JPH0915664A - 非線形光学材料 - Google Patents

非線形光学材料

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JPH0915664A
JPH0915664A JP16487795A JP16487795A JPH0915664A JP H0915664 A JPH0915664 A JP H0915664A JP 16487795 A JP16487795 A JP 16487795A JP 16487795 A JP16487795 A JP 16487795A JP H0915664 A JPH0915664 A JP H0915664A
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particles
optical material
light
nonlinear optical
matrix
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JP16487795A
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Inventor
Shigeaki Omi
成明 近江
Yoshiharu Kaneko
祥治 兼子
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Hoya Corp
Original Assignee
Hoya Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 任意に選択された複数種の光に対してそれぞ
れ別個に非線形光学応答を示すものを得ることが容易な
非線形光学材料を提供する。 【構成】 本発明の非線形光学材料は、光学的に透明な
マトリックス中に、アスペクト比が1.2:1〜10
0:1の範囲内で異なる複数種の粒子を実質的に一方向
に配向した状態で分散させてなり、波長が互いに異なる
複数種の光に対してそれぞれ別個に3次の非線形光学応
答を示すことを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は非線形光学材料およびそ
の製造方法、非線形光素子ならびに非線形光素子による
光制御方法に係り、特に、複数種の光に対してそれぞれ
別個に非線形光学応答を示す非線形光学材料およびその
製造方法、複数種の光についてそれぞれ別個に光制御を
行うことが可能な非線形光素子ならびにこの非線形光素
子による光制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】光の波長に比べて十分に小さい金属微粒
子、半導体微粒子もしくは複合微粒子をガラス、高分
子、結晶等の透明なマトリックス中に分散させた材料に
おいて3次の非線形光学特性が観察されており、当該材
料(以下「非線形光学材料」という)が比較的大きな非
線形感受率を示すことが既に報告されている(例えばAp
pl.Phys.,A47,347 (1988)およびJ.Ceram.Soc.Japan,10
1,1340 (1993)参照)。このため、上記の非線形光学材
料は光スイッチ等の非線形光素子の材料として注目を集
めており、当該非線形光学材料によって光路の一部また
は全部を形成した非線形光素子の開発が進められてい
る。
【0003】上記の非線形光素子は、従来、1種類の入
射光について光制御を行うものであったが、近年、複数
種の入射光についてそれぞれ別個に光制御を行うことが
可能な非線形光素子が開発されている(特開平6−20
8149号公報参照)。この非線形光素子は、異なる波
長の光を吸収して3次の非線形光学効果を示す複数種の
微粒子(材質的に異なる金属微粒子または半導体微粒
子)をマトリックス中に分散させてなる非線形光学材料
を利用したものであり、マトリックス中に分散されてい
る複数種の微粒子各々についての吸収波長の光に対して
それぞれ別個に光双安定特性を示す。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、複数種
の光についてそれぞれ別個に光制御を行うことが可能な
上記の非線形光素子では、これを構成している前記の非
線形光学材料中に分散されている微粒子の材質によっ
て、3次の非線形光学効果が発現する光の波長が決まっ
てしまう。このため、光制御可能な光の波長域を任意
に、かつ、精密に制御することができず、例えば光通信
に用いられる1.3μm帯や1.5μm帯等の任意に選
択された特定の波長域の光を多重化してなる多重化光に
ついて、これを構成している各波長の光をそれぞれ別個
に光制御することが可能な非線形光素子を前記の非線形
光学材料を用いて得ることは極めて困難である。
【0005】本発明の第1の目的は、任意に選択された
複数種の光に対してそれぞれ別個に非線形光学応答を示
すものを得ることが容易な非線形光学材料およびその製
造方法を提供することにある。
【0006】また、本発明の第2の目的は、任意に選択
された複数種の光に対してそれぞれ別個に光制御を行う
ことが可能なものを得ることが容易な非線形光素子を提
供することにある。
【0007】そして、本発明の第3の目的は、任意に選
択された複数種の光に対してそれぞれ別個に光制御を行
うことが可能な、非線形光素子による光制御方法を提供
することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記第1の目的を達成す
る本発明の非線形光学材料は、光学的に透明なマトリッ
クス中に、アスペクト比が1.2:1〜100:1の範
囲内で異なる複数種の粒子を実質的に一方向に配向した
状態で分散させてなり、波長が互いに異なる複数種の光
に対してそれぞれ別個に3次の非線形光学応答を示すこ
とを特徴とするものである(以下、この非線形光学材料
を「非線形光学材料I」という。)。
【0009】また、上記第1の目的を達成する本発明の
他の非線形光学材料は、光学的に透明なマトリックス中
にアスペクト比が1.2:1〜100:1の範囲内にあ
る粒子を実質的に一方向に配向した状態で分散させてな
る光学材料の積層物からなり、該積層物を構成している
光学材料が該光学材料中に分散している粒子のアスペク
ト比分布からみて複数種に分かれ、かつ、該積層物が、
波長が互いに異なる複数種の光に対してそれぞれ別個に
3次の非線形光学応答を示すことを特徴とするものであ
る(以下、この非線形光学材料を「非線形光学材料II」
という。)。
【0010】一方、本発明の非線形光学材料の製造方法
は、光学的に透明なマトリックス中に径の異なる複数種
の粒子を分散させてなる光学材料を所定の温度環境下で
一定方向に伸長させて、光学的に透明なマトリックス中
にアスペクト比が1.2:1〜100:1の範囲内で異
なる複数種の粒子を実質的に一方向に配向した状態で分
散させてなる非線形光学材料を得ることを特徴とするも
のである(以下、この方法を「方法I」という。)。
【0011】また、本発明の非線形光学材料の他の製造
方法は、粒子の材料物質を基板上に島状に堆積させる第
1の工程と、マトリックスの材料物質を基板上に層状に
堆積させる第2の工程とを、少なくとも前記第1の工程
