JPH09204056A - 電子写真感光体 - Google Patents

電子写真感光体

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JPH09204056A
JPH09204056A JP13372796A JP13372796A JPH09204056A JP H09204056 A JPH09204056 A JP H09204056A JP 13372796 A JP13372796 A JP 13372796A JP 13372796 A JP13372796 A JP 13372796A JP H09204056 A JPH09204056 A JP H09204056A
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秀明 福永
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正光 笹原
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 感光体の加熱を必要とせずに、耐刷後の高温
高湿環境下における画像流れの発生を防止できるととも
に、長期にわたって良好な画像が得られる電子写真感光
体を提供する。 【解決手段】 導電性基板1上に光導電層2とa−Si
C:Hから成る表面層3とが順次積層された電子写真感
光体において、表面層3を、その元素比率を組成式a−
Si1-x x :Hと表したときにx値が0.95≦x<1.00
であって、かつ自由表面の動的押し込み硬さが45〜2
20kgf/mm2 である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は導電性基板上に光導
電層と水素化アモルファスシリコンカーバイドから成る
表面層とを積層した電子写真感光体に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】電子写真方式の複写機やプリンタなどの
画像形成装置に搭載される電子写真感光体には、電子写
真特性、すなわち帯電能・光感度・残留電位などの電位
特性および画像濃度・解像度・コントラスト・階調性な
どの画像特性が良好であるとともに、それらの安定性な
らびに耐磨耗性・耐刷性・耐環境性・耐薬品性などの耐
久性に優れていることが求められる。そのような優れた
特性を実現するためには、光導電層上に被覆形成される
表面層が大きな役割を果している。
【0003】この表面層には、従来から種々の材料およ
び層構成が提案されており、アモルファスシリコン系材
料、就中、カーボン(C)を含有させたアモルファスシ
リコンカーバイド(以下、アモルファスシリコンカーバ
イドをa−SiCと略記する)を用いた表面層が、優れ
た電気的特性・光学的特性・画像特性・高硬度に基づく
耐久性などを有している点で注目されている。さらにa
−SiC表面層とアモルファスシリコン系光導電層(以
下、アモルファスシリコンをa−Siと略記する)と組
み合わせた電子写真感光体が、すでに実用化されてい
る。
【0004】かかるa−SiC表面層として、その層の
硬度やC量を明記したものが提案され、以下、それらを
詳述する。特開昭62-272275 号によれば、a−Si系光
導電層に対して表面層を被覆し、そして、この表面層が
シリコン(Si)とCとを主体とし、さらに酸素(O)
・水素(H)およびふっ素(F)を含むアモルファス材
料から成り、その動的押し込み硬さが300 〜1,000 kgf/
mm2 とした電子写真感光体が提案されている。この表面
層の材料はa−Si1-x x (H,F,O)(0<x<
1)で表されるが、表面層の動的押し込み硬さが1,000
kgf/mm2 以上になると、表面層中のSi含有率が高くな
って、化学的影響を受けやすくなり、高湿中で画像不良
を発生しやすくなり、一方、300 kgf/mm2 以下になる
と、表面層中のC含有率が高くなって、光導電性が劣化
し、残留電位が大きくなり、さらに硬度がかなり小さく
なるために画像複写プロセスによる表面層の磨耗が大き
くなって、画像不良が発生しやすくなる。そこで、表面
層の動的押し込み硬さを上記の範囲に限定することによ
り、高湿雰囲気中においても画像不良などがない耐湿性
・耐刷性に優れた電子写真感光体を得ることができると
いうものである。
【0005】特開昭63-81366号には、セレン(Se)を
含む感光層上に、少なくともSiおよびCを含むアモル
ファス(非晶質)材料で形成された保護層を設けた電子
写真感光体が提案されている。この保護層の材料には、
組成比を限定したa−Si1-x x (x= 0.4〜0.99)
が選択され、その硬度はヴィッカース硬度で 1,000〜3,
000 程度であり、膜厚は50Å〜 2μmである。そして、
上記構成のSe系電子写真感光体によって、耐久性およ
び耐候性に優れ、白スジ等のない鮮明なコピーが得ら
れ、取扱い等が容易になる。
【0006】また、特開昭60-135955 号には、a−Si
膜上に窒素(N)原子あるいはC原子を含むa−Si膜
からなる保護膜が形成され、この保護膜において、N原
子またはC原子の濃度が保護膜表面側で高くなる不均一
分布を有する構成が提案されている。そして、この構成
によって、a−Si膜と保護膜との界面にN原子または
C原子の添加による界面準位が形成されないので、残留
電位が形成されなくなり、その結果、高感度の感光体膜
が得られる。
【0007】さらにまた、特開昭60-169854 号には、支
持体上にa−Siを主成分とする光導電層と、a−Si
と結合することによって絶縁物を形成する物質(N,
C,O)が含有された表面層とが順次積層され、その物
質の含有率が支持体側で小となり、表面側で大となるよ
うな静電潜像担持体が提案されている。しかも、その絶
縁物質の含有率は支持体側で0.01〜30原子%に、表面側
で1〜90原子%にするとよく、さらに表面層の厚さは0.
