JPH0948396A - 船舶用推進機の前後進切換装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【課題】 切換動作に連動してリバースロック及び解除
を行うことができる船舶用推進機の前後進切換装置を提
供する。 【解決手段】 縦置きに配置されたクランク軸２ｇにド
ライブ軸１１と交差するよう配設された推進軸１３とを
傘歯車機構１２を介して連結し、後端部にスクリュー５
を装着し、船体３１にチルト軸Ａ回りに上下揺動可能に
支持された船舶用推進機１の、上記ドライブ軸１１と平
行に配置されたシフトロッド１５ａの軸方向位置により
上記傘歯車機構１２の前，後進歯車の何れかを推進軸１
３に係合させるようにした切換装置１４において、船体
３１側に上記推進機１の水没側への揺動角度を規制する
とともにストッパ部材１９を設け、上記シフトロッド１
５ａを後進時位置に移動させたとき該推進機１のチルト
アップ側への揺動を阻止する係止部材２０を固定する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、船体にチルト軸回
りに上下に揺動可能に装着された船舶用推進機の前後進
切換装置に関し、特に後進状態に切り換えた場合に、該
推進機のチルトアップ側への揺動を阻止するようにした
リバースロック機構に関する。

【０００２】

【従来の技術】船舶用推進機として、従来、縦置きに配
置されたクランク軸の下端にドライブ軸を接続し、該ド
ライブ軸の下端に傘歯車からなる前後進切換機構を介し
て推進軸を直交するよう接続し、該推進軸の後端にスク
リューを装着した構成のものがあり、該推進機は船体に
チルト軸回りに上下揺動可能に取り付けられている。こ
の種の推進機では、後進状態に切り換えると、後進方向
の推進力により該推進機はチルトアップ側に揺動する。

【０００３】上記後進時の揺動を阻止するためのリバー
スロック機構として、従来例えば、図９に示すペダル式
のものがある。図中、３１は推進機のケーシング部分で
あり、該ケーシング３１は船体３２にチルト軸３３回り
に航走時位置とチルトアップ時位置との間で上下揺動可
能となっている。そしてリバースロック機構は、船体３
２にペダル３４を図示時計回りに付勢して配設し、航走
時位置において、該ペダル３４から延びるロッド３５の
先端部３５ａを上記ケーシング３１に固着された係止リ
ング３６に係止させるように構成されている。

【０００４】この従来の推進機では、ロッド３５の先端
部３５ａが係止リング３６に係止しているので、後進時
にチルトアップ方向の力が作用しても推進機の揺動を阻
止できる。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】ところが上記従来のペ
ダル式リバースロック機構の場合、陸上に上がる場合等
に推進機をチルトアップする場合は、ペダルを踏み込む
ことにより上記先端部３５ａを係止リング３６から外す
操作が必要であり、面倒であるという問題があり、また
部品点数が多く、コスト高という問題もある。

【０００６】しかも常時ロックされているので、前進航
走中に推進機に異物が当たった場合、該推進機が逃げる
ことができないことから損傷し易いという問題がある。

【０００７】上記問題を解消することのできるリバース
ロック機構として、前後進切換操作に連動してロック及
びロックの解除が可能な装置が提案されている。しかし
ながらこの種の従来機構は、構造が複雑であり、部品点
数が多いことからコスト高であるという問題がある。

【０００８】本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなさ
れたもので、極めて簡単な構造により、前後進切換動作
に連動してリバースロック及び解除を行うことができる
船舶用推進機の前後進切換装置を提供することを目的と
している。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明は、縦置きに配置
されたクランク軸にドライブ軸を接続し、該ドライブ軸
とこれと交差するよう配設された推進軸とを傘歯車機構
を介して連結し、該推進軸の後端部にスクリューを装着
してなり、船体にチルト軸回りに航走時位置とチルトア
ップ時位置との間で上下揺動可能に支持された船舶用推
進機の、上記ドライブ軸と平行に配置されたシフトロッ
ドの軸方向位置により上記傘歯車機構の前，後進歯車の
何れかを推進軸に係合させるようにした前後進切換装置
において、船体側に上記推進機の水没側への揺動角度を
規制するとともにチルトアップ側への揺動は許容するス
トッパ部材を設け、上記シフトロッドに、該ロッドを後
進時位置に移動させたとき上記ストッパ部材に係止して
該推進機のチルトアップ側への揺動を阻止する係止部材
を固定したことを特徴としている。

