JP2016184484A - リチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】充放電サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池用負極、及びリチウムイオン二次電池の提供。【解決手段】ケイ素およびまたはケイ素化合物を含む負極活物質と、導電助剤と、バインダーとを含む負極活物質層24を集電体22上に備えたリチウムイオン二次電池用負極20であって、負極活物質層24は、複数の空隙を有しており、さらに負極活物質層24がナトリウムイオン、カリウムイオンの少なくとも一方を有しているリチウムイオン二次電池用負極20。【選択図】図1

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池に関する。
現在、携帯型電子機器や電力貯蔵用などの電源として、リチウムイオン二次電池が広く利用されている。上記リチウムイオン二次電池は、正極、負極、正極と負極とを絶縁するセパレーター、および正極と負極との間でイオンの移動を可能にするための電解液で主に構成されている。リチウムイオン二次電池は高エネルギー密度であることから、携帯電話やノート型パソコンなどのエレクトロニクス携帯機器の電源として実用化され、広く一般に普及している。近年、携帯型電子機器、通信機器等の著しい発展に伴い、機器の小型化、軽量化の観点から、高エネルギー密度のリチウムイオン二次電池が強く要望されている。さらに、これらの電子機器等の消費電力の増加に伴い、電池の長寿命化も強く要望されている。そのような背景のなか、ケイ素(Si)や酸化ケイ素(SiO)は、現在実用化されている黒鉛材料の理論容量372mAh/gよりも遙かに高い理論容量を示すことから、電池の小型化と高容量化において、近年、最も期待される材料である。
しかし、ケイ素や酸化ケイ素といったケイ素系材料を負極活物質として使用した場合、充放電によるリチウムイオンの挿入と脱離に伴った電極の膨張と収縮の挙動が、黒鉛よりも膨大に大きくなる。したがって、ケイ素系材料を負極活物質に用いたリチウムイオン二次電池では、充電と放電の繰り返しによって、負極活物質層が膨張と収縮を繰り返すため、負極に多大な応力が加わり、負極活物質層にクラックが発生したり、負極活物質層と集電体との間で剥離が生じたりする課題があった。このようなクラックや剥離によって、活物質層が個々に分断されてしまい、その結果、電極内での集電性が低下し、充放電サイクル特性が悪くなる課題があった。
このような課題に対し、負極活物質層において複数の空隙を有する負極が開示されている(例えば特許文献1、特許文献2)。特許文献1では、複数の細孔を有する負極活物質層が、負極活物質および負極バインダーを含み、水銀圧入法によって測定される複数の細孔への水銀の浸入量の変化率が、30nm以上10000nm以下の孔径にピークを示す負極活物質層を有する負極が開示されている。一方、特許文献2では、有機金属錯体または金属単体を有し、さらに5〜40%の空隙を含む負極活物質層を有する負極が開示されている。
しかし、特許文献1および特許文献2に記載の空隙を有した負極をリチウムイオン二次電池に用いた場合、我々の鋭意な検討結果では、充放電サイクル特性が低下する場合があった。さらに前述の充放電サイクルを終えたリチウムイオン二次電池を分解したところ、電解液の枯渇が観察された。
これは、空隙を負極活物質層内に形成させたことによって、電解液に露出する負極活物質層の比表面積が増加し、負極活物質と電解液との副反応によって、電解液の分解が過剰に進行したためであると考えている。
特開2009−252580号公報 特開2011−65812号公報
本発明の目的は、前記事情に鑑みてなされたものであり、充放電サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池用負極、およびリチウムイオン二次電池を提供することにある。
本発明に係るリチウムイオン二次電池用負極は、ケイ素およびまたはケイ素化合物を含む負極活物質と、導電助剤と、バインダーとを含む負極活物質層を集電体上に備えたリチウムイオン二次電池用負極であって、前記負極活物質層は、5μm以上の複数の空隙を有しており、更に前記負極活物質層中にナトリウムイオン、カリウムイオンの少なくとも一方を有していることを特徴とする。
これによれば、負極活物質層中にナトリウムイオン、カリウムイオンの少なくとも一方を有していることで、充電時に生じる負極活物質と電解液との副反応が抑制され、充放電サイクル特性が大きく改善する。これは、副反応において優先的に前記イオンが消費され、電解液の分解が抑制されるためである。
本発明に係るリチウムイオン二次電池用負極はさらに、前記ナトリウムイオンおよび/またはカリウムイオンが、NaOおよび/またはKO換算で、少なくとも0.01wt%以上であることが好ましい。
これによれば、電解液との副反応をより抑制するために好適なナトリウムイオンおよび/またはカリウムイオンの量であり、充放電サイクル特性がさらに改善する。
本発明に係るリチウムイオン二次電池用負極はさらに、前記負極活物質中における前記ナトリウムイオンおよび/またはカリウムイオンが、空隙近傍に局在していることが好ましい。
本発明に係るリチウムイオン二次電池用負極はさらに、前記ナトリウムイオンおよび/またはカリウムイオンが、前記空隙表面から20μm以内に局在していることが好ましい。
