JPH0937781A - エチルアルコール耐性蛋白質分解酵素及びその製造方法並びにエチルアルコール耐性蛋白質分解酵素生産菌 - Google Patents

エチルアルコール耐性蛋白質分解酵素及びその製造方法並びにエチルアルコール耐性蛋白質分解酵素生産菌

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JPH0937781A
JPH0937781A JP7194436A JP19443695A JPH0937781A JP H0937781 A JPH0937781 A JP H0937781A JP 7194436 A JP7194436 A JP 7194436A JP 19443695 A JP19443695 A JP 19443695A JP H0937781 A JPH0937781 A JP H0937781A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 エチルアルコールの存在下においても蛋白質
分解酵素活性を有するエチルアルコール耐性分解酵素、
及びその製造方法を提供すること。 【解決手段】 エチルアルコール耐性蛋白質分解酵素を
生産する微生物を培養し、培養物からエチルアルコール
耐性蛋白質分解酵素を採取する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エチルアルコール
耐性蛋白質分解酵素、該蛋白質分解酵素の製造方法、及
び該蛋白質分解酵素を生産する微生物に関するものであ
る。また、本発明は、エチルアルコール耐性蛋白質分解
酵素を用いて雑菌による汚染や雑菌の増殖を生じさせる
ことなく蛋白質系調味料エキスを製造する方法に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】近年、
食品分野における天然物嗜好は、調味料の分野において
も例外でなく、加工食品及び業務用食品等の味付け調味
料は、グルタミン酸ナトリウムやイノシン酸等の化学調
味料から、天然物由来の調味料エキスへとその需要が変
わりつつある。この天然物由来の調味料エキスは、その
ほとんどが天然物(野菜、魚介類、畜肉等)の原料から
熱水又はエチルアルコール等を用いて旨味成分を抽出
し、濃縮して製造されたものである。
【0003】上記調味料エキスの製造の際、旨味成分の
抽出効率を高める目的で、各種酵素を用いて旨味成分を
抽出することが行われている。一般に、上記目的のため
に用いられる酵素としては、抽出されるものによっても
異なるが、ほとんどの調味料エキスの場合、旨味成分の
主体が蛋白質の分解物(アミノ酸、ペプチド)であるこ
とから、旨味成分の効率的遊離を目的に蛋白質分解酵素
(プロテアーゼ)が用いられることが多い。
【0004】蛋白質系調味料エキスの原料となる水産物
や畜肉は一般に栄養価が高いため、蛋白質分解酵素を用
いた旨味成分の抽出工程においては、雑菌による汚染や
雑菌の増殖の危険性が高いことが懸念されている。従っ
て、蛋白質系調味料エキスの製造においては、雑菌を抑
制する技術の開発が重要な課題となっている。
【0005】一般に、蛋白質分解酵素を用いて蛋白質系
調味料エキスを製造する場合に雑菌による汚染や雑菌の
増殖を防止するには、次の様な方策が考えられる。 原料に食塩(原料中の最終濃度が12%(重量%、以
下同じ)以上となる量)を添加し、旨味成分を抽出する
方法。 高温(55℃以上の温度)下で原料を酵素分解し、旨
味成分を抽出する方法。 酵素量を増加させて処理時間を短縮(3〜4時間以
内)する方法。
【0006】しかし、上記〜の方法では、次のよう
な問題がある。上記の方法は、非常に簡便で雑菌増殖
抑制効果が高い方法であるが、一般に高食塩濃度下では
酵素の活性が低下するため、雑菌の増殖を抑える目的で
食塩を高濃度に添加した場合、十分な酵素分解、抽出効
果が期待できない。また、高食塩濃度下で原料を処理し
た場合、得られる調味料エキス中の食塩濃度が増加する
ため、抽出後、調味料エキスから食塩を除く必要性が生
じることもある。
【0007】また、上記の方法では、高温下での酵素
処理のため、上記の方法と同様に酵素が十分に機能し
ないことが多い。また、高温下で原料を処理した場合、
