JPH09296005A - 癒着防止材 - Google Patents

癒着防止材

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JPH09296005A
JPH09296005A JP8130894A JP13089496A JPH09296005A JP H09296005 A JPH09296005 A JP H09296005A JP 8130894 A JP8130894 A JP 8130894A JP 13089496 A JP13089496 A JP 13089496A JP H09296005 A JPH09296005 A JP H09296005A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 水溶液や粘性溶液等の形態にして複雑な構造
の患部や奥まった患部にも容易に施すことができ、短期
間に癒着防止効果が失われず、生体組織により適度に吸
収・排泄されて、所望の期間に亙って安定して高い癒着
防止効果を発揮できる癒着防止材を提供すること。 【解決手段】 式;−A−SO3H(式中、基Aは、基
−SO3Hと直接結合している基A中の原子が酸素以外
の原子である2価の基を示す)で表される基及びその塩
の形態をなす基から選ばれる少なくとも1種の修飾基を
有する多糖類を含む本発明の癒着防止材によって上記の
目的が達成される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、癒着防止材および
癒着防止材として有効な多糖類に関する。より詳細に
は、本発明は特定の基によって修飾した多糖類を含む癒
着防止材、および該癒着防止材として有効に用いること
のできる多糖類に関するものであり、本発明の癒着防止
材は、癒着の防止や低減が必要な生体組織の損傷部への
適用が容易であり、安全性に優れており、しかも所望の
期間に亙って安定して良好な癒着防止効果を発揮する。
【0002】
【従来の技術】手術、ケガ、その他の理由によって、例
えば、腎臓、肝臓、心臓、胃などの内臓や血管、腸、子
宮などの生体組織に損傷、炎症などが発生すると、損傷
部同士または損傷部と他の組織との癒着が生じて、種々
の機能不全を起こし、場合によっては再手術が必要にな
るなどの問題を生じている。
【0003】従来、生体組織の癒着防止に当たっては、
損傷部の組織が修復したり治癒したりするまでの期間に
亙って損傷部にオキシセルロース製の網を施して、損傷
部を他の生体組織や他の生体箇所から隔離して癒着を防
止する方法が広く採用されている。しかしながら、オキ
シセルロース製の癒着防止網は、使い勝手が悪く、生体
組織への吸収が遅く、しかも異物反応を生ずるなどの問
題があり、十分に満足のゆくものではない。
【0004】また、生体組織の癒着防止などを目的とし
て、上記したオキシセルロースとは別に、多糖類に基づ
く生体組織用の材料が従来から色々提案されており、そ
のような従来技術としては、 ヒアルロン酸またはその誘導体の架橋ゲルからなる
生体組織用の成形物(特開昭61−234864号公
報); 組成物の癒着および合着を防止するためのインプラ
ントとして使用される、架橋カルボキシル含有ポリサッ
カライドゲル(特表昭61−502729号公報); ヒアルロン酸とその他の親水性ポリマーをジビニル
スルホン架橋剤で架橋してなる、生体組織の癒着防止や
その他の目的で用いられる生体組織用のゲル組成物(特
公平2−138346号公報); 活性化されたヒアルロン酸をアミノ酸やその塩など
からなる求核性試薬と反応させて形成してなる、生体組
織の癒着防止材などとして使用し得るゲル(特表平3−
502704号公報); ヒアルロン酸、ポリアニオン多糖類および活性化剤
を用いて形成された、生体組織の癒着防止や薬物のデリ
バリー用に用いられるゲル(特表平5−508161号
公報);などが知られている。
【0005】しかしながら、上記した〜の従来技術
の場合は、その癒着防止材などの生体組織用の材料がい
ずれも水に不溶性のゲル状物であり、そのため構造の複
雑な患部や奥まった位置にある患部への適用や固定が困
難であり、また適用した場合は所定の位置からのずれな
どを生じ易く、損傷部の癒着防止を安定して行うことが
できないという欠点を有している。
【0006】また、上記〜の従来技術とは別に、
イオン架橋したカルボキシ含有キチン誘導体を含んでな
る、希酸性の水性溶液に可溶な癒着防止用材料(特公平
7−90041号公報)が提案されている。しかしなが
ら、このの従来技術では、カルボキシ含有キチン誘導
体を希酸性の水性溶液に溶解し、その溶液を乾燥してフ
イルム状にした後、該キチン誘導体中のアミノ基とイオ
ン架橋することができるアニオンを有する酸性の水性溶
液で該フイルムを湿潤して架橋させ、その架橋フイルム
を水性溶液に溶解して、生体組織の癒着防止用の粘性流
体を調製するという極めて複雑な工程が採られており、
そのため目的とする癒着防止材を簡単に得ることができ
