JPH0987721A - 脱炭精錬における含クロム溶鋼の脱硫方法 - Google Patents

脱炭精錬における含クロム溶鋼の脱硫方法

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JPH0987721A
JPH0987721A JP7253017A JP25301795A JPH0987721A JP H0987721 A JPH0987721 A JP H0987721A JP 7253017 A JP7253017 A JP 7253017A JP 25301795 A JP25301795 A JP 25301795A JP H0987721 A JPH0987721 A JP H0987721A
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Yasuo Kishimoto
康夫 岸本
Hideji Takeuchi
秀次 竹内
Nagayasu Bessho
永康 別所
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廣 西川
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 未還元法による含クロム溶鋼の脱炭精錬にお
いては勿論、高S濃度の副原料を使用した場合であって
も、十分に満足のいく低S濃度の含クロム溶鋼を得る。 【解決手段】 精錬初期の高炭素濃度期に、高塩基性の
脱Sフラックスを添加して鋼中Sをスラグ中に移行させ
つつ、上吹きランスから酸素ガスを吹き付けて気化脱硫
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、脱炭精錬におけ
る含クロム溶鋼の脱硫方法に関し、含クロム溶鋼を脱炭
精錬する際に、効率の良い脱硫も併せて実施しようとす
るものである。
【0002】
【従来の技術】含クロム溶鋼の脱硫方法としては、主
に、以下に述べる2つがある。1つは、含クロム粗溶鋼
(または溶銑)の製造過程である溶融還元プロセスにお
いて、クロム酸化物の還元と同時に還元脱硫を強化する
ものである(例えば特開平2−232312号公報等)。いま
1つは、含クロム溶鋼の脱炭精錬において、脱炭終了後
にスラグ中の酸化クロムをFeSiやAlなどの還元剤を用い
て還元回収する工程において、同時に還元脱硫を行うも
のである(例えば特開昭63−140044号公報等)。また、
同様に、中炭素の含クロム溶湯に、CaO/SiO2を一定にす
るためにフラックスを添加した上で、CaC2などの脱硫剤
を添加する方法もある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述したとおり、含ク
ロム溶鋼の脱硫方法としては、クロム酸化物の還元に伴
う脱硫が主流であったが、このような方法では、溶融還
元により含クロム粗溶鋼を溶製するプロセスをとらず、
FeCrのみを加えて脱炭精錬を行う場合(FeCr法)や、脱
炭精錬後にFeSiなどの還元剤を使用しない未還元出鋼法
など、還元工程のない溶製方法においては、脱硫が十分
でないという問題があった。
【0004】また、還元脱硫を行う場合でも、副原料と
して安価な高S含有原料であるNiS(Niマット)などを
使用する場合には、スラグ−メタル反応による脱硫では
満足のいくレベルまで低S化することはできなかった。
さらに、脱炭精錬中、高炭素濃度期に脱S用フラックス
を添加して脱硫を行う方法は、その時点では、スラグ−
メタル反応によりスラグ中へSが移行するものの、脱炭
が進行した低炭期に至っては、鋼中酸素濃度の増加によ
って、スラグからメタルへの復Sが生じるという問題が
あった。
【0005】この発明は、上記の問題を有利に解決する
もので、還元工程のない未還元法による含クロム溶鋼の
脱炭精錬においては勿論、高S濃度の副原料を使用した
場合であっても、強力に脱硫を押し進めて、十分に満足
のいく低S濃度の含クロム溶鋼を得ることができる、脱
炭精錬における含クロム溶鋼の脱硫方法を提案すること
を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】さて、発明者らは、上記
の問題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、脱炭精錬初
