JPH09211246A - 導波路型回折格子の製造方法 - Google Patents

導波路型回折格子の製造方法

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JPH09211246A
JPH09211246A JP1669896A JP1669896A JPH09211246A JP H09211246 A JPH09211246 A JP H09211246A JP 1669896 A JP1669896 A JP 1669896A JP 1669896 A JP1669896 A JP 1669896A JP H09211246 A JPH09211246 A JP H09211246A
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JP
Japan
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hydrogen
diffraction grating
temperature
optical fiber
refractive index
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Application number
JP1669896A
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English (en)
Inventor
Masumi Ito
真澄 伊藤
Maki Ikechi
麻紀 池知
Tadashi Enomoto
正 榎本
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Sumitomo Electric Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Electric Industries Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 特定波長の光成分に対する反射率を増大させ
る導波路型回折格子の迅速な製造方法を提供する。 【解決手段】 圧力容器20内に光ファイバ10を設置
し、バルブ21側からバルブ22に向かって水素(H
2 )ガスを流入すると共に、炉心管20内を60〜20
0℃および20〜400気圧の状態にする。そして、最
終的な温度である60℃以下まで、1回以上の温度変化
によって、雰囲気温度を変化させながら水素添加を行
う。次に、水素が添加された光ファイバ10内のコア部
の所定領域に紫外光干渉縞を照射して、屈折率変化を発
生させ、回折格子を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光導波路のコア部
の屈折率を光軸に沿って周期的に変化させて回折格子を
形成する導波路型回折格子の製造方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】近年、光ファイバ通信技術の進展に伴
い、ネットワークの複雑化や信号波長の多重化などが進
行し、システム構成は高度化しつつある。このような光
通信システムでは、光回路素子の重要性が増大してい
る。
【0003】光回路素子における一般的構成の一つとし
てファイバ型素子は、小型で挿入損失が小さいことや、
光ファイバとの接続が容易であること等の利点を有して
いる。そして、このようなファイバ型素子として、ファ
イバ型フィルターが知られている。
【0004】最近では、コア部に酸化ゲルマニウムをド
ープした石英系光ファイバについて、紫外光照射によっ
てコア部の屈折率が変化するという知見が周知であり、
このような光誘起屈折率変化を利用したファイバ型フィ
ルターとして、光ファイバ型回折格子が研究開発されて
いる。
【0005】この光ファイバ型回折格子は、光ファイバ
内を進行する光のうち特定波長の光成分を反射するもの
であり、一般に、紫外光の照射によって光ファイバのコ
ア部に屈折率が光軸に沿って周期的に変化した領域を形
成することにより製造されている。この製造方法には、
ファイバ型回折格子を生産性良く製造することができる
という利点がある。
【0006】このようなファイバ型回折格子においては
反射率Rが重要な特性であり、この反射率Rは、グレー
ティング長(コア部の屈折率が光軸に沿って周期的に変
化した領域の長さ)と光誘起による屈折率の変化量に依
