【発明の詳細な説明】
アセチレン性不飽和化合物のカルボニル化方法
本発明は、アセチレン性不飽和化合物のカルボニル化方法であって、アセチレ
ン性不飽和化合物と比較的少量の1,2−アルカジエン化合物とを含む原料を、
カルボニル化条件下で、一酸化炭素及びヒドロキシル化共反応体(co−rea
ctant)と接触させることからなる方法に関する。
アセチレン性不飽和化合物のカルボニル化処理に伴う問題の一つは、この処理
に使用し得る原料が通常、アセチレン性不飽和化合物以外に1,2−アルカジエ
ン化合物(いわゆるアレン)を含んでいることにある。1,2−アルカジエン化
合物は、比較的少量であっても、触媒の活性に悪影響を及ぼす。少量の1,2−
アルカジエン不純物(0.4%以下)は許容されることも多い。しかしながら、
アセチレン系原料に通常含まれている量では、カルボニル化処理にかける前に特
別の措置が必要となる。
欧州特許出願公開明細書第0,441,446号には、塩基性条件下で適正に
機能するカルボニル化触媒系が開示されている。この触媒系は、a)第VIII族金
属源(例えばパラジウム化合物)、b)イミノ窒素原子を含む芳香族置換基、例
えば任意に置換された2−ピリジル基を有する(単座又は二座)(ジ)ホスフィ
ン、c)プロトン源、及びd)第三アミンからなる。この先行技術の塩基性触媒
系(2−ピリジル及び6−メチル−2−ピリジル基を有するホスフィンをベース
とする)は、第三アミンが存在していれば、より大きいアレン許容量(7%以下
、実施例18)を示す(比較実施例G並びに実施例12及び15参照)。しかし
ながら、この先行特許明細書からは、第三アミンの不在下で実施する場合でもカ
ルボニル化方法を更に改善できるという情報は得られない。
驚くべきことに、本発明では、ある特定の単座又は二座(ジ)ホスフィンリガ
ンドを使用すると、アレン許容量が更に改善されることが判明した。
前記リガンドを選択すれば、不純物1,2−アルカジエンを含む一般的原料を
出発材料として、非塩基性条件下でカルボニル化を実施することもできる。従っ
て、カルボニル化反応の前に1,2−アルカジエン化合物を除去する特別の措置
が不要となる。
本発明は、アセチレン性不飽和化合物と比較的少量の1,2−アルカジエン化
合物とを含む原料を、a)周期表の1種類以上の第VIII族金属のカチオン源と、
b)一般式PR1R2R3又はR2R3M−R−PR1R2【式中、R1は下記の式
[式中、Aは水素と比べて電子求引性である官能基を表し、X、Y及びZは各々
が独立して窒素原子又はC−Q基(Qは水素原子又は置換基である)を表す]で
示されるヘテロアリール基を表し、R2及びR3は独立して置換もしくは未置換(
ヘテロ)ヒドロカルビル基を表すか又は前記R1と同じ意味を表し、Mは第VIa
族元素、好ましくは窒素又はリン原子であり、Rは架橋部に1〜4個の炭素原子
を含む架橋(置換)ヒドロカルビル基を表す】で示されるホスフィンと、c)プ
ロトン酸とをベースとする触媒系の存在下で、カルボニル化条件下に、一酸化炭
素及びヒドロキシル化共反応体と接触させることからなる、アセチレン性不飽和
化合物のカルボニル化方法に関するものであると定義し得る。
本発明の方法で使用する触媒系は、成分a)については、1種類以上の第VIII
族金属のカチオン源をベースとする。この種の金属としては、鉄、コバルト、ル
テニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、オスミウム及びプラチナが挙げ
られる。好ましくは、該触媒系はパラジウムカチオン源をベースとする。
第VIII族金属カチオン源は、金属元素又は金属化合物、例えば金属塩又は金属
とホスフィン、一酸化炭素もしくはアセチルアセトネートとの錯体であってよい
。有利には金属化合物、特に金属塩である。適当な金属塩の具体例としては、硫
酸、硝酸、スルホン酸、ホスホン酸、過ハロゲン酸(perhalic aci
d)及びカルボン酸、例えば炭素原子数1〜12のアルカンカルボン酸、例えば
酢
酸及びプロピオン酸、又はハロゲン化カルボン酸、例えばトリクロロ酢酸及びト