これらによれば、前記空隙近傍で生じる電解液の分解が効果的に抑制され、充放電サイクル特性がさらに改善する。
本発明に係るリチウムイオン二次電池は、リチウムイオンを吸蔵および放出する負極と、リチウムイオンを吸蔵および放出する正極と、前記負極と前記正極との間に介在するセパレーターと、電解液とを備えたリチウムイオン二次電池であって、前記負極は、本発明に係るリチウムイオン二次電池用負極であることを特徴とする。
これによれば、充放電サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池用負極、およびリチウムイオン二次電池を提供することができる。
本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の構成を表す断面図である。 本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池用負極の負極活物質層におけるナトリウムイオンおよび/またはカリウムイオンの局在する位置を示した負極の断面図である。 本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池用負極の負極活物質層のSEM写真である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに以下に記載した構成要素は、適宜組み合わせることができる。
(リチウムイオン二次電池)
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100の構成断面図を図1に示す。本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100は、リチウムイオンを吸蔵および放出するリチウムイオン二次電池用負極20と、リチウムイオンを吸蔵および放出するリチウムイオン二次電池用正極10と、前記負極20と前記正極10との間に介在するセパレーター18と、電解質を含む電解液から構成され、前述のセパレーター18は充放電時における正負極間でのリチウムイオンの移動媒体である前述の電解液を保持する。
リチウムイオン二次電池の形状としては、特に制限はなく、例えば、円筒型、角型、コイン型、偏平型、ラミネートフィルム型など、いずれであってもよい。本発明では、ラミネートフィルムを外装体50として用い、以下の実施例では、ラミネートフィルム型電池を作製し評価する。前述のラミネートフィルムとしては、例えば、ポリプロピレン、アルミニウム、ナイロンがこの順に積層されてなる3層構造として構成されているものを用いることができる。
(リチウムイオン二次電池用正極)
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用正極10は、リチウムイオンを電気化学的に挿入および脱離する正極活物質と、導電助剤と、正極バインダーとを含む正極活物質層14を正極集電体12の少なくとも一方の主面に備えて構成されている。
(正極活物質)
本実施形態に係る正極活物質としては、例えば、リチウム酸化物、リチウム硫化物、あるいはリチウムを含む層間化合物等のリチウム含有化合物が好適であり、これらの2種以上を混合して用いてもよい。特に、エネルギー密度を高くするには、一般式LiMOで表されるリチウム複合酸化物、あるいはリチウムを含んだ層間化合物が好ましい。なお、Mは1種類以上の遷移金属が好ましく、具体的には、コバルト(Co)、ニッケル、マンガン(Mn)、鉄、アルミニウム、バナジウム(V)、チタン(Ti)のうちの少なくとも1種が好ましい。xは、電池の充放電状態によって異なり、通常、0.05≦x≦1.10の範囲内の値である。また、他にもスピネル型結晶構造を有するマンガンスピネル(LiMn)や、オリビン型結晶構造を有するリン酸鉄リチウム(LiFePO)なども、高いエネルギー密度を得ることができるので好ましい。
具体的には、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、LiNiCoMn(x+y+z+a=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、0≦a≦1、MはAl、Mg、Nb、Ti、Cu、Zn、Crより選ばれる1種類以上の元素が挙げられる)、リチウムバナジウム化合物(LiV)、オリビン型LiMPO(ただし、Mは、Co、Ni、Mn、Fe、Mg、Nb、Ti、Al、Zrより選ばれる1種類以上の元素、またはVOを示す)、チタン酸リチウム(LiTi12)、LiNiCoAl(0.9<x+y+z<1.1)などが挙げられる。また、これらの材料に限定することはなく、他にもリチウムイオンを電気化学的に挿入および脱離する正極活物質材料であれば、特に制限はされない。
(リチウムイオン二次電池用負極)
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用負極20は、ケイ素およびまたはケイ素化合物を含む負極活物質と、導電助剤と、負極バインダーとを含む負極活物質層24を集電体上に備えたリチウムイオン二次電池用負極20であって、前記負極活物質層24は、複数の空隙を有しており、さらに前記負極活物質層24がナトリウムイオン、カリウムイオンの少なくとも一方を有していることを特徴とする。
(負極活物質)
