JPH0941346A - コンクリートダム堤体とその築造法およびブロック - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 コンクリートダム堤体は、上，下流側外層を
富配合コンクリートで、堤体内部を貧配合コンクリート
で、打設位置や順序の一定の制約下での打設、型枠や保
安の手すりの設置を必要とし、所定の品質確保が困難で
あり、作業能率が悪く、工期が掛り、コスト高になるも
のであった。 【解決手段】 上流側外層と下流側外層を、富配合コン
クリート製の外層用コンクリートブロックを重合するこ
とにより形成しながら、堤体内部を、貧配合コンクリー
トの１段の打設を、外層用コンクリートブロックの上段
のものの、ほぼ下半部を埋設する高さまで行うことによ
り、残りのほぼ上半部を囲いとして使用しながら形成す
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明はコンクリートダム堤
体とその築造法およびブロックに関する。

【０００２】

【従来の技術】コンクリートダム堤体は、図１１に示す
ように、その縦断面が堤頂部ａを除くとほぼ三角形をな
し、堤頂部ａを含む上流側外層ｂおよび下流側外層ｃ
が、セメントの配合割合を多くしたおよそ１〜３ｍの厚
さの富配合コンクリートで形成され、これら上，下流側
外層ｂ，ｃによって囲繞の堤体内部ｄが、セメント配合
割合を少なくした貧配合コンクリートで形成されてい
る。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】コンクリートダム堤体
が、厳しい気象条件や水流等に所定の耐久性を維持する
には、上記のように、上流側外層ｂと下流側外層ｃを富
配合コンクリートによって高品質に形成されていること
が必須とされる。しかし、これら上，下流側外層ｂ，ｃ
として富配合コンクリートを打設し、堤体内部ｄとして
貧配合コンクリートを打設しながらするコンクリートダ
ム堤体の築造作業は、大掛かりな型枠を必要とするとと
もに煩雑で困難な作業が多く、熟練を要するばかりでは
なく、施工期間の長期化と高コストを免れない。

【０００４】すなわち、たとえば上流側外層ｂと堤体内
部ｄの形成についてみると、図１２に示すように、ま
ず、所要位置に貧配合コンクリート部１を打設した後、
その外側に富配合コンクリート部２を打設し、次いで、
貧配合コンクリート部３，４を打設した後、その外側で
あって上記富配合コンクリート部２上に同じ富配合コン
クリート部５を打設し、さらに、貧配合コンクリート部
６〜８を打設した後、その貧配合コンクリート部８の外
側であって前段の富配合コンクリート部５上に富配合コ
ンクリート部９を打設し、爾後同様にして、富配合コン
クリートによる上流側外層ｂと堤体内部ｄとを形成する
ものである。

【０００５】このように、富配合と貧配合という２種類
のコンクリートを現場で調製しながら、しかも、その打
設位置と打設順序の制約を受けながらする打設は、さら
に次のような問題がある。 作業が複雑になり、施工能率が悪いとともに、上流
側外層ｂと堤体内部ｄとの境界部分において配合の異な
る上記２種類のコンクリートが混在し、上流側外層ｂと
して必要な設定どおりの品質や厚さを確保できないこと
がある。 コンクリート打設作業は、上，下流側外層ｂ，ｃの
外面に沿う位置に大掛かりな型枠を設置し、それを順次
上昇移動させながら進められるものであるが、この型枠
の設置および移動は、そのこと自体面倒な作業であると
ともに、特にそれはダム堤体外における作業となり、墜
落災害等の危険に曝されるので安全の確保に腐心しなけ
ればならない。

【０００６】 労働安全衛生規則の定めるところにし
たがい、所要厚さ打設毎に、その全周に手すり等の囲い
を設置し作業員の安全を確保しなければならない。 コンクリート打設後の適切な養生は、設定どおりの
品質を確保するのに不可欠であるが、その養生期間内に
おける乾燥や温度応力によるひび割れを防止するため
に、打設コンクリートの上面に散水し、あるいは同上面
をシートで覆って直射日光を遮断する等の必要がある。 上，下流側外層ｂ，ｃの外面に沿って設置した型枠
をシートで覆って、夏期における直射日光を遮り該外面
が熱せられることのないようにするとともに、冬期には
そのシート内にジェットヒータ等の温風発生装置を設置
するとか、発砲スチロール等の断熱材を張設するとかし
て同外面が冷却しないようにしなければならない。