リフルオロ酢酸の塩が挙げられる。酢酸パラジウムは特に適当な金属カチオン源
であることが判明した。
該触媒系のホスフィン(成分b)では、R2及びR3の各々が、好ましくは置換
又は未置換のピリジル、アルキル又はアリール基を表す。適当なR2及びR3基の
具体例としては、2−ピリジル、フェニル、トリルー、キシリル及びシクロヘキ
シル基、並びに炭素原子数3〜7のアルキル基が挙げられる。好ましいのは、R2
及びR3が両方ともフェニル基を表すホスフィンである。
官能基Aは例えば、トリアルキルアンモニウム、ニトロ、シアノ、スルホン、
カルボン、カルボニルもしくはハロアルキル基、又はハロゲン原子(例えばMo
rrison及びBoyd,“Organic Chemistry”,第3版1
980年,p.360に列挙されている基のうちのいずれか)であってよい。他
の電子求引基は当業者に公知であろう。好ましくは(リガンドの製造を容易にす
るために)、ハロゲン原子及び炭素原子数1〜3のハロアルキル基の中から選択
する。より好ましくは、Aはハロゲン原子、例えば臭素、フッ素又は塩素原子を
表す。(各)官能基Aが塩素原子であるホスフィンは最も好ましい。
X、Y及び/又はZが窒素原子を表すホスフィンの具体例としては、ピリミジ
ニルー、ピラジニルー、s−トリアジニルー及びas−トリアジニル基で置換し
たホスフィンが挙げられる。
ホスフィンは、好ましくは、2−ピリジル基で置換されている。即ち、X、Y
及びZの各々が基C−Q[式中Qは水素原子又は置換基である]を表す。
Qで表される適当な置換基としては、電子求引置換基、特にAについて前述し
た置換基が挙げられる。Qは、電子供与置換基、例えばアルキル基、例えばメチ
ル及びエチル基、アミノ及び(ジ)アルキルアミノ基を表すと有利である。
ホスフィンリガンドは、好ましくは、一般式PR1 R2 R3 のモノホスフィン
である。
該触媒系の別の成分であるプロトン酸(成分c)の機能は、プロトン源の供給
にあると考えられる。プロトン酸はその場で発生させてもよい。
好ましくは、プロトン酸は、実質的に非配位性の(non−coordina
ting)アニオン、即ち第VIII族金属と全く又は殆ど配位結合しないアニオン
を有する。この点に関して好ましい酸は、硫酸、スルホン酸及びハロゲン化カル
ボン酸である。
適当なプロトン酸の具体例としては、任意に置換されたアルキルスルホン酸、
例えばメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、tert−ブチルス
ルホン酸、過ハロゲン酸、例えば過塩素酸、並びに酸性イオン交換樹脂、例えば
スルホン化イオン交換樹脂が挙げられる。
第VIII族金属1モル原子当たりのホスフィンのモル数及びプロトン酸のモル数
はかなり変化させ得る。望ましいホスフィン量は、第VIII族金属1モル原子当た
り10〜100モル、特に20〜80モルである。プロトン酸の量は、第VIII族
金属1モル原子当たり2〜500モルのプロトン酸が存在するように選択するの
が好ましい。
本発明の触媒系は均一系又は不均一系であり得るが、好ましくは均一系である
。触媒の適用量は、変換すべきアセチレン性不飽和化合物1モル当たり10-8〜
10-1モル原子、好ましくは10-7〜10-2モル原子の第VIII族金属が存在する
ように選択するのが適当である。
本発明の方法で出発材料として使用するための適当なアセチレン性不飽和化合
物としては、分子当たり炭素数2〜20の任意に置換されたアルキンが挙げられ
る。具体例としては、アセチレン、プロピン、1−ブチン、2−ブチン、1−へ
キシン、フェニルアセチレン及びベンジルエチンが挙げられる。好ましくは、炭
素原子数3〜10の未置換アルキンを使用する。
カルボニル化製品の工業的アウトレットの観点から見て好ましい出発材料はプ
ロピンである。
前述のように、本発明の触媒系の主な利点は、アセチレン系原料中の1,2−
アルカジエン化合物の許容量にある。従って、アセチレン性不飽和化合物の他に
少量の1,2−アルカジエン化合物、例えばプロパジエンを含む市販の原料を使
用し得る。一般的には、アセチレン性不飽和化合物の10%以下の1,2−アル
