JPH09182910A - 熱延鋼板における表面処理剤 - Google Patents

熱延鋼板における表面処理剤

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JPH09182910A
JPH09182910A JP34380195A JP34380195A JPH09182910A JP H09182910 A JPH09182910 A JP H09182910A JP 34380195 A JP34380195 A JP 34380195A JP 34380195 A JP34380195 A JP 34380195A JP H09182910 A JPH09182910 A JP H09182910A
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JP
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steel sheet
weight
water
aluminum
frit
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JP34380195A
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English (en)
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Hisatomi Muraki
久富 村木
Kazuhiro Seto
一洋 瀬戸
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JFE Steel Corp
Hakuto Co Ltd
Original Assignee
Hakuto Co Ltd
Kawasaki Steel Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】鋼板を製造する際の熱間圧延工程での圧延後の
酸化スケールの発生を防止し、もって鋼板品質を向上さ
せ得る熱延鋼板の表面処理剤を提供する。 【解決手段】肩溶け温度が600℃以上、1100℃以
下であるフリット100重量部と、融点が600℃以上
である金属の粉末0.5〜100重量部と、アルカリ金
属,アルカリ土類金属,アルミニウムから選ばれた一種
以上の金属のケイ酸塩,ホウ酸塩,リン酸塩の一種以上
からなる焼結剤10〜200重量部との混合物を有効成
分とし、これらを水又は水と有機溶剤との混合溶媒に分
散した。得られた表面処理剤で仕上げ圧延後の鋼板表面
に被膜を形成して酸化を防止する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱延鋼板における
表面処理剤に関し、特に、加熱炉,均熱炉などで高温熱
処理した鋼材を熱間圧延するにあたり、表面性状のよい
熱延鋼板の製造を可能とするものである。
【0002】
【従来の技術】熱延鋼板(ホットコイル)を製造する熱
間圧延工程では、鋼材(スラブ)は加熱炉,均熱炉で1
000〜1300℃で熱処理された後、圧延される。圧
延終了後も鋼板表面は600℃以上の温度に晒され、か
つ酸素に直接接触しており、表面に酸化スケールが生成
し易い状況となっている。炉内で発生したスケール(1
次スケール)は、通常、圧延機の手前で鋼板表面に高圧
水を吹き付けて除去している(いわゆる“デスケーリン
グ”)。また、圧延工程においても酸化スケール(2次
スケール)が生成するので、圧延工程内の適当な所でデ
スケーリングし圧延されている。さらに、圧延工程の最
後の仕上げ圧延機を出た後、室温付近まで冷却される間
にも、熱延材の表面には酸化スケールが生成する。
【0003】そこで圧延工程を出て室温付近まで冷却さ
れた後、酸洗ラインを通して生成酸化スケールを溶解除