での前記基板の傾斜角度を変えながら同一基板の所定面
上において複数回繰り返すことにより、光学的に透明な
マトリックス中にアスペクト比が1.2:1〜100:
1の範囲内で異なる複数種の粒子を実質的に一方向に配
向した状態で分散させてなる非線形光学材料を得ること
を特徴とするものである(以下、この方法を「方法II」
という。)。
【0012】そして、上記第2の目的を達成する本発明
の非線形光素子は、上述した本発明の非線形光学材料に
よって光路の一部または全部が形成されていることを特
徴とするものである。
【0013】また、上記第3の目的を達成する本発明の
非線形光素子による光制御方法は、上述した本発明の非
線形光学材料によって光路の一部が形成されている非線
形光素子に、前記非線形光学材料に3次の非線形光学応
答が発現する波長の光を複数種多重化してなる被制御光
を入射させ、前記非線形光学材料の非線形光学特性を利
用して前記複数種の光をそれぞれ別個に光制御すること
を特徴とするものである。
【0014】以下、本発明を詳細に説明する。先ず本発
明の非線形光学材料Iについて説明すると、この非線形
光学材料Iは、上述したように、光学的に透明なマトリ
ックス中に、アスペクト比が1.2:1〜100:1の
範囲内で異なる複数種の粒子を実質的に一方向に配向し
た状態で分散させてなる。
【0015】ここで、本発明でいう「光学的に透明なマ
トリックス」とは、当該マトリックスに分散させようと
する粒子についての吸収ピーク波長域における光吸収係
数αが概ね10cm-1以下であるものを意味する。非線
形光学材料の非線形光学特性は、当該非線形光学材料中
に分散されている粒子の吸収ピーク波長(表面プラズモ
ン共鳴による光吸収ピークあるいは量子閉じ込め効果に
より離散化した量子レベル間で共鳴する光吸収ピーク)
近傍で最も増大するので、当該非線形光学材料に非線形
光学応答を発現させるための光としては前記の吸収ピー
クまたはその近傍の波長の光を使用することが好ましい
わけであるが、粒子の吸収ピーク波長またはその近傍に
マトリックスの吸収が存在すると、入射した光がこの吸
収によって減衰ないし消失してしまう。マトリックスと
しては、上記の光吸収係数αが5cm-1以下のものが特
に好ましい。
【0016】また、本発明者らの研究によれば、非線形
光学材料における|χ(3)|/α の値はマトリックスの
屈折率に応じて変化し、マトリックスの屈折率が大きい
ほど大きくなる(特願平6−31206号明細書の第1
4段参照)。したがって、弱い入射光強度によっても非
線形光学応答が発現する非線形光学材料Iを得るうえか
らは、当該非線形光学材料Iのマトリックスの屈折率は
高い方がよい。ただし、マトリックスの屈折率が4を超
えると反射による光損失が大きくなり、また、反射防止
が困難になる。
【0017】光学的に透明で屈折率の高いマトリックス
を形成することができる物質の具体例としては、下記
(1) 〜(10) のものが挙げられる。 (1) B23 とPbOとを必須構成成分とし、B23
量が15〜50モル%、PbOの量が50〜85モル%
であるガラス。
【0018】(2) Ga23 と、Bi23 と、PbOお
よび/またはCdOとを必須構成成分とし、Ga23
の量が10〜35モル%、Bi23 の量が10〜70
モル%、PbOとCdOの合量が20〜80モル%であ
るガラス。
【0019】(3) Bi23 および/またはPbOと、
ZnO,BaO,CdOおよびAl23 から選ばれる
少なくとも1種とを必須構成成分とし、Bi23 とP
bOの合量が30〜85モル%、ZnOとBaOとCd
OとAl23 の合量が15〜70モル%であるガラ
ス。
【0020】(4) GeO2 と、Bi23 ,Tl2Oおよ
びPbOから選ばれる少なくとも1種とを必須構成成分
とし、GeO2 の量が25〜70モル%、Bi23
Tl2OとPbOの合量が30〜75モル%であるガラ
ス。
【0021】(5) TiO2 とPbOとを必須構成成分と
し、TiO2 の量が30〜75モル%、PbOの量が2
5〜70モル%であるガラス。
【0022】(6) TeO2 および/またはSb23
と、PbOとを必須構成成分とし、TeO2 とSb23
の合量が20〜95モル%、PbOの量が5〜80モ
ル%であるガラス。
【0023】(7) TeO2 および/またはSb23
と、BaO,MgO,SrO, ZnOおよびCdOか
ら選ばれる少なくとも1種とを必須構成成分とし、Te
2 とSb23 の合量が60〜98モル%、BaOと
MgOとSrOとZnOとCdOの合量が2〜40モル
%であるガラス。
【0024】(8) Bi23 と、CdOおよび/または
ZnOと、B23 ,SiO2 およびP25 から選ばれ
る少なくとも1種とを必須構成成分とし、Bi23
量が10〜90モル%、CdOとZnOの合量が5〜8
5モル%、B23 とSiO2 とP25 の合量が1〜3
0モル%であるガラス。
【0025】(9) As,GeおよびSbから選ばれる少
なくとも1種と、S,SeおよびTeから選ばれる少な
くとも1種とを必須構成成分とし、AsとGeとSbの
合量が10〜60at%、SとSeとTeの合量が40〜
90at%であるカルコゲナイドガラス。
【0026】(10) ZnS,ZnSe,ZnTe,Cu
Cl,CuBr,CuI,TlI,CsPbCl3 ,A
gGaSe2 ,As23 ,Tl3TaS4 ,Tl3Ta
Se4,Tl3VS4 ,CdS,CdSe,PbS,Ga
Se,GaP,ダイヤモンド,Y23 ,La22S,
SrTiO3 ,K(Ta,Nb)O3 ,Tl3TaSe4
,Bi2WO6 ,Bi4Ti312 ,Bi4Ge312
Bi4Si312 ,Y3Ga512 ,Gd3Ga512
(Ga,Al)As,Ga(As,P),Bi12GeO
20 ,Bi4Si312 ,Bi12SiO20 ,CoFe2
4 ,PbGeO3 ,Pb(Mg1/3 ,Nb 2/3)O3
Pb(Mg1/3 ,Ta2/3)O3 ,Pb(Zn1/3 ,N
2/3)O3 ,(Pb,La)(Zr,Ti)O2 ,Z
nWO4,ZnO,TiO2 ,TeO2 ,BaTiO
3 ,PbTiO3 ,KNbO3 ,LiNbO3 ,LiT
aO3 ,YAlO3 ,(Sr,Ba)Nb26 ,La2
Ti27 ,Ca2NbO7 ,Pb5Ge311 ,PbN
411 ,Ba2NaNb515 ,Pb2KNb515
Sr2KNb515 ,Ba2LiNb515 ,K3Li2
515 ,Ba3TiNb415 ,GeSe,LiIn
2 ,LiInSe2,CdGa24 ,Tl3AsS
4 ,Tl3AsSe4 ,Tl3PSe4 ,CaMoO4
PbMoO4 ,CaWO4 ,Bi2(MoO)3 ,Pb2
MoO5 ,Bi2WO6 ,YVO4およびPb5(Ge
4)(VO42 から選ばれる少なくとも1種の結晶。
【0027】さらに、本発明者らの研究によれば、非線
形光学応答の速度が速い非線形光学材料を得るうえから
は、マトリックスとして熱伝導率が2W/mK以上の物
質を用いることが好ましい。熱伝導率が2W/mK以上
で、かつ、光学的に透明なマトリックスを形成すること
ができる物質の具体例としては、ダイヤモンド、GaA
s,GaP,InP,SiC,ZnS,CdS,ZnS
