JPH09176800A - 抗菌性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼及びその製造方法 - Google Patents
抗菌性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼及びその製造方法Info
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- JPH09176800A JPH09176800A JP35145095A JP35145095A JPH09176800A JP H09176800 A JPH09176800 A JP H09176800A JP 35145095 A JP35145095 A JP 35145095A JP 35145095 A JP35145095 A JP 35145095A JP H09176800 A JPH09176800 A JP H09176800A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 優れた抗菌性を長期間にわたって持続するオ
ーステナイト系ステンレス鋼を提供する。 【構成】 このステンレス鋼は、C:0.1%以下,S
i:2%以下,Mn:5%以下,Cr:10〜30%,
Ni:5〜15%,Cu:1.0〜5.0%を含む組成
をもち、Cuを主体とする第2相がマトリックス中に
0.2体積%以上の割合で分散している。更に、Nb及
び/又はTi:0.02〜1%,Mo:3%以下,A
l:1%以下,Zr:1%以下,V:1%以下,B:
0.05%以下及び希土類元素:0.05%以下の1種
又は2種以上を含むことができる。Cuを主成分とする
第2相は、熱間圧延後から最終製品となるまでの間に5
00〜900℃の温度範囲で熱処理を1回以上施すこと
により、マトリックス中に微細に分散析出する。
ーステナイト系ステンレス鋼を提供する。 【構成】 このステンレス鋼は、C:0.1%以下,S
i:2%以下,Mn:5%以下,Cr:10〜30%,
Ni:5〜15%,Cu:1.0〜5.0%を含む組成
をもち、Cuを主体とする第2相がマトリックス中に
0.2体積%以上の割合で分散している。更に、Nb及
び/又はTi:0.02〜1%,Mo:3%以下,A
l:1%以下,Zr:1%以下,V:1%以下,B:
0.05%以下及び希土類元素:0.05%以下の1種
又は2種以上を含むことができる。Cuを主成分とする
第2相は、熱間圧延後から最終製品となるまでの間に5
00〜900℃の温度範囲で熱処理を1回以上施すこと
により、マトリックス中に微細に分散析出する。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、厨房機器,電気機器,
建築材料,機械機器,化学機器等の広範囲な分野におい
て抗菌性が必要とされる用途に適したオーステナイト系
ステンレス鋼及びその製造方法に関する。
建築材料,機械機器,化学機器等の広範囲な分野におい
て抗菌性が必要とされる用途に適したオーステナイト系
ステンレス鋼及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】厨房機器,病院等で使用されている各種
機材や、バス,電車等の輸送機関の手摺り用パイプ等で
は、一般環境における耐食性が要求されるため、SUS
304に代表されるステンレス鋼が主として使用されて
いる。しかし、黄色ブドウ球菌等による院内感染が問題
となってきている昨今、バス,電車等の不特定多数の人
間が利用する環境においても衛生面の向上が求められて
いる。これに伴って、各種機械,器具に使用される材料
としても、一般構造材としての特性に止まらず、定期的
な消毒等の感染防止を図る必要がない抗菌性等の機能を
付与したメンテナンスフリーの材料が望まれている。抗
菌性を付与した材料としては、特開平5−22820号
公報,特開平6−10191号公報等で開示されている
ように、有機皮膜やめっきによる抗菌コートが一般的で
あった。
機材や、バス,電車等の輸送機関の手摺り用パイプ等で
は、一般環境における耐食性が要求されるため、SUS
304に代表されるステンレス鋼が主として使用されて
いる。しかし、黄色ブドウ球菌等による院内感染が問題
