JPH09227989A - Ca処理鋼および溶鋼のCa処理方法 - Google Patents

Ca処理鋼および溶鋼のCa処理方法

Info

Publication number
JPH09227989A
JPH09227989A JP3447896A JP3447896A JPH09227989A JP H09227989 A JPH09227989 A JP H09227989A JP 3447896 A JP3447896 A JP 3447896A JP 3447896 A JP3447896 A JP 3447896A JP H09227989 A JPH09227989 A JP H09227989A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
steel
inclusions
concentration
cao
molten steel
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP3447896A
Other languages
English (en)
Inventor
Mitsuhiro Numata
光裕 沼田
Yoshihiko Higuchi
善彦 樋口
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Industries Ltd filed Critical Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority to JP3447896A priority Critical patent/JPH09227989A/ja
Publication of JPH09227989A publication Critical patent/JPH09227989A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Treatment Of Steel In Its Molten State (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】Ca処理鋼および処理方法を提供する。 【解決手段】(1) CaO-Al2O3-CaS 系介在物の組成が、Ca
O:30〜60%、CaS:10%未満及び残部:Al2O3主体であるCa
処理鋼。 (2)溶鋼を予め脱酸、脱硫し、下記(1) 式で定義される
SCIを用い、SCIが下記(2) 式を満たすように制御
するCa処理方法。 SCI=(〔Ca〕+0.0095×〔C〕)÷(〔O〕+
0.6〔S〕×〔Mn〕) ・・・・(1) 0.8 ≦SCI≦2.3 ・・・・・・・・・
・(2) 【効果】耐HIC性に優れた鋼材を得ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐水素誘起割れ性
に優れた鋼材およびその製造に好適な溶鋼のCa処理方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】通常、転炉などで溶製された溶鋼は出鋼
した後、金属Alにより脱酸処理が施される。この結
果、Al2O3 が介在物として溶鋼中に多数生成する。この
Al2O3 は、鋳造した後も鋼中に残留し圧延時に容易に破
砕するため、種々の欠陥の原因となっている。
【0003】ラインパイプ材では、種々の欠陥のなかで
特に水素誘起割れ(以下、HICと記す)が致命的であ
る。HICは、圧延時に破砕して圧延方向に破線状に伸
びた非金属介在物や圧延時に延伸した非金属介在物の周
辺に鋼中の水素が集合した結果、水素の圧力と非金属介
在物先端部のVノッチ効果との相乗効果によって発生す
る。
【0004】これまでに、圧延時に破砕し破線状に伸び
る介在物は、溶鋼の脱酸時に生成するAl2O3 クラスター
介在物であること、また圧延時に線状に延伸する介在物
は、凝固時に生成するMnS 介在物であることが知られて
いる。
【0005】したがって、HICを抑制するには、圧延
時に破砕し破線状に伸びるAl2O3 クラスター介在物や線
状に延伸するMnS 介在物を、介在物形態制御により圧延
時に変形しない介在物に変化させることが重要となる。
【0006】このようなHIC抑制を目的とする介在物