e,CdSe,ZnTe,CdTe等の半導体、SiO
2 ,Al23 ,TiO2 ,LiNbO3 ,MgO,Y2
3 ,MgO・Al23 ,M gO・SiO2 ,MgT
iO2 ,Y3Al512(YAG),Y3Ga512 ,Y
3Ga512 ,Yb3Al512 等の酸化物、AlN,
Si34 ,BN等の窒化物が挙げられ、これらは熱伝
導率が2W/mK以上であれば単結晶体であってもよい
し多結晶体であってもよい。これらの物質は、熱伝導率
が2W/mK以上である光学的に透明なマトリックスを
形成することができるばかりでなく、光学材料として実
用上十分な耐久性、耐光性を有している。
【0028】なお、前述の通り、マトリックスは、当該
マトリックスに分散させようとする粒子についての吸収
ピーク波長域における光吸収係数αがそれぞれ概ね10
cm-1以下である必要があるので、分散させようとする
粒子の材質に応じてその材質が適宜決定される。
【0029】上述したマトリックス中に分散させる粒子
は、前述したように、アスペクト比が1.2:1〜10
0:1の範囲内で異なる複数種の粒子である。ここで、
粒子のアスペクト比(長軸方向の長さ/短軸方向の長
さ)を1.2:1〜100:1に限定する理由は、次の
通りである。すなわち、粒子の光吸収のピーク波長は当
該粒子のアスペクト比に応じて変化するが、アスペクト
比が1.2:1より小さい粒子では、その吸収ピーク波
長が同一物質からなる球形の粒子の吸収ピーク波長とほ
ぼ同じになる結果、このような粒子をマトリックス中に
複数種分散させても、波長が異なる複数種の光に対して
それぞれ別個に3次の非線形光学応答を示す非線形光学
材料を得ることが困難になる。したがって、本発明の非
線形光学材料Iにおいては、マトリックス中に分散させ
る粒子のアスペクト比の下限を1.2:1とする。一
方、アスペクト比が100:1より大きい粒子では、そ
の吸収ピークが2000nmよりも長波長側になる結
果、非線形光素子を用いた光学系で通常使用される波長
300〜2000nmの光によって実用上十分な非線形
光学特性を発現させることが困難になる。したがって、
本発明の非線形光学材料Iにおいては、マトリックス中
に分散させる粒子のアスペクト比の上限を100:1と
する。上記のアスペクト比は粒子の材質や目的とする非
線形光学材料の用途等にもよるが、狭い帯域に含まれる
複数種の光について高い効率でそれぞれ別個に光制御す
ることが可能な非線形光学材料を得るうえからは、概ね
2:1〜70:1であることが好ましい。
【0030】粒子は、アスペクト比が上記の範囲であれ
ば棒状,針状,円柱状,角柱状,ラグビーボール状,板
状等、種々の形状のものでよいが、その最長寸法(長軸
方向の大きさ)は1〜500nmであることが好まし
い。粒子の最長寸法が1nm未満では、この粒子をマト
リックスに分散させることによって発現する非線形光学
特性が微弱になり、非線形光素子に利用することができ
る非線形光学材料を得ることが困難になる。一方、粒子
の最長寸法が500nmを超えると、この粒子をマトリ
ックスに分散させることによって発現する非線形光学特
性が微弱になる他、当該粒子による光散乱が強くなって
光損失が増大するので、非線形光素子に利用することが
できる非線形光学材料を得ることが困難になる。粒子の
最長寸法は2〜250nmであることが特に好ましい。
【0031】また、上記の粒子は、アスペクト比からみ
て複数種がマトリックス中に分散していればよく、これ
ら複数種の粒子の材質は同じであってもよいし異なって
いてもよい。粒子の種類数は特に限定されるものではな
いが、マトリックス中に分散されている複数種の粒子
は、アスペクト比毎にその出現ひん度をみたときに下記
(a) または(b) の条件を満たすものであることが望まし
い。
【0032】(a) あるアスペクト比R1 と、このR1
りも大きいアスペクト比R2 との間の範囲内において、
当該範囲内のアスペクト比を有する粒子がほぼ同じひん
度で出現する。ここで、前記のR1 は、目的とする非線
形光学材料Iに非線形光学応答を発現させるために使用
しようとする複数種の光(波長が互いに異なるもの)の
うちで波長が最も短い光を主に吸収する粒子のアスペク
ト比とし、前記のR2 は前記複数種の光(波長が互いに
異なるもの)のうちで波長が最も長い光を主に吸収する
粒子のアスペクト比とする。また、「ほぼ同じひん度」
とは、ひん度の変動がひん度の平均値に対して±50%
以内であることを意味する。
【0033】(b) 目的とする非線形光学材料Iに非線形
光学応答を発現させるために使用しようとする複数種の
光のそれぞれについて当該光を主に吸収する所定アスペ
クト比の粒子が存在し、かつ、これらの粒子の出現ひん
度がそれぞれピーク値またはその近傍の値となってい
る。
【0034】上記の粒子の材料としては、3次の非線形
感受率|χ(3)|の大きい非線形光学材料が得られると
いう観点から、下記(i) 〜(vi)のものが好ましい。 (i) Cu,Au,Ag,Sn,Pt,Pd,Ni,C
o,Rh,Ir,Fe,Ru,Os,Mn,Mo,W,
Nb,Ta,Bi,SbおよびPbからなる群より選ば
れた金属単体。 (ii)上記(i) の群より選ばれた金属同士の合金からなる
もの。 (iii) 上記(i) の群より選ばれた1種または複数種の金
属を総量で80モル%以上含む合金。この場合、当該合
金を形成する前記金属以外の金属成分の具体例として
は、Al,Zn,Cd,Y,Yb等が挙げられる。
【0035】(iv)Si,Ge,Ga,Se,Te,Al
Sb,InP,GaAs,GaP,ZnS,ZnSe,
ZnTe,CdS,CdSe,CdTe,PbS,Pb
Se,PbTe,CuCl,CuBr,CuI,TlC
l,TlBr,TlI,SixGe(1-x)(0≦x≦
1),ZnxCdyPb(1-x-y)zSewTe(1-z-w)(0
≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1,0≦w≦1)およ
びTlxCu(1-x)ClyB rz(1-y-z)(0≦x≦1,
0≦y≦1,0≦z≦1)からなる半導体群より選ばれ
た半導体。 (v) 上記(iv)の群より選ばれた半導体同士の固溶体。 (vi)上記(iv)の群より選ばれた1種または複数種の半導
体を総量で90モル%以上含む固溶体。この場合、当該
固溶体を形成する前記半導体以外の成分の具体例として
は、C,S,GaSb,AlAs,AlSb等が挙げら
れる。
【0036】また、上記の粒子は、非線形感受率が大き
い物質からなるコアの表面を当該コアおよびマトリック
スとは異なる物質からなるシェルで被覆してなる複合粒
子であってもよい。この場合、前記のコアの材料として
は上記(i) 〜(vi)に挙げたものと同じものが挙げられ、
中でも、Cu,Au,Ag,Sn,Pd,Ni,Bi,
SbおよびPbからなる群より選ばれた金属単体、前記
の群より選ばれた金属同士の合金、ならびにSixGe
(1-x)(0≦x≦1),ZnxCdyPb(1-x-y)zSew
Te(1-z-w)(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1,
0≦w≦1)およびTlxCu(1-x)ClyBrz
