JPH09305903A - 光磁気記録装置の磁気ヘッド - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 磁界変調方式で高転送レートを達成すること
が可能な光磁気記録装置の磁気ヘッドを提供する。 【解決手段】 フライング方式の磁気ヘッド１は、光磁
気ディスクＤの回転に伴って発生する空気流Ｓにより浮
上するスライダー７と、このスライダー７に取り付けら
れたヘッドコア８と巻線９から成る補助磁界発生用の磁
極１０を備えている。このスライダー７は鉄等の金属に
より平板状に成形されている。この金属製のスライダー
７の光磁気ディスクＤに向かい合う面である下面（ディ
スク摺動面）には、セラミックコーティング１１を施し
てある。また、この金属製のスライダー７のセラミック
コーティングが施されていない上面には、光磁気ディス
クＤの回転により発生する空気流Ｓに沿う方向にそれぞ
れ平行になるように複数突出する各フィン７ｅ，７ｅ，
…を一体突出形成してある。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、光磁気ディスク
の表面に発生する空気流を利用して浮上するフライング
方式の光磁気記録装置の磁気ヘッドに関するものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】例えば、コンピューター等においてデー
ターを保存する手段として、最近では光磁気（ＭＯ）デ
ィスクが使用されている。これは、光磁気ディスクが大
容量性とアクセスの高速性及び可搬性に優れているから
である。この光磁気ディスクを用いる光ディスク装置等
の光磁気記録装置の記録方式としては、光変調（記録）
方式と磁界変調（記録）方式がある。

【０００３】光変調方式では、光磁気ディスクに照射す
るレーザー光の発生手段として用いられるレーザーダイ
オードの駆動電流が変調され、これによってレーザー光
がオン又はオフになる。このレーザー光がオンになる
と、光磁気ディスクの磁気記録材料がキュリー温度まで
加熱されて活性化し、これに補助磁界が印加されて、Ｍ
Ｏ（光磁気）膜の磁界方向が変わることにより情報が記
録される。この光変調方式では、レーザーダイオードの
発光の立ち上がり及び立ち下がり特性の高速性が良いた
め、高い周波数の信号を記録することが可能であり、高
転送レートを達成することができる。そのため、映像信
号のように高い記録レートを必要とする分野に使用され
ている。

【０００４】しかしながら、上述の光変調方式では、オ
ーバーライト（重ね書き）ができないという問題があ
る。すなわち、既に情報が記録されている光磁気ディス
クに新たな情報を記録する場合、記録済みの情報を一旦
消去してから再度新たな情報を記録しなければならず、
処理時間が長くなる。この処理時間の短縮方法として、
情報の消去用のヘッドを記録用と別に配置することもで
きるが、別の光学ブロックを必要とするのでコストアッ
プになるなどの問題がある。尚、オーバーライト可能な
交換性結合膜等を使用した光変調方式も提案されている
が、ＭＯ膜構造が複雑になる等の問題があり、いまだ実
用化には至っていない。

【０００５】一方、磁界変調方式では、上述の光変調方
式と異なり、情報に対応する信号の『１』，『０』に応
じて磁気コイルの磁界方向を反転させる、すなわちＭＯ
膜を記録面側からレーザー光でキュリー温度まで活性化
した所を、印加磁界を変調して光磁気ディスクの記録材
料の磁界の方向を変えることにより情報を記録する。従
って、オーバーライトが可能であり、また、光磁気ディ
スク上に記録されたピット形状がきれいになる。さら
に、この磁界変調方式では、補助磁界を発生させる磁気
コイルに情報の信号に比例した電流を流すようになって
いるが、この時、磁気コイルのインピーダンスを下げ、
これによって、高い周波数にも適合するようにしてい
る。