形態制御技術として、溶鋼にCaを添加する方法が知ら
れている。Caは、溶鋼中でAl2O3 クラスターと反応す
ることによりAl2O3 クラスターをCaO-Al2O3 系介在物と
し、その形態をクラスターから球状に変化させる。CaO-
Al2O3 系介在物はその形状が球状であること、さらに融
点がAl2O3 より低いことにより、圧延時に破砕しない。
また、CaはSと強い親和力を持つため、凝固時のMnS
の生成を抑制する。
【0007】このように、溶鋼へのCa添加は、Al2O3
の改質およびMnS の生成抑止に極めて有効であり、優れ
た耐HIC性を持つ鋼の製造を可能ならしめるものであ
る。
【0008】しかし、Caの添加方法が不適正であると
新たにCaS クラスターが生成し、HICの起点となる。
そのため従来、多くのCa添加方法が提案されてきた。
【0009】特開昭63−7322号公報では、下記
(3)式を満足するようにCaを添加する方法が提案さ
れている。
【0010】 0.7 −14〔S〕<〔Ca〕/〔O〕<1.1 −14〔S〕 ・・(3) ただし、〔Ca〕:溶鋼中Ca濃度(ppm) 〔S〕:溶鋼中硫黄濃度(%) 〔O〕:溶鋼中酸素濃度(ppm) このようにCa濃度を制御することにより、Al2O3 クラ
スターをCaO-Al2O3 系介在物に効果的に形態制御すると
ともに、CaS 介在物が生成するのを抑止できるとしてい
る。
【0011】特開平3−79713号公報では、測定さ
れた〔O〕を考慮しつつ下記(4)式を満足するように
Ca濃度を制御する方法が提案されている。
【0012】 0.5 ≦〔Ca〕/〔O〕≦1.0 ・・・・・・・・・・・・(4) ただし、 〔Ca〕:溶鋼中Ca濃度(ppm) 〔O〕:溶鋼中全酸素濃度(ppm) この方法により、Al2O3 をCaO-Al2O3 系介在物に変化さ
せ、かつCaS の生成が抑止できるとしている。
【0013】特開平6−25743号公報では、鋼中成
分を下記(5)、(6)式を満足するようにし、特定の
方法で圧延する方法が提案されている。
【0014】 0.7 ≦ICP≦1.5 ・・・・・・・・・・・・・・・・・(5) ICP=〔Ca〕/(1.25〔S〕+0.625 〔O〕)・・・・(6) これによりMnS を極端に減少させ、同時にクラスター状
Al2O3 系介在物の発生量を最小に抑えることが可能とし
ている。
【0015】特開平6−49523号公報では、下記
(7)式を満足するようにCaを添加する方法が提案さ
れている。
【0016】 0.7 ≦〔Ca〕/〔O〕≦1.4 ・・・・・・・・・・・・(7) これにより、Al2O3 介在物を効果的に低融点組成のCaO-
Al2O3 系介在物に変化させることが可能としている。
【0017】特開平6−330139号公報は、下記
(8)、(9)、(10)式を満足させることにより、
MnS およびCaO-Al2O3 系介在物の生成を防止し、溶接部
の耐硫化物応力割れ性に優れたラインパイプ材を溶製す
る方法を提案している。
【0018】 {(%Ca)×(1−98(%O))}/(%S)>1.7 ・・(8) 0.07 <(%Ca)/(%Al)<0.17 ・・・・・・・・(9) 6<(%Si)/(%Al)<25 ・・・・・・・・・・(10) 以上のように従来の技術は、溶鋼中Ca、S、Oの濃度
を適正に制御することにより、Al2O3 クラスターのCaO-
Al2O3 系介在物への形態制御およびMnS 、CaS介在物の
生成抑止を図るものである。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来技術によ
りCa添加を行っても、実際にはHICを完全に抑制す
ることはできず、最適Ca添加技術の確立が耐HIC鋼
製造上大きな課題となっている。
【0020】本発明者らがHIC発生部を調査検討した
結果、HICの起点となる介在物は従来知られているAl
2O3 クラスター、CaS およびMnS のみならず、特開平6
−330139号公報に示されているように、CaO-Al2O
3 系介在物も圧延時に破砕して破線状に伸び、HICの
起点となっていることが確認された。
【0021】しかし、本発明者等がさらに詳細にHIC
の起点となっているCaO-Al2O3 系介在物を調査した結
果、以下のことが新たに判明した。