となってきている昨今、バス,電車等の不特定多数の人
間が利用する環境においても衛生面の向上が求められて
いる。これに伴って、各種機械,器具に使用される材料
としても、一般構造材としての特性に止まらず、定期的
な消毒等の感染防止を図る必要がない抗菌性等の機能を
付与したメンテナンスフリーの材料が望まれている。抗
菌性を付与した材料としては、特開平5−22820号
公報,特開平6−10191号公報等で開示されている
ように、有機皮膜やめっきによる抗菌コートが一般的で
あった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、抗菌コート
は、皮膜の消失に応じて抗菌性が低下する欠点がある。
抗菌性が消失した有機質は、栄養源となり却って細菌や
雑菌を繁殖させる虞れもある。抗菌剤成分を混入した複
合めっきを施したものでは、めっき層の密着性が十分で
なく、加工性を低下させる欠点がある。また、皮膜の溶
解,摩耗,欠損等に起因して外観が低下すると共に、抗
菌作用が低下する場合がある。ところで、Ag,Cu等
の金属元素は、有効な抗菌作用を発揮することが知られ
ている。しかし、Agは、非常に高価で耐食性にも劣っ
ていることから、腐食が予想される環境に曝される用途
で使用されていない。他方、Cuは比較的安価な元素で
あり抗菌成分としても有効なことから、ステンレス鋼等
の材料に添加して抗菌性を付与することが検討されてい
る。
は、皮膜の消失に応じて抗菌性が低下する欠点がある。
抗菌性が消失した有機質は、栄養源となり却って細菌や
雑菌を繁殖させる虞れもある。抗菌剤成分を混入した複
合めっきを施したものでは、めっき層の密着性が十分で
なく、加工性を低下させる欠点がある。また、皮膜の溶
解,摩耗,欠損等に起因して外観が低下すると共に、抗
菌作用が低下する場合がある。ところで、Ag,Cu等
の金属元素は、有効な抗菌作用を発揮することが知られ
ている。しかし、Agは、非常に高価で耐食性にも劣っ
ていることから、腐食が予想される環境に曝される用途
で使用されていない。他方、Cuは比較的安価な元素で
あり抗菌成分としても有効なことから、ステンレス鋼等
の材料に添加して抗菌性を付与することが検討されてい
る。
【0004】本発明者等も、Cu添加による抗菌性の改
善を種々検討し、ステンレス鋼表面のCu濃度を高める
ことによって抗菌性が改善されることを見い出し、特願
平6−209121号,特願平7−55069号で提案
した。本発明は、先に提案したCuの作用を更に高める
べく案出されたものであり、Cuを主体とする第2相
(以下、Cuリッチ相という)を所定量析出させること
により、優れた抗菌性をオーステナイト系ステンレス鋼
に付与することを目的とする。
善を種々検討し、ステンレス鋼表面のCu濃度を高める
ことによって抗菌性が改善されることを見い出し、特願
平6−209121号,特願平7−55069号で提案
した。本発明は、先に提案したCuの作用を更に高める
べく案出されたものであり、Cuを主体とする第2相
(以下、Cuリッチ相という)を所定量析出させること
により、優れた抗菌性をオーステナイト系ステンレス鋼
に付与することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明のオーステナイト
系ステンレス鋼は、その目的を達成するため、C:0.
1重量%以下,Si:2重量%以下,Mn:5重量%以
下,Cr:10〜30重量%,Ni:5〜15重量%,
Cu:1.0〜5.0重量%を含む組成をもち、Cuを
主体とする第2相がマトリックス中に0.2体積%以上
の割合で分散していることを特徴とする。このオーステ
ナイト系ステンレス鋼は、更にNb及び/又はTi:
0.02〜1重量%,Mo:3重量%以下,Al:1重
量%以下,Zr:1重量%以下,V:1重量%以下,
B:0.05重量%以下及び希土類元素(REM):
0.05重量%以下の1種又は2種以上を含むことがで
きる。Cuを主体とする第2相は、所定組成をもつオー
ステナイト系ステンレス鋼を熱間圧延後から最終製品と
なるまでの間に500〜900℃の温度範囲で熱処理を
1回以上施すことにより、マトリックス中に分散析出す
る。
系ステンレス鋼は、その目的を達成するため、C:0.