ないという欠点を有している。
【0007】さらに、上記した〜の従来技術とは別
に、アルギン酸ナトリウムの水溶液を主剤とする腹腔
内癒着防止剤が知られている(特開昭57−16791
9号公報)。そして、このの従来技術による場合は、
癒着防止材が水溶液であるため患部への適用は容易であ
るが、アルギン酸ナトリウム(アルギン酸)が生体によ
って速やかに吸収され排泄されてしまうことにより、短
期間の癒着防止効果(隔離効果)しか期待できず、治癒
の遅い損傷部には用いることができないという欠点があ
る。しかも、アルギン酸ナトリウムの水溶液による場合
は、物理的な隔離作用のみによって患部の癒着防止がな
されるだけであって、線維芽細胞増殖抑制作用を持たな
いために、線維芽細胞の増殖を抑制して生物学的に癒着
を防止するという効果を期待できず、かかる点からも、
その癒着防止効果が充分であるとは言えない。
【0008】また、上記した〜の従来技術以外に
も、 ケラタン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫
酸、ヘパラン硫酸などの硫酸エステルから主としてなる
生体組織の癒着防止材などに用いる医薬組成物(特表平
6−502840号公報); 硫黄含有量が10重量%よりも大であるデキストラ
ン硫酸を含む、癒着防止用などに用いる組成物(特表平
6−508356号公報);が知られている。しかしな
がら、このおよびの従来技術による場合は、硫酸基
がポリマー中で硫酸エステルの形態をなしていることに
より、生体内で分解され易く、短期間のうちにその癒着
防止効果が低減したり、失われるという欠点がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、水溶
液や粘性溶液などのような液状の形態にして用いること
ができ、それによって複雑な構造の患部や奥まった位置
にある患部にも容易に施すことのできる癒着防止材を提
供することである。そして、本発明の目的は、物理的な
隔離による癒着防止効果と共に、線維芽細胞の増殖を抑
制して生物学的な癒着防止効果をも達成することのでき
る、癒着防止効果に優れる癒着防止材を提供することで
ある。さらに、本発明の目的は、耐加水分解性に優れて
いて、加水分解によって短期間にその癒着防止効果が失
われるという問題がなく、しかも生体組織によって適度
に吸収・排泄され、それによって所望の期間に亙って安
定してその癒着防止効果を発揮することのできる、生物
学的に安全な癒着防止材を提供することである。 そして、本発明の目的は、上記した優れた特性を備え
る癒着防止材に有効に用いることのできる、生体適合性
に優れる多糖類を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成すべく
本発明者らは、安全性の点を考慮しつつ、従来から生体
組織用の癒着防止材として用いられている多糖類につい
て、その素材面での改質について種々検討を重ねてき
た。その結果、多糖類中に、式;−SO3Hで表される
基および/またはその塩の形態の基を、その基が酸素原
子に直接結合しない結合形式で導入すると、その基によ
って修飾された多糖類が、ゲルを形成せず、水性溶液や
粘性流体の形態で使用することができ、そのため複雑な
構造の患部や奥まった位置にある患部にも容易に施し得
ることを見出した。さらに、本発明者らは、上記した基
で修飾した多糖類が、良好な生体適合性を有しているこ
と、しかも物理的な隔離による癒着防止機能と共に、線
維芽細胞増殖抑制による生物学的な癒着防止効果をも有
していること、その上耐加水分解性に優れていて短期間
にその癒着防止効果が失われず、所望の期間に亙って安
定した癒着防止効果を発揮することなどを見出した。し
たがって、本発明は上記した種々の知見に基づいて本発
明を完成されたのである。
【0011】すなわち、本発明は、下記の式(I);
【0012】
【化3】 −A−SO3H (I) [式中、基Aは、基−SO3Hと直接結合している基A
中の原子が酸素以外の原子である2価の基を示す]で表
される基およびその塩の形態をなす基から選ばれる少な
くとも1種の修飾基を有している多糖類を含むことを特
徴とする癒着防止材である。
【0013】そして、本発明は、下記の式(I);
【0014】
【化4】 −A−SO3H (I) [式中、Aは、基−SO3Hと直接結合している基A中
の原子が酸素以外の原子である2価の基を示す]で表さ
れる基、およびその塩の形態をなす基から選ばれる少な
くとも1種の修飾基を有していることを特徴とする多糖
類である。
【0015】
【発明の実施の形態】以下に本発明について詳細に説明
する。本発明でいう「癒着防止材」とは、手術、ケガ、
その他の原因によって、生体組織のいずれかに損傷、炎
症、その他の疾患が生じた際に、それらの患部に施し
て、損傷部同士や損傷部と他の組織との癒着を防止した
り低減するために用いられる材をいい、施す生体組織の
種類や状態などは特に制限されない。また、本発明の癒
