JPH09183773A - エポキシ化合物およびヒドロキシイミノジコハク酸の製造方法 - Google Patents

エポキシ化合物およびヒドロキシイミノジコハク酸の製造方法

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JPH09183773A
JPH09183773A JP8290763A JP29076396A JPH09183773A JP H09183773 A JPH09183773 A JP H09183773A JP 8290763 A JP8290763 A JP 8290763A JP 29076396 A JP29076396 A JP 29076396A JP H09183773 A JPH09183773 A JP H09183773A
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acid
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美昭 浅川
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 エチレン系化合物を過酸化水素を用いて
エポキシ化して対応するエポキシ化合物を製造する際
に、該エポキシ化反応を金属製反応系中で、かつ反応系
中の気相部が接触する反応系内表面積(S:m2 )と反
応系中の反応液量(V:m3 )とが式:0<S/V≦2
〈m2 /m3 )を満足するような条件下に行うことを特
徴とするエポキシ化合物の製造方法である。 【効果】 対応するエポキシ化合物を高収率かつ着色を
生じることなく製造することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はエポキシ化合物の製
造方法、詳しくはエチレン系化合物を過酸化水素を用い
てエポキシ化して対応するエポキシ化合物およびさらに
ヒドロキシイミノジコハク酸を高収率かつ着色を生じる
ことなく製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】エチレン系化合物を過酸化水素でエポキ
シ化して対応するエポキシ化合物を製造する方法は古く
から知られ、反応に使用する触媒、反応条件などについ
ての研究も盛んに行われており、多数の特許および文献
がある。
【0003】本発明者らも、無水マレイン酸を過酸化水
素でエポキシ化してエポキシコハク酸を製造する方法と
して、反応温度を2段階とすることにより少量のエポキ
シ化触媒により高収率でエポキシコハク酸塩を得る方法
を提案している(特開平4−290879号公報)。
【0004】しかしながら、無水マレイン酸の過酸化水
素によるエポキシ化に際して用いる反応容器の材質につ
いて検討されて例はなく、過酸化水素を取り扱う際の容
器の材料として、ガラス、ステンレス鋼、アルミニウム
などが使用できることが知られているにすぎない。
【0005】本発明者らはエポキシコハク酸を工業的規
模で生産するために、工業材料として一般に用いられて
いるステンレス鋼製の反応容器を用いてエポキシ化反応
を行ったところ、無水マレイン酸に対するエポキシコハ
ク酸の収率が低下し、また反応後の反応溶液が着色する
という問題があることが判明した。本発明者らはこの点
について研究したところ、過酸化水素の一部は反応時に
気化して反応容器中の気相部のステンレス鋼製表面に接
触し、その結果ステンレス鋼の作用により分解すること
が分かった。すなわち、無水マレイン酸に対し等モル量
の過酸化水素を供給した場合、過酸化水素が分解される
ため、結局のところ無水マレイン酸に対するエポキシコ
ハク酸の収率が低下するというのである。また、エポキ
シコハク酸が着色する原因は未だ解明されていないが、
過酸化水素の分解がなんらかの副反応を引き起こし、そ
の副反応によって生じた副生物がエポキシコハク酸中に
残存するために着色するものと考えられている。
【0006】このような収率の低下は、生産性の低下と
なり、また着色は製品価値を著しく低下させるものであ
り、いずれも望ましいものではない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、金属製反応
容器中でエチレン系化合物を過酸化水素を用いてエポキ