存する。この関係は、 R=tanh2 (LπΔn/λR ) ここで、R:反射率 L:グレーティング長 Δn:光誘起による屈折率の変化量 λR :反射波長 と表される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】紫外光照射による屈折
率変化は、コア部のガラス中に存在するゲルマニウム関
連のガラス欠陥に起因することが知られている。しか
し、従来のような酸化ゲルマニウムをコア部にドープし
ただけのガラス光ファイバではガラス欠陥の数が少ない
ため、紫外光を照射しても屈折率変化量Δnが小さく、
したがって、上記の式から明らかなように反射率も低
い。具体的に言えば、紫外光照射によるコア部の屈折率
変化は10-5程度であり、反射率は数%と過小である。
【0008】反射率を高くするためには、上記の式が示
すようにグレーティング長Lを大きくする方法もある
が、紫外光レーザビームを照射するにあたって、レーザ
ビームに高い均一性が要求され、そのために紫外光照射
を行う光学系が複雑になるという問題点がある。また、
ガラス欠陥が少ないため、紫外光照射による屈折率変化
の速度が遅く、反射率を高くしようとすると、照射時間
が長くなって生産性が低下するという問題点がある。
【0009】反射率を高くするため、紫外光の照射光量
に対する屈折率の変化量を増大させるために、水素を光
ファイバのコア部に添加する方法が知られている。
【0010】光ファイバへの水素の添加は、高圧の水素
加圧処理によって行われるが、屈折率変化を大きくする
ためには、添加水素濃度が高いことが望ましい。このた
め、高濃度の水素を添加できる低温で水素添加処理が行
われているが、低温であるため、光ファイバ内での水素
の拡散速度が遅く、水素添加の処理時間が長くかかると
いう問題点があった。
【0011】本発明は、上記の問題点に鑑みなされたも
のであり、反射率の高い導波路型回折格子を容易に、生
産性良く迅速に製造する方法を提供することを目的とす
る。
【0012】
【課題を解決するための手段】請求項1の導波路型回折
格子の製造方法は、(a)初期の雰囲気温度よりも最終
の雰囲気温度を低くするとともに、1回以上の温度変化
で初期の雰囲気温度から最終の雰囲気温度に変化させな
がら、光導波路のコア部に水素を添加する処理を行う第
1の工程と、(b)光導波路のコア部の所定領域に紫外
光を照射し、屈折率を変化させる第2の工程とを備える
ことを特徴とする。
【0013】ここで、第1の工程の温度変化は降温変化
であることを特徴としてもよい。
【0014】また、第1の工程の初期処理温度は60℃
以上、かつ、200℃以下であり、第1の工程の最終処
理温度は60℃以下であることを特徴としてもよい。
【0015】また、第1の工程における光導波路への水
素の添加の処理は、水素圧力が20気圧以上、かつ、4
00気圧以下で行われることが好適である。
【0016】請求項1の導波路型回折格子の製造方法で
は、まず、雰囲気温度を1回以上変化させながら、光導
波路のコア部に水素を添加する(第1の工程)。この光
導波路への水素の添加は、光導波路を水素雰囲気で還元
処理する方法を採ることができる。
【0017】光導波路を加圧水素雰囲気中に置いた場
合、ガラスからなる光導波路内への水素の拡散速度は、
温度が高いほど速くなり、飽和量に達するまでの時間は
短くなる。一方、同一水素圧力下であれば、光導波路内
の水素の飽和濃度は、温度が高いほど減少する傾向があ
る。また、水素添加による屈折率増大の効果は、光導波
路内の水素濃度と略比例関係にある。
【0018】したがって、大きな屈折率変化を生じ差せ
ようとすると、光導波路内の水素濃度を高める必要があ
る。そのために低温で水素処理することにすると、光導
波路内での水素の拡散速度が遅くなるので、水素添加処
理に長時間を要することとなる。
【0019】そのため、請求項1の導波路型回折格子の
製造方法では、当初は比較的高温で、水素添加処理を行
う。この結果、光導波路内での水素の拡散が速いので、
短時間で光導波路内に水素が添加される。
【0020】ここで、当初の温度は、60〜200℃が
好ましい。200℃を超える場合には、飽和水素濃度が
低いのみならず、添加された水素が導波路のガラスと反
応をしてしまい、後の工程で施す紫外光の照射による屈
折率の増大効果を減少させてしまうからである。また、
60℃未満の場合には、光導波路内での水素の拡散速度
が遅いからである。なお、高温下での反応を考慮する
と、60〜100℃であることが好ましい。
【0021】そして、1回以上の温度変化を行って、最
終的に添加したい水素濃度が飽和水素濃度となるように
最終温度に設定して、水素添加処理を行う。この結果、
最終温度での飽和水素濃度で水素が添加されることにな
るが、既に相当量の水素が短時間で添加された後なの
