JPH09174212A - 継目無鋼管用連続鋳造鋳片の製造方法 - Google Patents

継目無鋼管用連続鋳造鋳片の製造方法

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JPH09174212A
JPH09174212A JP33450895A JP33450895A JPH09174212A JP H09174212 A JPH09174212 A JP H09174212A JP 33450895 A JP33450895 A JP 33450895A JP 33450895 A JP33450895 A JP 33450895A JP H09174212 A JPH09174212 A JP H09174212A
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roll
rolling
steel pipe
reduction
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JP33450895A
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Tatsuro Katsumura
龍郎 勝村
Takashi Ariizumi
孝 有泉
Koichi Tsutsumi
康一 堤
Shinichi Nishioka
信一 西岡
Masao Nakagome
理欧 中込
Takashi Itakura
孝 板倉
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NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 マンネスマン穿孔法による継目無鋼管の製造
に用いる、連続鋳造ビレットの能率的、経済的な製造方
法を得る。 【解決手段】 連続鋳造により、丸鋳片を鋳造中に、一
方のロールが、カリバー底の開き角度δが、75°≦δ
<160°の鞍型ロール、相対するロールが平型ロール
である一対のロールにより、丸鋳片の軸芯部に圧縮応力
場を形成し、ポロシティの生成の抑制、その圧着、偏析
の減少を、内部に割れを発生させることなく行わせ、内
質の優れたマンネスマン穿孔用のビレットとする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、マンネスマン穿孔
法による継目無鋼管の製造に用いる連続鋳造鋳片の製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】継目無鋼管の製造方法の1つに、マンネ
スマン穿孔法がある。この方法は鋳造した鋼塊を圧延ま
たは鍛造して鋼片とし、あるいは連続鋳造法により鋳片
〔鋳片とは一定の断面を持ち、長さを規定しない鋳造状
態の鋼材の総称とする。なお、外部は固体(固相)であ
るが、内部は固体、液体(液相)または両者の混合物で
ある場合も鋳片に含める。〕とし、それらを切断して丸
または角形状のビレットとし、一対の樽型ロールとプラ
グにより穿孔して継目無鋼管とするもである。
【0003】このマンネスマン穿孔法においては、ビレ
ットに対して、特に、その内部に対して過酷な加工が行
われるため、ビレットの内部にしばしば割れが発生し、
これが継目無鋼管においては内面疵となる。したがっ
て、ビレットの内部の加工性の良否が、継目無鋼管の製
造性や疵の発生に大きな影響を与える。
【0004】このビレットの内部の加工性の良否には、
鋼の組成や組織、ビレットの内部の状態すなわち、内部
の健全性の影響が特に大きいことが知られている。溶融
状態の鋼は凝固時に収縮するため、最後に凝固する部分
である鋳片や鋼塊の中央部はポロシティ〔中央部に形成
されるため、センターポロシティとも言う。なお、ポロ
シティが多いとはその数ではなく量(%)が多いことを
指すものとする〕を含む組織となる。
【0005】また、鋼の凝固時には構成元素や不純物元
素の偏析も発生し、鋼塊や鋼片の中央部の熱間加工性を
低下させる。
【0006】鋼塊や鋳片の中心部は、上記した様にポロ
シティが多く、偏析も大きい組織となっているが、分塊
圧延や鋼片圧延等の熱間加工により相当量の圧下を与え
ることより、これらを問題の無い程度にまで低減させる
ことが可能である。また、その結果として、マンネスマ
