JPH09171808A - 電池用セパレータの製造方法 - Google Patents

電池用セパレータの製造方法

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JPH09171808A
JPH09171808A JP7331333A JP33133395A JPH09171808A JP H09171808 A JPH09171808 A JP H09171808A JP 7331333 A JP7331333 A JP 7331333A JP 33133395 A JP33133395 A JP 33133395A JP H09171808 A JPH09171808 A JP H09171808A
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JP
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melting point
temperature
battery separator
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layer
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JP7331333A
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English (en)
Inventor
Soji Nishiyama
総治 西山
Kiichiro Matsushita
喜一郎 松下
Takashi Wano
隆司 和野
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Nitto Denko Corp
Original Assignee
Nitto Denko Corp
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Publication date
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    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
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Abstract

(57)【要約】 【課題】SD特性に優れる電池用セパレータを効率良く
製造する。 【解決手段】内層がPP製樹脂層(融点167℃)で、
両外層がPE製樹脂層(融点134℃)の三層積層樹脂
フィルムを準備し、この積層樹脂フィルムに対し、温度
150℃で10秒間の熱処理を行い、ついで温度25℃
で長尺方向に延伸率40%で1軸延伸し、さらに、温度
110℃で上記方向と同方向に延伸率150%で1軸延
伸して多孔質化し電池用セパレータを作製する。図1の
グラフに示すように、この電池用セパレータのSD特性
は、SD開始温度が130℃で電気抵抗が105 Ω・c
2 以上となり、これを約167℃まで維持した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電池用セパレータ
の製造方法に関するものであり、詳しくは、リチウム電
池等の高性能電池において電池の過熱による火災や爆発
の危険性を回避する機能を備える有用な電池用セパレー
タを高効率で製造が可能な電池用セパレータの製造方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、電池には、短絡防止等の目的
から電極間に電池用セパレータが配置されている。通
常、この電池用セパレータとしては、樹脂フィルムが使
用されており、電極間のイオンの通過を確保して電気抵
抗を小さくするために上記樹脂フィルムは多孔質化され
ている。
【0003】一方、電池の分野において、高起電力およ
び高エネルギーが得られ、しかも自己放電が少ないとい
う理由からリチウム電池が注目されている。このリチウ
ム電池としては、例えば、負極(電極)を、金属リチウ
ム、リチウム合金、カーボンやグラファイト等のリチウ
ムイオンを吸着または吸蔵する能力を有する材料、ある
