JP3666347B2 - 水中コンクリート構造体及びその構築方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、橋梁のフーチング、ケーソンといった水中構造物に適用される水中コンクリート構造体及びその構築方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
橋梁のフーチングやケーソン等を構築する際には、いわゆる水中コンクリートを使用することが多いが、構築箇所の地盤が軟弱である場合には、軽量骨材を用いた軽量コンクリートによってフーチングやケーソンといった基礎構造をできるだけ軽量化し、地盤改良工事を小規模に抑えることができるようにするのが望ましい。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、水中コンクリートを打設するにあたってはトレミー管による打込み方法が採用されるため、流動性とフローを確保して充填性を高める必要がある。そのため、軽量骨材を用いて水中コンクリートを打設すると、打設されたフレッシュコンクリートが水中で流動する際、比重の小さな軽量骨材がフレッシュコンクリート内で上昇し、水よりも軽い場合には、フレッシュコンクリートから水中に飛び出して水中を浮上したり、その際にフレッシュコンクリートが水中に飛散し、周辺水域を汚濁するおそれがあるという問題を生じていた。
【0004】
かかる問題は、通常骨材を用いた水中コンクリートの使用を余儀なくされ、その結果、基礎構造の軽量化を図ることがほとんど不可能になるという事態を招く。
【0005】
また、軽量骨材の飛び出しを防止できたとしても、軽量骨材がフレッシュコンクリート内で偏在して不均一となるのを防止することができず、品質の面で改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、軽量性及び強度等に関する品質の両方を確保可能な水中コンクリート構造体及びその構築方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る水中コンクリート構造体は請求項1に記載したように、水中打設領域に配置された軽量プレキャストコンクリートブロックと、該軽量プレキャストコンクリートブロックの周囲及び相互の間隙に充填されたグラウト材とからなるものである。
【0008】
また、本発明に係る水中コンクリート構造体は、前記軽量プレキャストコンクリートブロックを水平方向の相対移動が拘束されるように相互に連結自在に構成したものである。
【0009】
また、本発明に係る水中コンクリート構造体の構築方法は請求項3に記載したように、水中打設領域に軽量プレキャストコンクリートブロックを配置し、次いで該軽量プレキャストコンクリートブロックの周囲及び相互の間隙にグラウト材を充填するものである。
【0010】
また、本発明に係る水中コンクリート構造体の構築方法は、前記グラウト材を充填する際、前記水中打設領域内の水を下方から引き抜きつつ該グラウト材を上方から注入するものである。
【0011】
また、本発明に係る水中コンクリート構造体の構築方法は請求項5に記載したように、水中打設領域にグラウト材を投入し、次いで該グラウト材が硬化する前に軽量プレキャストコンクリートブロックを前記グラウト材内に埋設配置するものである。
【0012】
本発明に係る水中コンクリート構造体においては、水中打設領域に配置された複数の軽量プレキャストコンクリートブロックがグラウト材によって一体化され、構造体として必要な所定の強度を発揮するが、かかる軽量プレキャストコンクリートブロックは、工場や現場プラントにて予め気中で製作することができるため、例えば軽量骨材を用いて製作する場合には、水中打設で要求されるような流動性が不要となり、軽量骨材を偏在させることなく均質な軽量コンクリートを製作することができるし、軽量骨材を使用しないその他の方法によっても高品質な軽量コンクリートの製作が可能である。
【0013】
すなわち、かかる軽量プレキャストコンクリートブロックを主要部材とすることによって、軽量骨材を用いた水中コンクリート打設方法を採用せずとも、軽量な水中コンクリート構造体を構築することが可能となり、軽量骨材を用いた水中コンクリート打設では避けては通れない軽量骨材の飛び出しや偏在に起因する問題が生じる余地がなくなって高品質の水中コンクリート構造体を構築することが可能となる。
【0014】
グラウト材は、充填される間隙の大きさ等を考慮してセメントミルク、モルタル等から適宜選択すればよい。
【0015】
軽量プレキャストコンクリートブロックを製作するにあたり、水中打設領域に多数配置することができるのであれば、その形状や大きさは任意であって例えば通常に段積みできるような直方体状のものが考えられるが、その製作にあたっては、グラウト材を介して多数の軽量プレキャストコンクリートブロックが強固に一体化されるよう、それらの周面に定着用鉄筋を突設して定着強度を確保したり、凹凸を形成して付着強度を高めたりするのが望ましい。
【0016】
ここで、前記軽量プレキャストコンクリートブロックを水平方向の相対移動が拘束されるように相互に連結自在に構成したならば、グラウト材による一体化作用と相まって水中コンクリート構造体のせん断強度が大幅に向上し、地震や波浪等による水平力に対して十分に抵抗し得る構造体となる。
【0017】