01〜 2μm程度である。そして、かかる表面層によれ
ば、光感度を低下させないで表面電荷の保持能力を向上
させ、表面の機械的強度も向上させる。
【0008】つぎに、特開昭61-130951 号には、支持体
上にa−Siからなるブロッキング層・光導電性層およ
び表面被覆層を順次積層し、そして、表面被覆層はCと
Nを含み、その濃度が光導電性層側から他方側に向かっ
て連続的に変化するようにした光導電部材が提案されて
いる。このような表面被覆層は、自由表面側でのCとN
の含有量が10〜40原子%程度に成膜され、これによって
光導電性層との界面で層間剥離が発生せず、干渉効果に
よる画像の濃度ムラの発生を防止でき、鮮明な画像が得
られる。
【0009】さらに特開昭62-258466 号には、支持体上
に感光層と表面層を有し、表面層がSi原子を母体にし
てC原子を含み、そのC原子が感光層との界面に始端し
て自由表面側に向けて濃度が増大するように濃度分布し
た光受容部材が提案されている。しかも、その表面層
は、C原子の層方向における分布濃度は最小値0.5 原子
%、最大値95原子%の範囲であり、層厚は 0.003〜30μ
mがよく、これにより、耐湿性・連続繰り返し使用特性
・使用環境特性・耐久性等を向上させ、濃度が高く、解
像度の高い高品質の画像を安定して繰り返し得ることが
できる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記各
号公報に提案された電子写真感光体においては、a−S
iC系表面層を備えているにしても、電子写真方式の画
像形成装置に搭載して、とくに高湿環境下で耐刷を行な
った場合には、画像流れと呼ばれる画像不良が生じると
いう問題点があった。
【0011】この画像流れは、コロナ放電により生成さ
れる硝酸イオンやアンモニウムイオン等の放電生成物が
表面層に吸着され、それらが高湿環境下で大気中の水分
を吸収したり、あるいは表面層の表面に位置するSi原
子がコロナ放電により酸化されることで、その表面の親
水性が高くなって吸湿性が高くなる、などして、表面層
の電気抵抗が低下し、これによって表面層上に形成され
た静電潜像の電荷が表面方向に移動して静電潜像のパタ
ーンが維持されなくなって引き起こされる。
【0012】かかる画像流れの発生を防止するために、
ヒーターを用いて感光体を加熱して、表面層に吸着され
た水分を飛散させる技術が提案され、すでに実用化され
ている。
【0013】しかしながら、その反面、感光体の帯電能
が低下したり、感光体表面にトナーが固着したり、画像
形成装置の消費電力が増加したり、さらには装置自体の
設計が複雑になるなどの問題点があった。
【0014】そこで、近年、電子写真特性や耐久性など
に優れ、しかも、感光体加熱を行なわなくとも画像流れ
が発生しない電子写真感光体が求められていた。
【0015】したがって、本発明は上記事情に鑑みて完
成されたものであり、その目的は高湿環境下で耐刷を行
なっても画像流れが生じないようにした電子写真感光体
を提供することにある。
【0016】本発明の他の目的は、感光体加熱を不要と
して、低コストを達成した電子写真感光体を提供するこ
とにある。
【0017】本発明のさらに他の目的は、30万回以上
の耐刷ができる長寿命かつ長期信頼性の電子写真感光体
を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明の電子写真感光体
は、導電性基板上に光導電層と水素化アモルファスシリ
コンカーバイド(以下、水素化アモルファスシリコンカ
ーバイドをa−SiC:Hと略記する)から成る表面層
とが順次積層され、さらに表面層の元素比率を組成式a
−Si1-x x :Hと表したときにx値が0.95≦x
<1.00であって、その自由表面の動的押し込み硬さ
が45〜220kgf/mm2 であることを特徴とす
る。
【0019】また本発明の他の電子写真感光体は、上記
構成の本発明の電子写真感光体において、表面層の動的
押し込み硬さを、光導電層との界面側から自由表面側に
向かって漸次小さくしたことを特徴とする。
【0020】さらにまた本発明の他の電子写真感光体
は、導電性基板上に光導電層と表面層とが順次積層さ
れ、この表面層が光導電層側に配された第1層領域と、
自由表面側に配されたa−SiC:Hから成る厚み70
0〜4,000Åの第2層領域とから成り、この第2層
領域の元素比率を組成式a−Si1-x x :Hと表した
ときにx値が0.95≦x<1.00であり、かつその
動的押し込み硬さが45〜220kgf/mm2 である
ことを特徴とする。
【0021】また、本発明の電子写真感光体は、上記構
成による各発明において、表面層の初期状態の十点平均
粗さが2,000Å以下であることを特徴とする。
【0022】
【発明の実施の形態】本発明の電子写真感光体(i) の典
型的な層構成を図1に示す。同図において1は導電性基
板、2は光導電層、3は表面層である。
【0023】本発明によれば、表面層3をa−SiC:
Hにより構成し、その元素比率を組成式a−Si1-x
x :Hと表したときにx値を0.95≦x<1.00、
好適には0.96≦x<0.98にして、さらに自由表
面の動的押し込み硬さを45〜220kgf/mm2
している。
【0024】x値を0.95以上にすることで、硬度が
小さくなって表面が削れやすくなり、常にフレッシュな
面があらわれ、x値を1未満にすることで動的押し込み
硬さが45kgf/mm2 以上にすることが容易とな
り、さらに電気特性の低下が防止できる。
【0025】また、自由表面の動的押し込み硬さを45
〜220kgf/mm2 、好適には50〜200kgf
/mm2 、最適には60〜150kgf/mm2 にして
いる。そして、従来のa−SiC:H表面層と比べて、
その硬度を動的押し込み硬さで220kgf/mm2
下にしているので、複写プロセス毎にクリーニング手段