いはリチウムイオンをドーピングした導電性高分子で形
成したもの等が知られている。
【0004】しかし、リチウム電池は、上記のような優
れた機能を有する反面、外部短絡、正・負極の誤接続等
により異常電流が流れた場合、電池内部温度が著しく上
昇し、遂には火災や破裂という重大事故を引き起こす危
険性がある。そこで、この問題を解決するために、上記
リチウム電池の電池用セパレータに対しつぎのような機
能が要求されている。
【0005】先に述べたように、正常通電時における機
能は、電池用セパレータが、正極と負極との間に位置し
てこれら両極の短絡を防止すると共に、その多孔質構造
により両極の電気抵抗を小さくして通電を容易にすると
いう機能である。そして、異常電流により内部温度が上
昇した場合の機能は、電気抵抗が急激に増大し電流を遮
断してそれ以上の温度上昇を抑制し、火災や破裂の危険
を防止するという機能である。
【0006】このように電池内部温度の異常上昇があっ
た場合、電気抵抗の増大により電流を遮断し、火災、破
裂を回避することにより電池の安全を確保する機能を、
一般にシャットダウン(shut-down)特性(以下「SD特
性」という)と通称され、 この特性は、リチウム電池
用セパレータには必須とされている。そして、現在で
は、電池の安全性確保の観点より、より低い温度で電気
抵抗の増大をもたらす電池用セパレータが望まれてい
る。
【0007】このような要求に対処するために、高融点
多孔質樹脂層と低融点多孔質樹脂層とが積層された電池
用セパレータが提案されている。この電池用セパレータ
は、正常通電時では本来の機能を果たし、異常通電時に
おいて電池内部温度が急激に上昇すると、低融点多孔質
樹脂層が溶融して無孔化しイオンの通過を遮断する。こ
の結果、電気抵抗が増大して電流が遮断され、電池内部
温度のそれ以上の上昇が防止されるのである。なお、高
融点多孔質樹脂層は、低融点多孔質樹脂層が溶融した際
にセパレータ形状を維持する支持体としての働きをする
ものである。
【0008】このような構造の電池用セパレータの具体
例としては、例えば、特開昭62−10857号(特公
平4−38101号)公報に記載のものがあげられる。
この電池用セパレータは、約80〜150℃の温度にお
いて予め決定した長さおよび幅の寸法を実質的に保持し
つつ、実質的に無孔性のフィルムに変成する第1種多孔
質樹脂層(低融点樹脂層)と上記温度よりも少なくとも
10℃高い温度において予め決定した長さおよび幅の寸
法を実質的に保持し且つ多孔質構造を維持する第2種多
孔質樹脂層(高融点樹脂層)からなる多孔質積層樹脂フ
ィルム製の電池用セパレータである。
【0009】そして、このような構造の電池用セパレー
タの製造方法としては、上記同公報に記載の方法や特開
平5−251069号公報に記載の方法があげられる。
この方法は、充填剤や可塑剤のような除去可能物質が添
加された融点の異なる樹脂を用いて積層樹脂フィルムを
作製し、次いで上記除去可能物質を抽出除去することに
よりそれぞれの樹脂層を多孔質化するという方法であ
る。
【0010】また、この他に、熱可塑性樹脂を溶融成形
してラメラ構造を配列させこれを延伸することにより多
孔質化して電池用セパレータを作製する方法が提案され
ている。具体的には、下記に示す2つの方法である。
【0011】すなわち、特開平2−47031号公報に
記載の方法は、結晶性樹脂を口金より溶融押出し、引き
取り速度40m/分以下にて、1組のカレンダーロール
間で加圧冷却結晶化させることにより厚み5〜1000
μmのフィルムを得て、引き続き熱処理、延伸および熱
固定を行い微孔性フィルム(電池用セパレータ)を製造
するという方法である。
【0012】また、特開平4−181651号公報に記
載の方法は、高融点樹脂層と低融点樹脂層(この層の融
点をTmb℃とする)とが積層された積層樹脂フィルム
を−20℃〜(Tmb−30)℃の低温領域で1軸延伸
し、ついでこの延伸フィルムを(Tmb−30)℃〜
(Tmb−2)℃の高温度領域において前記低温延伸と
同一方向に延伸することにより多孔質化して電池用セパ
レータを製造するという方法である。また、この方法に
おいて、上記延伸に先立ち、熱処理が行われる。これ
は、未延伸の樹脂フィルムの結晶化度を向上させ、ラメ
ラ構造の配向を高める目的で行われるものである。通