去してから、次の工程(冷間圧延)に移している。しか
し、酸洗には強い酸が使用されるので、酸洗設備もこれ
に対応しなければならず、また酸液の取扱いも危険を伴
い、かつ廃酸液の処理も公害問題の点から容易ではない
など、種々の問題がある。
【0004】従来、熱延鋼板の圧延工程以降の酸化スケ
ールの酸洗処理に伴う上記問題の改善方法としては、熱
間圧延途中あるいは終了後に、アルカリ土類金属の炭酸
塩,水酸化物と糖類を塗布する方法(特開昭59−23
883号公報、従来例1)が提案されている。また、ガ
ラス粉末を塗布する方法(特開昭63−224813号
公報、従来例2)や、鉱油,脂肪酸エステルと有機系の
酸化防止剤を塗布する方法(特開平3−271381号
公報、従来例3)や、アルカリ土類金属化合物,Na2
O・3Si2O,Al粉末を塗布する方法(特開平7−
278662号公報、従来例4)等も提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従
来例1の方法はスケールの生成抑制という点で未だ不満
足であるばかりでなく、塗布した被膜の剥離が悪く鋼板
の表面性状も良好でないという問題点がある。一方、従
来例2,従来例3の方法は2次スケールの生成を抑える
という点で不満足であるばかりでなく、塗布した被膜の
剥離が悪く鋼板の表面性状も良好でない。特に従来例3
の鉱油、脂肪酸エステルと有機系の酸化防止剤を塗布す
る方法では発煙、臭気など作業環境の問題もあり、実用
上から多くの問題を残していた。
【0006】また、従来例4の方法は、塗布した被膜の
剥離が悪いばかりでなく、酸洗が必要となっており、生
産性,経済性,作業環境の観点から未だ多くの問題を残
していた。そこで本発明は、かかる従来技術の問題点に
着目したなされたもので、その目的とするところは、鋼
板を製造する際の熱間圧延工程の圧延後における酸化ス
ケールの発生を防止し、もって鋼板品質を向上させ得る
熱延鋼板の表面処理剤を提供することにある。
【0007】
【課題を解決する手段】本発明者らは、鋼板の熱間圧延
工程における最終圧延以降に発生する酸化スケールにつ
いて、その発生を抑制し、併せて鋼板の表面性状(光沢
化と平滑化)を改善することを意図し、鋼板表面に形成
する表面処理剤を鋭意検討した結果、特定のフリット粉
末、金属粉末、特定の焼結剤、さらに状況により耐火材
料を配合した組成物を適用することにより、鋼板表面へ
の酸素侵入拡散を効率よく抑え、酸化スケールの生成を
抑えるとともに、熱延後の被膜の剥離性がよく、且つ熱
延鋼板の表面性状が改善されることを見いだし本発明を
なすに至った。
【0008】すなわち本発明の請求項1に係る発明は、
肩溶け温度が600℃以上、1100℃以下であるフリ
ット100重量部と、融点が600℃以上である金属の
粉末0.5〜100重量部と、アルカリ金属,アルカリ
土類金属,アルミニウムから選ばれた一種以上の金属の
ケイ酸塩,ホウ酸塩,リン酸塩の一種以上からなる焼結
剤10〜200重量部との混合物を有効成分とし、これ
らを水又は水と有機溶剤との混合溶媒に分散したことを
特徴とする熱延鋼板における表面処理剤である。
【0009】また、請求項2に係る発明は、請求項1の
有効成分に、さらに所望により、ケイ素,アルミニウ
ム,亜鉛,チタン,ニッケル,クロム,モリブデン,ジ
ルコニウムの群から選ばれた一種以上の金属の酸化物
(複合酸化物も含む),炭化物,窒化物,ホウ化物,ケ
イ化物,リン化物の一種以上からなる耐火材料粉末20
重量部以下を加え、これらを水又は水と有機溶剤との混
合溶媒に分散したものである。
【0010】そして、請求項3に係る発明は、請求項1
又は2記載の表面処理剤における金属の粉末が、ケイ
素,アルミニウム,ニッケル,クロム,バナジウム,ジ
ルコニウムの群から選ばれた少なくとも一種以上でなる
ものである。さらに、請求項4に係る発明は、請求項2