揮発性香気成分が蒸発したり、化学変化(焦げ臭等)が
生じ易く、旨味成分本来の風味を損なうこともあり、上
記の方法は、風味を重視する調味料エキスの製造には
適した方法ではない。
【0008】また、上記の方法は、得られる調味料エ
キスに二次的な影響を与える惧れがなく優れた方法であ
るが、酵素量を増加させなければならず、コスト面で問
題が生じる。
【0009】上記以外の雑菌汚染・増殖防止方法として
は、旨味成分を抽出する際の原料のpHを下げる(p
H3.5)方法やエチルアルコール等の制菌作用をも
つアルコール類の存在(5%以上)下で、酵素反応を行
なう方法が考えられる。上記の方法は、得られる調味
料エキスに二次的な影響を与える惧れが少なく優れた方
法であるが、雑菌を抑える作用が他の方法に比べて弱
く、長い反応時間を必要とする酵素反応では雑菌の増殖
の危険性がある。また、低pHで十分に機能する蛋白質
分解酵素も必要となる。
【0010】上記の方法は、以下の点より、蛋白質系
調味料エキスの製造方法として優れた方法であると考え
られる。即ち、エチルアルコールは発酵調味料である醤
油、味噌、みりん等に含まれていてその芳香性はこれら
の調味料の重要な風味の一つにもなっており、また、水
産物や畜肉から調味料エキスを得る場合、味の面では十
分価値が高くても、臭い、特に水産物から得られる調味
料エキスにおける水産物特有の生臭さ等が問題となるこ
とが多く、これらの臭いをマスクする方法として、エチ
ルアルコール等の芳香性の高い成分を添加することは有
効な手段の一つと考えられている。さらに、エチルアル
コールは食品の保存性を高める効果があるため、食品の
保存剤としても広く用いられている。また、エチルアル
コールは揮発性が高いため、真空条件下で他の風味成分
を損失しない方法で濃度を調整することも容易であり、
調味料エキス中のエチルアルコールの存在が問題となる
場合には、その除去も容易である。このように、上記
の方法によれば、雑菌による汚染や雑菌の増殖を生じさ
せることなく、今までにない自然な風味を有する調味料
エキスの製造が可能となる。
【0011】しかしながら、エチルアルコール濃度が5
%以上(雑菌の増殖を抑制することができる濃度)の条
件下で有効に機能する蛋白質分解酵素は知られていな
い。
【0012】従って、本発明の目的は、エチルアルコー
ルの存在下においても蛋白質分解酵素活性を有するエチ
ルアルコール耐性蛋白質分解酵素、及びその製造方法を
提供することにある。また、本発明の他の目的は、エチ
ルアルコールの存在下でエチルアルコール耐性蛋白質分
解酵素を用いて原料を酵素分解することにより、雑菌に
よる汚染や雑菌の増殖を生じさせることなく、風味の優
れた蛋白質系調味料エキスを製造することのできる蛋白
質系調味料エキスの製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成する酵素を開発することを目的として、広く自然
界、特に海洋生物の検索を行なった結果、10%エチル
アルコール濃度の条件下においても、エチルアルコール
非存在下の活性に対して40%以上の活性を有する蛋白
質分解酵素を生産する菌株がカブトガニから得られるこ
とを知見した。
【0014】本発明は、上記知見に基づいてなされたも
のであり、下記(1) のエチルアルコール耐性蛋白質分解
酵素、下記(2) のエチルアルコール耐性蛋白質分解酵素
の製造方法、下記(3) のエチルアルコール耐性蛋白質分
解酵素生産菌、及び下記(4)の蛋白質系調味料エキスの
製造方法を提供するものである。 (1) 微生物によって生産されたエチルアルコール耐性蛋
白質分解酵素。 (2) エチルアルコール耐性蛋白質分解酵素を生産する微
生物を培養し、培養物から該酵素を採取することを特徴
とするエチルアルコール耐性蛋白質分解酵素の製造方
法。 (3) エチルアルコール耐性蛋白質分解酵素を生産する新
規微生物であるビブリオ エスピー.No.1800(FERM P-1
5035) 。 (4) エチルアルコールの存在下、蛋白質に上記エチルア
ルコール耐性蛋白質分解酵素を作用させることを特徴と
する蛋白質系調味料エキスの製造方法。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、先ず本発明のエチルアルコ