常、この熱処理は、低融点樹脂層の融点未満の温度範囲
で行われる。これは、樹脂フィルムの結晶構造およびそ
の配向の破壊を防止するためである。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
電池用セパレータの製造方法は、以下に示すような問題
がある。
【0014】すなわち、まず、上記特開昭62−108
57号公報および特開平5−251069号公報に記載
の電池用セパレータの製造方法は、樹脂層を多孔質化す
る作業が容易であるという利点を有する反面、溶剤を用
いることから、その蒸発揮散が不可避であり製造現場の
環境悪化の問題があって、また巨視的な観点からは地球
環境への影響も無視できない。また充填剤や可塑剤の完
全除去は困難であり、その残存物が電池特性に悪影響を
与えるおそれがある。
【0015】一方、特開平4−181651号公報の方
法は、本発明者らが開発した方法であり、この方法は、
上記製造方法とは異なり、延伸による多孔質化なので上
記のような溶剤や添加剤の残留の問題は解決される。し
かも、延伸および熱処理条件を最適化することにより、
SD特性、耐熱性および機械的強度のバランスをとるこ
とができるという利点を有する。しかしながら、リチウ
ム電池をはじめとする電池分野における技術革新はめざ
ましく、さらなる電池の安全性および生産性の改善が行
われており、これに応じて、電池用セパレータに対して
も、SD特性、耐熱性および機械的性質のより一層の向
上が要望されている。したがって、本発明者らが開発し
たこの製造方法についても、さらなる改良を行う必要が
ある。特に、この方法では、延伸処理に先だって行う熱
処理に長時間を要し、このため生産効率が若干低くなる
という問題がある。これは、前記のように低融点樹脂層
の融点以下の温度で熱処理を行うことから、イオン透過
性に優れた高気孔率の膜を得るためには熱処理時間を長
く設定する必要があるからである。また、熱処理に長時
間を要することから、熱処理の装置が大規模なものにな
るという問題もある。
【0016】また、特開平2−47031号公報では成
形時にカレンダーロール間で冷却固化させるので、特に
100μm以下の薄いフィルムに関して、フィルムの厚
み精度に問題がある。
【0017】本発明は、このような事情に鑑みなされた
もので、イオン透過性に優れかつ厚み精度が高い電池用
セパレータを溶媒を使用せずに効率よく容易に製造する
ことが可能な電池用セパレータの製造方法の提供をその
目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の電池用セパレータの製造方法は、高融点多
孔質樹脂層と低融点多孔質樹脂層とが積層された多孔質
積層樹脂フィルム製の電池用セパレータの製造方法であ
って、高融点樹脂層(この層の融点をTma℃とする)
と低融点樹脂層(この層の融点をTmb℃とする)とが
積層された積層樹脂フィルムを準備し、この積層樹脂フ
ィルムに対しTmb℃〜(Tma−2)℃の温度範囲で
熱処理をしたのちTmb℃未満に冷却し、ついで延伸し
て多孔質化するという構成をとる。
【0019】すなわち、本発明の電池用セパレータの製
造方法は、延伸処理に先だって行われる熱処理を低融点
樹脂層の融点(Tmb℃)以上の上記特定の温度範囲で
行うことを特徴とするものであり、これは、従来の技術
常識からは想到できない新規な技術思想である。
【0020】このようにすると、従来の低温の熱処理と
比較して、高融点樹脂層の結晶化を短時間とすることが
でき、この結果、電池用セパレータの製造を短時間で行
うことができるようになる。また、得られる電池用セパ
レータのSD特性等が優れるようになる。そして、延伸
法による多孔質化であることから、溶剤や添加剤等を必
要とせず、従来の技術において問題であった、これらに
起因する安全性や環境への問題および残留物の問題が生
じることがない。さらに、ロール間での加圧冷却結晶化
を行わないため、厚み精度の問題も生じるおそれが少な
い。
【0021】なお、上記熱処理温度を低融点樹脂層の融
点(Tmb℃)以上としても、低融点樹脂層の結晶構造
やその配向が破壊されることはない。これについて明確
に説明することはできないが、電池用セパレータにかか
る一連の研究により得た知見から、本発明者らは、つぎ