【０００７】本発明の目的は、これら〜の問題を解
消し、設計どおり高品質のコンクリートダム堤体を、簡
単な作業によって、すなわち、従来のような特別な経験
や熟練を要することなく、しかも、短い工期で、経済的
に築造しようとするものである。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明コンクリートダム
堤体は、上流側外層ｂおよび下流側外層ｃが富配合コン
クリート製の外層用コンクリートブロックＡおよびＢで
形成されているとともに、これら上流側外層ｂと下流側
外層ｃとで囲繞する堤体内部ｄが現場打設の貧配合コン
クリート３５で形成されているものである。

【０００９】本発明コンクリートダム堤体の築造法は、
富配合コンクリート製の外層用コンクリートブロックＡ
およびＢを重合することにより上流側外層ｂおよび下流
側外層ｃを形成するとともに、これら上流側外層ｂと下
流側外層ｃとの間に貧配合コンクリート３５を打設して
堤体内部ｄを形成することを内容とする。

【００１０】本発明によれば、上記富配合コンクリート
製の外層用コンクリートブロックＡおよびＢは、工場生
産しておいた均一な品質のものを使用でき、したがっ
て、上流側外層ｂおよび下流側外層ｃを設定どおりの耐
久性のあるものにできる。また、外層用コンクリートブ
ロックＡおよびＢを型枠として使用でき、従来のよう
に、大掛かりな型枠を設置したり、それを上昇移動させ
たりする面倒な作業を必要としない。

【００１１】現場でのコンクリート打設作業は、堤体内
部ｄを形成する貧配合コンクリート３５一種類でけの打
設であって、従来に比べると著しく単純になり、特に、
上，下流側外層ｂ，ｃと堤体内部ｄとの境界部分におい
て配合の異なる２種類のコンクリートが混在するような
ことが発生する余地がない。

【００１２】堤体内部ｄを形成するために打設された貧
配合コンクリート３５は、その外側を、富配合コンクリ
ート製の外層用コンクリートブロックＡおよびＢで保護
されるので、養生期間内における乾燥や温度応力による
ひび割れの防止作業は著しく緩和される。

【００１３】貧配合コンクリート３５の１段の打設を、
外層用コンクリートブロックＡおよびＢの上段のもの
の、ほぼ下半部を埋設する高さまで行うことにより、残
りのほぼ上半部を囲いとして使用できるので、従来のよ
うに、手すり等の囲いを各打設段毎に設置しなければな
らない煩わしさがない。

【００１４】さらに、上流側外層ｂを形成する富配合コ
ンクリート製の外層用コンクリートブロックＡとして、
前側面１０側を、上半前部１０′とそれと同形で同じ大
きさの下半空処１０″とにするとともに、後側面１１側
を、下半後部１１′とそれと同形で同じ大きさの上半空
処１１″とにしたものとし、上段のものと下段のもの
が、前者の下半空処１０″を後者の上半前部１０′に、
前者の下半後部１１′を後者の上半空処１１″に噛合し
て上下に重合し、かつ、前者の下半後部１１′と後者の
上半前部１０′とを内外に重合することができる構成の
ものとすると、該上流側外層ｂを強固にし、上記貧配合
コンクリート３５の打設時の背面応力と密着に対応でき
る。

【００１５】特に、上記上半前部１０′および下半空処
１０″を同じ大きさの台形状とするとともに、上記下半
後部１１′および上半空処１１″を同じ大きさの逆台形
状にすることは、該ブロックＡの製造を容易にするのは
もちろん、本発明堤体の築造において、その重合作業を
簡単確実に行うのに好適である。

【００１６】また、下流側外層ｃを形成する上記富配合
コンクリート製の外層用コンクリートブロックＢとし
て、前方上向きの大傾斜前面２７′と後方上向きの小傾
斜後面３０′とを有する上半後部２７と、前側に下半空
処２８を形成した下半後部２９とを、上記大傾斜前面２
７′の前端と下半後部２９の垂直前面２９′の上端との
間の部分を前方下向きの小傾斜前面３１として形成した
ものとし、上段のものと下段のものが、後者の上半後部
２７の後面に、前者の下半空処２８を嵌合して上下に重
合するとともに、前者の下半後部２９と後者の上半後部
２７とを内外に重合することができる構成のものとする
と、所要の勾配をもった強固な下流側外層ｃとし、しか
も、上記貧配合コンクリート３５の打設時の背面応力と
密着に対応できる。

【００１７】

【発明の実施の形態】まず、本発明外層用コンクリート
ブロックについて説明する。図２は前記上流側外層ｂを
形成するのに使用する外層用コンクリートブロックＡの
斜視図、図３はその外層用コンクリートブロックＡの重
合状態の側面図、図４は同ブロックＡの概略斜視図であ
る。