1重量%以下,Si:2重量%以下,Mn:5重量%以
下,Cr:10〜30重量%,Ni:5〜15重量%,
Cu:1.0〜5.0重量%を含む組成をもち、Cuを
主体とする第2相がマトリックス中に0.2体積%以上
の割合で分散していることを特徴とする。このオーステ
ナイト系ステンレス鋼は、更にNb及び/又はTi:
0.02〜1重量%,Mo:3重量%以下,Al:1重
量%以下,Zr:1重量%以下,V:1重量%以下,
B:0.05重量%以下及び希土類元素(REM):
0.05重量%以下の1種又は2種以上を含むことがで
きる。Cuを主体とする第2相は、所定組成をもつオー
ステナイト系ステンレス鋼を熱間圧延後から最終製品と
なるまでの間に500〜900℃の温度範囲で熱処理を
1回以上施すことにより、マトリックス中に分散析出す
る。
【0006】
【作用】ステンレス鋼は、不動態皮膜と称されるCrを
主とする水酸化物で表面が覆われていることから、優れ
た耐食性を呈する。本発明者等は、有効な抗菌性を発現
するCuをオーステナイト系ステンレス鋼に添加し、不
動態皮膜中に含まれるCu量を測定すると共に、黄色ブ
ドウ球菌を含む液の滴下による抗菌性を調査した。その
結果、ある程度以上のCuを含有させたステンレス鋼
は、抗菌性を備えていることが判った。しかし、鋼中に
数%以下のCuを単に固溶させただけでは、抗菌性及び
その持続性が必ずしも十分ではない場合がある。そこ
で、更に検討を重ねた結果、同一のCu含有量であって
も、Cuの一部がε−Cu等のCuリッチ相として微細
に且つ均一に析出していると、使用環境においてCuの
溶出が容易になり、抗菌性が改善されることを知見し
た。また、加工又は使用中に表面が損耗を受けたとして
も、内部のCuリッチ相が新規表面に現れるため、抗菌
持続性にも優れている。
主とする水酸化物で表面が覆われていることから、優れ
た耐食性を呈する。本発明者等は、有効な抗菌性を発現
するCuをオーステナイト系ステンレス鋼に添加し、不
動態皮膜中に含まれるCu量を測定すると共に、黄色ブ
ドウ球菌を含む液の滴下による抗菌性を調査した。その
結果、ある程度以上のCuを含有させたステンレス鋼
は、抗菌性を備えていることが判った。しかし、鋼中に
数%以下のCuを単に固溶させただけでは、抗菌性及び
その持続性が必ずしも十分ではない場合がある。そこ
で、更に検討を重ねた結果、同一のCu含有量であって
も、Cuの一部がε−Cu等のCuリッチ相として微細
に且つ均一に析出していると、使用環境においてCuの
溶出が容易になり、抗菌性が改善されることを知見し
た。また、加工又は使用中に表面が損耗を受けたとして
も、内部のCuリッチ相が新規表面に現れるため、抗菌
持続性にも優れている。
【0007】Cuリッチ相を析出させる手段としては、
Cuリッチ相が析出し易い温度領域で時効等の等温加熱
を施すこと,徐冷により析出温度域の通過時間をできる
だけ長くすること等が考えられる。そこで、種々の条件
について検討した結果、最終焼鈍後に500〜900℃
の範囲で時効処理すると析出が促進され、Cu添加量が
低い場合でも良好な抗菌性が得られることを見い出し
た。また、Ti,Nb,Mo等の炭窒化物や析出物を形
成し易い元素を添加すると、これら析出物等の析出サイ
トとしてCuリッチ相がマトリックスに均一分散し易
く、抗菌性及び製造性が改善される。また、Cuの一部
がCuリッチ相として析出していると、表面のCu濃度
が上昇すると共に、抗菌性も改善される。
Cuリッチ相が析出し易い温度領域で時効等の等温加熱
を施すこと,徐冷により析出温度域の通過時間をできる
だけ長くすること等が考えられる。そこで、種々の条件
について検討した結果、最終焼鈍後に500〜900℃
の範囲で時効処理すると析出が促進され、Cu添加量が
低い場合でも良好な抗菌性が得られることを見い出し
た。また、Ti,Nb,Mo等の炭窒化物や析出物を形
成し易い元素を添加すると、これら析出物等の析出サイ