ール耐性蛋白質分解酵素について詳述する。本発明のエ
チルアルコール耐性蛋白質分解酵素を生産する微生物と
しては、ビブリオ属に属する微生物であるビブリオ エ
スピー.No.1800(FERM P-15035) が挙げられる。
【0016】上記微生物によって生産された本発明のエ
チルアルコール耐性蛋白質分解酵素の蛋白質分解活性の
酵素的性質を以下に記載する。
【0017】(1)作用温度及び最適作用温度;FAG
LA(Furylacroyl-Gly-Leu-NH2)1mM、50mM T
ris−HCl緩衝液(pH7.5)で測定したとき、
5〜40℃の範囲の温度において作用し、最適作用温度
は15〜20℃である。また、カゼイン1%、50mM
Tris−HCl緩衝液(pH8.0)で測定したと
き、20〜60℃の範囲の温度において作用し、最適作
用温度は45〜50℃である。
【0018】(2)作用pH及び最適作用pH;6.0
〜10.0の範囲のpHにおいて作用し、最適作用pH
は7.0〜8.0である。
【0019】(3)熱安定性及びpH安定性 熱安定性は、本酵素を50mM Tris−HCl(p
H7.5)で希釈し、各温度で15分間保持した後、カ
ゼインを基質として、残存するプロテアーゼ活性を測定
したところ、本酵素は40℃付近までは失活が認められ
ず、60℃付近ではほぼ失活した。pH安定性は、本酵
素をpH3〜8では20mM Mcllvaine 氏緩衝液で、
pH7〜9では50mM Tris−HClで、pH8
〜10では20mM Atkins and Pantin 氏緩衝液で希
釈し、各pHに合わせ、37℃で15時間保持した後、
ハマルステインカゼインを基質として残存するプロテア
ーゼ活性をpH7.5の条件下で測定したところ、pH
7〜8の範囲で安定であった。
【0020】(4)分子量;SDS−ポリアクリルアミ
ドゲル電気泳動法により測定した分子量は約38kDa
である。
【0021】(5)阻害剤;0.5mMのEDTAで8
0%以上阻害される。また、他のメタルプロテアーゼ阻
害剤によっても阻害される。従って、本発明のエチルア
ルコール耐性蛋白質分解酵素はメタルプロテアーゼであ
る。
【0022】(6)安定化剤;塩化ナトリウムの存在下
で活性が著しく増加する。12%塩化ナトリウムの存在
下の蛋白質分解酵素活性は塩化ナトリウム非存在下の活
性の約3.6倍である。
【0023】(7)エチルアルコール耐性;10%濃度
のエチルアルコール存在下においても活性を有し、10
%濃度のエチルアルコール存在下における蛋白質分解酵
素活性は、エチルアルコール非存在下における活性の4
0%以上である。
【0024】(8)活性測定方法;本発明のエチルアル
コール耐性蛋白質分解酵素の蛋白質分解酵素活性は以下
の方法により測定した。尚、蛋白質酵素活性の測定に用
いた試薬は以下の通りである。 (1)検体希釈液:50mM Tris-HCl(pH7.5) (2)基質溶液::4.3%HAMMARSTEN Casein(MERCK),50m
M Tris-HCl(pH7.5) (3)反応停止液::0.44M Trichloroacetic Acid (4)中和液:2.5ml:0.44M Na2CO3 (5)発色液:0.5ml:1N Folin試薬 酵素を検体希釈液(1)にて適当に希釈し、酵素溶液を
調製する。該酵素液と基質溶液(2)とをそれぞれ37
℃で3分間保持し、温度を均一にした後、酵素液0.5
mlに基質溶液(2)1.5mlを加え、37℃で20
分間反応させる。20分経過した後、反応液に反応停止
液(3)を2.0ml加えて反応を停止させ、37℃で
更に20分間置き、未消化のカゼインを十分に沈殿させ
る。次いで、上記反応液を濾過し、この濾過液を0.5
ml採取し、該濾過液に中和液(4)を2.5ml加
え、中和する。次いで、発色液(5)を0.5ml加
え、37℃で30分間置き濾過液を発色させる。尚、盲
検として、基質溶液(2)と反応停止液(3)の添加順
序を逆にして反応を行なった。発色後、吸光度計で66
0nmの吸光度を測定し、各試料の測定値と盲検の測定
値との差(△A660)を蛋白質分解酵素活性の指標と
した。活性は、△A660と、検体希釈液で希釈する前