【００１８】この上流側外層ｂを形成するのに使用する
外層用コンクリートブロックＡは、富配合コンクリート
製で、それは、前，後側面１０，１１（幅員１，０００
mm）、左，右側面１２，１３（幅員１，０４０mm）、上
下側面１４，１５（両者間の高さ１，９５０mm）からな
る仮想縦長直方体Ａ′の、前側面１０側を、上半前部１
０′（頂端厚さ３００mm，高さ１，０００mm）と下半空
処１０″（頂端厚さ３００mm，高さ９５０mm）とにする
とともに、後側面１１側を、下半後部１１′（下端厚さ
２００mm，高さ１，０００mm）と上半空処１１″（下端
厚さ２００mm，高さ９５０mm）とにし、これら上半前部
１０′と下半後部１１′とを富配合コンクリートで一体
成型してなる（その体積は０．９３m³、重量２．２３２
kg）。

【００１９】上記上半前部１０′と下半空処１０″は断
面を同じ大きさの台形状にし、さらにまた、下半後部１
１′と上半空処１１″は断面を同じ大きさの逆台形状に
している。上記上半前部１０′は、その頂端面に嵌合凹
溝イを、下端面に嵌合突条ロを有する。

【００２０】この外層用コンクリートブロックＡは、図
３に示すように、下段に位置させたものの上に上段のも
のを噛合させた状態で重合することがきる。すなわち、
下段の外層用コンクリートブロックＡ₁ の上半前部１
０′に上段の外層用コンクリートブロックＡ₂ の下半空
処１０″を嵌合するとともに、下段の外層用コンクリー
トブロックＡ₁ の上半空処１１″に上段の外層用コンク
リートブロックＡ₂ の下半後部１１′を嵌合することに
よって、両ブロックＡ₁ ，Ａ₂は互いに噛合して上下に
重合し、かつ、これにより、上段の外層用コンクリート
ブロックＡ₂ の下半後部１１′と下段の外層用コンクリ
ートブロックＡ₁ の上半前部１０′とが内外（得ようと
するコンクリートダム堤体の内部に面する側を内とし、
外部に面する側を外ということとする）に重合する。か
かる重合作業を繰り返すことにより、後記するように、
厚さ１，０４０mmの垂直な上流側外層ｂを構築できる。

【００２１】上記重合作業時における外層用コンクリー
トブロックＡの位置決めは、上記嵌合凹溝イと嵌合突条
ロを一致嵌合させることによって簡単にできる。また、
上半前部１０′の背面に設けた凹処１６内には係止金具
１７を設置してあり、上記重合作業にあたり、外層用ブ
ロックＡを吊り上げたり下ろしたりするクレーン等のワ
イヤーフックを引っ掛けるのに使用できるようにしてあ
る。なお、下半後部１１′の上端面に浅底凹処１８を設
けているが、これは、重合した上段の外層用ブロックＡ
の位置を微調整する必要があるときに、この浅底凹処１
８の部分にバールの先端を挿入するためのものである。
さらに、下半後部１１′の外面に、正面方形の空処１９
を設け、材料の節約あるいは重量調整を意図することが
あるが、必ず必要とするものではない。

【００２２】図５は下流側外層ｃを形成するのに使用す
る外層用コンクリートブロックＢの一部切欠斜視図、図
６はその外層用コンクリートブロックＢの重合状態の側
面図、図７は同ブロックＢの全体斜視図である。

【００２３】外層用コンクリートブロックＢは、上記し
た外層用コンクリートブロックＡと同じように富配合コ
ンクリート製である。この外層用コンクリートブロック
Ｂは、前，後側面２０，２１（幅員１，０００mm）、
左，右側面２２，２３（幅員９７５mm）、上下側面２
４，２５（両者間の高さ１，９９０mm）からなる仮想縦
長直方体Ｂ′の、上半部分を断面逆三角形状の上半空処
２６と三角形状の上半後部２７とすることにより、その
上半後部２７の前面を前方上向きの大傾斜前面２７′と
するとともに、下半部分の上記前側面２０側を薄板形状
の下半空処２８とし、この後側部分全体を下半後部２９
とし、これら上半後部２７と下半後部２９とを富配合コ
ンクリートで一体成型してなる（その体積は０．９８０
m³ 、重量２．３０３kg）である。

【００２４】上記上半後部２７はその頂端３０の後側面
を三角形状に切除した状態にして、後方上向きの小傾斜
後面３０′とし、また、上記大傾斜前面２７′の前端と
下半後部２９の垂直前面２９′の上端との間の部分を、
前方下向きの小傾斜前面３１としている。