期の炭素濃度が高い時期すなわち高脱炭期に、脱Sフラ
ックスを添加して溶鋼中からスラグ中へSを移行させた
のち、上吹きランスから酸素ガスを浴面上に吹き付ける
ことにより、気化脱硫が促進されることの知見を得た。
また、かかる気化脱硫の効果は、上吹き酸素ガス流量や
脱Sフラックス添加量の増加によって向上するので、高
S濃度の副原料を使用した場合であっても、十分に満足
のいく低S鋼が得られることも併せて見出した。この発
明は、上記の知見に立脚するものである。
【0007】すなわち、この発明の要旨構成は次のとお
りである。 1.精錬ガスの上底吹き機能をそなえる容器内に装入し
た含クロム溶銑中に、炭素源および副原料を添加すると
共に酸素吹錬を行うことからなる含クロム溶鋼の脱炭精
錬において、精錬初期の高炭素濃度期に、高塩基性の脱
Sフラックスを添加して鋼中Sをスラグ中に移行させつ
つ、上吹きランスから酸素ガスを吹き付けて気化脱硫す
る、ことを特徴とする脱炭精錬における含クロム溶鋼の
脱硫方法。 2.上記1において、炭素源の添加が、脱炭精錬開始か
ら溶鋼温度が1500℃に至るまでの間、溶鋼中の炭素が飽
和濃度を維持するように添加することを特徴とする脱炭
精錬における含クロム溶鋼の脱硫方法。 3.上記1または2において、高塩基性の脱Sフラック
スが、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物、
炭酸化物あるいは塩化物のうちから選んだ少なくとも一
種である脱炭精錬における含クロム溶鋼の脱硫方法。 4.上記1,2または3において、副原料が、高S濃度
のCr, Ni原料である脱炭精錬における含クロム溶鋼の脱
硫方法。 5.上記1,2,3または4において、脱炭精錬初期
に、鋼中C濃度が1wt%以上、浴温が1650℃以上となる
量の炭素源を添加することからなる脱炭精錬における含
クロム溶鋼の脱硫方法。
【0008】
【発明の実施の形態】スラグ−メタル反応による脱硫反
応は、次式 〔S〕+ O2-=(S2-)+ 1/2O2 で表され、低酸素ポテンシャルほど有利である。従っ
て、従来の還元脱硫は、炭素飽和またはFeSi等の還元剤
による脱酸作用によって鋼中の酸素を低下させた状態で
行われている。脱炭精錬中においては、炭素源を投入し
た直後の高炭素濃度期つまり脱炭精錬初期に脱硫が進行
し易い。従って、かかる高炭素濃度期において脱硫用フ
ラックスを添加することが有効と考えられるが、高炭域
において脱硫されたスラグ中のSは、脱炭末期になって
酸素ポテンシャルが高くなると復Sしてしまう。そこ
で、この発明法では、高炭素濃度期に脱Sフラックスに
よりスラグ中に移行させたSを、酸素ガスの吹き付けに
より気相中へ気化させることにしたのである。
【0009】さて、気化脱硫は、次の2つの式 (S2-)+ 1/2O2 = 1/2S2 + O2- (CaS)+ 3/2O2 = SO2 +(CaO) で表される。熱力学的に気化脱S反応は、反応系の酸素
分圧P(O2)が10-4atm 以上で生じる。しかし、脱炭精錬
初期においてはP(O2)<10-10 であるため、気化脱Sが
生じることはない。しかし、脱炭精錬中に浴面上に酸素
を吹き付けると、スラグ中の酸素が吹き付けられた部分
が局所的に高酸素ポテンシャルとなるため、気化脱硫が
進行する。このためには、スラグ中のS濃度が高く、浴
温度が高いほど有利である。
【0010】スラグ中のS濃度増加によって気化脱硫を
促進するためには、高炭素濃度期に高脱硫能のフラック
スを添加してスラグ中にSを移行させてS濃度を高め、
この状態で浴面上に酸素ガスを吹き付ければ良い。かよ
うな気化脱硫では、Sを系外に排出できるため、従来の
ように脱炭末期の高酸素ポテンシャル状態になっても復
Sが生じることはない。
【0011】この発明にといて、炭素源の添加に当たっ
ては、少なくとも脱炭精錬開始から溶鋼温度が1500℃に
至るまでの間については、溶鋼中の炭素が飽和濃度を維
持するように添加することが好ましい。というのは、溶
鋼温度が1500℃以下の低温領域ではCr酸化を生じ易いた
め、Crの酸化ロスが懸念されるが、この点、溶鋼中に炭
素が過剰に存在するとこの過剰炭素によって酸化ロスし
たCrを還元することができ、また炭素酸化反応によって
溶鋼温度を効果的に上昇させ得るからである。
【0012】また、脱硫能の高いフラックスとしては、
アルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物、炭酸化
物あるいは塩化物のうちから選んだ少なくとも一種から
なる高塩基性の脱Sフラックスが好適であり、中でも炭
酸ナトリウム、炭酸バリウム、塩化ナトリウム、ソーダ
灰等がとりわけ有利に適合する。これらはいずれも、光
学的塩基度が 0.8以上の高脱S(脱P)フラックスであ
る。なお、かかる脱Sフラックスの添加量については、
溶鋼1トン当たり10〜15kg程度とするのが好適である。
また、高S濃度の副原料とは、主にFeCrやMet-Ni等のC
r, Ni源であり、さらに炭素源とは、コークス、黒鉛、
石炭などである。
【0013】上述したとおり、スラグ中にSを移行させ
るには炭素濃度が高いほど有利であり、また気相脱Sに
とっては浴温度が高いほど有利であるから、脱Sフラッ
クスの添加に際しては、それに先立ち、所定量の炭素源
を添加して、鋼中C濃度:1wt%以上、浴温:1650℃以
上としておくのが好ましい。なお、脱Sフラックスの反
応性は、上吹き酸素ガス流量によって変化するので、良
好な気相脱硫を達成するためには、上吹き酸素ガス流量
が 1.8〜2.5 Nm3/min/t 程度で、次式 L/L0 ≧ 0.08 ここでL:鋼浴の凹み深さ(瀬川らの式による) L0 :鋼浴深さ を満足する条件下で吹き付けを行うことが好ましい。
【0014】図1(a), (b), (c) にそれぞれ、通常の条
件で脱炭精錬を行った場合、精錬初期に炭素源を添加し
た場合、この発明に従い、精錬初期に炭素源と共に高脱
Sフラックス(ソーダ灰)を添加したのち、気相脱硫を
実施した場合における、鋼中C、鋼中Sおよび浴温の経
時変化についての調査結果を、整理して示す。なお、上
吹きおよび底吹きガス流量は、図2(a), (b)に示すとお
りである。図1(a) に示したとおり、通常の条件で脱炭
精錬を行った場合には、脱炭精錬後、鋼中S:0.014 wt
%程度までしか脱Sすることができなかった。この点、
精錬初期に炭素源を添加した場合には、高炭素濃度期が
延長された分だけ脱S能も向上したが、それでも鋼中S
濃度は 0.008wt%程度にすぎなかった(同図(b) )。こ
れに対し、炭素源添加後、さらにソーダ灰を添加して気
相脱硫を促進した場合には、最終的に 0.003wt%という
極低Sの含クロム溶鋼を得ることができた(同図(c)
)。
【0015】
【実施例】
実施例1 上底吹き転炉を用いて、表1に示す条件で脱炭精錬を行
った。実験に際しては、まず含クロム粗溶鋼に炭素源と
してコークスを 10 kg/t添加して脱炭を開始し、浴温
度:1600℃を目安にソーダ灰を 10 kg/t添加した。つい
で、〔C〕=1wt%を目安に吹錬を中断し、倒炉してス
ラグ、メタルサンプリングを行い、その後〔C〕=0.1
wt%を目標に吹止めた。表2に、実験前後における鋼浴
温度、鋼中C量、鋼中S量およびスラグ中S量、副原料
等からの混入S量ならびに脱S量等について調べた結果
をまとめて示す。なお、気化脱硫量は、図3に示すよう
な実験中のSバランスにより求めた。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
【0018】表2より明らかなように、この発明に従
い、鋼炭素濃度期にソーダ灰を添加し、気化脱硫を促進
した場合には、0.005 wt%という極低S域までS濃度を
低減することができた。
【0019】実施例2 副原料として高S含有のNiマット(Ni−40%S)を10kg
/t−Ni分使用した。実験条件は、実施例1と同様であ
り、〔%C〕>1,1650℃以上まで初期に昇温を行うよ
うにコークスを添加したのち、ソーダ灰:10kg/tを添加
した。精錬中における〔%C〕,〔%S〕,(%S)の
経時変化について調べた結果を、図4に示す。同図より
明らかなように、この発明に従い脱炭精錬を行った場合
には、高S含有の副原料を使用したにもかかわらず、最
終的に 0.006wt%までS濃度を低減することができた。
なお、従来の還元法に従い、酸化クロムの還元と同時に
脱硫を行った場合の脱硫効果についても調査したが、高
S含有の副原料を使用した場合には、0.018 wt%までし
か低減することができなかった。
【0020】
【発明の効果】かくして、この発明によれば、含クロム
