JPH0998061A

JPH0998061A - Ｓａｗマッチドフィルタ及びこれを用いた受信装置及び通信システム

Info

Publication number: JPH0998061A
Application number: JP8189421A
Authority: JP
Inventors: Tadashi Eguchi; 正江口; Akihiro Koyama; 晃広小山; Kouichi Egara; 光一江柄; Akane Yokota; あかね横田; Akira Torisawa; 章鳥沢; Takahiro Hachisu; 高弘蜂巣
Original assignee: Canon Inc
Current assignee: Canon Inc
Priority date: 1995-07-24
Filing date: 1996-07-18
Publication date: 1997-04-08
Also published as: US5815055A; EP0756376A1

Abstract

(57)【要約】【課題】マッチドフィルタの出力電極における入力電
極からの距離に依存する出力レベルの差を緩和する。【解決手段】本願では、入力用ＩＤＴと出力用ＩＤＴ
とを備えるマッチドフィルタであって、伝播する弾性表
面波の拡散を防止する第１の手段を有するマッチドフィ
ルタを開示する。更に、弾性表面波を収束する構成に
し、あわせて、出力用ＩＤＴの電極指の内の入力用ＩＤ
Ｔ側の電極指の非交差部分を伝播する弾性表面波が存在
するように、出力用ＩＤＴに入力される弾性表面波の幅
を出力用ＩＤＴの電極指の内の少なくとも入力用ＩＤＴ
側の電極指の交差幅よりも広くする構成も開示する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、疑似ノイズ信号に
よって拡散された信号の復号や同期検出に用いられる弾
性表面波（ＳＡＷ）マッチドフィルタに関する。更に本
発明は、それを用いた受信装置、及びそれを用いた通信
システムに関する。

【０００２】

【従来の技術】近年、弾性表面波（ＳＡＷ：Surface Ac
oustic Wave ）を用いたエレクトロメカニカル機能素子
が各方面で活発に取り上げられているが、それは物質の
表面に励起された弾性波の音速が数ｋｍ／ｓであるの
で、機器の小型化が可能で、弾性表面波のエネルギーが
伝搬媒質の表面付近に集中していて、弾性波の発生、検
出、制御を固体表面上で処理できるという期待が大きい
からである。

【０００３】このような特質を有する弾性表面波の信号
処理への応用例として、スペクトラム拡散（ＳＳ）方式
の通信方式があり、送りたい信号を本来もっている帯域
幅よりも、はるかに広い周波数帯域をもつ符号化信号列
によって拡散・変換した後送信し、その後、その符号化
信号列にのみ応答する受信装置によって検出し、圧縮・
逆変換して元の信号に再生する。この際に、符号化信号
列にのみ応答する素子として、この弾性表面波素子のマ
ッチドフィルタ（Matched Filtering）が用いられる。
このマッチドフィルタは例えば直接拡散（ＤＳ）方式の
擬似ノイズ（ＰＮ）系列によって拡散された信号に対し
て、受信側で同期を捕捉する際にＰＮ系列の１周期分に
亘って積分して相関値の検出を行なうものである。この
同期を捕捉するために用いられるマッチドフィルタ素子
は音波の伝搬路途中に一定間隔で電極を取付、中間的な
遅延量の信号を中間タップとして多数取り出せる構造に
なっている。夫々のタップの間隔は丁度遅延量がＰＮ系
列のチップ幅に相当するように設定されている。そうし
て所定のＰＮ系列の拡散信号に対応したＰＮ系列のタッ
プを備えたＳＡＷ素子によって相関値を容易に検出でき
る。

【０００４】この、マッチドフィルタ、特に弾性表面波
を用いたマッチドフィルタはスペクトラム拡散（ＳＳ：
Spectrum Spread）通信を行うにあたって、同期確立の
ためのデバイスとしても、近年その重要性が増大しつつ
ある。

【０００５】図１２はこのような従来の弾性表面波素子
を示す概念図である。図において、１２１はＳＴカット
水晶などの圧電基板、１１１は電気信号を弾性表面波信
号に変換する入力櫛形電極（ＩＤＴ：InterDigital Tra
nsducer ）である。１３１は出力ＩＤＴであり、１３１
１、１３１２、１３１３、・・・は出力ＩＤＴの電極指
対である。この電極指対１３１１、１３１２、１３１
３、・・・の電極方向、すなわち、どちらの電極につな
がっている電極指を入力ＩＤＴ側に配置するかは、入力
ＩＤＴに入力される信号のＰＮ系列に合わせて決められ
ている。入力されたＰＮ符号列信号と出力電極指の符号
列とが一致するとき最大の相関値が得られ、これがマッ
チドフィルタに要求される特性となる。また、これらの
電極指対の間隔は、入力ＩＤＴ１１１から発生したＳＡ
Ｗ信号の、ＰＮの符号列の１チップ長の時間で伝搬する
距離に相当している。

【０００６】これらの電極はアルミニウムなどの導電性
材料からなり、圧電基板上に蒸着やスパッタリングでア
ルミニウムなどの材料を皮膜し、通常フォトリソグラフ
ィー技術を用いて形成される。