【００２５】外層用コンクリートブロックＢは、図６に
示すように、下段に位置させたものの上に上段のものを
噛合させた状態で重合することがきる。すなわち、下段
の外層用コンクリートブロックＢ₁ の上半後部２７の小
傾斜後面３０′を含む後面に、上段の外層用コンクリー
トブロックＢ₂ の上記小傾斜前面３１を含む下半後部２
９の垂直前面２９′を当接し、上記下半空処２８を嵌合
することにより、両ブロックＢ₁ ，Ｂ₂ は互いに噛合し
て上下に重合し、かつ、これによって、上段の外層用コ
ンクリートブロックＢ₂ の下半後部２９と下段の外層用
コンクリートブロックＢ₁ の上半後部２７とが内外（得
ようとするコンクリートダム堤体の内部に面する側を内
とし、外部に面する側を外ということとする）に重合す
る。したがって、この重合作業を繰り返すことにより、
後記するように、厚さが少なくとも９７５mm（外層用コ
ンクリートブロックＢの厚さすなわち左，右側面２２，
２３の幅員）以上で、所要の勾配を有する下流側外層ｃ
を構築できる。

【００２６】なお、外層用コンクリートブロックＢは、
下半後部２９の後面に、材料の節約と重量調整のため正
面方形の空処３２を設けているが、必ず必要とするもの
ではない。また、この外層用コンクリートブロックＢ
は、その大傾斜前面２７′にたとえば自然石模様を膨出
成型しておくことによって、下流側外層ｃの外面を周囲
の自然環境に適合する形態のものにさせることができ
る。

【００２７】次に、上記構成の外層用コンクリートブロ
ックＡにより上流側外層ｂを、また外層用コンクリート
ブロックＢにより下流側外層ｃを形成しながら施工する
本発明コンクリートダム堤体の築造法とについて説明す
る。

【００２８】所定の基礎コンクリートｅの上流側所定位
置に、第１段目の外層用コンクリートブロックＡ₁ を、
その前側面１０を上流側に向けて、かつ適宜の補助ブロ
ック３３を使用して列設するとともに、下流側所定位置
に、同じく第１段目の外層用コンクリートブロックＢ₁
を、前側面２０を下流側に向けて、かつ適宜の補助ブロ
ック３４を使用して列設する。

【００２９】そして、常法にしたがいコンクリート打設
面の清掃を行うとともに敷きモルタルを敷き詰める等の
前処理の後、貧配合コンクリート３５を、第１段目の外
層用コンクリートブロックＡ₁ の全高および同Ｂ₁ の全
高の約半分まで、すなわち、下半後部１１′（高さ１，
０００mm）および下半後部２９（高さ９９０mm）まで打
設し、これを堤体内部ｄの第１段目コンクリート層ｄ₁
とし、慣行にしたがい所定の養生を行う。

【００３０】第１段目コンクリート層ｄ₁ が、所定の硬
化状態に達し、第１段目の外層用コンクリートブロック
Ａ₁ およびＢ₁ と一体化したところで、その第１段目の
外層用コンクリートブロックＡ₁ および同Ｂ₁ に第２段
目の外層用コンクリートブロックＡ₂ および同Ｂ₂ を重
合する（図８）。第２段目の外層用コンクリートブロッ
クＡ₂ は、第１段目の外層用コンクリートブロックＡ₁
に重合し、その全重量を第１段目の外層用コンクリート
ブロックＡ₁ によって支持される。

【００３１】同第２段目の外層用コンクリートブロック
Ｂ₂ は、第１段目の外層用コンクリートブロックＢ₁ の
小傾斜後面３０′を含む後面に下半空処２８を重合させ
るとともに、第１段目コンクリート層ｄ₁ に下半後部２
９の下端を乗載した状態に設置され、これらによってそ
の重量が支持される。そして、既設の上記第１段目コン
クリート層ｄ₁ の打ち継ぎに必要な所要の表面処理を行
い、同じく貧配合コンクリート３５を、第２段目の外層
用コンクリートブロックＡ₂ および同Ｂ₂ の高さの約半
分まで打設し、これを堤体内部ｄの第２段目コンクリー
ト層ｄ₂ とし、慣行にしたがい所定の養生を行う。