(1-y-z)(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1)から
なる群より選ばれた半導体が好ましい。また、上記のシ
ェルの材料としてはCu,Au,AgおよびPdからな
る群より選ばれた金属単体、前記の群より選ばれた金属
同士の合金、ならびに前記の群より選ばれた1種または
複数種の金属を総量で80モル%以上含む合金(この場
合、当該合金を形成する前記金属以外の金属成分の具体
例としては、Al,Zn,Cd,Y,Yb等が挙げられ
る。)が挙げられる。
【0037】非線形光素子を用いた光学系では、通常、
波長300〜2000nmの光が利用されるわけである
が、上記(i) 〜(iii) の物質からなる粒子は、300〜
2000nmの波長域に表面プラズモン共鳴による光吸
収ピークを有するという観点から好適であり、上記(iv)
〜(vi)の物質からなる粒子は、300〜2000nmの
波長域に量子閉じ込め効果により離散化した量子レベル
間で共鳴する光吸収ピークを有するという観点から好適
である。また、上記の複合粒子は、そのコアが上述した
金属もしくは合金からなるものである場合には、300
〜2000nmの波長域に表面プラズモン共鳴による光
吸収ピークを有するという観点から好適であり、コアが
上述した半導体もしくは固溶体からなるものである場合
には、300〜2000nmの波長域に量子閉じ込め効
果により離散化した量子レベル間で共鳴する光吸収ピー
クを有するという観点から好適である。そして、上記の
複合粒子は、そのシェルが上述した金属もしくは合金か
らなるものである場合には、マトリックスの誘電的な閉
じ込めによる局部電場の集中効果が大きいという観点か
ら好適である。
【0038】本発明の非線形光学材料Iでは、上述した
複数種の粒子が前述した光学的に透明なマトリックス中
に実質的に一方向に配向した状態で分散されているわけ
であるが、本発明でいう「実質的に一方向に配向した状
態で分散されている」とは、粒子の長軸もしくは短軸の
配向が全角で10度以内、好ましくは5度以内となるよ
うにして当該粒子がマトリックス中に分散されているこ
とを意味する。粒子が実質的に一方向に配向された状態
にない場合には、非線形光学特性が低下し、光制御の効
率が悪化する。
【0039】マトリックス中に上述のようにして分散さ
れている粒子の割合(非線形光学材料Iに占める割合)
は、目的とする非線形光学材料Iの用途、粒子の材質、
マトリックスの材質等に応じて適宜変更可能であるが、
目的とする非線形光学材料Iに非線形光学応答を発現さ
せるために使用しようとする複数種の光のそれぞれにつ
いて当該光を主に吸収する所定アスペクト比の粒子につ
いては、その割合が0.0001〜80体積%であるこ
とが好ましく、特に0.0005〜50体積%であるこ
とが好ましい。
【0040】前述したマトリックス中に上述した粒子が
実質的に一方向に配向した状態で分散されている本発明
の非線形光学材料Iでは、粒子の光吸収のピーク波長が
当該粒子のアスペクト比毎に異なることから、複数の光
吸収ピークを有し、ひいては3次の非線形感受率につい
ての複数のピークを有する。したがって、当該非線形光
学材料Iは、波長が互いに異なる複数種の光に対してそ
れぞれ別個に3次の非線形光学応答を示す。このような
特性を有する本発明の非線形光学材料Iは、後述する本
発明の方法Iや方法II等の方法により得ることができ
る。
【0041】次に、本発明の非線形光学材料IIについて
説明する。本発明の非線形光学材料IIは、前述したよう
に、光学的に透明なマトリックス中にアスペクト比が
1.2:1〜100:1の範囲内にある粒子を実質的に
一方向に配向した状態で分散させてなる光学材料の積層
物からなる。そして、前記の積層物を構成している光学
材料は、当該光学材料中に分散している粒子のアスペク
ト比分布からみて複数種に分かれる。
【0042】上記の光学材料の各々は、当該光学材料を
構成している粒子がそのアスペクト比からみて実質的に
1種類であってもよいという点で前述した本発明の非線
形光学材料Iと異なるが、この点を除けば基本的に本発
明の非線形光学材料Iと同じであるので、ここではマト
リックスおよび粒子についての説明を省略する。
【0043】また、粒子のアスペクト比分布からみた光
学材料の種類数は2種以上の所望数であればよく、この
種数は上記の積層物(非線形光学材料II)を構成してい
る光学材料の数より少なくてもよい。すなわち、同種の
光学材料が2種以上あってもよい。ただし、上記の積層
物(非線形光学材料II)を構成している光学材料の全て
または少なくとも2つが、アスペクト比が異なる複数種
の粒子を光学的に透明なマトリックス中に分散させたも
の、すなわち本発明の非線形光学材料Iである場合、こ
れらの光学材料は粒子のアスペクト比分布が近似するも
のであってもよい。なお、本発明でいう「粒子のアスペ
クト比分布」とは、マトリックス中に分散されている粒
子についてアスペクト比毎にその出現ひん度を求めたと
きの粒子の分布を意味する。
【0044】上述した積層体からなる本発明の非線形光
学材料IIでは、当該非線形光学材料II(積層体)を構成
している光学材料毎に粒子の存在に起因する光吸収のピ
ーク波長が異なることから、複数の光吸収ピークを有
し、ひいては3次の非線形感受率についての複数のピー
クを有する。したがって、当該非線形光学材料IIは、波
長が互いに異なる複数種の光に対してそれぞれ別個に3
次の非線形光学応答を示す。
【0045】なお、上記の積層物(非線形光学材料II)
を構成している光学材料の全てが、アスペクト比が異な
る複数種の粒子を光学的に透明なマトリックス中に分散
させたもの(本発明の非線形光学材料I)であり、か
つ、これらの光学材料における粒子のアスペクト比分布
が近似する場合には、粒子による光吸収のピーク波長は
光学材料毎に近似するが、各光学材料が前述した本発明
の非線形光学材料Iであることから、当該非線形光学材
料IIは複数の光吸収ピークを有し、ひいては3次の非線
形感受率についての複数のピークを有する。したがっ
て、この場合の非線形光学材料IIも、波長が互いに異な
る複数種の光に対してそれぞれ別個に3次の非線形光学
応答を示す。
【0046】このような特性を有する本発明の非線形光
学材料IIは、例えば、前述した本発明の非線形光学材料
Iの1種または複数種を所望枚数、光学的に張り合わせ
ることにより得ることができる。また、後述する本発明
の方法II等の方法によっても得ることができる。
【0047】次に、本発明の方法Iについて説明する。
本発明の方法Iは、前述したように、光学的に透明なマ
トリックス中に径の異なる複数種の粒子を分散させてな
る光学材料を所定の温度環境下で一定方向に伸長させ
て、光学的に透明なマトリックス中にアスペクト比が
1.2:1〜100:1の範囲内で異なる複数種の粒子
を実質的に一方向に配向した状態で分散させてなる非線
形光学材料を得ることを特徴とするものである。
【0048】先ず、光学的に透明なマトリックス中に径
の異なる複数種の粒子を分散させてなる上記の光学材料
について説明すると、この光学材料では径からみて複数
種の粒子が光学的に透明なマトリックス中に分散してい
ればよく、これら複数種の粒子の材質は互いに同じであ
ってもよいし異なっていてもよい。このような光学材料