【０００６】しかしながら、上述の磁界変調方式では、
記録に充分な磁束密度を発生するように比較的大きな電
流を流すと、磁気コイルの温度が上昇して磁界が弱ま
り、記録効率が低下する等の問題があった。このため、
磁界変調方式を採用しているＭＯ記録ディスク装置等の
光磁気記録装置では、磁気コイルを光磁気ディスクにで
きるだけ近づけることより、磁気コイルに発生する補助
磁界が弱くても記録可能にする方法が検討されている。

【０００７】すなわち、磁気コイルに発生する補助磁界
が小さくても記録できれば、磁気コイルに流す電流も小
さくて済み、磁気コイルの発熱を小さく抑えることがで
きるからである。磁気コイルを光磁気ディスクに近づけ
る機構として、図５に示す光磁気記録装置のフライング
方式の磁気ヘッド１′がある。

【０００８】このフライング方式の磁気ヘッド１′は、
例えばリニアモーターの可動部２にブロック３を介して
べース４をネジ止めすることにより固定されている。こ
のベース４にはアームとしての弾性を有するロードビー
ム５が取り付けられている。このロードビーム５の先端
には、保持部としてのコ字状に折り曲げ成形された変位
自在なフレクチャー６が溶着されている。このフレクチ
ャー６の下端面には、セラミック製で平板状のスライダ
ー７′が接着され、その端部に補助磁界を発生させるた
めのヘッドコア８が接着されている。このヘッドコア８
にはコイル９が巻線されている。これらヘッドコア８と
コイル９とにより補助磁界発生用の磁極１０が構成され
ている。

【０００９】そして、このように構成された磁気ヘッド
１′は、光磁気ディスクＤの回転に伴って発生する空気
流Ｓを受けてスライダー７′が浮上するようになってい
る。この際の磁気ヘッド１′のスライダー７′の浮上量
は１０μｍ程度であって、光磁気ディスクＤの凹凸や異
物等により、スライダー７′と光磁気ディスクＤとの接
触は避けられないため、上記スライダー７′は摩耗を考
慮して耐摩耗性の高いチタン酸カリウム等のセラミック
により成形されている。

【００１０】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の磁気ヘッド１′のセラミック製のスライダー７′で
は、比較的放熱性が悪い（セラミックは、その熱伝導性
が０．２〜０．３Ｊ／ｃｍ・ｓ・Ｋ程度である）ため、
該放熱性の悪いスライダー７′に取り付けられたヘッド
コア８のコイル９に、記録に必要な磁束密度を発生させ
るための高周波電流を流すと、コイル９に発生した熱が
放熱されずに蓄積され、これらヘッドコア８及びコイル
９から構成された補助磁界発生用の磁極１０が高温にな
ってしまう問題があった。このときの温度が、フェライ
トで成形されたヘッドコア８のキュリー温度を越えてし
まうと磁束を全く発生できなくなってしまい、記録不可
能になる虞れがあった。

【００１１】そこで、この発明は、上述したような課題
を解決するものであって、磁界変調方式で高転送レート
を達成することが可能な光磁気記録装置の磁気ヘッドを
提供するものである。

【００１２】

【課題を解決するための手段】光磁気ディスクの回転に
伴って発生する空気流により浮上するスライダーと、こ
のスライダーに取り付けられた補助磁界発生用の磁極を
備え、上記光磁界ディスクに磁界変調によって情報を記
録する光磁気記録装置の磁気ヘッドにおいて、上記スラ
イダーを金属により成形し、この金属製のスライダーの
少なくとも上記光磁気ディスクに向かい合う面側にセラ
ミックコーティングを施す一方、上記金属製のスライダ
ーのセラミックコーティングが施されていない部分に放
熱手段を設けてある。

【００１３】セラミックコーティングが施された金属製
のスライダーにより、磁気ヘッドの耐摩耗性が改善され
てヘッド性能の向上が図られる。また、この金属製のス
ライダーに設けられた放熱手段により補助磁界発生用の
磁極からの熱が効率良く放熱される。これにより、磁気
ヘッドの温度上昇が抑えられて磁気特性及びヘッド性能
が大幅に改善される。