カジエン含量は許容できる。1,2−アルカジエン化合物量がより少ない原料、
適当には前記量がアセチレン性不飽和化合物1モル当たり0.002〜0.05
モルである原料を使用するのが望ましい。
ヒドロキシル化共反応体は任意のヒドロキシル含有化合物、例えば一価、二価
もしくは多価アルカノール、フェノール又は水であってよい。
好ましいのは一価アルカノール、特に炭素原子数1〜4のものである。その中
で最も好ましいのはメタノールである。
共反応体は、別個の希釈剤又は溶剤を使用しないで済むように、過剰量で使用
するのが適当である。しかしながら、所望であれば液体希釈剤を使用してもよい
。好ましくは、ケトン、例えばメチルイソブチルケトン、又はエーテル、例えば
ジプロピルエーテルもしくは2,4,8−トリオキサノナン(ジグリム)のよう
な非アルカリ性希釈剤を使用する。
触媒の活性が大きいために、本発明の方法は穏やかな反応条件で容易に実施で
きる。適当な反応温度は、例えば20〜100℃、好ましくは30〜75℃であ
る。
反応圧力は通常、1〜100バールの範囲で選択する。該圧力は、好ましくは
5〜70バールである。
以下に非限定的実施例を挙げて本発明を説明する。実施例
実験は総て、250ml“Hastelloy C”(商標)磁気撹拌式オー
トクレーブ内で実施した。該オートクレーブに、0.025mmolの酢酸パラ
ジウム(II)、後述の量の選択したジフェニル(2−ピリジル)ホスフィン及び
プロトン酸、並びに50mlのメタノールを充填した。
オートクレーブから空気を除去した後、30mlのプロパジエン含有プロピン
原料を加えた。
次いで、一酸化炭素を60バールの圧力まで供給した。オートクレーブを密閉
し、所望の反応温度に加熱した。
圧力が降下して一定のレベルを維持する状態(反応の完了を示す)になった時
点でオートクレーブの中味を冷却し、試料を取り出して、気液クロマトグラフィ
ーで分析した。実施例I
a) ホスフィンとして1mmolのビフェニル(6−クロロー−2−ピリジル
)ホスフィンを使用し、プロトン酸として2mmolのトリフルオロメタンスル
ホン酸を使用して、前述の手順で実験を行った。原料は、プロパジエンを0.2
%含むプロピンであった。反応温度は45℃とした。
反応(完了)時間は0.16時間であった。分析の結果、約100%のプロピ
ン変換率で99.88%の選択率をもってメチルメタクリレートが形成されてい
ることが判明した。平均反応速度の計算値は、73,000モル生成物/モル原
子パラジウム/時であった。
b) a)に記載の実験を、プロパジエン含量2.2%のプロピン原料を使用し
て繰り返した。
反応時間は0.5時間であった。平均反応速度の計算値は、24,000モル
生成物/モル原子パラジウム/時であった。実施例II
下記の点を除いて実質的に実施例Iと同様に実験を行った:
i)プロパジエン含量4.5%のプロピン原料を使用した。
ii)ビフェニル(6−クロロ−2−ピリジル)ホスフィンを2mmol使用した
。
iii)反応温度を50℃とした。
反応時間は2.5時間であった。平均反応速度の計算値は、5,500モル生
成物/モル原子パラジウム/時であった。実施例III
下記の点を除いて実質的に実施例IIと同様に実験を行った:
i)プロパジエン含量4.7%のプロピン原料を使用した。
ii)ビフェニル(6−クロロ−2−ピリジル)ホスフィンを3mmol使用した
。
iii)プロトン酸として2mmolのtert−ブチルスルホン酸を使用した。
反応時間は1時間であった。平均反応速度の計算値は、8,900モル生成物
/モル原子パラジウム/時であった。実施例IV
下記の点を除いて実質的に実施例IIIと同様に実験を行った:
i)プロパジエン含量7.0%のプロピン原料を使用した。
ii)プロトン酸として3mmolのメタンスルホン酸を使用した。
iii)反応温度を60℃とした。
反応時間は0.5時間であった。平均反応速度の計算値は、20,000モル
生成物/モル原子パラジウム/時であった。分析の結果、プロピン変換率は>9
5%であり、反応混合物は残留プロピンに基づいて計算して5%のプロパジエン