本実施形態に係る負極活物質としては、例えば、リチウムイオンを電気化学的に挿入および脱離するケイ素、スズ、ゲルマニウムが好ましく、特に高容量であるケイ素が好ましい。ケイ素は単体で用いてもよく、ケイ素化合物、またはケイ素合金を用いてもよく、さらにこれらの2種以上を併用してもよい。
前述のケイ素化合物としては、例えば、酸化ケイ素が挙げられ、SiOと表記される(ただし、Siに対するOの原子比xは、0<x≦2を満たすものとする)。
前述のSiOは、Siの微結晶または非晶質相を含んでいてもよく、この場合、SiとOの原子比は、Siの微結晶または非晶質相のSiを含めた比率となる。すなわち、SiOには、非晶質のSiOマトリックス中に、Si(例えば、微結晶Si)が分散した構造のものが含まれ、この非晶質のSiOと、その中に分散しているSiを合わせて、前記の原子比xが0<x≦2を満足していればよい。例えば、非晶質のSiOマトリックス中に、Siが分散した構造で、SiOとSiのモル比が1:1の化合物の場合、x=1であるので、構造式としてはSiOと表記される。
また、SiOやその他の酸化物(スズまたはゲルマニウムの酸化物)を使用する場合、その表面を炭素で被覆してもよい。これらの酸化物は、導電性が乏しいため、負極活物質として用いる場合、良好な電池特性の確保のために、導電助剤を使用し、負極活物質層内における前述の酸化物と導電助剤との混合・分散を良好にして、優れた導電性を確保する必要がある。そこで、前述の酸化物の表面を炭素で被覆することにより、単に前述の酸化物と炭素材料からなる導電助剤とを混合した場合よりも、負極における導電性が良好に確保される。
さらに前述したケイ素合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン、およびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
さらに前述した負極活物質の他に炭素系の負極活物質を併用してもよく、例えば、結晶質炭素、非晶質炭素、またはこれらを組み合わせて使用してもよい。前述の結晶質炭素としては、例えば、無定形、板状、鱗片状、球形、繊維状などの天然黒鉛、または人造黒鉛が挙げられ、前述の非晶質炭素としては、例えば、ソフトカーボン、ハードカーボン、メソフェーズピッチ炭化物、焼成したコークスなどが挙げられる。
本実施形態に係る負極活物質の粒子径は、特に限定はされないが、例えば、50μm以下の粒子径が好ましく、10μm以下の粒子径がより好ましい。前述の粒子径であれば、負極活物質と負極活物質および負極活物質と集電体とが接する確率が高くなり、負極活物質同士での導電パスならびに負極活物質と集電体とでの集電性が好適と成り得る。また、充放電による負極活物質の見かけ上の体積膨張を小さくすることができ、高エネルギー密度のリチウムイオン二次電池を得ることができる。
さらに、負極活物質の形状については、真球状、略球状、多角形状、鱗片状、板状など、特に限定はされることなく適宜使用することができる。
また、本実施形態に係る負極活物質として、前述に挙げた材料に限定されることはなく、他にもリチウムイオンを電気化学的に挿入および脱離する材料であれば特に制限はされない。
(負極活物質層)

本実施形態に係る負極活物質層24は、平均空隙径が5μm以上の複数の空隙を有している。前記空隙の負極活物質層24における空隙率については、特に限定されるものではないが、30〜70%が好ましい。前述の空隙を有する負極活物質層である場合、充放電によって生じる負極活物層の体積膨張が抑制され、充放電サイクル特性が優れる。ここで、空隙率は下記式にて示される。
・負極活物質層空隙率(%)=(1−負極活物質層密度(g/cm)/負極活物質真密度(g/cm))×100
・負極活物質層密度(g/cm)=負極単位面積当たりの負極活物質重量(g/cm)/負極活物質層厚み(μm)×10−4
さらに本実施形態に係る負極活物質層24は、前述のナトリウムイオンおよび/またはカリウムイオンが、NaOおよび/またはKO換算で、0.01wt%以上を有することが好ましい。これによれば、負極活物質と電解液との副反応においてナトリウムイオンおよび/またはカリウムイオンが消費され、電解液の分解が抑制されることで優れた充放電サイクル特性が得られる。
さらに負極活物質層24における前記ナトリウムイオンおよび/またはカリウムイオンは、NaOおよび/またはKO換算で、0.01〜1wt%であることがより好ましい。これは、ナトリウムイオンおよび/またはカリウムイオンの含有量が前述の範囲となる場合、負極活物質と電解液との副反応によって消費される量に対してより好適な含有量であり、さらに副反応によって負極活物質表面に形成されるSEI(固定電解質層)被膜の厚み、および/または被膜組成が最適となり、より優れた充放電サイクル特性が得られる。
さらに本実施形態に係る負極活物質層24は、空隙近傍にナトリウムイオン、カリウムイオンの少なくとも一方を有することが好ましい。前述のナトリウムイオン、カリウムイオンの少なくとも一方を有することで、充電時に生じる負極活物質と電解液との副反応が抑制される。これは、前述のナトリウムイオンおよび/またはカリウムイオンが、優先的に副反応に消費されることで、電解液の分解が抑制されるためである。これにより優れた充放電サイクル特性が得られる。