シ化して対応するエポキシ化合物を製造する際に生じる
過酸化水素の分解、ひいては目的とするエポキシ化合物
の収率の低下および着色という問題を解決して、エポキ
シ化合物を高収率かつ着色を生じることなく製造するこ
とを目的とするものである。
【0008】さらに本発明は、着色を生じることなく高
品質にヒドロキシイミノジコハク酸を製造することを目
的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らの研究によれ
ば、エポキシ化反応を金属製反応容器中で行う場合、反
応系中の気相部が接触する反応系内表面積と反応容器中
の反応液量との割合を特定範囲に調整するか、あるいは
反応系中の気相部が接触する反応系内表面を不動態化す
ると上記問題が解決できることを知り、この知見に基づ
いて本発明を完成するに至った。
【0010】すなわち、本発明は、エチレン系化合物を
過酸化水素を用いてエポキシ化して対応するエポキシ化
合物を製造する際に、該エポキシ化反応を金属製反応系
中で、かつ反応系中の気相部が接触する反応系内表面積
(S:m2 )と反応系中の反応液量(V:m3 )とが
式:0<S/V≦2(m2 /m3 )を満足するような条
件下に行うことを特徴とするエポキシ化合物の製造方法
である。
【0011】また、本発明は、エチレン系化合物を過酸
化水素を用いてエポキシ化して対応するエポキシ化合物
を製造する際に、該エポキシ化反応を少なくとも反応系
中の気相部が接触する反応系内表面を不動態化してなる
反応系中で行うことを特徴とするエポキシ化合物の製造
方法である。
【0012】また、本発明は、エチレン系化合物を過酸
化水素を用いてエポキシ化して対応するエポキシ化合物
を製造する際に、該エポキシ化反応を少なくとも反応容
器中の気相部が接触する反応容器内表面を不動態化して
なる反応容器中で行うことを特徴とするエポキシ化合物
の製造方法である。
【0013】さらに、本発明は、前記エポキシ化合物の
製造方法により得られたエポキシコハク酸とL−アスパ
ラギン酸を反応させることを特徴とするヒドロキシイミ
ノジコハク酸の製造方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明における「反応系」とは、
反応容器および反応容器に設けられたパイプ、バルブな
どを総称するものであり、上記の「反応系中の気相部が
接触する反応系内表面積」とは、反応容器、パイプ、バ
ルブなど気相部が接触する内表面積の合計を意味する。
反応容器の内表面積はもとより、パイプ、バルブなどの
内表面積もその径および長さから容易に算出することが
できる。
【0015】本発明における「金属製反応容器」として
は、ステンレス鋼製反応容器が好適に用いられる。かく
して、本発明で使用する金属製反応容器の代表例として
は、SUS304、304L、316、316Lなどの
ステンレス鋼製の反応容器を挙げることができる。
【0016】本発明で用いるエチレン系化合物の代表例
としては、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸、メタ
クリル酸、クロトン酸、シトラコン酸、2−ペンテン
酸、2−ヘキセン酸、3,4,5,6−テトラヒドロフ
タル酸、3,4,5,6−テトラヒドロ安息香酸など、
およびこれらのアルカリ金属塩(特に、ナトリウムまた
はカリウム塩)を挙げることができる。なお、マレイン
酸、シトラコン酸などの無水物を形成することができる
化合物の場合には、それらの無水物も包含される。
【0017】これらエチレン系化合物のなかでも、下記
一般式(1):
【0018】
【化1】
【0019】(式中、Mは水素原子またはアルカリ金
属、R1 、R2 およびR3 は同一でも異なっていてもよ
く、各々、水素原子、メチル基または−(CH2
COOM(ここで、Mは水素原子またはアルカリ金属、
nは0または1の整数である)で表される基である)で
表される化合物、および無水物を形成し得る化合物の場
合には、その無水物が好適に用いられる。一般式(1)
で表されるエチレン系化合物の代表例としては、マレイ
ン酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロト
ン酸、シトラコン酸など、およびそのアルカリ金属(特