を含んでいた。これは、プロパジエンの大半がメチルメタクリレート生成物に変
換されたことを意味する。実施例V
a) 下記の点を除いて実質的に実施例I(a)と同様に実験を行った:
i)1mmolのビフェニル(6−ブロモ−2−ピリジル)ホスフィンを使用し
た。
ii)プロトン酸として2mmolのメタンスルホン酸を使用した。
iii)反応温度を30℃とした。
反応時間は1.5時間であった。平均反応速度の計算値は、9,200モル生
成物/モル原子パラジウム/時であった。
b) 下記の点を除いてa)と同じ実験を繰り返した:
i)プロパジエン含量1.7%のプロピン原料を使用した;
ii)プロトン酸として2mmolのトリフルオロメタンスルホン酸を使用した。
iii)反応温度を45℃とした。
反応時間は2.5時間であった。平均反応速度の計算値は、6,000モル生
成物/モル原子パラジウム/時であった。実施例IV
下記の点を除いて実質的に実施例I(a)と同様に実験を行った:
i)1mmolのビフェニル(6=トリフルオロメチル−2−ピリジル)ホスフ
ィン及び1mmolのビフェニル(2−ピリジル)ホスフィンを使用した。
ii)プロトン酸として3mmolのトリフルオロメタンスルホン酸を使用した。
iii)反応温度を35℃とした(60℃の発熱を含む)。
反応時間は1時間であった。分析の結果、98.6%の選択率でメチルメタク
リレートが生成されていた。平均反応速度の計算値は、100,000モル生成
物/モル原子パラジウム/時であった。実施例A
(比較用であって本発明の範囲には含まれない)
a) 下記の点を除いて実質的に実施例V(a)と同様に実験を行った:
i)1mmolのビフェニル(2−ピリジル)ホスフィンを使用した。
ii)反応温度を30℃とした。
反応時間は2時間であった。平均反応速度の計算値は、2,500モル生成物
/モル原子パラジウム/時であった。
b) 下記の点を除いてa)と同じ実験を繰り返した:
i)プロパジエン含量2.3%のプロピン原料を使用した。
ii)反応温度を50℃とした。
反応時間は5時間であった。平均反応速度の計算値は、625モル生成物/モ
ル原子パラジウム/時であった。実施例B
(比較用であって本発明の範囲には含まれない)
a) 下記の点を除いて実質的に実施例V(a)と同様に実験を行った:
i)1mmolのビフェニル(3−メチル−2−ピリジル)ホスフィンを使用し
た。
ii)反応温度を50℃とした。
反応時間は5時間であった。平均反応速度の計算値は、7,100モル生成物
/モル原子パラジウム/時であった。
b) プロパジエン含量2.3%のプロピン原料を使用して、a)に記載の実験
を繰り返した。
平均反応速度の計算値は、800モル生成物/モル原子パラジウム/時であっ
た。実施例C
(比較用であって本発明の範囲には含まれない)
a) 下記の点を除いて実質的に実施例V(a)と同様に実験を行った:
i)1mmolのビフェニル(3−クロロ−2−ピリジル)ホスフィンを使用し
た。
ii)反応温度を35℃とした。
反応時間は0.25時間であった。平均反応速度の計算値は、50,000モ
ル生成物/モル原子パラジウム/時であった。
b) 下記の点を除いてa)と同じ実験を繰り返した:
i)プロパジエン含量2.3%のプロピン原料を使用した。
ii)反応温度を50℃とした。
反応時間は5時間であった。平均反応速度の計算値は、2,100モル生成物
/モル原子パラジウム/時であった。実施例D
(比較用であって本発明の範囲には含まれない)
a) 下記の点を除いて実質的に実施例V(a)と同様に実験を行った:
i)1mmolのビフェニル(5−クロロ−2−ピリジル)ホスフィンを使用し
た。
ii)反応温度を35℃とした。
反応時間は0.1時間であった。平均反応速度の計算値は、175,000モ
ル生成物/モル原子パラジウム/時であった。
b) 下記の点を除いてa)と同じ実験を繰り返した:
i)プロパジエン含量2.3%のプロピン原料を使用した。
ii)反応温度を50℃とした。
反応時間は5時間であった。平均反応速度の計算値は、3,300モル生成物
/モル原子パラジウム/時であった。実施例E