【0022】同一の圧延材中、HIC発生部以外の部位
には破砕されずに球状を保ったCaO-Al2O3 系介在物も多
数確認されたため、全てのCaO-Al2O3 系介在物が破砕し
てHICの起点となるものではない。そこで、圧延時に
破砕され破線状に伸びた介在物の組成と圧延時に破砕せ
ずに球状を保った介在物の組成とを詳細に調査した結
果、次の新知見を得た。
【0023】1)圧延時に破砕され破線状に伸びる介在
物の組成は、CaS を10重量%以上含有するCaO-Al2O3
系、またはCaO の濃度が60重量%よりも高く、もしく
はAl2O3 濃度が70重量%よりも高くなる高融点組成の
CaO-Al2O3 系である。
【0024】2)一方、圧延時に破砕されずに球状を保
つ介在物の組成は、CaS 濃度が10重量%未満、かつ介
在物中のCaO 濃度が30重量%以上60重量%以下とな
る低融点組成のCaO-Al2O3 である。以下、介在物組成に
おいて、重量%を「%」と記す。
【0025】したがって、鋼材の耐HIC性を向上させ
るには、Al2O3 クラスター、CaS 、およびMnS 介在物の
生成を抑止するのはもちろん、CaS を10%以上含有す
るCaO-Al2O3 系介在物または前記1)の高融点組成のCa
O-Al2O3 系介在物の生成を抑止し、溶鋼中に含まれる介
在物のCaS 濃度が10%未満、かつCaO 濃度が30%以
上60%以下となる低融点組成のCaO-Al2O3-CaS 系介在
物になるように組成を制御しなければならない。
【0026】溶鋼中に存在するCaO-Al2O3 系介在物は、
凝固過程で溶鋼中のSと反応することにより、Sを捕捉
吸収しCaO-Al2O3-CaS 系介在物となることで、MnS の生
成を抑止する。
【0027】ところが、高清浄度化を図ると介在物量が
低下し、鋼中酸素濃度も低くなるため、凝固過程におけ
るSの捕捉吸収能が低下し、MnS 生成の抑止がより困難
となる。
【0028】さらに、MnS の生成・非生成は鋼中S濃度
と鋼中Mn濃度との濃度積〔Mn〕×〔S〕によって決
定されるため、鋼中酸素濃度が低く、鋼中Mn濃度の高
い鋼種の場合には、よりMnS 生成の抑止が困難となる。
【0029】したがって、高清浄度化を図ると同時に効
果的にMnS の生成を抑止するには、介在物をMn濃度、
S濃度および酸素濃度に応じて最も適正な組成に制御し
なければならない。鋼中Mn濃度あるいはS濃度が高
く、酸素濃度が低い場合には、介在物1個当たりのS捕
捉吸収能を鋼中のMn、Sおよび酸素の濃度に応じて上
昇させなければならない。また、その介在物組成は、同
時に圧延時に破砕しない前述の組成でなければならな
い。
【0030】しかし、従来技術では、このような介在物
組成に十分制御することが困難であり、このためHIC
を完全に抑制することができなかったのである。
【0031】特開昭63−7322号公報および特開平
3−79713号公報では、Al2O3クラスターをCaO-Al2
O3 系介在物へ改質する方法およびCaS の生成を抑止す
る方法を提案しているにすぎず、介在物組成を厳密に制
御し、HICの起点となる介在物を十分に低減すること
ができない。
【0032】特開平6−25743号公報の方法では、
MnS 生成の抑止とAl2O3 クラスター覆低減とは図れるも
のの、CaO-Al2O3 系介在物の組成制御が不十分であり、
また特開平6−49523号公報の方法では、Al2O3
在物を低融点組成のCaO-Al2O3 系介在物に制御できるも
のの、CaO-Al2O3 系介在物中のCaS 濃度を制御すること
ができず、いずれも十分な耐HIC性を得ることができ
ない。
【0033】特開平6−330139公報の方法では、
MnS およびCaO-Al2O3 系介在物を低減できるとしている
が、以下のような問題がある。前記(8)式に従えばMn
S の生成は抑止できるが、前記(9)式に従ってもCaO-
Al2O3 系介在物中のCaS 濃度の制御が十分に行えず、Ca
S を10%以上含有するCaO-Al2O3 系介在物が多数生成
し、HICの起点となる。さらに、CaはAlに比べて
はるかに強力な脱酸元素であるので、Ca濃度が高い場
合、たとえばCa添加直後などでは、CaO-Al2O3 系介在
物の組成は(9)式によらず、むしろCa濃度のみによ
って決まるため、(9)式にしたがったとしても酸化物