は、例えば、溶融・熱析出法、イオン注入法、イオン交
換法、スパッタ法、ゾル−ゲル法等によって得ることが
できる。以下、方法毎に詳述する。
【0049】(A)溶融・熱析出法 この方法は、光学的に透明なガラス中に径の異なる複数
種の粒子を分散させてなる光学材料を得るための方法と
して好適である。溶融・熱析出法により目的とする光学
材料を得る場合には、例えば、マトリックスとして用い
るガラスの原料と粒子の原料とを含む混合物を加熱・溶
融してガラス融液としたのち、このガラス融液を室温ま
で冷却して、粒子の構成成分がイオンまたは原子状にな
って導入されている均一ガラスを先ず得る。このとき、
ガラスの原料としては、粒子の構成成分の酸化を防止す
るうえから、酸化作用の強い硝酸塩,硫酸塩等は避け、
酸化物,水酸化物等を用いるのが好ましい。
【0050】ガラス中に金属粒子を分散させようとする
場合には、上記の「粒子の原料」として当該金属粒子の
材料である金属についての各種化合物を用いることがで
きる。例えば、Cu粒子の原料としては、Cu2O,C
uO等の酸化物、CuF,CuCl,CuBr,CuI
等のハロゲン化物、CuCO3 等の炭酸塩等を用いるこ
とができる。また、Ag粒子の原料としては、Ag
2O,AgO等の酸化物、AgF,AgCl,AgB
r,AgI等のハロゲン化物、Ag2CO3 等の炭酸塩
等を用いることができる。Au粒子の原料としては、A
23 等の酸化物、AuCl3 ,AuBr3 ,AuH
Cl4 等のハロゲン化物等を用いることができる。Cu
粒子,Ag粒子およびAu粒子以外の金属粒子について
も、当該金属についての酸化物,ハロゲン化物,炭酸塩
等をその原料として用いることができる。さらに、Cu
粒子やAg粒子等については、有機金属化合物をその原
料として用いることもできる。金属粒子の原料は、金属
単体に換算して、ガラスの原料100モル%に対して
0.0001〜10モル%となる割合でガラスの原料に
添加することが好ましい。なお、溶融・析出法によって
ガラス中に金属粒子を分散させてなる光学材料を得る場
合、金属粒子の析出を的確に行ううえから、SnOおよ
び/またはSb23 をガラスの原料100モル%に対
して0.0001〜10モル%添加することが好まし
い。
【0051】また、ガラス中に半導体粒子を分散させよ
うとする場合には、上記の「粒子の原料」として単体半
導体、化合物半導体、単体半導体同士の固溶体、化合物
半導体同士の固溶体、あるいは単体半導体と化合物半導
体との固溶体等を用いることができる。
【0052】例えば、SixGe(1-x)(0≦x≦1)か
らなる半導体粒子の原料には、Si,GeおよびSix
Ge(1-x)(0≦x≦1)固溶体を用いることができ
る。また、ZnxCdyPb(1-x-y)zSewTe(1-z-w)
(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、0≦w≦1)
からなる半導体粒子の原料には、ZnS,ZnSe,Z
nTe,CdS,CdSe,CdTe,PbS,PbS
eおよびPbTe等の化合物半導体および/またはZn
xCdyPb(1-x-y)zSewTe(1-z-w)(0≦x≦1、
0≦y≦1、0≦z≦1、0≦w≦1)固溶体を用いる
ことができる。TlxCu(1-x)ClyBrz
(1-y-z)(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦ 1)から
なる半導体粒子の原料には、TlCl,TlBr,Tl
I,CuCl,CuBrおよびCuI等の化合物半導体
および/またはTlxCu(1-x)ClyBrz
(1-y -z)(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1)固溶
体を用いることができる。この他、Tlの原料としては
Tl2O等の酸化物,TlF等のハロゲ ン化物,Tl2
CO3 等の炭酸塩等を用いることができ、Cu原料とし
てはCu2O等の酸化物、CuF等のハロゲン化物、C
2CO3 等の炭酸塩等を用いることができる。また、
Clの原料としてはCdCl2 等の塩化合物を、Brの
原料としてはCdBr2 等の臭化物を、Iの原料として
はCsI2 等のヨウ化物を用いることができる。
【0053】なお、例えばSixGe(1-x)(0≦x≦
1)からなる半導体粒子を分散させる場合、ガラスの原
料の溶解中にSixGe(1-x)(0≦x≦1)半導体の成
分が酸化するのを防止するために、C等の還元剤を当該
原料に添加することが好ましい。また、ZnxCdyPb
(1-x-y)zSewTe(1-z-w)(0≦x≦1、0≦y≦
1、0≦z≦1、0≦w≦1)からなる半導体粒子を分
散させる場合、ガラスの原料としては、ガラス中への半
導体構成成分の溶解を促進し、ガラスの原料の溶解中に
S,Se,Teが揮発するのを防止し、かつ、半導体粒
子の析出を促進する効果を有する成分であるZnO,C
dOまたはPbOを含有するものを用いることが好まし
い。TlxCu(1-x)ClyBrz(1-y-z)(0≦x≦
1、0≦y≦1、0≦z≦1)からなる半導体粒子を分
散させる場合、ガラスの原料としては、Tlおよび/ま
たはCuの酸化を防止し、ガラスの原料の溶解中にC
l,Br,Iが揮発するのを防止し、かつ、半導体粒子
の析出を促進させる効果を有する成分であるSnOおよ
び/またはSb23 を含有するものを使用することが
好ましい。この場合、SnOとSb23 の合量は、そ
の他のガラス原料100モル%に対して10モル%以下
が好ましい。
【0054】また、ガラス中に複合粒子を分散させよう
とする場合には、上記の「粒子の原料」として、コアの
原料およびシェルの原料をそれぞれ用いる。コアが金属
からなる複合粒子を分散させようとする場合には、上述
した金属粒子の原料と同じものを使用することができ、
コアが半導体からなる複合粒子を分散させようとする場
合には、上述した半導体粒子の原料と同じものを使用す
ることができる。そして、シェルの原料としては、C
u,Ag,Au,Pd等についての酸化物,ハロゲン化
物,炭酸塩,有機金属化合物等を用いることができる。
【0055】上述した原料を用いて粒子の構成成分が導
入されている均一ガラスを得た後に、この均一ガラスを
所定の温度で熱処理することによりガラス中に粒子を析
出させる。このときの熱処理温度は粒子の材質に応じて
異なるが、金属粒子および半導体粒子のいずれについて
も、概ね200〜1000℃の範囲内である。そして、
この熱処理を複数回行うことにより、光学的に透明なガ
ラス中に径の異なる複数種の粒子を分散させてなる光学
材料が得られる。
【0056】上記の均一ガラス中に導入されている粒子
の構成成分が結晶核を作る(核化する)温度(核化温
度)と、この核化によって生じた結晶核が成長して粒子
が析出する温度(成長温度)とは異なり、核化温度は成
長温度より低い。したがって、ガラス中に粒子を析出さ
せるための熱処理を複数回行った場合、2回目以降の熱
処理時には、新たな核化および当該核化によって生じた
結晶核の成長が起こる他に、当該熱処理前にガラス中に
析出していた粒子の更なる成長も起こる。その結果とし
て、光学的に透明なガラス中に径の異なる複数種の粒子