のように推察している。すなわち、低融点樹脂層以上の
上記特定の温度範囲で熱処理を行うと、上記低融点樹脂
層が溶融状態となるが、冷却固化する際に、これと積層
状態(隣接)にある高融点樹脂層の結晶状態やその配向
の影響を受け、低融点樹脂層も配向結晶化し、いわゆる
トランスクリスタルが生成することによるものと考えら
れる。
【0022】そして、本発明において、上記積層樹脂フ
ィルムとしては、高融点樹脂層が融点150℃以上のポ
リプロピレンから形成され、低融点樹脂層が融点100
℃〜140℃のポリエチレンから形成された積層樹脂フ
ィルムを使用することが好ましい。これは、電池内にお
ける化学的安全性がよいという理由による。
【0023】また、本発明において、上記積層樹脂フィ
ルムとしては、低融点樹脂層を内層とし、この層の上下
のそれぞれに、外層として高融点樹脂層が形成された三
層構造の積層樹脂フィルムを使用することが好ましい。
このような態様の積層樹脂フィルムを使用することによ
り、負極および正極を組み合わせて電池を作製する際
に、電池用セパレータの損傷が少なくなり、歩留まり良
く電池を作製できるという利点がある。
【0024】
【発明の実施の形態】つぎに、本発明を具体的に説明す
る。
【0025】本発明の電池用セパレータの製造方法は、
高融点樹脂層と低融点樹脂層とを有する積層樹脂フィル
ムを準備し、これに対し、上記低融点樹脂層の融点以上
の特定の温度範囲で熱処理を行ったのち上記低融点樹脂
層の融点未満の温度で冷却し、ついで延伸処理により多
孔質化するという製造方法である。
【0026】上記のように、本発明において使用される
積層樹脂フィルムは、高融点樹脂層と低融点樹脂層を有
するものである。これら樹脂層は融点が異なるものであ
れば、その材質は同じであっても異なっていても良い。
【0027】ここで、融点が異なるとは、高融点樹脂層
と低融点樹脂層との融点の差が5℃以上好ましくは10
℃以上であることを意味する。融点差がこれよりも小さ
いと、異常電流により電池の内部温度が上昇した場合、
低融点樹脂層が溶融すると間もなく高融点樹脂層も溶融
してしまい電池用セパレータのセパレータ形状が保持さ
れず、SD特性が発現されなくなるおそれがあるからで
ある。
【0028】また、上記積層樹脂フィルムは、二層以上
の多層構造であり、低融点樹脂層と高融点樹脂層とが隣
接して積層されていればその態様は限定するものではな
い。
【0029】その具体的な態様としては、先に述べた三
層構造の他、(a)一つの高融点樹脂層と一つの低融点
樹脂層が積層された二層構造の積層樹脂フィルム、
(b)一つの高融点樹脂層を内層とし、この層の上下の
それぞれに、外層として低融点樹脂層が積層形成された
三層構造の積層樹脂フィルム、(c)高融点樹脂層,低
融点樹脂層,高融点樹脂層,低融点樹脂層のように融点
の異なる樹脂層が交互に積層形成された四層以上の積層
樹脂フィルム等をあげることができる。
【0030】そして、これら高融点樹脂層および低融点
樹脂層の形成材料としては、ポリエチレン(PE)、ポ
リプロピレン(PP)、ポリブテン−1、ポリ−4−メ
チルペンテン−1、エチレン−プロピレン共重合体のよ
うなポリオレフィンやエチレン−テトラフルオロエチレ
ン共重合体等を主成分とするものがあげられる。
【0031】上記形成材料の選択は、電池用セパレータ
が使用される電池の種類等に応じ適宜決定されるもので
ある。すなわち、電池における好ましいSD特性発現温
度は、電池に応じて異なり、したがって、積層フィルム
の各層の融点は、SD特性発現温度に合わせることにな
る。例えば、リチウム電池の場合、現時点ではSD特性
発現温度約100〜140℃が好ましいと認識されてい
るので、低融点樹脂層の融点を約100〜140℃と
し、高融点樹脂層の融点を低融点樹脂層の融点よりも5
℃以上高く好ましくは10℃以上高くする。
【0032】つぎに、本発明の電池用セパレータの製造
方法は、例えば、上記材料を用いて、以下に示すように
して実施される。
【0033】すなわち、まず、低融点樹脂層と高融点樹
脂層とが積層された積層樹脂フィルムを準備する。
【0034】このような積層樹脂フィルムは、例えば、
従来公知の方法である共押出成形法等により容易に作製
できる。
【0035】共押出成形法における押出温度(ダイス温