の検体の容積体積(ml)との積、即ち、△A660×
mlで表記する。
【0025】本発明のエチルアルコール耐性蛋白質分解
酵素は、蛋白質系調味料エキスの製造用の蛋白質分解酵
素として好適に用いられる他、アルコール存在下で蛋白
質の分解が必要な場合に好適に用いることができる。例
えば、ビールの噴き防止用や日本酒の濁り防止用の蛋白
質分解酵素として用いることができる。また、本発明の
エチルアルコール耐性蛋白質分解酵素は、アルコール存
在下のみならず、12%以上の食塩存在下でも十分に機
能するものであるため、高食塩濃度下での酵素処理に好
適に用いることができる。
【0026】次に、本発明のエチルアルコール耐性蛋白
質分解酵素の製造方法について説明する。
【0027】本発明のエチルアルコール耐性蛋白質分解
酵素の製造方法においては、先ず、エチルアルコール耐
性蛋白質分解酵素を生産する微生物、例えばビブリオ属
に属する微生物、好ましくはビブリオ エスピー.T180
0 (FERM-P-15035)を栄養培地に接種し、培養する。上記
栄養培地としては、微生物が増殖し本発明のエチルアル
コール耐性蛋白質分解酵素を生産する培地であれば、特
に制限されないが、例えば、後述するモディファイド・
ネルソン培地(液体培地)やニュートリエントブロス
(液体)培地等が挙げられる。また、培養方法として
は、通気培養法や振とう培養法を用いることができる。
また、培養温度は15〜40℃が好ましく、20〜30
℃が更に好ましく、培養時間は1〜5日間が好ましく、
1〜2日間が更に好ましい。しかし、これらの培地、培
養条件は、微生物の生理的性質を考慮し、エチルアルコ
ール耐性蛋白質分解酵素の生産量が最大となるように、
最適の条件を選定すべきであり、上記の培地、培養条件
等に限定されるものではない。
【0028】次いで、培養物(培養液)から本発明のエ
チルアルコール耐性蛋白質分解酵素を採取する。この採
取方法としては、例えば、培養液を遠心分離等により菌
体及び不溶物を取り除き、上清を分画分子量20〜30
kDa限外濾過膜を用いて濃縮後、濃縮液を凍結乾燥に
より粉末化し、本発明のエチルアルコール耐性蛋白質分
解酵素(粉末)を得る方法が挙げられる。凍結乾燥によ
り粉末化された本発明のエチルアルコール耐性蛋白質分
解酵素は、1mg当たり約100(△A660×ml)
の活性を有するものである。
【0029】次に、本発明のエチルアルコール耐性蛋白
質分解酵素を生産する新規微生物であるビブリオ エス
ピー.T1800 (FERM-P-15035)について説明する。上記ビ
ブリオ エスピー.T1800 (FERM-P-15035)はカブトガニ
から分離されたものであり、本菌の菌学的性質は下記の
通りである。
【0030】(1)形態的性質 0.5〜0.8μm×1〜2μmのグラム陰性の桿菌で
ある。運動性を有し、極鞭毛を有し、胞子は有さない。
また、細胞は多形性を有さず、好気性の菌である。
【0031】(2)培養的性質 (a) ニュートリエントアガーNo2(Difco)の平
板培地;25℃、24時間で直径1〜2mmの丸いコロ
ニーを形成する。コロニーは淡黄色を呈し、艶があり厚
みを有するものである。 (b) TSI培地;斜面は黄色に、また、高層は黒色に変
色し、ガスの発生はない。 (c) TSBS培地;37℃で2日で生育する。コロニー
は黄色である。
【0032】(3)生理学的性質 (a) O−Fテスト;発酵 (b) オキシダーゼ;陽性 (c) カタラーゼ;陽性 (d) 硝酸塩の還元;陽性 (e) ナトリウム要求性;陰性 (f) β−ガラクトシダーゼ;陰性 (g) アルギニンジヒドロラーゼ;陰性 (h) リジンデカルボキシラーゼ;陰性 (i) オルニチンデカルボキシラーゼ;陰性 (j) シモンズクエン酸;陰性 (k) 硫化水素の産生;陽性 (l) ウレアーゼ;陽性 (m) トリプトファンデアミナーゼ;陽性 (n) インドール産生;陽性 (o) アセトイン産生;陰性 (p) エクスリンの分解;陽性 (q) ゼラチンの液化;陽性 (r) 炭水化物の利用;D−グルコース、D−マンニトー
ル、シュークロース及びグリセリンを利用し、ガスの発
