JPH09286660A - 高強度アルミナセラミックスおよびその製造方法 - Google Patents

高強度アルミナセラミックスおよびその製造方法

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JPH09286660A
JPH09286660A JP8105592A JP10559296A JPH09286660A JP H09286660 A JPH09286660 A JP H09286660A JP 8105592 A JP8105592 A JP 8105592A JP 10559296 A JP10559296 A JP 10559296A JP H09286660 A JPH09286660 A JP H09286660A
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Japan
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alumina
zirconia
crystal
ions
powder
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JP8105592A
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English (en)
Inventor
Kunihiro Yamabe
邦宏 山部
Hidenori Arima
秀徳 有馬
Takashi Maeda
岳志 前田
Daiki Miyamoto
大樹 宮本
Hideki Kume
秀樹 久米
Yoshito Nishikawa
義人 西川
Isamu Inamura
偉 稲村
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Kyocera Corp
Osaka Prefecture
Original Assignee
Kyocera Corp
Osaka Prefecture
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Abstract

(57)【要約】 【課題】少ないジルコニア含有量で高硬度と高強度を兼
ね備えたアルミニナセラミックスを提供する。 【解決手段】実質的に単斜晶以外の結晶相からなるジル
コニアを0.5〜10重量%含有し、残部がアルミナか
らなり、上記ジルコニアを焼結体中の粒界およびアルミ
ナ結晶中に分散させてアルミナセラミックスを構成す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高硬度と高強度を
兼ね備えたアルミナセラミックスとその製造方法に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】従
来、セラミック部材の中でも耐摩耗性、耐熱性、耐薬品
性等の点で優れた特性を有するとともに、圧倒的に安価
でかつ工業的に有用な材料としてアルミナセラミックス
が使用されており、例えば、ディスクバルブ、ベーンポ
ンプのベーン、プランジャーポンプのプランジャーロッ
ド等の摺動部材や粉砕部材、さらには切削、研磨工具な
ど様々な用途で使用されている。
【0003】しかしながら、アルミナセラミックスは上
述のような優れた特性を有する反面、ジルコニアセラミ
ックスや窒化珪素質セラミックスなどの他のセラミック
スに比べて抗折強度が低いことから、高い応力のかかる
部分に安定して使用することができなかった。
【0004】そこで、近年、アルミナセラミックスの抗
折強度を向上させるために正方晶のジルコニアを含有し
たアルミナセラミックスが提案されている(特公昭59
−24751号公報、特公昭59−25748号公報、
特公昭60−46059号公報参照)。
【0005】この種のアルミナセラミックスは、主体を
なすアルミナ粉末にジルコニア粉末およびY2 3 粉末
やMgO粉末等の安定化剤を添加して混練乾燥すること
により造粒体を作製し、該造粒体を所定形状に形成した
あと1400〜1750℃の温度で焼成することにより
形成したものであり、正方晶ジルコニアが焼結体の粒界
およびマトリックスと同程度まで粒成長した状態で介在
したものであった。
【0006】このように正方晶ジルコニアを含有させる
ことにより強度が向上する理由としては、外部応力が加
わると焼結体の粒界やマトリックス状に存在するジルコ
ニアが正方晶から単斜晶に相変態してマイクロクラック
を生じるため、このマイクロクラックにより外部からの
破壊エネルギーが吸収されるためであると考えられてい
る。
【0007】ところが、ジルコニア原料はアルミナ原料
に比べて高価な原料であり、前述したアルミナセラミッ