などにより表面を適度に研磨して、表面層の表面に吸着
した放電生成物などの除去がおこなわれ、他方、その硬
度を動的押し込み硬さで45kgf/mm2 以上として
いることにより、複写プロセス毎の研磨による削れ量が
大きくなり過ぎることがなく、従来のa−SiC:H表
面層に比べてその寿命が極端に短くなるようなことはな
い。
【0026】ちなみに、従来のa−SiC:H表面層の
動的押し込み硬さは350〜600kgf/mm2 程度
であり、このような範囲にすることで耐久性を向上さ
せ、ブレード等に傷が付かないようにしていた。
【0027】上記動的押し込み硬さは、膜厚が10μm
以下の薄膜の硬度を評価するために有効な硬度評価法で
あり、薄膜の表面に三角錐形状の圧子でもって試験荷重
を加え、その際の圧子の押し込み深さを測定し、さらに
算出して求められる硬さである。本発明では島津製作所
製の超微小硬度計DUH−201 を用いた。
【0028】前記導電性基板1には、アルミニウム(A
l)あるいはSUS・Zn・Cu・Fe・Ti・Ni・
Cr・Ta・Sn・Au・Agなどの金属材料やそれら
の合金材料などの導電部材、もしくは樹脂やガラス・セ
ラミックスなどの表面に上記金属やITO・SnO2
どの透明導電性材料による導電性膜を蒸着などにより形
成して導電処理したものが用いられる。就中、Al合金
材料を用いると、低コストとなり、しかも、軽量化で
き、その上、光導電層2や後述するキャリア注入阻止層
にa−Si系材料を用いた場合にそれらの層との密着性
が高くなって信頼性が向上するという点で好適である。
【0029】前記光導電層2には、a−Si系もしくは
a−SeやSe−Te・As2 Se3 などのa−Se
系、あるいはZnO・CdS・CdSeなどのII−VI族
化合物、さらに、これらを粒子化し、それを樹脂に分散
させたもの、そして、OPC系などの感光体材料も用い
ることができる。就中、a−Siもしくはa−SiにC
・N・Oなどを加えた合金のa−Si系材料を用いる
と、高い光感度特性・高速応答性・繰り返し安定性・耐
熱性・耐久性などの優れた電子写真特性が安定して得ら
れ、さらにa−SiC:H表面層3との整合性に優れる
という点で好ましい。
【0030】かかるa−Si系材料には、a−Si・a
−SiC・a−SiN・a−SiO・a−SiGe・a
−SiCN・a−SiNO・a−SiCO・a−SiC
NOなどが挙げられる。これらは、例えばグロ−放電分
解法・各種スパッタリング法・各種蒸着法・ECR法・
光CVD法・触媒CVD法・反応性蒸着法などにより成
膜形成し、その成膜形成に当たってダングリングボンド
終端用に水素(H)やハロゲン元素(F・Cl)を膜中
に1〜40原子%含有させる。また、各層の暗導電率や
光導電率などの電気的特性および光学的バンドギャップ
などについて所望の特性を得るために、周期律表第IIIa
族元素(以下、IIIa族元素と略す)や第Va 族元素(以
下、Va 族元素と略す)を含有させたり、C・N・O等
の元素の含有量を調整して上記諸特性を調整する。
【0031】上記IIIa族元素およびVa 族元素として、
それぞれホウ素(B)およびリン(P)が共有結合性に
優れて半導体特性を敏感に変え得る点で、その上優れた
光感度が得られるという点で望ましい。そして、C・N
・O等の元素とともに含有させる場合、IIIa族元素は
0.1〜20,000 ppmがよく、Va 族元素は 0.1〜10,000 pp
mがよく、また、C・N・O等の元素を含有させない
か、または微量含有させる場合は、IIIa族元素は0.01〜
200 ppm 、Va 族元素は0.01〜100 ppm 含有させるのが
よい。これらの元素は層厚方向にわたって勾配を設けて
もよく、その場合には層全体の平均含有量が上記範囲内
であればよい。
【0032】また、a−Si系材料には、微結晶シリコ
ン(μc−Si)を含んでもよく、このμc−Siを含
んだ場合には、暗/光導電率を高めることができるの
で、光導電層2の設計自由度が増すという利点がある。
このようなμc−Siは、上記と同様の形成法を採用
し、その成膜条件を変えることによって形成することが
できる。例えばグロ−放電分解法では、基板温度および
高周波電力を高めに設定し、希釈ガスとしての水素流量
を増すことによって形成できる。また、μc−Siを含
む場合にも上記と同様の不純物元素を添加させてもよ
い。
【0033】上記光導電層2の厚みは使用する光導電性
材料および所望の電子写真特性により適宜設定するが、
a−Si系材料を用いた場合には、通常 5〜100 μm、
好適には15〜80μmとする。
【0034】かくして、上記構成の電子写真感光体 (i)
によれば、その表面層3をa−SiC:Hにより構成
し、その元素比率を組成式a−Si1-x x :Hでx値
が0.95≦x<1.00であり、自由表面の動的押し
込み硬さを45〜220kgf/mm2 にしたことで、
それ自体の耐久性を維持しつつ、表面層の表面に吸着し
た種々の付着物あるいは表面の酸化変質した部分が除去
され、常にフレッシュな表面を確保でき、その結果、電
子写真感光体Aに対する加熱を必要とせずに、高湿環境
下における画像流れを防止することができる。
【0035】以上のような構成の電子写真感光体 (i)に
おいて、さらに表面層3のH含有量については 1〜70原
子%程度が好ましいが、この範囲内でH含有量が少なく
なるとSi−H結合が少なくなり、表面層3の表面に生
じた酸化Si、すなわち親水性の高いSiOの生成を抑
えることができて、表面層3の耐オゾン性が向上し、画
像流れの発生に対する防止効果をより高めることができ
る点で好ましい。本発明者の知見によれば、このH含有
量を約18原子%以下とすると、より良好な結果が得られ
る傾向があった。
【0036】このようなa−SiC:H表面層3を成膜
形成するには、前記a−Si系光導電層にて採用された
