JP7059711B2 - リチウムイオン二次電池 - Google Patents

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Description

本発明は、リチウムイオン二次電池に関する。
近年、リチウムイオン二次電池は高エネルギー密度であることから、携帯電話、ノート型パソコン、定置用蓄電池、ドローンなどの電子機器の電源として実用化され、広く一般に普及している。そのようななか、機器の小型化、軽量化の観点から高エネルギー密度のリチウムイオン二次電池が強く要望されている。さらに、これらの電子機器等の消費電力の増加に伴い、電池の長寿命化も強く要望されている。
上記リチウムイオン二次電池は、正極、負極、正極と負極とを絶縁するセパレータ、および正極と負極との間でイオンの移動を可能にするための電解液で主に構成されており、現在普及されているリチウムイオン二次電池の負極に用いられている材料は黒鉛である。しかし、黒鉛の理論容量は約370mAh/gと小さいため、それに代わるケイ素(約4200mAh/g)や一酸化ケイ素(約1500~2000mAh/g)が、電池の小型化と高容量化において最も期待される材料である。
しかしながらケイ素を負極活物質として使用した場合、充放電によるリチウムイオンの挿入と脱離に伴った電極の膨張と収縮の挙動が、黒鉛よりも膨大に大きくなる。したがって、ケイ素を用いたリチウムイオン二次電池では、充電と放電の繰り返しによって、ケイ素が膨張と収縮を繰り返すため、負極に多大な応力が加わり、負極合剤層にクラックが発生したり、負極合剤層と集電体との間で剥離が生じる課題があった。このようなクラックや剥離によって、負極合剤層内での集電性が低下し、初回充放電効率やサイクル特性が悪くなる。このようなケイ素を用いた負極の課題に対し、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン(フルオロエチレンカーボネート)を含む電解液が開示されており(例えば特許文献1)、我々の鋭意検討においても、たしかに従来のエチレンカーボネートを含む電解液と比べた場合、サイクル特性が向上するのを確認している。しかし、長期的サイクル特性の場合、急激な容量低下が生じてしまいサイクル特性としては未だ不十分であった。これは体積膨張によって発生したクラックによって新生面が生成し、新生面と電解液との副反応によって電解液の分解が繰り返されたことが原因の1つとして考えられる。
一方で、我々はケイ素系の負極にタンパク質の被膜を被覆することで、サイクル特性が改善されるのを開示している(特許文献2)。しかし、サイクル特性は改善されるものの、出力特性が低下する傾向にあった。これはタンパク質を被膜として負極に被覆したことにより、電解液と負極との反応が阻害されてしまい、負極表面での抵抗が増したため、出力特性が低下したと考えられる。したがって、サイクル特性と出力特性を満たすリチウムイオン二次電池としては改善の余地があった。
特開2006-216450号公報 特開2017-162693号公報
本発明の目的は、前記事情に鑑みてなされたものであり、サイクル特性、出力特性に優れたリチウムイオン二次電池を提供することにある。
本発明に係るリチウムイオン二次電池は、負極集電体に負極合剤層が形成された負極と、正極集電体に正極合剤層が形成された正極と、前記負極と前記正極との間に介在するセパレータと、リチウム塩と非水系溶媒とを含む電解液とを備えたリチウムイオン二次電池であって、少なくとも前記負極合剤層の表面の一部にタンパク質粒子を含むことを特徴とする。
これによってサイクル特性と出力特性に優れるリチウムイオン二次電池となる。その詳細な理由は不明であるが、以下の効果を奏することで発現されると思われる。
負極合剤層の表面にタンパク質粒子を含むリチウムイオン二次電池では、前記タンパク質粒子が、充放電の酸化還元反応によってその立体構造が伸縮し、負極合剤層の体積膨張が抑制される。したがって、負極合剤層へのクラックを抑制すると共に、電解液の副反応による分解を低減することができる。これにより優れたサイクル特性が得られる。また、前記タンパク質粒子は、その形状により粒子間に隙間が存在しているため、電解液と負極合剤層との反応が阻害されない。したがって出力特性を損なうことなく、優れたサイクル特性が得られる。また、前記隙間には電解液が保持されやすくなるので、副反応による電解液の分解に対しても、補填作用として有効に機能する。
前記タンパク質粒子は、1層当りの負極合剤層の重量に対して0.01~10重量%を含むことを特徴とする。
前記タンパク質粒子は、平均粒子径が0.01~50μmであることを特徴とする。
前記タンパク質粒子は、カゼイン、アルブミン、リゾチーム、グロブリン、およびこれらの金属塩の少なくとも1つであることを特徴とする。
前記負極合剤層には、負極活物質として、ケイ素、ケイ素化合物の少なくとも1つを含むことを特徴とする。
本発明のリチウムイオン二次電池によれば、少なくとも負極合剤層の表面にタンパク質粒子が含まれることにより、サイクル特性と出力特性に優れるリチウムイオン二次電池を提供することができる。
本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の構成を表す断面図 実施例1に係る負極表面のマイクロスコープ写真 カゼイン粉末と、実施例1および比較例2に係る負極のFT-IRスペクトル
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに以下に記載した構成要素は、適宜組み合わせることができる。
<リチウムイオン二次電池>