【００１０】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を添付図
面に基づいて説明する。図１〜図８は本発明の一実施形
態による船舶用推進機の前後進切換装置を説明するため
の図であり、図１は航走状態の推進機を示す左側面図、
図２はその正面図、図３はそのチルト軸及び切換カム回
りの状態を示す断面左側面図、図４はその断面平面図、
図５は前後進切換装置のリバースロック機構部分の断面
平面図、図６はその断面左側面図、図７はアッパ，ロワ
ケース接合部を示す断面左側面図、図８は前後進切換装
置の傘歯車機構部分の断面左側面図である。

【００１１】図において、１は船体３１にチルト軸Ａ回
りに上下揺動可能にかつステアリング軸Ｂ回りに左右に
旋回可能に装着された船舶用推進機であり、これはエン
ジンユニット２の下端面にアッパケース３，ロワケース
４を順次結合し、該ロワケース４の後端部にスクリュー
５を配設した構造のものである。

【００１２】上記エンジンユニット２のシリンダブロッ
ク２ａはシリンダボア軸を船体前方に向けて水平配置さ
れており、該シリンダブロック２ａの後合面にはクラン
クケース２ｂが結合され、前合面にはシリンダヘッド２
ｃ，ヘッドカバー２ｄが積層結合されている。そして上
記シリンダブロック２ａのシリンダボア内に配置された
ピストン２ｅはコンロッド２ｆを介してクランク軸２ｇ
に連結されており、該クランク軸２ｇは縦置きに配置さ
れている。

【００１３】上記クランク軸２ｇの上端部には始動用ロ
ープが巻回された始動用プーリ６が装着されており、該
プーリ６収容ケース６ａの前側で上記シリンダヘッド２
ｃの上側空間に燃料タンク７が搭載されている。また、
上記シリンダヘッド２ｃの右側壁面に開口する吸気ポー
トの外部接続口（図示せず）には気化器８が接続されて
おり、上側壁面に開口する排気ポートの外部接続口には
マフラを有する排気管（図示せず）が接続されている。

【００１４】また、上記ヘッドカバー２ｄの前面には操
舵ハンドル１０の支持ブラケット１０ａがボルト締め固
定されている。該操舵ハンドル１０は、略水平に延びる
棒状のもので、シリンダボア軸線と略同じ高さに位置し
ている。

【００１５】上記クランク軸２ｇの下端部には、上記ア
ッパケース３内に収容されたドライブ軸１１が継手２ｈ
を介して結合されており、該ドライブ軸１１の下端部に
は、上記ロワケース４内に収容された前後進切換機構１
４を内蔵する傘歯車機構１２を介して、推進軸１３が連
結されている。該推進軸１３の後端部にスクリュー５が
固定されている。

【００１６】上記傘歯車機構１２は、ドライブ軸１１の
下端に固定されたドライブギヤ１１ａに前，後推進ギヤ
１２ａ，１２ｂを噛合させた構造のものであり、該前，
後進ギヤ１２ａ，１２ｂは推進軸１３に回転自在に支持
されている。

【００１７】上記前後進切換機構１４は、上記推進軸１
３の前，後進ギヤ１２ａ，１２ｂ間部分にシフタ１４ａ
を軸方向移動可能にかつ回転伝達可能に装着し、該シフ
タ１４ａをシフトロッド１４ｂ，及びカム１４ｃにより
軸方向に移動させ、該シフタ１４ａの係合爪１４ｄを
前，後進ギヤ１２ａ，１２ｂの何れかの係合爪１２ｃに
係合させるように構成されている。なお、上記シフタ１
４ａは図示しない復帰ばねにより前進側に付勢されてい
る。

【００１８】上記カム１４ｃは前，後進カム面１４ｄ，
１４ｅを有し、切換ロッド１５ａにより前進カム面１４
ｄがシフタロッド１４ｂに当接する位置に上昇駆動され
るとシフタ１４ａが前進ギヤ１２ａに噛合し、後進カム
面１４ｅがシフタロッド１４ｂに当接する位置に下降駆
動されるとシフタ１４ａが後進ギヤ１２ｂに噛合する。

【００１９】上記切換ロッド１５ａは、上記アッパケー
ス３の後述する上ケース３ａ内に支持軸１５ｅにより回
動可能に配設されたリンクプレート１５ｂ，及び上記操
舵ハンドル１０に沿って延びるリンクロッド１５ｃを介
して該操舵ハンドル１０に装着された切換レバー１５ｄ
に連結されている。該切換レバー１５ｄを前側に倒すと
前進状態となり、後側に倒すと後進状態となる。なお、
上記リンクプレート１５ｂには、該切換機構を前，後進
位置及び中立位置に節度をもって保持する位置決め部１
５ｆが形成されている。