【００３２】第２段目コンクリート層ｄ₂ が、所定の硬
化状態に達し、第２段目の外層用コンクリートブロック
Ａ₂ およびＢ₂ と一体化したたところで、上記と同様に
して、第３段目の外層用コンクリートブロックＡ₃ およ
び同Ｂ₃ を、第２段目の外層用コンクリートブロックＡ
₂ および同Ｂ₂ に重合設置する（図１０）とともに、貧
配合コンクリート３５により第３段目コンクリート層ｄ
₃ を打設形成する（図１）。

【００３３】同様の作業をｎ回繰り返すことによって、
外層用コンクリートブロックＡ₁ 〜Ａn による富配合コ
ンクリート製の上流側外層ｂを垂直に形成し、また、外
層用コンクリートブロックＢ₁ 〜Ｂ_n による同じく富配
合コンクリート製の下流側外層ｃを所要の勾配を持たせ
て形成し、かつ、第１〜ｎ段目コンクリート層ｄ₁ 〜ｄ
_n による貧配合コンクリート製の堤体内部ｄを形成し、
所期のコンクリートダム堤体を築造できるものである。

【００３４】今、上記における外層用コンクリートブロ
ックＡ₁ 〜Ａ_n およびＢ₁ 〜Ｂ_n の重合と第１〜ｎ段目
コンクリート層ｄ₁ 〜ｄ_n の打設の各段階の様子を詳し
く見ると、次のとおりである。

【００３５】第１〜ｎ段目コンクリート層ｄ₁ 〜ｄ_n の
各層の上記打設は、上流側と下流側所定位置に順次重合
積層する外層用コンクリートブロックＡ₁ 〜Ａ_n および
Ｂ₁〜Ｂ_n が囲繞する内部において行われる。すなわ
ち、上記各層における貧配合コンクリート３５の打設
を、従来のように専用の型枠の設置，移動，解体等を必
要としないで、さらに換言すると、外層用コンクリート
ブロックＡ₁ 〜Ａ_n およびＢ₁ 〜Ｂ_n 自体を一種の捨て
型枠としながら行うできる。したがって、一連の作業は
特別な熟練を要することなく、簡単にしてかつ安全に実
施でき、工期の短縮、コストの低減につながる。

【００３６】上流側外層ｂおよび下流側外層ｃを構築す
る外層用コンクリートブロックＡ₁〜Ａ_n およびＢ₁ 〜
Ｂ_n の重合は、下段（前段）のものに上段（次段）のも
のを積み重ねるだけでできる簡単な作業であって特に経
験を要するものではない。しかも、コンクリートの現場
調製とその打設は、堤体内部ｄを形成する貧配合コンク
リート３５一種で足り、従来のように、上，下流側外層
ｂ，ｃを形成する富配合コンクリートの打設と、堤体内
部を形成する貧配合コンクリートの打設とを、複雑な順
序で行わなければならなかったのに比べると、その作業
性は著しく向上する。

【００３７】外層用コンクリートブロックＡ1 〜Ａn
は、上下段のものが嵌合重合し、しかも、上段のものの
下半後部１１′と、打設した上記コンクリート層ｄ₁ 〜
ｄ_n と一体化している下段のものの上半前部１０′とが
内外に重合し（図１，３，８〜１０）、また、外層用コ
ンクリートブロックＢ₁ 〜Ｂ_n は、上段のものの下半後
部２９と、同じく打設した上記コンクリート層ｄ₁ 〜ｄ
_n と一体化している下段のものの上半後部２７とが内外
に重合する（図１，６，８〜１０）。したがって、上段
の外層用コンクリートブロックＡ₁ 〜Ａ_n およびＢ₁ 〜
Ｂ_nは、それ自体自重で安定するとともに、打設された
第１〜ｎ段目コンクリート層ｄ1 〜ｄn の当該段の圧力
によって下段の外層用コンクリートブロックＡ，Ｂに押
圧密接して安定するもので、第１〜ｎ段目コンクリート
層ｄ₁ 〜ｄ_n の打設前に、上段の外層用コンクリートブ
ロックＡ₁ 〜Ａ_n およびＢ₁ 〜Ｂ_n を、専用の手段で固
定する等の必要はない。

【００３８】第１〜ｎ段目コンクリート層ｄ₁ 〜ｄ_n の
各層を形成する貧配合コンクリート３５の打設は、下段
の外層用コンクリートブロックＡおよび同Ｂの高さの約
下半分、すなわち、下半後部１１′（高さ１，０００m
m）および下半後部２９（高さ９９０mm）までとし、約
上半分、すなわち、上半前部１０′（高さ１，０００m
m）と上半後部２７（高さ１，０００mm）を、打設した
当該コンクリート層より上方に突出させている（図
９）。この打設した当該コンクリート層より上方に突出
する上半前部１０′（高さ１，０００mm）と上半後部２
７（高さ１，０００mm）は、労働安全衛生規則第５１９
条が規定している手すり等の囲いの役割を果たす。した
がって、従来、作業員の安全のために当該段のコンクリ
ート層を打設終了毎に、その上，下流側全域にわたり設
置していた囲いを、あえて設置する必要がなくなった。