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100の構成断面図を図1に示す。リチウムイオン二次電池100は、リチウムイオン二次電池用負極10およびリチウムイオン二次電池用正極20と、リチウムイオン二次電池用負極とリチウムイオン二次電池用正極との間に介在されたセパレータ18と電解液から構成され、前記セパレータ18は正極と負極とが物理的に接触することを防止し、正極、負極およびセパレータには電解液が含浸されている。
リチウムイオン二次電池の形状としては、図1のラミネートフィルム型に制限されるものではなく、例えば、円筒型、角型、コイン型などいずれであってもよい。本実施形態では、ラミネートフィルムを外装体50として用い、実施例では、ラミネートフィルム型電池を作製し評価する。前記のラミネートフィルムとしては、例えば、ポリプロピレン、アルミニウム、ポリアミドがこの順に積層されてなる3層構造として構成されているものを用いることができる。
(リチウムイオン二次電池用負極)
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、負極集電体12に負極合剤層14が形成された負極10と、正極集電体22に正極合剤層24が形成された正極20と、前記負極と前記正極との間に介在するセパレータ18と、リチウム塩と非水系溶媒とを含む電解液とを備えたリチウムイオン二次電池であって、少なくとも前記負極合剤層14の表面の一部にタンパク質粒子を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池。
前記タンパク質粒子は、1層当りの負極合剤層の重量に対して、1~50重量%であることが好ましい。前記重量であると、出力特性とサイクル特性に優れるリチウムイオン二次電池が得られる。1重量%よりも少ないと、体積膨張が充分抑制できないため、優れたサイクル特性が得られにくい。一方、50重量%よりも多くなると、前記タンパク質粒子が電解液と負極合剤層との反応を阻害してしまい、優れた出力特性が得られにくい。更には優れたサイクル特性も得られにくくなる。なお、前記負極合剤層の重量とは、負極集電体に形成された一方の負極合剤層の重量を示す。負極集電体の両面に負極合剤層を形成
前記タンパク質粒子は、平均粒子径が0.01~50μmであることが好ましい。平均粒子径が0.01~10μmである場合、負極合剤層とセパレータとの間に隙間が形成され、負極合剤層の体積膨張を緩衝できるため、優れたサイクル特性が得られる。0.01μmよりも小さいと、負極の体積膨張を緩衝しにくくなるため、サイクル特性が低下する。50μmよりも大きいと、負極合剤層とセパレータとの間の隙間が大きくなり過ぎるため、リチウムイオンの電荷移動度抵抗が増し、出力特性とサイクル特性が低下する。
前記タンパク質粒子は、カゼイン、アルブミン、リゾチーム、グロブリン、およびこれらの金属塩の少なくとも1つであることが好ましい。上記タンパク質に限定されるものではないが、充放電反応の酸化還元反応によってその立体構造が伸縮するタンパク質であれば、特に限定はされない。
このように、負極合剤層14の表面の少なくとも一部にタンパク質粒子を含む負極を用いたリチウムイオン二次電池は、優れたサイクル特性と出力特性を示す。
[負極活物質]
本実施形態に係る負極活物質は、例えば、リチウムイオンを電気化学的に吸蔵および放出するケイ素(Si)、スズ、ゲルマニウム、鉄またはこれらの化合物や合金が好ましく、特に高容量であるケイ素が好ましい。膨張による負極合剤層のクラックや負極活物質の微粉化が顕著な負極活物質の方が、本発明の効果が好適に発揮されるためである。
なお、ケイ素は単体で用いてもよく、ケイ素化合物、またはケイ素合金を用いてもよく、さらにこれらの2種以上を併用してもよい。
前記のケイ素化合物としては、例えば、酸化ケイ素が挙げられ、SiOと表記される(ただし、ケイ素に対する酸素の原子比xは、0<x≦2を満たすものとする)。
前記の酸化ケイ素は、ケイ素の微結晶および二酸化ケイ素の非晶質相を含んでいてもよく、この場合、ケイ素と酸素の原子比は、ケイ素の微結晶および二酸化ケイ素の非晶質相を含めた比率となる。すなわち、酸化ケイ素には、非晶質の二酸化ケイ素のマトリックス中に、ケイ素の微結晶が分散した構造のものが含まれ、この非晶質の二酸化ケイ素と、その中に分散しているケイ素の微結晶とを合わせて、前記の原子比xが0<x≦2を満足していればよい。例えば、非晶質の二酸化ケイ素のマトリックス中に、ケイ素が分散した構造で、二酸化ケイ素とケイ素のモル比が1:1の化合物の場合、x=1であるので、構造式としてはSiOと表記される。なお、非晶質の二酸化ケイ素のマトリックスは、非晶質の一酸化ケイ素を含んでいてもよい。
さらに前記したケイ素合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン、およびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
本実施形態に係る負極活物質は、表面を炭素で被覆してもよい。負極活物質の表面を炭素で被覆することで、良好な電子伝導性が得られるためである。
さらに、負極活物質の形状については、無定形状、球状、粒状、多角形状、鱗片状、板状、繊維状など、特に限定はされることなく適宜使用することができる。特に多角形状の場合、負極合剤層内での導電助剤や集電体および隣接する負極活物質同士との接点が多くなりやすいため、電子伝導性において好ましい。