又は3記載の表面処理剤における耐火材料が、アルミ
ナ,ムライト,炭化ケイ素,ホウ化ジルコニウム,窒化
ケイ素,窒化アルミニウムから選ばれた一種以上でなる
ものである。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明
する。本発明における熱延鋼板は、 いわゆる普通鋼及び
炭素鋼の他、ニッケル、クロム、モリブデン、マンガン
などを含んだ合金鋼を意味している。フリットは一般に
ガラス質の粉末をいい、その組成はSiO2,Al23
をベースに、さらにZrO2,CaO,MgO,Zn
O,Na2O,K2O,B23,P25などの成分が適宜
組合わさった不定形構造になっているものである。本発
明に係る表面処理剤に用いるフリットは、肩溶け温度が
600℃以上、1100℃以下のものである。肩溶け温
度とは、フリットを直径2mm高さ3mmの円柱状にプ
レス成形したものをアルミナ基盤上に乗せ10℃/分で
昇温したとき、円柱状の端片の形状が変形し始める時の
温度をいう。肩溶け温度が600℃未満のものは、鋼板
温度が600℃に達する前に鋼板表面に粘性の低い溶融
した被覆を形成し、酸化防止の効果は得られるものの、
処理後の剥離が困難となるので不都合である。また、肩
溶け温度が1100℃より高いものは、フリットが溶融
状態にならず、熱処理時鋼板表面で均一な被膜を作り難
くなるので好ましくない。フリットの選択にあたって
は、目的とする鋼板の熱処理温度を考慮に入れ、この温
度より低い肩溶け温度のフリットを選ぶ必要がある。
【0012】また、本発明に用いるフリット粉末は、そ
の体積膨張係数が好ましくは140×10-7〜250×
10-7、さらに好ましくは150×10-7〜200×1
-7のものである。フリットの体積膨張係数と鋼板の体
積膨張係数に適当な差があると、冷却したとき剥がれる
ので好都合である。逆に両者の差が接近していると冷却
時においても両者が密着したままとなり、剥離が悪くな
る。体積膨張係数の測定については、例えば日本化学会
編、実験化学講座 第4巻 401頁、丸善株式会社刊
(1992)に詳細な記載がある。しかし、体積膨張係
数の測定はこれ自体面倒な操作であり、かつ温度によっ
ても変わってくるものであり、便宜的にはフリット成分
百分率から近似の値が計算され〔窯業ハンドブック、1
044〜1045頁 (社団法人)窯業協会刊(昭和4
9年)〕、この値を目安にして充分である。体積膨張係
数が120×10-7以下のものは、肩溶け温度が600
℃より低いものが実質的に得られない。一方、体積膨張
係数が250×10-7を越えるものは、鋼板の体積膨張
係数が300×10-7程度であることから両者の体積膨
張係数が接近しすぎ、熱処理後の被膜の剥離性が充分で
なくなり好ましくない。また、本発明に用いるフリット
粉末の粒子の大きさは、鋼板に適用したとき均一に表面
に分布するようにするため細かなものの方が好ましく、
400メッシュを通過する粒子の大きさ〔JIS標準篩
(細目用)で37μm以下〕のものがよい。
【0013】本発明に係る表面処理剤に用いる金属粉末
は、酸素が鋼板表面に直接に接触することを最小限に抑
え、該被膜の下を還元性雰囲気に保持するもので、その
融点が600℃以上のものである。融点が600℃未満
の金属粉末は、被膜の粘性を下げるので熱延後の被膜の
剥離が困難となる。また、金属粉末の選択にあたって
は、目的とする鋼板の熱処理条件を考慮に入れ、その熱
処理温度より低い融点の金属粉末を選ぶのが好ましい。
金属粉末の融点が該熱処理温度より高いものを用いると
きは、酸素との反応は金属粉末表面に限られるのでその
粉末は細かいほど好ましい。金属粉末の粒子の大きさ
は、該被膜の中に細かく分散し侵入してくる酸素に効率
的に作用できるようにすること、及び被膜層の形成の観
点から、400メッシュ〔JIS標準篩(細目用)で3
7μm以下〕を通過する粒子の大きさのものがよい。好