に、ナトリウムまたはカリウム)塩、ならびに無水マレ
イン酸、無水シトラコン酸などを挙げることができる。
なお、アルカリ金属塩の場合、モノアルカリ金属塩で
も、ジアルカリ金属塩でもよい。本発明の方法は、特に
無水マレイン酸のエポキシ化によるエポキシコハク酸の
製造に好適に用いられる。
【0020】本発明の方法によれば、前記の金属製反応
系中でエチレン系化合物を過酸化水素を用いてエポキシ
化して対応するエポキシ化合物を製造する際に、このエ
ポキシ化反応を反応系中の気相部が接触する反応系内表
面積(S:m2 )と反応系中の反応液量(V:m3 )と
が式0<S/V≦2(m2 /m3 )を満足するような条
件下に行う。この要件が満たされる限り、エチレン系化
合物のエポキシ化反応を行う際の方法および条件につい
ては特に制限はなく、この種の反応に一般に用いられて
いる方法および条件下に行うことができる。
【0021】例えば、無水マレイン酸をエポキシ化して
エポキシコハク酸を製造する方法を例に挙げて説明する
に、先ず前記の金属製反応容器に無水マレイン酸を水溶
液としてアルカリ化合物および触媒としてのタングステ
ン酸(またはその塩)および/またはモリブデン酸(ま
たはその塩)とともに充填する。アルカリ化合物は反応
液のpHを4〜6程度の範囲に調整するために使用する
ものであり、反応液のpHをこの範囲に調整することに
よりエポキシ化を効率よく行うことができる。アルカリ
化合物としては、特に水酸化ナトリウムが好適に用いら
れる。次に、無水マレイン酸水溶液を60〜90℃程度
の温度に昇温した後に過酸化水素を滴下してエポキシ化
反応を行わせる。過酸化水素としては、通常、30〜7
0重量%程度の濃度の水溶液が用いられる。なお、この
場合、エポキシコハク酸はナトリウム塩として得られ
る。本発明のエポキシ化反応は一段階反応でも、あるい
は特開平4−290879号公報に記載のような二段階
反応、すなわち第一段では60〜80℃の範囲の温度で
反応を行い、第二段では第一段よりも少なくとも5℃昇
温させた温度で反応を行ってもよい。
【0022】上記のように、無水マレイン酸のエポキシ
化反応は、通常、無水マレイン酸、反応媒体(例えば
水)、触媒などを反応容器に仕込んだ後に過酸化水素を
徐々に導入または滴下して行うので、上記の式S/Vは
反応段階に応じて若干変わるが、本発明の方法によれ
ば、全ての反応段階を通して、0<S/V≦2、好まし
くは0<S/V≦1.5、さらに好ましくは0<S/V
≦1(m2 /m3 )となるような条件下にエポキシ化反
応を行う。上記のような条件は、反応容器などの反応系
内表面積などを求めた上に、反応媒体、無水マレイン酸
および過酸化水素の使用量を調整することにより容易に
実現することができる。S/Vが2を超えると過酸化水
素の分解が顕著となって収率の低下および着色という問
題が生じる。
【0023】本発明の他の方法によれば、エチレン系化
合物を過酸化水素を用いてエポキシ化して対応するエポ
キシ化合物を製造する際に、このエポキシ化反応を少な
くとも反応系中の気相部が接触する反応系内表面を不動
態化してなる反応系中で行う。ここで、不動態化とは、
非金属化を意味し、代表的なものとしてガラス化、樹脂
化などを挙げることができる。したがって、この方法の
実施に用いることができる反応容器の具体例としては、
ガラス容器のほかに、金属製容器であって、その少なく
とも気相部が接触する内表面をガラスライニング、樹脂
ライニング、セラミックコーティングなどを施した容器
を挙げることができる。
【0024】反応系内の気相部が接触する反応系内表面
を不動態化してなる反応系中でエポキシ化反応を行う場
合には、反応容器としてガラス容器または少なくとも気
相部が接触する内表面を不動態化した金属製容器を用
い、さらに気相部が接触するパイプ、バルブなどの内表
面をガラスライニング、樹脂ライニング、セラミックコ
ーティングなどにより不動態化すればよい。
【0025】また、本発明のもう一つの他の方法によれ
ば、エチレン系化合物を過酸化水素を用いてエポキシ化
して対応するエポキシ化合物を製造する際に、このエポ
キシ化反応を少なくとも反応容器中の気相部が接触する
反応容器内表面を不動態化してなる反応容器中で行う。
ここで、不動態化とは前記と同じである。したがって、
この方法の実施に用いることができる反応容器の具体例