系介在物の状態を精度よく制御することは困難である。
【0034】以上のように従来技術は、MnS およびCaS
生成の抑制は図れるものの、CaO-Al2O3 系介在物および
CaO-Al2O3-CaS 系介在物の組成を的確に制御すること、
もしくは高清浄度鋼でのMnS の生成を抑止することがと
もにできず、十分な耐HIC性を得ることができない。
【0035】本発明は上記課題を解決するためになされ
たものである。本発明の目的は、鋼中非金属介在物の組
成および形態を効果的に制御した耐水素誘起割れ性に優
れるCa処理鋼およびこれを製造することができる溶鋼
のCa処理方法を提供することにある。
【0036】
【課題を解決するための手段】本発明者は、前記の新知
見に基づいて本発明をなした。
【0037】本発明の要旨は、次の(1) のCa処理鋼お
よび(2) のCa処理方法にある。
【0038】(1)鋼中に含まれるCaO-Al2O3-CaS 系介在
物の組成が、重量%でCaO :30〜60%、CaS :10
%未満および残部:Al2O3 主体であることを特徴とする
Ca処理鋼。
【0039】上記でいう「Al2O3 主体」とは、MgO およ
び/またはSiO2などの不可避的な介在物を含むことを意
味する。
【0040】(2)あらかじめ脱酸、脱硫された溶鋼のC
a処理方法であって、下記(1)式で定義されるSCI
を用い、このSCIが下記(2)式を満たすように制御
することを特徴とする溶鋼のCa処理方法。
【0041】 SCI=(〔Ca〕+0.0095×〔C〕) ÷(〔O〕+0.6 〔S〕×〔Mn〕) ・・・・(1) 0.8 ≦SCI≦2.3 ・・・・・・・・・・・・・(2) ただし、 〔Ca〕:鋼中Ca濃度(重量%)、〔C〕:鋼中C濃
度(重量%)、〔O〕 :鋼中O濃度(重量%)、
〔S〕:鋼中S濃度(重量%)、〔Mn〕:鋼中Mn濃
度(重量%)
【0042】
【発明の実施の形態】HICの起点となる介在物として
従来知られているのは、CaS 、MnS およびAl2O3 クラス
ターであり、特開平6−330139号公報ではこれら
の介在物に加えCaO-Al2O3 系介在物もHICの起点とな
るとしている。しかし前述のように、本発明者らの調査
結果によれば、すべてのCaO-Al2O3 系介在物が圧延時に
破砕してHICの起点となるのではなく、その組成によ
っては圧延時に破砕せず球状を維持する。
【0043】つまり、HICの起点となる介在物は、Ca
S 、MnS およびAl2O3 クラスターに加え、CaS を10%
以上含有するCaO-Al2O3 系、もしくはCaO 濃度が60%
より高くまたは30%より低くなる高融点組成のCaO-Al
2O3 系介在物である。
【0044】一方、圧延時にも破砕せず球状を維持する
介在物は、CaS 濃度が10%未満、かつ介在物中のCaO
濃度が30%以上60%以下となる低融点組成のCaO-Al
2O3CaS 系介在物である。介在物をこのような組成に正
確に制御することにより、鋼材の耐HIC性は極めて高
いものとなるのである。
【0045】さらに本発明者らは、鋼材の清浄度向上を
図る処理を行い、介在物量を低減した場合、凝固過程に
おける鋼中Sの捕捉効率が低下し、微細なMnS が生成す
ることを見いだした。APIグレ−ドX65、X70、
X80などの高強度材では、介在物個数を大幅に低減し
なければHICは抑制できないが、一方、介在物量低減
により生成する微細なMnS であってもHICの起点にな
るという相反する二面性がある。
【0046】したがって、介在物量が低減されている場
合は、介在物1個あたりのS捕捉吸収能が高くなければ
ならない。また、MnS の生成・非生成は鋼中介在物量
(酸素濃度)、Mn濃度およびS濃度に依存するため、
介在物1個に必要とされるS捕捉吸収能はこれらの因子
によって決定される。
【0047】介在物1個あたりのS捕捉吸収能を上昇さ
せるには、介在物中のCaO 濃度を上昇させる、つまり鋼
中Ca濃度を上昇させればよい。しかし、このとき介在
物中のCaO 濃度は60%を超えて高くなってはならな
い。
【0048】以上のように、高清浄化を図り、なおかつ
高強度材で十分な耐HIC性を獲得するには、Caの適
切な添加により介在物組成をCaS 濃度10%未満、CaO
濃度30%以上60%以下、残部はMgO および/または