さらに前記した負極活物質の他に炭素系の負極活物質を併用してもよく、例えば、結晶質炭素、非晶質炭素、またはこれらを組み合わせて使用してもよい。前記の結晶質炭素としては、例えば、無定形状、球状、粒状、多角形状、鱗片状、板状、繊維状などの天然黒鉛、または人造黒鉛が挙げられ、前記の非晶質炭素としては、例えば、ソフトカーボン、ハードカーボン、メソフェーズピッチ炭化物、焼成したコークスなどが挙げられる。
また、本実施形態に係る負極活物質は、前記に挙げた材料に限定されることはなく、他にもリチウムイオンを電気化学的に吸蔵および放出する材料であれば特に制限はされない。
[負極導電助剤]
本実施形態に係る負極合剤層14は、導電性の向上を目的として導電助剤を添加してもよい。本実施形態に用いられる導電助剤は特に制限されず、周知の材料を用いることができる。例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェンなどの炭素繊維、および黒鉛などの炭素材料が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
[負極バインダー]
本実施形態に係る負極合剤層14は、負極活物質と負極導電助剤と負極集電体12との結着性の向上を目的としてバインダーを用いてもよい。本実施形態の負極合剤層に用いられる負極バインダーとしては、有機溶剤系バインダーでもよく、水系バインダーでもよい。例えば、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリアミド、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、アルギン酸塩、スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリウレタンなどが挙げられ、これらの1種を用いてもよく、複数種を併用することもできる。特に充放電による膨張が大きいケイ素系の負極活物質を用いる場合、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリアミド、ポリアクリル酸が好適に用いることができる。なお、これら列挙したバインダーに限定されるものではない。
[負極集電体]
本実施形態に係る負極集電体12は、導電性材料から構成され、その一方の主面または両面に負極合剤層14が配置される。前記負極集電体12を構成する材料は特に限定するものではないが、負極10に用いられる負極集電体12としては、銅、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、またはこれらの合金箔を用いることができる。特に銅、銅合金、ステンレス鋼が好ましく、コストの面からは電解銅箔および圧延銅箔を好適に用いることができる。強度の面からは、ステンレス鋼や銅合金の圧延箔が好適に用いることができる。
(リチウムイオン二次電池用正極)
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用正極20は、正極集電体22の少なくとも一方の主面に正極合剤層24が設けられ、前記正極合剤層24は、少なくともリチウムイオンを吸蔵および放出する正極活物質を含んでいる。
[正極活物質]
本実施形態に係る正極活物質は、例えば、リチウム酸化物、リチウム硫化物、あるいはリチウムを含む層間化合物等のリチウム含有化合物が好適であり、これらの2種以上を混合して用いてもよい。特に、エネルギー密度を高くするには、一般式LiMOで表されるリチウム複合酸化物、あるいはリチウムを含んだ層間化合物が好ましい。なお、Mは1種類以上の遷移金属が好ましく、具体的には、Co、Ni、Mn、Fe、Al、V、Tiのうちの少なくとも1種が好ましい。xは、電池の充放電状態によって異なり、通常、0.05≦x≦1.10の範囲内の値である。また、他にもスピネル型結晶構造を有するマンガンスピネル(LiMn)や、オリビン型結晶構造を有するリン酸鉄リチウム(LiFePO)なども、高いエネルギー密度を得ることができるので好ましい。
具体的には、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、LiNiCoMn(x+y+z+a=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、0≦a≦1、MはAl、Mg、Nb、Ti、Cu、Zn、Crより選ばれる1種類以上の元素が挙げられる)、リチウムバナジウム化合物(LiV)、オリビン型LiMPO(ただし、Mは、Co、Ni、Mn、Fe、Mg、Nb、Ti、Al、Zrより選ばれる1種類以上の元素、またはVOを示す)、チタン酸リチウム(LiTi12)、LiNiCoAl(0.9<x+y+z<1.1)などが挙げられる。また、これらの材料に限定することはなく、他にもリチウムイオンを電気化学的に吸蔵および放出する正極活物質材料であれば、特に制限はされない。
[正極導電助剤]
本実施形態に係る正極合剤層24は、導電性の向上を目的として導電助剤を添加してもよい。本実施形態に用いられる導電助剤は特に制限されず、負極合剤層で使用される導電助剤と同様の周知の材料を用いることができる。
[正極バインダー]
本実施形態に係る正極合剤層24は、正極活物質と正極導電助剤と正極集電体22との結着性の向上を目的としてバインダーを用いてもよい。本実施形態の正極合剤層24に用いられる正極バインダーとしては、有機溶剤系バインダーでもよく、水系バインダーでもよい。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエチレンビニルアルコール、ポリアクリレート、スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリウレタンなどが挙げられ、これらの1種を用いてもよく、複数種を併用することもできる。なお、これら列挙したバインダーに限定されるものではない。