【０００７】このような構成の弾性表面波素子におい
て、入力ＩＤＴ１１１にＰＮ拡散符号を掛け合わせた搬
送角周波数ωの電気信号を入力すると、基板の圧電効果
により電気信号から弾性表面波（ＳＡＷ）信号に励起・
変換される。たとえば、ＰＮ拡散符号が０，１の２値信
号の場合、符号値が変わる毎に位相が反転するＳＡＷ信
号が、入力ＩＤＴ１１１より出力され、左右両側に伝搬
する。出力ＩＤＴ１３１では、ＩＤＴを構成している電
極指対１３１１、１３１２、１３１３、・・・、１３１
ｘの電極方向は、例えば電極指対１３１５で反転してい
るように、ＰＮ拡散符号に合わせて決められていて、ま
た、これらの電極指対の間隔は、入力ＩＤＴ１１１から
発生したＳＡＷ信号が、ＰＮ符号列の１チップ長の時間
で伝搬する距離に相当しているため、入力ＩＤＴ１１１
より出力されたＳＡＷ信号が全符号長の時間だけ伝搬
し、入力ＩＤＴ１１１から出力用ＩＤＴ１３１へ伝搬し
てきたＳＡＷ信号と出力電極指対１３１１、１３１２、
１３１３、・・・、１３１ｘのすべての位相が一致した
ときのみ、大きな出力電気信号が得られる。この信号は
１つのＰＮ符号列が出力ＩＤＴ１３１を伝搬し終わる毎
に出力されるため、入力符号の同期信号にマッチした同
期信号が得られることとなる。このようなＳＡＷマッチ
ドフィルタのしくみは「弾性表面波工学；２００〜２０
５頁，電子情報通信学会、柴山幹夫監修」などに詳述さ
れている。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うなマッチドフィルタの場合、入力ＩＤＴ１１１から出
力されるＳＡＷ信号は、図１３にＳＡＷマッチドフィル
タの入力ＩＤＴが励起するＳＡＷ強度（ＩＤＴの交差幅
を２０λ；ＩＤＴより約２λ離れたところのＳＡＷ強
度）を示すように、入力ＩＤＴ１１１の電極指の交差部
分の最も外側の部分での励起の相対強度が中心部分に比
べて大きい分布となるため、ＳＡＷ信号の広がりの影響
が大きく、入力ＩＤＴから離れている出力電極指対で
は、電気信号に変換される量が少なくなってしまう。

【０００９】図１４にこのようにＳＡＷが伝搬したとき
に示すＳＡＷ強度分布をホイヘンスの原理を用いてシミ
ュレーションした結果を示す。同図においては、色が薄
いところほどＳＡＷ強度は大きくなっている。このよう
な場合、先に伝搬した符号列の最初の方の符号ほど電気
信号に変換される量が少なくなり、得られる出力信号の
符号列の終わりに近い符号ほど一種の重み付けをされた
信号となるため、出力電極指対１３１１、１３１２、１
３１３、・・・、１３１ｘの電極方向と、ＳＡＷ信号の
相関として得られる同期信号が設計値より小さくなり、
Ｓ／Ｎが小さくなり、同期のタイミングがずれるという
問題があった。

【００１０】また更に、上記のようなマッチドフィルタ
の場合、入力ＩＤＴ１１１から伝搬されたＳＡＷ信号
は、出力ＩＤＴの電極誌対１３１１、１３１２、・・
・、１３１ｘを通過するごとにＳＡＷ信号の一部が電気
信号に変換されるため、徐々に信号が小さくなってしま
う。それにより更に前記重み付けが強調されることにな
ってしまう。

【００１１】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記問題点を
解決するためになされたものであり、本発明のマッチド
フィルタにおいては、伝播する弾性表面波の等位相面を
凹面状にするための第１の手段を有する。それによりＳ
ＡＷが伝播するのに伴って生じる拡散の影響を低減す
る。

【００１２】特に本発明では、前記第１の手段として
は、マッチドフィルタの入力用ＩＤＴを前記出力用ＩＤ
Ｔに向かって凹型に設けて、該入力用ＩＤＴが前記第１
の手段を兼ねる構成や、第１の手段として入力用ＩＤＴ
と出力用ＩＤＴとの間にアコースティックレンズ（acou
stic lens：音響レンズ）を有する構成をとりうる。ま
た入力用ＩＤＴを凹型にする構成としては、その形状を
概略円弧形状にする構成をとりうる。特にその形状を、
ＳＡＷの伝播速度の角度依存性を考慮して、励起され伝
播されるＳＡＷが収束する位置の伝播方向への広がりを
緩和すべく、円弧形状からわずかにずらした形状として
もよい。

【００１３】また更に、前記入力用ＩＤＴとしては、電
極指の交差部分の内の交差幅方向における中心部分で励
起される弾性表面波の強度が外側部分で励起される弾性
表面波の強度よりも強くなるように重み付けされている
ものを用いてもよい。それにより、伝播する弾性表面波
の等位相面を凹面状であることによって、特に入力用Ｉ
ＤＴで励起されるＳＡＷの内、外側部分で励起されるＳ
ＡＷの拡散を防止できると同時に、拡散の影響が比較的
少ない中心部分で励起されるＳＡＷの強度をより強める
ことができるため、特に好適である。