度)は、特に限定するものではないが、作業性の点から
高融点樹脂の融点(この温度をTma℃とする)よりも
約10〜150℃高い温度、即ち、(Tma+10)℃
〜(Tma+150)℃の範囲で行うのが好ましい。
【0036】そして、共押出成形後に、形成された積層
樹脂フィルムを芯体に巻き取る。この巻き取りにおい
て、ドラフト比、すなわち、フィルムの巻取速度を樹脂
の押出速度で除した値を、通常10〜400、好ましく
は20〜200の範囲とし、巻取速度を、通常、約2〜
400m/min、好ましくは10〜200m/min
の範囲とすると、長尺の積層樹脂フィルムが得られる。
なお、この段階では、積層樹脂フィルムは、無孔質であ
る。
【0037】つぎに、この積層樹脂フィルムに対し、低
融点樹脂層の融点以上の温度であるTmb℃〜(Tma
−2)℃の温度範囲で熱処理(アニーリング)を行う。
本発明の上記特定の温度範囲で熱処理を行うと、その時
間は、通常、数秒間から数分間の短時間となる。
【0038】そして、この熱処理の後に、上記積層樹脂
フィルムに対して、上記低融点樹脂層の融点(Tmb
℃)未満の温度に冷却し、低融点樹脂層の固化を行う。
この冷却の温度は、低融点樹脂層の融点により適宜決定
されるものであるが、通常、0〜125℃であり、好ま
しくは100〜120℃である。
【0039】そして、上記熱処理等を施した積層樹脂フ
ィルムに対し、延伸法により多孔質化処理を行う。この
延伸法は、例えば、低温領域で1軸延伸し、さらに高温
領域で上記延伸方向と同一方向に1軸延伸するという2
段階の延伸法があげられる。
【0040】すなわち、まず、熱処理を施した積層樹脂
フィルムに対し、ロール延伸、テンター延伸等の方法で
1軸方向に延伸する。このときの温度は、−20℃〜
(Tmb−50)℃の範囲の低温領域に設定することが
好ましい。これは、−20℃未満で温度が低過ぎる場合
はフィルムの破断が起こり易くて延伸が困難となるおそ
れがあるからである。これとは逆に、(Tmb−50)
℃を越えて温度が高過ぎると次工程での高温延伸を行っ
ても目的とする多孔質化された電池用セパレータを得る
ことができないおそれがあるからである。
【0041】また、この延伸時の延伸率は、通常5〜1
50%、好ましくは20〜100%の範囲であり、延伸
速度は通常100〜1000%/minの範囲である。
なお、この延伸率は、積層樹脂フィルムの延伸前の長さ
0 と低温延伸後の長さL1を用い、下記式(数1)に
より算出した値である。
【0042】
【数1】
【0043】つぎに、この低温延伸につつぎ、高温領域
において低温延伸時の延伸方向と同一方向に1軸延伸を
行う。この高温延伸により、低温延伸時に積層樹脂フィ
ルムに生じた極微細孔が拡大されて空孔率が増大され
る。この高温延伸の温度範囲は、(Tmb−45)℃〜
(Tmb−2)℃であることが好ましい。これは、温度
が(Tmb−45)℃未満で低過ぎると空孔率を充分に
増加できないおそれがあり、これとは逆に(Tmb−
2)℃を越えて高過ぎると低融点樹脂が溶融して電気抵
抗値が高くなるおそれがあるからである。
【0044】この高温延伸も低温延伸と同様にロール延
伸、テンター延伸等により行うことができる。また、高
温延伸時の延伸率は、通常、10〜600%、好ましく
は20〜300%であり、延伸速度は通常10〜400
%/minである。なお、この延伸率は、低温延伸済み
積層樹脂フィルムの長さ(高温延伸前の長さ)L1 と高
温延伸後の長さL2 を用い、低温延伸前の積層フィルム
の長さL0 を基準として下記式(数2)により算出した
値である。
【0045】
【数2】
【0046】このように、熱処理につづき、上記低温延
伸および高温延伸を順次施して積層樹脂フィルムの各層
を多孔質化することにより、電池用セパレータを作製す
ることができる。
【0047】そして、このようにして得られた電池用セ
パレータに対しては、ヒートセット処理を行い、延伸歪
みを除去することが好ましい。このヒートセット処理
は、高温延伸後に電池用セパレータを緊張状態あるいは
緩和状態に保ち、所定温度、通常は上記高温延伸時とほ
ぼ同温度に加熱することにより行うものである。このヒ
ートセットの時間は、温度や残存する歪み量等に応じて
設定されるが、通常、2秒〜10分である。