を分散させてなる光学材料が得られる。
【0057】なお、ガラス中に分散させようとする粒子
が複合粒子である場合には、先ずコアとなる微粒子(以
下「コア微粒子」という)をガラス中に析出させるため
の熱処理(温度:T1 )を行った後、この熱処理によっ
て析出したコア微粒子の表面にシェルとなる物質を析出
させてシェルを形成するための熱処理(温度:T2 ,T
2 >T1 )を行うことによって複合粒子が得られる。し
たがって、ガラス中に分散させようとする粒子が複合粒
子である場合には、コア微粒子を析出させるための熱処
理とシェルを形成するための熱処理との2つによって構
成される熱処理を複数回行うことにより、光学的に透明
なガラス中に径の異なる複数種の粒子(複合粒子)を分
散させてなる光学材料が得られる。
【0058】(B)イオン注入法 この方法は、前述したガラス等の非晶質物質や前述した
結晶からなる光学的に透明なマトリックス中に径の異な
る複数種の粒子を分散させてなる光学材料を得るための
方法として好適である。イオン注入法により目的とする
光学材料を得る場合には、例えば通常のイオン注入装置
を用いて、所望のマトリックスに粒子形成用のイオンを
高速で打ち込み、これによって当該マトリックス中に粒
子の構成成分を先ず導入する。このとき、分散させよう
とする粒子が複合粒子である場合には、コア形成用のイ
オンとシェル形成用のイオンを同時または別々に高速で
打ち込む。次いで、上記のマトリックス中に粒子を析出
させるための熱処理を前述した溶融・析出法での熱処理
に準じて行うことにより、光学的に透明なマトリックス
中に径の異なる複数種の粒子を分散させてなる光学材料
が得られる。
【0059】(C)イオン交換法 この方法は、光学的に透明なガラス中に径の異なる複数
種の粒子を分散させてなる光学材料を得るための方法と
して好適である。イオン交換法により目的とする光学材
料を得る場合には、例えば、先ず被交換イオン(例え
ば、アルカリ金属イオン等)を含有させたガラスを得、
このガラスに含有されている被交換イオンと、分散させ
ようとする粒子の構成成分のイオンとを乾式または湿式
のイオン交換法により交換することによってガラス中に
粒子の構成成分を導入する。このとき、分散させようと
する粒子が複合粒子である場合には、コア形成用のイオ
ンとシェル形成用のイオンを同時または別々に導入す
る。次いで、上記のマトリックス中に粒子を析出させる
ための熱処理を前述した溶融・析出法での熱処理に準じ
て行うことにより、光学的に透明なガラスマトリックス
中に径の異なる複数種の粒子を分散させてなる光学材料
が得られる。
【0060】(D)スパッタ法 この方法は、非晶質物質や前述した結晶からなる光学的
に透明なマトリックス中に径の異なる複数種の粒子を分
散させてなる光学材料を得るための方法として好適であ
る。スパッタ法により目的とする光学材料を製造する場
合には、例えば、通常のスパッタ装置を用いて、基板
(例えば、石英ガラス等)上にマトリックス材料および
粒子材料を交互にまたは同時に堆積させて、粒子の構成
成分を含有した材料を得る。次いで、上記の材料中に粒
子を生成させるための熱処理を前述した溶融・析出法で
の熱処理に準じて行うことにより、光学的に透明なマト
リックス中に径の異なる複数種の粒子を分散させてなる
光学材料が得られる。
【0061】(E)ゾル−ゲル法 この方法は、前述したガラス等の非晶質物質や前述した
結晶(セラミックス)からなる光学的に透明なマトリッ
クス中に径の異なる複数種の粒子を分散させてなる光学
材料を得るための方法として好適である。ゾル−ゲル法
により目的とする光学材料を製造する場合には、例え
ば、マトリックスの原料となる有機金属化合物(例えば
金属アルコキシド等)と粒子の原料とを含有したゾル溶
液を調製し、このゾル溶液について加水分解、脱水縮合
反応を行って、粒子の構成成分が導入されたゲル体を得
る。次いで、上記のゲル体中に粒子を析出させるための
熱処理を前述した溶融・析出法での熱処理に準じて行う
ことにより、光学的に透明なマトリックス中に径の異な
る複数種の粒子を分散させてなる光学材料が得られる。
粒子を析出させた後、ゲル体を無孔化するための熱処理
を必要に応じて行ってもよい。
【0062】光学的に透明なマトリックス中に径の異な
る複数種の粒子を分散させてなる光学材料は、上述した
(A)〜(E)の方法により得ることができる他、下記
(F)〜(H)の方法によっても得ることができる。
【0063】(F)細孔の孔径分布が局部的に異なる光
学的に透明な多孔質のマトリックスの細孔内に粒子の原
料を堆積させ、この後に熱処理を施して前記粒子の原料
から粒子を生成させることにより、光学的に透明なマト
リックス中に径の異なる複数種の粒子を分散させてなる
光学材料を得る方法。 この方法は、光学的に透明なガラス中またはセラミック
ス中に径の異なる複数種の粒子を分散させてなる光学材
料を得るための方法として好適である。
【0064】この方法で用いる「細孔の孔径分布が局部
的に異なる光学的に透明な多孔質のマトリックス」は、
ゾル−ゲル法,分相法,気相法等によって得た光学的に
透明な多孔質体に対して、局部的に加熱温度や処理時間
を変えながら熱処理を施すことにより得ることができ
る。ここで、ゾル−ゲル法によって得られる前記の多孔
質体は、単成分または多成分のガラスもしくはセラミッ
クスを作製する際にその中間体として得られる多孔質ゲ
ル(適当な熱処理を施して硬質化したものを含む)であ
り、分相法によって得られる前記の多孔質体は、分相法
によって高ケイ酸ガラスを作製する際にその中間体とし
て得られる多孔質ガラスであり、気相法によって得られ
る前記の多孔質体は、火炎加水分解反応を利用した気相
法によって作製された多孔質ガラスである。これらの多
孔質体に存在する細孔の孔径は、当該多孔質体の材質に
応じた所定温度の熱処理を施すことにより漸次小さくな
っていく。また、分相法によって多孔質体を得る際に、
高ケイ酸ガラスの元となるガラス(例えばホウケイ酸ガ
ラス)を分相するための熱処理を複数回行った後に酸に
よる可溶相の溶出を行うことによっても、2回目以降の
熱処理時に新たな分相が起こる他に、当該熱処理前の熱
処理によって分相した酸可溶相(アルカリの多い相)の
成長が起こる結果として、「細孔の孔径分布が局部的に
異なる光学的に透明な多孔質のマトリックス」を得るこ
とができる。
【0065】上記「細孔の孔径分布が局部的に異なる光
学的に透明な多孔質のマトリックス」の細孔内に堆積さ
せる粒子の原料の具体例としては、前記(A)で例示し
たものと同じものが挙げられる。そして、前記細孔内へ
の粒子の原料の堆積は、例えば、溶媒として水,メタノ
ール,エタノール,イソプロピルアルコールまたはこれ
らの混合溶液等を用いて前記粒子の原料が溶解した溶液
を調製し、この溶液内に前記多孔質のマトリックスを浸
漬した後に乾燥することにより行うことができる。ま
た、粒子の原料としては有機金属化合物のガス(例えば
SiCl4 ガス)を用いることもでき、この場合には、
当該ガスに「細孔の孔径分布が局部的に異なる光学的に
透明な多孔質のマトリックス」を曝露することにより、
前記のマトリックスの細孔内に粒子の原料を堆積させる
ことができる。
【0066】粒子の原料から粒子を生成させるための熱