(比較用であって本発明の範囲には含まれない)
a) ホスフィンとしてビフェニル(6−メチル−2−ピリジル)ホスフィンを
使用して、実質的に実施例A(b)と同様に実験を行った:
平均反応速度の計算値は、400モル生成物/モル原子パラジウム/時であっ
た。結論
実施例Aから明らかなように、未置換ホスフィンを触媒成分として使用すると
、プロパジエン含量が比較的低い(0.2%)プロピン原料を用いても、反応速
度は2,500モル/モル原子パラジウム/時にしかならない。これに対し、実
施例B、C及びDのように、置換ホスフィンが触媒系中に存在すると、プロパジ
エン含量が低い原料の変換における反応速度はかなり増大する。
しかしながら、実施例B(b)、C(c)及びD(d)で明らかなように、こ
れらの触媒の活性は原料中のプロパジエンの存在によってかなり低下する。
これに対し、プロパジエン含量2%以上の原料を変換する場合でも、実施例I
〜VIに記載の触媒を使用すると、大きい反応速度が得られる。
【手続補正書】特許法第184条の8
【提出日】1995年7月19日
【補正内容】
明細書
アセチレン性不飽和化合物のカルボニル化方法
本発明は、アセチレン性不飽和化合物のカルボニル化方法であって、アセチレ
ン性不飽和化合物と比較的少量の1,2−アルカジエン化合物とを含む原料を、
カルボニル化条件下で、一酸化炭素及びヒドロキシル化共反応体(co−rea
ctant)と接触させることからなる方法に関する。
アセチレン性不飽和化合物のカルボニル化処理に伴う問題の一つは、この処理
に使用し得る原料が通常、アセチレン性不飽和化合物以外に1,2−アルカジエ
ン化合物(いわゆるアレン)を含んでいることにある。1,2−アルカジエン化
合物は、比較的少量であっても、触媒の活性に悪影響を及ぼす。少量の1,2−
アルカジエン不純物(0.4%以下)は許容されることも多い。しかしながら、
アセチレン系原料に通常含まれている量では、カルボニル化処理にかける前に特
別の措置が必要となる。
例えば、欧州特許出願公開明細書第0,271,144号には、高活性触媒系
の存在下でアセチレン性不飽和化合物のカルボニル化方法が記載されているが、
1,2−アルカジエンが原料に含まれていることによる触媒毒の問題を解決する
ことのできる触媒系に関しては何等の指摘ないし言及もなされていない。
これと関連するカルボニル化方法が欧州特許出願公開明細書第0,386,8
33号に開示されている。この文献によれば、第VIII族金属及び或る種のホスフ
ィン類を含む触媒系を使用することにより、非常に高い選択性で、α−不飽和炭
化水素、特にプロピンを、β−カルボニル化生成物へ変換することができる。
高い反応速度を達成する為には、該触媒系のホスフィン成分は、好ましくは6
位でヒドロカルビル基で置換されている2−ピリジル基を含有しなければならな
いと記載されている。0.4%に達する1,2−アルカジエンが含有されている
原料のカルボニル化反応が例示されてはいるが、より多量の1,2−アルカジエ
ンが存在するときのホスフィン成分に関しては何等の指針も与えられていない。
欧州特許出願公開明細書第0,441,446号には、塩基性条件下で適正に
機能するカルボニル化触媒系が開示されている。この触媒系は、a)第VIII族金
属源(例えばパラジウム化合物)、b)イミノ窒素原子を含む芳香族置換基、例
えば任意に置換された2−ピリジル基を有する(単座又は二座)(ジ)ホスフィ
ン、c)プロトン源、及びd)第三アミンからなる。この先行技術の塩基性触媒
系(2−ピリジル及び6−メチル−2−ピリジル基を有するホスフィンをベース
とする)は、第三アミンが存在していれば、より大きいアレン許容量(7%以下
、実施例18)を示す(比較実施例G並びに実施例12及び15参照)。しかし
ながら、この先行特許明細書からは、第三アミンの不在下で実施する場合でもカ
ルボニル化方法を更に改善できるという情報は得られない。
驚くべきことに、本発明では、ある特定の単座又は二座(ジ)ホスフィンリガ
ンドを使用すると、アレン許容量が更に改善されることが判明した。
前記リガンドを選択すれば、不純物1,2−アルカジエンを含む一般的原料を