軽量プレキャストコンクリートブロックの連結構成を具体的にどのようにするかは任意であり、例えば軽量プレキャストコンクリートブロックの下面及び上面のうち、一方に嵌合凹部を他方に該嵌合凹部に嵌まる嵌合凸部を設けることが考えられる。
【0018】
かかる構成においては、嵌合凹部と嵌合凸部とを互いに嵌合させながら、軽量プレキャストコンクリートブロックを下方から順次積み上げていけばよい。
【0019】
本発明の水中コンクリート構造体を構築する方法としては、水中打設領域にグラウト材を投入し、次いで該グラウト材が硬化する前に軽量プレキャストコンクリートブロックを前記グラウト材内に埋設配置する、いわばグラウト材先行方式と、水中打設領域に軽量プレキャストコンクリートブロックを配置し、次いで該軽量プレキャストコンクリートブロックの周囲及び相互の間隙にグラウト材を充填する、いわばブロック先行方式の二通りが考えられるが、いずれにしろ、水やグラウト材からの浮力によって軽量プレキャストコンクリートブロックが浮き上がることがないよう、浮上防止対策を適宜講じる。
【0020】
どのように浮上防止するかは任意であるが、ブロック先行方式では、例えば軽量プレキャストコンクリートブロックを何段か積み上げてはその上面にグラウト材の充填に差し支えないようなグレーチングやネット等を載せ、これを型枠に固定する手順を繰り返す方法や、軽量プレキャストコンクリートブロックをそれぞれ型枠内面に固定する方法が考えられる。また、ブロック先行方式及びグラウト材先行方式のいずれについても、グラウト材の比重を軽量プレキャストコンクリートブロックの比重よりも小さくする方法が考えられる。
【0021】
ここで、ブロック先行方式において、前記グラウト材を充填する際、前記水中打設領域内の水を下方から引き抜きつつ該グラウト材を上方から注入するようにすれば、比較的比重の大きなグラウト材が上方から注入されるとともに、上方から下方への流体の流れが形成されるため、軽量プレキャストコンクリートブロックの浮上を効果的に防止することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る水中コンクリート構造体及びその構築方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0023】
図1は、本実施形態に係る水中コンクリート構造体の構築方法をケーソンへの水中コンクリート打設に適用する場合について示した施工手順図、図2はそれに使用する軽量プレキャストコンクリートブロックを示した斜視図である。
【0024】
まず、水中コンクリート構造体の構築に先だって、図1(a)に示すようにケーソン1を設置する。ケーソン1を設置するにあたっては、ケーソン1を現場に曳航するとともに、ケーソン設置箇所を予め平坦に掘削しておき、しかる後、ケーソン1内に注水することによって該ケーソンを海底2に沈設すればよい。
【0025】
一方、水中コンクリート構造体に用いる軽量プレキャストコンクリートブロック11を図2に示すように工場や現場プラントで製作しておく。
【0026】
軽量プレキャストコンクリートブロック11は、同図に示すように積層可能なプレキャスト版として製作してあり、その側方周面には、後述するグラウト材に定着される定着用鉄筋12を突設してある。
【0027】
一方、その上面には嵌合凸部13を、下面には該嵌合凸部に嵌まる嵌合凹部14をそれぞれ設けてあり、下段の軽量プレキャストコンクリートブロック11に形成された嵌合凸部13を上段の軽量プレキャストコンクリートブロック11の嵌合凹部14に嵌め込んで相互連結することにより、軽量プレキャストコンクリートブロック11、11の水平方向の相対移動が拘束されるようになっている。
【0028】
軽量プレキャストコンクリートブロック11は、主として軽量骨材、特に人工軽量骨材を用いた軽量骨材コンクリートで形成することが考えられるが、これに代えて気泡コンクリートで形成したり、中空部を随所に形成することで軽量化を図るようにしてもかまわない。
【0029】
次に、図1(b)に示すように、軽量プレキャストコンクリートブロック11を図示しないクレーンで吊り降ろし、ケーソン1内部の水中打設領域の所定位置に配置する。
【0030】
ここで、軽量プレキャストコンクリートブロック11を配置するにあたっては、嵌合凹部14と嵌合凸部13とを互いに嵌合させながら、下方から順次積み上げていく。また、水やセメントミルクから受ける浮力で軽量プレキャストコンクリートブロック11が浮き上がらないよう、例えば何段か積み上げてはその上面にグラウト材の充填に差し支えないようなグレーチングやネット等を載せ、これを型枠に固定するといった手順を繰り返せばよい。
【0031】
軽量プレキャストコンクリートブロック11の積層工程が終了したならば、図3に示すように、ケーソン1内を適宜排水しつつ、注入管22を介して軽量プレキャストコンクリートブロック11の周囲及び相互の間隙にセメントミルク、モルタル等のグラウト材21を充填し、図4に示す水中コンクリート構造体31を構築する。
【0032】
なお、グラウト材21は、水と置換しつつ水中に打設されることとなるので、増粘剤を適宜添加することによって水中不分離性のグラウト材としておく。
【0033】
以上説明したように、本実施形態に係る水中コンクリート構造体31及びその構築方法によれば、水中打設領域に配置された複数の軽量プレキャストコンクリートブロック11がグラウト材21によって一体化され、構造体として必要な所定の強度を発揮するが、かかる軽量プレキャストコンクリートブロック11は、上述したように工場や現場プラントにて予め気中で製作することができる。