クスのように、正方晶ジルコニアを焼結体の粒界やマト
リックス状に介在させたものでは、アルミナセラミック
スの強度および硬度を高めるために添加するジルコニア
量が多くなり、高価な材料となってしまうといった課題
があった。
【0008】
【発明の目的】本発明は少ないジルコニア添加量で高硬
度でかつ高強度を兼ね備えたアルミナセラミックスとそ
の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】そこで、本件発明者らは
種々研究を重ねたところ、ZrイオンとMg、Ca、Y
および希土類のうち1種以上のイオン、ならびにAlイ
オンとを原子レベルで均一に混合した溶液にアルミナ粉
末を添加してZr−Al系水酸化物とアルミナからなる
混合粉体を得たあと、該混合粉体を仮焼きすることで実
質的に単斜晶以外の結晶相からなるジルコニアが分散し
たアルミナ粒体を作製し、このアルミナ粒体を通常のセ
ラミック製造方法でもって製造することによりジルコニ
アの含有量を少なくしてもアルミナセラミックスの硬度
と特にその強度を大幅に向上させることができることを
見出したものである。
【0010】即ち、本発明は上記課題に鑑み、実質的に
単斜晶以外の結晶相からなるジルコニアを0.5〜10
重量%含有し、残部がアルミナからなり、上記ジルコニ
アを焼結体中の粒界およびアルミナ結晶中の双方に分散
させて高強度アルミナセラミックスを構成したものであ
る。
【0011】また、本発明は上記ジルコニアの平均結晶
粒子径を0.1〜1.5μmとし、かつアルミナの平均
結晶粒子径を1.0〜5.0μmとしたものである。
【0012】さらに、本発明は上記高強度アルミナセラ
ミックスを、Zrイオンと、Mg、Ca、Yおよび希土
類のうち1種以上のイオン、ならびにAlイオンを原子
レベルで均一に混合した溶液を作製する工程と、該溶液
にアルミナの粉末を添加して中和反応によりZr−Al
系水酸化物とアルミナからなる混合粉体を作製し、これ
を300〜1000℃で仮焼きすることで実質的に単斜
晶以外の結晶相からなるジルコニアが分散したアルミナ
粉体を得る工程と、このアルミナ粉体に溶媒とバインダ
ーを添加して造粒体を作製し、所定形状に成形したあと
1500〜1700℃の温度で焼成する工程とから製造
したものである。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明は図1に組織構造を示す如
く、微細なジルコニアをアルミナセラミックス中の粒界
だけでなくアルミナ結晶中にも分散させたことを特徴と
するものであり、さらには上記ジルコニアを実質的に単
斜晶以外の結晶相、特に正方晶からなるジルコニアで構
成したものである。
【0014】即ち、セラミックスの破壊メカニズムは一
般的に粒内破壊であることから、アルミナ結晶中に単斜
晶以外の結晶相、特に正方晶からなるジルコニアを分散
させておくことにより、外部応力に対して正方晶ジルコ
ニアを単斜晶に相変態させ、この時に生じるマイクロク
ラックにより外部の破壊エネルギーを吸収して粒内破壊
を抑制することができる。しかも、ジルコニアをアルミ
ナ結晶中に分散させたことにより高価なジルコニアの含
有量を少量としても粒内破壊を充分に抑制することがで
きるとともに、ジルコニアには焼成時におけるアルミナ
の粒成長を抑制する作用があることから、緻密でかつ高
硬度および高強度を有する安価なアルミナセラミックス
を得ることができる。
【0015】また、本発明において焼結体中のジルコニ
アが実質的に単斜晶以外の結晶相からなるとは、焼結体
中に含有する全ジルコニア量に対し、単斜晶以外の結晶
相の占める割合が90mol%以上であることをいう。
即ち、焼結体中の全ジルコニア量に対し、単斜晶以外の
結晶相の占める割合が90mol%未満であると、正方
晶ジルコニアを相変態させたとしても外部応力を充分に
吸収しきれず、アルミナセラミックスの硬度および強度
を向上させることができないからである。
【0016】なお、単斜晶以外の結晶相の占める割合を
測定するにはX線回折法を用いれば良い。
【0017】まず、X線回折による単斜晶ピークと正方
晶+立方晶ピークの積分強度から単斜晶ピークと正方晶
+立方晶ピークの量比を測定することにより単斜晶ジル
コニアの結晶量を測定し、全ジルコニアの結晶量から単
斜晶ジルコニアの結晶量を除くことにより焼結体中の全
ジルコニア量に対する単斜晶以外の結晶相の占める割合
を算出することができる。
【0018】具体的な算出式は数1の通りである。
【0019】
【数1】
【0020】また、このようなアルミナセラミックスを
構成するには、焼結体の粒界およびアルミナ結晶中に分
散させるジルコニアの平均結晶粒子径を0.1〜1.5
μmとするとともに、アルミナの平均結晶粒子径を1.