ましい金属の粉末は、ケイ素(融点:1410℃),ア
ルミニウム(融点:660℃),チタン(融点:166
0℃),ニッケル(融点:1450℃),タングステン
(融点:3400℃),クロム(融点:1860℃),
バナジウム(融点:1890℃),ジルコニウム(融
点:1850℃)であり、 これら金属粉末を一種類単独
で使用するか又は二種以上を組合わせて使用することも
出来る。金属粉末の使用量はフリット100重量部に対
し、0.5〜100重量部、好ましくは0.7〜50重
量部、さらに好ましくは0.8〜20重量部である。
0.5重量部より少ないとき、あるいは100重量部よ
り多いときには、形成した皮膜の酸化防止機能が充分に
発揮されないので好ましくない。
【0014】本発明に係る表面処理剤に用いる焼結剤
は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウムか
ら選ばれた一種以上の金属のケイ酸塩,ホウ酸塩,リン
酸塩の一種以上からなっている。そして、前記フリット
及び金属の粉末と結合して緻密で強固な被膜を形成させ
るものである。アルカリ金属の例は、リチウム,ナトリ
ウム,カリウムであり、アルカリ土類金属の例は、マグ
ネシウム,カルシウム,ストロンチウム,バリウムであ
る。具体的な塩を例示すれば、ケイ酸ナトリウム,ケイ
酸リチウム,ホウ酸カルシウム,ホウ酸カリウム,リン
酸マグネシウム,リン酸バリウム,リン酸アルミニウム
等である。これらは単独で、あるいは二種類以上を組み
合わせて使用することができる。焼結剤の使用量は、前
記フリット粉末100重量部に対して10〜200重量
部、好ましくは50〜150重量部、さらに好ましくは
60〜120重量部である。10重量部より少ないと酸
化防止機能を充分有した被膜の形成ができず、また20
0重量部より多いと鋼板表面に融着し、熱延後の被膜の
剥離が困難となり好ましくない。
【0015】本発明に係る表面処理剤に用いる耐火材料
粉末は、ケイ素,アルミニウム,亜鉛,チタン,ニッケ
ル,クロム,モリブデン,ジルコニウムの群からから選
ばれた一種以上の金属の酸化物(複合酸化物も含む),
炭化物,窒化物,ホウ化物,ケイ化物,リン化物の一種
以上である。好ましい耐火材料粉末としては、その融点
が対象とする鋼板の熱処理温度以上のものであればよ
い。たとえば、鋼板の熱処理温度が1100℃とすれ
ば、窒化ケイ素(Si34:分解温度が1900℃)や
カリ長石(K2O・Al23・6SiO2:融点が125
0℃)、ケイ酸ジルコニウム(ZrSiO4:融点が2
550℃)や炭化ケイ素(SiC:融点が2700℃)
等を選択して適用すれば良い。耐火材料粉末は、被膜の
強度、安定性の観点からフリット中に被膜に均一に分散
されていることが望ましく、400メッシュ〔JIS標
準篩(細目用)で37μm以下〕を通過する粒子の大き
さのものがよい。耐火材料の使用量は、20重量部以
下、好ましくは5〜15重量部、さらに好ましくは8〜
12重量部である。耐火材料の使用量が、20重量部よ
り多いときは安定な皮膜が得られず、結局は酸化防止機
能が充分でなくなる。
【0016】本発明に係る表面処理剤に用いる有機溶剤
は、沸点が150℃以下であり、さらに水と混ざり合う
ものが好ましい。沸点が150℃を越えるものは、塗布
膜の乾燥速度が遅くなるとともに、鋼板表面での有機溶
剤の揮散による塗布膜の膨れや剥離を生じて酸化防止効
果が得られなくなるので好ましくない。さらに、水と混
ざり合う有機溶媒は、適用上の便利さから好ましいもの
である。有機溶剤を含む水との混合溶媒は、表面張力を
低下させ、塗布後の塗膜の広がりを早くし、かつ、滑ら
かな塗膜表面を得るには、好都合である。このような好
適な有機溶剤として、メタノール,エタノール,プロパ
ノール,ブタノール,ペンタノール,エチレングルコー
ル,2−エトキシエタノールなどのアルコール類、プロ