着防止材の形態も特に制限されず、例えば生理的に受容
な溶液または分散液;粘性液体;フイルムやその他の固
形状物;布帛、紙、プラスチックフイルムなどの基材に
塗布したり含浸させたもの;粉末;ペーストなどのいず
れの形態であってもよい。そのうちでも、患部の適用の
容易性などの点から、本発明の癒着防止材は、生理的に
受容な溶液または分散液、粘性流体などの液状形態で好
ましく用いられる。
【0016】本発明の癒着防止材を構成する多糖類は、
上記の一般式(I)で表される基[以下これを「修飾基
(1)」ということがある]および/またはその塩の形
態の基で修飾されていることが必要であり、修飾基
(1)およびその塩の形態の基では、その基−SO3
または基−SO3M(式中Mは塩を形成し得る陽イオ
ン)が、酸素原子に直接結合しないようにして基Aを介
して多糖類に結合している。すなわち、修飾基(1)が
硫酸基(−O−SO3H)またはその塩の形態の基(−
O−SO3M)の形態を採らずに多糖類に結合してい
る。それによって、修飾基(1)における基−SO3
またはその塩の形態の基−SO3Mが、加水分解によっ
て多糖類から離脱することが防止または低減されるの
で、その癒着防止効果が短期間に失われない。生体組織
の種類などにもよるが、癒着の防止を円滑に行うために
は、一般に7日間から2カ月間程度の期間に亙って癒着
防止材が患部に存在することが望ましく、基−SO3
またはその塩の形態の基−SO3Mが上記した基Aを介
して加水分解されにくい結合形式で多糖類に結合されて
いる本発明の多糖類は、癒着防止に必要とされる上記し
た所望の期間に亙ってその癒着防止効果を安定して発揮
できる。
【0017】修飾基(1)における基Aは、基−SO3
Hまたはその塩の形態の基−SO3Mが加水分解によっ
て多糖類から離脱するのを防止または抑制し得る基であ
ればいずれでもよく特に制限されない。何ら限定される
ものではないが、修飾基(1)における基Aの例として
は、下記の一般式で示される基を挙げることができる。
【0018】
【化5】 − R1− (i) −NH−R2− (ii) −R3−NH−R4− (iii) −CO−NH−R5− (iv) −R6−O−R7− (v) −R8−CO−R9− (vi) −R10−COO−R11− (vii) −R12−OOC−R13− (vii) (式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R
9、R10、R11、R12およびR13はそれぞれ独立して2
価の炭化水素基を示し、前記した炭化水素基はいずれも
場合により水酸基、ハロゲン原子、ニトリル基、スルホ
ン酸基などで置換されていてもよい。)
【0019】そして、上記(i)〜(vii)などで表さ
れる基Aでは、その炭化水素基R1、R2、R3、R4、R
5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12及びR13
おける炭素原子数、それらの炭化水素基に結合させる置
換基の種類や数などを調節したり、選択することによっ
て、修飾基(1)により修飾されている本発明における
多糖類の親水性の程度などを調節することができる。
【0020】より具体的には、基Aを有する修飾基
(1)の構造で示すと、修飾基(1)の好ましい例とし
て、下記に示す基;
【0021】
【化6】 −NH−(CH2)m−SO3H −(CH2)n−SO3H −CH2−CH(OH)−CH2−NH−(CH2)n−SO3
H −O−CO−NH−(CH2)p−SO3H −[(CH2)q−O−(CH2)r]s−SO3H (式中、mは、n、p,q,rおよびsはそれぞれ独立
して1以上の整数を示し、1〜18の整数であるのが好
ましい)で表される基、およびそれらの塩の形態の基を
挙げることができる。
【0022】本発明で用いる多糖類は、上記した修飾基
(1)またはその塩の形態の基のうちの1種のみを有し
ていても、または2種以上を有していてもよい。さら
に、本発明で用いる多糖類は、酸の形態である上記の修
飾基(1)のみを有していても、塩の形態である修飾基
(1)のみを有していても、またはその両方を有してい
てもよい。そのうちでも、本発明で用いる多糖類は、そ
の修飾基(1)が、式−NH−CH2CH2−SO3H;
式−NH−CH2CH2−SO3Naで示される基である
のがより好ましく、その場合には、安全性、安定性、癒
着防止能、などの点でより優れる癒着防止材を得ること
ができる。
【0023】そして、本発明の多糖類では、修飾基
(1)および/またはその塩の形態の基の多糖類への結
合形式は、生理的に許容され得る結合形式であって且つ
修飾基(1)が加水分解などによって容易に多糖類から
離脱しないような結合形式であればいずれもよいが、一
般には修飾基(1)が、多糖類中の水酸基および/また
はカルボキシル基と、アミド結合、エステル結合、エー
テル結合、ウレタン結合などの結合形式を採って多糖類
に結合しているのが好ましい。
【0024】また、修飾基(1)中の基−SO3Hが塩
