JPH0963032A - 磁気記録媒体 - Google Patents

磁気記録媒体

Info

Publication number
JPH0963032A
JPH0963032A JP33879395A JP33879395A JPH0963032A JP H0963032 A JPH0963032 A JP H0963032A JP 33879395 A JP33879395 A JP 33879395A JP 33879395 A JP33879395 A JP 33879395A JP H0963032 A JPH0963032 A JP H0963032A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
recording medium
magnetic recording
magnetic
protective layer
layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP33879395A
Other languages
English (en)
Inventor
Kenichi Nishimori
賢一 西森
Eiichiro Ikeda
英一郎 池田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hoya Corp
Original Assignee
Hoya Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hoya Corp filed Critical Hoya Corp
Priority to JP33879395A priority Critical patent/JPH0963032A/ja
Publication of JPH0963032A publication Critical patent/JPH0963032A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

(57)【要約】 【課題】 広範囲に渡る湿度条件下での優れたスティク
ション抑制機能、ヘッドクラッシュ防止効果を有し、か
つヘッドスライダーの低浮上化を可能とする磁気記録媒
体を提供する。 【解決手段】保護層4の下面に接して設けられる磁性層
3の上面の表面粗さをRmax で4nm以下とし、保護層
を珪素化合物を主成分とする材料で構成するとともに、
磁気記録媒体10の上面の平均面に直角な平面で該磁気
記録媒体10を切断したときにその切口に現れる上面の
輪郭を示す曲線を断面曲線とし、この断面曲線の抜き取
り部分において前記磁気記録媒体上面の称呼形状を持つ
直線又は曲線でかつその線から断面曲線までの偏差の自
乗和が最小になるように設定した線を断面曲線の平均線
とし、この平均線から前記断面曲線に現れる総数Nの各
山部の頂部までの距離をZiとし、このZiが最大のも
の(Z1 )が5nm〜50nmの範囲となるようにし、
前記Ziが最大のものから順に第n番目のものまでをZ
iのiがそれぞれi=1〜nである場合としたとき、前
記Ziの標準偏差が5.0nm以下となるようにした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気ヘッド及び磁
気記録媒体を相対運動させることで情報の記録又は再生
を行なう磁気記録・再生装置に搭載される磁気記録媒体
に関する。
【0002】
【従来の技術】磁気ヘッドにより磁気記録媒体上に情報
の記録・再生を行なう磁気記録装置、例えばハードディ
スク装置においては、装置の起動あるいは停止時にヘッ
ド媒体が接触摩擦状態にあり、装置の起動後ヘッドが浮
上状態に移行するコンタクト・スタート・ストップ方式
(以下、CSS方式と略称する。)が主に採用されてい
る。
【0003】この上記CSS方式を用いた装置は、その
原理上以下のようなトライボロジー的問題がある。
【0004】第1の問題としては、装置の起動・停止時
においてヘッドスライダー及び媒体は完全接触状態にな
るが、両者の表面は超精密仕上げが施されていることか
ら両者が吸着してしまい、その吸着力により、媒体が装
着されているスピンドルの回転が不可能となり、装置自
体を起動出来なくなる場合があるという問題(以下ステ
ィクション問題と記す)がある。
【0005】第2の問題としては、ヘッドスライダーと
媒体の接触摩擦状態において、両者の間に発生する摩擦
力は、ヘッドスライダー又は媒体の表面摩耗損傷を誘発
する原因となり、媒体の摩耗損傷が磁性層まで到達した
場合、磁性層に記録されている情報が破壊される、いわ
ゆるヘッドクラッシュ現象がある。
【0006】上述のスティクション問題及びヘッドクラ
ッシュ問題解決のため、従来から以下のような提案がな
されている。
【0007】まず、スティクション対策の例としては、
ヘッドスライダー/媒体間(Head Media I
nterface;以下HMIと略称する。)の接触面
積を少なくして両者の吸着を軽減するために、媒体用基
板表面にラッピングテープ、あるいは遊離砥粒等により
機械的に表面凹凸(以下テクスチャーと記す)を創成す
るメカニカルテクスチャー法や、あるいは、特開平3−
113823号公報に記載されているように、基板表面
を化学処理(ケミカルエッチング)することで、前記メ
カニカルテクスチャー法と同様の吸着軽減機能発現を意
図したケミカルテクスチャー法など、幾つかのテクスチ
ャリング方法がある。
【0008】一方、耐ヘッドクラッシュ特性を向上させ
る対策としては、前記テクスチャーの施された媒体用基
板上に下地層、磁性層を積層して後、機械的耐久強度に
乏しい磁性層自体がヘッドスライダーと直接摺動するこ
とを回避するため、カーボン、金属酸化物、炭化物、窒
化物からなる保護層をオーバーコートし、さらに、HM
Iの滑性を良好にし、HMIでの摩擦力を緩和するた
め、前記保護層上に、パーフルオロポリエーテル(PE
PE)等の液体潤滑材を塗布することが行われている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところで、近年におけ
るソフトウエアの多様化・大容量化、そしてコンピュー
タのダウンサイジング化は、磁気記録装置のさらなる高
容量・高密度化を促す傾向にある。また、コンピュータ
の携帯化にともない、その使用用途も比較的温度・湿度
等が安定している通常のオフィスから、温度・湿度が不
規則にしかも広い範囲で変化する環境下(コンピュータ
の携帯化により、アウトドア環境下での使用頻度が増
加)へと拡張されてきており、その様な環境の変化に依
存せず安定して動作する磁気記録装置が必要とされてい
る。
【0010】特に磁気記録装置が置かれる使用環境の変
化は、前記したようなトライボロジー現象(特にスティ
クション問題)をより深刻にし、装置の動作安定性に著
しい影響を及ぼすこととなるが、従来より開示されてい