【００１４】また、伝播するＳＡＷの等位相面の形状と
しては、拡散を緩和できる程度に凹面状とする構成だけ
でなく、伝播するに伴い収束していくようにしてもよ
い。特に伝播するに伴い収束していくように構成したと
きに、出力用ＩＤＴの電極指の内の入力用ＩＤＴ側の電
極指の非交差部分を伝播する弾性表面波が存在するよう
に、出力用ＩＤＴに入力される弾性表面波の幅を出力用
ＩＤＴの電極指の内の少なくとも入力用ＩＤＴ側の電極
指の交差幅よりも広くすることによって、出力用ＩＤＴ
の入力用ＩＤＴから遠い側の電極指の交差部分に、出力
用ＩＤＴの入力用ＩＤＴから近い側の電極指の交差部分
を通過していないＳＡＷが到達するため、入力用ＩＤＴ
から遠い側の電極指の交差部分に入力するＳＡＷに入力
用ＩＤＴに近い側の電極指の交差部分が与える影響を緩
和することができる。出力用ＩＤＴに入力される弾性表
面波の幅を出力用ＩＤＴの電極指の内の少なくとも入力
用ＩＤＴ側の電極指の交差幅よりも広くするための構成
としては、たとえば、入力用ＩＤＴの電極指の交差幅
を、出力用ＩＤＴの電極指の内の少なくとも前記入力用
ＩＤＴ側の電極指の交差幅よりも広くすればよい。

【００１５】またＳＡＷが伝播するに伴い収束するよう
にするときには、その収束位置としては、出力用ＩＤＴ
の電極指の内の前記入力用ＩＤＴから最も離れた電極指
付近とするのが好適である。

【００１６】また入力用ＩＤＴ、出力用ＩＤＴのどちら
か一方もしくは両方の電極指がスプリット電極になって
いる構成や、入力用ＩＤＴ、出力用ＩＤＴのどちらか一
方もしくは両方が、一方向性ＩＤＴである構成もとりう
る。

【００１７】また本発明のマッチドフィルタに用いる圧
電性を有する基板としては、例えばＳＴカット水晶基板
のように、温度による弾性表面波の速度の変化が概略０
である基板が好適である。また圧電性を有する基板とし
て、表面に薄膜が形成されており、温度による弾性表面
波の速度の変化が概略０である基板を用いてもよい。

【００１８】また本願は、上記のごとき精度の高い相関
信号が得られるマッチドフィルタをスペクトラム拡散信
号の復号もしくは同期検出に用いた受信装置や、それを
用いた通信システムも提示するものである。

【００１９】

【発明の実施の形態】

（実施形態１）図１は、本発明の弾性表面波（ＳＡＷ）
マッチドフィルタの概略図である。図において、１０１
はマッチドフィルタチップを固定するステム、１０２は
ＳＴカット水晶などの圧電基板、１１１は電気信号を弾
性表面波信号に変換する入力ＩＤＴ、１２１はスペクト
ル拡散された入力信号からマッチドフィルタの入力中心
周波数に合わせたＩＦ信号を入力ピン１２０を介して供
給するためのブスバー、１３１Ｙはマッチドフィルタの
出力を取り出すためのブスバー、１２２、１３１Ｚは電
位の基準となる接地電極を接続するためのブスバーであ
る。１３１は出力ＩＤＴであり、１３１１、１３１２、
１３１３、・・・、１３１ｘは出力ＩＤＴの電極指対で
ある。この電極指対１３１１、１３１２、１３１３、・
・・、１３２ｘの電極方向、すなわち、どちらの電極に
つながっている電極指を入力ＩＤＴ側に配置するかは、
入力ＩＤＴに入力される信号のＰＮ符号に合わせて決め
られている。例えば、入力符号列が１１０１０１１……
０１の場合には、図に示すように電極指対１３１３，１
３１５，…１３１Ｘ−1が他の電極指対と反対になって
いる。

【００２０】また、これらの電極指対の間隔は、入力Ｉ
ＤＴ１１１から発生したＳＡＷ信号が、符号列の１チッ
プ長の時間で伝搬する距離に相当している。入力ＩＤＴ
１１１は出力ＩＤＴ１３１に向かって凹面の円弧形状に
なっている。この凹面の円弧形状は、収束していく形状
ではなく、入力ＩＤＴが出力ＩＤＴの外側へ拡散するこ
とを防ぎ、且つ出力ＩＤＴ側にほぼ直進する形状であ
る。

【００２１】図２は、圧電基板の１つであるＹカットの
ニオブ酸リチウムで、円弧型ＩＤＴでＺ軸方向にＳＡＷ
を伝搬させた時のＳＡＷ強度分布をホイヘンスの原理を
用いてシミュレーションした結果を示している。ＳＡＷ
マッチドフィルタは、通常温度による速度変化がないＳ
Ｔカット水晶基板などが用いられるが、この図ではＳＡ
Ｗの伝搬の様子を示す一例として、Ｙカットのニオブ酸
リチウム基板の場合のＳＡＷ強度分布を示している。こ
のとき、円弧型ＩＤＴの入力信号は、中心周波数は２０
０ＭＨｚ、曲率半径は２０ｍｍ、円弧の中心角は２０°
である。