[正極集電体]
本実施形態に係る正極集電体22は、導電性材料から構成され、その一方の主面または両面に正極合剤層24が配置される。前記正極集電体22を構成する材料は特に限定するものではないが、正極20に用いられる正極集電体22としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、またはこれらの合金箔を用いることができ、特にアルミニウム箔が好ましい。
(セパレータ)
本実施形態に係るセパレータ18は、負極10と正極20との間に介在され、両極の接触による短絡を防止し、さらに電解液が含浸されていることにより、リチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ18は、例えば微小な孔を多数有する多孔性膜を備えるものであって、前記のセパレータ18の具体的な材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系多孔膜、ポリイミド、ポリアミドイミドなどの高耐熱多孔膜、前記のポリオレフィン系多孔膜と高耐熱多孔膜との複合膜、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミドなどの不織布などが挙げられる。またセパレータ18は、例えばその厚みが5μm以上、50μm以下の範囲であると共に、その全体積中における空隙体積の比率を表す空孔率が20%以上、60%以下の範囲であるものが好ましい。
(電解液)
本実施形態に係る電解液は、前記セパレータ18に含浸されており、例えば、溶媒とこの溶媒に溶解された電解液塩とを含んでおり、必要に応じて添加剤を含んでいてもよい。前記電解液の溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、などの環状炭酸エステル、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)などの鎖状炭酸エステル、酢酸メチル(MA),酢酸エチル(EA),プロピオン酸メチル(MP),プロピオン酸エチル(EP)などの鎖状カルボン酸エステル、または、γ-ブチロラクトン(GBL)、γ-バレロラクトン(GVL)などの環状カルボン酸エステルなどが挙げられる。これらのはいずれか1種、または2種以上を混合して溶媒として用いることができる。また、前記列挙した溶媒に限定されることはなく、電解液塩を溶解させてリチウムイオン二次電池100としたときにその特性を損なわない範囲でれば、特に制限はされない。
また、前記溶媒には、ビニレンカーボネート(VC)などの不飽和結合を有する環式炭酸エステルや、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)などのフッ素化環状カーボネート、1,3-プロパンスルトン(PS)などの硫黄含有化合物、フォスファゼン化合物などの難燃性液体を混合して溶媒として用いることができる。
(電解液塩)
本実施形態に係る電解液塩としては、例えばリチウム塩が挙げられ、電解液中で解離してリチウムイオンを供給するものである。このリチウム塩としては、特に限定されるものではないが、例えば、LiPF、LiBF、LiAsF、LiClO、LiB(C、LiCHSO、LiC(SOCF、LiN(CFSO(別名、LiTFSIと呼ぶこともある)、LiN(CSO(別名、LiBETIと呼ぶこともある)、LiCFSO、LiCSO、LiC(CFSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiN(CFSO)(CSO)、LiN(CFSO)(CSO)、LiN(SOF)(別名、LiFSIと呼ぶこともある)、LiAlCl、LiSiF、LiCl、LiCBO(別名、LiBOBと呼ぶこともある)、あるいはLiBrなどが挙げられ、これらの1種、または2種以上の任意の組み合わせから選択されるものを用いることができる。特に、LiPFは高いイオン伝導性を得ることができるため好適に用いることができる。
(リチウムイオン二次電池の製造方法)
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100は、例えば、次のようにして製造することができる。
[負極の製造方法]
本実施形態に係る負極10は、負極活物質と、負極導電助剤と、負極バインダーと、溶媒とを混合分散させてペースト状の負極スラリーを作製する。前記溶媒としては、負極スラリーに添加するバインダーに対して良溶媒を用いることが望ましく、例えば、有機溶剤系バインダーであれば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド、メチルエチルケトン、アセトニトリル、などが挙げられ、水系バインダーであれば、イオン交換水、蒸留水などが挙げられる。
次いで、前記負極スラリーを例えばコンマロールコーターを用いて、所定の厚みを有する負極合剤層14を銅箔などの負極集電体12の片面または両面に塗布し、乾燥炉内にて溶媒を乾燥させる。なお、負極合剤層14を前記負極集電体12の両面に塗布する場合は、両面とも同じ膜厚となる負極合剤層であることが望ましい。
次いで、前記負極合剤層14が形成された負極をロールプレス機などにより所定の厚みおよび密度になるように調整し、同時に負極合剤層14を負極集電体12の片面または両面に圧着させ、負極合剤層14と負極集電体12との密着性を高める。