生は確認されなかった。 (s) 塩化ナトリウム存在下における増殖性; 0% +++ 0.1% +++ 1% +++ 3% +++ 5% ++ 6% ++ 7% + 8% + また、上記においては+++は25℃、24時間で良好
な生育を、++は25℃、24時間で生育を、+は25
℃、72時間で生育を示す。
【0033】(4)生育pH及び生育温度 本菌は、pH6.0〜8.0で良好に生育する。また、
好ましい生育温度は15〜40℃であり、最適生育温度
は25〜35℃である。
【0034】(5)化学分類学的性質 本菌のDNAの塩基組成(GC含量)は38%である。
【0035】以上の菌学的性質をもとに、Bergey's Man
ual of Systematic Bacteriology volume 1 中に本菌株
を検索したところ、ビブリオ属に分類されるビブリオ・
コレラに類縁の微生物であることが明らかになったが、
生育可能な食塩濃度や糖の利用性による酸の産生能等が
公知の菌株とは異なることから、これを新菌種として設
定することが妥当であるとの結論に達し、本菌株を工業
技術院生命工学工業技術研究所に寄託した。
【0036】次に、本発明の蛋白質系調味料エキスの製
造方法について説明する。本発明の蛋白質系調味料エキ
スの製造方法は、エチルアルコールの存在下、蛋白質に
蛋白質分解酵素を作用させるものであって、該蛋白質分
解酵素として本発明のエチルアルコール耐性蛋白質分解
酵素を用いるものである。
【0037】原料の蛋白質としては、蛋白質系調味料エ
キスを製造するために従来用いられている水産物や畜肉
等の蛋白質含有食品が用いられ、具体的には、海老頭、
生イワシ、かに肉残渣、かつお缶詰煮汁、鶏ガラ、豚骨
及びカキ等が挙げられる。
【0038】本発明のエチルアルコール耐性蛋白質分解
酵素の使用量は、1mg当たり約100(△A660×
ml)の活性を有するものとして、上記蛋白質100g
に対して、好ましくは0.5〜1g、更に好ましくは
0.7〜1.0gである。
【0039】また、エチルアルコールは、原料中20%
程度まで存在させることができるが、酵素活性や雑菌の
増殖防止等の観点から、原料中、好ましくは3〜10
%、更に好ましくは5〜10%添加するとよい。
【0040】また、酵素の作用条件は、反応温度が、好
ましくは4〜40℃、更に好ましくは15〜25℃であ
り、反応時間が、好ましくは5時間〜3日間、更に好ま
しくは12時間〜2日間であり、反応pHが、好ましく
は6〜10、更に好ましくは7〜8である。
【0041】本発明の蛋白質系調味料エキスの製造方法
により得られる蛋白質系調味料エキスは、雑菌の増殖が
なく、また、生臭さのない風味の優れたものである。
【0042】
【実施例】本発明を以下の実施例により更に具体的に説
明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものでは
ない。
【0043】〔実施例1(エチルアルコール耐性蛋白質
分解酵素及びその製造方法)〕ビブリオ エスピー.T1
800 (FERM P-15035)を、下記に示すモディファイド・ネ
ルソン培地(300ml/三角フラスコ)に接種し、2
5℃で24時間振とう培養した。次いで、この培養液を
1mlとり、同じ培地2000mlに接種し、25℃で
48時間振とう培養を行なった。次いで、菌体及び不溶
物を遠心分離によって取り除き、上清1800mlを得
た。上清の蛋白質分解酵素活性は6.0×104 (△A
660×ml)であった。次いで、上記上清を、分画分
子量20kDaの限外濾過膜を用い200mlにまで濃
縮した。該濃縮液の蛋白質分解酵素活性は5.0×10
4 (△A660×ml)であった。該濃縮液を凍結乾燥
し、本発明のエチルアルコール耐性蛋白質分解酵素粉末
を得た。
【0044】このようにして得られた本発明のエチルア
ルコール耐性蛋白質分解酵素粉末は、1mg当たり10
0(△A660×ml)の活性を有していた。
【0045】 〔培地組成(モディファイド・ネルソン培地)〕 培地1000ml中 グリセロール 6g ペプトン 10g 酵母エキス 6g 1M Tris-HCl pH 7.8 100ml NaCl 3.5g KCl 1.5g MgSO4 ・7H2O 24.7g CaCl2 ・2H2O 2.9g pH7.8