ピレングリコールメチルエーテルなどのエーテル類、ジ
メチルホルムアミド,ジメチルスルホキサイドなどを挙
げることができる。
【0017】本発明に係る表面処理剤の有効成分組成物
は、 フリット粉末100重量部に対し、 金属粉
末0.5〜100重量部、 アルカリ金属,アルカリ
土金属,アルミニウムのケイ酸塩,ホウ酸塩,リン酸塩
の一種以上からなる焼結剤10〜200重量部、および
所要によりさらに、 耐火材料粉末20重量部以下を
配合し、水又は水と適当な有機溶剤との混合溶媒に分散
させて鋼板に適用される。この時、一部有効成分が水あ
るいは有機溶媒に溶解する場合があるが、本発明の表面
処理剤にはこれら一部溶解したものも含むこととする。
水又は水と有機溶剤との混合溶媒の量は特に限定される
ものではないが、有効成分混合物がスラリーとなって鋼
板上に均一に塗布されればよく、一般的には、有効成分
混合物が40〜60重量%となるように調整される。こ
れらの組成比は、本発明の検討過程において最適として
見い出された範囲であり、この範囲の外では一様な安定
な被膜が得られず、あるいは処理後の剥離性が悪く、表
面性状を改善することも叶わないので好ましくない。
【0018】本発明に係る熱延鋼板の表面処理剤は、有
効成分を水又は水と有機溶剤との混合溶媒に分散したス
ラリー状であり、比重の大きな金属の粉末や耐火材料は
沈降しがちである。 この沈降、 分離を緩和するために、
分散剤や沈降防止剤を適宣添加すると良い。分散剤や沈
降防止剤は、公知のもので十分であり、たとえば、キサ
ンタンガム,アルギン酸塩,メチルセルロース,ポリビ
ニルアルコ−ル,ポリアクリル酸塩、無水マレイン酸と
スチレンモノマーとの共重合物などがある。また、塗膜
の強度や密着性を高めるには、公知のマレイン酸系ポリ
マーや酢酸ビニル樹脂等を適宜添加することも有効であ
り、本発明はこれら助剤の添加になんら制限を加えるも
のではない。
【0019】熱間圧延工程では、粗圧延、仕上圧延など
数段に分けて圧延されるのが普通であるが、本発明の表
面処理剤はその最終段圧延後の鋼板に塗布される。塗布
量は、目的とする鋼板表面が一様に覆われればよい。具
体的には、10〜600g/m2(固型分換算)、好ま
しくは50〜500g/m2、さらに好ましくは100
〜400g/m2である。10g/m2未満では、一様な
被膜が得られず表面酸化を防止されないため好ましくな
い。600g/m2を越えるものは、一様な被膜を形成
するものの、鋼板の巻き取り時に被膜に亀裂が生じて脱
落するため、その後の表面酸化を防止することができな
い。
【0020】鋼板への塗布方法は、ハケ塗り法,ミスト
スプレー法,浸漬法等実用上支障がなければいずれの塗
布方法でもよい。また必要により二度塗り,三度塗りな
どして厚く塗ることも可能である。以上のように構成さ
れた本発明に係る熱延鋼板の表面処理剤は、熱間圧延の
仕上げ圧延後の鋼板表面に被膜を形成し、鋼板表面と酸
素との直接接触を遮断して、鋼板を巻き取り後、常温冷
却までの表面酸化を防止するべく機能する。本発明の表
面処理剤中のフリット成分がこの被膜形成に寄与するも
のであり、600℃以上の肩溶け温度を持つものは、6
00℃以上の高温の鋼板表面で適度な粘性を有する溶融
被膜層を形成することが出来る。
【0021】また、この被膜中に分散された金属粉末
は、フリット被膜の存在にも拘わらず僅かに侵入した酸
素と反応することで、酸素が鋼板表面に達するのを防ぐ
ことが出来る。さらにアルカリ金属,アルカリ土類金
属,アルミニウムのケイ酸塩,ホウ酸塩,リン酸塩から
なる焼結剤は、フリットと金属の粉末からなる網目構造
被膜を緻密化させ、常温冷却されるまでの機械的作用
(曲げや伸び応力)に耐え得る密着性のよい被膜を形成
する。鋼板の種類によっては、鋼板表面に形成された被
膜層に鋼板表面からイオン化した鋼板元素が溶け込み、
その結果、フリットと金属の粉末、さらに焼結剤との一