る技術により、磁気記録装置の高記録密度化を促進し、
かつ広範囲に渡る環境下での装置の安定動作性向上を両
立させることは、技術的にも困難が伴うことが知られて
おり、以下その内容につき詳述する。
【0011】まず、磁気記録装置の高密度化のために
は、磁気ヘッドスライダーに設けられた磁気センサーと
媒体上に形成された磁性層上面との距離(以下、実効浮
上高さと記す)を低減させなければならない。この要求
に対し、媒体側では上記したテクスチャーの高さを低減
し、場所による実効浮上高さのバラツキを小さくして情
報の記録・再生を安定して行なうこと、そして磁性層上
に設けられた保護層の厚さを薄くすることが必要となっ
てくる。
【0012】テクスチャー自体は、HMIの接触面積を
低下させ、両者の吸着を軽減するということを主目的と
して、主に媒体基板上に直接設けられる場合が多いが、
このテクスチャー高さを軽減するという試みは、例えば
特開平2−214014号公報に記載されているように
(メカニカルテクスチャリングによる表面凹凸形成)、
広く当事者間で行われていることは周知の事実である。
【0013】しかしながら、例えば媒体基板表面に機械
的な加工を施すメカニカルテクスチャリング法では、ど
うしても媒体上に形成される凹凸の高さが不揃いとな
り、実効浮上高さを一定にすることが困難であること、
またその作製プロセス上不可避的に生成される突発的な
表面凸部の存在により、ヘッドスライダー自体の浮上高
さを低下し難く、ヘッドスライダーがその様な凸部に接
触することでその浮上安定性が損なわれ、それによって
記録再生特性が不安定になるなどの磁気特性上の問題が
発生していた。そしてそれに加え、その突発的な突起に
かかる面圧が急激に上昇することにより、その接触点を
起点として媒体の損傷が誘発され易くなるといった問題
も提起されてきている。そのため、一方では上記テクス
チャリング法とは全く異なる手法を用い、突起高さが均
一で、かつ実効浮上高さを低減できるようなテクスチャ
ー(ヘッドスライター浮上方向のテクスチャー振幅を低
減)を形成する方法も提案されている(例えば特開平4
−89616号公報)。しかし、均一な高さを有する表
面凹凸では、高記録密度化においては有利であっても、
記録装置が使用される環境の変化に応じて、新たな技術
的問題(前記スティクション問題)が発生する。
【0014】スティクション問題において、その発生要
因として特に重要視されるのが湿度問題であり、例え
ば、IEEE Trans.Magn., Vol.26, 2487(1990)等にも記載
されているように、ヘッドスライダー及び媒体に吸着す
る水分量の多少は、上記した“スティクション”を直接
左右する重要な影響因子となる。また、高湿度下でのス
ティクションは、常温常湿におけるそれよりも吸着力が
著しく、最悪の場合、媒体が装着されているスピンドル
が完全に起動不能な状態に陥ってしまうこともある。こ
の高湿度下でのスティクションを軽減するためには、H
MIでの吸着水分の凝集をし難くすることが必要である
が、前述した突起高さが均一で、かつヘッドスライダー
浮上方向に対し、振幅の小さな表面凹凸を形成した媒体
では、結果的にヘッドスライダー/媒体の接触領域が増
加し、それを核として吸着水分の凝集が発生し易くなる
ため、耐スティクション特性は逆に劣化してしまう。
【0015】以上のように、媒体表面粗度の低減とい
う、従来技術を改善することで媒体の高記録密度化を計
る場合、どうしても耐スティクション特性が犠牲になる
というトレードオフの関係が両者間に存在する。そのた
め、この技術的ブレークスルーを達成し、ヘッドスライ
ダーの低浮上高さ化が可能で、かつ高湿度下でのスティ
クションが誘発され難い磁気記録媒体が必要とされてい
るのが現状である。
【0016】本発明の目的は、上述した従来の問題点を
鑑み、広範囲に渡る湿度条件下での優れたスティクショ
ン抑制機能及びヘッドクラッシュ防止効果を有し、かつ
ヘッドスライダーの低浮上化を可能とする磁気記録媒体
を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】上述の課題を解決するた
めに、本発明における磁気記録媒体は、(構成1)非磁
性基板上に、少なくとも、磁性層及び該磁性層の上面に
直接もしくは中間層を介して設けられた保護層を有する
磁気記録媒体において、前記保護層の下面に接して設け
られる前記磁性層又は中間層の上面の表面粗さをRmax
で4nmとし、前記保護層を珪素化合物を主成分とする
材料で構成するとともに、前記磁気記録媒体上面の平均
面に直角な平面で該磁気記録媒体を切断したときに該磁
気記録媒体上面の表面粗さによる凹凸に対応してその切
口に現れる上面の輪郭を示す曲線を断面曲線とし、この
断面曲線の抜き取り部分において前記磁気記録媒体上面
の称呼形状を持つ直線又は曲線でかつその線から断面曲
線までの偏差の自乗和が最小になるように設定した線を
断面曲線の平均線とし、この平均線から前記断面曲線に
現れる総数Nの各山部の頂部までの距離をZiとし、こ
のZi が最大のもの(Z1)が5nm〜50nmの範囲
となるようにし、前記Zi が最大のものから順に第n番
目のものまでをZi のiがそれぞれi=1〜nである場
合としたとき、前記Zi の標準偏差が5.0nm以下と
なるようにしたことを特徴とする構成とし、前記構成の
態様として、(構成2) 前記磁気記録媒体上面の表面
粗さによる凹凸を、前記保護層に粒径の異なる微粒子を
混在させることによって形成したことを特徴とする構成
とし、また、本発明にかかる磁気記録媒体は、(構成
3) 非磁性基板上に下地層を設け、この下地層上に、
少なくとも、磁性層及び該磁性層の上面に直接もしくは
中間層を介して設けられた保護層を有する磁気記録媒体
において、前記非磁性基板上面の表面粗さをRmax で4
nm以下とし、前記非磁性基板上に設けられる前記下地
層の上面に、前記磁気記録媒体上面の表面粗さによる凹
凸に反映する凹凸を設け、前記保護層を珪素化合物を主
成分とする材料で構成するとともに、前記磁気記録媒体
上面の平均面に直角な平面で該磁気記録媒体を切断した
ときに該磁気記録媒体上面の表面粗さによる凹凸に対応
してその切口に現れる上面の輪郭を示す曲線を断面曲線
とし、この断面曲線の抜き取り部分において前記磁気記
録媒体上面の称呼形状を持つ直線又は曲線でかつその線
から断面曲線までの偏差の自乗和が最小になるように設
定した線を断面曲線の平均線とし、この平均線から前記
断面曲線に現れる総数Nの各山部の頂部までの距離をZ
iとし、このZiが最大のもの(Z1 )が5nm〜50
nmの範囲となるようにし、前記Zi が最大のものから
順に第n番目のものまでをZi のiがそれぞれi=1〜
nである場合としたとき、前記Ziの標準偏差が5.0
nm以下となるようにしたことを特徴とし、前記構成1
〜3の態様として、(構成4) 前記保護層を構成する
珪素化合物は、SiO2 、SiC又はSiNの少なくと