SiO2などの不可避的介在物を含んだAl2O3 主体とするこ
とが必須である。これが本発明のCa処理鋼である。
【0049】これを実現する手段としては、酸化物系介
在物の個数(鋼中酸素濃度)、Mn濃度およびS濃度に
応じて、上記範囲内で介在物中のCaO およびCaS 濃度を
制御するのが最もよい。
【0050】本発明方法は、このような介在物組成の制
御を可能とし、鋼材の耐HIC性を向上させることが可
能なCa処理方法である。
【0051】まず、前記(1)式について説明する。
【0052】鋼中酸素濃度は、鋼中の酸化物系介在物中
の酸素と鋼中に原子状に溶解している酸素を合計した濃
度である。原子状に溶解している酸素量は極めて微量で
あるため、通常、分析される鋼中酸素は、酸化物系介在
物中の酸素と考えてよい。したがって、鋼中酸素濃度は
酸化物系介在物量の指標と考えることができる。
【0053】また、介在物中のCaO 濃度は、鋼中酸素濃
度(酸化物系介在物量)とCa濃度とに依存する。つま
り、鋼中酸素濃度が高ければCa濃度を高める必要があ
り、鋼中酸素濃度が低ければCa濃度を低減する必要が
ある。
【0054】さらに、MnS の生成・非生成は、前述のよ
うにMnとSとの濃度積〔Mn〕×〔S〕に依存する。
この濃度積が大きいときは、介在物により鋼中Sを捕捉
吸収し濃度積を低下させる必要がある。つまり、濃度積
が大きいときは、鋼中Ca濃度(介在物中のCaO 濃度)
を上昇させる必要がある。
【0055】以上のような理論から適正Ca濃度は、鋼
中酸素濃度、Mn濃度およびS濃度によって規定される
或る指標SCIによって決定されると推定し、さらに、
それぞれの大小の相互関係から、この指標は次の(1)
式のような形態をとると考えた。
【0056】 SCI=(〔Ca〕+α×〔C〕) ÷(〔O〕+β×〔S〕×〔Mn〕)・・・・(1) ただし、 〔Ca〕:鋼中Ca濃度(重量%)、〔C〕:鋼中C濃
度(重量%)、〔O〕 :鋼中O濃度(重量%)、
〔S〕:鋼中S濃度(重量%)、〔Mn〕:鋼中Mn濃
度(重量%) α、β:定数 上記(1)式の分子においてC濃度項〔C〕を取り入れ
たのは、次の理由による。Caを添加すると、その脱酸
およびAl2O3 介在物の改質の程度は、Ca濃度ではなく
Ca活量によって変化する。したがって、分析で得られ
るCa濃度をそのまま用いても、正確にCaO-Al2O3 系介
在物の状態を知ることは困難である。そのため、Ca活
量に影響をおよぼすC濃度を用いてCa濃度を補正する
必要がある。
【0057】一方、分母に鋼中のO(酸素)濃度項
〔O〕および〔S〕×〔Mn〕の濃度積項を取り入れた
のは、次の理由による。〔O〕濃度は溶鋼中のAl2O3
在物の量を示す指標であり、〔O〕が高ければ溶鋼中の
Al2O3 介在物の量が多いことになる。したがって、
〔O〕が高ければAl2O3 改質用のCaはそれだけ多くの
量が必要となるからである。また、〔S〕×〔Mn〕が
高ければそれだけMnS の生成が容易となって生成量が多
くなるため、Ca濃度を高めなければならないからであ
る。
【0058】次に、図1に基づいて定数αおよびβなら
びにSCIの限定理由を説明する。
【0059】図1は、様々な組成の鋼材の場合におけ
る、HIC発生の有無におよぼす(〔Ca〕+α×
〔C〕)と(〔O〕+β×〔S〕×〔Mn〕)との関係
の例を示す図である。図示するように、α=0.009
5、β=0.6としたとき、HIC発生ありと発生なし
との領域が明確に整理でき、傾きが2.3 の直線Aおよび
傾きが0.8 の直線Bの間では、HICは発生しない。よ
って、SCIの範囲は下記(2)式とした。
【0060】0.8 ≦SCI≦2.3 ・・・・・・(2) 前記(1)式および上記(2)式にしたがう具体的なC
a添加量の決定方法はいかなる方法でもよいが、次の二
つの方法のうちのいずれかを用いるのが望ましい。第一
の方法は、操業および製造後の鋼材組成を分析してあら
かじめデータを蓄積しておき、得られた実績からCaの
添加量を決定する方法である。この方法には、特殊な分
析設備を必要としない利点がある。第二の方法は、製鋼
処理中の途中段階で溶鋼組成を迅速分析し、(1)、
(2)式および分析結果から各処理毎にCaの添加量を
決定する方法である。この方法には、製造過程で生じる