【００１４】

【発明の実施の形態】以下、この発明の具体的な実施の
形態例について図面を参照して説明する。

【００１５】図１は、この発明の一実施形態例の光磁気
記録装置のフライング方式の磁気ヘッド１を示す。この
フライング方式の磁気ヘッド１は、例えばリニアモータ
ーの可動部２にブロック３を介してべース４をネジ止め
することにより固定されている。このベース４にはアー
ムとしての弾性を有するロードビーム５が取り付けられ
ている。このロードビーム５の先端には、保持部として
のコ字状に折り曲げ成形された変位自在なフレクチャー
６が溶着されている。このフレクチャー６の下端面に
は、金属製で平板状のスライダー７が接着され、その端
部に補助磁界を発生させるためのヘッドコア８が接着さ
れている。このヘッドコア８にはコイル９が巻線されて
いる。これらヘッドコア８とコイル９とで補助磁界発生
用の磁極１０が構成されている。

【００１６】スライダー７は、鉄、銅、ステンレス等の
金属材質により平板状に成形してある。この金属製のス
ライダー７の光磁気ディスクＤに向かい合う面である下
面７ａがディスク摺動面となっている。そして、図２〜
図４に示すように、スライダー７の一側端部の下面７ａ
側には切欠部７ｃを形成してあると共に、該一側端部の
上面７ｂのコーナ部側にはスリット７ｄを形成してあ
る。この金属製のスライダー７のスリット７ｄには、コ
イル９が巻線されたヘッドコア８が絶縁されて接着され
ている。

【００１７】また、図４に示すように、スライダー７の
下面７ａには、セラミックコーティング１１が施されて
いる。このセラミックの仕様は、スライダー７を構成す
る金属の材質に併せてＴｉＮ，ＴｉＣ，Ｓｉ₃Ｎ₄をＣＶ
Ｄ，プラズマＣＶＤ，イオンプレーティング法により、
１〜数１０ｕのコーティング処理を行っている。このコ
ーティング処理により上記金属製のスライダー７は、従
来のセラミック製のスライダー７′と同等の耐摩耗性を
持つことができるようになっている。さらに、上記金属
製のスライダー７の上面７ｂには、複数のフィン（放熱
手段）７ｅ，７ｅ，…を上記光磁気ディスクＤの回転に
伴って発生する空気流Ｓに沿う方向（光磁気ディスクＤ
の回転方向）にそれぞれ平行になるように等間隔毎に一
体突出形成してある。

【００１８】以上実施形態例のフライング方式の磁気ヘ
ッド１によれば、光磁気ディスクＤに情報を記録する際
に、磁気ヘッド１がリニアモーターの可動部２を介して
光磁気ディスクＤのラジアル方向に移動する。この時、
磁気ヘッド１の金属製のスライダー７は、光磁気ディス
クＤの回転に伴ってディスク表面に生じる粘性空気流Ｓ
を利用して１０μｍ程度浮上する。この際、光磁気ディ
スクＤの凹凸や異物等により、金属製のスライダー７と
光磁気ディスクＤとの接触は避けられないが、該金属製
のスライダー７のディスク摺動面となる下面７ａ側には
耐摩耗性の高いセラミックコーティング１１が施されて
いるため、従来のセラミック製のスライダー７′と同等
の耐摩耗性が得られる。これにより、磁気ヘッド１の耐
摩耗性が改善され、金属製のスライダー７の使用を可能
にしている。