ン穿孔時の疵の発生も、最小限に抑えることが可能とさ
れている。
【0007】そのため、従来はマンネスマン穿孔法によ
る継目無鋼管の製造に用いるビレットには、造塊−分塊
圧延−鋼片圧延の工程を経たビレットが用いられてき
た。
【0008】しかし、近年、連続鋳造法により鋳片と
し、連続鋳造まま(連続鋳造ままとは、連続鋳造後に鋼
片やビレットに加工するための再加熱およびその後の熱
間圧延を行わないことを指すものとする。したがって、
連続鋳造時に高温の鋳片に加工を加えた場合も連続鋳造
ままに該当する。また、連続鋳造ままの鋳片を切断し、
機械加工してビレットとした場合も、連続鋳造ままのビ
レットである。なお、以後は連続鋳造ままを、単に鋳造
ままと略す。)の鋳片を再加熱を行こなうことなくビレ
ットとし、マンネスマン穿孔を行って継目無鋼管とする
技術の導入が、歩留りやコスト低減の面から必然となり
つつある。
【0009】連続鋳造法による鋳片の中心部にも、もち
ろん、先に述べた様な欠陥が存在するが、その鋳造まま
のビレットを用いてマンネスマン穿孔を行うことは、炭
素鋼の継目無鋼管の製造から開始された。炭素鋼等の合
金元素の含有量の少ない鋼の場合は、連続鋳造時の湯流
れ性が良く、ポロシティの発生の程度が少ないこと、ま
た、合金元素の含有量も少ないため偏析の発生の小さい
こと等がその理由である。
【0010】これに加えて、炭素鋼は加工性が良いため
過酷な加工にも耐える傾向が大きいこと、また、ポロシ
ティがマンネスマン穿孔時に圧着される傾向が大きいこ
とも鋳造ままのビレットの適用を容易にした。さらに、
内面性状についての許容度が大きい場合もあり、鋳造ま
まのビレットを用いた場合も、製品として十分な性状を
有する例もかなり見られたことも影響している。
【0011】これに対して、Cr等の合金元素を多く含
む鋼においては、ポロシティも多くなり、中心偏析も大
きくなる傾向がある。マンネスマン穿孔性の良否に、特
に大きな影響を与えるポロシティが多くなる理由は、C
r等の含有量の多い溶鋼の場合はその粘性が高く、ポロ
シティへの溶鋼の供給が十分に行われにくいためとされ
ている。
【0012】なお、合金元素の添加量が多い場合は、そ
れに起因する偏析の大きいことは当然であるが、これ加
えて合金元素の含有量が多い鋼においては、不純物の僅
かな偏析が鋼の熱間加工性、したがってマンネスマン穿
孔時の内面割れの発生の多少に、大きな影響を与えると
言う問題もある。
【0013】以上に示した様な連続鋳造鋳片の内部欠陥
を減少させるために、多くの技術が提案され、またその
内のかなりが実用化されている。先ず、鋳型内で電磁撹
拌処理を行い溶鋼を撹拌して凝固核を多数生成させ、最
終凝固位置である鋳片の中心部分を等軸晶で充填させ
て、偏析やポロシティの生成を抑制する技術がある。
【0014】図4に連続鋳造設備の概略を示すが、図中
の1は鋳片、5は鋳片中の未凝固部分、6はポロシテ
ィ、7は電磁撹拌用のコイル、8は鋳片を引き抜くため
に用いるロールである。この技術は炭素鋼においては、
偏析やポロシティの減少にある程度は有効である。しか
し、合金元素の含有量の多い鋼の鋳造ままのビレット
を、マンネスマン穿孔した場合において、疵の発生を十
分に抑えるほどの効果は得られていない。
【0015】凝固中の鋳片の内質を向上させる手段とし
て、特公昭59−16862号公報には、連続鋳造中に
鋳片に対して平ロールにより、軽圧下を加える技術が開
示されている。この技術は凝固の末期の鋳片に、凝固収
縮量に相当する量の圧下をロールにより加え、濃化溶鋼
の流動を抑えて中心偏析を防止するというものである。
図4における9に相当するロールがこれに用いる軽圧下
ロールである。
【0016】この技術は広く実用化された、言わば連続
鋳造に組み込まれた技術ともなっており、炭素鋼の様に
合金元素の含有量の比較的少ない鋼においては、一定の
効果を持つことが認められてはいる。しかし、高Cr鋼
等の合金元素の含有量の多い鋼においては、内質をマン
ネスマン穿孔に耐えるに十分なレベルにまで高めるもの
とは言えない状態である。
【0017】1例をあげると、「材料とプロセス誌、第
7巻、第1号、195頁、1994」にはSUS410
鋼の丸鋳片を、内部が未凝固の状態で圧下する技術が示
されている。しかし、圧下後の鋳片の軸芯部の密度は
7.7g/cm3 と、ポロシティの無い場合の密度であ