【００２２】図２の場合、図１４に比べ、中央付近のＳ
ＡＷ強度が大きく、円弧型ＩＤＴの中央線上にＳＡＷが
集中している状態で出力電極の近接端面から２０ｍｍ以
上伝搬していることがわかる。

【００２３】また、上記圧電基板は温度による速度変化
が概略０であるか、または、上記圧電基板上に薄膜を付
けることによって温度による速度変化が概略０になるよ
うに設計された圧電基板とすることが出来る。この場
合、例えばＳＳ通信システムに用いられる場合に環境温
度の変化による相関ピーク検出レベルの変化と同期信号
の時間のズレを抑えることができる。

【００２４】上記構成の入力ＩＤＴの形状により、ＳＡ
Ｗの拡散による影響を低減できる為、ＳＴカット水晶基
板のように電気機械結合係数が小さく、出力ＩＤＴの入
力ＩＤＴ側の電極指対によるロスが軽微である基板を用
いる時には、出力ＩＤＴの各電極指対でＳＡＷ／電気変
換される検出信号レベルは入力ＩＤＴ側の出力電極指対
と入力ＩＤＴから遠距離側の出力電極指対とでほぼ同一
レベルを確保でき、入力符号列にマッチする相関ピーク
を高レベルで得ることができる。なお、更に出力ＩＤＴ
の各電極指対による検出レベルを均一化するために、各
電極指対の交差幅に重み付けしてアポダイズする方法を
用いてもよい。

【００２５】（実施形態２）図３は、本発明の弾性表面
波（ＳＡＷ）マッチドフィルタの別の実施形態の概略図
である。同図における番号は図１と同様のものを示して
いる。図３において、入力ＩＤＴ１１１は出力電極１３
１に向かって凹面の円弧又は圧電基板上を伝搬する超音
波の伝搬速度の角度依存性を考慮した擬似円弧の形状に
なっている。この形状の入力ＩＤＴ１１１から励振され
るＳＡＷが集中し、等位相面が直線で、伝搬方向に垂直
となり、位相が揃う場所、すなわちＩＤＴ１１１の焦点
は、出力ＩＤＴ１３１の入力ＩＤＴ１１１から最も離れ
た電極指対１３１ｘ付近になるようにする。この場合、
入力ＩＤＴ１１１から伝搬してきたＳＡＷ信号の一部は
出力ＩＤＴの電極指対１３１１、１３１２・・・の交差
電極部分を通過せずに伝搬していくので、図１２の従来
のマッチドフィルタに比べ、出力ＩＤＴの電極指対１３
１１、１３１２・・・で電気信号に変換されるエネルギ
ー量が少なくなり、逆に入力ＩＤＴ１１１から離れた出
力ＩＤＴの電極指対１３１ｘ付近で電気信号に変換され
るエネルギー量が増える。このようにして出力ＩＤＴの
電極指対をＳＡＷが伝搬する際に減っていくＳＡＷエネ
ルギー量を、ＳＡＷが焦点に向かって集中するエネルギ
ー量で補うことができ、入力ＩＤＴ１１１から離れた出
力ＩＤＴの電極指対１３１ｘで電気信号に変換される量
をほとんど等しくできる。

【００２６】こうして、出力ＩＤＴの各電極指対にて得
られる変換信号レベルがほぼ一定の等しい大きさの電気
信号となり、所定の符号列の入力信号に対してより正確
な相関ピークを得ることができ、入力符号列に同期信号
がマッチした高レベルの同期信号を得ることができる。

【００２７】（実施形態３）図４は、本発明の実施形態
１、または実施形態２の弾性表面波（ＳＡＷ）マッチド
フィルタの入力ＩＤＴ及び、出力ＩＤＴの電極指をスプ
リット電極にしたときの概略図である。マッチドフィル
タの場合、出力電極の電極指対を通過するＳＡＷが次の
電極指対に到達するまでの時間と、同じ電極指対で反射
するＳＡＷが前の電極指対に到達する時間が等しいので
ノイズ源となる反射波の影響をなくす必要がある。図４
−２は図４−１の出力ＩＤＴの電極指対の拡大図であ
る。同図において、各電極指の線幅、電極指の間隔は共
にλ／８になっている。同図に示したスプリット電極は
ＳＡＷデバイスにおける反射波を抑制する手段として用
いられるが、本発明のマッチドフィルタにおいても有効
な手段である。

【００２８】また、本実施形態では、入力用ＩＤＴと出
力用ＩＤＴの両者にスプリット電極を設けたが、このス
プリット電極は、入力用ＩＤＴと出力用ＩＤＴのどちら
か一方であってもよい。