体化した被膜層が破壊され不連続層となる場合がある。
このような好ましくない条件下でも、耐火材料を加えて
おくと被膜層が強固になるとともに被膜層の粘度低下が
妨げられ、不連続層であっても表面性状を良好に保持す
ることができる。
【0022】一方、被膜の剥離性についてみると、フリ
ットの体積膨張係数と、鋼板の体積膨張係数の差が大き
いと、熱処理後温度が下がったとき両者の収縮の違いか
ら剥離がし易くなる。また、一部生成した酸化スケール
は、生成過程で内部応力をもち、表面処理剤と密着して
いるため簡易な機械的応力(ベンディングやブラシな
ど)で容易に均一かつ一様に剥離する。
【0023】(実施例)以下、実施例により本発明を具
体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定され
るものではない。 [テストに用いた薬品] 〔フリット〕 フリット−I ; 下記の方法で調整した。
【0024】フリット−II ; 下記の方法で調整し
た。 フリット−III ; 日本フリット株式会社製、「SM−
5UP(商標名)」 フリット−IV : 日本フリット株式会社製、「DN−
5432UP(商標名)」 フリットの調整 : 純度99.8%の石英珪砂〔Si
2〕,純度99.5%の水酸化アルミニウム〔Al
(OH)3〕,純度99.5%の炭酸カルシウム〔Ca
CO3〕,純度99.5%の亜鉛華〔ZnO〕,純度9
9.8%の水酸化カリウム〔KOH〕,純度99.7%
の炭酸マグネシウム〔MgCO3〕,純度99.8%の
水酸化ジルコニウム〔Zr(OH)3〕,純度99.5
%の炭酸バリウム〔BaCO3〕,純度99.9%のリ
ン酸〔P25〕,純度99.8%の炭酸銅〔CuC
3〕を使用した。
【0025】ガラス熔融量を約300gとなるように目
標組成に合わせて各原料を秤り取った後、1リットル容
量のステンレス製V型混合機を用いて30分間乾式混合
を行った。ガラスの熔融には電気炉(カンタルスーパー
発熱体)を用い、300ccの10%ロジウム入り白金
ルツボを使用して、バッチを30分毎に3回に分けて投
入し、1450℃で2時間加熱熔融した。均質なガラス
を得るため熔融中に2回、白金製の撹拌棒で充分撹拌を
行った。ルツボを水に浸潰して熔融体を急冷し、1リッ
トル容量のボールミルで5時間乾式粉砕した後、ロータ
ップ型振動機(SV−350型;(株)丸菱科学機械製作
所製)を用いて400メッシュを通過した分を、フリッ
トとした。
【0026】フリット−I 〜IVの成分組成は表1の通り
である。
【0027】
【表1】
【0028】なお、体膨張係数は、その構成成分から、
窯業ハンドブック、1044〜1045頁 (社団法
人)窯業協会刊(昭和49年)記載のメイヤー・ハーバ
ース因数によって求め、温度が高いので計算値に1.1
5をかけた値を採用した。 〔金属の粉末〕 Al ; 東洋アルミニウム株式会社製、「AB−25
00(商標名)」 Si ; 山石金属株式会社製、「金属シリコンHiS
i600S(商標名)」 Zr ; キンセイマテック株式会社製、「金属ジルコ
ニウム粉」 Zn ; 関東化学株式会社製の試薬を用いた。
【0029】Cu ; 関東化学株式会社製の試薬を用
いた。 〔焼結剤〕 ケイ酸ナトリウム ; 日本化学工業株式会社製、 リン酸マグネシウム; 米山化学株式会社製 ホウ酸カリウム ; 関東化学株式会社製 〔耐火材料〕 アルミナ ; 昭和電工株式会社製、「AL−45−H
(商標名)」 ムライトフラワー ; キンセイマテック株式会社製、
「ムライトフラワ−」500番(商標名) 炭化珪素 ; 太平洋ランダム株式会社製、「GMF−
6S(商標名)」 ホウ化ジルコニウム; 旭硝子株式会社製、「セバボレ
ックス粉(商標名)」 水酸化マグネシウム; 関東化学株式会社製の試薬を用
いた。
【0030】フッ化カルシウム ; 関東化学株式会社
製の試薬を用いた。 〔有機溶媒〕 プロピレングリコ−ルメチルエーテル ; ダウケミカ