る7.8g/cm3 に対して99%以下であり、ポロシ
ティを十分に圧着できていない。(掲載されているミク
ロ写真にも軸芯部に若干のポロシティが認められる。)
【0018】ポロシティの圧着効果を高めるためには、
圧下量を大きくすることが有効である。しかし、従来の
方法である平ロールにより丸鋳片を圧下する方法では、
鋳片の内部で圧下方向と直交する方向に引張り応力が発
生するため、圧下力が逃げる状態となり、ポロシティの
減少への寄与が小さくなる。
【0019】また、圧下量や体積減少率を大きくしすぎ
ると、内部に割れが生じやすくなると言う問題があり、
それらの上限値が制限される。なお、この従来の圧下方
法による場合には、体積減少率が3%の以上の圧下を加
えると、割れが相当量発生するとされている。
【0020】一方、特開昭63−183765号公報
や、「材料とプロセス誌、第7巻、第1号、179頁、
1994」には、連続鋳造時の凝固途中の鋳片に対し
て、一対の金型で一気に大圧下を行う方法が示されてい
る。この技術はポロシティの鍛着性に優れており、ま
た、後に述べる圧延法と異なり再加熱も不要な点でも優
れた技術である。
【0021】しかし、継目無鋼管の品種毎の製造割合に
おいては、このプロセスを必ずしも必要としない炭素鋼
管等の割合が一般的には高いこと、また、設備費が著し
く高いことが問題である。
【0022】以上に述べた様に、合金元素の含有量の多
い鋼の鋳造ままの鋳片を、マンネスマン穿孔時に十分な
加工性を持つまでに、内部品質を向上させるための連続
鋳造時の処理は、工業的には行われていない状態であ
る。その結果、連続鋳造後に熱間圧延工程を経たビレッ
トが好ましい、または必要であるされてきた。
【0023】たとえば、特開平5−7990号公報およ
び特開平7−136702号公報には、高Cr鋼の継目
無鋼管の製造方法として、連続鋳造法により矩形断面の
鋳片として、これを圧延により丸ビレットとし、マンネ
スマン穿孔を行う技術が開示されている。
【0024】また、比較的大断面を持つ角形状のブルー
ムを連続鋳造法により鋳造し、再加熱後に分塊圧延等に
より矩形断面のビレットにし、さらに丸ビレットを製造
するといった技術も一般的に行われている。
【0025】しかしながら、この様に鋳造後に熱間圧延
を行う場合は、鋳片の加熱やハンドリングのために一定
の長さに切断する必要がある。そして、その鋳片を圧延
すると、圧延後の鋼片の端面は長さ方向にヒレを持つ凹
凸の著しい形状となり、その面をそのままビレットの端
面とすると、マンネスマン穿孔時に凸部を巻き込み内面
疵になる。
【0026】したがって、この端部の形状を整えるため
に切断工程が必要となり、クロップが発生し歩留まりが
低下する。もちろん、熱間圧延を行うための加熱も製造
コストの増大につながる。
【0027】なお、マンネスマン穿孔の前にビレットの
中央部、長さ方向にあらかじめ穴を開け、最もポロシテ
ィが多く、また偏析も著しい部分をビレットより除去し
た状態とし、また穿孔条件も合わせて緩和する技術も従
来より提案されている。
【0028】しかし、この方法のコストが著しく高くな
ることは明らかであり、鋳造ままのビレットを用いた場
合に、内面疵の発生の少ないマンネスマン穿孔による継
目無鋼管を得る技術と言う性格ではなく、むしろ、鋳造
後に熱間圧延を行ったビレットを用いた場合にもなお、
マンネスマン穿孔性の劣るビレットに適用する性格の技
術と言ってよい。
【0029】以上に述べた様な事情により、Cr等の合
金元素の含有量の多い鋼のビレットのマンネスマン穿孔
を行う場合には、鋳造ままのビレットを内部品質は不十
分なままで使用し、継目無鋼管とした後に疵取り等によ
り対応するか、疵の発生が少ない様に、再加熱−熱間圧
延を行った後のビレットを用いる、高コストのプロセス
が採用されてきた。
【0030】
【発明が解決しようとする課題】以上に述べた様に、C
r等の合金元素の含有量の多い鋼の連続鋳造時には、ポ
ロシティの発生が著しく、また偏析も大きくなるが、そ
れらを電磁撹拌処理および軽圧下処理により、マンネス
マン穿孔時に問題のない程度にまで減少させることは困
難である。
【0031】丸鋳片に対して従来の平ロールにより圧下
を行う場合には、圧下量を増加することは内部割れの発
生を助長する問題がある。
【0032】連続鋳造時に金型により大圧下を加える技
術は、製造コストが著しく高くなる。