【0048】また、電解液に対する濡れ性を向上させる
ため、電池用セパレータに対し、コロナ放電処理、界面
活性剤含浸・乾燥処理、親水性モノマーのグラフト重合
処理等の親水化処理を施すことが好ましい。
【0049】つぎに、本発明の電池用セパレータの多孔
質構造は、例えば、電子顕微鏡観察(倍率約5000〜
40000倍)によって確認でき、その孔径および空孔
率は製造条件によって変わるが、通常、孔径は約0.0
2〜1μm、空孔率は約20〜60%である。また、有
機電解液中で測定した電気抵抗は、通常、約10〜30
Ω・cm2 である。
【0050】そして、本発明の電池用セパレータがSD
特性に優れるものであることは、先に述べたとおりであ
る。すなわち、これを組み込んだ電池において、その使
用時に異常電流により内部温度が上昇すると、電池用セ
パレータの低融点多孔質樹脂層が溶融して無孔構造とな
り、一方、高融点多孔質樹脂層はその融点までは溶融せ
ずセパレータ形状を保持する支持体として機能する。こ
の結果、電気抵抗が急激に増大して電流が遮断され、そ
れ以上の温度上昇が抑制されて電池の破裂や発火が防止
され安全性が確保される。
【0051】本発明の電池用セパレータのSD特性につ
いて、従来の電池用セパレータと比較するとつぎのよう
になる。
【0052】すなわち、一般のリチウム電池用セパレー
タの電気抵抗を、室温付近で有機電解液(電導度約10
1 mS/cm)中で測定すると、その厚さ25μmで約
10 1 Ω・cm2 となる。そして、異常電流が流れた場
合に、これを遮断するためには、電池用セパレータの電
気抵抗値が上記室温付近の値よりも少なくとも2桁から
3桁以上増大する必要があるとされており、具体的に
は、厚さ25μmで約102 〜103 Ω・cm2 の電気
抵抗となる必要がある。
【0053】これに対し、本発明者らが本発明の電池用
セパレータについて上記電気抵抗の増大を調べたとこ
ろ、この電池用セパレータの室温付近での電気抵抗は、
その厚さ25μmで約101 Ω・cm2 と一般のものと
ほぼ同じであるが、低融点多孔質樹脂層の融点Tmb℃
よりも高い温度では約105 〜106 Ω・cm2 とな
り、4桁から5桁の著しい電気抵抗の増加を示すことを
突き止めた。しかも、この増大した電気抵抗値は、約1
50℃以上の温度まで維持されることも判明した。この
電気抵抗の著しい増加は、この電池用セパレータのSD
特性が優れていることを示すとともに、これを組み込ん
だ電池の安全性が優れていることをも示すものである。
【0054】このように、本発明の電池用セパレータ
が、優れたSD特性を示す理由について、本発明者ら
は、低融点多孔質樹脂層の無孔質化が速やかにかつ略完
全に起ることによるものと推察している。
【0055】
【実施例】つぎに、実施例について比較例と併せて説明
する。
【0056】
【実施例1】メルトインデックス(MI)が0.45で
融点が167℃のPPと、MIが1.5で融点が134
℃のPEを押出温度240℃で共押出成形し、内層がP
E層で、この内層の上下の外層がPP層の三層構造の積
層樹脂フィルムを作製した。なお、上記MIは、後述す
る方法により測定した値である。また、この積層樹脂フ
ィルムにおいて、PE層の厚さは10μmであり、PP
層の厚さは各々12μmである。
【0057】ついで、この積層樹脂フィルムに対し、温
度150℃で10秒間の短時間でアニーリングを施した
後、室温(約25℃)に自然冷却した。ついで、温度2
5℃で長尺方向に延伸率が40%になるように1軸延伸
し、さらに、温度110℃で前記方向と同方向に延伸率
が150%になるように1軸延伸し、さらに温度110
℃で上記延伸状態を1分間保持することによりヒートセ
ットを行い、電池用セパレータを得た。
【0058】この電池用セパレータについて、全体厚
さ,融点,平均孔径,空孔率,電気抵抗,SD特性等の
諸特性について調べた。なお、これらの特性は、下記に
示す方法により行った。また、MIの測定方法も併せて
下記に示す。
【0059】(MI)JIS K 7210に準じて測
定した。
【0060】(融点)積層樹脂フィルムを形成するのに
用いた樹脂を、温度230℃で5分間加熱して溶融させ
た後、5℃/minの速度で25℃まで冷却した。つい
で、5℃/minの速度で昇温させ、その際の吸熱ピー