方法で同様におこなうことができるが、特に表面層3の
硬度については、その組成によって一義的に決まるもの
ではないため、その作製条件を適切に設定することが重
要である。
【0037】例えば原料ガスとしてシランガス(SiH
4 )などのSi含有ガスと、メタンガス(CH4 )など
のC含有ガスとを用いてグロー放電分解法により作製す
る場合であれば、Si含有ガスに対するC含有ガスの比
率を大きくするか、あるいは成膜形成時のガス圧力を高
くすると、硬度が小さくなる傾向にある。また、原料ガ
スの水素ガスによる希釈率を大きくする、放電電力を大
きくする、あるいは基板温度を高くすると、硬度が大き
くなる傾向にある。
【0038】本発明者がSiH4 ガスとCH4 ガスとを
用いてグロー放電分解法により種々の実験を行なった結
果、CH4 /SiH4 ガス比を95%以上に、H2 ガスに
よる希釈率を 0〜50%に、成膜形成時のガス圧力を0.25
〜0.50 Torr 程度に、13.56MHz または13.56 MHz を1
kHzでパルス変調した高周波電力を感光体1本当たり100
〜250 W程度に印加し、さらに基板温度を 220〜300 ℃
程度にすると、上記表面層3に好適なa−SiC:H層
が得られることを見出した。
【0039】そして、上記のようにSiH4 ガスとCH
4 ガスに限定されるものではないが、グロー放電分解法
により表面層3を成膜形成するに際して、パルス変調し
た高周波電力を用いると、放電成膜領域に存在する原料
ガスとして、常に新鮮なガス(未反応ガス)が十分に供
給され、そのような未反応ガスが分解され、成膜反応に
供されるために、表面層3の成膜速度が速くなるととも
に、所望の電子写真特性を維持しつつ表面層3のH含有
量を低減させることができ、その結果、上述のように表
面層3のSi−H結合が少なくなって画像流れ発生の防
止効果をより高めることができることを知見した。
【0040】なお、このような高周波電力のパルス変調
の条件は、上記に限定されるものではなく、本発明者の
知見によれば、高周波電力の周波数を 1MHz〜50MH
zで、パルス変調の変調周期を50Hz〜100 kHzの範
囲内で、成膜装置・成膜条件および所望の表面層特性に
応じて適宜設定する。
【0041】また、上記表面層3の厚みは、0.4 〜1.2
μm、好適には 0.5〜0.8 μmにするのがよい。この厚
みが0.4 μm未満の場合には、耐久性が不十分となり、
耐刷枚数の増加に伴い画像にスジ等の画像不良が発生す
る傾向があり、1.2 μmを超える場合は残留電位が高く
なり、画像のカブリ等が発生する傾向がある。
【0042】さらにまた、光導電層2と表面層3との間
には、a−SiC:HのC含有量を表面層3のC含有量
よりも少なくした遷移層を設けてもよく、さらにC含有
量をその層内で変化させ、含有量の勾配を設けてもよ
い。このような遷移層を設けることで、光導電層2で生
成された光キャリアの走行がスムーズになって、光感度
が高くなり、残留電位が低くなり、さらに画像特性も良
好となる。この遷移層の厚みは 1μm以下、好適には0.
05〜0.5 μm程度がよい。
【0043】次に本発明の他の電子写真感光体(ii)を図
2で示す。なお、図1の電子写真感光体(i) と同一の層
には同一符号を付す。
【0044】この電子写真感光体(ii)によれば、電子写
真感光体(i) と比べ、導電性基板1と光導電層2との間
にキャリア注入阻止層4を設け、同様にさらに光導電層
2上にa−SiC:H表面層3を形成している。
【0045】上記キャリア注入阻止層4は光導電層2の
材料に応じて種々のものを用いることができるが、光導
電層2にa−Si系材料を用いた場合であれば、キャリ
ア注入阻止層4にもa−Si系の材料を使用すると、導
電性基板1と光導電層2との密着性に優れるとともに良
好な電子写真特性が得られる。
【0046】a−Si系のキャリア注入阻止層4を設け
る場合は、a−Si系光導電層2と比べて、より多くの
IIIa族元素やVa 族元素を含有させて導電型を調整した
り、多くのC・N・Oを含有させて高抵抗化するとよ
い。
【0047】上記構成の電子写真感光体(ii)以外の電子
写真感光体として、キャリア注入阻止層4に代えて、長
波長光による露光光が導電性基板1の表面で反射し、こ
れによって記録画像に干渉縞が発生するのを防止するた
めに、長波長光吸収層を設けてもよい。あるいは、光導
電層2と表面層3との間もしくは光導電層2と遷移層と
の間に、光感度を高めるためのキャリア励起層をさらに
設けてもよい。
【0048】さらに上記電子写真感光体(i)(ii) 以外の
電子写真感光体として、前記表面層3に代えて、a−S
iC:H表面層の硬度を光導電層2との界面側から自由
表面側に向かって漸次小さくして、その他の層構成を同
じにしてもよい。
【0049】すなわち、a−SiC:H表面層3の硬度
を光導電層2との界面側から自由表面側に向かって漸次
小となるように変化させた場合には、そのような電子写
真感光体を使用し始めた初期の段階において、表面層3
の表面に存在する微細な凹凸状の凹部に入り込んだ放電
生成物を、その凹凸を平坦化することで除去することが
でき、そして、耐刷を行なうにしたがって、その凸部が
徐々に削れて凹凸自体が小さくなり、これによって表面
に吸着した放電生成物が除去されやすくなり、これに伴
って表面層の硬度を大きくなり、そのために研磨による
削れ量が小さくなり、表面への傷付きを防止することが
できる。また、優れた電子写真特性を長期にわたって保
持することができる。
【0050】このように硬度を変化させるには、例えば
グロー放電分解法によって成膜形成する場合、表面層3
の光導電層2との界面側から自由表面側に向かって、原
料ガスにおけるSi含有ガスに対するC含有ガスの比率
を漸次大きくしてC含有量を増加させる、あるいは成膜
形成時のガス圧力を漸次高くする、原料ガスの水素ガス