処理時の温度および時間は、原料の種類に応じて適宜選
択される。生成した粒子の大きさは、その原料が堆積し
ていた細孔の孔径に応じて異なってくるので、前記の熱
処理を少なくとも1回、必要に応じて複数回行うことに
より、光学的に透明なマトリックス中に径の異なる複数
種の粒子を分散させてなる光学材料が得られる。なお、
粒子を生成させた後、ゲル体を無孔化するための熱処理
を必要に応じて行ってもよい。
【0067】(G)径の異なる複数種の粒子を添加した
マトリックス原料から前記の粒子が分散した光学的に透
明なマトリックスを得ることにより、光学的に透明なマ
トリックス中に径の異なる複数種の粒子を分散させてな
る光学材料を得る方法。 この方法は、光学的に透明なガラス中、セラミックス中
または結晶中に径の異なる複数種の粒子を分散させてな
る光学材料を得るための方法として好適である。
【0068】この方法によって光学的に透明なガラス中
に径の異なる複数種の粒子を分散させてなる光学材料を
得る場合には、分散させようとする粒子の溶融温度より
も十分に低い溶融温度を有する所望組成のガラス融液を
調製し、このガラス融液に径の異なる複数種の粒子を添
加し、混合する。この後、ガラス融液を冷却することに
より目的とする光学材料が得られる。
【0069】また、光学的に透明なガラスまたはセラミ
ックスをゾル−ゲル法によって得る際に、前記のガラス
またはセラミックスを得るためのゾル溶液に径の異なる
複数種の粒子を添加し、混合した後、このゾル溶液をゲ
ル化させ、必要に応じて所望の熱処理を行うことによ
り、光学的に透明なガラス中またはセラミックス中に径
の異なる複数種の粒子を分散させてなる光学材料が得ら
れる。
【0070】さらに、上記の方法によって光学的に透明
な結晶中に径の異なる複数種の粒子を分散させてなる光
学材料を得る場合には、前記の結晶をチョクラルスキー
法等の液相法により作製する際に、結晶の原料に径の異
なる複数種の粒子を添加し、混合する。そして、このも
のから結晶を作製することにより目的とする光学材料が
得られる。
【0071】(H)光学的に透明な多孔質のマトリック
スの細孔内に径が異なる複数種の粒子を導入した後に熱
処理を施すことにより、光学的に透明なマトリックス中
に径の異なる複数種の粒子を分散させてなる光学材料を
得る方法。 この方法は、光学的に透明なガラス中またはセラミック
ス中に径の異なる複数種の粒子を分散させてなる光学材
料を得るための方法として好適である。この方法で用い
る光学的に透明な多孔質のマトリックスとしては、上記
(F)で説明したゾル−ゲル法,分相法,気相法等によ
って得た光学的に透明な多孔質体を用いることができ
る。そして、多孔質体の細孔内への複数種の粒子の導入
は、例えば、分散媒として水,メタノール,エタノー
ル,イソプロピルアルコールまたはこれらの混合溶液等
を用いて前記複数種の粒子が分散した分散液を調製し、
この分散液に前記多孔質のマトリックスを浸漬すること
により行うことができる。この後、必要に応じて乾燥処
理を施すことにより、目的とする光学材料が得られる。
【0072】本発明の方法Iでは、上記(A)〜(H)
の方法等によって得られる光学材料を所定の温度環境下
で一定方向に伸長させて、光学的に透明なマトリックス
中にアスペクト比が1.2:1〜100:1の範囲内で
異なる複数種の粒子を実質的に一方向に配向した状態で
分散させてなる非線形光学材料を得る。
【0073】ここで、上記の「所定の温度環境」は、上
記の光学材料中に分散している粒子が既に「アスペクト
比が1.2:1〜100:1の範囲内で異なる複数種の
粒子」であるか否か、また、粒子の軟化点がマトリック
スの軟化点より高い否かに応じて異なる。
【0074】例えば、粒子の材料が結晶成長の方向性か
らみて針状、柱状、板状等の異方性結晶に成長し易いも
のである場合には、当該材料からなる粒子を上記(A)
〜(F)の方法によって光学的に透明なマトリックス中
に分散させて光学材料を得る際に、これらの方法におい
て粒子を析出させるために行われる熱処理を核成長条
件、すなわち、マトリックス中に析出した核が粒子へと
成長する条件に保ちつつ所望の大きさになるまで粒子を
析出させることにより、アスペクト比が1.2:1〜1
00:1の範囲内で異なる複数種の粒子をマトリックス
中に分散させてなる光学材料(以下「光学材料A」とい
うことがある)を得ることができる。また、上記(G)
の方法でマトリックス原料に添加する粒子として、ある
いは上記(H)の方法で多孔質のマトリックスの細孔内
に導入する粒子として、アスペクト比が1.2:1〜1
00:1の範囲内で異なる複数種の粒子を用いることに
より、それぞれ光学材料Aを得ることができる。
【0075】そして、光学材料Aにおける粒子の軟化点
がマトリックスの軟化点よりも高い場合には、上記の
「所定の温度環境」をマトリックスのみが軟化する温度
環境とし、この温度環境下で光学材料Aを一定方向に伸
長させる。光学材料Aの伸長条件を適宜設定することに
より、光学材料Aの一定方向への伸長に伴って粒子が実
質的に一方向に配向して、目的とする非線形光学材料が
得られる。また、光学材料Aにおける粒子の軟化点がマ
トリックスの軟化点よりも低い場合には、上記の「所定
の温度環境」を粒子およびマトリックスが共に軟化する
温度環境とし、この温度環境下で光学材料Aを一定方向
に伸長させる。このときの光学材料Aの伸長条件を適宜
設定することにより、光学材料Aの一定方向への伸長に
伴って粒子を実質的に一方向に配向させることができる
が、このときに粒子の伸長が生じる場合もある。したが
って、光学材料Aの伸長条件と光学材料Aを得る際の前
記複数回の熱処理の各々の条件とを、光学材料Aの一定
方向への伸長に伴って粒子が実質的に一方向に配向し、
かつ、当該伸長後の粒子のアスペクト比が所望の値とな
るように適宜設定することにより、目的とする非線形光
学材料が得られる。
【0076】なお、異方性結晶に成長し易い物質として
は、金属ではCo,Ru,Os,Ti等が挙げられ、半
導体ではGa,Se,Te,ZnS,ZnSe,ZnT
e,CdS,CdSe,CdTe等が挙げられる。ま
た、合金および半導体同士の固溶体ではその組成によっ
て異方性結晶に成長し易いか否かが異なり、例えばCd
0.2Se0.6Te0.2は異方性結晶に成長し易い。
【0077】一方、粒子の材料が結晶成長の方向性から
みて等方性結晶に成長し易いものや、結晶成長せずに不
規則な格子を形成して析出成長するものである場合に
は、当該材料からなる粒子を光学的に透明なマトリック
ス中に分散させてなる光学材料(以下「光学材料B」と
いうことがある)を上記(A)〜(H)等の方法によっ
て得た後、上記の「所定の温度環境」を粒子およびマト
リックスが共に軟化する温度環境とし、この温度環境下
で光学材料Bを一定方向に伸長させる。このときの光学
材料Bの伸長条件を適宜設定することにより、光学材料
B中の粒子が光学材料Bの伸長に伴って伸長する一方で
実質的に一方向に配向して、目的とする非線形光学材料
が得られる。
【0078】なお、上記所定の温度環境下での光学材料
の一定方向への伸長は、例えば圧縮,延伸,押出し等に
より行うことができる。また、光学材料の伸長は、光学
的に透明なマトリックス中に径の異なる複数種の粒子を