さらに前述のナトリウムイオンおよび/またはカリウムイオンは、空隙の表面より20μm以内に局在していることが好ましい。これにより、活性の高い空隙表面と電解液との副反応が前述のナトリウムイオンおよび/またはカリウムイオンによって抑制され、より優れた充放電サイクル特性が得られる。図2に本発明の一実施形態におけるリチウムイオン二次電池用負極の負極活物質層におけるナトリウムイオンおよび/またはカリウムイオンが局在する様子を示した負極の断面図を示す。
前述の空隙の分布については、任意の空隙に対して、その空隙に最も近接する空隙との距離が5μm以上であることが好ましい。これにより、空隙の表面に局在しているナトリウムイオンおよび/またはカリウムイオンが均一に分布し、電解液との副反応がより効果的に抑制され、さらに優れた充放電サイクル特性が得られる。
(リチウムイオン二次電池用負極の製造方法)
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用負極20は以下のようにして製造することができる。
[負極スラリーの調製]
負極活物質と、導電助剤と、負極バインダーと、溶媒と、空隙を形成させるための空隙形成剤とを混合分散させてペースト状の負極スラリーを作製する。
負極バインダーは、溶剤系バインダーや水系バインダーを適宜用いることができる。溶剤系バインダーとしては、例えば、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、などが挙げられ、水系バインダーとしては、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、などが挙げられる。本実施形態では、特に前述の溶剤系バインダーが好適に用いることができる。なお、これらに限定されるものではなく、これらの1種類でもよく、2種類以上を併用することもできる。
溶媒は、負極スラリーに添加した負極バインダーに対して、良溶媒を用いればよい。例えば、前述の溶剤系バインダーであれば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド、クレゾール、などが挙げられる。一方、水系バインダーであれば、イオン交換水、蒸留水、などが挙げられる。
[空隙形成剤]
空隙形成剤は、ナトリウムイオンおよび/またはカリウムイオンを分子構造内に含んでいることが好ましい。例えば、水系の空隙形成剤としては、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩またはカリウム塩、などが挙げられる。一方、溶剤系の空隙形成剤としては、ナトリウムイオンおよび/またはカリウムイオンを分子構造内に含んだポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、などが挙げられる。なお、これらに限定されるものではなく、これらの1種類でもよく、2種類以上を併用することもできる。
さらに前述の空隙形成剤の分子量は、特に限定されるものではなく、低分子量でも高分子量でも構わない。
さらに前述の空隙形成剤の形態は、特に限定されるものではなく、粉末でもよく水溶液およびワニスでもよく、それらを単独または併用して添加することもできる。
[塗布]
本実施形態のリチウムイオン二次電池用負極20は、前述の負極スラリーを例えばコンマロールコーターを用いて、所定の厚みを有する負極活物質層24を銅箔などの負極集電体22の片面または両面に塗布し、乾燥炉内にて溶媒を乾燥させることで作製することができる。なお、前述の負極集電体22の両面に塗布された場合、負極活物質層24となる塗膜の厚みは、両面とも同じ厚さに調製するのが好ましい。さらに前述の負極活物質層24が形成された負極20をロールプレス機などにより、負極活物質層24を負極集電体22の片面または両面に圧着させ、負極集電体22上の負極活物質層24と、負極集電体22との密着性を高めると同時に、所定の密度を有する負極シートとなる。
さらに前述の負極シートは、金型を用いて所定の電極サイズに打ち抜き、本実施形態のリチウムイオン二次電池用の負極20とする。前述の負極20の面積は、正極10の面積と同等以上であることが好ましい。負極20の面積を、対向する正極10の面積と同等以上にすることで、リチウムの析出による内部短絡の発生を防止するためである。
[空隙の形成(洗浄)]
さらに前述のリチウムイオン二次電池用負極20は、空隙形成剤を溶媒中で洗浄して溶出させることで、負極活物質層24に空隙を形成させることができる。例えば、空隙形成剤としてアルギン酸塩を使用した場合では、蒸留水またはイオン交換水の溶媒中に負極20を含浸させることで、前述の空隙形成剤を負極活物質層24から溶出し、これにより負極活物質層24に空隙が形成される。さらに、前述の空隙形成剤が溶出することで、空隙形成剤からナトリウムイオンおよび/またはカリウムイオンが、負極活物質層の空隙近傍に局在する。
さらに前述の洗浄においては、真空中で減圧させながら空隙形成剤を溶媒中に溶出させることができる。これにより、負極活物質層24の内部まで溶媒が浸透し、負極活物質層24内部の空隙形成剤を簡便に溶出させることができる。さらに、溶媒の温度を上げることで、前述の空隙形成剤を溶出しやすくすることもできる。さらには、マグネチックスターラーによって撹拌させて洗浄したり、超音波洗浄機を用いて洗浄したりしてもよい。
さらに本実施形態の洗浄は、空隙形成剤を溶媒中に溶出させる際の洗浄時間、洗浄回数、洗浄の溶媒量、などは限定されるものではなく、適宜変更することができる。
[乾燥(熱処理)]