【００１９】このように、スライダー７を熱伝導性のよ
い金属製にし、また、該スライダー７の上面７ｂにフィ
ン７ｅを複数突設したことにより、補助磁界発生用の磁
極１０のコイル９から発生する熱を放熱し易くすること
ができる。すなわち、光磁気ディスクＤの表面に発生す
る空気流Ｓの風を各フィン７ｅ間に流すことにより、コ
イル９で発生する熱を金属製のスライダー７の本体から
各フィン７ｅを介して効率的に放熱することができ、磁
気ヘッド１全体の温度上昇を確実に防ぐことができる。
これにより、コイル９の電流容量を増加させて磁界強度
を強くすることができて、ヘッド性能を大幅に改善する
ことができる。また、熱伝導性の良い金属製のスライダ
ー７及び複数のフィン７ｅにより補助磁界発生用の磁極
１０のヘッドコア８の温度上昇も確実に抑えることがで
き、ヘッドコア８の磁気特性も向上させることができ
る。これにより、磁気ヘッド１全体の温度上昇を確実に
抑えて磁気特性及びヘッド性能の向上をより一層図るこ
とができる。

【００２０】尚、前記実施形態例によれば、金属製のス
ライダーのディスク摺動面である下面側のみをセラミッ
クコーティングしたが、フィンが設けられている上面を
除いた両側面や該両側面及び前後面側にもセラミックコ
ーティング処理を施してもよい。さらに、スライダーの
上面に放熱手段としてのフィンを複数一体突出成形した
が、放熱手段は一体突出形成される複数のフィンに限ら
ず、別に設けた放熱板等から成る放熱手段をスライダー
の上面にビス等の締結手段により締結固定するようにし
てもよい。

【００２１】

【発明の効果】以上のように、この発明によれば、光磁
気ディスクの回転に伴って発生する空気流により浮上す
るスライダーと、このスライダーに取り付けられた補助
磁界発生用の磁極を備え、上記光磁界ディスクに磁界変
調によって情報を記録する光磁気記録装置の磁気ヘッド
において、上記スライダーを金属により成形し、この金
属製のスライダーの少なくとも上記光磁気ディスクに向
かい合う面側にセラミックコーティングを施す一方、上
記金属製のスライダーのセラミックコーティングが施さ
れていない部分に放熱手段を設けたことにより、上記磁
気ヘッドの耐摩耗性を改善してヘッド性能の向上をより
一段と図ることができると共に、上記放熱手段により上
記補助磁界発生用の磁極から発生する熱を効率良く放熱
することができる。これにより、磁気ヘッド全体の温度
上昇を確実に防いで磁気特性及びヘッド性能をより一層
向上させることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の一実施形態例を示す光磁気記録装置
の磁気ヘッドの斜視図。

【図２】上記磁気ヘッドの要部の拡大部分斜視図。

【図３】図２のＢ矢視図。

【図４】図３のＡ−Ａ線に沿う断面図。

【図５】従来例の光磁気記録装置の磁気ヘッドの斜視
図。

【符号の説明】

１…磁気ヘッド、７…スライダー、７ａ…下面（光磁気
ディスクに向かい合う面）、７ｅ…フィン（放熱手
段）、１０…補助磁界発生用の磁極、１１…セラミック
コーティング、Ｄ…光磁気ディスク、Ｓ…空気流。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 光磁気ディスクの回転に伴って発生する
   空気流により浮上するスライダーと、このスライダーに
   取り付けられた補助磁界発生用の磁極を備え、上記光磁
   界ディスクに磁界変調によって情報を記録する光磁気記
   録装置の磁気ヘッドにおいて、 上記スライダーを金属により成形し、 この金属製のスライダーの少なくとも上記光磁気ディス
   クに向かい合う面側にセラミックコーティングを施す一
   方、 上記金属製のスライダーのセラミックコーティングが施
   されていない部分に放熱手段を設けたことを特徴とする
   光磁気記録装置の磁気ヘッド。
2. 【請求項２】 請求項１記載の光磁気記録装置の磁気ヘ
   ッドにおいて、 上記放熱手段を、上記空気流に沿う方向に平行になるよ
   うに突出する複数のフィンで構成したことを特徴とする
   光磁気記録装置の磁気ヘッド。