で、飽和水素濃度に達するまでの時間が短時間で済む。
【0022】最終的な温度は、飽和水素濃度の観点か
ら、60℃以下であることが好ましい。
【0023】こうして、最終的な添加水素濃度が同一で
あっても、最終的な処理温度で一貫して水素添加する場
合よりも、短時間で水素を添加することができる。
【0024】当初温度から最終温度への変化は、1回の
ステップ的な温度変化であってもよいし、複数のステッ
プ的な温度変化であってもよい。また、連続的な変化で
あってもよい。
【0025】また、温度変化の態様は、単調な降温変化
であってもよいし、昇温変化と降温変化の組合わせであ
ってもよい。ただし、昇温時の最高温度は、200℃以
下であることが、光導波路内での水素の観点から望まし
く、更には、100℃以下であることがより望ましい。
【0026】水素がゲルマニウムが添加された光導波路
に添加されると、光導波路にドープされている酸化ゲル
マニウム(GeO2 )が還元され易くなり、Geと結合
している酸素が一部取り除かれる現象が発生する。結合
酸素が一部取り除かれたGeが結合しあえば酸素欠損型
の欠陥が新たに生じることとなり、光導波路のコア部に
おける酸素欠損型の欠陥が増大して、紫外光の照射によ
る屈折率変化が高まる。
【0027】すなわち、光ケーブルを構成する石英(S
iO2 )や、これにドープされている酸化ゲルマニウム
(GeO2 )が全体的に還元され易くなり、GeやSi
と結合している酸素が一部取り除かれる現象が発生する
と推察される。結合酸素が一部取り除かれたGeやSi
が結合しあえば、Si−GeまたはGe−Geなどの中
性酸素モノ空孔、すなわち酸素欠損型の欠陥が新たに生
じることとなる。
【0028】なお、水素雰囲気中で還元処理される光導
波路は、裸の光導波路である必要はなく、樹脂がコート
された光導波路であってもよい。こうした場合には、線
引時に樹脂コートを行って作成した光導波路をそのまま
使用して、光導波路のコア部に水素を添加することがで
きる。
【0029】第1の工程における光ケーブルへの水素の
添加は、水素圧力が20気圧以上、かつ、400気圧以
下で行われる、ことが好適である。
【0030】水素圧力が20気圧以下では水素の添加の
効果が実質的になく、また、100気圧以下では水素添
加の効果が小さい。そして、更に、水素圧力を上昇して
いくと、水素添加の効果の向上がみられるが、300気
圧以上では効果が徐々に飽和し、400気圧以上では、
水素圧力の上昇による効果はみられない。
【0031】次に、水素が添加された光導波路のコア部
の所定領域に紫外光を照射し、屈折率を変化させる(第
2の工程)。
【0032】酸化ゲルマニウムをドープした石英ガラス
系の光導波路において、紫外光照射による屈折率変化の
メカニズムは、完全に解明されてはいない。しかしなが
ら、重要な原因として、ゲルマニウムに関連した酸素欠
損型の欠陥が考えられており、このような欠陥としてS
i−GeまたはGe−Geなどの中性酸素モノ空孔が想
定されている。このような屈折率変化のメカニズムに関
しては、文献「1993年電子情報通信学会春季大会, C-24
3,pp.4-279」などに記載されている。
【0033】本出願の発明者は、酸化ゲルマニウムをド
ープした石英系の光導波路に通常わずかしか存在しない
酸素欠損型の欠陥を増大させることにより、紫外光照射
による屈折率変化が増大するであろうと推定した。そし
て、光導波路内に存在するゲルマニウムに関連した酸素
欠損型の欠陥を増大するためには、光導波路を水素雰囲
気で還元処理することが有効であることを見出した。
【0034】光ケーブルを水素雰囲気で還元処理するこ
とにより、光導波路には水素が添加される。本発明者ら
の知見によれば、水素が添加された光導波路に紫外光が
照射されると、添加水素が光導波路材料中のゲルマニウ
ム、酸素と反応して、Ge−OHという新たな結合を形
成し、これらの結合が屈折率変化を高める。
【0035】紫外光の照射について、紫外光を干渉させ
て生じた干渉縞をコア部の所定領域に照射して行うこと
が容易である。なお、紫外光の干渉縞は、分岐した紫外
光の一方をコア部の軸方向に対して第1角度で、他方を
第1角度の補角となる第2角度で、共に所定領域に照射
して形成されることが適切である。このホログラフィッ
ク法によれば、コア部の屈折率変化は、これら二つの分
岐光の入射角度に対応した周期で生じる。また、紫外光
の干渉縞は、所定周期で配列された格子を有する位相格
子に紫外光を位相格子の面方向に対して所定角度で照射
して形成されることが適切である。この位相格子法によ
れば、コア部の屈折率変化は、位相格子の格子配列に対