ルジャパン株式会社製、「ダワノールPM(商標
名)」。 エタノール,オクタノ−ル ; 関東化学株式会社製の
試薬を用いた。
【0031】〔分散剤と沈降防止剤および塗膜強化剤〕 ポリアクリル酸ナトリウム−分子量3,000 ; 日
本ゼオン株式会社製「クィーンフロー542(商標
名)」 ポリマレイン酸ナトリウム−分子量4000 ; 旭電
化工業株式会社製「アデカノール134L(商標名)」 キサンタンガム ; ケルコカンパニー製「KIA15
1C(商標名)」 [テストに用いた表面処理剤]表2〜4に本発明のテス
トに用いた表面処理剤組成物、及び比較の組成物の組成
を示した。
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
【表4】
【0035】[テストに用いた鋼板]テストに用いた鋼
板は次の通りである。 普通鋼 SS400 一般構造用圧延鋼 S45C 機械構造用炭素鋼 合金鋼 SUJ2 高炭素クロム鋼 SUS304 ステンレス鋼 SKH5 高速度工具鋼 いずれも150(mm)×100(mm)×10(m
m)の板状のもので、鋼板表面に酸化スケールが約10
μm生成しているもの、及び酸化スケールを除去(塩
酸、あるいは硝酸/フッ酸処理)したものを用いた。
【0036】[テスト方法]テストには、1水準につい
て、鋼板表面に酸化スケールが生成しているものを2
枚、酸化スケールを除去したもの1枚の合計3枚使用し
た。鋼板表面に酸化スケールが生成しているものは、熱
処理後高温時の鋼板表面観察(高温時の密着性、被膜層
剥離後の表面性状)用、および低温時の鋼板表面観察
(低温時の剥離性、剥離後の表面性状)用に各1枚づつ
用いた。酸化スケールを除去したもの1枚はスケール生
成抑止率の評価用とした。
【0037】室温下にある炉に鋼板を挿入し、還元雰囲
気下(酸素濃度;0%)で1150℃まで昇温し、その
温度で5分間保持した。次いでこの鋼板を取出し、所定
の温度(650℃と900℃の2水準)まで冷却した
後、その表面に表面処理剤、あるいは比較のための組成
物をミストスプレーガン(岩田塗装機社製;W−71型
吸込み式)にて、所定量塗布し、塗膜を形成させた。塗
膜形成後再び電気炉に挿入し、酸化雰囲気下(酸素濃
度;21%)、温度600℃にて2時間保持した。鋼板
表面に酸化スケールが予め生成している鋼板2枚につい
て、処理後の高温時、及び室温に迄冷却した後の鋼板に
ついて、被膜層の密着性、鋼板を丸く90度曲げたとき
の被膜層の密着性、被膜層剥離後のそれぞれの表面性状
を比較した。酸化スケールを除去した鋼板1枚は、スケ
ール生成抑止率測定に用いた。
【0038】[評価方法] 1.高温時の密着性;熱処理直後の鋼板を丸く90度曲
げた。 1−1 密着性は次の基準で視覚判定した。 A:曲げ時にほとんど(5%以下)亀裂や剥離がない。 B:曲げ時に5〜20%の亀裂や剥離がある。
【0039】C:曲げ時に20%以上の亀裂や剥離があ
る。 1−2 被膜層の剥離後の表面性状は、次の基準で視覚
判定した。 A;表面に酸化スケールが少し(5%以下)。金属光
沢。 B;表面の酸化スケール10〜20%あり、鈍い金属光
沢。 C;表面の酸化スケール20%以上。金属光沢ほとんど
なし。 2.低温時の剥離性:熱処理後の鋼板を常温まで冷却
し、鋼板を丸く90度曲げた。
【0040】2−1 被膜の剥離性は、次の基準で視覚
判定した。 A;曲げ時にほとんど(95%以上)剥離 B;曲げ時に50〜95%剥離 C;曲げ時に50以下剥離 2−2 剥離後の表面性状は.次の基準で視覚判定し
た。
【0041】A;表面に酸化スケールが少し(5%以
下)。金属光沢。 B;表面の酸化スケール10〜20%あり、鈍い金属光
沢。 C;表面の酸化スケール20%以上。金属光沢ほとんど
なし。 3.表面粗さ;剥離後の表面粗さを三次元表面粗さ計で
測定した。三次元表面粗さ計は株式会社小坂研究所社製