【００２９】（実施形態４）図５は、本発明の実施形態
１、または実施形態２の弾性表面波（ＳＡＷ）マッチド
フィルタの入力ＩＤＴ及び、出力ＩＤＴを３相型の一方
向性ＩＤＴにしたときの概略図である。３相型の一方向
性ＩＤＴはおのおの１２０°位相の異なる電界（あるい
は０°位相と６０°位相の電界）を用いて、ＳＡＷを励
振又は受信することにより、一方向特性を得るものであ
る。なお、例えば、ここでも出力ＩＤＴの電極指対１３
１３，１３１５，１３１Ｘ−1で他の電極指対と反転し
た符号で取り出され、入力符号列に同期した信号を得
る。

【００３０】３相型の一方向性ＩＤＴの場合、電極指で
の反射はほとんどなく、また、双方向のＩＤＴに比べ理
想的には６ｄＢの出力の増大が期待できる。また、図６
のように、入力ＩＤＴ及び出力ＩＤＴともに、図４に示
したスプリット電極の一方の電極指を太くし、他方を細
くして反射中心と励起中心をずらすことによって一方向
性を得るタイプは、一方向性は小さいが１回だけのフォ
トリソグラフィで製作可能なため、安価に高効率のマッ
チドフィルタを得ることができる。入力符号列信号に同
期した同期信号を各ＩＤＴによる反射成分を抑制して、
より高レベルの相関ピークを得ることができる。

【００３１】一方向性を得る手段は、グループ形一方向
性ＳＡＷ素子、反射バンク形、浮き電極による反射を用
いた一方向性ＳＡＷ素子ほかにも種々考案されているが
（弾性波素子技術ハンドブック，日本学術振興会弾性波
素子技術第１５０委員会編、オーム社出版ｐ１９３〜
１９５）、これらの一方向性ＳＡＷを本発明に応用して
もよい。

【００３２】また本発明のマッチドフィルタとして上記
各実施形態では、入力用ＩＤＴを概略円弧状に設けて、
それ自体が拡散防止手段を兼ねる構成を示したが、拡散
防止手段としては、図７に示すように、音響レンズ（ア
コースティックレンズ：acoustic lens）１４１を用い
ることができる。入力用ＩＤＴで励起されたＳＡＷは音
響レンズ１４１でその等位相面が凹面状になるように制
御される。また図８には、入力用ＩＤＴ１１１としてア
ポタイズ型のものを用いた構成を示している。この構成
によれば、電極指の交差部分の内の交差幅方向における
中心部分で励起される弾性表面波の強度が、外側部分で
励起される弾性表面波の強度よりも強くなるように重み
付けされている。また他の重み付け形状のものを用いて
もよい。それにより、伝播する弾性表面波の等位相面を
凹面状であることによって、特に入力用ＩＤＴで励起さ
れるＳＡＷの内外側部分で励起されるＳＡＷの拡散を防
止できると同時に、拡散の影響が比較的少ない中心部分
で、励起されるＳＡＷの強度をより強めることができる
ため、特に好適である。

【００３３】（実施形態５）図９は、以上説明したよう
なＳＡＷマッチドフィルタを用いた通信システムの一例
を示すブロック図である。図において、上段の４０は送
信装置を示す。この送信装置は送信すべき信号を拡散符
号を用いて、スペクトラム拡散変調して、アンテナ４０
１より送信する。送信された信号は、受信装置４１で受
信され、復調される。受信装置４１は、アンテナ４１
１、高周波信号処理部４１２、同期回路４１３、符号発
生器４１４、拡散復調回路４１５、復調回路４１６より
構成される。アンテナ４１１にて受信された受信信号は
高周波信号処理部４１２にて適当にフィルタリング及び
増幅され、送信周波数帯信号のまま若しくは適当な中間
周波数帯（ＩＦ）信号に変換され出力される。該信号は
同期回路４１３に入力される。

【００３４】同期回路４１３は本発明の上記実施形態に
記載の弾性表面波素子を用いた弾性表面波装置４１３１
と、弾性表面波装置４１３１から出力された信号を処理
し、送信信号に対する拡散符号同期信号とクロック同期
信号を符号発生器４１４に出力する信号処理回路４１３
３からなる。ＳＡＷマッチドフィルタである弾性表面波
装置４１３１には高周波信号処理部４１２からの出力信
号が入力され、受信信号に含まれる同期専用拡散符号成
分とＳＡＷマッチドフィルタ４１３１の出力ＩＤＴの各
電極指対の符号配列の極性とが一致した時に相関ピーク
が出力される。従って、上記各実施形態で説明したＳＡ
Ｗマッチドフィルタによって、ノイズに干渉されない、
相関ピークの高い、Ｓ／Ｎのよい同期信号を得ることが
できる。

【００３５】信号処理回路４１３３では、ＳＡＷマッチ
ドフィルタ４１３１から入力される同期信号から、相関
ピークを検出し、クロック信号を再生し、拡散符号同期
信号及びクロック信号が符号発生器４１４に出力され
る。同期確立後、符号発生器４１４は送信側の拡散符号
に対しクロック及び拡散符号位相が一致した拡散符号を
発生する。この拡散符号は拡散復調回路４１５に出力さ
れ、拡散復調回路４１５では拡散変調される前の信号が
復元される。拡散変復調回路４１５から出力される信号
は、いわゆる周波数変調、位相変調などの一般に使用さ
れている変調方式により変調されている信号なので、同
業者が周知の復調回路４１６により、データ復調がなさ
れる。