応した周期で生じる。
【0036】本発明者らの実験によれば、光導波路のコ
ア部に水素を10000ppm添加した場合には、コア
部にGeが充分含まれている場合には、屈折率変化は1
-3に達し、回折格子としての反射率はほぼ100%を
達成できる。
【0037】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照して本発明
の導波路型回折格子の製造方法の実施の形態を説明す
る。なお、図面の説明にあたって同一の要素には同一の
符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸
法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0038】本実施形態の導波路型回折格子の製造方法
では、まず、光ファイバを用意し、1回以上の温度変化
をさせながら、当初温度=60〜200℃から最終温度
=60℃以下に変化させながら、水素雰囲気で光ファイ
バを還元処理する。
【0039】具体的には、図1に示すように、圧力容器
20内に光ファイバ10を設置し、バルブ21側からバ
ルブ22に向かって水素(H2 )ガスを気流として通過
させつつ、ヒータなどの温度調整器23で圧力容器20
を温度を当初温度に設定する。この際、水素ガスの流量
は、バルブ21及び22の開閉によって調節される。
【0040】光ファイバ10は、コア部に酸化ゲルマニ
ウム(GeO2 )を含む通常の石英系光ファイバであ
り、また、二次被覆までされた光ファイバ心線であって
もよい。また、雰囲気は水素圧力20〜400気圧であ
る。
【0041】水素圧力を20気圧以上とするのは、水素
圧力が20気圧未満では水素の添加の効果が実質的にな
いからである。なお、水素添加の効果の観点からは、水
素圧力を100気圧以上とすることが好ましい。
【0042】水素圧力を400気圧以下とするのは、4
00気圧を超えると水素添加の効果が飽和するからであ
る。こうした効果の飽和の傾向は、水素圧力が300気
圧を超えると見られるようになる。
【0043】こうした水素添加工程によれば、比較的高
温の当初温度で、比較的低濃度ではあるが迅速に水素が
添加された後、最終温度の飽和水素濃度に達するまで、
徐々に更に水素が添加される。
【0044】水素が添加されると、光ファイバ10に添
加された水素により光ファイバ10のコア部にドープさ
れている酸化ゲルマニウムが還元され易くなり、Geや
Siと結合している酸素が一部取り除かれる現象が発生
する。結合酸素が一部取り除かれたGeやSiが結合し
あえば、酸素欠損型の欠陥が新たに生じることとなり、
光ケーブルのコア部において通常わずかしか存在しない
酸素欠損型の欠陥が増大する。
【0045】次に、水素添加工程で処理された光ファイ
バ10内のコア部の所定領域に紫外光干渉縞を照射す
る。
【0046】図2は、ホログラフィック法による紫外光
干渉縞の照射の説明図である。図2に示すように、干渉
機構40を用いて干渉空間50を生成するように、光源
30から出射された紫外光を干渉させ、この干渉空間5
0に光ファイバ10を設置する。光源30は、SHG
(高調波発生器)アルゴンレーザやKrFエキシマレー
ザ等であり、所定波長を有するコヒーレントな紫外光を
出射する。干渉機構40は、ビームスプリッタ41及び
ミラー42,43で構成されている。ビームスプリッタ
41は、光源30からの紫外光を二つの分岐光に二分岐
させる。ミラー42及び43は、ビームスプリッタ41
からの分岐光をそれぞれ反射し、光ファイバ10の軸方
向に対して所定角度θ1 ,θ2 でそれぞれ入射して共面
ビームとして相互に干渉させる。光ファイバ10は、シ
リカガラスからなるクラッド部11及びコア部12で構
成されている。コア部12は、上述したように酸化ゲル
マニウムがドープされており、クラッド部11と比較し
て高屈折率を有する。なお、二つの分岐光の入射角度θ
1 及びθ2 は相互に補角であり、これらの和(θ1 +θ
2 )は180°になる。
【0047】このような工程によれば、光ファイバ10
に所定波長の紫外光を照射するので、酸化ゲルマニウム
をドープしたコア部12における露光領域の屈折率が変
化する。現在、このような紫外光照射による屈折率変化
のメカニズムは、完全に解明されてはいない。しかしな
がら、これを説明するものとして、クラマース・クロー
ニッヒ機構、双極子モデル及び圧縮モデルなどが一般に
提案されている。ここでは、クラマース・クローニッヒ
機構に基づいて説明を行う。
【0048】光ファイバ10内のコア部12には、Ge