前述の空隙を形成させた負極20は、真空中または不活性ガスの雰囲気中において前述の負極バインダーの熱分解する温度以下で熱処理することで、残留溶媒の減少および負極バインダーの架橋により、重合度を増加させることができる。これにより、負極活物質同士での密着性および負極活物質層24と負極集電体22との密着性をさらに高めることができる。また、負極集電体22の表面に一定の表面粗さを有していれば、その表面の凹凸部分にバインダーが入り込むことにより、バインダーと負極集電体22の間にアンカー効果が作用し、さらに密着性が向上する。そのため、負極活物質の膨張収縮が生じた場合においても、負極集電体22からの負極活物質層24の剥離を抑制することができる。
(導電助剤)
負極活物質層24および正極活物質層14において、導電性を向上させることを目的として導電助剤を追加で添加してもよい。本実施形態において用いられる導電助剤は特に制限されず、周知の材料を用いることができる。例えば、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(CNT)などの炭素繊維、およびグラファイトなどの炭素材料が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
(集電体)
集電体は、導電性材料から構成され、その一方の主面または両面に活物質層が配置される。本実施形態のリチウムイオン二次電池として、集電体を構成する材料は特に限定するものではないが、負極20に用いられる負極集電体22としては、銅、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、またはこれらの合金箔を用いることができる。特に銅、銅合金、ステンレス鋼が好ましく、コストの面からは電解銅箔および圧延銅箔によって製造された銅箔を好適に用いることができる。強度の面からは、ステンレス鋼や銅合金の圧延箔が好適に用いることができる。正極10に用いられる正極集電体12としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、またはこれらの合金箔を用いることができ、特に正極集電体12としては、アルミニウム箔が好ましい。
(セパレーター)
セパレーター18は、負極20と正極10との間に配置され、両極の接触による電流の短絡を防止し、さらに電解質塩を含んだ電解液が含浸されていることにより、リチウムイオンを通過させるものである。このセパレーター18は、例えば微少な孔を多数有する多孔性膜を備えるものであって、前述のセパレーター18の具体的な材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系多孔フィルム、ポリイミド、ポリアミドイミドなどの高耐熱多孔膜、前述のポリオレフィン系多孔膜と高耐熱多孔膜との複合膜、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミドなどの不織布などが挙げられる。またセパレーター18は、例えばその厚みが5μm以上、50μm以下の範囲であると共に、その全体積中における空隙体積の比率を表す空孔率が20%以上、60%以下の範囲であるものが好ましい。
(電解液)
電解液は、前述したようにセパレーター18に含浸されており、例えば、溶媒とこの溶媒に溶解された電解質塩とを含んでおり、必要に応じて添加剤を含んでいてもよい。前述の電解液の溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、などの環状炭酸エステル、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)などの鎖状炭酸エステル、酢酸メチル(MA),酢酸エチル(EA),プロピオン酸メチル(MP),プロピオン酸エチル(EP)などの鎖状カルボン酸エステル、または、γ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン(GVL)などの環状カルボン酸エステルなどが挙げられる。これらのはいずれか1種、または2種以上を混合して溶媒として用いることができる。また、前述の列挙した溶媒に限定することはなく、電解質塩を溶解しリチウムイオン二次電池100としたときにその特性を損なわない範囲でれば、特に制限はされない。
また、前述の溶媒には、ビニレンカーボネート(VC)などの不飽和結合を有する環式炭酸エステルや、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)などのフッ素化環状カーボネート、1,3−プロパンスルトン(PS)などの硫黄含有化合物、フォスファゼン化合物などの難燃性液体を混合して溶媒として用いることができる。
(電解質塩)
電解液中に含まれる電解質塩としては、例えばリチウム塩が挙げられ、電解液中で解離してリチウムイオンを供給するものである。このリチウム塩としては、特に限定されるものではないが、例えば、LiPF、LiBF、LiAsF、LiClO、LiB(C、LiCHSO、LiC(SOCF、LiN(CFSO(別名、LiTFSIと呼ぶこともある)、LiN(CSO(別名、LiBETIと呼ぶこともある)、LiCFSO、LiCSO、LiC(CFSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiN(CFSO)(CSO)、LiN(CFSO)(CSO)、LiN(SOF)(別名、LiFSIと呼ぶこともある)、LiAlCl、LiSiF、LiCl、LiCBO(別名、LiBOBと呼ぶこともある)、あるいはLiBrなどが挙げられ、これらの1種、または2種以上の任意の組み合わせから選択されるものを用いることができる。特に、LiPFは高いイオン伝導性を得ることができるため好適に用いることができる。