外来要因を回避し、正確にCa処理を行えるという利点
がある。
【0061】Caの添加は、製鋼段階の2次精錬のいか
なる段階あるいは連続鋳造中のタンディッシュ段階な
ど、どのような時点でおこなってもよいが、次のような
処理プロセスを用いるのが望ましい。
【0062】炉から出鋼した後の溶鋼をAlなどで脱酸
した後、取鍋処理で脱硫処理を施し、溶鋼中S濃度を1
0ppm以下とする。その後、RH式真空脱ガス装置で
脱水素処理を施した後、Caを添加し、連続鋳造機で鋳
造する。このプロセスではRH処理により、脱酸および
脱硫処理で溶鋼中に生成した介在物あるいはスラグの溶
鋼への巻き込みにより増加する介在物を脱水素と同時に
溶鋼から除去できるため、溶鋼中介在物の大幅な低減お
よびCa添加前の酸化物系介在物量(酸素濃度)の安定
を達成することが可能である。
【0063】溶鋼の脱硫処理はいかなる方法でもよい
が、CaO を主成分とする脱硫フラックスをキャリヤーガ
スとともに溶鋼に吹き込むインジェクション法、あるい
は溶鋼表面にCaO-Al2O3 系スラグを添加し、不活性ガス
を溶鋼に吹き込んで攪拌し、スラグ−溶鋼間反応を利用
して脱硫するバブリング法のいずれかが望ましい。ただ
し、インジェクション法ではスラグ巻き込みが激しいた
め、高い清浄度を必要とする高強度材製造の場合にはバ
ブリング法が望ましい。
【0064】脱硫処理でS濃度を10ppm以下とする
のが望ましいのは次の理由による。
【0065】S濃度が10ppmを超えて高くなるとMn
S の生成が活発となるため、より大量のCaを添加しな
ければならない。しかし、S濃度の高い溶鋼にCaを大
量添加すると、CaS 生成の抑止あるいはCaO-Al2O3 系介
在物中のCaS 濃度上昇の抑制が困難となるため、介在物
組成の適正化ができなくなるからである。
【0066】製鋼段階で溶鋼温度の補償のため溶鋼昇熱
処理を施してもよい。しかし、Alを添加した後、酸素
ガスを吹き付けてAlの酸化熱を利用する方法を用いる
場合は、Al2O3 介在物が多量に生成するため、RH処理
前に昇熱処理を施すことが望ましい。
【0067】Caを添加した後に溶鋼成分を均一化し介
在物を溶鋼から除去するために、溶鋼にArなどの不活
性ガスを吹き込み、バブリングをおこなってもよい。ま
た、脱酸、脱硫、昇熱およびRH処理後など各処理後あ
るいは特定処理後に同様にバブリングをおこなってもよ
い。
【0068】Caの添加方法は、CaもしくはCa含有
物質をキャリヤーガスとともに溶鋼に吹き込むインジェ
クション法、またはCaもしくはCa含有物質を中空鉄
製ワイヤーに充填し、ワイヤーとともに溶鋼に添加する
ワイヤーフィーダー法など、いかなるものでもよい。し
かし、Ca添加中のスラグ巻き込みが最も少ないワイヤ
ーフィーダー法を用いるのが望ましい。
【0069】溶鋼に添加するCaもしくはCa含有物質
は、単体金属CaもしくはCaSi、FeCa、CaA
lなどのCa合金、またはCaを含む3種類以上の元素
からなる合金(たとえば、FeCaSi、FeCaN
i)など、いかなる形態のものでもよい。CaまたはC
a合金に、CaO-Al2O3 系酸化物などの酸化物を混合ある
いはプリメルト化したものでもよい。
【0070】
【実施例】転炉から出鋼した後、取鍋に収容した溶鋼2
50tに脱酸を施し、表1に示すような組成に調整し
た。
【0071】取鍋内の溶鋼に浸漬したランスを用いて、
Arガスで溶鋼を9分間撹拌して脱硫した後、RH真空
脱ガス装置を用いて10分間環流処理を施し、その後、
溶鋼中の〔O〕、〔Mn〕、〔S〕および〔C〕を迅速
分析し、表1に示すSCI条件にしたがってCaを添加
した。この後、さらにArガスにより3分間バブリング
をおこなった。Caの添加量はあらかじめ蓄積されたデ
ータに基づいて決定し、Ca添加には30%Ca−70
%SiのCaSi合金を充填したワイヤーフィーダー法
を用いた。
【0072】
【表1】
【0073】表1に示す条件にしたがって処理した溶鋼
を、連続鋳造機で厚さ235mm のスラブとし、これを圧延
して厚さ26.5mmの厚板とした。得られた厚板からサンプ
ルを切り出し、検鏡法により介在物の形態および組成を
走査型電子顕微鏡およびエネルギー分散型X線分析装置
で調査するとともに、耐HIC評価試験に供した。耐H
IC評価試験は、次に示すNACE条件でおこなった。