【0033】鋳片に鋳造後に再加熱を行い圧延する技術
も、経済性等の問題がある。マンネスマン穿孔前にビレ
ットの中央部に、あらかじめ穴を開けておく技術も経済
的でない。
【0034】上記の様な事情にあるため、鋳造ままの鋳
片(ビレット)を用いてマンネスマン穿孔法により継目
無鋼管の製造した場合も、内面傷の発生の少ない鋳片の
簡便かつ経済的な製造方法が求められていた。
【0035】
【課題を解決するための手段】本発明はマンネスマン穿
孔法による継目無鋼管の製造に用いる、連続鋳造丸鋳片
(以後、単に鋳片と記す。したがって、以後の記述はす
べて連続鋳造丸鋳片を対象としている。)の品質を、比
較的簡単かつ経済的な方法により向上させることを目的
としている。
【0036】本発明の特徴は図1に示す様に、一方のロ
ールが鞍型ロール(軸方向の断面形状が2つのV字が相
対する形であるため、以後Vロールと記す。)、他方の
ロールが平ロールであるロール対により鋳片を圧下し、
鋳片内部のポロシティを効果的に圧着し、また偏析を減
少させることにある。
【0037】第1の発明は、丸鋳片の連続鋳造時に、一
方のロールがカリバー底の開き角度δ(以後カリバー角
度δと記す。)が、75°≦δ<160°の鞍型ロー
ル、相対するロールが平ロールであるロール対により、
丸鋳片に圧下を加える継目無鋼管用連続鋳造鋳片の製造
方法である。
【0038】一方の圧下ロールをVロールとすることに
より(以後Vロール法と記す。)、従来の両方共に平ロ
ールを使用した場合(以後、平ロール法と記す。)に比
較して、以下に述べる様な長所がある。
【0039】まず、Vロール法は平ロール法により圧下
を加える場合に比較して、圧下が鋳片の中心に向って3
箇所より行われるため、鋳片の内部に圧縮の応力場が形
成され、ポロシティの発生が少なくなり、偏析も減少
し、内部品質も向上する。平ロール法の場合には、圧下
方向の直交方向へ鋳片が変形し、軸芯部においては幅方
向応力が引張応力となるため、ポロシティの発生の抑
制、その圧着、偏析の減少の効果はそれほど期待できな
い。
【0040】また、Vロール法の場合は、圧下が鋳片の
中心に向って行われるため、圧下による引張応力に起因
した凝固界面近傍の割れの発生が防止される。
【0041】第2の発明は、丸鋳片の軸心の固相率fs
が0.3≦fs≦1の状態で、丸鋳片に圧下を加える継
目無鋼管用連続鋳造鋳片の製造方法である。
【0042】圧下は鋳片の軸心の固相率fsが0.3以
上の状態で行うことが好ましい。固相率が0.3未満の
状態で圧下を行う場合は、鋳片の内部の温度は圧下後も
固相線温度の近傍にまでは下がらず、圧下後に再度、軸
芯部で溶鋼の流動が起こり、その結果として、偏析やポ
ロシティが再度発生する可能性がある。
【0043】fs=1の状態とは、鋳片が内部まで凝固
した後に圧下を行う場合を示している。凝固後も、たと
えば炭素鋼等の鋳片は固相線温度近傍であれば、ポロシ
ティを圧着できるだけの熱間延性および圧着性を有して
いるため、良好な結果が得られる。
【0044】なお、たとえば軸芯の固相率fsが0.3
の状態で圧下を行うとは、鋳片において固相率fsが
0.3の状態で、圧下を開始することを意味している。
したがって、鋳片が圧下ロールから開放された状態(圧
下ロールから離れた後)の固相率fsは0.3より大幅
に大きくなっている。なお固相率fsは凝固伝熱計算に
より求める。
【0045】また、軸芯とは概ね、鋳片の中心線より鋳
片の半径の1/3以内の部分を指すものとする。したが
って、鋳片全体の1/9に当たる。
【0046】第3の発明は第1または第2の発明のおい
て、鋳片に(1)式に示す体積減少率が0.1〜5%の
範囲になるような、圧下を加える継目無鋼管製造用連続
鋳造鋳片の製造方法である。
【0047】 体積減少率(%)=100(A−B)/A (1) A:圧延前の連続鋳造鋳片の体積 圧延前断面積×圧延上流側鋳片速度 B:圧延後の連続鋳造鋳片の体積 圧延後断面積×圧延下流側鋳片速度 図2は2.5%Cr−1%Mo鋼において、鋳片の軸芯
の固相率fsが0.52の場合における、Vロール法に
よる圧下時の体積減少率(%)と内質評点の関係を示し
ている。
【0048】内質評点の算出方法は後に示すが、グラフ
上で下に位置する場合が優れており、2は次工程のマン
ネスマン穿孔時に割れが発生しない内質に対応し、5以
下は大きな内面割れは発生しない内質に対応している。