による希釈率を漸次小さくする、放電電力を漸次小さく
する、基板温度を漸次低くする、あるいはこれらの条件
を組み合わせるといった種々の手段を採用すればよい。
【0051】かくして、かかる構成によって、使用初期
に発生する画像流れをより効果的に防止できるととも
に、長期間使用しても画像流れや画像スジが発生しない
高信頼性かつ長寿命の高画質な電子写真感光体となる。
【0052】次に、本発明の他の電子写真感光体(iii)
(iv) を図3と図4によって説明する。なお、これらの
図において、図1および図2と同一の層には同じ符号を
付してある。
【0053】電子写真感光体(iii)(iv) においては、a
−SiC:Hにより構成した表面層5が光導電層2側に
配された第1層領域6と、自由表面側に配された第2層
領域7とから成る。この第2層領域7の厚みは700〜
4,000Å、好適には800〜3,000Å、最適に
は1,000〜2,000Åの第2層領域7にする。こ
のような範囲にすると、それ自体が全部削れることもな
いので、画像流れが発生しなくなり、また、厚すぎるこ
ともないので、光透過性の劣化もなく、残留電位が生じ
ることもない。
【0054】そして、第2層領域7については、前記表
面層3と同じく、組成式をa−Si1-x x :Hと表し
たときにx値が0.95≦x<1.00であり、自由表
面の動的押し込み硬さを45〜220kgf/mm2
している。
【0055】このような構成にしたことで、従来のa−
SiC:H表面層と比べて、その硬度を動的押し込み硬
さで220kgf/mm2 より越えているので、複写プ
ロセス毎にクリーニング手段などにより表面を適度に研
磨して、表面層の表面に吸着した放電生成物などの除去
がおこなわれ、他方、その硬度を動的押し込み硬さで4
5kgf/mm2 未満としていることにより、複写プロ
セス毎の研磨による削れ量が大きくなり過ぎることがな
く、従来のa−SiC:H表面層に比べてその寿命が極
端に短くなるようなことはない。
【0056】第2層領域7の厚みについては、700〜
4,000Å(0.07〜0.3μm)としたことによ
って優れた耐久性を確保し、さらに残留電位の増加を抑
えることができ、その結果、優れた電子写真特性が得ら
れる。第2層領域7の厚みが700Å未満の場合は、耐
電圧性や耐久性が不十分となり、磨耗により画像形成装
置の寿命に比べて感光体の寿命が短くなる傾向もある。
一方、第2層領域7の厚みが4,000Åを超える場合
は、残留電位が高くなる。
【0057】前記第1層領域6は、a−SiC材料以外
に、種々の材料を用いることができる。例えばa−Si
系として、アモルファスシリコンナイトライド(a−S
iN)・アモルファスシリコンオキサイド(a−Si
O)・アモルファスシリコンオキシカーバイド(a−S
iCO)・アモルファスシリコンオキシナイトライド
(a−SiNO)などの高抵抗材料を用いてもよい。こ
れら各層はa−Si系光導電層3などと同様の薄膜形成
手段により成膜し、その成膜形成に当たっては、ダング
リングボンド終端用もしくは硬度調整用としてHやハロ
ゲン(F・Cl)を膜中に1〜160 原子%含有させると
よい。
【0058】第1層領域6をa−SiC:Hにより成膜
形成した場合には、C量を第2層領域7に比べて少なく
含有させ、組成式a−Si1-x x :Hと表したときに
x値が 0.3<x<0.95、好適には 0.6<x<0.95の範囲
とするのが、この層領域の高硬度特性および光学的特性
の適正化といった点で好ましい。また、これらの材料に
電気的特性の調整用としてIIIa族元素やVa 族元素を含
有させてもよい。
【0059】第1層領域6に用いられる他の材料として
は、耐磨耗性に優れた高抵抗の酸化防止膜であるTa2
5 やSi3 4 ・SiC・BN・Al2 3 ・Cr2
3などがあり、これら各材料の層をRFスパッタリン
グ法・DCスパッタリング法・反応性スパッタリング法
・RFマグネトロンスパッタリング法・DCマグネトロ
ンスパッタリング法などで形成することで、優れた密着
性と緻密さを示す。
【0060】また、第1層領域6を樹脂系の材料より形
成する場合には、その樹脂系材料として、PTFE(ポ
リテトラフルオロエチレン)やPOM(ポリアセター
ル)・スチレン系・オレフィン系・ポリアミド系などの
摺動性樹脂あるいはこれらの混合樹脂などがある。ある
いは、ポリイミドやポリエチレンテレフタレート・ポリ
プロピレン・メタクリル・ポリエチレン・ポリエステル
・ナイロン・アセタール・フッ素樹脂・ABS樹脂・ポ
リエストラマ・ポリカーボネート・ポリメチルペンテン
・ポリスチレン・AAS樹脂などでもよい。
【0061】第1層領域6の厚みは 4,000〜10,000Å
( 0.4〜1.0 μm)、好適には 5,000〜8,000 Åとする
とよく、 4,000Å未満の厚みである場合には、耐久性が
不十分となり、耐刷枚数の増加に伴い画像にスジ等の不
良が発生する傾向があり、他方、10,000Åを超えると残
留電位が高くなり、画像のカブリ等の不良が発生する傾
向がある。したがって、第1層領域6の厚みを上記範囲
にすることで高寿命および高耐久性を維持することがで
き、高信頼性の電子写真感光体となる。
【0062】かくして上記構成の電子写真感光体(iii)
(iv) によれば、表面層5の第2層領域7の表面に吸着
した種々の付着物を除去することができて、常にフレッ
シュな表面を確保できるとともに、耐久性を確保し、さ
らに残留電位の増加を抑えることができ、その結果、感
光体に対する加熱を不要とし、高湿環境下における画像
流れを防止できた。
【0063】また、上述した各電子写真感光体(i)(ii)
(iii)(iv) について、さらに表面層3、7の初期状態の
十点平均粗さを2,000Å以下にすると、長期間にわ
たって耐刷を繰り返しても、画像流れが発生しなくなる
ことを知見した。
【0064】すなわち、表面層3、7には初期状態で凹