も1つを含むものであることを特徴とする構成としたも
のである。
【0018】上述の構成1によれば、保護層の下面に接
して設けられる磁性層又は中間層の上面の表面粗さを最
大高さRmax で4nm以下とし、保護層を珪素化合物を
主成分とする材料で構成するとともに、保護層上面のZ
1 を5〜50nmとしたことにより、スティクションや
ヘッドクラッシュを効果的に防止しつつヘッドスライダ
ーの低浮上化が可能で、しかも工業生産が容易な磁気記
録媒体を得ることが可能となった。
【0019】これはまず、保護層の下面に接して設けら
れる磁性層又は中間層の上面の表面粗さを最大高さRma
x で4nm以下としたことから、磁性層自体の凹凸を小
さくすることが可能となった。これにより、記録・再生
時における浮上中の磁気ヘッドと磁性層との距離、すな
わち実効浮上高さの変動を著しく小さくすることがで
き、その結果、高密度記録・再生を安定して行なうこと
が可能になった。
【0020】しかも、磁性層又は中間層を形成する前の
基板表面にテクスチャー処理を施す必要がなくなったの
で、テクスチャー処理に伴う異常突起を生成する恐れが
なくなると共に、工程の単純化が可能となった。
【0021】さらに、この磁性層又は中間層の上面が平
滑であることから、この上に形成する保護層の表面粗さ
はほぼ一義的に保護層自体の表面粗さの制御精度によっ
て定まるので、表面粗さの制御が著しく容易になった。
特に、保護層を珪素化合物を主成分とする材料で構成し
たことにより、上記表面粗さを有する磁性層又は中間層
の上に設けられる保護層の上面の表面粗さをZ1 で5n
m〜50nmとすることが極めて容易に実現でき、しか
も、摩擦に対する耐久性を著しく高めることができるよ
うになった。この様な保護層は、例えば、スパッタ等の
通常の薄膜形成技術で形成し、その材料及び成膜条件を
選ぶことにより容易に形成できる。加えて、このような
保護層の形成は、磁性層や中間層を形成する成膜技術と
共通の成膜技術によって行なうことができるから、例え
ば、インラインスパッタ法等によって磁性層や中間層に
続いて連続的な生産ラインで行なうことを可能とする。
【0022】また、この場合、中間層を設けることによ
り、磁性層と保護層との密着性をより向上させると同時
に、この上に形成させる保護層の表面凹凸をより微細で
均一にすることが容易となり、スティクション防止効果
をより確実なものとすることができ、さらには媒体の機
械的耐久性及び耐腐蝕性をより向上させることができ
る。
【0023】なお、磁性層又は中間層の上面の表面粗さ
が最大高さRmax で4nmを越えると、浮上中の磁気ヘ
ッドと磁性層との距離の変動を著しく小さく押さえるこ
とが困難になって、高密度記録・再生を安定して行なう
ことが困難になる。同時に、この上に形成される保護層
上面の表面粗さを所定の範囲に制御することが困難にな
る。また、保護層上面のZ1 を5nm未満にすると、吸
着現象たるスティクションが発生する可能性が増大し、
一方、50nmを越えると磁気ヘッドスライダーの浮上
高さを小さく維持できなくなるおそれがでてくる。
【0024】また、保護層表面の凹凸高さをZiの標準
偏差(σzi)で5.0nm以下となるように揃えたこと
により、スティクション現象をより効果的に抑え、媒体
の耐摩耗性を飛躍的に向上させて長期間の使用に耐える
耐久性が得られるようになった。
【0025】なお、湿度50%R.H以下の湿度環境下
では、好ましくはσzi≦1.0nmとすることにより、
ヘッドスライダーの浮上安定性が高められ、かつ浮上化
が可能であることから、高記録密度化に不可欠な高い信
号/ノイズ比での記録・再生信号の授受が安定して行な
え、優れた耐ヘッドクラッシュ性が得られることから、
さらに効果的となる。一方、湿度50%R.Hを越える
高湿度下においては、1nm≦σzi≦5.0nmとする
ことにより、スティクションを抑制でき、媒体の実用上
なんら問題のない耐ヘッドクラッシュ機能を発現させる
事が可能となる。これは、媒体上の突起全てがヘッドス
ライダー表面と接触していないため、高湿度環境下でも
HMIで水分が凝集する部分が少なくなり、その結果水
分がヘッドスライダーと媒体を引き付ける力(以下メニ
スカスと記す)が低減されることに起因していると推定
される。また、σziが上限値である5.0nmを越える
と、媒体上の突起のばらつきがヘッドスライダーの浮上
安定性を損ねてしまい、その結果情報の記録・再生が非
常に不安定になる。そしてそれに加え、ヘッドスライダ
ーと接触する突起数も少なくなることから、突起一個当
りにかかる面圧が増加し、耐ヘッドクラッシュ性が著し
く低下する。
【0026】また、上述の構成2のように、磁気記録媒
体上面の表面粗さによる凹凸を、保護層に粒径の異なる
微粒子を混在させることによって形成すると、保護層の
上面の表面粗さをZ1 で5nm〜50nmとすることが
容易に実現できる。このような保護層は、例えば、磁性
層又は中間層上に、液状母材に粒径の異なる硬質微粒子
が分散された保護層の原料を塗布して加熱・硬化させ、
この保護層形成処理中又は保護層形成後に250〜40
0℃の温度で基板を加熱することにより形成できる。こ
れにより、磁性膜の高保磁力化を図ることができると同
時に、磁性膜又は中間層と保護膜との密着性や膜付着力
の向上及び各膜の強度の向上が可能となり、ヘッドスラ
イダーの低浮上走行化及び高CSS化等がより高いレベ
ルで実現可能となって、磁気記録媒体のさらなる高密度
記録化が可能となった。ここで、加熱工程における加熱
温度を250〜400℃としたのは、250℃未満では
十分な保磁力向上効果や保護膜の膜強度が得られず、4
00℃を越える温度にすると、磁化・膜厚積が低くなっ
てしまうからである。
【0027】上述の構成3によれば、保護層の表面粗さ
に反映する凹凸を、基板表面ではなく、その上の下地層
に設けるため、保護層と下地層との間に形成される磁性
層または中間層上面の表面状態も前記凹凸に反映され
て、磁性層又は中間層の上面は平滑とはならない。この
点で、磁性層又は中間層の上面が平滑になる上述の構成
1とは異なる。しかし、非磁性基板の上面が平滑である
ことから、この上に形成される下地層の凹凸によって保
護層の表面粗さが定まるので、基板表面にテクスチャー
処理を施す場合に比して、保護層の表面粗さの制御が容
易になった。なお、この場合、下地層の凹凸の影響を受
けて磁性層又は中間層の上面の表面粗さが最大高さRma
x で4nmを越えることになるが、下地層の凹凸によっ
て、磁性層又は中間層の上に形成される保護層上面の表
面粗さを所定の範囲に制御することができるため、磁性
層又は中間層の上面の表面粗さが最大高さRmax で4n
mを越えても、浮上中の磁気ヘッドと磁性層との距離の
変動を著しく小さく押さえることが可能となり、高密度
記録・再生を安定して行なうことができる。
【0028】このような表面に凹凸を有する下地層は、
例えば、下地層表面に低表面エネルギー性の膜を形成