【００３６】（実施形態６）図１０、図１１は、以上説
明したような弾性表面波素子を用いた通信システムの送
信装置及び受信装置の一例を示すブロック図である。図
１０において、５０１は直列に入力されるデータをｎ個
の並列データに変換する直並列変換器、５０２−１〜ｎ
は並列化された各データと拡散符号発生器５０３から出
力されるｎ個の拡散符号とを乗算する乗算器群、５０３
はｎ個のそれぞれ異なる拡散符号と同期専用の拡散符号
を発生する拡散符号発生器、５０４は拡散符号発生器５
０３から出力される同期専用拡散符号と乗算器群５０２
−１〜ｎのｎ個の出力を加算する加算器、５０５は加算
器５０４の出力を送信周波数信号に変換するための高周
波段、５０６は送信アンテナである。

【００３７】また、図１１において、６０１は受信アン
テナ、６０２は高周波信号処理部、６０３は送信側の拡
散符号とクロックに対する同期を捕捉し維持する上記実
施形態で説明したＳＡＷマッチドフィルタを用いた同期
回路、６０４は同期回路６０３より入力される符号同期
信号及びクロック信号により、送信側の拡散符号群と同
一のｎ＋１個の拡散符号ＰＮ及び参照用拡散符号ＰＮ0
を発生する拡散符号発生器、６０５は拡散符号発生器６
０４より出力されるキャリア再生用拡散符号ＰＮ0と高
周波信号処理部６０２の出力から搬送波信号を再生する
キャリア再生回路、６０６はキャリア再生回路６０５の
出力と高周波信号処理部６０２の出力と拡散符号発生器
６０４の出力であるｎ個の拡散符号ＰＮを用いてベース
バンドで復調を行うベースバンド復調回路、６０７はベ
ースバンド復調回路６０６の出力であるｎ個の並列復調
データを並直列変換する並直列変換器である。

【００３８】上記構成において、送信側ではまず入力さ
れたデータが直並列変換器５０１によって符号分割多重
数に等しいｎ個の並列データに変換される。一方、拡散
符号発生器５０３はｎ＋１個の符号周期が同一でそれぞ
れ異なる拡散符号ＰＮ0 〜ＰＮn を発生している。この
うち拡散符号ＰＮ0 は同期及びキャリア再生専用であ
り、前記並列データによって変調されず直接加算器５０
４に入力される。残りのｎ個の拡散符号ＰＮ1〜nは乗算
器群５０２−１〜ｎにてｎ個の並列データにより乗算・
変調され、加算器５０４に入力される。加算器５０４は
入力されたｎ＋１個の信号を線形に加算し、高周波段５
０５に加算されたベースバンド信号を出力する。該ベー
スバンド信号は続いて高周波段５０５にて適当な中心周
波数を持つ高周波信号に変換され、送信アンテナ５０６
より送信される。

【００３９】受信側では、受信アンテナ６０１で受信さ
れた信号は高周波信号処理部６０２にて適当にフィルタ
リング及び増幅され、送信周波数帯信号のまま若しくは
適当な中間周波数帯（ＩＦ）信号に変換され出力され
る。該信号は同期回路６０３に入力される。同期回路６
０３は本発明の上記実施形態で説明したＳＡＷマッチド
フィルタである弾性表面波装置６０３１と、弾性表面波
装置６０３１から出力された信号を処理し、送信信号に
対する拡散符号同期信号およびクロック同期信号を拡散
符号発生器６０４に出力する信号処理回路６０３３から
なる。

【００４０】弾性表面波装置６０３１には高周波信号処
理部６０２からの出力信号が入力される。ここで弾性表
面波装置６０３１では、受信信号に含まれる同期専用拡
散符号成分と、弾性表面波装置６０３１の出力電極指対
の符号に合わせた電極指の配列極性とがＳＡＷマッチド
フィルタの弾性表面波装置６０３１の出力電極指対配列
上にて一致した時に高い相関ピークが出力され、これに
より高Ｓ／Ｎの同期信号を得ることが出来る。また一致
しないときは電極指対配列の出力レベルは低く、同期信
号を得ることはできない。信号処理回路６０３３では、
弾性表面波装置６０３１から入力される信号から相関ピ
ークを検出し、送信された拡散符号ＰＮ0のクロック信
号を再生し、符号同期信号及びクロック信号が拡散符号
発生器６０４に出力される。

