JPH10112593A - 電波障害対策建物 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 一般の建築材料を有効に利用して簡易な施工
で工場や倉庫等の建物におけるノイズ電波の侵入を防ぐ
と共に、電波の干渉を防ぐ。 【解決手段】 金属製の屋根材１を用いた屋根、金属製
の外装材２と電磁遮蔽性能を有するガラス３を用いた外
周壁、及び導電性材料を用いた床４、５により周囲の遮
蔽層を構成し、また、金属製の屋根材１は、内側に電波
吸収材を貼った多機能型折版屋根材により構成し、前記
導電性材料を用いた床は、金属製の構造材兼型枠４とコ
ンクリート５により構成し、外部からのノイズ電波の侵
入を防ぐと共に内部の使用電波の相互干渉を防ぎ、内部
無線通信システムの良好な電波環境を創出する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、外部からのノイズ
電波による内部の電子装置の混信や誤動作を防止し、内
部無線通信システムの良好な電波環境を創出する電波障
害対策建物に関する。

【０００２】

【従来の技術】ビル内で電波を使った無線通信方式を採
用する場合には、使用周波数帯域について電波法の規制
が問題になる。そこで、このような電波法による規制を
受けることなく、自由に使用周波数帯域を選択、設定し
て独自の無線による通信方式を採用するためには、ビル
内の空間を外部から電磁的に遮蔽した電磁遮蔽ビルの構
築が不可欠となる。既に出願人は、このような電磁遮蔽
ビルに関し、例えば特公平６−９９９７２号公報や特公
平６−９９９７３号公報、特公平７−１６１１８号公
報、特公平６−７６７０６号公報に、ビルの躯体や外壁
の遮蔽構造について提案し、特公平６−９９９７１号公
報や特公平６−３３６９９号公報、特公平６−１３８２
２号公報に、ビルの出入口の遮蔽構造について、特公平
６−６３４０７号公報や特公平５−７９７９０号公報、
特公平３−５８５５７号公報に、窓開口部の遮蔽構造に
ついて提案している。また、特公平３−６２３２０号公
報や特公平３−４５９７２号公報、特公平３−６２３１
８号公報、特公平５−３４１５９号公報に、天井や階層
別の遮蔽構造について提案している。

【０００３】上記提案のように、電磁遮蔽ビルは、躯体
や壁構造体に電磁遮蔽材を用い、さらに窓や出入口等の
開口部にも電磁遮蔽材を用いてビルの外壁に沿って全面
を電磁遮蔽材で覆うようにすることにより、ビル内の空
間を外部から独立した１つの電磁遮蔽空間として構成す
ることができる。また、ビル内を１つの電磁遮蔽空間と
してではなく、各フロア毎に上下の天井や床において電
磁遮蔽材で仕切り、或いは各フロアにおいて部屋間の壁
を電磁遮蔽材で仕切ることによって、各フロア毎、或い
は各部屋毎に独立した複数の電磁遮蔽空間を構成するこ
とができる。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかし、電磁遮蔽を必
要とするビルには、すべてが画一的に一定の遮蔽レベル
を要求するものではなく、ビルの用途、ビル内の環境、
ビルの周囲の環境に応じて要求される遮蔽レベルは現実
的に様々であり、遮蔽レベルにより施工する仕様も異な
る。例えば電算機システムを導入したビルでは、外部電
波の侵入によって電算機データが破壊されたり、外部に
データが漏れるのを防止する、つまり機密データの漏出
を防止するための高い遮蔽レベルが要求される。このよ
うな場合には、それぞれの電磁遮蔽層に高い遮蔽レベル
が要求されると共に、電磁遮蔽層の付き合わせ部に隙間
が生じないように、電波使用空間としての機密性が要求
される。

【０００５】一方、一般のビルや工場、倉庫等の建物に
おいても、種々の電子装置が使われるようになってきた
ため、これらの電子装置に対し周辺からの種々のノイズ
電波による誤動作や混信がしばしば問題になっている。
例えば、幹線道路沿いでは違法な高出力のトラック無線
（ＣＢ無線）から発生するノイズ電波があり、近隣工場
では生産機器から発生するノイズ電波があり、線路沿い
では電車のパンタグラフから発生するノイズ電波があ
り、一般にはテレビやラジオの放送波がある。例えば工
場や倉庫等では、クレーン等の操作にリモコンが用いら
れ、部品、仕掛かり品、製品等の搬送に無線誘導の搬送
装置が用いられ、或いはそれらの搬出、搬入にコンピュ
ータを用いた自動倉庫システムが導入されることも多く
なっているが、上記のようなノイズ電波は、これらの誤
動作の要因になる。

【０００６】前者の電算機システムのようなノイズ電波
対策では、完璧に近い遮蔽レベルが要求されるため、質
の高い電磁遮蔽材料、施工を採用することにより一般に
は３０ｄＢ程度の遮蔽レベルを達成することが必要とさ
れている。そのために上記各提案を採用すると、建設コ
ストに対しその３〜５％程度の高い施工コストがかか
る。しかし、後者のような特に工場や倉庫等の建物の場
合には、前者に対するほどの遮蔽レベルがなくても、誤
動作が防止できる許容レベルまで電波ノイズを低減する
ことができる。