トとしてCuリッチ相がマトリックスに均一分散し易
く、抗菌性及び製造性が改善される。また、Cuの一部
がCuリッチ相として析出していると、表面のCu濃度
が上昇すると共に、抗菌性も改善される。
【0008】以下、本発明オーステナイト系ステンレス
鋼に含まれる合金元素及びその含有量等について説明す
る。 C:0.1重量%以下 Cuリッチ相の析出サイトとして有効なCr炭化物を生
成し、微細なCuリッチ相を均一分散させるために有効
な合金元素である。しかし、過剰に添加すると製造性や
耐食性を劣化させることから、C含有量の上限を0.1
重量%に規制した。 Si:2重量%以下 耐食性を改善するために有効な合金元素であり、抗菌性
を向上する作用も呈する。しかし、2重量%を超える過
剰なSi添加は製造性を劣化させる。
鋼に含まれる合金元素及びその含有量等について説明す
る。 C:0.1重量%以下 Cuリッチ相の析出サイトとして有効なCr炭化物を生
成し、微細なCuリッチ相を均一分散させるために有効
な合金元素である。しかし、過剰に添加すると製造性や
耐食性を劣化させることから、C含有量の上限を0.1
重量%に規制した。 Si:2重量%以下 耐食性を改善するために有効な合金元素であり、抗菌性
を向上する作用も呈する。しかし、2重量%を超える過
剰なSi添加は製造性を劣化させる。
【0009】Mn:5重量%以下 製造性を改善すると共に、鋼中の有害なSをMnSとし
て固定する作用を呈する。また、MnSは、Cuリッチ
相生成の核として作用するため、微細なCuリッチ相を
析出させる上でも有効な合金元素である。しかし、5重
量%を超える多量のMn含有は、耐食性を劣化させる。 Cr:10〜30重量% オーステナイト系ステンレス鋼の耐食性を維持するため
に必要な合金元素であり、必要な耐食性を確保する上か
ら10重量%以上のCr含有が要求される。しかし、3
0重量%を超える多量のCrが含まれると、製造性,加
工性が劣化する。
て固定する作用を呈する。また、MnSは、Cuリッチ
相生成の核として作用するため、微細なCuリッチ相を
析出させる上でも有効な合金元素である。しかし、5重
量%を超える多量のMn含有は、耐食性を劣化させる。 Cr:10〜30重量% オーステナイト系ステンレス鋼の耐食性を維持するため
に必要な合金元素であり、必要な耐食性を確保する上か
ら10重量%以上のCr含有が要求される。しかし、3
0重量%を超える多量のCrが含まれると、製造性,加
工性が劣化する。
【0010】Ni:5〜15重量% オーステナイト相の安定化に重要な合金元素である。し
かし、多量添加は、高価なNiを消費し鋼材コストを上
昇させることから、Ni含有量の上限を15重量%に規
制した。 Cu:1.0〜5.0重量% 及び Cuリッチ相:
0.2体積%以上 本発明のステンレス鋼において最も重要な合金元素であ
り、良好な抗菌性を維持するためには0.2体積%以上
のCuリッチ相が析出していることが必要であり、本系
のオーステナイト系ステンレス鋼で0.2体積%以上の
Cuリッチ相を析出させるためにCu含有量1.0重量
%以上が要求される。しかし、5.0重量%を超える過
剰のCuを含有させると、製造性,加工性,耐食性が劣
化する。Cuリッチ相は、析出物の大きさが特に限定さ
れるものでないが、製品表面全体において均等に抗菌性
を発揮させるため、また研磨等が施された場合にも良好
な抗菌性を維持するためには、析出相が表面及び内部に
おいても適宜に分散して分布していることが好ましい。
かし、多量添加は、高価なNiを消費し鋼材コストを上
昇させることから、Ni含有量の上限を15重量%に規
制した。 Cu:1.0〜5.0重量% 及び Cuリッチ相:
0.2体積%以上 本発明のステンレス鋼において最も重要な合金元素であ
り、良好な抗菌性を維持するためには0.2体積%以上
のCuリッチ相が析出していることが必要であり、本系
のオーステナイト系ステンレス鋼で0.2体積%以上の
Cuリッチ相を析出させるためにCu含有量1.0重量