【００４１】同期確立後、拡散符号発生器６０４は送信
側の拡散符号群に対しクロック及び拡散符号位相が一致
した拡散符号群を発生する。これらの符号群のうち同期
専用の拡散符号ＰＮ0 はキャリア再生回路６０５に入力
される。キャリア再生回路６０５では同期専用拡散符号
ＰＮ0 により、高周波信号処理部６０２の出力である送
信周波数帯若しくは中間周波数帯に変換された受信信号
を逆拡散し、送信周波数帯若しくは中間周波数帯の搬送
波を再生する。キャリア再生回路６０５の構成は、たと
えば位相ロックループを利用した回路が用いられる。受
信信号と同期専用拡散符号ＰＮ0 は乗算器にて乗算され
る。同期確立後は受信信号中の同期専用拡散符号と参照
用の同期専用拡散符号のクロック及び符号位相は一致し
ており、送信側の同期専用拡散符号ＰＮ0はデータで変
調されていないため、乗算器で逆拡散され、その出力に
は搬送波の成分が現れる。該出力は続いて帯域通過フィ
ルタに入力され、搬送波成分のみが取り出され出力され
る。該出力は次に位相検出器、ループ・フィルタ及び電
圧制御発振器にて構成されるよく知られた位相ロックル
ープに入力され、電圧制御発振器より帯域通過フィルタ
より出力される搬送波成分に位相のロックした信号が再
生搬送波として出力される。

【００４２】再生された搬送波はベースバンド復調回路
６０６に入力される。ベースバンド復調回路６０６では
キャリア再生回路６０５からの該再生搬送波と高周波信
号処理部６０２の出力よりベースバンド信号が生成され
る。該ベースバンド信号はｎ個に分配され拡散符号発生
器６０４の出力である拡散符号群ＰＮ1 〜ＰＮn により
各符号分割チャネル毎に逆拡散され、続いて並列信号と
してデータ復調がなされる。復調されたｎ個の並列復調
データは並直列変換器６０７にて直列データに変換され
出力される。

【００４３】本実施形態は２値変調の場合であるが、直
交変調など、他の変調方式でも良い。

【００４４】

【発明の効果】以上述べてきたように、本発明において
は圧電基板上に形成された入力用すだれ状電極によって
弾性表面波を励起し、ある定められた符号列に合わせて
配置された出力用すだれ状電極で信号を受け取ることに
よって、上記符号列に一致した符号列の信号のみを伝達
する、いわゆるＳＡＷマッチドフィルタにおいて、ＳＡ
Ｗが伝搬する間にＳＡＷが広がり、符号列の終わりに近
い符号ほど小さくなる信号に対し、出力電極指対の全般
に亘って電気信号変換出力を均一化し、相関ピークの高
い高Ｓ／Ｎの信号を得ることができる。

【００４５】また、このＳＡＷマッチドフィルタをスペ
クトル拡散（ＳＳ）通信用受信装置の同期捕捉に使用す
る場合、高Ｓ／Ｎの同期信号を得ることができるため、
通信伝送の安定した信頼性の高い復調を可能とする。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施形態１のＳＡＷマッチドフィルタ
の概略図である。

【図２】実施形態１のＳＡＷマッチドフィルタの入力Ｉ
ＤＴで励起されたＳＡＷの強度分布のシミュレーション
図である。

【図３】本発明の実施形態２のＳＡＷマッチドフィルタ
の概略図である。

【図４】本発明のＳＡＷマッチドフィルタにおいてスプ
リッタ電極を用いた場合の概念図である。

【図５】本発明のＳＡＷマッチドフィルタにおいて３相
型一方向性ＩＤＴを用いた場合の概念図である。

【図６】本発明のＳＡＷマッチドフィルタにおいて反射
中心と励起中心をずらすことで一方向性を得るタイプの
スプリッタ電極を用いた場合の概念図である。

【図７】本発明による音響レンズを用いてＳＡＷの等位
相面を凹面状にする構成を示す図である。

【図８】本発明による入力用ＩＤＴとしてアポタイズ電
極を用いる構成を示す図である。

【図９】本発明の弾性表面波素子を用いた通信システム
の一例を示すブロック図である。

【図１０】本発明の弾性表面波素子を用いた通信システ
ムの送信装置の一例を示すブロック図である。

【図１１】本発明の弾性表面波素子を用いた通信システ
ムの受信装置の一例を示すブロック図である。

【図１２】従来のＳＡＷマッチドフィルタの概略図であ
る。

【図１３】従来のＳＡＷマッチドフィルタの入力ＩＤＴ
が励起するＳＡＷ強度（ＩＤＴの交差幅２０λ；ＩＤＴ
より約２λ離れたところのＳＡＷ強度）を示す図であ
る。

【図１４】従来のＳＡＷマッチドフィルタの入力ＩＤＴ
が励起するＳＡＷ強度分布を示す図である。

【符号の説明】

１１１電気信号を弾性表面波信号に変換する入力ＩＤ
Ｔ１２１ＳＴカット水晶などの圧電基板１３１出力ＩＤＴ１３１１、１３１２、１３１３、・・・、１３１ｘ出
力ＩＤＴの電極指対４０送信装置４０１送信用アンテナ４１受信装置４１１受信用アンテナ４１２高周波信号処理部４１３同期回路４１４符号発生器４１５拡散復調回路４１６復調回路５０１直列に入力されるデータをｎ個の並列データに
変換する直並列変換器５０２−１〜ｎ乗算器群５０３拡散符号発生器５０４加算器５０５高周波段５０６送信アンテナ６０１受信アンテナ６０２高周波信号処理部６０３同期回路６０４拡散符号発生器６０５キャリア再生回路６０６ベースバンド復調回路６０７並直列変換器