ク時の温度を融点とした。なお、吸熱ピークの測定には
セイコー電子工業社製、DSC200を用いた。
【0061】(平均孔径)走査型電子顕微鏡によりセパ
レータ表面の観察を行い、孔20個について次式により
定義される孔径を測定し、その平均値を求めた。
【0062】
【数3】
【0063】(空孔率)比重計として東洋精機製作所製
のDENSIMETER−IIを用い未延伸の積層樹脂
フィルムの密度(p0 )を求めた。つぎに、この積層樹
脂フィルムから得られたセパレータの厚さ、面積および
重量から電池用セパレータの見掛け密度(p1 )を求め
た。そして、下記式(数4)により空孔率を算出した。
【0064】
【数4】
【0065】(電気抵抗およびSD特性)図2に示すよ
うな、電気抵抗測定装置を用いてSD特性を調べた。図
示のように、この電気抵抗測定装置は、その略中央に電
池用セパレータ2が配置され、この両面(図面において
左右)のそれぞれに白金電極(直径20mm)1が対向
態で配置されている。そして、これら白金電極1のそれ
ぞれの電池用セパレータと接していない側にはPP製不
織布5を介してポリテトラフルオロエチレン製の板4が
装置全体を締め付ける状態で配置されている。また、装
置の上下には、シリコーンゴム製のパッキン3が装置を
封止する状態で配置されている。
【0066】上記PP製不織布5には、電解液が含浸さ
れており、これは、プロピレンカーボネートとジメトキ
シメタンを同容量ずつ混合し、これにLiBF4 を1m
ol/1の濃度になるように溶解させたものである。な
お、図示していないが、白金板電極1には、抵抗計が接
続されており、白金電極1と電池用セパレータ2との間
には薄型熱電対が配置されている。
【0067】そして、この電気抵抗測定装置を乾燥器中
にセットし、5〜7℃/minの速度で昇温させ、各温
度における電気抵抗値を測定した。
【0068】なお、電気抵抗は国洋電機工業社製の抵抗
計、LCRメーターKC−533型を用い、1KHzの
交流抵抗で測定し、下記式(数5)により換算した。
【0069】
【数5】
【0070】この実施例の電池用セパレータのSD特性
等の諸特性の結果は、つぎのとおりである。
【0071】この電池用セパレータの全体の厚さは25
μmであり、平均孔径は0.031μm、空孔率は45
%、25℃における電気抵抗は10.3Ω・cm2 であ
った。この結果から、この電池用セパレータの正常通電
時の電気抵抗は充分に小さいものであるといえる。
【0072】つぎに、この電池用セパレータのSD特性
を図1のグラフ図に示す。このグラフ図からわかるよう
に、この電池用セパレータは、温度130℃付近で電気
抵抗値が4〜5桁急激に増大し(抵抗値が急激に増大し
始めるときの温度を「SD開始温度」という)、105
Ω・cm2 以上の大きな電気抵抗値を示した。そして、
これ以上に温度が上昇してもこの大きな電気抵抗値が維
持され、そして167℃付近から電気抵抗値が減少した
(抵抗値が減少し始めるときの温度を「耐熱温度」とい
う)。
【0073】温度130℃付近での電気抵抗値の急激な
増大は、多孔質PE層が溶解し無孔質化したために生ず
る現象であり、この抵抗増大現象および増大した抵抗値
が167℃付近まで維持されたことから、この電池用セ
パレータは、優れたSD特性を有するといえる。また1
67℃付近から電気抵抗値が減少するのはPP層も溶解
し、セパレータ形状を維持しなくなったために生ずる現
象である。
【0074】
【実施例2】実施例1で用いたのと同じ積層樹脂フィル
ムに対し下記の表1に示す条件でアニーリングを施し、
ついで、実施例1と同じ条件で冷却、延伸、ヒートセッ
ト処理を行い、5種類の電池用セパレータ(試料1〜
5)を得た。これら各電池用セパレータについて、実施
例1と同様にして諸特性を調べた。その結果も併せて下
記の表1に示す。
【0075】
【比較例1】実施例1で用いたのと同じ積層樹脂フィル
ムを、下記の表1に示す条件でアニーリングし、つい
で、実施例1と同じ条件で冷却、延伸、ヒートセット処
理を行い、2種類の電池用セパレータ(試料6,7)を
得た。これら各電池用セパレータについて、実施例1と
同様にして所特性を調べた。その結果も併せて下記の表
1に示す。
【0076】
【実施例3】MIが2.0で融点が165℃のPPと、
MIが5.0で融点が132℃のPEを押出温度230