【００３９】図１３，１４は、図５〜７に示した下流側
外層ｃを形成するのに使用する外層用コンクリートブロ
ックＢの変形例を示すもので、図１３は斜視図、図１４
は重合状態の側面図である。

【００４０】下流側外層ｃのこの外層用コンクリートブ
ロックＢ′は、大傾斜前面２７′に自然石模様膨出部２
７″を成型し、周囲の自然環境に適合する形態のものに
していることで、上記外層用コンクリートブロックＢと
相違するだけで、富配合コンクリート製であること，そ
の構成，作用効果等を、該外層用コンクリートブロック
Ｂと実質的を同じするので、重複の煩を避けるため同じ
部分に同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。

【００４１】

【発明の効果】以上詳述したところから明らかなとおり
本発明によれば次の効果を奏する。 富配合コンクリート製の外層用コンクリートブロッ
クＡおよびＢは、工場生産しておいた均一な品質のもの
を使用でき、したがって、上流側外層ｂおよび下流側外
層ｃを設定どおりの耐久性のあるものにできる。 外層用コンクリートブロックＡおよびＢを型枠とし
て使用でき、従来のように、大掛かりな型枠を設置した
り、それを上昇移動させたりする面倒な作業を必要とし
ない。

【００４２】 現場でのコンクリート打設作業は、堤
体内部ｄを形成する貧配合コンクリート３５一種類でけ
の打設であって、従来の打設作業に比べると著しく単純
になり、特に、上，下流側外層ｂ，ｃと堤体内部ｄとの
境界部分において配合の異なる二種類のコンクリートが
混在するようなことが発生する余地がない。

【００４３】 堤体内部ｄを形成するために打設され
た貧配合コンクリート３５は、その外側を、富配合コン
クリート製の外層用コンクリートブロックＡおよびＢで
保護されるので、養生期間内における乾燥や温度応力に
よるひび割れの防止作業は著しく緩和される。 貧配合コンクリート３５の１段の打設を、外層用コ
ンクリートブロックＡおよびＢの上段のものの、ほぼ下
半部を埋設する高さまで行うことにより、残りのほぼ上
半部を囲いとして使用できるので、従来のように、手す
り等の囲いを各打設段毎に設置しなければならない煩わ
しさがない。

【００４４】 上流側外層ｂを形成する富配合コンク
リート製の外層用コンクリートブロックＡとして、前側
面１０側を、上半前部１０′とそれと同形で同じ大きさ
の下半空処１０″とにするとともに、後側面１１側を、
下半後部１１′とそれと同形で同じ大きさの上半空処１
１″とにしたものとし、上段のものと下段のものが、前
者の下半空処１０″を後者の上半前部１０′に、前者の
下半後部１１′を後者の上半空処１１″に噛合して上下
に重合し、かつ、前者の下半後部１１′と後者の上半前
部１０′とを内外に重合することができる構成のものと
すると、該上流側外層ｂを強固にし、上記貧配合コンク
リート３５の打設時の背面応力と密着に対応できる。

【００４５】この場合、上半前部１０′および下半空処
１０″を同じ大きさの台形状とするとともに、上記下半
後部１１′および上半空処１１″を同じ大きさの逆台形
状にすることは、該ブロックＡの製造を容易にするのは
もちろん、本発明堤体の築造において、その重合作業を
簡単確実に行うのに好適である。

【００４６】 下流側外層ｃを形成する上記富配合コ
ンクリート製の外層用コンクリートブロックＢとして、
前方上向きの大傾斜前面２７′と後方上向きの小傾斜後
面３０′とを有する上半後部２７と、前側に下半空処２
８を形成した下半後部２９とを、上記大傾斜前面２７′
の前端と下半後部２９の垂直前面２９′の上端との間の
部分を前方下向きの小傾斜前面３１として形成したもの
とし、上段のものと下段のものが、後者の上半後部２７
の後面に、前者の下半空処２８を嵌合して上下に重合す
るとともに、前者の下半後部２９と後者の上半後部２７
とを内外に重合することができる構成のものとすると、
所要の勾配をもった強固な下流側外層ｃとし、しかも、
上記貧配合コンクリート３５の打設時の背面応力と密着
に対応できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明コンクリートダム堤体の築造状況の説明
図で、第２段目の貧配合コンクリートを打設し、第３段
目の外層用コンクリートブロックを重合した状態を示し
ている。