の形態の基−SO3Mである場合は、生理的に許容され
る塩であればいずれでもよく、例えば、Mとしては、ナ
トリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アン
モニウムなどの陽イオンを挙げることができる。
【0025】そして、本発明の多糖類では、修飾基
(1)およびその塩の形態の基の含有率[複数種の修飾
基(1)を有している場合はその合計含有率]が、該修
飾基(1)などを含めた多糖類の全重量に基づいて、硫
黄原子に換算して、0.05〜10重量%であるのが好
ましく、0.1〜5重量%であるのがより好ましい。硫
黄原子の含有率が前記した0.05重量%未満である
と、有効な癒着防止効果が発揮されにくくなり、一方1
0重量%を超えると生体内での吸収・排泄が不良となっ
て毒性を発現する場合がある。
【0026】本発明では、修飾基(1)を結合させる多
糖類として、それ自身およびその分解物が生体に無害で
且つ生体内で吸収・排泄されるものであればいずれも使
用できる。そのような多糖類としては、例えばデンプン
などの単純多糖類、アルギン酸などのポリウロン酸類、
ヒアルロン酸などのムコ多糖類、キチンなどのポリグリ
コサミン類などを挙げることができ、それらの多糖類は
単独で使用してもまたは2種以上を併用してもよい。ま
た、多糖類は生体適合性のある塩の形態になっていても
よい。そのうちでも、本発明では、無害性および吸収・
排泄性に優れている点から、アルギン酸、ヒアルロン酸
および/またはそれらの生体適合性の塩が好ましく用い
られる。また、使用する多糖類の分子量なども特に制限
されないが、分子量が1万から1,000万の範囲のも
のを用いるのが、安定性、効果の点から好ましい。
【0027】また、本発明で用いる多糖類は、修飾基
(1)と共に、癒着防止が必要な患部での物理的な隔離
作用をより良好に発揮させたり、生体内吸収性を制御す
るなどの目的で他の基によって修飾されていてもよい。
修飾基(1)と併存させる他の修飾基は、隔離作用の向
上機能や生体内吸収性の制御作用を有する基であればど
のような修飾基であってもよいが、疎水性基からなる修
飾基を多糖類に導入すると、多糖類をゲル化させること
なくその粘度の増大および生体内安定性の向上を図るこ
とが可能である。その場合に、一般に粘度の増大は疎水
性基間の疎水性結合による架橋によってもたらされる。
また、多糖類中に疎水性基を導入することによってその
生体内安定性が向上するが、疎水性基の導入量が多すぎ
ると生体内での吸収・排泄速度が遅くなって毒性を発現
する場合があるので注意を要する。多糖類に導入する疎
水性基としては、生体に対する安全性の点から、脂肪
酸、リン脂質、疎水性アミノ酸またはそれらの誘導体な
どに由来する疎水性基が好ましく、これらの疎水性基の
うちの1種または2種以上を導入することができる。そ
のうちでも、疎水性アミノ酸に由来する疎水性基の導入
がより好ましい。疎水性アミノ酸またはその誘導体に由
来する疎水性基としては、例えばロイシン、イソロイシ
ン、ノルロイシン、フェニルアラニン、バリンなどのア
ミノ酸、それらのアルキルエステル、それらのアルキル
アミドなどに由来する疎水性基を挙げることができる。
疎水性基の種類、疎水性基における疎水性の度合いなど
によって異なり得るが、例えば疎水性アミノ酸に由来す
る疎水性基を多糖類中に導入する場合は、多糖類を構成
する単糖類の1モルに対して、疎水性基を0.2モル以
下の割合で疎水性基を導入するのが好ましい。
【0028】修飾基(1)を有する多糖類、または修飾
基(1)と疎水性基を有する多糖類の製造法は特に制限
されず、修飾基(1)や疎水性基の導入に用いる化合物
の種類に応じて適当な製造法を採用すればよい。例え
ば、修飾基(1)が、多糖類中の水酸基、カルボキシル
基および/またはアミノ基と、アミド結合、エステル結
合またはエーテル結合をなして多糖類に結合している多
糖類の場合は、一方の端部に基−SO3Hまたは基−S
3Mを有し且つもう一方の端部にアミノ基、水酸基ま
たはカルボキシル基を有する、修飾基(1)導入用の化
合物、またはそれらのアミド形成性誘導体、エステル形
成誘導体、エーテル形成性誘導体を、多糖類に添加し
て、必要に応じて脱水縮合剤、縮合助剤、縮合触媒など
を使用して、多糖類中の水酸基および/またはカルボキ
シル基と、上記した修飾基(1)導入用の化合物中のア
ミノ基、水酸基、カルボキシル基またはそれらの誘導体
基との間に縮合反応を行わせることによって、多糖類中
に修飾基(1)を導入することができる。その際に用い
得る上記した脱水縮合剤、縮合助剤、縮合触媒として
は、例えば、2−エチル−3−(3−ジメチルアミノプ
ロピル)−カルボジイミド塩酸塩などの水溶性カルボジ
イミド、N−ヒドロキシコハク酸イミド、トリエチルア
ミンやジイソプロピルエチルアミンなどの3級アミンな
どを挙げることができる。
【0029】さらに上記した方法以外にも、一方の端部
に基−SO3Hまたは基−SO3Mを有し且つもう一方の