に関連した酸素欠損型の欠陥が通常わずかに存在してい
る。ここで、欠陥をGe−Siの中性酸素モノ空孔で代
表すると、その欠陥は紫外光照射によって Ge−Si → Ge・+Si+ +e- (1) で示すように転化する。この反応で放出された電子は転
化した欠陥の周辺に位置するGeにトラップされるの
で、コア部12の光吸収特性が変化する。このような欠
陥における吸収スペクトルによると、紫外光照射前には
波長240〜250nm付近にピークが現れるが、紫外
線照射後には波長210nm付近及び280nm付近に
ピークが遷移することが確認されている。この遷移によ
りコア部の屈折率が変化すると考えられている。なお、
周知なクラマース・クローニッヒの関係式に基づき、欠
陥の吸収スペクトル変化から見積ったコア部12におけ
る屈折率変化の値は、反射率の測定値から算出した屈折
率変化の値に良く一致している。
【0049】水素添加工程で水素添加され還元処理され
た光ファイバ10のコア部12では、上述したように通
常わずかしか存在しない酸素欠損型の欠陥が増大してい
るので、紫外光の露光領域における屈折率変化が大きく
なる。これに加えて、紫外光がコア部に照射されると、
酸素が取り除かれたGeやSi、あるいは通常のGe−
O−Siのような結合と、光ケーブルに添加された水素
とが反応して、Ge−H,Ge−OH,Si−H,Si
−OHという結合が形成される。本発明者は、これらの
結合が新たな光吸収帯を形成することにより、紫外光照
射による屈折率変化が高まると推察する。したがって、
本発明の方法によれば、酸素欠損型欠陥の増大による効
果と添加水素の反応により生成された新たな結合(Ge
−H等)による効果とが相舞って、紫外光の露光領域に
おける屈折率変化が10-4〜10-3程度に大きくなる。
【0050】図2のホログラフィック法では、二つのコ
ヒーレントな紫外光を光ファイバ10の軸方向に対する
角度θ1 ,θ2 (=180°−θ1 )で入射して干渉さ
せている。そのため、光ファイバ10の径方向に対する
コヒーレントな紫外光の入射角度θ(=90°−θ1
と紫外光の波長λとを用い、干渉空間50における干渉
縞の間隔Λは、 Λ=λ/(2sinθ) (2) となる。したがって、コア部12の露光領域には、異な
る屈折率を有する領域が干渉縞の間隔Λを周期として光
ファイバ10の軸方向に配列されるので、格子13が形
成されることになる。
【0051】ブラッグの回折条件に基づいてコア部12
の屈折率nと格子13の周期Λとを用い、このファイバ
型回折格子の反射波長λR は、 λR =2nΛ =λn/sinθ (3) となる。また、格子13の長さLと屈折率差Δnとを用
い、このファイバ型回折格子の反射率Rは、 R=tanh2 (LπΔn/λR ) (4) となる。したがって、光ファイバ10のコア部12で
は、格子13が10-4〜10-3程度の大きい屈折率変化
で形成されているので、反射波長λR の反射率が100
%近い値に達する。
【0052】なお、このようなホログラフィック法で
は、光源30としては干渉性の良好なレーザが必要であ
る。また、高精度の位置調整や安定性が必要となる。
【0053】図3は、位相格子法による紫外光干渉縞の
照射の説明図である。図3に示すように、光ファイバ1
0を位相格子60に隣接して設置し、光源30から出射
された紫外光を位相格子60表面の法線方向に対して所
定角度θで入射させる。光源30は、SHGアルゴンレ
ーザやKrFエキシマレーザ等であり、これらは所定波
長を有するコヒーレントな紫外光を出射する。位相格子
60は、所定周期で格子を配列して形成されている。光
ファイバ10は、シリカガラスからなるクラッド部11
及びコア部12で構成されている。コア部12は、上述
したように酸化ゲルマニウムがドープされており、クラ
ッド部11と比較して高屈折率を有する。
【0054】図3の位相格子法によれば、光ファイバ1
0に所定波長の紫外光を照射するので、酸化ゲルマニウ
ムをドープしたコア部12における露光領域の屈折率が
変化する。現在、このような紫外光照射による屈折率変
化のメカニズムは、完全に解明されてはいない。しかし
ながら、この屈折率変化には、ファイバ10のコア部1
2に通常わずかに存在しているGeに関連した酸素欠損
型の欠陥が関与していると、一般に推定されている。
【0055】水素添加工程で水素添加され還元処理され
た光ファイバ10のコア部12では、通常わずかしか存
在しない酸素欠損型の欠陥が増大しているので、紫外光
の露光領域における屈折率変化が大きくなる。
【0056】また、格子が所定間隔Λ´で配列された位
相格子60表面の法線方向に対して紫外光を角度θで照