【図２】上流側外層を形成するのに使用する外層用コン
クリートブロックの斜視図である。

【図３】同上の外層用コンクリートブロックの重合状態
の側面図である。

【図４】同上の外層用コンクリートブロックの概略斜視
図である。

【図５】下流側外層を形成するのに使用する外層用コン
クリートブロックの一部切欠斜視図である。

【図６】同上の外層用コンクリートブロックの重合状態
の側面図である。

【図７】同上の外層用コンクリートブロックの全体斜視
図である。

【図８】本発明コンクリートダム堤体の築造状況の説明
図であって、第１段目の貧配合コンクリートを打設し、
第２段目の外層用コンクリートブロックを重合した状態
を示す。

【図９】同じく本発明コンクリートダム堤体の築造状況
の説明図で、第２段目の貧配合コンクリートを打設した
状態を示す。

【図１０】同じく本発明コンクリートダム堤体の築造状
況の説明図で、第３段目の外層用コンクリートブロック
を重合している状態を示す。

【図１１】コンクリートダム堤体の概略断面図である。

【図１２】従来のコンクリートダム堤体における富配合
コンクリートおよび貧配合コンクリートの打設順序を示
す説明図である。

【図１３】下流側外層を形成するのに使用する外層用コ
ンクリートブロックの変形例の斜視図である。

【図１４】同上の重合状態の側面図である。

【符号の説明】

ｂ 上流側外層 ｃ 下流側外層 ｄ 堤体内部 Ａ 富配合の外層用コンクリートブロック Ｂ 富配合の外層用コンクリートブロック ３５ 貧配合コンクリート

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 廣瀬 成道 東京都千代田区三番町２番地 飛島建設株 式会社内 (72)発明者 片貝 喜久男 東京都千代田区三番町２番地 飛島建設株 式会社内 (72)発明者 梶原 日出隆 東京都港区虎ノ門二丁目８番10号 財団法 人国土開発技術研究センター内 (72)発明者 倉岡 克行 東京都港区虎ノ門二丁目８番10号 財団法 人国土開発技術研究センター内