【０００７】例えば周辺で予想される上記のようなノイ
ズ電波は、その発生源で最大レベルが１４０ｄＢ程度で
あるが、距離減衰を見込むと、建物の壁面では１１０〜
１２０ｄＢ程度になる。これに対して、工場や倉庫等の
建物における電波ノイズに対する許容レベルは、１１０
〜１２０ｄＢ程度であるが、それでも現実には原因の不
明な誤動作が発生することがある。勿論、これらの数値
は、時代と共に変動するものでもあるが、これらの関係
から考察すると、精々１０〜１５ｄＢ程度の遮蔽レベル
があれば誤動作や混信の課題が解決できる。

【０００８】したがって、前者と同様の遮蔽レベルを達
成するように上記各提案に基づく高レベルの施工をすべ
てに行おうとすると、非常に高い施工コストをかけるこ
とになるため、費用対効果の面で効率が著しく悪くな
る。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記の課題を
解決するものであって、一般の建築材料を有効に利用し
て簡易な施工で工場や倉庫等の建物におけるノイズ電波
の侵入を防ぐと共に、電波の干渉を防ぐものである。

【００１０】そのために本発明は、外部からのノイズ電
波の侵入を防ぐと共に内部の使用電波の相互干渉を防
ぎ、内部無線通信システムの良好な電波環境を創出する
電波障害対策建物であって、金属製の屋根材を用いた屋
根、金属製の外装材と電磁遮蔽性能を有するガラスを用
いた外周壁、及び導電性材料を用いた床により周囲の遮
蔽層を構成したことを特徴とし、金属製の屋根材は、内
側に電波吸収材を貼った多機能型折版屋根材により構成
し、前記導電性材料を用いた床は、金属製の構造材兼型
枠とコンクリートにより構成したことを特徴とするもの
である。

【００１１】

【発明の実施の形態】以下、本発明に係る実施の形態を
図面を参照しつつ説明する。図１は本発明に係る電波障
害対策建物の実施の形態を説明するための図、図２は多
機能型折版屋根材の構成例を示す図である。図中、１は
多機能型折版屋根材、２は金属製の外装材、３は網入り
ガラス、４はデッキプレート、５はコンクリート、１１
は折版、１２は電波吸収材、１３は制振材を示す。

【００１２】図１において、多機能型折版屋根材１は、
屋根部を通して外部から侵入するノイズ電波を遮断、減
衰させる金属製の屋根材であり、長尺カラー鉄板や角波
鉄板などでもよい。また、必要に応じて適宜内部に電波
吸収材を貼って内部における電波の多重反射障害（フェ
ージング）を防止し、さらには粘着性の制振材を貼って
雨音などの外部騒音を遮断するものである。金属製の外
装材２は、例えばアルミスパンドレルや鋼板など、電磁
遮蔽層として外壁部を通して外部から侵入するノイズ電
波を遮断、減衰させる金属性の建材を用いた外装材であ
る。網入りガラス３は、電磁遮蔽層として窓部を通して
外部から侵入するノイズ電波を遮断、減衰させるガラス
であり、高性能熱線反射ガラスでもよい。高性能熱線反
射ガラスは、スパッタにより金属を真空蒸着させて形成
された薄い金属膜（金属膜コーティング）を有するもの
であり、ガラスの金属膜をノイズ電波に対して１／５程
度（１５ｄＢ程度）に減衰させる特性を有するノイズ電
波の遮蔽膜として使用するものである。高性能熱線反射
ガラスは、可視光線透過率が膜厚や素材の混入率により
が変化し、一般的には膜厚が大きくなるほど可視光線透
過率が小さくなるのと相反するようにノイズ電波の遮蔽
特性は向上するので、要求される遮蔽特性やビルの採
光、外部からの熱（空調効率）、デザインの面等を考慮
して膜厚や素材の混入率のものを選択することになる。
デッキプレート４は、例えばＦデッキプレートその他の
金属製のデッキプレートからなる金属製構造材兼型枠で
あり、建物内の上下階での電波干渉を防止することがで
き、使用できるチャンネルをフルに利用できる。床は、
このデッキプレート４の上にコンクリート５を打設して
構成される。

【００１３】本発明に係る電波障害対策建物では、上記
のようにして屋根部、外壁部、窓部、床部をそれぞれに
金属製の建材を利用して電磁遮蔽層を構成することによ
り、外部から侵入するノイズ電波を遮断、減衰させ、ま
た、内部での電波の干渉を防ぐことができ、工場や倉庫
等の建物において、電波障害対策のためにコストが高く
なるのを抑えることができる。建物が複数階で構成され
る場合には、デッキプレート４により上下階での電波干
渉を防止するが、デッキプレート４に代えて金属メッシ
ュや金属箔、導電性繊維を用いた不織布その他の電磁遮
蔽材料を用いて床部の電磁遮蔽層を構成してもよいし、
１階のみの場合には、金属製構造材兼型枠のデッキプレ
ート４やその他の電磁遮蔽材料を用いなくてもよい。