溶鋼の脱炭精錬中に精錬時間を延長することなしに、従
来に比べて格段に低いレベルまで脱硫をすることができ
る。その結果、未還元法においても低S濃度の含クロム
溶鋼を得ることができるようになった。また、これまで
使用できなかったような高S濃度の副原料の使用も可能
になり、製造コストの低減にも有効に寄与する。さら
に、脱硫のために脱炭初期に昇温することにより、熱力
学的に有利にクロム酸化を低減させつつ、高い効率で脱
炭を進行させることができる。加えて、脱硫と同時に脱
りんも生じるので、予備処理負担を軽減できるだけでな
く、高価な低P原料を使用する必要がないという効果も
加わる。
【図面の簡単な説明】
【図1】脱炭精錬中における、鋼中C、鋼中Sおよび浴
温の経時変化を示したグラフである。
【図2】脱炭精錬中における、上吹きおよび底吹きガス
流量を示したグラフである。
【図3】実験中のSバランスの一例を示した図である。
【図4】脱炭精錬中における、〔%C〕,〔%S〕,
(%S)の経時変化を示したグラフである。
フロントページの続き (72)発明者 竹内 秀次 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内 (72)発明者 別所 永康 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内 (72)発明者 西川 廣 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社千葉製鉄所内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 精錬ガスの上底吹き機能をそなえる容器
    内に装入した含クロム溶銑中に、炭素源および副原料を
    添加すると共に酸素吹錬を行うことからなる含クロム溶
    鋼の脱炭精錬において、 精錬初期の高炭素濃度期に、高塩基性の脱Sフラックス
    を添加して鋼中Sをスラグ中に移行させつつ、上吹きラ
    ンスから酸素ガスを吹き付けて気化脱硫する、ことを特
    徴とする脱炭精錬における含クロム溶鋼の脱硫方法。
  2. 【請求項2】 請求項1において、炭素源の添加が、脱
    炭精錬開始から溶鋼温度が1500℃に至るまでの間、溶鋼
    中の炭素が飽和濃度を維持するように添加することを特
    徴とする脱炭精錬における含クロム溶鋼の脱硫方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2において、高塩基性の
    脱Sフラックスが、アルカリ金属またはアルカリ土類金
    属の酸化物、炭酸化物あるいは塩化物のうちから選んだ
    少なくとも一種である脱炭精錬における含クロム溶鋼の
    脱硫方法。
  4. 【請求項4】 請求項1,2または3において、副原料
    が、高S濃度のCr,Ni原料である脱炭精錬における含ク
    ロム溶鋼の脱硫方法。
  5. 【請求項5】 請求項1,2,3または4において、脱
    炭精錬初期に、鋼中C濃度が1wt%以上、浴温が1650℃
    以上となる量の炭素源を添加することからなる脱炭精錬
    における含クロム溶鋼の脱硫方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100862798B1 (ko) * 2002-09-04 2008-10-13 주식회사 포스코 탈황효율이 우수한 용선의 예비처리방법
JP2009249678A (ja) * 2008-04-04 2009-10-29 Nippon Steel Corp 溶鉄の脱硫精錬方法
JP2011017047A (ja) * 2009-07-08 2011-01-27 Nippon Steel Corp 溶鉄の脱硫精錬方法

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KR100862798B1 (ko) * 2002-09-04 2008-10-13 주식회사 포스코 탈황효율이 우수한 용선의 예비처리방법
JP2009249678A (ja) * 2008-04-04 2009-10-29 Nippon Steel Corp 溶鉄の脱硫精錬方法
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