し、その膜の上に凹凸形成物をスパッタ等の通常の薄膜
形成技術で形成することによって、膜の面内方向に不連
続な島状構造を有するように形成することができ、非磁
性基板の温度を選ぶことにより所望の表面粗さをもつ凹
凸が容易に得られる。
【0029】さらに、構成4のように、保護層をSiO
2 、SiC又はSiNの少なくとも1つを含むものとす
れば、保護層として適度な硬さを有し、かつ、磁性層や
中間層との密着性が良好で、しかも所望の表面粗さを有
し、機械的及び化学的耐久性や高い耐摩耗性を有する保
護層をスパッタリングを始めとする成膜方法で工業的に
安定して容易に形成することができる。
【0030】
【実施例】以下、まず、各実施例及び比較例の主たる構
成及び製造方法を説明し、次いで、これらの表面凹凸度
合(表面粗さ状態)を説明し、しかるのちにこれらのト
ライボロジー的特性を比較説明する。
【0031】各実施例及び比較例の主たる構成及び製造
方法 (実施例1〜18)図1は本発明の実施例1〜18にか
かる磁気記録媒体の構成を示す部分断面図である。
【0032】図1に示されるように、これらの実施例の
磁気記録媒体10は、ガラス基板1の上に、順次、膜厚
100nmのCr膜からなる下地層2、膜厚50nmの
CoNiCr磁性膜からなる磁性層3、SiO2 からな
る保護層4及び潤滑層5を積層したものである。この場
合、図2の表に示したように、保護層の膜厚、保護層形
成の際のスパッタガス圧及びガスの種類を異ならしめた
ものをそれぞれ実施例1〜18とした。
【0033】これら実施例の磁気記録媒体10は次のよ
うにして製造した。
【0034】まず、直径65mmのガラス基板1をRma
x が3nm以下になるように鏡面研摩仕上げした後、そ
のガラス基板1を洗浄器内において、純水及び純度9
9.9%以上のイソプロピルアルコール(IPA)内で
各々5min間超音波洗浄し、IPA蒸気内に1.5m
in放置後、乾燥させた。
【0035】この洗浄工程をへたガラス基板1上に下地
層2、磁性層3及び保護層4を、RFマグネトロンスパ
ッタリング法により一貫して作製した。すなわち、下地
層2として、Cr膜を100nm成膜後、該下地層2上
に、磁性層3として、CoNiCrを50nm積層し、
その上に膜厚10,20,50nmのSiO2 保護層4
を形成した。
【0036】なお、磁性層3の組成は、原子%比で、C
o:Ni:Cr=60:32.5:7.5である。
【0037】また、下地層2及び磁性層3の成膜は同一
のスパッタリング条件下で行ったがその条件は以下の通
りである。
【0038】雰囲気ガスの種類;純度99.9%のAr
ガスを使用 雰囲気ガス流量;10SCCM 雰囲気ガス圧;10mTorr 投入電力;200W 背圧;10-7Torr 基板加熱なし さらに、保護層の成膜は、図2に示すように、雰囲気ガ
スの種類、ガス圧及び膜厚を変えて成膜したが、共通の
条件は以下の通りである。
【0039】ターゲット;Si 雰囲気ガスの種類 実施例1〜9;純度99.9%のArガスを使用 実施例10〜18;純度99.9%のArガス+同純度
のO2 ガス使用 雰囲気ガス流量 実施例1〜9(Ar);10SCCM 実施例10〜18(Ar+O2 );Ar=10SCCM O2 =5SCCM 雰囲気ガス圧;10mTorr 投入電力;200W 背圧;10-7Torr 基板加熱なし そして、保護層4までの成膜を終了したディスクサンプ
ルを洗浄器内において、純度99.9%以上のイソプロ
ピルアルコール(IPA)内で5min超音波洗浄し、
IPA蒸気内に1.5min放置し、乾燥させた。そし
て、洗浄後のディスクサンプルを洗浄器より取り出して
後、ディッピング法により、保護層4上に潤滑層5を平
均膜厚で2nm(エリプソメータ評価)塗布し、実施例
1〜18とした。その場合、潤滑剤としてPEPE(F
omblin製AM2001、平均分子量:2200)
を用い、その溶媒としてHCFC(旭ガラス製AK−2
25)を用いた。
【0040】(実施例19〜36)実施例19〜36に
かかる磁気記録媒体は、保護層4の成膜のスパッタリン
グ時に、基板を加熱して行うようにした点を除く外は、
基板1上に積層される層構成自体及びその製造手順や条
件等が上述の実施例1〜18と同一であるので、それら
の関係を図2の表に掲げることによってその詳細説明は
省略する。
【0041】(実施例37〜54)図3は本発明の実施
例37〜54にかかる磁気記録媒体の構成を示す部分断
面図である。図3に示されるように、これらの実施例に
かかる磁気記録媒体20は、上述の実施例1〜36の磁
気記録媒体における磁性層3と保護層との間に膜厚5n
mのCr膜からなる中間層6を設けた外は実施例1〜1
8の磁気記録媒体と同一の構成をする。また、その製造
の手順及び条件も、磁性層3の成膜工程と保護層4の成
膜工程との間に、中間層6の成膜工程を挿入する外は、
上記実施例1〜18と同一であるので、それらの関係を
図2の表に掲げることによってその詳細説明は省略す
る。
【0042】(実施例55〜72)実施例55〜72に
かかる磁気記録媒体は、保護層4の成膜のスパッタリン
グ時に、基板を加熱して行うようにした点を除く外は、
基板1上に積層される層構成自体及びその製造手順や条
件等が上述の実施例37〜54と同一であるので、それ
らの関係を図2の表に掲げることによってその詳細説明
は省略する。
【0043】(比較例)図4は比較例にかかる磁気記録
媒体の構成を示す部分断面図である。比較例の磁気記録
媒体100は、アルミ合金基板101上に形成されたN
iPメッキ層106にメカニカルテクスチャーを施し、
その上に下地層102、磁性層103及び保護層104
等を形成したものである。
【0044】すなわち、図4に示されるように、直径6
5mmのアルミニウム合金基板101にNiPメッキ層
106を無電界メッキし、ラッピングテープによりメカ
ニカルテクスチャー106aを施し、その上に下地層1
02として、Crを100nm、該下地層102上に、
磁性層103として、CoNiCrを50nm積層し、
磁性層103上に保護層104としてSiO2 を20n
mスパッタリングにより一貫して積層した。そして、保
護層104までの成膜を終了したディスクサンプルを洗
浄器内において、純度99.9%以上のイソプロピルア
ルコール(IPA)内で5min超音波洗浄し、IPA
蒸気内に1.5min放置し乾燥させた。そして、洗浄
後のディスクサンプルを洗浄器より取り出して後、ディ
ッピング法(潤滑剤にPEPE[Fomblin製AM
2001、平均分子量:2200]を用い、その溶媒に
HCFC[旭ガラス製AK−225]を使用)により、
保護層104上に潤滑剤105を平均膜厚で2nm(エ
リプソメータ評価)塗布し、比較例の磁気記録媒体10
0とした。
【0045】表面凹凸度合(表面粗さ状態) 上述の各実施例並びに比較例の製造の各工程に現れる各
層の表面凹凸度合い(表面粗さ状態)は以下の通りであ
った。