【0034】
すなわち、軽量プレキャストコンクリートブロック11を主要部材とすることによって、軽量骨材を用いた水中コンクリート打設方法を採用せずとも、軽量な水中コンクリート構造体31を構築することが可能となり、軽量骨材を用いた水中コンクリート打設では避けては通れない軽量骨材の飛び出しや偏在あるいはそれに起因する材料分離に関する問題が生じる余地がなくなって強度等の面で高品質の水中コンクリート構造体を構築することができる。また、その結果として水質汚濁を未然に防止することも可能となる。
【0035】
また、本実施形態に係る水中コンクリート構造体によれば、軽量プレキャストコンクリートブロック11を水平方向の相対移動が拘束されるように相互に連結自在に構成したので、グラウト材21による一体化作用と相まって水中コンクリート構造体31のせん断強度が大幅に向上し、地震や波浪等による水平力に対して十分に抵抗し得る構造体となる。
【0036】
本実施形態では、グラウト材21を充填する際、該グラウト材をケーソン1内の下方から充填するようにしたが、これに代えて、水中打設領域内の水を下方から引き抜きつつグラウト材21を上方から注入するようにすれば、比較的比重の大きなグラウト材21が上方から注入されるとともに、上方から下方への流体の流れが形成されるため、軽量プレキャストコンクリートブロック11の浮上を効果的に防止することができる。
【0037】
また、本実施形態では、本発明の水中コンクリート構造体を構築する方法として、水中打設領域に軽量プレキャストコンクリートブロック11を配置し、次いで該軽量プレキャストコンクリートブロックの周囲及び相互の間隙にグラウト材21を充填する、いわばブロック先行方式を採用したが、これに代えて、水中打設領域にグラウト材21を先行投入し、次いで該グラウト材が硬化する前に軽量プレキャストコンクリートブロック11をグラウト材21内に埋設配置する、いわばグラウト材先行方式を採用してもよい。
【0038】
かかる構成においては、軽量プレキャストコンクリートブロック11をグラウト材21内に沈める際、該グラウト材からの浮力で浮き上がることがないよう、例えばグラウト材21の比重を軽量プレキャストコンクリートブロック11の比重よりも小さくしておく。
【0039】
なお、軽量プレキャストコンクリートブロック11とグラウト材21の施工手順が逆である点を除き、他の構成や作用効果は上述した実施形態と同様であり、ここではその説明を省略する。
【0040】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の水中コンクリート構造体及びその構築方法によれば、軽量プレキャストコンクリートブロックを主要部材とすることによって、軽量骨材を用いた水中コンクリート打設方法を採用せずとも、軽量な水中コンクリート構造体を構築することが可能となり、軽量骨材を用いた水中コンクリート打設では避けては通れない軽量骨材の飛び出しや偏在あるいはそれに起因する材料分離に関する問題が生じる余地がなくなって強度等の面で高品質の水中コンクリート構造体を構築することができる。また、その結果として水質汚濁を未然に防止することも可能となる。
【0041】
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に係る水中コンクリート構造体の構築方法にしたがってケーソンへの水中コンクリート打設を行う様子を示した施工手順図。
【図2】本実施形態に係る水中コンクリート構造体に用いる軽量プレキャストコンクリートブロック11の図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図。
【図3】引き続き本実施形態に係る水中コンクリート構造体の構築方法にしたがってケーソンへの水中コンクリート打設を行う様子を示した施工手順図であり、(a)は鉛直断面図、(b)はA―A線に沿う水平断面図。
【図4】引き続き本実施形態に係る水中コンクリート構造体の構築方法にしたがってケーソンへの水中コンクリート打設を行う様子を示した施工手順図。
【符号の説明】
11 軽量プレキャストコンクリートブロック
21 グラウト材
31 水中コンクリート構造体
Claims (5)
- 水中打設領域に配置された軽量プレキャストコンクリートブロックと、該軽量プレキャストコンクリートブロックの周囲及び相互の間隙に充填されたグラウト材とからなることを特徴とする水中コンクリート構造体。
- 前記軽量プレキャストコンクリートブロックを水平方向の相対移動が拘束されるように相互に連結自在に構成した請求項1記載の水中コンクリート構造体。
- 水中打設領域に軽量プレキャストコンクリートブロックを配置し、次いで該軽量プレキャストコンクリートブロックの周囲及び相互の間隙にグラウト材を充填することを特徴とする水中コンクリート構造体の構築方法。
- 前記グラウト材を充填する際、前記水中打設領域内の水を下方から引き抜きつつ該グラウト材を上方から注入する請求項3記載の水中コンクリート構造体の構築方法。
- 水中打設領域にグラウト材を投入し、次いで該グラウト材が硬化する前に軽量プレキャストコンクリートブロックを前記グラウト材内に埋設配置することを特徴とする水中コンクリート構造体の構築方法。
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