【００１４】多機能型折版屋根材１として内部で電波の
多重反射を防ぎ、外部音を遮断するように構成した例を
示したのが図２であり、折版１１の内側の山部と谷部に
粘着性の制振材１３を介して電波吸収材１２を貼ったも
のである。電波吸収材１２としては、フェライトの他
に、カーボン繊維、カーボン粉末等を用いることができ
る。これら電波吸収材１２や制振材１３は、工場にて貼
って多機能型折版屋根材１として建設現場に搬入しても
よいが、建設現場で貼ってもよい。したがって、既設の
建物のリニューアルにも適用できる。また、リニューア
ルにおいて、例えば室内にＰＨＳアンテナ子機１６、パ
ソコン１７を配置して天井にＰＨＳアンテナ１４、構内
交換機１５を設置する場合で、それらＰＨＳアンテナ１
４、構内交換機１５の設置位置が決まっているときに
は、ＰＨＳアンテナ１４、構内交換機１５を設置した後
に、その設置位置を中心とした範囲で限定的に貼るよう
にしてもよい。このように電波障害対策用屋根材は、多
機能型折版屋根材として外側の折版１で外来電波を反射
（電磁波シールド）し、内部の電波吸収材２で電波の多
重反射を防いで電波の相互干渉を回避すると共に、制振
材３で雨音のような外部音を遮断するように構成したも
のである。

【００１５】なお、本発明は、上記実施の形態に限定さ
れるものではなく、種々の変形が可能である。例えば上
記実施の形態では、金属製の屋根材の内側で谷部と山部
に電波吸収材を貼るようにしたが、谷部のみでもよい。
また、全面を金属製の材料で覆う構成で説明したが、使
用される電波に偏波方向があるので、これに対応させて
金属製の材料を所定の間隔で配置してもよい。一般にこ
のような間隔は、遮蔽対象とする電波の波長に対してそ
の１／２０以下、３ＧＨｚの周波数までの場合には５ｍ
ｍ×５ｍｍ以下となるが、これは、３０ｄＢ程度の遮蔽
レベルを前提としたものである。しかし、その半分の１
５ｄＢ程度の遮蔽レベルを達成する、つまり、１／５程
度にノイズ電波のレベルを減衰させるのであれば、同じ
周波数を対象とした場合、１０ｍｍ×１０ｍｍ以下とし
てもよい。

【００１６】一般にテレビやラジオの放送等で使用され
ている電波は、５００ｋ〜１ＧＨｚの周波数帯域で、偏
波方向としては横偏波のものが使用されているのに対
し、ＰＨＳ（パーソナル・ハンディホン・システム）や
無線ＬＡＮ等で使用されている電波は、１ＧＨｚ〜３Ｇ
Ｈｚの周波数帯域で、偏波方向としては縦偏波のものが
使用されている。しかも、１ＧＨｚ〜３ＧＨｚの周波数
帯域によるＰＨＳをビル内に採用する場合には、縦偏波
面に対して比較的に低い遮蔽レベル、先に述べたように
従来の１００ｋＨｚ〜１ＧＨｚの周波数帯域で要求され
た２０〜３０ｄＢよりもはるかに低い遮蔽レベルでもよ
い。

【００１７】

【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
によれば、金属製の屋根材を用いた屋根、金属製の外装
材と電磁遮蔽性能を有するガラスを用いた外周壁、及び
導電性材料を用いた床により周囲の遮蔽層を構成するの
で、工場や倉庫等の建物でも、簡便な施工により建物外
部からのノイズ電波を遮断することができ、建物内部で
用いられる無線機器の誤動作を防ぐことができる。した
がって、低出力化してきている近年の無線システム（Ｐ
ＨＳ、無線ＬＡＮなど）を室内で使用する場合にきわめ
て有効である。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明に係る電波障害対策建物の実施の形態
を説明するための図である。

【図２】 多機能型折版屋根材の構成例を示す図であ
る。

【符号の説明】

１…多機能型折版屋根材、２…金属製の外装材、３…網
入りガラス、４…デッキプレート、５…コンクリート、
１１…折版、１２…電波吸収材、１３…制振材

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 竹下 忠隆 東京都港区芝浦一丁目２番３号清水建設株 式会社内

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 外部からのノイズ電波の侵入を防ぐと共
   に内部の使用電波の相互干渉を防ぎ、内部無線通信シス
   テムの良好な電波環境を創出する電波障害対策建物であ
   って、金属製の屋根材を用いた屋根、金属製の外装材と
   電磁遮蔽性能を有するガラスを用いた外周壁、及び導電
   性材料を用いた床により周囲の遮蔽層を構成したことを
   特徴とする電波障害対策建物。
2. 【請求項２】 金属製の屋根材は、内側に電波吸収材を
   貼った多機能型折版屋根材により構成したことを特徴と
   する請求項１記載の電波障害対策建物。
3. 【請求項３】 前記導電性材料を用いた床は、金属製の
   構造材兼型枠とコンクリートにより構成したことを特徴
   とする請求項１記載の電波障害対策建物。