【0046】(1)走査型電子顕微鏡による定性的観察
結果 実施例の全てにおいて、保護層4の下地となる磁性層3
の上面3a及び中間層6の上面6aについては、磁性層
3を構成する結晶粒の大きさに起因すると考えられる凹
凸以外はほとんど観察されなかった。これに対して、比
較例における保護層104の下地となる磁性層103の
上面103aは、テクスチャー面106aの凹凸に類似
した凹凸であって、山部及び谷部が大きくかつ鋭く尖っ
た形状をなすと共に、著しく大きさが不揃いの凹凸が観
察された。
【0047】また、実施例の保護層4の上面(磁気記録
媒体の表面)については、表面に半球状に近い形状をな
した比較的小さい凸部がほぼ均一に突出した状態で観察
された。特に、実施例37〜72の場合のように、中間
層としてCr層を設けたものはこれらの半球状凸部がよ
り微細でかつ単位面積当りの個数も多く観察された。こ
れに対して、比較例における保護層104の上面104
aは、磁性層103aの凹凸に類似した凹凸であって、
山部及び谷部が大きくかつ鋭く尖った形状をなすと共
に、著しく大きさが不揃いの凹凸が観察された。
【0048】(2)触針式粗さ計による定量的測定結果 図5に、各実施例の磁性層4の上面4a(実施例1〜3
6)、中間層の上面6a(実施例37〜72)及び保護
層4の上面4aのそれぞれの表面形状、並びに比較例の
テクスチャー面106a及び保護層上面104aのそれ
ぞれの表面形状を触針式粗さ計で測定した結果に基づい
て求めた。表面粗さの状態量をまとめて示す。この場
合、触針式粗さ計(ランクテーラーホブソン社製のタリ
ーステップ)の使用触針を0.1×2.5μmの角錐形
状触針とし、測定力:2mgfとし、カットオフ周波数
を0.33Hzとし、触針走査速度:2.5μm/sと
した。
【0049】ここで図5におけるRmax 、Zi、σzi
は、一定の定義に基づく量である。以下、この定義を図
6を参照にしながら説明し、HMIにおけるトライボロ
ジー特性との関連を説明する。
【0050】Rmax は、JISB0601に規定されて
いる「最大高さ」による粗さ表示である。すなわち、図
6において、断面曲線から基準長さLだけ抜き取った部
分(抜き取り部分)において、平均線に平行な2直線で
抜き取り部分を上下から挾み込むようにして平行移動し
た場合にこれら2直線がそれぞれ断面曲線の山部に接す
る状態になったとき、この2直線の間隔を断面曲線の縦
倍率の方向に測定した距離値である。基準長さLは、媒
体と接触するヘッドスライダーABS幅と同等とするの
が好ましく、一般的に50〜500μmの値となるが、
本発明における基準長さは、L=240μmとした。
【0051】この場合、断面曲線とは触針が被測定表面
を走査したときにその表面凹凸の形状に依存してスタイ
ラスが描く曲線であり、被測定面の平均面に直角な平面
で被測定面を切断したときに該被測定面の表面粗さによ
る凹凸に対応してその切り口に現れる輪郭を示す曲線に
対応する。また、平均線とは、この断面曲線の抜き取り
部分L(この場合はL=240μmとしてある)におい
て被測定平面の呼称形状(平均面)を持つ直線又は曲線
でかつその線から断面曲線までの偏差の自乗和が最小に
なるように設定した線である。
【0052】σZiはZiの標準偏差であり、次式で現さ
れる。
【0053】
【数1】 この場合、Ziとは、平均線から断面曲線の各山部の頂
部までの距離(高さ)をそれぞれ現し、最高高さの場合
をZiのiが1である場合とし、以下高さ順に順次i=
2、3、4、…、nである場合としたものである。nは
ヘッドスライダーのABSのクラウン量及び基準長さ
(L)等を考慮して決定することが好ましく、ここでは
n=10としてσziを規定している。
【0054】図5に示された結果から明らかなように、
保護層の下地となる磁性層又は中間層の表面を平滑(R
max で4nm以下)にしたことによって、スパッタリン
グ法をはじめとする通常の成膜方法によっても、これら
の上に形成される保護層上面の表面粗さを容易に所望の
範囲内に納めることが可能となり、しかも表面凹凸のバ
ラツキを小さく出来るようになった。この点は、中間層
を設けた実施例(実施例37〜72)では、さらに有利
であることがわかる。また、200℃程度の基板加熱を
行なっても、保護層下地となる媒体構成部分の最大高さ
Rmax が4nm以上にならない。これに対して、基板に
テクスチャーを施した従来の比較例では、山部及び谷部
が大きくかつ鋭く尖った形状をなすと共に大きさも不揃
いの凹凸を有するテクスチャー面の表面状態が、そのま
ま保護層上面の表面状態に反映されており、ヘッドスラ
イダーの低浮上高さ化や耐ヘッドクラッシュ性に対して
著しく不利であることがわかる。
【0055】上述の表面粗さパラメータZi、σziは、
本発明の効果を記述するにあたり、ヘッドスライダーの
浮上特性、そしてHMIでのトライボロジー特性の一つ
の指標となる摩擦係数との間に高い相関性を持つことを
本発明者らは見出している。
【0056】まず、JISB0601に規定されている
各種表面粗さパラメータ(中心線平均粗さ、最大高さ、
十点平均粗さなど)を始めとし、それ以外にも表面凹凸
を規定するための様々な粗さパラメータがこれまでに提
案されてきていることは、当業者間では公知の事実であ
る。中でも本発明において本発明者らが提案しているパ
ラメータZ1 、σziに類似するものには、最大高さ(R
max )及び二乗平均粗さ(RMS)がある。そこで、ま
ず、Z1 、Rmax とヘッドスライダーの浮上特性の関係
を調べた結果を図7に示す。これは、ヘッドスライダー
と媒体の接触状態を検知するアコースティックエミッシ
ョン(AE)センサーを装備する試験機において、ヘッ
ドスライダーを媒体上にある一定高さ浮上させておき、
HMIの相対速度を徐々に低下させる、すなわち浮上高
さを小さくしていき、ヘッドスライダーと媒体が接触し
始める際の相対速度(VTDV )と各粗さパラメータの関
係を現したものである。その結果、Z1 とVTDV の関係
においては、Z1 に対しVTDV は単調に増加し、両者に
は良好な相関関係が存在するのに対し、Rmax では前者
ほどVTDV との間に高い相関性は見られていない。これ
は、前者が表面凹凸上の凸部についてのみ考慮してお
り、後者のような凹部の情報を含んでいないためと考え
られる。すなわち、ヘッドスライダーと媒体の接触問題
において、その接触状態に直接的に関与すると考えられ
るのは凸部であり、それにほとんど関与しない凹部の情
報を取り除くことにより、上記のような効果が明確にな
るものと思われる。
【0057】次に、σziとRMSに対するHMIでの動
摩擦係数(μk )を調べた結果を図8に示す。図8に示
されるように、前記結果と同様に、表面凹凸上での凸部
の標準偏差のみを考慮することにより、従来において提
案されていたパラメータでは記述することが困難であっ
たHMIでのトライボロジー特性を、より明確に表面凹