%以上が要求される。しかし、5.0重量%を超える過
剰のCuを含有させると、製造性,加工性,耐食性が劣
化する。Cuリッチ相は、析出物の大きさが特に限定さ
れるものでないが、製品表面全体において均等に抗菌性
を発揮させるため、また研磨等が施された場合にも良好
な抗菌性を維持するためには、析出相が表面及び内部に
おいても適宜に分散して分布していることが好ましい。
【0011】Nb:0.02〜1重量% Cuリッチ相は、Nbの析出物の周囲に析出する傾向を
示す。そのため、Cuリッチ相を均一に析出させるため
には、Nbの炭化物,窒化物,炭窒化物を微細に析出さ
せた組織が好ましい。しかし、過剰にNbを添加する
と、製造性,加工性が劣化する。このようなことから、
Nbを添加する場合、0.02〜1重量%の範囲に含有
量を調整することが好ましい。 Ti:0.02〜1重量% Nbと同様に炭窒化物を形成し、その周囲にCuリッチ
相を均一析出させる作用を呈する。しかし、Tiの過剰
添加は、製造性や加工性を劣化させ、製品表面に疵が発
生し易くなる。そのため、Tiを添加する場合、その含
有量を0.02〜1重量%の範囲に設定することが好ま
しい。
示す。そのため、Cuリッチ相を均一に析出させるため
には、Nbの炭化物,窒化物,炭窒化物を微細に析出さ
せた組織が好ましい。しかし、過剰にNbを添加する
と、製造性,加工性が劣化する。このようなことから、
Nbを添加する場合、0.02〜1重量%の範囲に含有
量を調整することが好ましい。 Ti:0.02〜1重量% Nbと同様に炭窒化物を形成し、その周囲にCuリッチ
相を均一析出させる作用を呈する。しかし、Tiの過剰
添加は、製造性や加工性を劣化させ、製品表面に疵が発
生し易くなる。そのため、Tiを添加する場合、その含
有量を0.02〜1重量%の範囲に設定することが好ま
しい。
【0012】Mo:3重量%以下 必要に応じて添加される合金元素であり、耐食性を向上
させる作用を呈すると共に、Fe2 Mo等の金属間化合
物として析出し、微細なCuリッチ相の核サイトとなり
析出を容易にする。また、Mo及びMoを含む化合物
は、それ自体でも抗菌性を向上させる作用を呈する。し
かし、3重量%を超える過剰のMo添加は、製造性及び
加工性を劣化させる。 Al:1重量%以下 Moと同様に耐食性を改善すると共に析出物を形成し、
微細なCuリッチ相の析出に有効な合金元素である。し
かし、Alの過剰添加により製造性及び加工性が劣化す
るので、Alを添加する場合その上限を1重量%に規制
する。 Zr:1重量%以下 必要に応じて添加される合金成分であり、炭窒化物を形
成し、微細なCuリッチ相の析出を容易にする。しか
し、過剰に添加すると、製造性,加工性が劣化する。そ
のため、Zrを添加する場合、その上限を1重量%に規
制する。
させる作用を呈すると共に、Fe2 Mo等の金属間化合
物として析出し、微細なCuリッチ相の核サイトとなり
析出を容易にする。また、Mo及びMoを含む化合物
は、それ自体でも抗菌性を向上させる作用を呈する。し
かし、3重量%を超える過剰のMo添加は、製造性及び
加工性を劣化させる。 Al:1重量%以下 Moと同様に耐食性を改善すると共に析出物を形成し、
微細なCuリッチ相の析出に有効な合金元素である。し
かし、Alの過剰添加により製造性及び加工性が劣化す
るので、Alを添加する場合その上限を1重量%に規制
する。 Zr:1重量%以下 必要に応じて添加される合金成分であり、炭窒化物を形
成し、微細なCuリッチ相の析出を容易にする。しか
し、過剰に添加すると、製造性,加工性が劣化する。そ
のため、Zrを添加する場合、その上限を1重量%に規
制する。
【0013】V:1重量%以下 Zrと同様に炭窒化物を形成し、微細なCuリッチ相の
析出を容易にする。しかし、過剰に添加すると、製造
性,加工性が劣化する。そのため、Vを添加する場合、
その上限を1重量%に規制する。 B:0.05重量% 必要に応じて添加される合金成分であり、熱間加工性を