0〜5.0μmとする必要がある。
【0021】これはジルコニアの平均結晶粒子径が1.
5μmより大きくなるとアルミナの結晶粒子径に対する
割合が大きくなり過ぎるためにアルミナそのものの特性
を劣化させ、アルミナセラミックスの硬度および強度を
大幅に低下させてしまうからであり、逆に平均結晶粒子
径が0.1μm未満のジルコニアを得ることは製造上難
しいからである。
【0022】また、アルミナセラミックスを構成するア
ルミナの平均結晶粒子径が5.0μmより大きくなると
焼結体中に微細なボイドが多数介在することになるため
に強度および硬度を向上させることができず、逆に、ジ
ルコニアを分散させたアルミナの平均結晶粒子径を1.
0μm未満とすることは製造上難しいからである。
【0023】さらに、アルミナセラミックスの強度を向
上させるためにはジルコニアの含有量も重要な要件とな
る。
【0024】即ち、ジルコニアの含有量が0.5重量%
未満では焼結時におけるアルミナ結晶の粒成長を充分に
抑制することができないために強度および硬度を向上さ
せることができず、ジルコニアの含有量が10重量%よ
り多くなるとジルコニアの含有量が多くなり過ぎるため
に高価なものになってしまうとともに、アルミナ結晶中
に多量のジルコニアが分散することになるためにアルミ
ナそのものの特性を劣化させ、アルミナセラミックスの
強度および硬度を低下させてしまうからである。
【0025】その為、アルミナセラミックスに含有させ
る最適なジルコニア含有量としては0.5〜10重量%
の範囲で含有することが良く、残部は実質的にアルミナ
により構成することが好ましい。
【0026】なお、焼結助剤としてMgO、CaO、S
iO2 などを若干含有させることもできるが、これらの
焼結助剤は多くとも1重量%以下とすることが好まし
い。
【0027】このような本発明に係るアルミナセラミッ
クスはビッカース硬度(HV 1.0 )1700以上と一般
的に高硬度を有するアルミナセラミックスに比べてさら
に硬度を向上させることができるとともに、抗折強度が
55kg/mm2 以上と高い機械的強度を兼ね備えたも
のとすることができる。
【0028】次に、本発明に係るアルミナセラミックス
の製造方法について説明する。
【0029】図2は本発明に係るアルミナセラミックス
の製造プロセスを示すフローチャート図であり、まず、
Zrイオンと、Mg、Ca、Y、希土類のうち1種以上
のイオン、ならびにAlイオンを原子レベルで均一に混
合した溶液を作製する。ここで、Zrイオンはジルコニ
アを構成するために添加したものであり、焼結体中にお
いて上記ジルコニアを安定化させるためにMg、Ca、
Y、希土類のうち1種以上のイオンを添加する。Alイ
オンはアルミナ中にジルコニアを微細な粒径で分散させ
るために添加してある。
【0030】そして、この溶液にアルミナ粉末を添加し
て中和反応させることによりZr−Al系水酸化物とア
ルミナからなる混合粉体を得たあと、この混合粉体を3
00〜1000℃で仮焼きすることにより実質的に単斜
晶以外の結晶相からなるジルコニアを分散させたアルミ
ナ粉体を製作する。
【0031】具体的には水溶性のジルコニウム塩と、M
g、Ca、Y、希土類のうち1種以上からなる塩、なら
びにアルミニウム塩とを水に溶解させて溶液を作製し、
この溶液にアルミナ粉末を添加してアンモニアでもって
中和反応させることにより、Zr−Al系水酸化物とア
ルミナからなる混合粉体を作製し、これを300〜10
00℃で仮焼きすることにより実質的に単斜晶以外の結
晶相からなるジルコニアが分散したアルミナ粉体を形成
する。この時、ジルコニアの安定化成分であるMg、C
a、Y、希土類のうち1種以上のイオンは、Zrイオン