Claims (13)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】上流側外層および下流側外層が富配合コン
   クリート製の外層用コンクリートブロックで形成されて
   いるとともに、これら上流側外層と下流側外層とで囲繞
   する堤体内部が現場打設の貧配合コンクリートで形成さ
   れていることを特徴とするコンクリートダム堤体。
2. 【請求項２】上流側外層を形成する上記富配合コンクリ
   ート製の外層用コンクリートブロックが、前側面１０側
   を、上半前部１０′とそれと同形で同じ大きさの下半空
   処１０″とにするとともに、後側面１１側を、下半後部
   １１′とそれと同形で同じ大きさの上半空処１１″とに
   し、上段のものと下段のものが、前者の下半空処１０″
   を後者の上半前部１０′に、前者の下半後部１１′を後
   者の上半空処１１″に噛合して上下に重合するととも
   に、前者の下半後部１１′と後者の上半前部１０′とを
   内外に重合していることを特徴とるす請求項１記載のコ
   ンクリートダム堤体。
3. 【請求項３】上流側外層を形成する上記富配合コンクリ
   ート製の外層用コンクリートブロックの上記上半前部１
   ０′および下半空処１０″が同じ大きさの台形状であ
   り、上記下半後部１１′および上半空処１１″が同じ大
   きさの逆台形状であることを特徴とする請求項２記載の
   コンクリートダム堤体。
4. 【請求項４】下流側外層を形成する上記富配合コンクリ
   ート製の外層用コンクリートブロックが、前方上向きの
   大傾斜前面２７′と後方上向きの小傾斜後面３０′とを
   有する上半後部２７と、前側に下半空処２８を形成した
   下半後部２９とを、上記大傾斜前面２７′の前端と下半
   後部２９の垂直前面２９′の上端との間の部分を前方下
   向きの小傾斜前面３１とし、上段のものと下段のもの
   が、後者の上半後部２７の後面に、前者の下半空処２８
   を嵌合して上下に重合するとともに、前者の下半後部２
   ９と後者の上半後部２７とを内外に重合していることを
   特徴とする請求項１，２または３記載のコンクリートダ
   ム堤体。
5. 【請求項５】富配合コンクリート製の外層用コンクリー
   トブロックを重合することにより上流側外層および下流
   側外層を形成するとともに、これら上流側外層と下流側
   外層との間に貧配合コンクリートを打設して堤体内部を
   形成することを特徴とするコンクリートダム堤体の築造
   法。
6. 【請求項６】上流側外層を形成する上記富配合コンクリ
   ート製の外層用コンクリートブロックが、前側面１０側
   を、上半前部１０′とそれと同形で同じ大きさの下半空
   処１０″とにするとともに、後側面１１側を、下半後部
   １１′とそれと同形で同じ大きさの上半空処１１″とに
   し、上段のものと下段のものとを、前者の下半空処１
   ０″を後者の上半前部１０′に、前者の下半後部１１′
   を後者の上半空処１１″に噛合して上下に重合させると
   ともに、前者の下半後部１１′と後者の上半前部１０′
   とを内外に重合させることを特徴とする請求項５記載の
   コンクリートダム堤体の築造法。
7. 【請求項７】上流側外層を形成する上記富配合コンクリ
   ート製の外層用コンクリートブロックの上記上半前部１
   ０′および下半空処１０″が同じ大きさの台形状であ
   り、上記下半後部１１′と上半空処１１″が同じ大きさ
   の逆台形状であることを特徴とする請求項５記載のコン
   クリートダム堤体の築造法。
8. 【請求項８】下流側外層を形成する上記富配合コンクリ
   ート製の外層用コンクリートブロックが、前方上向きの
   大傾斜前面２７′と後方上向きの小傾斜後面３０′とを
   有する上半後部２７と、前側に下半空処２８を形成した
   下半後部２９とを、上記大傾斜前面２７′の前端と下半
   後部２９の垂直前面２９′の上端との間の部分を前方下
   向きの小傾斜前面３１とし、上段のものと下段のものと
   を、後者の上半後部２７の後面に、前者の下半空処２８
   を嵌合して上下に重合させるとともに、前者の下半後部
   ２９と後者の上半後部２７とを内外に重合させることを
   特徴とする請求項５，６または７記載のコンクリートダ
   ム堤体の築造法。
9. 【請求項９】堤体内部ｄを形成する貧配合コンクリート
   の１段の打設を、上流側外層および下流側外層を形成す
   る外層用コンクリートブロックの上段のものの、ほぼ下
   半部を埋設する高さまで行い、それが硬化した後、次段
   の外層用コンクリートブロックＡおよびＢを重合するこ
   とを繰り返し行うことを特徴とする請求項５，６，７ま
   たは８記載のコンクリートダム堤体の築造法。
10. 【請求項１０】堤体内部ｄを形成する貧配合コンクリー
    トの１段の打設により、ほぼ下半部を埋設した外層用コ
    ンクリートブロックのほぼ上半部を囲いとして利用する
    ことを特徴とする請求項９記載のコンクリートダム堤体
    の築造法。
11. 【請求項１１】前側面１０側を、上半前部１０′とそれ
    と同形で同じ大きさの下半空処１０″とにするととも
    に、後側面１１側を、下半後部１１′とそれと同形で同
    じ大きさの上半空処１１″とにして、富配合コンクリー
    トで一体成型され、上段になったものと下段になったも
    のとが、前者の下半空処１０″を後者の上半前部１０′
    に、前者の下半後部１１′を後者の上半空処１１″に噛
    合して上下に重合するとともに、前者の下半後部１１′
    と後者の上半前部１０′とを内外に重合するようにして
    なることを特徴とするコンクリートダム堤体のための外
    層用コンクリートブロック。
12. 【請求項１２】上記上半前部１０′および下半空処１
    ０″が同じ大きさの台形状であり、また、上記下半後部
    １１′と上半空処１１″が同じ大きさの逆台形状である
    ことを特徴とする請求項１１記載のコンクリートダム堤
    体のための外層用コンクリートブロック。
13. 【請求項１３】前方上向きの大傾斜前面２７′と後方上
    向きの小傾斜後面３０′とを有する上半後部２７と、前
    側に下半空処２８を形成した下半後部２９とを、上記大
    傾斜前面２７′の前端と下半後部２９の垂直前面２９′
    の上端との間の部分を前方下向きの小傾斜前面３１とし
    て、富配合コンクリートで一体成型され、上段になった
    ものと下段になったものが、後者の上半後部２７の後面
    に、前者の下半空処２８を嵌合して上下に重合するとと
    もに、後者の下半後部２９と後者の上半後部２７とを内
    外に重合するようにしてなることを特徴とするコンクリ
    ートダム堤体のための外層用コンクリートブロック。