以上、実施形態により本発明を詳細に説明したが、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、種々変更が可能である。例えば、前述の実施の形態においては、負極と正極とをセパレーターを介して積層された積層型のリチウムイオン二次電池について説明したが、前述の負極と正極とをセパレーターが捲回させた円筒型のリチウムイオン二次電池についても同様に適用することができる。さらにコイン型、角型、あるいは扁平型などのリチウムイオン二次電池についても好適に応用することができる。
以下、前述の実施形態に基づいて、さらに実施例および比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明は以下に記す実施例の形態に限定されるものではない。
(実施例1)
(リチウムイオン二次電池用負極の作製)
[負極の作製]
SiO負極活物質(D50:5μm)を82.5wt%と、導電助剤としてアセチレンブラックを2wt%と、さらにバインダーとしてポリアミドイミドワニス(ポリアミドイミドが固形分として15wt%相当)と、空隙形成剤として5wt%のアルギン酸ナトリウム水溶液(アルギン酸ナトリウムが固形分として3wt%相当)とを、ハイブリッドミキサーを用いて混合分散させ、最後に溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンを添加し、所定の粘度に調整したペースト状の負極スラリーを作製した。そして、コンマロールコーターを用いて、この負極スラリーを厚さ10μmの銅箔の両面に所定の厚みとなるように、均一に負極活物質層を塗布した。
次いで、乾燥炉内にて100℃の大気雰囲気下で前述の負極活物質中のN−メチル−2−ピロリドン溶媒を乾燥させた。前述の負極活物質層が形成された負極をロールプレス機によって、負極活物質層を負極集電体の両面に圧着させ、所定の密度を有する負極シートを得た。なお、前述の負極シートにおける負極活物質層の片面の厚みは、30μmであった。
前述の負極シートは、金型を用いて21×31mmの電極サイズに打ち抜き、これを20℃の蒸留水中へ360分間静置させ、負極活物質層中のアルギン酸ナトリウムを溶出させた。そして、60℃の乾燥機中で前述の負極を乾燥させた。
さらに前述の負極は、バインダーであるポリアミドイミドの架橋および/またはN−メチル−2−ピロリドン溶媒の乾燥を目的として、熱処理炉にて30℃/minの高速昇温で300℃まで昇温し、1時間保持した後に室温まで急冷させることで、実施例1に係るリチウムイオン二次電池用負極を得た。なお、前述の熱処理は減圧下の真空中にて実施した。
(実施例2、3、4、5、6、7、8)
実施例2、3、4、5、6、7、8に係るリチウムイオン二次電池用負極は、アルギン酸ナトリウムを溶出させる際の含浸時間を120、30、10、5、1、0.5、0.25分にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様の手順でリチウムイオン二次電池用負極を作製し、前述と同様の方法で解析した。
(実施例9、10)
実施例9、10に係るリチウムイオン二次電池用負極は、空隙形成剤であるアルギン酸ナトリウム水溶液の添加量をアルギン酸ナトリウム固形分として2wt%、5wt%にそれぞれ変更した以外は、実施例3と同様の手順でリチウムイオン二次電池用負極を作製し、前述と同様の方法で解析した。
(実施例11)
実施例11に係るリチウムイオン二次電池用負極は、負極スラリーの作製において、2wt%のアルギン酸ナトリウム水溶液に変更した以外は、実施例3と同様の手順でリチウムイオン二次電池用負極を作製し、前述と同様の方法で解析した。
(実施例12)
実施例12に係るリチウムイオン二次電池用負極は、アルギン酸ナトリウムを溶出させる際に真空デシケータ―にて減圧させながら溶出させた以外は、実施例3と同様の手順でリチウムイオン二次電池用負極を作製し、前述と同様の方法で解析した。
(実施例13、14、15、16、17、18、19、20)
実施例13、14、15、16、17、18、19、20に係るリチウムイオン二次電池用負極は、空隙形成剤としてアルギン酸カリウム水溶液に変更し、さらにアルギン酸カリウムを溶出させる際の含浸時間を120、30、10、5、1、0.5、0.25分にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様の手順でリチウムイオン二次電池用負極を作製し、前述と同様の方法で解析した。
(実施例21)
実施例21に係るリチウムイオン二次電池用負極は、空隙形成剤としてポリアクリル酸ナトリウム水溶液(固形分として3wt%)に変更した以外は、実施例3と同様の手順でリチウムイオン二次電池用負極を作製し、前述と同様の方法で解析した。
(実施例22)
実施例22に係るリチウムイオン二次電池用負極は、空隙形成剤としてアルギン酸ナトリウム水溶液(固形分として1.5wt%)とアルギン酸カリウム水溶液(固形分として1.5wt%)に変更した以外は、実施例3と同様の手順でリチウムイオン二次電池用負極を作製し、前述と同様の方法で解析した。
(比較例1)