端部にイソシアネート基またはエポキシ基を有する修飾
基(1)導入用の化合物を多糖類に添加して、多糖類中
の水酸基、カルボキシル基および/またはアミノ基と、
修飾基(1)導入用の化合物中のイソシアネート基また
はエポキシとの間に反応を行わせて、上記した修飾基
(1)を有する多糖類を製造することができる。
【0030】また、多糖類に疎水性基、例えば脂肪酸、
リン脂質、疎水性アミノ酸などに由来する疎水性基を導
入する場合も、修飾基(1)を多糖類に導入する上記し
たのと同様の方法によって、疎水性基導入用の化合物中
のカルボキシル基、水酸基、アミノ基と、多糖類中の水
酸基、カルボキシル基またはアミノ基との間でアミド結
合、エステル結合、エーテル結合などを形成させるよう
にすればよい。
【0031】多糖類への上記した修飾基(1)の導入、
または修飾基(1)と疎水性基の導入は、一般に、多糖
類を水性媒体中に可溶な形態にしたもの(例えば多糖類
のナトリウム塩などのような多糖類の水溶性塩など)を
用いて、それを水性媒体中に溶解し、その水性溶液に修
飾基(1)導入用の化合物、または修飾基(1)導入の
化合物と疎水性基導入用の化合物を添加し、好ましくは
上記した脱水縮合剤、縮合助剤および/または縮合触媒
の存在下に、約0〜50℃の温度で反応を行わせると、
目的とする修飾基(1)、または修飾基(1)と疎水性
基を多糖類中に円滑に結合させることができる。
【0032】本発明の癒着防止材は適当な形態にして用
いることができ、上記したように、例えば生理的に受容
な溶液または分散液;粘性液体;フイルム、シート、
膜、粒状物、塊状物やその他の固形状物;布帛、紙、プ
ラスチックフイルムなどの基材に塗布したり含浸させた
もの;粉末;ペーストなどの形態で利用することができ
る。そして、前記したうちでも、本発明の癒着防止材を
生理的に受容な溶液または分散液の形態にして用いる
と、複雑な構造の患部や奥まった位置にある患部などで
あっても適用が容易に行われて、その癒着防止効果を充
分に発揮することができる。
【0033】さらに、本発明の癒着防止材は、生体内安
定性の向上、粘度の調節などの目的で、必要に応じて、
塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムな
どの無機塩類;エチレングリコール、プロピレングリコ
ール、グリセリン、ポリエチレングリコールなどの多価
アルコール類などを含有していてもよい。また、本発明
の癒着防止材は、治癒の促進、細菌感染の防止などの目
的で、必要に応じて、構造蛋白質(コラーゲン、フィブ
ロネクチンなど)、消毒剤、抗生剤(例えばペニシリン
など)、抗菌剤(例えばオフロキサシンなど)、血行改
善薬(例えばアクトシン、PGEIなど)、酵素阻害剤
(例えばウリナスタチン、TIMPなど)、増殖因子
(例えばPDGF、FGFなど)、ステロイド剤、抗炎
症剤(例えばインドメタシンなど)、各種アミノ酸、ビ
タミン類などの1種または2種以上を含有していてもよ
い。
【0034】また、本発明の癒着防止材は、例えば、γ
線滅菌、電子線滅菌、オートクレーブ滅菌、エチレンオ
キサイドガス滅菌などの滅菌処理が可能であり、それら
の処理を施すことによって安全性を高めることができ
る。
【0035】
【実施例】以下に本発明を実施例などにより具体的に説
明するが、本発明はそれにより何ら限定されない。
【0036】《実施例 1》 (1) アルギン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社
製、500〜600cp)を濃度が1重量%になるよう
にして300mlの注射用水(大塚製薬株式会社製)に
溶解した。これに、タウリン(和光純薬工業株式会社
製)1.25gおよび水溶性カルボジイミド(WSCD
・HCl;株式会社ペプチド研究所製)4gを加えて溶
解し、4℃の温度に保ちながら2日間撹拌下に反応させ
た。その後、注射用水に対して4℃の温度で7日間透析
した(VISKASE SALES CORP.製の透析
膜を使用;1回当たり1,000mlの注射用水を使用
して13回注射用水を交換)。 (2) 上記(1)で得られた反応生成物を凍結乾燥し
て、固形物約3.1gを得た。この固形物をIR分析に
かけたところ、1561cm-1の位置に、アルギン酸の
カルボキシル基とタウリンのアミノ基との間にアミド結
合が形成され且つタウリンのスルホン酸基がナトリウム
塩の形態になっている、基−NH−CH2−CH2−SO
3Naに相当する吸収があり、基−NH−CH2−CH2
−SO3Naで修飾されたアルギン酸であることが確認
された。 (3) また、上記(2)で得られた、式−NH−CH
2−CH2−SO3Naで修飾されたアルギン酸(凍結乾燥
物)の一部を採って燃焼フラスコ中で分解(O2雰囲気
下で燃焼後、水に吸収)した後、イオンクロマトアナラ
イザー(横河電機社製「IC500S」)を用いて硫黄
の含有率を定量したところ、0.38重量%であった。 (4) 上記(2)で得られた式−NH−CH2−CH2