射して干渉させている。そのため、コア部12の露光領
域における干渉縞の間隔Λは、 Λ=Λ´ (5) となる。したがって、コア部12の露光領域には、異な
る屈折率を有する領域が干渉縞の間隔Λを周期として光
ファイバ10の軸方向に配列されるので、格子13が形
成されることになる。
【0057】周知なブラッグの回折条件に基づいてコア
部12の屈折率nと格子13の周期Λとを用い、このフ
ァイバ型回折格子の反射波長λR は、 λR =2nΛ =2nΛ´ (6) となる。また、格子13の長さLと屈折率差Δnとを用
い、このファイバ型回折格子の反射率Rは、上述した式
(4)に示すようになる。したがって、光ファイバ10
のコア部12では、格子13が10-4〜10-3程度の大
きい屈折率変化で形成されているので、反射波長λR
反射率が100%近い値に達する。
【0058】なお、このような位相格子法によれば、上
述したホログラフィック法に要求される位置調整や安定
性の条件が緩和される。また、通常のリソグラフィ技術
や化学エッチングにより、格子の周期を自由に選択する
ことができるので、複雑な形状も実現可能である。
【0059】こうして製造されたファイバ型回折格子
は、以下のようにして反射率が測定される。図4は、フ
ァイバ型回折格子の反射率測定を行うシステムの構成図
である。図4に示すように、このシステムは、光源7
0、光ファイバ10及び光スペクトルアナライザ90を
光カプラ80で光結合して構成されている。
【0060】光源70は通常の発光ダイオード等であ
り、光ファイバ10における反射波長λR を有する光成
分を含む光を出射する。光カプラ80は通常の溶融延伸
型ファイバカプラであり、光源70からの入射光を光フ
ァイバ10に出力すると共に光ファイバ10からの反射
光を光スペクトルアナライザ90に出力する。光スペク
トルアナライザ90は、光ファイバ10からの反射光に
おける波長と光強度との関係を検出する。なお、光ファ
イバ10の開放端は、マッチングオイル100中に浸さ
れている。このマッチングオイル100は、通常の屈折
率整合液であり、不要な反射光成分を除去している。
【0061】図4のシステムによれば、光源70から出
射された光は、光カプラ80を介して光ファイバ10に
入射する。光ファイバ10では、コア部12に形成され
ている格子13が特定波長の光成分を反射する。光ファ
イバ10から出射された光は、光カプラ80を介して光
スペクトルアナライザ90で受光される。光スペクトル
アナライザ90では、波長と光強度とからなる光ファイ
バ10の反射スペクトルが検出される。
【0062】
【実施例】本発明者は、上記の実施形態に基づいて、以
下のようにして、ファイバ型回折格子を製造を実施し、
反射率を測定した。
【0063】まず、ゲルマニウム添加コアを有する光フ
ァイバを、水素圧力200気圧の雰囲気の圧力容器内に
設置して、内部温度80℃の雰囲気下で5日間の水素添
加処理を施した後、内部温度30℃の雰囲気下で3日間
の水素添加処理を施した。
【0064】次に、図3に示すような位相格子を組合わ
せたエキシマレーザで回折格子を書き込んだ。
【0065】こうして得られたファイバ型回折格子を、
図5に示すシステムで反射率を測定したところ、略10
0%の反射率であった。
【0066】本発明者は、上記の実施例と比較するた
め、以下のような比較例のファイバ型回折格子を製造
し、反射率を測定した。
【0067】(比較例1)まず、ゲルマニウム添加コア
を有する光ファイバを、水素圧力200気圧の雰囲気の
圧力容器内に設置して、内部温度80℃の雰囲気下で5
日間の水素添加処理を施した。
【0068】次に、図3に示すような位相格子を組合わ
せたエキシマレーザで回折格子を書き込んだ。
【0069】こうして得られたファイバ型回折格子を、
図5に示すシステムで反射率を測定したところ、略60
%の反射率であった。
【0070】内部温度80℃の雰囲気下では、導波路内
の水素濃度は飽和していたことから、処理温度が高く飽
和水素濃度が低いので、実施例よりも反射率が低くなっ
たことが推察される。
【0071】(比較例2)まず、ゲルマニウム添加コア
を有する光ファイバを、水素圧力200気圧の雰囲気の
圧力容器内に設置して、内部温度30℃の雰囲気下で5
日間の水素添加処理を施した。
【0072】次に、図3に示すような位相格子を組合わ
せたエキシマレーザで回折格子を書き込んだ。
【0073】こうして得られたファイバ型回折格子を、
図5に示すシステムで反射率を測定したところ、略50
%の反射率であった。
【0074】内部温度30℃の雰囲気下では、5日間の
処理では導波路内の水素濃度は飽和せず、水素濃度が低