比較例1に係るリチウムイオン二次電池用負極は、空隙形成剤としてポリアクリル酸水溶液に変更した以外は、実施例1と同様の手順でリチウムイオン二次電池用負極を作製し、前述と同様の方法で解析した。
(リチウムイオン二次電池用負極の評価)
[空隙の評価]
実施例および比較例に係るリチウムイオン二次電池用負極は、走査型電子顕微鏡(SEM)、デュアルビーム走査電子顕微鏡(FIB−SEM)を用いて負極活物質層の表面と負極活物質層の断面をそれぞれ観察し、500倍率のSEM写真(任意の負極活物質層の表面5か所、断面5か所)で観察された空隙の全てのフェレ径をそれぞれ測定し、この平均値を平均空隙径とした。なお、フェレ径は観察像に外接する長方形の長辺の長さで定義される。
さらに前述の実施例および比較例に係るリチウムイオン二次電池用負極は、以下の算出式により、負極活物質層における空隙率を算出した。
・負極活物質層空隙率(%)=(1−負極活物質層密度(g/cm)/負極活物質真密度(g/cm))×100
・負極活物質層密度(g/cm)=負極単位面積当たりの負極活物質重量(g/cm)/負極活物質層厚み(μm)×10−4
なお、前述の負極活物質真密度は、2.13g/cmとした。
[ナトリウムイオン/カリウムイオンの分布と定量]
さらに前述の実施例に係るリチウムイオン二次電池用負極を、負極活物質層の表面および負極活物質層の断面を電子線マイクロアナライザー(EPMA)による元素マッピングにより、ナトリウムイオンおよび/またはカリウムイオンの空隙近傍での分布位置を観察した。また、波長分散型蛍光X線分析装置(XRF)を用いて、負極活物質層(φ10mm領域)におけるナトリウムイオンおよび/またはカリウムイオンの含有量を測定した。
(リチウムイオン二次電池用正極の作製)
正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO)を96wt%と、導電助剤としてケッチェンブラックを2wt%と、バインダーとしてPVdFを2wt%と、N−メチル−2−ピロリドンの溶媒とを混合分散させて、ペースト状の正極スラリーを作製した。
そして、コンマロールコーターを用いて、この正極スラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に所定の厚みとなるように、均一に正極活物質層を塗布した。次いで、乾燥炉内にて、110℃の大気雰囲気下で前述の正極活物質層中のN−メチル−2−ピロリドンを乾燥させた。なお、前述のアルミニウム箔の両面に塗布された正極活物質層の塗膜の厚みは、ほぼ同じ膜厚に調整した。前述の正極活物質が形成された正極をロールプレス機によって、正極活物質層を正極集電体の両面に圧着させ、所定の密度を有する正極シートを得た。
前述の正極シートは、金型を用いて20×30mmの電極サイズに打ち抜き、リチウムイオン二次電池用正極を作製した。
(リチウムイオン二次電池の作製)
前述の作製した実施例および比較例に係るリチウムイオン二次電池用負極は、前述のリチウムイオン二次電池用正極と、厚さ16μmの22×33mmサイズのポリエチレン製のセパレーターを介して積層し、電極体を作製した。これを電極体1層とし、同様の作製方法にて4層で構成された電極体を作製した。なお、前述の負極および正極は、両面に各活物質層を備えているため、負極3枚と正極2枚とセパレーター4枚とで構成されている。さらに、前述の電極体の負極において、負極活物質層を設けていない銅箔の突起端部にニッケル製の負極リードを取り付け、一方、電極体の正極においては、正極活物質層を設けていないアルミニウム箔の突起端部にアルミニウム製の正極リードを超音波融着機によって取り付けた。そしてこの電極体を、外装体用のアルミニウムのラミネートフィルムに融着させ、前述のラミネートフィルムを折り畳むことで前述の電極体を外装体内に挿入させた。外装体周囲の1辺を除いてヒートシールすることにより閉口部を形成し、この開口部より、EC/DECが3:7の割合で配合された溶媒中に、リチウム塩として1モル濃度のLiPFが添加された電解液を注入した。そして、前述の外装体の開口部を真空シール機によって減圧しながらヒートシールで密封し、実施例および比較例に係るリチウムイオン二次電池をそれぞれ作製した。
(電池評価)
実施例と比較例で作製したリチウムイオン二次電池は、以下の電池特性について評価した。
[充放電サイクル特性]
実施例1〜22および比較例1で作製したリチウムイオン二次電池は、下記に示す充放電試験条件によって充放電を繰り返し、充放電サイクル特性を評価した。充放電サイクル試験条件は、25℃の温度下において、0.5Cの定電流で4.2Vになるまで定電流定電圧充電(CC−CV充電)を行い、その後、1.0Cの定電流で電池電圧が2.5Vとなるまで放電させた(CC放電)。上記の充電と放電を1サイクルとし、これを300サイクル繰り返した後の放電容量維持率によって、充放電サイクル特性を評価した。
なお、300サイクル後の放電容量維持率は、以下の計算式によって定義される。
300サイクル後の放電容量維持率(%)=(300サイクル後の放電容量÷1サイクル後の放電容量)×100
[ラミネートセルの厚み膨張]
実施例1〜22および比較例1で作製した各リチウムイオン二次電池のラミネートセルにおいて、充放電前と充放電を300サイクル繰り返した時点の各ラミネートセルの厚みを測定することで、厚み膨張率を評価した。なお、膨張率は以下の計算式によって算出した。
膨張率(%)=(300サイクル後のセル厚み(mm)−充放電前のセル厚み(mm)