改善すると共に、析出物となってマトリックスに分散す
る。しかし、過剰に添加すると熱間加工性が劣化するの
で、Bを添加する場合その上限を0.05重量%に規制
する。 希土類元素(REM):0.05重量%以下 必要に応じて添加される合金成分であり、適量の添加で
Bと同様に熱間加工性が改善される。また、Cuリッチ
相の析出に有効な析出物となってマトリックスに分散す
る。しかし、過剰に添加すると熱間加工性が劣化するの
で、REMを添加する場合その上限を0.05重量%に
規制する。
析出を容易にする。しかし、過剰に添加すると、製造
性,加工性が劣化する。そのため、Vを添加する場合、
その上限を1重量%に規制する。 B:0.05重量% 必要に応じて添加される合金成分であり、熱間加工性を
改善すると共に、析出物となってマトリックスに分散す
る。しかし、過剰に添加すると熱間加工性が劣化するの
で、Bを添加する場合その上限を0.05重量%に規制
する。 希土類元素(REM):0.05重量%以下 必要に応じて添加される合金成分であり、適量の添加で
Bと同様に熱間加工性が改善される。また、Cuリッチ
相の析出に有効な析出物となってマトリックスに分散す
る。しかし、過剰に添加すると熱間加工性が劣化するの
で、REMを添加する場合その上限を0.05重量%に
規制する。
【0014】熱処理温度:500〜900℃ Cuリッチ相を析出させるためには、500〜900℃
の時効処理が有効である。時効処理温度が低くなるほ
ど、マトリックス中の固溶Cu量が少なくなり、Cuリ
ッチ相の析出量が多くなる。しかし、低過ぎる時効処理
温度では、拡散速度が遅くなり、析出量が逆に減少す
る。温度条件を変えて種々の時効処理を施し、抗菌性に
有効な温度範囲を検討した結果、500〜900℃の温
度範囲で1時間以上の時効処理を施すことが工業的に有
効な温度範囲であることが判った。この時効処理は、熱
延後から最終製品となるまでの何れの段階で施しても有
効である。
の時効処理が有効である。時効処理温度が低くなるほ
ど、マトリックス中の固溶Cu量が少なくなり、Cuリ
ッチ相の析出量が多くなる。しかし、低過ぎる時効処理
温度では、拡散速度が遅くなり、析出量が逆に減少す
る。温度条件を変えて種々の時効処理を施し、抗菌性に
有効な温度範囲を検討した結果、500〜900℃の温
度範囲で1時間以上の時効処理を施すことが工業的に有
効な温度範囲であることが判った。この時効処理は、熱
延後から最終製品となるまでの何れの段階で施しても有
効である。
【0015】
【実施例】表1に示した組成を持つオーステナイト系ス
テンレス鋼を30kg真空溶解炉で溶製し、鍛造及び熱
延後に焼鈍又は時効処理を施し、熱延焼鈍板を得た。そ
して、冷延及び焼鈍を繰り返し施し、最終的に板厚0.
7mmの冷延焼鈍板を得た。熱延後に時効処理を施さな
かった板については、最終焼鈍後に時効処理を施した。
なお、熱延後及び最終焼鈍後の時効処理時間は、100
時間に設定した。得られた供試材を透過型電子顕微鏡で
観察し、Cuリッチ相の析出量を定量した。また、各試
験片を、次の抗菌性試験に供した。Staphyloc
ocusaureus IFO12732(黄色ブドウ
球菌)を普通ブイヨン培地で35℃,16〜24時間振
盪培養し、培養液を用意した。培養液を滅菌リン酸緩衝
液で20,000倍に希釈し、菌液を調製した。5cm
×5cmの試験片を#400研磨した表面に菌液1ml
を滴下し、25℃で24時間保存した。保存後、試験片
をSCDLP培地(日本製薬株式会社製)9mlで洗い
流し、得られた液について標準寒天培地を用いた混釈平
板培養法(35℃,2日間培養)で生菌数をカウントし
た。また、参照としてシャーレに菌液を直接滴下し、同
様に生菌数をカウントした。
テンレス鋼を30kg真空溶解炉で溶製し、鍛造及び熱
延後に焼鈍又は時効処理を施し、熱延焼鈍板を得た。そ
して、冷延及び焼鈍を繰り返し施し、最終的に板厚0.