前記負極を金型で所定の電極サイズに打ち抜き、リチウムイオン二次電池用の負極10とする。前記の負極10の面積は、正極20の面積と同等以上のサイズであることが好ましい。負極10の面積を、対向する正極20の面積と同等以上のサイズすることで、リチウムの析出による内部短絡の発生を防止するためである。
前記負極10は、真空中または不活性ガスの雰囲気中において前記のバインダーの熱分解する温度以下で熱処理することで、バインダーの重合およびまたは架橋によって負極合剤層14と負極集電体12の界面、および負極活物質同士での密着性をさらに高めることができる。また、負極集電体12の表面が一定の表面粗さを有していれば、その表面の凹凸部分にバインダーが入り込むことにより、バインダーと負極集電体12の間にアンカー効果が作用し、密着性が向上する。そのため、リチウムイオンの吸蔵および放出によって負極活物質が体積膨張した場合においても、負極集電体12からの負極合剤層14の剥離を抑制することができる。
本実施形態に係る負極10は、負極合剤層14の表面の少なくとも一部にタンパク質粒子を含む。タンパク質粒子を被覆する方法としては、例えば、塗布法、浸漬法、あるいはディップコーティング法などの液相法が挙げられる。これらの方法を単独で用いてもよいし、2種以上の方法を併用してもよい。
例えば、浸積法では、タンパク質粒子が溶解しない溶液中にタンパク質粒子を分散させ、前記負極10を数秒から数分間含浸させ、その後負極10を引き上げて、乾燥させる。
前記のタンパク質を溶解させない溶液としては、例えば有機溶剤系が好ましく、エタノール、アセトン、NMPなどが挙げられる。
塗布法では、前記タンパク質粒子が分散された溶液を負極10の負極合剤層14の表面に塗布し、乾燥させることで、タンパク質粒子が負極合剤層の表面に担持される。塗布法では、コンマロールコーター、ドクターブレード、スピンコーターなどの装置を用いることができる。さらに、前記タンパク質粒子の担持量は、前記タンパク質粒子を含有する溶液の濃度、含浸回数、塗布回数などを調整することで、タンパク質粒子の担持量を容易に制御することができる。
[タンパク質粒子の同定]
本実施形態に係る負極の負極合剤層の表面に担持されたタンパク質粒子の同定は、例えばマイクロスコープ(光学顕微鏡)、電界放出形走査型電子顕微鏡(FE-SEM)、エネルギー分散型X線分光分析(EDX)、フーリエ変換赤外分光分析(FT-IR)の全反射減衰法(ATR法)、レーザーアブレーション-誘導結合プラズマ重量分析(LA-ICP-MS)、熱分解ガスクロマトグラフ重量分析などにより行うことができる。
マイクロスコープによる観察では、タンパク質粒子を担持させる前後での負極合剤層の表面を観察することで、タンパク質粒子の有無を簡便に確認することができる。また、付属のソフトによって、粒子サイズの平均値を計測することができる。
FT-IR分析では、担持させる各タンパク質を粉末単体で測定して各タンパク質の吸収スペクトル位置を確認し、次いで各タンパク質粒子を担持させた負極の吸収スペクトル位置を測定することで、負極合剤層の表面におけるタンパク質粒子の有無を確認することができる。
なお、FT-IR分析によるタンパク質の解析においては、タンパク質に帰属される1630cm-1付近の吸収スペクトルをアミドI吸収バンド(C=O伸縮振動)、1510cm-1付近の吸収スペクトルをアミドII吸収バンド(N-H変角振動およびC-N伸縮振動)として容易に確認することができる。
さらに担持させるタンパク質粒子が金属塩である場合、例えばカゼインの金属塩としてカゼインナトリウム、カゼインリチウム、カゼインカリウム、カゼインマグネシウム、カゼインカルシウム、カゼインストロンチウム、カゼインバリウム、カゼインアンモニウムであれば、LA-ICP-MS分析、またはEDX分析によりカゼインに含まれる金属元素を分析することで、各カゼインの金属塩を同定することができる。その他のタンパク質の金属塩においても、同様の手法により同定することができる。
[正極の製造方法]
本実施形態に係る正極20は、正極活物質と、正極導電助剤と、正極バインダーと、溶媒とを混合分散させて、ペースト状の正極スラリーを作製する。次いで、前記正極スラリーを例えばコンマロールコーターを用いて、所定の厚みを有する正極合剤層24をアルミニウム箔などの正極集電体22の片面または両面に塗布し、乾燥炉内にて溶媒を乾燥させる。なお、正極合剤層24を前記正極集電体22の両面に塗布する場合は、両面とも同じ膜厚となる正極合剤層であることが望ましい。
次いで、前記正極合剤層24が形成された正極をロールプレス機などにより所定の厚みおよび密度になるように調整し、同時に正極合剤層24を正極集電体22の片面または両面に圧着させ、正極合剤層24と正極集電体22との密着性を高める。
前記正極を金型で所定の電極サイズに打ち抜き、本実施形態のリチウムイオン二次電池用の正極20とする。前記の通り、前記の正極20の面積は、負極10の面積と同等以下のサイズであることが好ましい。正極20の面積を、対向する負極10の面積と同等以下のサイズにすることで、リチウムの析出による内部短絡の発生を防止するためである。
また前記の正極20においても負極10と同様に、使用するバインダーによって適宜熱処理を行っても良い。
[電極積層体の作製]
負極10と正極20とをセパレータ18を介して積層することで電極積層体30を作製する。前記電極積層体30は、任意の積層数で構成することができる。なお、前記セパレータ18は、負極10と正極20とが直接接触するのを防ぐために、負極および正極よりも大きいサイズのものを好適に用いることができる。