いので、実施例よりも反射率が低くなったことが推察さ
れる。
【0075】(比較例3)まず、ゲルマニウム添加コア
を有する光ファイバを、水素圧力200気圧の雰囲気の
圧力容器内に設置して、内部温度30℃の雰囲気下で2
週間の水素添加処理を施した。
【0076】次に、図3に示すような位相格子を組合わ
せたエキシマレーザで回折格子を書き込んだ。
【0077】こうして得られたファイバ型回折格子を、
図5に示すシステムで反射率を測定したところ、略98
%の反射率であった。
【0078】すなわち、雰囲気温度が30℃、水素圧力
が200気圧の雰囲気下では、光導波路内の水素濃度が
飽和するには、略2週間を要することが確認される。
【0079】本発明は上記の実施形態に限定されるもの
でなく、変形が可能である。例えば、上記の実施形態で
は、光ファイバに水素添加処理を施し、この光ファイバ
の所定領域に格子を形成しているが、光ファイバ以外の
光導波路として薄膜導波路を用いても良い。コア部が下
部クラッド層および上部クラッド層により被覆されてい
る薄膜導波路は、下部クラッド層の上にコア部が形成さ
れた後、上部クラッド層を積層する前に、水素添加処理
を施すと良い。この後、紫外光照射を行ってコア部の所
定領域に格子を形成してから上部クラッド層を積層すれ
ば、薄膜導波路型の回折格子が得られる。
【0080】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明の
導波路型回折格子の製造方法によれば、光導波路のコア
部の添加にあたって、当初は比較的高温の雰囲気下で水
素を迅速に添加し、最終的には低温雰囲気下で充分な濃
度の水素を添加することとしたので、水素添加工程の時
間を短縮することができ、反射率の高い光ケーブル型回
折格子を容易に、生産性良く迅速に製造することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の導波路型回折格子の製造方
法における水素添加工程の説明図である。
【図2】本発明の実施形態の導波路型回折格子の製造方
法における回折格子書き込み工程(ホログラフィック
法)の説明図である。
【図3】本発明の実施形態の導波路型回折格子の製造方
法における回折格子書き込み工程(位相格子法)の説明
図である。
【図4】導波路型回折格子における反射率測定を行うシ
ステムを示す構成図である。
【符号の説明】
10…光ファイバ、11…クラッド部、12…コア部、
13…回折格子、20…圧力容器、21,22…バル
ブ、23…温度調節器、30,70…光源、40…干渉
機構、41…ビームスプリッタ、42,43…ミラー、
50…干渉空間、60…位相格子、80…光カプラ、9
0…光スペクトルアナライザ、100…マッチングオイ
ル。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 初期の雰囲気温度よりも最終の雰囲気温
    度を低くするとともに、1回以上の温度変化で前記初期
    の雰囲気温度から前記最終の雰囲気温度に変化させなが
    ら、光導波路のコア部に水素を添加する処理を行う第1
    の工程と、 前記光導波路の前記コア部の所定領域に紫外光を照射
    し、屈折率を変化させる第2の工程と、 を備えることを特徴とする導波路型回折格子の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 前記第1の工程の温度変化は降温変化で
    ある、ことを特徴とする請求項1記載の導波路型回折格
    子の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記第1の工程の初期処理温度は60℃
    以上、かつ、200℃以下であり、前記第1の工程の最
    終処理温度は60℃以下である、ことを特徴とする請求
    項1記載の導波路型回折格子の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記第1の工程における前記光導波路へ
    の水素の添加の処理は、水素圧力が20気圧以上、か
    つ、400気圧以下で行われる、ことを特徴とする請求
    項1記載の導波路型回折格子の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN112225471A (zh) * 2020-10-20 2021-01-15 武汉锐科光纤激光技术股份有限公司 一种光纤载氢方法及系统

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