【0046】〔実施例2(蛋白質系調味料エキスの製造
方法)〕海老頭500gに実施例1で得られたエチルア
ルコール耐性蛋白質分解酵素粉末を1g加え、更に、エ
チルアルコール30mlと水100mlとを添加した。
次いで、混合物を25℃に保ちながら12時間穏やかに
攪拌を行なった。然る後、該混合物を90℃で5分間加
熱して酵素を失活させ、混合物を濾布で濾過し、約40
0mlの蛋白質系調味料エキスを得た。このようにして
得られた蛋白質系調味料エキスは、海老の風味が非常に
高く、苦み等の嫌な味、刺激臭等は感じられず、海老独
特の甘味を有するものであった。
【0047】なお、比較例として、市販の酵素を用いて
55℃で6時間処理した以外は実施例1と同様に蛋白質
系調味料エキスを製造したところ、得られた蛋白質系調
味料エキスは、焦げ臭や刺激臭等が感じられるものであ
った。
【0048】〔実施例3(蛋白質系調味料エキスの製造
方法)〕生イワシ500gに実施例1で得られたエチル
アルコール耐性蛋白質分解酵素粉末を1g加え、更に、
エチルアルコール50mlと水200mlとを添加し
た。次いで、混合物を25℃に保ちながら12時間穏や
かに攪拌を行なった。然る後、該混合物を90℃で5分
間加熱して酵素を失活させ、混合物を濾布で濾過し、約
700mlの蛋白質系調味料エキスを得た。このように
して得られた蛋白質系調味料エキスは、旨味の強いエキ
スであり、生臭さはほとんど感じられなかった。
【0049】なお、比較例として、市販の酵素を用いて
55℃で6時間処理した以外は実施例2と同様に蛋白質
系調味料エキスを製造したところ、得られた蛋白質系調
味料エキスは味の点ではわずかな苦みが感じられたもの
の、大きな差はなかったが、焦げ臭や生臭さが強く感じ
られるものであった。
【0050】
【発明の効果】本発明のエチルアルコール耐性蛋白質分
解酵素は、エチルアルコールの存在下においても蛋白質
分解酵素活性を有するものである。また、本発明のビブ
リオ エスピー.T1800 (FERM P-15035)は、本発明のエ
チルアルコール耐性蛋白質分解酵素を生産する新規微生
物である。また、本発明の蛋白質系調味料エキスの製造
方法は、本発明のエチルアルコール耐性蛋白質分解酵素
を用いているので、雑菌による汚染や雑菌の増殖を生じ
させることなく、風味の優れた蛋白質系調味料エキスを
製造することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 (C12N 1/21 C12R 1:63)

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 微生物によって生産されたエチルアルコ
    ール耐性蛋白質分解酵素。
  2. 【請求項2】 上記微生物がビブリオ属に属する微生物
    である請求項1記載のエチルアルコール耐性蛋白質分解
    酵素。
  3. 【請求項3】 上記微生物がビブリオ エスピー.T180
    0 (FERM P-15035)である請求項1記載のエチルアルコー
    ル耐性蛋白質分解酵素。
  4. 【請求項4】 エチルアルコール耐性蛋白質分解酵素を
    生産する微生物を培養し、培養物から該酵素を採取する
    ことを特徴とするエチルアルコール耐性蛋白質分解酵素
    の製造方法。
  5. 【請求項5】 上記微生物がビブリオ属に属する微生物
    である請求項4記載のエチルアルコール耐性蛋白質分解
    酵素の製造方法。
  6. 【請求項6】 上記微生物がビブリオ エスピー.T180
    0 (FERM P-15035)である請求項4記載のエチルアルコー
    ル耐性蛋白質分解酵素の製造方法。
  7. 【請求項7】 エチルアルコール耐性蛋白質分解酵素を
    生産する新規微生物であるビブリオ エスピー.T1800
    (FERM P-15035)。
  8. 【請求項8】 エチルアルコールの存在下、蛋白質に請
    求項1〜3の何れかに記載のエチルアルコール耐性蛋白
    質分解酵素を作用させることを特徴とする蛋白質系調味
    料エキスの製造方法。
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