に対し酸化物換算で0.5mol%以上となるように含
有させる必要がある。これは安定化成分がZrイオンに
対し酸化物換算で0.5mol%未満であると、焼結体
中の全ジルコニア量に対し、単斜晶以外の結晶相の占め
る割合を90mol%以上とすることができないために
ジルコニアの相変態に伴うアルミナセラミックスの硬度
および強度を充分に高めるだけの効果が得られないから
である。
【0032】また、上記溶液を作製するにはジルコニア
を構成するZrイオンおよび上記安定化成分の合計と、
Alイオンとを酸化物重量換算で95:5〜60:40
の割合で添加することが好ましい。
【0033】次に、上記アルミナ粉体に溶媒およびバイ
ンダーを添加して混練乾燥することにより造粒体を作製
し、この造粒体を一軸加圧成形法、泥漿鋳込法、等加圧
成形法、射出成形法など通常のセラミック成形法により
所定形状に成形したあと、1500〜1700℃、好ま
しくは1550〜1650℃の大気雰囲気あるいは水素
や窒素雰囲気中にて焼成することにより得ることができ
る。なお、焼成温度を1500〜1700℃としたの
は、焼成温度が1500℃未満ではアルミナ粉体の焼結
性が不充分であるために緻密化することができず、セラ
ミックスの強度および強度を向上させることができない
からであり、焼成温度が1700℃より高くなるとアル
ミナの粒成長を促進させてしまうからである。
【0034】このようにZrイオンと、Mg、Ca、
Y、希土類のうち1種以上のイオン、ならびにAlイオ
ンを原子レベルで均一に混合した溶液にアルミナ粉末を
添加してZr−Al系水酸化物とアルミナからなる混合
粉体を作製し、この混合粉体を仮焼きして原料粉末を作
製するようにしたことから、少ないジルコニア含有量に
もかかわらず高強度でかつ高硬度を兼ね備えたアルミナ
セラミックスを得ることができる。
【0035】
【実施例】以下、本発明実施例について説明する。
【0036】ZrOCl2 ・8H2 Oを8.301重量
%、YCl3 ・6H2 Oを0.238重量%、AlCl
3 ・6H2 Oを1.910重量%の割合で水に混合して
溶液を作製し、この溶液中にアルミナ粉末を89.55
1重量%添加混合したあとアンモニア(28%)を加え
て中和反応させることによりZr(Y)−Al系水酸化
物とアルミナからなる混合粉体を作製した。そして、こ
の混合粉体を乾燥させたあとに500℃程度の温度で仮
焼きして粗粉砕することにより二次原料として実質的に
単斜晶以外の結晶相からなるジルコニアを分散させたア
ルミナ粉体を作製した。次に、このアルミナ粉体にバイ
ンダーと溶媒として水を添加して混練乾燥することによ
り造粒体を作製し、該造粒体を型内に充填して冷間静水
圧成形法により円柱状に成形したあと、この成形体を1
600℃の大気雰囲気中にて焼成することにより、ジル
コニアを3.5重量%含有してなるアルミナセラミック
スを得た。
【0037】次に、このアルミナセラミックスに研削加
工を施して角柱状の試料を製作し、反射SEM写真を撮
影して観察したところ、ジルコニアが焼結体の粒界およ
びアルミナ結晶中の双方に分散しており、上記ジルコニ
アについてX線回折法でもって測定したところ焼結体中
の全ジルコニア量に対し単斜晶以外の結晶相の占める割
合が94.1mol%とほぼ全てのジルコニアが単斜晶
以外の結晶相であった。また、反射SEM写真からアル
ミナおよびジルコニアの平均結晶粒子径について算出し
たところアルミナの平均結晶粒子径は2.8μm、ジル
コニアの平均結晶粒子径は0.85μmであった。
【0038】さらに、このアルミナセラミックスの硬度
および抗折強度についてそれぞれ測定したところビッカ
ース硬度(HV 1.0 )1786、抗折強度65.0kg
/mm2 を有していた。