凸があり、そして、耐刷にともなう表面研磨によって凹
凸状態が小さくなるが、その半面、表面酸化の進行速度
が遅くなる傾向にあり、そこで、表面層3、7の初期状
態の十点平均粗さが2,000Åを越えると、そのよう
な表面酸化の進行速度が比較的はやくなって、画像流れ
が発生することを確かめた。
【0065】そして、表面層3、7の初期状態の十点平
均粗さを2,000Å以下に、好適には1,800Å以
下にすると、30万回以上の耐刷をおこなっても、画像
流れが発生しなくなり、さらに30万回の耐刷時におい
て、十点平均粗さを200Å以下にすると、それまでの
耐刷で画像流れが生じないことも知見した。
【0066】
【実施例】以下、本発明の電子写真感光体の具体例を述
べる。ただし、本発明は以下の実施例に何ら限定される
ものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々
の変更や改良などは何ら差し支えない。
【0067】〔例1〕導電性基板1として、アルミニウ
ム合金から成る外径30mm、長さ 254mmの引き抜き管
の外周面を鏡面加工して洗浄したものを用意し、これを
グロー放電分解成膜装置にセットして、表1に示す成膜
条件によりキャリア注入阻止層4、光導電層2および表
面層3を順次積層し、図2の電子写真感光体(ii)として
の電子写真感光体A(以下、感光体Aと称する)を作製
した。
【0068】
【表1】
【0069】また、比較例として表2に示す成膜条件に
よりキャリア注入阻止層4と光導電層2を順次積層し、
さらにa−SiC:H表面層を積層して、電子写真感光
体B(以下、感光体Bと称する)を作製した。
【0070】
【表2】
【0071】上記感光体AおよびBの表面層について、
光導電層2との界面および自由表面のそれぞれ一部を5
mm角に切り出して、各組成をXPS分析(X線光電子
分光分析)により求め、さらに各感光体A・Bの表面層
について、自由表面と光導電層2との界面における動的
押し込み硬さを、超微小硬度計(島津製作所製DUH−
201 )を用いて測定したところ、表3に示す結果が得ら
れた。
【0072】
【表3】
【0073】かくして得られた各感光体A、Bを、それ
ぞれ電子写真プリンタ(京セラ製FS−1550)に搭載し
て30万枚の耐刷実験を行い、そして、耐刷途中の各段
階で画像評価を行なって、画像流れと画像劣化の発生状
況を、さらに表面層の削れ量も併せて評価/測定したと
ころ、表4に示すような結果が得られた。なお、感光体
A、Bのような小型のものでは、30万枚の寿命を有し
ていることで、実用上十分な耐久性が得られる。
【0074】画像流れの評価については、まず、電子写
真プリンタから感光体を加熱するためのヒーターを取り
除き、そして、この電子写真プリンタを、感光体A、B
に対する耐刷途中の各段階において高温高湿環境下(32
℃、85%RH)に8時間放置し、その後に画像形成を行
なって、画像流れの発生状況について評価した。さら
に、画像キズの発生などの画像劣化についても評価し
た。
【0075】これら画像流れや画像劣化が認められない
場合を○印で、わずかに発生が認められた場合を△印
で、実用上支障がある程度に発生が認められた場合を×
印で表した。
【0076】
【表4】
【0077】以上の結果から明らかな通り、本発明の感
光体Aによれば、画像流れや画像劣化が認められず、常
に良好な画像品質の記録画像が得られた。また、画像濃
度の低下やかぶりの発生・コントラストの低下・解像度
の低下などの問題もなかった。
【0078】しかるに感光体Bでは、5,000 枚程度の耐
刷で画像流れが認められ、さらに耐刷を進めると画像流
れが発生して、実用上支障がある。
【0079】また、本発明の感光体Aについては、表面
層3の削れ量が30万枚の耐刷で 1,380Åであって、感
光体Bの 880Åと比べてやや大きくなっているが、画像
特性および電子写真特性の双方において何ら劣化は認め
られず、本発明によって、十分な耐久性が得られたこと
がわかる。
【0080】しかも、感光体Aの表面層の削れ量は、表
面層全体の厚みの約16%程度であり、その削れ量は徐々
に小さくなっているため、さらに耐刷を行なっても特に
問題とならず、それ故に感光体Aは十分な耐久性を有し
ていると言える。
【0081】さらにまた、感光体Aの表面層を成膜する
に当たって、高周波電力を1kHzでパルス変調して印
加し、その他は同じ条件にして感光体A’を作製した。
この感光体A’の表面層の自由表面側の成膜速度は 0.2
μm/時となり、さらに表面層の自由表面側のH含有量
をフーリエ変換赤外分光光度計(ニコレー製5ZDX)
を用いて測定したところ、15.0原子%であった。また、
感光体Bの表面層の自由表面側のH含有量は74.0原子%
であった。
【0082】かくして得られた感光体A’についても同
様の評価を行なったところ、感光体Aと同じ良好な結果
が得られ、いずれの感光体A、A’についても、高湿環
境下における画像流れを感光体の加熱を必要とせずに防
止でき、しかも、優れた耐久性もあることが確認でき
た。
【0083】〔例2〕〔例1〕と同様にして、アルミニ
ウム合金から成る外径30mm、長さ254 mmの導電性基
板1上に、表5に示す成膜条件によりキャリア注入阻止
層4および光導電層2ならびに第1層領域6と第2層領
域7とから成るa−SiC:H表面層5とを順次積層し
て、図4の電子写真感光体(iv)としての電子写真感光体
C(以下、感光体Cと称する)を作製した。
【0084】
【表5】
【0085】また、比較例として表6に示す成膜条件に
よりキャリア注入阻止層4および光導電層2を順次積層
し、さらにa−SiC:H表面層を積層して、電子写真
感光体D(以下、感光体Dと称する)を作製した。
【0086】
【表6】
【0087】感光体Cの表面層5の第1層領域6および
第2層領域7、ならびに感光体Dの表面層の各組成を、