「SE−30K(商標名)」(JISB−0601−1
982準拠)を用い、最大高さRmax(断面曲線の最高
山頂と最深谷底の間隔)と、10点の平均粗さRZ(断
面曲線の第1位から第5位までの高さの山頂の平均標高
と、第1位から第5位までの谷底の平均標高の間隔)と
を求め、それらの差から次の基準で判定した。
【0042】A;最大高さRmaxと10点の平均粗さRZ
との差が10μm以下。 B;最大高さRmaxと10点の平均粗さRZとの差が10
〜100μm。 C;最大高さRmaxと10点の平均粗さRZとの差が10
0μm以上。 4.スケール生成抑止率(%);鋼板について熱処理
前、および熱処理後スケールを剥がした後の重量の差を
酸化スケール量とした。表面処理剤を塗布した場合と、
表面処理剤を塗布しない場合との酸化スケール生成量の
差からスケール生成抑止率(%)を求めた。
【0043】 この結果を表5〜7に示した。本発明の表面処理剤によ
り、鋼板表面の酸化スケールが抑制され、鋼板表面の被
膜剥離後の表面品質を大幅に改善することが認められ
た。
【0044】
【表5】
【0045】
【表6】
【0046】
【表7】
【0047】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る熱延
鋼板における表面処理剤は、鋼板表面上に被膜を形成
し、その被膜中のフリットと金属の粉末及び焼結剤で酸
素の鋼板表面への侵入拡散を抑制し、その結果顕著な酸
化防止の効果が得られる。さらにフリットと鋼板との体
積膨張係数の差および金属の粉末で形成される気孔によ
り、被膜の鋼板への密着性が緩和されて、熱延後の被膜
層が一部生成した酸化スケールとともに簡易な機械的剥
離装置で簡単に剥離出来る上、剥離された後の表面が平
滑化し、金属光沢をもつようになる。この結果、熱延鋼
板の製造工程で生じる酸化スケールを除去するために行
われる酸洗工程を省略することができ、しかも鋼板表面
のスケールキズが解消されるなど、従来の酸洗品と同等
の表面品質が得られることになり生産工程の大幅な省力
化が達成できるという効果を奏する。。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 肩溶け温度が600℃以上、1100℃
    以下であるフリット100重量部と、融点が600℃以
    上である金属の粉末0.5〜100重量部と、アルカリ
    金属,アルカリ土類金属,アルミニウムから選ばれた一
    種以上の金属のケイ酸塩,ホウ酸塩,リン酸塩の一種以
    上からなる焼結剤10〜200重量部との混合物を有効
    成分とし、これらを水又は水と有機溶剤との混合溶媒に
    分散したことを特徴とする熱延鋼板における表面処理
    剤。
  2. 【請求項2】 請求項1の有効成分に、さらにケイ素,
    アルミニウム,亜鉛,チタン,ニッケル,クロム,モリ
    ブデン,ジルコニウムの群から選ばれた一種以上の金属
    の酸化物(複合酸化物も含む),炭化物,窒化物,ホウ
    化物,ケイ化物,リン化物の一種以上からなる耐火材料
    粉末20重量部以下を加え、これらを水又は水と有機溶
    剤との混合溶媒に分散した熱延鋼板における表面処理
    剤。
  3. 【請求項3】 金属の粉末が、ケイ素,アルミニウム,
    ニッケル,クロム,バナジウム,ジルコニウムの群から
    選ばれた少なくとも一種以上である請求項1又は2記載
    の熱延鋼板における表面処理剤。
  4. 【請求項4】 耐火材料が、アルミナ,ムライト,炭化
    ケイ素,ホウ化ジルコニウム,窒化ケイ素,窒化アルミ
    ニウムから選ばれた一種以上である請求項2又は3記載
    の熱延鋼板における表面処理剤。
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