【0039】(実験例1)ここで、実施例のアルミナセ
ラミックスと比較例としてジルコニアを含有した従来の
アルミナセラミックスを用意して見掛密度、破壊靱性
値、ビッカース硬度、抗折強度についてそれぞれ測定
し、基準試料として用意した純度99.5%のアルミナ
セラミックスとの比較を行った。
【0040】本実験では各試料を3mm×4mm×40
mmの角柱体とし、見掛密度の測定についてはJIS
C 2141のアルキメデス法に準拠し、破壊靱性値の
測定はIF法により30kgfの荷重をかけた状態で1
5秒間保持させて測定した。
【0041】また、ビッカース硬度の測定についてはJ
IS R 1610に準拠し、ダイヤモンド圧子の試験
荷重を1000gfで5秒間保持させて測定し、抗折強
度の測定についてはJIS R 1601に準拠して、
スパン幅:30mm、クロスヘッドスピード:0.5m
m/minの条件にて行った。
【0042】なお、従来のアルミナセラミックスは、主
体をなすアルミナ粉末に3.5重量%の正方晶ジルコニ
ア粉末を添加混合して造粒体を作製し、この造粒体を冷
間静水圧成形法により円柱状に成形したあと、この成形
体を1600℃の大気雰囲気中にて焼成し、最後に切削
加工を施して角柱状の試料としたものを使用した。
【0043】それそれの結果は表1に示す通りである。
【0044】
【表1】
【0045】まず、表1より判るように各試料はジルコ
ニアの粒成長抑制作用により焼結体を緻密化することが
でき、基準試料に対して見掛密度を向上させることがで
きた。ただし、従来のアルミナセラミックスは図3にそ
の組織構造を示すように、正方晶ジルコニアが焼結体の
粒界およびマトリックスと同程度まで成長した状態で存
在するだけでアルミナ結晶中に分散しておらず、ジルコ
ニアの含有量が少ないために、基準試料に比べて硬度お
よび強度を向上させることができたものの、ビッカース
硬度(HV 1.0 )1685、抗折強度48kg/mm2
程度であった。
【0046】これに対し、実施例のアルミナセラミック
スは図1に示す組織構造のように、単斜晶以外の結晶相
からなるジルコニアが焼結体の粒界およびアルミナ結晶
中に分散していることから、少ないジルコニア含有量に
もかかわらず、ビッカース硬度(HV 1.0 )1786、
抗折強度65.0kg/mm2 と基準試料および従来の
アルミナセラミックスに比べて機械的特性を大幅に向上
させることができた。
【0047】(実験例2)ジルコニアの含有量をそれぞ
れ変化させたアルミナセラミックスを実施例と同様の方
法により作製し、各々の抗折強度について実験例1と同
様の条件にて測定を行った。ただし、アルミナセラミッ
クス中に含有するジルコニアは90mol%以上が単斜
晶以外の結晶相となるようにした。
【0048】また、本実験では抗折強度が55kg/m
2 以上有するものを優れたものとした。
【0049】それぞれの結果は表2に示す通りである。
【0050】
【表2】
【0051】この結果、試料No.1のアルミナセラミ
ックスはジルコニアを全く含有していないことから抗折
強度が35kg/mm2 程度であった。また、試料N
o.6〜8のアルミナセラミックスは、焼結体中のジル
コニアが実質的に単斜晶以外の結晶相からなるものの、
ジルコニアの含有量が多すぎるために抗折強度55kg
/mm2 以上を満足することができなかった。
【0052】これに対し、試料No.2〜5のアルミナ
セラミックスは、焼結体中のジルコニアが実質的に単斜
晶以外の結晶相からなり、その含有量が0.5〜10重
量%の範囲にあるため、抗折強度55kg/mm2 以上
を満足することができた。特に、ジルコニアを3.5重
量%含有したアルミナセラミックスは抗折強度が65.