−SO3Naで修飾されたアルギン酸(凍結乾燥物)
を、25kGyのγ線で滅菌処理した後、5重量%の濃
度となるように生理食塩水(大塚製薬株式会社製)に溶
解して癒着防止材を製造した。
【0037】《実施例 2》 (1) 鶏の鶏冠から抽出したヒアルロン酸のナトリウ
ム塩(キューピー株式会社製、分子量約2,500,0
00)を濃度が0.5重量%になるようにして200m
lの注射用水(大塚製薬株式会社製)に溶解した。これ
に、タウリン(和光純薬工業株式会社製)1.25gお
よび水溶性カルボジイミド(WSCD・HCl;株式会
社ペプチド研究所製)4gを加えて溶解し、4℃の温度
に保ちながら2日間撹拌下に反応させた。その後、注射
用水に対して4℃で7日間透析した(VISKASE
SALES CORP.製の透析膜を使用;1回当たり
1,000mlの注射用水を使用して13回注射用水を
交換)。 (2) 上記(1)で得られた反応生成物を凍結乾燥し
て、固形物約1.2gを得た。この固形物をIR分析に
かけたところ、1562cm-1の位置に、ヒアルロン酸
のカルボキシル基とタウリンのアミノ基との間にアミド
結合が形成され且つタウリンのスルホン酸基がナトリウ
ム塩の形態になっている、基−NH−CH2−CH2−S
3Naに相当する吸収があり、基−NH−CH2−CH
2−SO3Naで修飾されたヒアルロン酸であることが確
認された。 (3) また、上記(2)で得られた、式−NH−CH
2−CH2−SO3Naで修飾されたヒアルロン酸(凍結
乾燥物)の一部を採っ実施例1と同様にして硫黄の含有
率を定量したところ、0.17重量%であった。 (4) 上記(2)で得られた式−NH−CH2−CH2
−SO3Naで修飾されたヒアルロン酸(凍結乾燥物)
を、25kGyのγ線で滅菌処理した後、2.5重量%
の濃度となるように生理食塩水(大塚製薬株式会社製)
に溶解して癒着防止材を製造した。
【0038】《実施例 3》 (1) 実施例1で使用したのと同じアルギン酸ナトリ
ウムを濃度が1重量%になるようにして100mlの注
射用水(大塚製薬株式会社製)に溶解した。これに、タ
ウリン(和光純薬工業株式会社製)0.25g、ロイシ
ンエチルエステル硫酸塩(株式会社ペプチド研究所製)
1g、N−ヒドロキシコハク酸イミド(株式会社ペプチ
ド研究所製)0.6g、トリエチルアミン(ナカライテ
スク株式会社製)および実施例1で使用したのと同じ水
溶性カルボジイミド2gを加えて溶解し、4℃の温度に
保ちながら2日間撹拌下に反応させた。その後、注射用
水に対して4℃で7日間透析した(VISKASE S
ALES CORP.製の透析膜を使用;1回当たり
1,000mlの注射用水を使用して13回注射用水を
交換)。 (2) 上記(1)で得られた反応生成物を凍結乾燥し
て、固形物約1.3gを得た。 この固形物をIR分析にかけたところ、1561cm-1
の位置に、アルギン酸のカルボキシル基とタウリンのア
ミノ基との間にアミド結合が形成され且つタウリンのス
ルホン酸基がナトリウム塩の形態になっている、基−N
H−CH2−CH2−SO3Naに相当する吸収があり、
更に1737cm-1の位置に、アルギン酸のカルボキシ
ル基とロイシンエチルエステルのアミノ基との間にアミ
ド結合が形成されたロイシンエチルエステルに相当する
吸収があり、基−NH−CH2−CH2−SO3Naおよ
びロイシンエチルエステル由来の基で修飾されたアルギ
ン酸であることが確認された。 (3) また、上記(2)で得られた、式−NH−CH
2−CH2−SO3Naおよび疎水性基で修飾されたアル
ギン酸(凍結乾燥物)の一部を採って実施例1と同様に
して硫黄の含有率を定量したところ、0.74重量%で
あった。 (4) 上記(2)で得られた式−NH−CH2−CH2
−SO3Naと、ロイシンエチルエステルに由来する疎
水性基で修飾されたアルギン酸(凍結乾燥物)を、25
kGyのγ線で滅菌処理した後、5重量%の濃度となる
ように生理食塩水(大塚製薬株式会社製)に溶解して癒
着防止材を製造した。
【0039】《実施例 4》 (1) 実施例2で使用したのと同じヒアルロン酸のナ
トリウム塩を濃度が0.5重量%になるようにして10
0mlの注射用水(大塚製薬株式会社製)に溶解した。
これに、タウリン(和光純薬工業株式会社製)0.37
5g、ロイシンのエチルエステル硫酸塩(株式会社ペプ
チド研究所製)0.6g、N−ヒドロキシコハク酸イミ
ド(株式会社ペプチド研究所製)0.6g、ジイソプロ
ピルトリエチルアミン(和光純薬工業株式会社製)およ
び実施例1で使用したのと同じ水溶性カルボジイミド2
gを加えて溶解し、4℃の温度に保ちながら2日間撹拌
下に反応させた。その後、注射用水に対して4℃の温度
で7日間透析した(VISKASE SALES COR
P.製の透析膜を使用;1回当たり1,000mlの注
射用水を使用して13回注射用水を交換)。 (2) 上記(1)で得られた反応生成物を凍結乾燥し
て、固形物約0.6gを得た。この固形物をIR分析に
かけたところ、1558cm-1の位置に、ヒアルロン酸