次いで、前記の電極積層体30の負極10において、負極合剤層14を設けていない負極集電体の突起端部に、ニッケル製の負極リード60を取り付け、一方、電極積層体30の正極20においては、正極合剤層24を設けていない正極集電体の突起端部に、アルミニウム製の正極リード62を超音波溶接機によって取り付ける。そして、この電極積層体30を、アルミニウムのラミネートフィルムの外装体50内に挿入して周囲の1箇所を除いてヒートシールすることにより閉口部を形成し、外装体50内に所定量の電解液を注入した後に、残りの1箇所を減圧しながらヒートシールすることで密封し、リチウムイオン二次電池100(以後、ラミネートセルと呼ぶ場合がある)を作製することができる。
このリチウムイオン二次電池100では、充電を行うと、例えば、正極合剤層24からリチウムイオンが放出され、電解液を介して負極合剤層14に吸蔵される。また、放電を行うと、例えば、負極合剤層14からリチウムイオンが放出され、電解液を介して正極合剤層24に吸蔵される。
(電池評価)
本実施形態において作製されるリチウムイオン二次電池は、下記の試験について評価することができる。
[出力試験]
25℃の環境下において、0.5Cの充電レートで4.2Vの電池電圧になるまで定電流定電圧充電(CC-CV充電)を行い、その後、0.5Cの放電レートで2.5Vの電池電圧になるまで放電させる(CC放電)。次いで、放電特性を評価するために、充電レートは同様に0.5Cの充電レートで4.2Vまで充電を行い、その後、放電レートを2.0Cに変更し、2.5VまでCC放電させる。前記0.5Cの放電レートで得られた容量に対し、2.0Cで得られた容量の容量比によって放電特性を評価できる。
なお0.5Cとは、2時間でリチウムイオン二次電池を充電、または放電させるための電流値のことであり、2.0Cとは0.5時間でリチウムイオン二次電池を充電、または放電させるための電流値のことである。例えば、公称容量1Ahのリチウムイオン二次電池における0.5Cでは、0.5Aの電流値となる。なお、本実施形態における放電特性は、以下の計算式(1)によって定義される。
出力特性[%]=2.0C放電レートで得られた容量/0.5C放電レートで得られた容量×100・・・(1)
[サイクル試験]
25℃の環境下において、0.5Cの充電レートで4.2Vの電池電圧になるまでCC-CV充電を行い、その後、0.5Cの放電レートで2.5Vの電池電圧になるまでCC放電させる。前記充電と放電を1サイクルとし、所定のサイクル数まで充電と放電を繰り返した。前記1サイクル目で得られる容量に対して、所定のサイクル数で得られた容量との容量比(放電容量維持率)によってサイクル特性を評価した。
なお、本実施形態におけるサイクル特性は、以下の計算式(2)によって定義される。
100サイクル後の放電容量維持率(%)=(100サイクル後の放電容量÷1サイクル後の放電容量)×100・・・(2)
[電池の厚み膨張試験]
充放電前と100サイクル後のリチウムイオン二次電池(電池セル)の厚みを測定することで、電池セリの厚みの膨張率を評価することができる。なお、本実施形態における膨張率は、以下の計算式(3)により定義される。
100サイクル時点での膨張率(%)=(100サイクル後の電池セルの厚み[mm]-充放電前の電池セルの厚み[mm])÷ 充放電前の電池セルの厚み[mm]×100・・・(3)
以上、本発明に係る実施形態について詳細に説明したが、前記の実施形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、前記の実施形態においては、ラミネートフィルム内に正極、負極およびセパレータを積層した電極積層体を具備したリチウムイオン二次電池について説明したが、正極、負極およびセパレータを巻回または折り畳んだ電極積層体を具備したリチウムイオン二次電池についても同様に適用することができる。さらに、ラミネートフィルム以外の電池形状としては、円筒型、角型、コイン型などのリチウムイオン二次電池についても好適に応用することができる。
以下、前記の実施形態に基づいて、さらに実施例および比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
(負極の作製)
塗料組成比として、負極活物質としてケイ素を83重量%と、導電助剤としてアセチレンブラックを2重量%と、さらにバインダーとしてポリアミドイミドを15重量%秤量し、これらを自転公転する攪拌機(商品名:ハイブリッドミキサー)を用いて混合分散させ、最後に溶媒としてN-メチル-2-ピロリドンを添加し、所定の粘度に調整したペースト状の負極スラリーを作製した。そして、コンマロールコーターを用いて、この負極スラリーを銅箔(厚さ10μm)表面に所定の厚みで負極合剤層を塗布した。なお、負極合剤層に含まれる負極活物質重量は、負極合剤層の単位面積当たり2.0mg・cm-2とした。100℃の乾燥炉内にて前記の負極合剤層中のN-メチル-2-ピロリドン溶媒を乾燥除去させた後、もう一方の銅箔の裏面側にも同様の手順で負極合剤層を塗布した。なお、裏面側の負極合剤層に含まれる負極活物質重量も、負極合剤層の単位面積当たり2.0mg・cm-2とした。
前記の負極合剤層が形成された負極をロールプレス機によって、負極合剤層を負極集電体の両面に圧着させ、所定の密度を有する負極を得た。
前記の負極は、金型で19mm×23mmサイズの電極に打ち抜き、次いでバインダーであるポリアミドイミドの架橋および残留溶媒の乾燥除去を目的として、熱処理炉にて30℃・min-1の昇温速度で350℃まで昇温し、1時間保持した後に室温まで急冷させることで負極を得た。なお、前記の熱処理は減圧下の真空中にて実施した。