【0074】NACE条件 温度:24.8±2.8 ℃ pH:max 4.5 溶液:5%NaCl+ 0.8%CH3COOH 時間:96時間 H2S 濃度:H2S 飽和 H2S 流量: 100〜200 cc/min 介在物中のCaO およびCaS の濃度ならびにHIC評価試
験結果を併せて表1に示す。表1中の○印はHICが全
く発生しなかったこと、×印はHICがわずかでも発生
したことを意味する。HICが全く発生しなかった場合
の介在物形態は、破砕せず球状を維持するものであっ
た。HICがわずかでも発生した場合の介在物形態で
は、破砕し破線状に伸びるものが認められた。なお、表
1に示す介在物の組成において、CaO およびCaS 以外の
残部はAl2O3 主体であり、わずかにMgO および/または
SiO2を含むものもあった。
【0075】表1に示すとおり、本発明方法で定める条
件にしたがって処理した場合、HICは全く発生しない
が、処理中の条件に本発明方法で定める条件から外れる
ものが含まれるとHICが発生し、耐HIC性が不良と
なった。
【0076】
【発明の効果】本発明によれば、鋼中非金属介在物の組
成および形態を効果的に制御し、耐HIC性に優れた鋼
材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】HIC発生の有無におよぼす(〔Ca〕+α×
〔C〕)と(〔O〕+β×〔S〕×〔Mn〕)との関係
の例を示す図である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】鋼中に含まれるCaO-Al2O3-CaS 系介在物の
    組成が、重量%でCaO :30〜60%、CaS :10%未
    満および残部:Al2O3 主体であることを特徴とするCa
    処理鋼。
  2. 【請求項2】あらかじめ脱酸、脱硫された溶鋼のCa処
    理方法であって、下記(1)式で定義されるSCIを用
    い、このSCIが下記(2)式を満たすように制御する
    ことを特徴とする溶鋼のCa処理方法。 SCI=(〔Ca〕+0.0095×〔C〕) ÷(〔O〕+ 0.6〔S〕×〔Mn〕) ・・・・(1) 0.8 ≦SCI≦2.3 ・・・・・・・・・・・・・・・(2) ただし、 〔Ca〕:鋼中Ca濃度(重量%)、〔C〕:鋼中C濃
    度(重量%)、 〔O〕 :鋼中O濃度(重量%)、 〔S〕:鋼中S濃
    度(重量%)、 〔Mn〕:鋼中Mn濃度(重量%)
JP3447896A 1996-02-22 1996-02-22 Ca処理鋼および溶鋼のCa処理方法 Pending JPH09227989A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP3447896A JPH09227989A (ja) 1996-02-22 1996-02-22 Ca処理鋼および溶鋼のCa処理方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP3447896A JPH09227989A (ja) 1996-02-22 1996-02-22 Ca処理鋼および溶鋼のCa処理方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH09227989A true JPH09227989A (ja) 1997-09-02

Family

ID=12415367

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP3447896A Pending JPH09227989A (ja) 1996-02-22 1996-02-22 Ca処理鋼および溶鋼のCa処理方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH09227989A (ja)

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001011528A (ja) * 1999-06-24 2001-01-16 Kawasaki Steel Corp 耐水素誘起割れ性に優れた鋼の溶製法
JP2003268438A (ja) * 2002-03-08 2003-09-25 Kobe Steel Ltd 溶鋼の精錬方法