としては、ガラス容器のほかに、金属製容器であって、
その少なくとも気相部が接触する内表面をガラスライニ
ング、樹脂ライニング、セラミックコーティングなどを
施した容器を挙げることができる。
【0026】さらに、本発明は、上記本発明のエポキシ
化合物の製造方法により得られたエポキシコハク酸とL
−アスパラギン酸を反応させることによりヒドロキシイ
ミノジコハク酸を製造する方法をも提供する。前記反応
におけるエポキシコハク酸とL−アスパラギン酸の反応
モル比は1.05:1〜1:1.05が好ましい。ま
た、前記反応は水性溶媒中または大部分が水性溶媒中で
行うことが好ましい。かかる場合、水以外の溶媒として
は、メタノール、エタノール等のアルコール、ジオキサ
ン等が挙げられる。また、前記反応は、通常、水酸化ア
ルカリまたは水酸化アンモニウムの水溶液を添加するこ
とにより中性からアルカリ性の条件下に行われる。
【0027】具体的には、例えば、20〜30重量%の
アスパラギン酸水溶液中に、水酸化アルカリ、好ましく
は水酸化ナトリウム約2モル当量を加え、次いでこれに
約1モル当量のエポキシコハク酸ジアルカリ塩、好まし
くはジナトリウム塩を加え反応物質が完全に反応し終わ
るまで撹拌する。反応時間は1〜8時間であり、反応促
進のため、反応温度を80〜100℃とすることができ
る。反応終了後、溶媒を例えばロータリーエバポレータ
ーを用いて留去することにより、無色固体の3−ヒドロ
キシ−2−2’−イミノジコハク酸のテトラアルカリ塩
をほぼ定量的収率で得ることができる。また、遊離の3
−ヒドロキシ−2−2’−イミノジコハク酸は、本粗製
品または溶媒含有粗製品から既知の方法により、例えば
塩酸、硫酸等の酸を添加することによって得ることがで
きる。
【0028】
【実施例】つぎに、実施例を挙げて本発明を更に具体的
に説明する。
【0029】[実施例1]ガラス製の1L(リットル、
以下同じ)四つ口フラスコ内の気相部にS/V=1.1
〜0.8(m2 /m3 )となるように表面積が4.5c
2 のSUS316Lのテストピースを設置した。この
反応器を用いて無水マレイン酸のエポキシ化によるエポ
キシコハク酸の合成を行った。
【0030】無水マレイン酸98.1g(1モル)を水
365gに溶解し、これに48%水酸化ナトリウム水溶
液116.7g(1.4モル)およびタングステン酸ナ
トリウム2水和物0.33g(0.001モル)を加え
た後、撹拌しながら70℃に昇温した。内容物は70℃
になった時に、ほぼ均一な溶液となり、そのpHは5.
5であった。これに60%過酸化水素56.7g(1.
0モル)を滴下し反応を開始させた。反応の進行に伴い
pHが下がるので48%水酸化ナトリウム水溶液を加え
ることによりpHを4.5〜5.5にコントロ−ルしな
がら70℃で60分保った。次いで、反応液を80℃に
昇温して反応を継続させ、反応開始から3時間経過した
ところで48%水酸化ナトリウム水溶液によって反応液
中の有機酸を等量中和して反応を終了させた。
【0031】反応後の反応液は無色透明であった。エポ
キシコハク酸ジナトリウム塩の収率(無水マレイン酸基
準)は92.6モル%であった。
【0032】[比較例1]実施例1において、S/V=
3.3〜2.3(m2 /m3 )となるように表面積が1
3.5cm2 のSUS316Lのテストピースを用いた
以外は実施例1と同様にして反応を行った。
【0033】反応後の反応液は黄色透明であって、着色
していた。エポキシコハク酸ジナトリウム塩の収率(無
水マレイン酸基準)は80.0モル%であった。
【0034】実施例1および比較例1の結果から、ステ
ンレス鋼反応器中で、かつS/V>2の条件下でエポキ
シ化反応を行うと目的とするエポキシ化合物の収率が低
下し、また得られるエポキシ化合物は着色していること
が分かる。
【0035】[実施例2]ガラス製の1L四つ口フラス
コを用いて無水マレイン酸のエポキシ化によるエポキシ
コハク酸の合成を行った。
【0036】無水マレイン酸98.1g(1モル)を水
365gに溶解し、これに48%水酸化ナトリウム水溶
液116.7g(1.4モル)およびタングステン酸ナ
トリウム2水和物0.33g(0.001モル)を加え
た後、撹拌しながら70℃に昇温した.内容物は70℃
になった時に、ほぼ均一な溶液となり、そのpHは5.