(リチウムイオン二次電池用負極の作製)
(実施例1)
実施例1に係るリチウムイオン二次電池用負極は、以下の処理によって作製した。10重量%のカゼイン粒子(平均粒子径1μm)をエタノールとイソプロピルアルコールの混合溶媒に分散させ、10重量%のカゼイン粒子の懸濁液を作製した。前記懸濁液に負極を1分間含浸させ後、負極を引き上げて60℃の乾燥機中で乾燥させることで、1層当りの負極合剤層の重量に対して10重量%のカゼイン粒子を担持させた。カゼイン粒子の担持量が10重量%未満である場合は、前記処理を複数回繰り返した。担持量が10重量%よりも過剰である場合は、エタノールとイソプロピルアルコールの混合溶媒に浸漬させ、過剰分のカゼイン粒子を落とすことで、担持量を10重量%に調製した。また、カゼイン粒子の担持量は、含浸前後の負極の重量変化より算出し、負極活物質重量に対する重量%で表記した。なお、前記平均粒子径1μmのカゼイン粒子は、コーヒーミルサーにて粗粒のカゼイン粒子を粉砕処理することで造粒したものを使用した。
(実施例2~5)
実施例2~5に係るリチウムイオン二次電池用負極は、カゼイン粒子をリゾチーム粒子(平均粒子径1μm)、アルブミン粒子(平均粒子径1μm)、グロブリン粒子(平均粒子径1μm)、カゼインナトリウム粒子(平均粒子径1μm)に変更した以外は、実施例1と同様の手順によって、1層当りの負極合剤層の表面にリゾチーム粒子、アルブミン粒子、グロブリン粒子、カゼインナトリウム粒子をそれぞれ10重量%担持させた。なお、リゾチーム粒子、アルブミン粒子、グロブリン粒子、カゼインナトリウム粒子も必要に応じて、実施例1と同様にコーヒーミルサーにて1μmの造粒したものを使用した。
(比較例1)
比較例1に係るリチウムイオン二次電池用負極は、以下の処理によって作製した。5重量%のカゼイン粒子(平均粒子径1μm)をアンモニア水でpH9に調整したイオン交換水に溶解させ、5重量%のカゼイン水溶液を作製した。前記水溶液に負極を1分間含浸させた後、負極を引き上げて60℃の乾燥機中で乾燥させることで、1層当りの負極合剤層の表面に10重量%のカゼインの被膜を形成させた。なお、カゼインの被膜の担持量が10重量%未満である場合は、前記処理を複数回繰り返した。担持量が10重量%よりも過剰である場合は、イオン交換水(アンモニア水でpH9調整)に浸漬させ、過剰分のカゼインの被膜を溶解することで、担持量を10重量%に調製した。
(比較例2)
比較例2に係るリチウムイオン二次電池用負極は、前記処理を行わず、カゼイン粒子を負極合剤層の表面に担持させなかった。
(実施例6~12)
実施例6~12に係るリチウムイオン二次電池用負極は、実施例1と同様の手順によって、1層当りの負極合剤層の表面に0.1~100重量%のカゼイン粒子(平均粒子径1μm)をそれぞれ担持させた。
(実施例13~19)
実施例13~19に係るリチウムイオン二次電池用負極は、カゼイン粒子の平均粒子径を0.01~100μmに変更した以外は、実施例1と同様の手順によって負極合剤層の表面に0.01~100μmのカゼイン粒子をそれぞれ10重量%担持させた。なお、前記0.01~10μmのカゼイン粒子は、粗粒のカゼイン粒子を必要に応じてコーヒーミルサーで粉砕し、必要に応じて篩を通すことで所望の平均粒子径に造粒したものを使用した。50~100μmのカゼイン粒子は、篩を通すことで所望の平均粒子径に造粒したものを使用した。平均粒子径は、造粒後のカゼイン粒子をマイクロスコープ(光学顕微鏡)によって観察し、任意のカゼイン粒子20個の平均値を平均粒子径とした。
(リチウムイオン二次電池用正極の作製)
正極活物質としてニッケルコバルトアルミ酸リチウム(NCA)を96重量%と、導電助剤としてケッチェンブラックを2重量%と、バインダーとしてPVdFを2重量%と、N-メチル-2-ピロリドンの溶媒とを混合分散させて、ペースト状の正極スラリーを作製した。
そして、コンマロールコーターを用いて、この正極スラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に所定の厚みとなるように、均一に正極合剤層を塗布した。なお、正極合剤層に含まれる正極活物質重量は、正極合剤層の単位面積当たり22mg・cm-2とした。次いで、乾燥炉内にて、110℃の大気雰囲気下で前記の正極合剤層中のN-メチル-2-ピロリドンを乾燥除去させた。なお、前記のアルミニウム箔の両面に塗布された正極合剤層の塗膜の厚みは、ほぼ同じ膜厚に調整した。前記の正極活物質が形成された正極をロールプレス機によって、正極合剤層を正極集電体の両面に圧着させ、所定の密度を有する正極を得た。
前記の正極は、金型を用いて18mm×22mmの電極サイズに打ち抜き、リチウムイオン二次電池用正極を作製した。
(リチウムイオン二次電池の作製)
前記の作製した実施例および比較例に係るリチウムイオン二次電池用負極は、前記のリチウムイオン二次電池用正極と、厚さ16μmの22mm×23mmサイズのポリエチレン製のセパレータを介して積層し、電極積層体を作製した。これを電極体1層とし、同様の作製方法にて4層で構成された電極積層体を作製した。なお、前記の負極および正極は、両面に各合剤層を備えているため、負極3枚と正極2枚とセパレータ4枚とで構成されている。さらに、前記の電極積層体の負極において、負極合剤層を設けていない銅箔の突起端部にニッケル製の負極リードを取り付け、一方、電極積層体の正極においては、正極合剤層を設けていないアルミニウム箔の突起端部にアルミニウム製の正極リードを超音波融着機によって取り付けた。そしてこの電極積層体を、外装体用のアルミニウムのラミネートフィルムに融着させ、前記のラミネートフィルムを折り畳むことで前記の電極体を外装体内に挿入させた。外装体周囲の1辺を除いてヒートシールすることにより閉口部を形成し、この開口部より、FEC/DECが3:7の体積割合で配合された溶媒中に、リチウム塩としてLiPFが1mol・L-1となるように添加された電解液を注入した。そして、前記の外装体の開口部を真空シール機によって減圧しながらヒートシールで密封し、実施例および比較例に係るラミネートタイプのリチウムイオン二次電池をそれぞれ作製した。