なお、15以上は疵取りが困難なほどに割れが発生する
内質に対応しているが、圧下をかけない場合の内質がこ
れにあたる。
【0049】体積減少率が0.1〜5%の範囲の場合に
は、内質評点は5以下であり、この内質の場合は後のマ
ンネスマン穿孔により、十分に良好な継目無鋼管が得ら
れる。特に体積減少率を1〜4.5%の範囲とした場合
には、内質評点は2となり、この内質の場合は後のマン
ネスマン穿孔時には、内面疵は実質的に発生しない。
【0050】体積減少率が0.05%の場合の内質評点
は10であり、偏析を抑えることはある程度は可能であ
るが、ポロシティの発生を抑制、またはポロシティを圧
着する効果は十分でなく、マンネスマン穿孔時に割れが
発生する。また、体積減少率が5%を越える率の圧下を
加えると、ポロシティは圧着するが鋳片内部の割れの発
生が著しくなり、マンネスマン穿孔後の継目無鋼管に内
面割れが多くなる傾向がある。したがって、体積減少率
は0.1〜5%の範囲が好ましい。
【0051】第4の発明は第1、第2または第3の発明
において、鋳片に鋳型内で電磁撹拌処理を行うものであ
る。
【0052】凝固時に、したがって圧下をかけつつある
状態で、鋳片に電磁撹拌処理を行うことにより、ポロシ
ティを減少させ偏析を軽減させることができる。この電
磁撹拌処理の効果は、もちろん従来方法による場合にも
認められるがが、本発明の圧下方法と併用することによ
り相乗的な効果が現れる。
【0053】第5の発明は第1、第2、第3または第4
の発明を、鋳片が0.5重量%を超える量のCrを含有
する鋼に適用するものである。
【0054】本発明の効果はCr等の合金元素の含有量
の多い鋼において、特に顕著である。図3にCr量を変
化させた場合の1450℃における溶鋼の粘性を示す
が、溶鋼中のCr量が増加するにしたがって、粘性は増
大することがわかる。特に、Crの含有量が0.5重量
%(以後、単に%と記す。)以上になると、それ以下の
場合に比較して粘性が急増していることがわかる。
【0055】なお、本発明の方法を高合金鋼の継目無鋼
管用の連続鋳造鋳片、およびビレットの製造方法として
採用することにより、内面疵の発生を抑えることが可能
となるが、このことは、マンネスマン穿孔時の穿孔条件
を能率が高い方向や、低コスト化の方向にシフトさせる
ことも可能なことも意味している。
【0056】
【発明の実施の形態】本発明にかかる継目無鋼管用鋳片
の製造方法は、従来より行われてきた連続鋳造鋳片を再
加熱して加工することなくビレットとし、それを用いて
マンネスマン穿孔法により、継目無鋼管を製造していた
すべての鋼種に適用可能である。
【0057】また、従来は鋳片を再加熱−圧延してビレ
ットとし、マンネスマン穿孔を行っていた鋼種にも適用
可能なことは言うまでもなく、むしろ、これらの鋼種の
継目無鋼管を製造する場合において本発明の効果は著し
い。
【0058】なお、鋳片が鋳型内にある時は原則として
電磁攪拌処理(必須ではない)を行う。この電磁攪拌処
理は従来の装置を用い、従来と同様の方法により行う。
【0059】圧下に用いるVロールは、円錐台の上底面
同志を結合した形状である。結合部での2つの円錐台の
両側面は図1に示す様に、曲率Rでなだらかにつながっ
ている。具体的には20〜50Rである。
【0060】Vロールのカリバー角度δは、75°≦δ
<160°の範囲とする。カリバー角度δが75°未満
の場合は鋳片の内質の改善効果はあるが、Vロールの最
小ロールフランジ径を大きくする必要があり、設備費が
高くなる。一方、カリバー角度δが、160°を越える
と内質の改善の効果が小さくなる。したがって、上記の
範囲とする。
【0061】なお、上記の範囲内においても、カリバー
角度δが85〜125°の範囲の場合に最も効果的な圧
下を行うことができる。最適値はもちろん90°近傍で
ある。
【0062】本発明の実施の形態としては、平ロールの
支持機構を非可変型とし、Vロールの支持機構を可変型
とすることが好ましい。逆にすることも可能であるが、
その場合は圧下を行う鋳片の寸法が変わる場合に鋳片の
軸芯のパスライン(パスセンター)が大きく変化するこ
とになる。
【0063】また、設備的には複雑かつ高価なものとな
るが、Vロールおよび平ロールの支持機構を共に可変型
にすると、鋳片の寸法が変化する場合にも鋳片の軸芯の
パスラインの変化をさらに小さくすることが可能とな