℃で共押出成型し、2層構造の積層樹脂フィルムを作製
した。この積層樹脂フィルムにおけるPE層の厚さは1
5μm、PP層の厚さは18μmであった。この積層樹
脂フィルムを下記の表1に示す条件でアニーリングし、
実施例1と同じ条件で冷却、延伸、ヒートセット処理を
行い電池用セパレータ(試料8)を得た。この電池用セ
パレータについて、実施例1と同様にして所特性を調べ
た。この結果も併せて下記の表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】上記表1より、低融点樹脂層の融点以上の
本発明の特定の温度範囲で短時間のアニーリングを行っ
た実施例2の5種類の電池用セパレータは、製造効率に
優れるとともに、そのSD特性や耐熱性に優れているこ
とがわかる。また、二層構造の実施例3の電池用セパレ
ータにおいても、低融点樹脂層の融点以上の本発明の特
定の温度範囲で短時間のアニーリングを行ったことか
ら、製造効率に優れるとともに、そのSD特性や耐熱性
に優れていた。これに対し、低融点樹脂層の融点未満の
温度で熱処理を行った比較例1の2種類の電池用セパレ
ータは、電気抵抗が高く使用できなかった。
【0079】
【比較例2】実施例1で用いたのと同じ積層樹脂フィル
ムを温度170℃で10秒間アニーリングを施したの
ち、実施例1と同様に冷却し、ついで実施例1と同条件
で延伸しようとしたところ高温延伸時に破断し多孔質化
することができなかった。
【0080】
【発明の効果】以上のように、本発明の電池用セパレー
タの製造方法は、延伸法による多孔質化処理に先だって
行われる熱処理(アニーンリング)を、低融点樹脂層の
融点以上の上記特定の温度範囲で行うものである。この
ようにすると、上記熱処理に要する時間が短時間とな
り、製造効率が向上する他、この熱処理に使用する装置
も小型のものを使用することが可能となって、製造コス
ト的に有利となる。また、延伸法による多孔質化を採用
していることから、溶媒や添加剤等を使用することがな
く、これに起因する安全性の問題,環境問題および残留
物の問題等が発生することがない。また、本発明の電池
用セパレータの製造方法によれば、厚み精度の問題も生
じるおそれが少ない。
【0081】また、本発明の製造方法により得られる電
池用セパレータは、優れたSD特性等を備えるものであ
る。したがって、この電池用セパレータをリチウム電池
等に用いれば、これに対し高い安全性を付与することが
可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電池用セパレータのSD特性の一例を
示すグラフ図である。
【図2】電気抵抗測定装置の構成の一例を示す断面図で
ある。
【符号の説明】
1 白金電極 2 電池用セパレータ 3 シリコーンゴム製のパッキン 4 ポリテトラフルオロエチレン製の板 5 PP製不織布

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高融点多孔質樹脂層と低融点多孔質樹脂
    層とが積層された多孔質積層樹脂フィルム製の電池用セ
    パレータの製造方法であって、高融点樹脂層(この層の
    融点をTma℃とする)と低融点樹脂層(この層の融点
    をTmb℃とする)とが積層された積層樹脂フィルムを
    準備し、この積層樹脂フィルムに対しTmb℃〜(Tm
    a−2)℃の温度範囲で熱処理をしたのちTmb℃未満
    に冷却し、ついで延伸して多孔質化することを特徴とす
    る電池用セパレータの製造方法。
  2. 【請求項2】 積層樹脂フィルムとして、高融点樹脂層
    が融点150℃以上のポリプロピレンから形成され、低
    融点樹脂層が融点100℃〜140℃のポリエチレンか
    ら形成された積層樹脂フィルムを用いる請求項1記載の
    電池用セパレータの製造方法。
  3. 【請求項3】 積層樹脂フィルムとして、低融点樹脂層
    を内層とし、この層の上下のそれぞれに、外層として高
    融点樹脂層が形成された三層構造の積層樹脂フィルムを
    用いる請求項1または2記載の電池用セパレータの製造
    方法。
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