(結果)
実施例1に係るリチウムイオン二次電池用負極(以下、負極)をマイクロスコープで観察した結果、実施例1に係る負極では、負極合剤層の表面に、約1μmほどの粒子が担持されているのを確認した(図2)。一方、比較例2に係る負極では、負極合剤層の表面には何も担持されていないのを確認した。
カゼイン粉末と、実施例1および比較例2に係る負極のFT-IRスペクトルを図3に示す。実施例1に係る負極(実線)とカゼイン粉末(点線)のスペクトルは、1700~1300cm-1の領域において、タンパク質の特徴であるアミドI吸収バンドとアミドII吸収バンドを1630cm-1付近、1510cm-1付近にそれぞれ確認した。一方、比較例2に係る負極(破線)では、前記吸収バンドは確認できなかった。本解析結果より、マイクロスコープで観察された粒子が、カゼインであることが確認できた。
それ以外の実施例および比較例に係る負極においても、前記と同様の手法を用いて、負極合剤層の表面に各タンパク質粒子が担持されているのを確認した。
実施例1~5、比較例1~2に係る負極を用いたリチウムイオン二次電池の評価結果(出力特性、セルの膨張、サイクル特性)について表1に示す。各タンパク質粒子を負極合剤層の表面に担持した実施例1~5に係るリチウムイオン二次電池では、出力特性、セルの膨張率、サイクル特性に全て優れる結果となった。一方、カゼインの被膜を担持させた比較例1に係るリチウムイオン二次電池では、セルの膨張率とサイクル特性は優れる一方で、出力特性が低下する結果となった。何も被覆していない比較例2に係るリチウムイオン二次電池では、出力特性、セル膨張率、サイクル特性が実施例よりも低い結果となった。本結果より、負極合剤層の表面にタンパク質粒子を含むリチウムイオン二次電池では、セルの膨張率が小さく、出力特性を損なうことなく優れたサイクル特性が得られることが確認された。
Figure 0007059711000001
実施例6~12に係る負極を用いたリチウムイオン二次電池の評価結果について表2に示す。1層当りの負極合剤層の重量に対して、カゼイン粒子の担持量が1~50重量%である場合、出力特性、セルの膨張率、サイクル特性の全てに優れる結果となった。カゼイン粒子の担持量が1重量%よりも少ない場合、セルの膨張率が大きくなり、サイクル特性も低下する結果となった。50重量%よりも多い場合、出力特性が低下し、サイクル特性も低下する結果となった。
Figure 0007059711000002
実施例13~19に係る負極を用いたリチウムイオン二次電池の評価結果について表3に示す。カゼイン粒子の粒子径が0.1~50μmである場合、出力特性、セルの膨張率、サイクル特性の全てに優れる結果となった。粒子径が0.1μmよりも小さい場合、セルの膨張率が大きくなり、サイクル特性も低下する結果となった。粒子径が50μmよりも大きい場合、出力特性が低下し、セルの膨張率、サイクル特性も低下する結果となった。
Figure 0007059711000003
以上の結果から、ここに開示される技術によれば、負極合剤層の表面にタンパク質粒子を有する負極を用いることで、充放電反応に伴うリチウムイオン二次電池の体積膨張を抑制することができ、さらに出力特性を損なうことなく優れたサイクル特性を実現することができる。
以上、本発明を詳細に説明したが、上記実施形態および実施例は例示にすぎず、ここに開示される発明には上述の具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
100・・・リチウムイオン二次電池、10・・・正極(同義:リチウムイオン二次電池用正極)、12・・・正極集電体、14・・・正極合剤層、60・・・正極リード、
20・・・負極(同義:リチウムイオン二次電池用負極)、22・・・負極集電体、24・・・負極合剤層、62・・・負極リード、18・・・セパレータ、30・・・電極積層体、50・・・外装体

Claims (3)

  1. 負極集電体に負極合剤層が形成された負極と、正極集電体に正極合剤層が形成された正極と、前記負極と前記正極との間に介在するセパレータと、リチウム塩と非水系溶媒とを含む電解液とを備えたリチウムイオン二次電池であって、少なくとも前記負極合剤層の表面の一部にタンパク質粒子を含み、
    前記タンパク質粒子は、前記負極合剤層の重量に対する担持量が1~50重量%であり、
    前記タンパク質粒子は、平均粒径が0.1~50μmである
    ことを特徴とするリチウムイオン二次電池。
  2. 前記タンパク質粒子が、カゼイン、アルブミン、リゾチーム、グロブリン、およびこれらの金属塩の少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
  3. 前記負極合剤層は、負極活物質として、ケイ素、ケイ素化合物の少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
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