る。
【0064】圧下は、鋳片が水平方向に移動中に、また
は垂直または斜め方向に移動中においてかける。ただ
し、設備のコスト、装置のメンテナンスの容易さから
は、鋳片が水平方法に移動中に、上ロールをVロールと
し、下ロールを平ロールとしてかけることが好ましい。
【0065】鋳片への圧下は可能なかぎり1回(1対の
ロール)で行う。合計で10mmの圧下を行う場合に、
例えば5mmずつ2回(2対のロールによる)の圧下行
う場合に比較して、1回で一気に10mmの圧下を行う
方が鋳片内部の圧縮場は高くなり、ポロシティは圧着し
やすい。もちろん、数回(複数のロール対により)の圧
下を排除するものではない。
【0066】以上に示した様に、Vロール法によると、
鋳片とロールとの接触点が3箇所になり、従来の平ロー
ルによる圧下では必然的に発生していた、圧下方向の直
交方向への鋳片の変形に起因する内部割れを、鋳片を強
く拘束することにより抑制することが可能となる。
【0067】また、圧下が鋳片中心に向かう3箇所から
かかるため、鋳片の軸芯部において圧縮応力場が形成さ
れやすくなり、濃化溶鋼を軸芯部から効率的に排除で
き、内部品質の向上が可能となる。
【0068】
【実施例】本発明を表1に示した鋼を用いて実施した。
A鋼、B鋼は炭素鋼であるが、B鋼はCの含有量が高
い。C鋼は、0.5%Cr−0.5%Moの耐熱鋼であ
る。D鋼は、2.25%Cr−%Moのやはり耐熱鋼で
ある。E鋼はSUS410鋼、F鋼はSUS304L鋼
である。
【0069】
【表1】
【0070】これらの鋼を用いた本発明の実施例を、表
2〜表6に示す。表2中のNo.3は、A鋼を用いて連
続鋳造速度を2.4m/分とし、電磁攪拌処理を行いつ
つ、ビレットの軸芯の固相率fsが0.60の場合にお
いて、体積減少率が0.91%/分の圧下を加えて17
0mmφの鋳片(この鋳片を、切断してビレットとす
る。したがって、鋳片の内質とビレットの内質は同一と
考えてよい。)とした本発明の実施例である。
【0071】なお、上Vロールのカリバー角度δは12
0°であり、これは表2〜表4に示した他の実施例にお
いても同様である。
【0072】本発明の方法により製造した鋳片および、
従来の方法により製造した鋳片の内質の評価は、以下の
方法により行った。なお、比較例はVロール法により圧
下を加えていない場合であるが、この場合も先に述べた
軽圧下処理は行われている。ただし、上記した様に鋳片
の内部の応力が引張応力になるため、ポロシティが十分
に少なくはなっていない。
【0073】鋳片の軸芯の密度指数は、10×10×4
0mmのブロックを切り出し、アルキメデス法で測定し
た。密度の評点は、鋳片の表面から直径の1/4の深さ
(ポロシティはない)の位置から採取したブロックの密
度と比較して求めた。
【0074】密度の比が99.5%以上の場合は指数を
1、99%以上、99.5%未満の場合の指数を2、9
5%以上、99%未満の場合の指数を3、90%以上、
95%未満の場合の指数を4、90%未満の場合の指数
を5と定めた。これが表中の軸芯密度指数である。
【0075】内部割れ指数は、鋳片のC断面(鋳片の全
断面)の試験片を3個、L断面(鋳片の直径×300m
m)の試験片を1個採取してマクロ観察(×10)を行
い、4個の試験片中の割れ長さの合計を求め、それを断
面積で割ったものである。なお、マクロ観察時の長さが
0.5mm未満の割れは除外しており、この合計の割れ
長さは0.5mm以上の割れの合計値である。
【0076】内部割れ指数は割れが認められない場合を
1、10mm/m2 未満を2、10mm/m2 以上、2
5mm/m2 未満を3、25mm/m2 以上、50mm
/m 2 未満を4、50mm/m2 以上、500mm/m
2 未満を5、500mm/m 2 以上、2000mm/m
2 未満を6、2000mm/m2 以上を7とした。
【0077】内質評点は軸芯密度指数と内部割れ指数の
両者を総合した値であり、(軸芯密度指数)2 +(内部
割れ指数)で表した値とした。この値が小さいほど次工
程のマンネスマン穿孔時の割れの発生が少ない傾向が認
められた。
【0078】具体的には、内質評点が5以下の場合に
は、最適条件でマンネスマン穿孔を行った場合も、内面
割れの発生は問題とならない程度に軽微であり、2の場
合は内面割れは認められなかった。これに対して、10