【００２０】上記アッパケース３は、アルミ合金鋳造製
の上，下ケース３ａ，３ｂと両者を接続するアルミ合金
製パイプ３ｃとからなり、上，下ケース３ａ，３ｂの接
続孔３ｄ内に上記パイプ３ｃを圧入し、溶接した構造の
ものである。この３分割構造によりアッパケース全体を
鋳造製とした場合に比較して軽量，低コストとなってい
る。なお、上記上ケース３ａ内に上記クランク軸２ｇ，
ドライブ軸１１の継手２ｈ及び上記前後進切換機構のリ
ンクプレート１５ｂが収容されている。

【００２１】また上記上ケース３ａとパイプ３ｃとの結
合部分に本推進機１を船体３１に、チルト軸Ａ回りに上
下揺動可能に、かつステアリング軸Ｂ回りに左右に旋回
可能に取り付けるための支持ブラケット１６が装着され
ている。該支持ブラケット１６は、前，後に２分割され
た前，後ブラケット１６ａ，１６ｂをボルト１６ｃで結
合したものであり、その内部には旋回用のブッシュ１７
を有しており、また上縁には上記上ケース３ａの凹溝３
ｅ内に挿入されるフランジ部１６ｄが一体形成されてい
る。また前ブラケット１６ａの前端部が上述のチルト軸
Ａにより上記クランプブラケット３２の縦辺部３２ａの
上端部に軸支されている。

【００２２】そしてアッパケース３のパイプ３ｃの上下
方向中央付近に、リバースロック機構１８が設けられて
いる。このリバースロック機構１８は、上記クランプブ
ラケット３２の縦辺部３２ａの下端にストッパブラケッ
ト１９を固定し、該ストッパブラケット１９に前後進切
換動作に伴って係脱する係止部材２０を上記切換ロッド
５ａに固定した構造のものである。

【００２３】上記ストッパブラケット１９は、帯板を略
コ字状に折り曲げるとともに、前辺部に上記パイプ３ｃ
と同一径で半円状の受部１９ａを成形したものであり、
左，右辺部１９ｂが上記クランプブラケット３２の縦辺
部３２ａにボルト締め固定されている。上記受部１９ａ
がパイプ３ｃと同じ径に設定されているので該推進機１
の前進時の反力を、該推進機１の旋回に支障をきたすこ
となくことなく支持している。また上記受部１９ａが半
円状で後側に向けて開放されていることにより、該推進
機１に後方に向けて大きな荷重が作用した場合の該推進
機の跳ね上げ動作に支障が生じることはない。

【００２４】上記係止部材２０は、上記切換ロッド５ａ
に装着される取付部２０ａと、上記受部１９ａの外周面
に係止する係止爪部２０ｂとを一体形成してなるもので
ある。この係止部材２０は、ロックボルト２１により切
換ロッド５ａの軸方向位置が位置決め固定される。また
係止爪部２０ｂは上記パイプ３ｃに切換時の最大ストロ
ークにより若干長く形成されたスリット３ｇから外方に
突出し、上記受部１９ａに係脱可能となっている。

【００２５】次に作用効果を説明する。推進機１を後進
状態に切り換える場合には、切換レバー１５ｄを図１に
示す中立位置から後進側（後側）に倒す。すると、リン
クロッド１５ｃの前進によりリンクプレート１５ｂが図
３の位置から時計回りに回動し、切換ロッド１５ａが下
降し、後進カム面１４ｅがシフトロッド１４ｂを右方に
移動させ、これによりシフタ１４ａが後進ギヤ１２ｂに
噛合し、エンジン回転はドライブ軸１１から後進ギヤ１
２ｂを介して推進軸１３に伝達される。この後進状態で
は推進機１は、チルトアップ側（図示反時計方向）への
後進反力を受けることとなる。

【００２６】そしてこの後進側切換動作による切換ロッ
ド１５ａの下降により、係止部材２０も下降し、該部材
２０の係止爪部２０ｂがストッパブラケット１９の受部
１９ａの外周面に係止する。これにより上記後進反力が
負担され、該推進機１はリバースロックされる。なお、
この状態で操舵ハンドル１０を左，右に旋回した場合、
上記係止爪部２０ｂは受部１９の外周面に沿って摺動す
るので、左右への操舵操作に支障が生じることはない。