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者横田あかね東京都大田区下丸子３丁目30番２号キヤノン株式会社内 (72)発明者鳥沢章東京都大田区下丸子３丁目30番２号キヤノン株式会社内 (72)発明者蜂巣高弘東京都大田区下丸子３丁目30番２号キヤノン株式会社内

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】圧電性を有する基板上に形成され、入力
符号列信号に対応する弾性表面波を励起する入力用すだ
れ状電極（すだれ状電極を、以下「ＩＤＴ」と称する）
と、ある定められた符号列に対応して電極指を配置した
出力用ＩＤＴとを有するＳＡＷマッチドフィルタであっ
て、前記入力用ＩＤＴで励起され、前記出力用ＩＤＴに向け
て伝播される弾性表面波の等位相面を前記出力用ＩＤＴ
に向かって凹面状にするための第１の手段を有すること
を特徴とするＳＡＷマッチドフィルタ。
【請求項２】前記入力用ＩＤＴが前記出力用ＩＤＴに
向かって凹型であり、該入力用ＩＤＴが前記第１の手段
を兼ねている請求項１に記載のＳＡＷマッチドフィル
タ。
【請求項３】前記入力用ＩＤＴが概略円弧形状である
請求項２に記載のＳＡＷマッチドフィルタ。
【請求項４】前記第１の手段として、前記入力用ＩＤ
Ｔと前記出力用ＩＤＴとの間にアコースティック・レン
ズ（acoustic lens）を有する請求項１に記載のＳＡＷ
マッチドフィルタ。
【請求項５】前記入力用ＩＤＴは、電極指の交差部分
の内の交差幅方向における中心部分で励起される弾性表
面波の強度が外側部分で励起される弾性表面波の強度よ
りも強くなるように重み付けされている請求項１乃至４
のいずれか１項に記載のＳＡＷマッチドフィルタ。
【請求項６】前記第１の手段は、前記入力用ＩＤＴが
励起する弾性表面波が伝播する際の拡散を緩和すること
を特徴とする請求項１乃至５のいずれか１項に記載のＳ
ＡＷマッチドフィルタ。
【請求項７】前記出力用ＩＤＴの電極指の内の前記入
力用ＩＤＴ側の電極指の非交差部分を伝播する弾性表面
波が存在するように、前記出力用ＩＤＴに入力される弾
性表面波の幅は前記出力用ＩＤＴの電極指の内の少なく
とも前記入力用ＩＤＴ側の電極指の交差幅よりも広いこ
とを特徴とする請求項１乃至６のいずれか１項に記載の
ＳＡＷマッチドフィルタ。
【請求項８】前記入力用ＩＤＴの電極指の交差幅は、
前記出力用ＩＤＴの電極指の内の少なくとも前記入力用
ＩＤＴ側の電極指の交差幅よりも広いことを特徴とする
請求項７に記載のＳＡＷマッチドフィルタ。
【請求項９】前記第１の手段によって等位相面を凹面
状にされた弾性表面波は、前記出力用ＩＤＴの電極指の
内の前記入力用ＩＤＴから最も離れた電極指付近に収束
することを特徴とする請求項１乃至８のいずれか１項に
記載のＳＡＷマッチドフィルタ。
【請求項１０】前記入力用ＩＤＴ、出力用ＩＤＴのど
ちらか一方もしくは両方の電極指がスプリット電極にな
っている請求項１乃至９のいずれか１項に記載のＳＡＷ
マッチドフィルタ。
【請求項１１】前記入力用ＩＤＴ、出力用ＩＤＴのど
ちらか一方もしくは両方が、一方向性ＩＤＴである請求
項１乃至１０のいずれか１項に記載のＳＡＷマッチドフ
ィルタ。
【請求項１２】前記圧電性を有する基板は、温度によ
る弾性表面波の伝搬速度の変化が概略０である基板であ
る請求項１乃至１１のいずれか１項に記載のＳＡＷマッ
チドフィルタ。
【請求項１３】前記圧電性を有する基板は、表面に薄
膜が形成されており、温度による弾性表面波の速度の変
化が概略０である請求項１乃至１１のいずれか１項に記
載のＳＡＷマッチドフィルタ。
【請求項１４】前記圧電性を有する基板は、ＳＴカッ
ト水晶基板である請求項１乃至１３のいずれか１項に記
載のＳＡＷマッチドフィルタ。
【請求項１５】スペクトラム拡散信号を受信する受信
装置であって、入力されるスペクトラム拡散信号の復号
もしくは同期検出を行うための弾性表面波マッチドフィ
ルタとして請求項１乃至１４のいずれか１項に記載のＳ
ＡＷマッチドフィルタを用いることを特徴とする受信装
置。
【請求項１６】スペクトラム拡散信号を送信する送信
装置と、スペクトラム拡散信号を受信する受信装置とを
有し、スペクトラム拡散信号を送受信する通信システム
であって、前記受信装置が、入力されるスペクトラム拡
散信号の復号もしくは同期検出を行うための請求項１乃
至１４のいずれか１項に記載のＳＡＷマッチドフィルタ
を備えたことを特徴とする通信システム。