチェンブラック:AlF3=96.7質量%:3.3質量%の含有比、且つ、ケッチェンブラック:AlF3:PTFE=87質量%:3質量%:10質量%の含有比としたこと以外は、実施例1と同様に空気極層を作製した。
あとは、実施例1と同様に、空気極層、空気極集電体、負極、電解質層を用いて、比較例2のリチウム空気電池を製造した。なお、比較例2のリチウム空気電池には、実施例1のリチウム空気電池と同様の態様により純酸素を導入した。
実施例1において、空気極層中の材料の含有比を、ケッチェンブラック:AlF3=67質量%:33質量%の含有比、且つ、ケッチェンブラック:AlF3:PTFE=60質量%:30質量%:10質量%の含有比としたこと以外は、実施例1と同様に空気極層を作製した。
あとは、実施例1と同様に、空気極層、空気極集電体、負極、電解質層を用いて、比較例3のリチウム空気電池を製造した。なお、比較例3のリチウム空気電池には、実施例1のリチウム空気電池と同様の態様により純酸素を導入した。
実施例1−実施例2及び比較例1−比較例3のリチウム空気電池について、60℃の恒温槽にて3時間静置した後、以下の条件にてIV測定を行い、電流密度を測定した。
試験装置:二次電池充放電試験装置(株式会社ナガノ製、BTS2004HT)
初期印加電流密度:0.01mA/cm2
電流印加時間:15分間
印加電流密度ステップ:0.02mA/cm2
電流印加時の休止時間:0.1秒間
電池内温度:60℃
電池内圧力:1気圧
雰囲気:純酸素
図2から分かるように、無機フッ化物を含まない空気極を用いた比較例1のリチウム空気電池の電流密度は、電圧2.3Vにおいて0.53mA/cm2である。また、空気極中の材料の含有比がケッチェンブラック:AlF3=96.7質量%:3.3質量%である比較例2のリチウム空気電池の電流密度は、電圧2.3Vにおいて0.43mA/cm2である。また、空気極中の材料の含有比がケッチェンブラック:AlF3=67質量%:33質量%である比較例3のリチウム空気電池の電流密度は、電圧2.3Vにおいて0.51mA/cm2である。したがって、比較例1−比較例3のリチウム空気電池の電流密度は、電圧2.3Vにおいて、0.6mA/cm2に満たない。
一方、図2から分かるように、空気極中の材料の含有比がケッチェンブラック:AlF3=89質量%:11質量%である実施例1のリチウム空気電池の電流密度は、電圧2.3Vにおいて0.65mA/cm2である。また、空気極中の材料の含有比がケッチェンブラック:AlF3=78質量%:22質量%である実施例2のリチウム空気電池の電流密度は、電圧2.3Vにおいて0.67mA/cm2である。したがって、実施例1−実施例2のリチウム空気電池の電流密度は、電圧2.3Vにおいて0.6mA/cm2を超える。
また、実施例1−実施例2のリチウム空気電池の電圧2.3Vにおける電流密度は、AlF3の当該含有割合が3.3質量%のリチウム空気電池(比較例2)の電圧2.3Vにおける電流密度よりも、約0.2mA/cm2以上高いことが分かる。
また、実施例1−実施例2のリチウム空気電池の電圧2.3Vにおける電流密度は、AlF3の当該含有割合が33質量%のリチウム空気電池(比較例3)の電圧2.3Vにおける電流密度よりも、約0.1mA/cm2以上高いことが分かる。これは、空気極内の無機フッ化物の含有割合が高すぎると、その背反として導電性材料の含有割合が低くなるため、電池容量の低下が生じたことを示す。
2 空気極層
3 負極活物質層
4 空気極集電体
5 負極集電体
6 空気極
7 負極
8 電池ケース
100 空気電池
Claims (4)
- 空気電池に使用される空気極であって、
前記空気極は、少なくとも導電性材料、及び無機フッ化物を含有し、
前記導電性材料及び前記無機フッ化物の総含有量を100質量%としたとき、前記無機フッ化物の含有割合が11〜22質量%であることを特徴とする、空気電池用空気極。 - 前記空気極は、さらに結着剤を含有し、
前記導電性材料、前記無機フッ化物、及び前記結着剤の総含有量を100質量%としたとき、前記無機フッ化物の含有割合が10〜20質量%である、請求項1に記載の空気電池用空気極。 - 前記無機フッ化物は、フッ化アルミニウム(AlF3)、フッ化ケイ素(SiF4)、フッ化鉄(III)(FeF3)、フッ化カルシウム(CaF2)、フッ化マグネシウム(MgF2)、及びフッ化チタン(IV)(TiF4)からなる群より選ばれる少なくとも1つの無機フッ化物である、請求項1又は2に記載の空気電池用空気極。
- 少なくとも空気極、負極、並びに、当該空気極及び当該負極の間に介在する電解質層を備える空気電池であって、
前記空気極は前記請求項1乃至3のいずれか一項に記載の空気電池用空気極であることを特徴とする、空気電池。
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