0kg/mm2 と大幅に向上させることができた。
【0053】このことから、焼結体の粒界およびアルミ
ナ結晶中に分散させるジルコニア量としては0.5〜1
0重量%の範囲で含有すれば良いことが判る。
【0054】(実験例3)次に、ジルコニアの含有量を
3.5重量%に固定した状態でY2 3 の含有量を変化
させることにより、焼結体中の全ジルコニアに対し、単
斜晶以外の結晶相の占める割合を異ならせたアルミナセ
ラミックスを用意し、各々の抗折強度を実験例1と同様
の条件にて測定を行った。なお、本実験においても抗折
強度55kg/mm2 以上を有するものを優れたものと
した。
【0055】それぞれの結果は表3に示す通りである。
【0056】
【表3】
【0057】この結果、表3より判るように、試料N
o.9のアルミナセラミックスは、焼結体中の全ジルコ
ニア量に対し、単斜晶以外の結晶相の占める割合が7
0.8mol%と90mol%未満であるために正方晶
ジルコニアの相変態による充分な強度の向上がみられ
ず、抗折強度55kg/mm2 以上を満足することがで
きなかった。
【0058】これに対し、試料No.10〜12のアルミナ
セラミックスは、焼結体中の全ジルコニア量に対し、単
斜晶以外の結晶相の占める割合が90mol%以上であ
るために焼結体の粒界およびアルミナ結晶中に分散させ
た正方晶ジルコニアの相変態による強度の向上が得ら
れ、抗折強度55kg/mm2 以上を満足することがで
きた。
【0059】(実験例4)さらに、表2の試料No.3
に係るアルミナセラミックスにおいて、アルミナおよび
ジルコニアの平均結晶粒子径を異ならせた試料を用意し
て、各々の抗折強度を実験例1と同様の条件にて測定を
行った。
【0060】なお、アルミナおよびジルコニアの平均結
晶粒子径は、3500倍に拡大して撮影した反射SEM
写真に長さ70mmの線を任意に10本引き、各線の長
さをその線上にあるアルミナの個数で割り、これらの平
均値をアルミナの平均結晶粒子径とし、同様に各線上に
ある全ジルコニアの長さをその線上にあるジルコニアの
個数で割り、これらの平均値をジルコニアの平均結晶粒
子径とした。
【0061】それぞれの結果は表4に示す通りである。
【0062】
【表4】
【0063】この結果、まず、ジルコニアおよびアルミ
ナの平均結晶粒子径が小さい程、強度を向上できること
が判る。そして、試料No.17、18ではジルコニア
の平均結晶粒子径1.5μm以下でかつアルミナの平均
結晶粒子径5.0μm以下を満足していないために焼結
体中に微細なボイドが多数存在し、その結果、抗折強度
55kg/mm2 を満足することができなかった。
【0064】これに対し、試料No.13〜16の本発
明に係るアルミナセラミックスはジルコニアの平均結晶
粒子径が0.1〜1.5μmでかつアルミナの平均結晶
粒子径が1.0〜5.0μmの範囲にあるため、アルミ
ナセラミックスの抗折強度を55kg/mm2 以上とす
ることができた。特に、試料No.13のアルミナセラ
ミックスにあっては抗折強度を70kg/mm2 と大幅
に向上させることができた。
【0065】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、実質的
に単斜晶以外の結晶相からなるジルコニアを0.5〜1
0重量%含有し、残部がアルミナからなり、上記ジルコ
ニアをセラミックス中の粒界およびアルミナ結晶中の双
方に分散させてアルミナセラミックスを構成したことに
より、少ないジルコニア含有量にもかかわらず高硬度で