出発材料として、非塩基性条件下でカルボニル化を実施することもできる。従っ
て、欧州特許出願公開明細書第0,392,601号に開示されたような、カル
ボニル化反応の前に1,2−アルカジエン化合物を除去する特別の措置が不要と
なる。
本発明は、アセチレン性不飽和化合物と0.004〜0.1のモル比の1,2
−アルカジエン化合物とを含む原料を、a)周期表の1種類以上の第VIII族金属
のカチオン源と、b)一般式PR1 R2 R3 又はR2 R3 M−R−PR1 R2 【
式中、R1は下記の式
[式中、Aは水素と比べて電子求引性である官能基を表し、X、Y及びZは各々
が独立して窒素原子又はC−Q基(Qは水素原子又は置換基である)を表す]で
示されるヘテロアリール基を表し、R2及びR3は独立して置換もしくは未置換(
ヘテロ)ヒドロカルビル基を表すか又は前記R1と同じ意味を表し、Mは第VI
a族元素、好ましくは窒素又はリン原子であり、Rは架橋部に1〜4個の炭素原
子を含む架橋(置換)ヒドロカルビル基を表す】で示されるホスフィンと、c)
プロトン酸とをベースとする触媒系の存在下で、カルボニル化条件下に、一酸化
炭素及びヒドロキシル化共反応体と接触させることからなる、アセチレン性不飽
和化合物のカルボニル化方法に関するものであると定義し得る。
本発明の方法で使用する触媒系は、成分a)については、1種類以上の第VIII
族金属のカチオン源をベースとする。
請求の範囲
1. アセチレン性不飽和化合物のカルボニル化方法であって、アセチレン性不
飽和化合物と0.004〜0.1のモル比の1,2−アルカジエン化合物とを含
む原料を、a)周期表の1種類以上の第VIII族金属のカチオン源と、b)一般式
PR1R2R3又はR2R3M−R−PR1R2【式中、R1は下記の式
[式中、Aは水素と比べて電子求引性である官能基を表し、X、Y及びZは各々
が独立して窒素原子又はC−Q基(Qは水素原子又は置換基である)を表す]で
示されるヘテロアリール基を表し、R2及びR3は独立して置換もしくは未置換(
ヘテロ)ヒドロカルビル基を表すか又は前記R1と同じ意味を表し、Mは第VIa
族元素、好ましくは窒素又はリン原子であり、Rは架橋部に1〜4個の炭素原子
を含む架橋(置換)ヒドロカルビル基を表す】で示されるホスフィンと、c)プ
ロトン酸とをベースとする触媒系の存在下で、カルボニル化条件下に、一酸化炭
素及びヒドロキシル化共反応体と接触させることからなる、前記アセチレン性不
飽和化合物のカルボニル化方法。
2. 触媒系が、R2及びR3が独立して置換又は未置換のピリジル、アルキル又
はアリール基、好ましくはフェニル基を表すホスフィンをベースとする請求項1
に記載の方法。
3. 触媒系が、Aがハロゲン原子及び炭素原子数1〜3のハロアルキル基の中
から選択した置換基を表すホスフィンをベースとする請求項1又は2に記載の方
法。
4. Aがハロゲン原子、好ましくは塩素原子を表す請求項3に記載の方法。
5. 触媒系が、R1が6−A−2−ピリジル基を表すホスフィンをベースとす
る請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
6. 触媒系が、モノホスフィン、好ましくはビフェニル(6−クロロ−2−ピ
リジル)ホスフィンをベースとする請求項1から5のいずれか一項に記載の方法
。
7. 第三アミンの不在下で実施される請求項1から6のいずれか一項に記載の
方法。
8. アセチレン性不飽和化合物1モル当たりの原料中1,2−アルカジエン化
合物のモル量が、0.004〜0.05である請求項1から7のいずれか一項に
記載の方法。
9. プロピンと1,2−プロパジエンとを含む原料を一酸化炭素及びメタノー
ルと反応させることによりメチルメタクリレートを製造する請求項1から10の
いずれか一項に記載の方法。
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フロントページの続き
(72)発明者 シーケルビーク,ヤコバ・カテリナ・ルシ
ア・ヨハンナ
オランダ国エヌエル―1031 シー・エム
アムステルダム、バトホイスウエヒ 3