5であった。これに60%過酸化水素56.7g(1.
0モル)を滴下し反応を開始させた。反応の進行に伴い
pHが下がるので48%水酸化ナトリウム水溶液を加え
ることによりpHを4.5〜5.5にコントロ−ルしな
がら70℃で60分保った。次いで、反応液を80℃に
昇温して反応を継続させ、反応開始から3時間経過した
ところで48%水酸化ナトリウム水溶液によって反応液
中の有機酸を等量中和して反応を終了させた。
【0037】反応後の反応液は無色透明であった。エポ
キシコハク酸ジナトリウム塩の収率(無水マレイン酸基
準)は92.3モル%であった。
【0038】[実施例3]反応容器の胴部がSUS31
6L製(内径12cm、高さ32cm)、蓋部がガラス
製の四つ口セパラブルフラスコを用い、無水マレイン酸
のエポキシ化によるエポキシコハク酸の合成を行った。
【0039】無水マレイン酸588.4g(6.0モ
ル)を水2190gに溶解し、これに48%水酸化ナト
リウム水溶液700.2g〈8.4モル)、およびタン
グステン酸ナトリウム2水和物1.98g(0.006
モル)を加えた後、撹拌しながら70℃に加温した。内
容物は70℃になった時にほぼ均一な溶液となり、pH
は5.5であった。ここに60%過酸化水素水340.
2g(6.0モル)を滴下し、反応を開始させた。反応
の進行に伴いpHが下がるので、48%水酸化ナトリウ
ム水溶液を加えることによってpHを4.5〜5.5に
コントロ−ルしながら70℃で60分保った。次いで8
0℃に昇温し、反応開始から3時間経過したところで4
8%水酸化ナトリウム水溶液によって反応液中の有機酸
を等量中和し、反応を終了させた。この間のS/Vは
1.5〜0.3(m2 /m3 )であった。反応後の反応
液は無色透明であった。また、エポキシコハク酸ジナト
リウム塩の収率(無水マレイン酸基準)は91.5モル
%であった。
【0040】[比較例2]実施例3と同じ反応容器を用
い、以下のように無水マレイン酸からエポキシコハク酸
を合成するための反応を行った。
【0041】無水マレイン酸559.0g(5.7モ
ル)を水2081gに溶解し、これに48%水酸化ナト
リウム水溶液665.2g(8.0モル)、およびタン
グステン酸ナトリウム2水和物1.88g(0.005
7モル)を加えた後、撹拌しながら70℃に加温した。
内容物は70℃になった時にほぼ均一な溶液となり、p
Hは5.5であった。これに60%過酸化水素水32
3.2g(5.7モル)を滴下し、反応を開始させた。
反応の進行に伴いpHか下がるので、48%水酸化ナト
リウム水溶液を加えることによってpHを4.5〜5.