のカルボキシル基とタウリンのアミノ基との間にアミド
結合が形成され且つタウリンのスルホン酸基がナトリウ
ム塩の形態になっている、基−NH−CH2−CH2−S
3Naに相当する吸収があり、更に1706cm-1
位置に、ヒアルロン酸のカルボキシル基とロイシンエチ
ルエステルのアミノ基との間にアミド結合が形成された
ロイシンエチルエステルに相当する吸収があり、基−N
H−CH2−CH2−SO3Naおよびロイシンエチルエ
ステル由来の基で修飾されたヒアルロン酸であることが
確認された。 (3) また、上記(2)で得られた、式−NH−CH
2−CH2−SO3Naおよび疎水性基で修飾されたヒア
ルロン酸(凍結乾燥物)の一部を採って実施例1と同様
にして硫黄の含有率を定量したところ、0.23重量%
であった。 (4) 上記(2)で得られた式−NH−CH2−CH2
−SO3Naと、ロイシンエチルエステルに由来する疎
水性基で修飾されたヒアルロン酸(凍結乾燥物)を、2
5kGyのγ線で滅菌処理した後、5重量%の濃度とな
るように生理食塩水(大塚製薬株式会社製)に溶解して
癒着防止材を製造した。
【0040】《比較例 1》 (1) 実施例1で使用したのと同じアルギン酸ナトリ
ウムを濃度が1重量%になるようにして300mlの注
射用水(大塚製薬株式会社製)に溶解した。これを、注
射用水に対して4℃の温度で7日間透析した(VISK
ASE SALES CORP.製の透析膜を使用;1回
当たり1,000mlの注射用水を使用して13回注射
用水を交換)。 (2) 上記(1)で得られた生成物を凍結乾燥して、
固形物約2.7gを得た。この固形物の一部を採って実
施例1と同様にして硫黄の含有率を定量したところ、0
重量%であった。 (3) 上記(2)で得られアルギン酸の凍結乾燥物
を、25kGyのγ線で滅菌処理した後、5重量%の濃
度となるように生理食塩水(大塚製薬株式会社製)に溶
解して癒着防止材を製造した。
【0041】《比較例 2》 (1) 実施例2で使用したのと同じヒアルロン酸のナ
トリウム塩を濃度が0.5重量%になるようにして20
0mlの注射用水(大塚製薬株式会社製)に溶解した。
これを、注射用水に対して4℃の温度で7日間透析した
(VISKASESALES CORP.製の透析膜を
使用;1回当たり1,000mlの注射用水を使用して
13回注射用水を交換)。 (2) 上記(1)で得られた生成物を凍結乾燥して、
固形物約0.8gを得た。この固形物の一部を採って実
施例1と同様にして硫黄の含有率を定量したところ、0
重量%であった。 (3) 上記(2)で得られヒアルロン酸の凍結乾燥物
を、25kGyのγ線で滅菌処理した後、2.5重量%
の濃度となるように生理食塩水(大塚製薬株式会社製)
に溶解して癒着防止材を製造した。
【0042】《試験例 1》 (1) 雄SDラットを各群6匹ずつ7群準備し(平均
体重約250g)、第1群〜第6群のラットはそれぞれ
実施例1〜4および比較例1〜2の試験に使用し、第7
群のラットは対照用として使用した。 (2) 上記(1)で準備した第1群〜第7群のラット
の盲腸の漿膜をガーゼで摩擦して、およそその1/2を
剥離した。 (3) 上記(2)で盲腸の漿膜を剥離したラットのう
ち、第1群〜第6群のラットについては、漿膜を剥離し
た盲腸の周囲に、実施例1〜4および比較例1〜2で得
られたそれぞれの癒着防止材を、ラット1匹当たり約1
mlの割合で各群6匹ずつ塗布した。 (4) 第1群〜第6群のラットについては、上記
(3)の癒着防止材の塗布後1週間目に剖検して、癒着
状態を肉眼で観察し、下記の表1に示す評価基準にした
がって点数評価し、6匹の平均値を採ったところ、各群
の癒着状態は下記の表2に示すとおりの結果であった。
また、剖検したラットの全身症状および内臓の状態を肉
眼で観察して、下記の表1に示す評価基準にしたがって
点数評価し、6匹の平均値を採ったところ、下記の表2
に示すとおりの結果であった。 (5) また、第7群のラットには実施例1〜4および
比較例1〜2の癒着防止材のいずれをも塗布しないで1
週間後に剖検して、癒着状態、並びに全身症状および内
臓等の状態を肉眼で観察し、下記の表1に示す評価基準
にしたがって点数評価し、6匹の平均値を採ったところ
下記の表2に示すとおりの結果であった。
【0043】
【表1】 癒着状態並びに全身症状と内臓の状態の評価基準 癒着状態: 0点:癒着が全く生じておらず、極めて良好な癒着防止効果を有している。 1点:内臓間または内臓と腹膜間に癒着が1カ所認められるが、ほぼ良好な 癒着防止効果を有している。 2点:内臓間または内臓と腹膜間に、2カ所の癒着が生じており、癒着防止 効果がやや少ない。 3点:内臓間または内臓と腹膜間に癒着が3カ所以上認められ、癒着防止効 果が全くない。 全身症状と内臓の状態: 0点:全身と内臓に全く異常が生じていない。 1点:全身と内臓にほぼ異常がない。 2点:全身と内臓に、炎症などの異常が多少発生している。 3点:全身と内臓に、炎症などの異常が多く発生している。