かつ高強度を有し、かつ安価なアルミナセラミックスを
得ることができる。
【0066】また、本発明は、Zrイオンと、Mg、C
a、Yおよび希土類のうち1種以上のイオン、ならびに
Alイオンを原子レベルで均一に混合した溶液にアルミ
ナ粉末を添加して加水分解することによりZr−Al系
水酸化物とアルミナからなる混合粉体を作製し、この混
合粉体を300〜1000℃で仮焼きして実質的に単斜
晶以外の結晶相からなるジルコニアを分散させたアルミ
ナ粉体を製作し、このアルミナ粉体を所定形状に成形し
たあと1500〜1700℃の温度で焼成して製造する
ようにしたことから、焼結体のアルミナ結晶中にジルコ
ニアを容易に分散させることができ、高硬度でかつ高強
度を兼ね備えたアルミナセラミックスを安価に製造する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るアルミナセラミックスの組織構造
を示す模式図である。
【図2】本発明に係るアルミナセラミックスの製造プロ
セスを示すフローチャート図である。
【図3】従来のジルコニアを含有したアルミナセラミッ
クスの組織構造を示す模式図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 前田 岳志 京都府京都市山科区東野北井ノ上町5番地 の22 京セラ株式会社内 (72)発明者 宮本 大樹 大阪府和泉市あゆみ野2丁目7番1号 大 阪府立産業技術総合研究所内 (72)発明者 久米 秀樹 大阪府和泉市あゆみ野2丁目7番1号 大 阪府立産業技術総合研究所内 (72)発明者 西川 義人 大阪府和泉市あゆみ野2丁目7番1号 大 阪府立産業技術総合研究所内 (72)発明者 稲村 偉 大阪府和泉市あゆみ野2丁目7番1号 大 阪府立産業技術総合研究所内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】実質的に単斜晶以外の結晶相からなるジル
    コニアを0.5〜10重量%含有し、残部がアルミナか
    らなり、上記ジルコニアが焼結体の粒界およびアルミナ
    結晶中の双方に分散していることを特徴とする高強度ア
    ルミナセラミックス。
  2. 【請求項2】上記ジルコニアの平均結晶粒子径が0.1
    〜1.5μmで、かつアルミナの平均結晶粒子径が1.
    0〜5.0μmであることを特徴とする請求項1に記載
    の高強度アルミナセラミックス。
  3. 【請求項3】実質的に単斜晶以外の結晶相からなるジル
    コニアを焼結体の粒界およびアルミナ結晶中の双方に分
    散してなるアルミナセラミックスの製造方法において、 1)Zrイオンと、Mg、Ca、Yおよび希土類のうち
    1種以上のイオン、ならびにAlイオンを原子レベルで
    均一に混合した溶液を作製する工程と、 2)上記溶液にアルミナ粉末を添加して中和反応により
    Zr−Al系水酸化物とアルミナからなる混合粉体を作
    製し、該混合粉体を300〜1000℃で仮焼きして実
    質的に単斜晶以外の結晶相からなるジルコニアが分散し
    たアルミナ粉体を得る工程と、 3)上記アルミナ粉体に溶媒とバインダーを添加して造
    粒体を作製し、所定形状に成形したあと1500〜17
    00℃で焼成する工程 とからなることを特徴とする高強度アルミナセラミック
    スの製造方法。
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