を越える場合は最適条件でマンネスマン穿孔を行った場
合も、内面疵の発生が著しく疵の除去に多大の工数がか
かり、歩留りも低く製品とならない場合も多く認められ
た。
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【0081】
【表4】
【0082】No.3の鋳片の特性は、軸心密度指数1
(軸心部の密度が、他の健全な部分の99.5%以
上)、内部割れ指数1(割れなし)、内質評点2(総合
評価で極めて健全性が高い。)である。
【0083】No.2、No.4およびNo.5は、圧
下時の固相率fsがNo.3とはやや異なるが最適範囲
内にあり、同様に鋳片(ビレット)の特性は優れてお
り、マンネスマン穿孔により疵のない継目無鋼管が得ら
れた。
【0084】No.1は、圧下時の鋳片の軸心の固相率
fsが0.20とやや低く、圧下後に再びポロシティが
生成したため、軸心密度指数2(軸心部の密度が、他の
健全な部分の99.0〜99.5%未満)、内質評点は
5となっている。
【0085】No.6は、電磁攪拌処理を行っていない
実施例である。他の条件はNo.3とほぼ同様である
が、軸心密度指数が2になっておりやはり内質評点は5
である。
【0086】なお、これらのNo.1およびNo.6の
ビレットのマンネスマン穿孔後の内面には若干の割れが
認められた。
【0087】No.7は、圧下を行わなかった比較例
(通常の軽圧下は行っている)であり、軸心密度指数は
4(軸心部の密度が、他の健全な部分の90%以上、9
5%未満)となっている。このビレットを用いてマンネ
スマン穿孔を行ったが、かなりの内面疵が発生した。
【0088】表2〜表4に示した様にB鋼、C鋼、D
鋼、E鋼およびF鋼における結果も同様である。本発明
の製造方法により製造したビレットは、Crの含有量に
かかわらず、内質評点は10以下であり、マンネスマン
穿孔により疵が発生した場合も軽微であった。
【0089】No.8、No.14、No.34および
No.37は、体積減少率が最適範囲を外れる実施例で
ある。マンネスマン穿孔により、他の実施例に比較して
やや内面疵が多く発生した。
【0090】No.17およびNo.21は軸芯の固相
率fsが最適範囲を外れる実施例である。マンネスマン
穿孔により、他の実施例に比較してやや内面疵が多く発
生した。
【0091】No.15、No.19、No.26、N
o.35およびNo.39は、電磁攪拌処理を行ってい
ない実施例である。軸心密度指数はいずれも2となって
おり、内質評点は5であり、内面にやや疵が認められ
た。
【0092】これらに対して、圧下を行っていない比較
例の内質評点はいずれも17以上であり、マンネスマン
穿孔により相当量の内面割れが発生した。しかし、鋼種
による差も認められ、炭素鋼のA鋼およびB鋼の内質評
点はいずも17とかなり高くはなったが、Crの含有量
の高い鋼種に比較すると内面疵に発生は少ない傾向にあ
った。
【0093】これは、炭素鋼の場合はマンネスマン穿孔
時に圧着したためと考えられる。これに対して、Cr含
有量の多い鋼の場合は、マンネスマン穿孔による内面疵
の発生が著しく、疵取りに多大の工数がかかり、1部は
そのために規格外れとなる例も見られた。
【0094】なお、炭素鋼の継目無鋼管の場合は一般的
には疵は浅いが、反面、製品の価格が低く、疵取りのコ
ストを吸収することが困難な場合もあり、本発明の有効
性がかえって高い場合もある。
【0095】表5および表6は、A鋼において上Vロー
ルのカリバー角度δを種々変化させた場合の実施例およ
び比較例である。No.41、No.49、はVロール
のカリバー角度δが75°未満である。この場合は、内
質の改善効果は十分であるが、設備費が高くなる。
【0096】No.48、No.57、No.58は上
Vロールのカリバー角度δが160°を越えている比較
例である。この場合は、内質の改善効果が十分でない。
なお、これらの結果からも、上Vロールのカリバー角度
δの好ましい上限値は125°であることがわかる。
【0097】
【表5】
【0098】
【表6】
【0099】
【発明の効果】Cr等の含有量の高い鋼のマンネスマン
穿孔用の内質の優れたビレットが、連続鋳造鋳片より、
従来は必須であった熱間圧延を行うことなく製造可能と
なり、内面疵の少ない継目無鋼管のマンネスマン穿孔法
による製造が可能となった。特に、本発明の完成により