7mmの冷延焼鈍板を得た。熱延後に時効処理を施さな
かった板については、最終焼鈍後に時効処理を施した。
なお、熱延後及び最終焼鈍後の時効処理時間は、100
時間に設定した。得られた供試材を透過型電子顕微鏡で
観察し、Cuリッチ相の析出量を定量した。また、各試
験片を、次の抗菌性試験に供した。Staphyloc
ocusaureus IFO12732(黄色ブドウ
球菌)を普通ブイヨン培地で35℃,16〜24時間振
盪培養し、培養液を用意した。培養液を滅菌リン酸緩衝
液で20,000倍に希釈し、菌液を調製した。5cm
×5cmの試験片を#400研磨した表面に菌液1ml
を滴下し、25℃で24時間保存した。保存後、試験片
をSCDLP培地(日本製薬株式会社製)9mlで洗い
流し、得られた液について標準寒天培地を用いた混釈平
板培養法(35℃,2日間培養)で生菌数をカウントし
た。また、参照としてシャーレに菌液を直接滴下し、同
様に生菌数をカウントした。
【0016】生菌が検出されなかったものを◎,参照の
生菌数と比較して95%以上が死滅したものを○,60
〜95%未満の範囲で死滅したものを△,60%未満の
死滅量であったものを×として評価した。抗菌性の評価
結果を、析出Cu量と併せて表1に示す。表1にみられ
るように、1.0重量%以上のCuが添加され、且つC
uリッチ相の析出量が0.2体積%以上の試験番号1〜
14では、何れも良好な抗菌性が示されている。これに
対し、Cu含有量が1.0重量%以上であっても時効処
理を施さない試験番号18では、Cuリッチ相の析出量
が0.2体積%に満たず、抗菌性が劣っていた。また、
Cuリッチ相の析出量は、試験番号17や15,16に
みられるように、時効処理温度が500℃未満又は90
0℃を超えると0.2体積%未満となっていた。このこ
とから、抗菌性の改善には、Cu含有量1.0重量%以
上で且つCuリッチ相析出量0.2体積%以上が必要で
あることが判る。また、Cuリッチ相析出量0.2体積
%以上を得るためには、500〜900℃の時効処理が
有効であることが判る。
生菌数と比較して95%以上が死滅したものを○,60
〜95%未満の範囲で死滅したものを△,60%未満の
死滅量であったものを×として評価した。抗菌性の評価
結果を、析出Cu量と併せて表1に示す。表1にみられ
るように、1.0重量%以上のCuが添加され、且つC
uリッチ相の析出量が0.2体積%以上の試験番号1〜
14では、何れも良好な抗菌性が示されている。これに
対し、Cu含有量が1.0重量%以上であっても時効処
理を施さない試験番号18では、Cuリッチ相の析出量
が0.2体積%に満たず、抗菌性が劣っていた。また、
Cuリッチ相の析出量は、試験番号17や15,16に
みられるように、時効処理温度が500℃未満又は90
0℃を超えると0.2体積%未満となっていた。このこ
とから、抗菌性の改善には、Cu含有量1.0重量%以
上で且つCuリッチ相析出量0.2体積%以上が必要で
あることが判る。また、Cuリッチ相析出量0.2体積
%以上を得るためには、500〜900℃の時効処理が
有効であることが判る。
【0017】
【表1】
【0018】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明のオース
テナイト系ステンレス鋼は、Cu含有量が1.0重量%
以上で且つCuリッチ相析出量が0.2体積%以上であ
ることから、無垢材でも優れた抗菌性を発揮する。この
抗菌性は、材質に由来するので、長期間にわたって持続
する。そのため、このステンレス鋼は、厨房機器,病院
等で使用される各種機材,電車,バス等の輸送機関にお
いて人体が接触する機器等の材料として、抗菌性が要求
される広範な分野において使用され、生活環境の改善が
図られる。
テナイト系ステンレス鋼は、Cu含有量が1.0重量%
以上で且つCuリッチ相析出量が0.2体積%以上であ
ることから、無垢材でも優れた抗菌性を発揮する。この
抗菌性は、材質に由来するので、長期間にわたって持続
する。そのため、このステンレス鋼は、厨房機器,病院
等で使用される各種機材,電車,バス等の輸送機関にお
いて人体が接触する機器等の材料として、抗菌性が要求
される広範な分野において使用され、生活環境の改善が
図られる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中村 定幸 山口県新南陽市野村南町4976番地 日新製 鋼株式会社技術研究所内
Claims (3)
- 【請求項1】 C:0.1重量%以下,Si:2重量%
以下,Mn:5重量%以下,Cr:10〜30重量%,
Ni:5〜15重量%,Cu:1.0〜5.0重量%を
含む組成をもち、Cuを主体とする第2相がマトリック