〔例1〕と同様にして求めてx値を算出し、また、自由
表面における動的押し込み硬さを測定したところ、表7
に示す結果が得られた。
【0088】
【表7】
【0089】そして、感光体C、Dについて、〔例1〕
と同様にして画像流れ、画像劣化および削れ量を調べた
ところ、表8に示す結果が得られた。
【0090】
【表8】
【0091】以上の結果より、本発明の感光体Cによれ
ば、画像流れや画像劣化が認められず、常に良好な画像
品質の記録画像が得られたことがわかる。また、画像濃
度の低下やかぶりの発生・コントラストの低下・解像度
の低下などの問題もなかった。他方の感光体Dでは、5,
000 枚程度の耐刷で画像流れの発生が認められ、さらに
耐刷を進めると実用上支障がある程度に画像流れが発生
したことがわかる。
【0092】また、本発明の感光体Cにおいて、表面層
5の第2層領域7の削れ量は30万枚の耐刷で 1,650Å
であり、比較例の感光体Dの 880Åと比べてやや大きく
なったが、〔例1〕の感光体Aと同様に、画像特性なら
びに電子写真特性において何ら劣化は認められず、感光
体Cは十分な耐久性を有している。
【0093】さらにまた、感光体Cの第2層領域7の下
には硬度の高い第1層領域6が存在し、しかも、第2層
領域7の削れ量は徐々に小さくなっているために、感光
体Cをさらに耐刷しても特に問題とならない程度に十分
な耐久性を有していることもわかる。
【0094】かくして本発明の感光体Cにおいても、高
湿環境下における画像流れを感光体の加熱を必要とせず
に防止でき、優れた耐久性もあることがわかる。
【0095】〔例3〕〔例2〕と同様にして本発明の感
光体Cを作製するに当たって、第2層領域7の成膜時間
を変えて種々の厚みの第2層領域7を有する電子写真感
光体E〜Mを作製し、それらについて〔例1〕と同様に
画像流れ評価を行なった。しかも、次のようにして感光
体特性も評価したところ、表9に示す結果が得られた。
【0096】感光体特性の評価:電位特性検査機を使用
し、帯電能・光感度・残留電位を測定した。帯電能につ
いては、ドラム電流65μAを与えて帯電させたときの表
面電位が 300V以上のものを良好とし、光感度について
は、波長 660nmの露光により表面電位を 300Vから50
Vに下げるために必要な露光量が 0.3 lux・sec 以下の
ものを良好とし、また、残留電位については、波長 660
nm・露光量0.65 lux・sec の露光により表面電位が 3
00Vから15V以下に下がったものを良好とした。そし
て、全ての特性が良好であったものを○印とし、1つで
も不良となった場合には、×印とした。
【0097】
【表9】
【0098】表9の結果から明らかな通り、感光体J・
K・Lでは画像特性・感光体特性とも良好となってい
る。感光体Mについては第2層領域の厚みが厚いために
残留電位が高くなっている。
【0099】〔例4〕〔例2〕と同様に本発明の電子写
真感光体を作製するに当たって、第2層領域7の成膜条
件において、表10に示すようにH2 ガス流量を幾通り
にも変えて、ガス希釈を行なうとともに、RF電力を変
えて動的押し込み硬さの異なる感光体N〜Tを作製し、
各感光体N〜Tを〔例1〕と同様に画像流れおよび画像
劣化の評価をし、さらに第2層領域7におけるx値なら
びに1万枚耐刷時の削れ量も測定したところ、表10に
示すような結果が得られた。
【0100】
【表10】
【0101】表10に示したように、本発明の感光体P
〜Sでは、画像流れおよび画像劣化について良好な結果
が得られた。
【0102】また、耐刷1万枚当たり25Å未満の削れ量
のときには、放電生成物が除去しきれず、画像流れが発
生し、他方、 100Åを越える削れ量のときには、感光体
表面を削りすぎて、スジが発生していまうので、かかる
耐刷1万枚当たりの削れ量が25〜 100Åの範囲であれ
ば、良好な結果が得られる。そして、厚みについては、
マシン寿命より削れ量が25Åの感光体に場合には 750Å
の膜厚が、削れ量が 1,000Åの感光体に場合には 3,000
Åの膜厚が必要となるため、第2層領域7の厚みは 800
〜3,000 Åの範囲に設定している。
【0103】〔例5〕〔例1〕の感光体Aを作製するに
当たって、表面層3の自由表面側の成膜条件に対してH
2 ガス流量を幾通りにも変えて希釈を行なうとともに、
ガス圧力とRF電力を表11に示すように変えて、動的
押し込み硬さの異なる感光体イ〜ルを作製し、そして、
〔例1〕と同様に画像流れおよび画像劣化を評価し、さ
らに自由表面側におけるx値ならびに動的押し込み硬さ
を測定したところ、表11に示すような結果が得られ
た。
【0104】
【表11】
【0105】表11に示したように、本発明の感光体ハ
〜リでは、画像流れおよび画像劣化について良好な結果
が得られた。
【0106】〔例6〕〔例1〕の感光体Aを作製するに
当たって、表面層3の自由表面側の成膜条件に対してH
2 ガス流量を幾通りにも変えて希釈を行なうとともに、
ガス圧力・RF電力・温度(基板温度)を表12に示す
ように変え、さらにRF電力に対する1kHzでのパル
ス変調の有無も変えて、感光体ヲ〜ナを作製した。そし
て、同表には表面層中の水素(H)含有量の測定結果も
示す。
【0107】
【表12】
【0108】感光体ヲ〜ナについて、〔例1〕と同様に
して1万枚の耐刷実験を行なったときの画像流れおよび
画像劣化を評価し、各評価をそれぞれ5回行なったとこ
ろ、いずれの感光体も、画像流れおよび画像劣化の発生
は5回とも認められなかった。
【0109】つぎに、環境条件を35℃/90%RHとし、
その他の条件を上記と同様にして、画像流れおよび画像
劣化を評価し、各評価をそれぞれ5回行なったところ、
表13に示すような結果が得られた。同表において、
「/」の右欄の数値は評価回数5を表し、その左欄の数
値は発生回数を表す。
【0110】
【表13】