【００２７】一方、推進機１を前進状態に切り換える場
合は、切換レバー１５ｄを前進側（前側）に倒す。する
と、切換ロッド１５ａが上昇し、前進カム面１４ｄがシ
フトロッド１４ｂと対向してシフタ１４ａの左方移動を
許容し、シフタ１４ａは復帰ばねにより左方に移動して
前進ギヤ１２ａに噛合し、エンジン回転はドライブ軸１
１から前進ギヤ１２ａを介して推進軸１３に伝達され
る。そしてこの前進側切換動作に伴って係止部材２０も
上昇し、係止爪部２０ｂが受部１９ａから上方に外れ、
上述のリバースロックは解除される。

【００２８】このように本推進機１の前後進切換装置で
は、前後進切換動作に伴って上下動する切換ロッド１５
ａに係止部材２０を装着し、該係止部材２０をストッパ
ブラケット１９に係脱させるようにしたので、極めて簡
単な構造によりリバースロックを実現できる。そして前
進側への切換により、係止部材２０がストッパブラケッ
ト１９から自動的に外れてリバースロックが解除される
ので、前進航走中に例えは流木が推進機に衝突した場合
には、該推進機が上方に跳ね上げられることとなり、推
進機の損傷を回避できる。

【００２９】また本推進機１はシリンダヘッド２ｃを船
体前側に向けて配置しているので、推進機１をチルトさ
せてエンジンを回転させている時には、該エンジンはシ
リンダヘッド２ｃが上側位置するよう斜めになってお
り、シリンダヘッド内潤滑油が吸気弁，排気弁の隙間か
ら燃焼室内に侵入するのを回避でき、白煙の発生を防止
できる。

【００３０】さらにまた本推進機１では、気化器８をシ
リンダヘッド２ｃの側壁に配置するとともに、燃料タン
ク７を始動用プーリ６の前側で上記シリンダヘッド２ｃ
の上方に配置したので、推進機１姿勢の如何に係わらず
燃料タンク７は気化器８より上方にあり、重力による自
然給油でありながら燃料を気化器に確実に供給できる。
ちなみに、従来の推進機では、燃料タンクを推進機後端
部に配置していたので、推進機のチルト角度の如何によ
っては燃料タンク内油面が気化器より低くなり、燃料切
れを起こす場合があった。

【００３１】

【発明の効果】本発明では、船体側に推進機の前進時の
推進反力による揺動を阻止するストッパを設け、シフト
ロッドに、該ロッドを後進時位置に移動させたときスト
ッパに係止してチルトアップ方向の揺動を阻止する係止
部材を設けたので、簡単な構造により前後進切換動作に
連動してリバースロック及びその解除を行うことがで
き、コスト高となることなく後進時のチルトアップを阻
止できかつ異物の衝突時による損傷を回避できる効果が
ある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施形態による船舶用推進機の左側
面図である。

【図２】上記実施形態推進機の正面図である。

【図３】上記実施形態推進機の支持ブラケット回りの断
面左側面図である。

【図４】上記実施形態推進機の支持ブラケット回りの断
面平面図である。

【図５】上記実施形態推進機のリバースロック機構回り
の断面平面図である。

【図６】上記実施形態推進機のリバースロック機構回り
の断面左側面図である。

【図７】上記実施形態推進機の下ケース回りの断面左側
面図である。

【図８】上記実施形態推進機の前後進切換機構回りの断
面左側面図である。

【図９】従来のリバースロック機構回りの模式図であ
る。

【符号の説明】

１ 推進機 ２ｇ クランク軸 ５ スクリュー １１ ドライブ軸 １２ 傘歯車機構 １３ 推進軸 １４ 前後進切換機構 １５ａ 切換ロッド １９ ストッパブラケット（ストッパ部材） ２０ 係止部材 Ａ チルト軸

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 縦置きに配置されたクランク軸にドライ
   ブ軸を接続し、該ドランブ軸とこれと交差するよう配設
   された推進軸とを傘歯車機構を介して連結し、該推進軸
   の後端部にスクリューを装着してなり、船体にチルト軸
   回りに航走時位置とチルトアップ時位置との間で上下揺
   動可能に支持された船舶用推進機の、上記ドライブ軸と
   平行に配置されたシフトロッドの軸方向位置により上記
   傘歯車機構の前，後進歯車の何れかを推進軸に係合させ
   るようにした前後進切換装置において、船体側に上記推
   進機の水没側への揺動角度を規制するとともにチルトア
   ップ側への揺動は許容するストッパ部材を設け、上記シ
   フトロッドに、該ロッドを後進時位置に移動させたとき
   上記ストッパ部材に係止して該推進機のチルトアップ側
   への揺動を阻止する係止部材を固定したことを特徴とす
   る船舶推進機の前後進切換装置。