)/充放電前のセル厚み(mm)×100
[電解液の枯渇状態]
前述の充放電を300サイクル繰り返した実施例1〜21および比較例1のリチウムイオン二次電池は、ドライルーム内で分解し、セパレーターにおける電解液の濡れ状態を目視で観察し、電解液の枯渇状態を評価した。セパレーターが明らかに電解液で濡れている場合を○、セパレーターの一部が電解液で濡れている場合を△、セパレーターのごく一部または完全に乾燥している場合を×、として判定した。
(結果)
実施例1〜22および比較例1に係るリチウムイオン二次電池用負極の平均空隙径および空隙率を表1に示す。実施例および比較例に係るリチウムイオン二次電池用負極の負極活物質層には多くの空隙が観察され、実施例および比較例で観察された空隙の平均空隙径は、5〜12μmの範囲であった。また、実施例および比較例に係るリチウムイオン二次電池用負極の空隙率は、30〜70%の範囲であることを確認した。代表として実施例3に係るリチウムイオン二次電池用負極の負極活物質層表面のSEM写真を図3に示す。
さらに実施例1〜22および比較例1に係るリチウムイオン二次電池用負極におけるナトリウムイオンおよび/またはカリウムイオンの局在位置について表1に示す。前述のイオンが空隙壁面より20μm圏内に局在が観察された場合を○、20μm圏外で局在が観察された場合を△、検出されなかった場合を×とした場合、実施例12を除く全ての実施例の負極は、ナトリウムイオンおよび/またはカリウムイオンが空隙壁面から20μm圏内に確認され、実施例12ではナトリウムイオンが空隙壁面の20μm圏外で局在が観察された。一方、比較例の負極からは、ナトリウムイオンおよびまたはカリウムイオンは検出されなかった。
実施例1〜22および比較例1に係るリチウムイオン二次電池における300サイクル後の充放電サイクル特性、300サイクル後のラミネートセルの厚み膨張率、ならびに300サイクル後の電解液の枯渇状態の結果を表1に示す。
実施例1〜22に係るリチウムイオン二次電池用負極では、比較例よりも充放電サイクル特性が優れていることが確認された。さらに300サイクル後の厚み膨張率においても、実施例に係るリチウムイオン二次電池では、比較例よりも膨張率が小さいことが確認された。比較例1に係る300サイクル後のリチウムイオン二次電池では、ラミネートセル内に微少のガス発生が確認され、これにより見かけ上のラミネートセルの厚み膨張率が大きくなっていた。このガス発生によって電極と電解液との接触が阻害されたことにより、充放電サイクル特性が低下したものと考えられる。
さらに、実施例1〜22および比較例1の300サイクル後のリチウムイオン二次電池を解体し、各セパレーターの電解液の枯渇状態を確認した結果、実施例1〜22から採取したセパレーターでは、電解液によって全面が濡れていたのに対し、比較例1から採取したセパレーターでは、セパレーターの一部が電解液で濡れている程度であった。したがって、比較例よりも実施例にかかるリチウムイオン二次電池では、電解液の分解が抑制されていることが確認された。
100・・・リチウムイオン二次電池、10・・・正極(同義:リチウムイオン二次電池用正極)、12・・・正極集電体、14・・・正極活物質層、60・・・正極リード、
20・・・負極(同義:リチウムイオン二次電池用負極)、22・・・負極集電体、24・・・負極活物質層、62・・・負極リード、18・・・セパレーター、30・・・電極体、50・・・外装体、70・・・ナトリウムイオンおよび/またはカリウムイオンが局在する分布位置、71・・・空隙

Claims (5)

  1. ケイ素およびまたはケイ素化合物を含む負極活物質と、導電助剤と、バインダーとを含む負極活物質層を集電体上に備えたリチウムイオン二次電池用負極であって、前記負極活物質層は、5μm以上の複数の空隙を有しており、更に前記負極活物質層中にナトリウムイオン、カリウムイオンの少なくとも一方を有していることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極。
  2. 前記ナトリウムイオンおよび/またはカリウムイオンが、NaOおよび/またはKO換算で、少なくとも0.01wt%以上であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
  3. 前記負極活物質中における前記ナトリウムイオンおよび/またはカリウムイオンが、空隙表面に局在していることを特徴とする請求項1〜2のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
  4. 前記ナトリウムイオンおよび/またはカリウムイオンが、空隙表面から20μm以内に局在していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
  5. リチウムイオンを吸蔵および放出する負極と、リチウムイオンを吸蔵および放出する正極と、前記負極と前記正極との間に介在するセパレーターと、電解液とを備えたリチウムイオン二次電池であって、前記負極は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極であることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
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