【0111】表13に示す結果から明らかな通り、RF
電力にパルス変調を行なった場合には表面層中のH含有
量が減る傾向にあり、これにともなって画像流れの評価
結果が良好になる。特にH含有量が約18原子%以下の感
光体レ・ツ・ナにおいては、極めて良好な結果が得られ
た。
【0112】〔例7〕次に〔例1〕の感光体A、Bにつ
いて、双方ともに表面層3の初期状態の十点平均粗さを
1,000Åにして、同様に30万枚の耐刷実験を行い、そ
して、耐刷途中の各段階で画像評価を行なって、画像流
れと画像劣化の発生状況を、さらに十点平均粗さRzも
併せて評価/測定したところ、表14に示すような結果
が得られた。
【0113】
【表14】
【0114】同表の結果から明らかな通り、本発明の感
光体Aによれば、表面層の硬さが小さいことから、耐刷
を繰り返すことで、平滑となっている。
【0115】また、〔例1〕の感光体Aについて、表面
層3の十点平均粗さRz(単位Å)を表15に示すよう
に幾通りにも変え、これによって感光体a〜gを作製
し、その初期の十点平均粗さによる画像流れの影響度を
測定したところ、同表に示す通りの結果が得られた。
【0116】なお、上記のように十点平均粗さRz(単
位Å)を変えるには、バイト形状(東京ダイヤモンド工
具製のミラクル、10R,5R)、バイトの送り速度、
切り込みスピードなどを調整しておこない。
【0117】
【表15】
【0118】同表の結果から明らかな通り、十点平均粗
さが 2,000Å以下である感光体a〜eによれば、30万
枚の耐刷でも画像流れが生じないことがわかる。
【0119】〔例8〕〔例1〕の感光体Aと同様に作製
した感光体h〜m(表面層3の十点平均粗さRz:1,00
0 〜2,500 Å)に対して、30万枚の耐刷をおこなっ
て、そのときの十点平均粗さRzを測定し、さらに画像
流れの評価も行ったところ、表16に示す通りの結果が
得られた。
【0120】
【表16】
【0121】この結果から明らかな通り、十点平均粗さ
が200 Å以下である感光体i〜kでは、30万枚の耐刷
でも画像流れが生じないことがわかる。
【0122】
【発明の効果】以上の通り、本発明によれば、所定の元
素比率ならびに動的押し込み硬さのa−SiC:Hから
成る表面層を形成したことによって、耐久性を維持しつ
つ表面層の表面に吸着した種々の付着物を除去すること
ができ、常にフレッシュな表面を確保でき、これによ
り、高湿環境下における画像流れを感光体の加熱を必要
とせずに防止することができ、その結果、優れた耐久性
の電子写真感光体を提供することができた。
【0123】また、本発明によれば、上記a−SiC:
H表面層の硬度を光導電層との界面側から自由表面側に
向かって漸次小であるように変化させたことにより、初
期の段階における放電生成物を効果的に除去することが
でき、さらに研磨による削れ量を小さくするとともに、
表面への傷付きを防止することができ、その結果、使用
初期に画像流れの発生をより効果的に防止できるように
なるとともに、長期の使用においても画像流れや画像ス
ジが発生しない、高画質で高信頼性かつ長寿命の電子写
真感光体を提供することができた。
【0124】また、本発明の電子写真感光体によれば、
表面層に光導電層側の第1層領域と自由表面側の第2層
領域を具備せしめ、この第2層領域を所定の元素比率な
らびに動的押し込み硬さ・厚みのa−SiC:Hから成
る表面層を具備せしめたことにより、優れた耐久性なら
びに優れた電子写真特性を有する、高湿環境下における
画像流れを感光体の加熱を必要とせずに防止することが
できる良好な特性の電子写真感光体を提供することがで
きた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体の層構成を示す断面図
である。
【図2】本発明の電子写真感光体の他の層構成を示す断
面図である。
【図3】本発明の電子写真感光体の他の層構成を示す断
面図である。
【図4】本発明の電子写真感光体の他の層構成を示す断
面図である。
【符号の説明】
1・・・・導電性基板 2・・・・光導電層 3・・・・表面層 4・・・・キャリア注入阻止層 5・・・・表面層 6・・・・第1層領域 7・・・・第2層領域

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 導電性基板上に光導電層と水素化アモル
    ファスシリコンカーバイドから成る表面層とが順次積層
    された電子写真感光体において、前記表面層の元素比率
    を組成式a−Si1-x x :Hと表したときにx値が
    0.95≦x<1.00であり、かつその自由表面の動
    的押し込み硬さが45〜220kgf/mm2 であるこ
    とを特徴とする電子写真感光体。
  2. 【請求項2】 前記表面層の動的押し込み硬さを光導電
    層との界面側から自由表面側に向かって漸次小さくした
    ことを特徴とする請求項1記載の電子写真感光体。
  3. 【請求項3】 導電性基板上に光導電層と表面層とが順
    次積層された電子写真感光体において、前記表面層が光
    導電層側に配された第1層領域と、自由表面側に配され
    た水素化アモルファスシリコンカーバイドから成る厚み
    700〜4,000Åの第2層領域との積層であり、こ
    の第2層領域の元素比率を組成式a−Si1-x x :H
    と表したときにx値が0.95≦x<1.00であり、
    かつその動的押し込み硬さが45〜220kgf/mm
    2 であることを特徴とする電子写真感光体。
  4. 【請求項4】 前記表面層の初期状態の十点平均粗さが
    2,000Å以下であることを特徴とする請求項1また
    は請求項3記載の電子写真感光体。
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