内面疵の少ない付加価値の高い高合金鋼管の、低コスト
かつ高能率の製造が可能となった意義は大きい。
【0100】もちろん、炭素鋼管の製造においても、品
質の向上や疵取り工程の大幅省略による製造能率の向上
の効果は大きく、経済的な価値も多大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】1方のロールをVロールとした場合の圧下の状
態を示す模式図である。
【図2】体積減少率と内質評点の関係を表す図である。
【図3】Cr含有量と溶鋼の粘性の関係を示す図であ
る。
【図4】連続鋳造法の概略図である。
【符号の説明】
1・・・ 鋳片 2・・・ Vロール 3・・・ 平ロール 4・・・ カリバー角度δ 5・・・ 鋳片中の未凝固部分 6・・・ 鋳片中のポロシティ 7・・・ 電磁攪拌用のコイル 8・・・ 鋳片を引き抜くためのロール 9・・・ 軽圧下ロール
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 B22D 11/128 340B (72)発明者 西岡 信一 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 中込 理欧 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 板倉 孝 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】丸鋳片の連続鋳造時に、一方のロールがカ
    リバー底の開き角度δが75°≦δ<160°の鞍型ロ
    ール、相対するロールが平ロールであるロール対によ
    り、丸鋳片に圧下を加えることを特徴とする継目無鋼管
    用連続鋳造鋳片の製造方法。
  2. 【請求項2】丸鋳片の軸心の固相率fsが0.3≦fs
    ≦1の状態で、丸鋳片に圧下を加えることを特徴とする
    請求項1に記載の継目無鋼管用連続鋳造鋳片の製造方
    法。
  3. 【請求項3】丸鋳片に(1)式に示す体積減少率が0.
    1〜5%の範囲になるような圧下を加えることを特徴と
    する請求項1または請求項2に記載の継目無鋼管用連続
    鋳造鋳片の製造方法。 体積減少率(%)=(A−B)/A (1) A:圧延前の連続鋳造鋳片の体積 圧延前断面積×圧延上流側鋳片速度 B:圧延後の連続鋳造鋳片の体積 圧延後断面積×圧延下流側鋳片速度
  4. 【請求項4】鋳型内で電磁撹拌処理を行うことを特徴と
    する請求項1、請求項2または請求項3に記載の継目無
    鋼管用連続鋳造鋳片の製造方法。
  5. 【請求項5】丸鋳片が0.5重量%を超える量のCrを
    含有する鋼よりなることを特徴とする請求項1、請求項
    2、請求項3または請求項4に記載の継目無鋼管用連続
    鋳造鋳片の製造方法。
JP33450895A 1995-12-22 1995-12-22 継目無鋼管用連続鋳造鋳片の製造方法 Pending JPH09174212A (ja)

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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010052042A (ja) * 2008-07-30 2010-03-11 Jfe Steel Corp 継目無鋼管用丸鋳片の連続鋳造方法
JP2010052043A (ja) * 2008-07-31 2010-03-11 Jfe Steel Corp 丸鋳片の連続鋳造方法および連続鋳造設備
CN112338157A (zh) * 2020-10-12 2021-02-09 马鞍山钢铁股份有限公司 一种钢坯凝固成型工艺

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JP2010052042A (ja) * 2008-07-30 2010-03-11 Jfe Steel Corp 継目無鋼管用丸鋳片の連続鋳造方法
JP2010052043A (ja) * 2008-07-31 2010-03-11 Jfe Steel Corp 丸鋳片の連続鋳造方法および連続鋳造設備
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