【0044】
【表2】 癒着防止材の内容1) 癒着状態 全身症状と内臓の状態 実施例1 a-1 2.38 0 実施例2 b-1 2.67 0 実施例3 a-2 2.16 0 実施例4 b-2 1.83 0 比較例1 a-3 2.78 0.67 比較例2 b-3 2.92 0.33 対照例 − 2.80 0.50 1) 癒着防止材の内容: a-1:基-NH-CH2-CH2-SO3Naで修飾されたアルギン酸の生理食塩水溶液 b-1:基-NH-CH2-CH2-SO3Naで修飾されたヒアルロン酸の生理食塩水溶液 a-2:基-NH-CH2-CH2-SO3Naとロイシンエチルエステル由来の疎水性基で 修飾されたアルギン酸の生理食塩水溶液 b-2:基-NH-CH2-CH2-SO3Naとロイシンエチルエステル由来の疎水性基で 修飾されたヒアルロン酸の生理食塩水溶液 a-3:アルギン酸ナトリウムの生理食塩水溶液 b-3:ヒアルロン酸ナトリウムの生理食塩水溶液
【0045】上記の表2の結果から、修飾基(1)の1
種である基−NH−CH2−CH2−SO3Naで修飾さ
れたアルギン酸またはヒアルロン酸を含む実施例1〜4
の癒着防止材の場合は、良好な癒着防止材を示し、しか
も全身症状や内臓状態に全く異常が無く安全性に優れて
いることがわかる。それに対して、基−NH−CH2
CH2−SO3Naで修飾されていないアルギン酸または
ヒアルロン酸を含む比較例1および2の材を用いた場合
は、癒着防止効果を全く示さないことがわかる。さら
に、上記の表2の結果から、修飾基(1)の1種である
基−NH−CH2−CH2−SO3Naと疎水性基の両方
で修飾したアルギン酸またはヒアルロン酸を含む実施例
3および実施例4の癒着防止材では、その癒着防止効果
が一層高いことがわかる。
【0046】
【発明の効果】上記した修飾基(1)で修飾されている
多糖類を含む本発明の癒着防止材は、水溶液や粘性溶液
などのような液状の形態にして用いることができるの
で、複雑な構造の患部や奥まった位置にある患部にも容
易に施すことができる。そして、本発明の癒着防止材
は、物理的な隔離による癒着防止機能と共に、線維芽細
胞の増殖を抑制して生物学的な癒着防止機能を有してい
ることにより、良好な癒着防止効果も奏する、さらに、
本発明の癒着防止材は耐加水分解性に優れていて、加水
分解によって短期間にその癒着防止効果が失われず、し
かも生体組織によって適度に吸収・排泄されるので、所
望の期間に亙って安定してその癒着防止効果を発揮する
ことのできる。その上、本発明の癒着防止材は生物学的
に安全であって、生体適合性に優れている。また、本発
明において、多糖類が上記した修飾基(1)と共に疎水
性基で修飾されているものを用いる場合には、生体によ
る吸収・排泄などの一層良好に調節しながら、その癒着
防止効果をより向上させることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中島 俊秀 岡山県倉敷市酒津1621番地 株式会社クラ レ内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の式(I); 【化1】 −A−SO3H (I) [式中、基Aは、基−SO3Hと直接結合している基A
    中の原子が酸素以外の原子である2価の基を示す]で表
    される基およびその塩の形態をなす基から選ばれる少な
    くとも1種の修飾基を有している多糖類を含むことを特
    徴とする癒着防止材。
  2. 【請求項2】 式(I)で表される基およびその塩の形
    態の基から選ばれる少なくとも1種よりなる修飾基の含
    有率が、硫黄原子に換算して、0.05〜10重量%で
    ある多糖類を含んでいる請求項1の癒着防止材。
  3. 【請求項3】 多糖類がアルギン酸、ヒアルロン酸およ
    びそれらの塩のうちの少なくとも1種である請求項1ま
    たは2の癒着防止材。
  4. 【請求項4】 多糖類が疎水性の修飾基を更に有してい
    る請求項1〜3のいずれか1項の癒着防止材。
  5. 【請求項5】 下記の式(I); 【化2】 −A−SO3H (I) [式中、Aは、基−SO3Hと直接結合している基A中
    の原子が酸素以外の原子である2価の基を示す]で表さ
    れる基、およびその塩の形態をなす基から選ばれる少な
    くとも1種の修飾基を有していることを特徴とする多糖
    類。
  6. 【請求項6】 アルギン酸、ヒアルロン酸またはそれら
    の塩である請求項5の多糖類。
  7. 【請求項7】 式(I)で表される基およびその塩の形
    態の基から選ばれる少なくとも1種よりなる修飾基の含
    有率が、硫黄原子に換算して、0.05〜10重量%で
    ある請求項5または6の多糖類。
  8. 【請求項8】 疎水性の修飾基を更に有している請求項
    5〜7のいずれか1項の多糖類。
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