凸形状と関連させることが可能となっている。
【0058】図9は、上記した図1、図3に示す本実施
例と、図4に示される従来技術による比較例の相対湿度
に対する動摩擦係数(以下、初期動摩擦係数(μk )と
記す)調べた結果であり、本測定は市販の磁気記録媒体
用摩擦・摩耗試験機を恒温恒湿機の中に設置して行なっ
ている。
【0059】上記磁気記録媒体用摩擦・摩耗試験機は、
HMIの摩擦力を歪ゲージ式センサーで検知し、サスペ
ンションによりヘッドスライダーに負荷されている荷重
(以下ヘッド荷重と記す)により除した値を、動摩擦係
数と定義している。その際、媒体を1.5kgfcmの
締め付けトルクで、摩擦・摩耗試験機の回転スピンドル
に装着後、ヘッドスライダーの媒体に対し内周側のエア
ベアリング面(ABS面)の中心が、媒体中心より1
7.5mmになるようにヘッドスライダーを媒体上に設
置した。そして、恒温恒湿槽内が所定の湿度になって
後、ヘッドスライダーを30s媒体上に保持し、媒体を
1rpmで3周回転させ、その間歪ゲージ式センサーで
検知されたHMIの摩擦力信号(摩擦力は電圧に変換さ
れ、アナログ信号として出力される)をパーソナルコン
ピュータに取り込み、その摩擦力信号を1kHzのサン
プリング周波数で量子化し、各サンプリング周期におけ
る摩擦力をコンピュータの内部メモリーに記憶させ、そ
れらの摩擦力の算術平均を計算後、ヘッド荷重でその算
術平均値を除して、動摩擦係数(μk )とした。本測定
に用いたヘッドは、IBM3370タイプのインライン
型ヘッドであり、ヘッド荷重は6.5gf、ヘッドスラ
イダー材質はAl2 3 −TiC(ヘッドスライダーA
BS幅:240μm)を使用している。また、恒温恒湿
槽内はクリーン清浄度100に保持されている。
【0060】その結果、本発明による実施例では相対湿
度の増加と共に、特にσziが低い領域でのμk の増大が
著しくなる傾向が観察されており、μk が大きくなり始
めるσzi値も相対湿度が増加するにつれて高くなる。こ
れは、σziが大きくなるとHMIにおける真実接触部分
が減少し、HMIに存在する水分によるメニスカス効果
が緩和されることにより、μk が低減するものと考えら
れる。また、本実施例中においても、実施例1〜36
(磁性層上に直接保護層を成膜)に比べ、実施例37〜
72(中間層上を介して保護層を成膜)の方が、σzi
変動を小さく抑えることが可能であり、特に50%R.
H以下の低湿度領域でのμk 低域に効果をもたらしてい
る。
【0061】図10は、本発明における実施例1〜72
及び比較例に対し、上記初期動摩擦係数を測定したとき
と同様の相対湿度条件下でCSS耐久試験を行なった結
果を示すものである。本試験は、上記した初期動摩擦係
数測定の際に用いたものと同様の磁気記録媒体用摩擦・
摩耗試験機、及びヘッドスライダーを使用して行なっ
た。本試験においては、ヘッドスライダーの媒体に対し
内周側のエアベアリング面(ABS面)の中心が、媒体
中心より17.5mmになるようにヘッドスライダーを
媒体上に設置し、恒温恒湿槽内が所定の湿度になって
後、CSS操作(媒体上でのヘッドスライダーの離着
陸)を図11に示すようなパターンに沿って繰り返し行
なっている。そして、ヘッドスライダー浮上時に観察さ
れる摩擦係数のディスク回転時間に対する変化(スライ
ダー浮上曲線、図11参照)から、各CSS回数におけ
るμkmax値をコンピュータにより自動的に読取り、その
データをストアする。そして、その摩擦係数が1.0を
越えたときのCSS回数を、CSS耐久回数と定義し
た。
【0062】その結果、50%R.H以下の低湿度領域
では、σziの増加と共にCSS耐久回数が低下し、特に
σzi>5nmではその耐久回数の低下はさらに著しいも
のとなる。一方、50%R.Hより高い高湿度領域で
は、σziの増加と共にCSS耐久回数が増加し、σzi
3nm付近で最大となった後再び減少し始め、σzi>5
nmでは耐久回数はさらに著しく低下する。後者の傾向
は、HMIでの吸着水分量に大きく依存しており、σzi
の増加と共にCSS耐久性が向上する領域では、真実接
触部の減少により、メニスカス効果が緩和されるためμ
k が小さくなり、耐久性向上に効果をもたらすものと考
えられるが、耐久回数が最大値をとった後は媒体上の突
起一個あたりにかかる面圧が増加するため、媒体損傷が
誘発され易くなり、特にσzi>5nmではそれが一層顕
著となる。
【0063】以上、初期動摩擦係数及びCSS耐久試験
により、本発明の効果を調査したが、50%R.H以下
の低湿度領域ではσzi≦5nmの磁気記録媒体の使用が
好ましく、湿度が50%R.Hより高い高湿度領域で
は、1≦σzi≦5nmの磁気記録媒体の使用が好まし
い。また、50%R.H以下の湿度領域で、より低いヘ
ッドスライダーの浮上高さを実現するためには、σzi
1nmの表面凹凸を有する磁気記録媒体の使用が好まし
い。
【0064】なお、上記各実施例では保護層にSiO2
を用いているが、同材料に限らずSiC又はSiNその
他の珪素化合物であればよい。また、保護層の形成方法
に関しても制約はなく、本実施例で用いたスパッタリン
グ以外にも、例えばゾル−ゲル法、CVD、真空蒸着法
等のウエット、ドライプロセス及びそれらを組み合わせ
た形での成膜が可能である。例えば、ゾル−ゲル法を用
いた保護層の形成では、磁性層または中間層までを形成
した基板をインラインスパッタ装置から取り出して、こ
の磁性層または中間層の上に保護層を形成する。粒径の
異なる硬質微粒子を分散させた液状中に磁性層又は中間
層の表面を接触させて該液状物を塗布し、基板全体に加
熱処理を施して硬化させる。この場合、液状物は、有機
シリコン化合物としてのテトラエトキシシラン(Si
(OC2 5 4 )と、平均粒径が150±10オング
ストローム(コールターカウンター社製粒度分布測定機
コールターカウンターN4での測定値)のシリカ微粒子
と、水と、イソプロピルアルコールとを重量比で、1
0:0.3:3:500の割合で混合したシリカ微粒子
を含む有機シリコン化合物溶液である。これにより図1
2に示すように、シリカ酸化物(ポリケイ酸)膜4b中
に粒径の異なるシリカ微粒子4cが分散されて、上面に
半球状に近い形をなした比較的小さい凸部がほぼ均一に
突出した保護層4が得られる。この例の場合、シリカ微
粒子4cの存在しない部分の膜厚は約10nmである。
【0065】また、上記各実施例では、保護層の表面粗
さを保護層自体の表面粗さによって定めるようにした
が、下地層の表面に凹凸を設けることによって、その凹
凸を保護層の表面粗さに反映させ、磁気記録媒体上面の
Z1 を5〜50nmとし、磁気記録媒体表面の凹凸の高
さをσziで5nm以下となるように揃えてもよい。具体
的には、図13に示すように、まずガラス基板1上面の
表面粗さをRmax で4nm以下として、基板1の表面粗
さが保護層4の表面粗さに影響を与えないようにする。
つぎに、ガラス基板1の上面に、ガラス基板1よりも表