5にコントロールしながら70℃で60分保った。次い
で80℃に昇温し、反応開始から3時間経過したところ
で48%水酸化ナトリウム水溶液によって反応液中の有
機酸を等量中和し、反応を終了させた。この間のS/V
は3.9〜2.2(m2 /m3 )であった。反応後の反
応液は黄色透明であって、着色していた。また、エポキ
シコハク酸ジナトリウム塩の収率(無水マレイン酸基
準)は80.3モル%であった。
【0042】[実施例4]実施例1で合成したエポキシ
コハク酸ジナトリウム塩水溶液(エポキシコハク酸ジナ
トリウム塩の濃度23.7重量%)371g(0.5モ
ル)にL−アスパラギン酸66.6g(0.5モル)を
添加した後、48重量%の水酸化ナトリウムで溶液のp
Hを11に調製し、85℃で6時間反応した。反応後の
溶液を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、
ヒドロキシイミノジコハク酸テトラナトリウム塩が収率
92.7モル%(L−アスパラギン酸基準)、純度8
9.7重量%(反応液中の全有機酸塩に対する濃度)で
生成していた。
【0043】また、実施例2、実施例3で合成したエポ
キシコハク酸ジナトリウム塩水溶液を上記と同様にL−
アスパラギン酸と反応させたところ、それぞれ収率9
2.8モル%および91.9モル%(L−アスパラギン
酸基準)、純度89.8重量%および88.6重量%
(反応液中の全有機酸塩に対する濃度)でヒドロキシイ
ミノジコハク酸テトラナトリウム塩が得られた。
【0044】[比較例3]比較例1で合成したエポキシ
コハク酸ジナトリウム塩水溶液(エポキシコハク酸ジナ
トリウム塩の濃度20.5重量%)429g(0.5モ
ル)にL−アスパラギン酸66.6g(0.5モル)を
添加した後、48重量%の水酸化ナトリウムで溶液のp
Hを11に調製し、85℃で6時間反応した。反応後の
反応液は、反応前より黄色がさらに濃くなっていた。ま
た、反応後の溶液を高速液体クロマトグラフィーで分析
したところ、ヒドロキシイミノジコハク酸テトラナトリ
ウム塩が収率90.1モル%(L−アスパラギン酸基
準)、純度80.6重量%(反応液中の全有機酸塩に対
する濃度)で生成していた。
【0045】また、比較例2で合成したエポキシコハク
酸ジナトリウム塩水溶液を上記と同様にL−アスパラギ
ン酸と反応させたところ、収率89.6モル%(L−ア
スパラギン酸基準)、純度80.4重量%(反応液中の
全有機酸塩に対する濃度)でヒドロキシイミノジコハク
酸テトラナトリウム塩が得られた。また、反応後の反応
液は、反応前より黄色がさらに濃くなっていた。
【0046】
【発明の効果】このように、本発明の方法によれば、エ
チレン系化合物を過酸化水素を用いてエポキシ化し対応
するエポキシ化合物を高収率かつ着色を生じることなく
製造することができる。また、本発明の方法によれば、
このようにして得られたエポキシコハク酸を用いること
により、着色を生ずることなく高品質にヒドロキシイミ
ノジコハク酸を製造することができる。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エチレン系化合物を過酸化水素を用いて
    エポキシ化して対応するエポキシ化合物を製造する際
    に、該エポキシ化反応を金属製反応系中で、かつ反応系
    中の気相部が接触する反応系内表面積(S:m2 )と反
    応系中の反応液量(V:m3 )とが式:0<S/V≦2
    〈m2 /m3 )を満足するような条件下に行うことを特
    徴とするエポキシ化合物の製造方法。
  2. 【請求項2】 エチレン系化合物を過酸化水素を用いて
    エポキシ化して対応するエポキシ化合物を製造する際
    に、該エポキシ化反応を少なくとも反応系中の気相部が
    接触する反応系内表面を不動態化してなる反応系中で行
    うことを特徴とするエポキシ化合物の製造方法。
  3. 【請求項3】 エチレン系化合物を過酸化水素を用いて
    エポキシ化して対応するエポキシ化合物を製造する際
    に、該エポキシ化反応を少なくとも反応容器中の気相部
    が接触する反応容器内表面を不動態化してなる反応容器
    中で行うことを特徴とするエポキシ化合物の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3記載のエポキシ化合物の製
    造方法により得られたエポキシコハク酸とL−アスパラ
    ギン酸を反応させることを特徴とするヒドロキシイミノ
    ジコハク酸の製造方法。
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