JP2010280933A (ja) * 2009-06-03 2010-12-16 Sumitomo Metal Ind Ltd Ca処理鋼の製造方法
JP2014005534A (ja) * 2012-05-28 2014-01-16 Jfe Steel Corp 耐hic特性に優れた鋼材およびその製造方法
JP2020509197A (ja) * 2016-12-23 2020-03-26 ポスコPosco 耐水素誘起割れ性に優れた圧力容器用鋼材及びその製造方法

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001011528A (ja) * 1999-06-24 2001-01-16 Kawasaki Steel Corp 耐水素誘起割れ性に優れた鋼の溶製法
JP2003268438A (ja) * 2002-03-08 2003-09-25 Kobe Steel Ltd 溶鋼の精錬方法
JP2010280933A (ja) * 2009-06-03 2010-12-16 Sumitomo Metal Ind Ltd Ca処理鋼の製造方法
JP2014005534A (ja) * 2012-05-28 2014-01-16 Jfe Steel Corp 耐hic特性に優れた鋼材およびその製造方法
JP2020509197A (ja) * 2016-12-23 2020-03-26 ポスコPosco 耐水素誘起割れ性に優れた圧力容器用鋼材及びその製造方法
US11578376B2 (en) 2016-12-23 2023-02-14 Posco Co., Ltd Steel for pressure vessels having excellent resistance to hydrogen induced cracking and manufacturing method thereof

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101150141B1 (ko) 내사워 성능이 우수한 강관용 강의 제조 방법
KR100675709B1 (ko) 미세하게 분산된 개재물을 갖는 강
EP3971306A1 (en) Method for adding ca to molten steel
JP6642174B2 (ja) 高炭素溶鋼の連続鋳造方法
KR100711410B1 (ko) 연성이 높은 박강판 및 그 제조방법
JPH09227989A (ja) Ca処理鋼および溶鋼のCa処理方法
KR102410083B1 (ko) 고세정도 강의 제조 방법
JPH10212514A (ja) 耐水素誘起割れ性に優れた高清浄極低硫鋼の製造方法
JP3250459B2 (ja) 溶接部の低温靱性に優れた耐hic鋼およびその製造方法
JPH10237533A (ja) 耐hic鋼の製造方法
JP4111352B2 (ja) ステンレス鋼の高清浄化精錬法
JP3097506B2 (ja) 溶鋼のCa処理方法
JP4502944B2 (ja) 延性に富む薄鋼板および該鋼板を得るための鋼塊の製造方法
JPH0873923A (ja) 耐水素誘起割れ性に優れた清浄鋼の製造法
JP3036373B2 (ja) 酸化物分散鋼の製造法
JPH08283826A (ja) 高清浄極低硫耐hic鋼の製造方法
JP2004346402A (ja) ばね用鋼材の製鋼精錬方法
JPH09209025A (ja) 溶接部の低温靱性に優れた耐hic鋼の製造方法
JP5387045B2 (ja) 軸受鋼の製造方法
JP3697987B2 (ja) 溶鋼脱硫用の脱硫剤
JPH08157934A (ja) 溶鋼のCa処理方法
JP2976849B2 (ja) 耐hic鋼の製造方法
US20130152740A1 (en) Metallurgical method for refining grains of steel by modifying inclusions through addition of magnesium and aluminum
KR101091931B1 (ko) 칼슘 처리강의 제조 방법
JP2000038614A (ja) 清浄性に優れた極低炭素鋼の溶製方法