ス中に0.2体積%以上の割合で分散していることを特
徴とする抗菌性に優れたオーステナイト系ステンレス
鋼。 - 【請求項2】 Nb及び/又はTi:0.02〜1重量
%,Mo:3重量%以下,Al:1重量%以下,Zr:
1重量%以下,V:1重量%以下,B:0.05重量%
以下及び希土類元素(REM):0.05重量%以下の
1種又は2種以上を更に含む請求項1記載の抗菌性に優
れたオーステナイト系ステンレス鋼。 - 【請求項3】 請求項1又は2記載の組成をもつオース
テナイト系ステンレス鋼を熱間圧延後から最終製品とな
るまでの間に500〜900℃の温度範囲で熱処理を1
回以上施し、Cuを主体とする第2相の析出を促進させ
ることを特徴とする抗菌性に優れたオーステナイト系ス
テンレス鋼の製造方法。
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---|---|---|---|
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MYPI96005208A MY118759A (en) | 1995-12-15 | 1996-12-11 | Use of a stainless steel as an anti-microbial member in a sanitary environment |
KR1019960064591A KR100313171B1 (ko) | 1995-12-15 | 1996-12-12 | 향균성이향상된스테인레스강의사용방법 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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US6171547B1 (en) | 1997-08-13 | 2001-01-09 | Sumitomo Metal Industries, Ltd. | Austenitic stainless steel having excellent sulfuric acid corrosion resistance and excellent workability |
US6180162B1 (en) | 1997-11-14 | 2001-01-30 | Sumitomo Osaka Cement Co., Ltd. | Method of producing antimicrobial metal articles and antimicrobial metal articles produced by the method |
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-
1995
- 1995-12-26 JP JP35145095A patent/JP3232532B2/ja not_active Expired - Fee Related
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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KR100368863B1 (ko) * | 1998-03-16 | 2003-01-24 | 가와사키 세이테츠 가부시키가이샤 | 항균성이 우수한 스테인레스 강재 및 그 제조방법 |
CN1111612C (zh) * | 1998-03-16 | 2003-06-18 | 川崎制铁株式会社 | 抗菌性良好的不锈钢材及其制造方法 |
US8361245B2 (en) | 2005-02-28 | 2013-01-29 | Nippon Steel Corporation | Steel excellent in resistance to sulfuric acid dew point corrosion |
CN102220473A (zh) * | 2010-04-14 | 2011-10-19 | 元能股份有限公司 | 抗菌不锈钢线材及其制造方法 |
WO2022202507A1 (ja) | 2021-03-26 | 2022-09-29 | 日鉄ステンレス株式会社 | ステンレス鋼材及びその製造方法、並びに抗菌・抗ウィルス部材 |
KR20230076838A (ko) | 2021-03-26 | 2023-05-31 | 닛테츠 스테인레스 가부시키가이샤 | 스테인리스 강재 및 그 제조 방법, 그리고 항균·항바이러스 부재 |
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