面エネルギーの小さい低表面エネルギー性の膜7をスパ
ッタ法又は真空蒸着法で形成する。そして、この膜7を
形成した基板1を加熱し、膜7上に凹凸形成物8をスパ
ッタ法又は真空蒸着法で形成する。基板1を加熱した状
態で膜7に低融点金属をスパッタによって形成すると、
膜7が低表面エネルギー性であるため、その膜7の面内
方向に金属が不連続で島状構造の凹凸形成物8になる。
ここに、低表面エネルギー性の膜7は、Ti、Zr、
Y、Ta、Cr、Mo、Wの金属群から選ばれた少なく
とも1種以上からなり、凹凸形成物8は、Ag、Al、
Cu、Au、Sn、Pb、Sb、Biの低融点金属群よ
り選ばれた少なくとも1種以上からなる金属である。凹
凸形成物8の形状は、スパッタ法又は真空蒸着法で形成
するときのガラス基板1の温度および蒸発量を調整する
ことにより行う。
【0066】なお、下地層の表面に凹凸を設ける他の方
法として、ガラス基板上に設けられる下地層の上面に、
金属をターゲットとし、スパッタ法により薄膜からなる
凹凸形成層を直接設ける方法もある。この薄膜は粒界が
発達する結晶性の薄膜、例えばAl、Sn、In、P
b、Zn、Sbなどの金属、これらのうち一つを含んだ
合金又はこれらの酸化物、窒化物からなる薄膜若しくは
ZrO2 、MgF2 又はZnS等の誘電体膜がよい。基
板1の温度を調整することにより、金属の粒界の発達の
促進を制御でき、所望の凹凸、すなわち表面粗さを下地
層の表面に形成することができる。なお、下地層は1層
に限定されない。2層以上の下地層を形成する場合は、
任意の層の下地層表面に凹凸を形成する。
【0067】また、下地層の表面にではなく、ガラス基
板1上に直接凹凸を設けることによって、その凹凸を保
護層の表面粗さに反映させ、磁気記録媒体上面のZ1 を
5〜50nmとし、磁気記録媒体表面の凹凸の高さをσ
ziで5nm以下となるように揃えてもよい。具体的に
は、図14に示すように、ガラス基板1の上面に、窒化
アルミニウム(AlN)膜をスパッタ法で形成する。す
るとAlN膜が不連続で島状構造の凹凸形成物9にな
る。
【0068】なお、下地層、磁性層、保護層の成膜プロ
セスにおいて基板加熱あるいは、基板バイアスなどの成
膜予備プロセスを付加することも可能である。
【0069】また、本実施例における磁気記録媒体上に
はパーフルオロポリエーテル(PEPE)からなる潤滑
層を形成しているが、これ以外にもハイドロカーボン系
等、従来技術において提案されている各種潤滑剤の適用
が可能である。
【0070】本実施例では非磁性基板としてガラス基板
を用いているが、例えばAl合金基板、セラミックス基
板、プラスチック基板、カーボン基板等でもよく、その
基板材質、サイズ、厚さ等の基板仕様に関係なく、本発
明の適用が可能である。
【0071】本実施例では磁性層3にCoNiCrを使
用しているが、従来技術として既に開示されている磁性
層、例えば、CoCrTa、CoCrPt、CoPtN
i等のCo系磁性層材料、あるいはFe系磁性材料等を
使用してもよい。
【0072】また本発明において作製された媒体は、完
全浮上型磁気ヘッドによる記録方式への適用に限らず、
疑似接触記録方式(Quasi-Contact Recording )あるい
は、接触記録方式(Contact Recording )への適用も排
除するものではない。
【0073】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明にかかる磁
気記録媒体は、磁気記録媒体上面の凹凸を保護層自体の
表面粗さによって形成するときは、保護層の下面に接し
て設けられる磁性層又は中間層の上面の表面粗さを最大
高さRmax で4nm以下とし、また磁気記録媒体上面の
凹凸を下地層の表面粗さによって形成するときは、基板
の上面の表面粗さを最大高さRmax で4nm以下とし、
保護層を珪素化合物を主成分とする材料で構成するとと
もに、磁気記録媒体上面のZ1 を5〜50nmとし、磁
気記録媒体表面の凹凸高さをZiの標準偏差(σzi)で
5.0nm以下となるように揃えたことにより、スティ
クションやヘッドクラッシュを効果的に防止しつつヘッ
ドスライダーの低浮上化を可能にし、かつ、広範囲にわ
たる湿度条件下においてスティクション減少をより効果
的に抑え、媒体の耐摩耗性を飛躍的に向上させて長期間
の使用に耐える耐久性が得られるようにし、しかも、工
業生産が容易な磁気記録媒体を得ることを可能にしたも
のである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1〜36にかかる磁気記録媒体
の構成を示す部分断面図である。
【図2】実施例1〜72の磁気記録媒体の保護層成膜の
スパッタリング条件を表にして表した図である。
【図3】本発明の実施例37〜72にかかる磁気記録媒
体の構成を示す部分断面図である。
【図4】比較例の磁気記録媒体の構成を示す部分断面図
である。
【図5】本発明の実施例及び比較例の磁気記録媒体の表
面粗さを表にして表した図である。
【図6】Rmax 、Z1 の説明図である。
【図7】Z1 、Rmax とヘッドスライダーの浮上特性の
関係を調べた結果を示す図である。
【図8】σziとRMSに対するHMIでの動摩擦係数
(μk )を調べた結果を示す図である。
【図9】各本実施例と比較例の相対湿度に対する初期動
摩擦係数(μk )の測定結果を示す図である。
【図10】実施例1〜72及び比較例に対して初期動摩
擦係数を測定したときと同様の相対湿度条件下でCSS
耐久試験を行なった結果を示す図である。
【図11】スライダー浮上曲線を示す図である。
【図12】本発明の変形例にかかる磁気記録媒体の構成
を示す部分断面図である。
【図13】本発明の他の実施例にかかる磁気記録媒体の
構成を示す部分断面図である。
【図14】本発明の他の別な実施例にかかる磁気記録媒
体の構成を示す部分断面図である。
【符号の説明】
1…基板、2…下地層、3…磁性層、4…保護層、5…
潤滑層、6…中間層。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】非磁性基板上に、少なくとも、磁性層及び
    該磁性層の上面に直接もしくは中間層を介して設けられ
    た保護層を有する磁気記録媒体において、 前記保護層の下面に接して設けられる前記磁性層又は中
    間層の上面の表面粗さをRmax で4nm以下とし、 前記保護層を珪素化合物を主成分とする材料で構成する
    とともに、 前記磁気記録媒体上面の平均面に直角な平面で該磁気記
    録媒体を切断したときに該磁気記録媒体上面の表面粗さ
    による凹凸に対応してその切口に現れる上面の輪郭を示
    す曲線を断面曲線とし、 この断面曲線の抜き取り部分において前記磁気記録媒体
    上面の称呼形状を持つ直線又は曲線でかつその線から断
    面曲線までの偏差の自乗和が最小になるように設定した
    線を断面曲線の平均線とし、 この平均線から前記断面曲線に現れる総数Nの各山部の
    頂部までの距離をZiとし、このZiが最大のもの(Z1
    )が5nm〜50nmの範囲となるようにし、前記Zi
    が最大のものから順に第n番目のものまでをZi のi
    がそれぞれi=1〜nである場合としたとき、前記Zi
    の標準偏差が5.0nm以下となるようにしたことを特
    徴とする磁気記録媒体。
  2. 【請求項2】前記磁気記録媒体上面の表面粗さによる凹
    凸を、前記保護層に粒径の異なる微粒子を混在させるこ
    とによって形成したことを特徴とする請求項1に記載の
    磁気記録媒体。
  3. 【請求項3】非磁性基板上に下地層を設け、この下地層
    上に、少なくとも、磁性層及び該磁性層の上面に直接も
    しくは中間層を介して設けられた保護層を有する磁気記
    録媒体において、 前記非磁性基板上面の表面粗さをRmax で4nm以下と
    し、 前記非磁性基板上に設けられる前記下地層の上面に、前
    記磁気記録媒体上面の表面粗さによる凹凸に反映する凹
    凸を設け、 前記保護層を珪素化合物を主成分とする材料で構成する
    とともに、 前記磁気記録媒体上面の平均面に直角な平面で該磁気記
    録媒体を切断したときに該磁気記録媒体上面の表面粗さ
    による凹凸に対応してその切口に現れる上面の輪郭を示
    す曲線を断面曲線とし、 この断面曲線の抜き取り部分において前記磁気記録媒体
    上面の称呼形状を持つ直線又は曲線でかつその線から断
    面曲線までの偏差の自乗和が最小になるように設定した
    線を断面曲線の平均線とし、 この平均線から前記断面曲線に現れる総数Nの各山部の
    頂部までの距離をZiとし、このZiが最大のもの(Z1
    )が5nm〜50nmの範囲となるようにし、前記Zi
    が最大のものから順に第n番目のものまでをZi のi
    がそれぞれi=1〜nである場合としたとき、前記Zi
    の標準偏差が5.0nm以下となるようにしたことを特
    徴とする磁気記録媒体。
  4. 【請求項4】前記保護層を構成する珪素化合物は、Si
    2 、SiC又はSiNの少なくとも1つを含むもので
    あることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記
    載の磁気記録媒体。
JP33879395A 1995-06-14 1995-12-26 磁気記録媒体 Pending JPH0963032A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP33879395A JPH0963032A (ja) 1995-06-14 1995-12-26 磁気記録媒体

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP7-147815 1995-06-14
JP14781595 1995-06-14
JP33879395A JPH0963032A (ja) 1995-06-14 1995-12-26 磁気記録媒体

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH0963032A true JPH0963032A (ja) 1997-03-07

Family

ID=26478247

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP33879395A Pending JPH0963032A (ja) 1995-06-14 1995-12-26 磁気記録媒体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH0963032A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008251157A (ja) * 1998-04-09 2008-10-16 Seagate Technology Llc 凹形状部および/または凸形状部を含む記憶ディスク

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008251157A (ja) * 1998-04-09 2008-10-16 Seagate Technology Llc 凹形状部および/または凸形状部を含む記憶ディスク

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JPH0660368A (ja) 磁気記録媒体およびその製造方法
JP4545714B2 (ja) 磁気記録媒体並びに磁気記録再生装置
KR100216324B1 (ko) 박막 자기 기록 디스크 및 그 제조방법, 자기 기록 강체 디스크 드라이브, 자기 기록 접촉 시동/정지 강체 디스크 드라이브
JP3449637B2 (ja) 磁気記録媒体及びその製造方法並びに磁気記録媒体の評価方法
US6238780B1 (en) Magnetic recording medium comprising multilayered carbon-containing protective overcoats
US6491798B2 (en) Magnetic recording medium and magnetic storage apparatus
US5939170A (en) Magnetic recording medium
JP3473847B2 (ja) 磁気記録媒体およびその製造方法
JPH0963032A (ja) 磁気記録媒体
JPH0554373A (ja) 磁気記録媒体
JP3012668B2 (ja) 浮上式磁気ヘッド
JPH06325356A (ja) 磁気記録媒体
JPH0568771B2 (ja)
JP2002032909A (ja) 磁気記録媒体用基板及び磁気記録媒体、並びに磁気記録媒体用基板の製造方法及び磁気記録媒体の製造方法
JP3051851B2 (ja) 磁気ディスク用基板
Kogure et al. Isotropic thin film texture for alternative substrates
JPH10283626A (ja) 磁気記録媒体及びその製造方法
JPH0714157A (ja) 磁気記録媒体の製造方法
JP3675449B2 (ja) ハードディスクおよびその製造方法
JPH07272263A (ja) 磁気ディスク
JPH08273155A (ja) 磁気記録媒体の製造方法
JP3038888B2 (ja) 磁気ディスク
JPH05174368A (ja) 磁気記録媒体
JPH0554171B2 (ja)
JP2003217111A (ja) 磁気ディスク用ガラス基板およびその製造方法、ならびに該基板を用いた磁気記録媒体