分散させた光学材料を得た後に行う他、光学的に透明な
マトリックス中に径の異なる複数種の粒子を分散(析
出)させる工程と並行して行ってもよい。したがって、
本発明の方法Iでいう「光学的に透明なマトリックス中
に径の異なる複数種の粒子を分散させてなる光学材料」
は、光学的に透明なマトリックス中に径の異なる複数種
の粒子を分散させた後の光学材料と、光学的に透明なマ
トリックス中に径の異なる複数種の粒子を分散(析出)
させる過程にある光学材料の両方を包含する。
【0079】次に、本発明の方法IIについて説明する。
本発明の方法IIは、前述したように、粒子の材料物質を
基板上に島状に堆積させる第1の工程と、マトリックス
の材料物質を基板上に層状に堆積させる第2の工程と
を、少なくとも前記第1の工程での前記基板の傾斜角度
を変えながら同一基板の所定面上において複数回繰り返
すことにより、光学的に透明なマトリックス中にアスペ
クト比が1.2:1〜100:1の範囲内で異なる複数
種の粒子を実質的に一方向に配向した状態で分散させて
なる非線形光学材料を得ることを特徴とするものであ
る。
【0080】粒子の材料物質を基板上に島状に堆積させ
る第1の工程は、スパッタ法,蒸着法,CVD法等によ
り行うことが可能である。ここで、本発明でいう「粒子
の材料物質」とは、島状に堆積させることによって目的
とする組成の粒子が得られる物質(目的とする粒子と同
一組成の物質)を意味し、当該材料物質の出発物質(ス
パッタリングターゲット,蒸発源,原料ガス等)として
は、堆積方法および目的とする粒子の組成に応じて、金
属単体,合金,単体半導体,化合物半導体,有機金属化
合物,ハロゲン化物等を用いることができる。
【0081】また、マトリックスの材料物質を基板上に
層状に堆積させる第2の工程も、スパッタ法,蒸着法,
CVD法等により行うことができる。ここで、本発明で
いう「マトリックスの材料物質」とは、層状に堆積させ
ることによって目的とする組成のマトリックスが得られ
る物質(目的とするマトリックスと同一組成の物質)を
意味し、当該材料物質の出発物質(スパッタリングター
ゲット,蒸発源,原料ガス等)としては、堆積方法およ
び目的とする粒子の組成に応じて、金属単体,金属酸化
物,単体半導体,化合物半導体,有機金属化合物,ハロ
ゲン化物,複合酸化物等を用いることができる。
【0082】上述した第1の工程と第2の工程とはどち
らを先に行ってもよく、これらの工程の繰り返し回数は
2回以上の所望回数とすることができる。また、2回以
上の所望回数行われる第1の工程それぞれにおいて島状
に堆積される粒子の材料物質の組成は、同じであっても
よいし、異なっていてもよい。同様に、2回以上の所望
回数行われる第2の工程それぞれにおいて層状に堆積さ
れるマトリックスの材料物質の組成は、同じであっても
よいし、異なっていてもよい。
【0083】本発明の方法IIにおいては、少なくとも第
1の工程での基板の傾斜角度を変えながら同一基板の所
定面上において第1の工程および第2の工程を2回以上
の所望回数繰り返す。ここで、本発明でいう「基板の傾
斜角度」とは、垂直面に対する粒子の材料物質の堆積方
向の角度を意味する。
【0084】上述のようにして第1の工程および第2の
工程を繰り返した場合、所望回数行われる第1の工程そ
れぞれにおいて島状に堆積した粒子の材料物質のアスペ
クト比は、基板の傾斜角度に応じてそれぞれ異なる。ま
た、粒子の材料物質は、所望回数行われる第1の工程そ
れぞれにおいて実質的に一方向に配向した状態で島状に
堆積する。したがって、所望回数行われる第1の工程そ
れぞれにおける基板の傾斜角度を所定の角度に適宜変更
して粒子の材料物質を島状に堆積させることにより所望
アスペクト比の粒子を形成することができ、これにより
光学的に透明なマトリックス中にアスペクト比が1.
2:1〜100:1の範囲内で異なる複数種の粒子を実
質的に一方向に配向した状態で分散させてなる非線形光
学材料を得ることができる。
【0085】なお、方法IIにおいて2回以上の所望回数
行われる第2の工程それぞれにおける基板の傾斜角度は
同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、基
板としては、本発明の非線形光学材料Iの説明の中で例
示した材質ものを用いることが好ましい。
【0086】次に、本発明の非線形光素子について説明
する。本発明の非線形光素子は、前述したように、本発
明の非線形光学材料(非線形光素子Iまたは非線形光学
材料II)によって光路の一部または全部が形成されてい
ることを特徴とするものである。
【0087】この非線形光素子は、光路の一部または全
部を形成している前記の非線形光学材料の非線形光学特
性を利用して光制御を行う非線形光素子であれば如何な
る形態(例えばファブリ・ペロー共振器型,導波路型,
方向性結合器型,ループファイバー型等)および用途
(例えば光スイッチ,光変調器,光シャッタ,光フィル
タ,光論理素子,光メモリ,光交換器,光ゲート素子
等)のものであってもよい。
【0088】上記の非線形光素子では、例えば次のよう
にして光制御が行われる。すなわち、非線形光素子によ
って制御しようとする光(以下「被制御光」という)を
当該非線形光素子に入射させるにあたり、非線形光素子
からの出射光強度をオフ状態にしたい場合には被制御光
の入射強度が前記の非線形光学材料に非線形光学応答を
生じさせない強度となるように当該被制御光の入射強度
を調整し、非線形光素子からの出射光強度をオン状態に
したい場合には被制御光の入射強度が前記の非線形光学
材料に非線形光学応答を生じさせる強度となるように当
該被制御光の入射強度を調整する(以下、この光制御方
法を「光制御方法I」という)。
【0089】あるいは、非線形光学材料に非線形光学応
答を生じさせない入射光強度のバイアスポンピング光
(定常入力光)と、このバイアスポンピング光と同一波
長のトリガーポンピング光(パルス光)とを非線形光素
子に入射させ、非線形光素子からの出射光強度をオフ状
態にしたい場合には、バイアスポンピング光とトリガー
ポンピング光とが重畳された光の入射強度が前記の非線
形光学材料に非線形光学応答を生じさせない強度となる
ようにバイアスポンピング光またはトリガーポンピング
光の入射強度を調整し、非線形光素子からの出射光強度
をオン状態にしたい場合には、バイアスポンピング光と
トリガーポンピング光とが重畳された光の入射強度が前
記の非線形光学材料に非線形光学応答を生じさせる強度
となるようにバイアスポンピング光またはトリガーポン
ピング光の入射強度を調整する(以下、この光制御方法
を「光制御方法II」という)。
【0090】ここで、本発明の非線形光素子において光
路の一部または全部を形成している本発明の非線形光学
材料は、当該非線形光学材料中に分散している粒子の光
吸収のピーク波長が当該粒子のアスペクト比毎に異なる
ことから、複数の光吸収ピークを有し、ひいては3次の
非線形感受率についての複数のピークを有する。すなわ
ち、本発明の非線形光素子は、波長が互いに異なる複数
種の光に対してそれぞれ別個に3次の非線形光学応答を
示す。
【0091】したがって、上記の非線形光学材料に3次
の非線形光学応答が発現する波長の光を複数種多重化し
てなる被制御光を上記の非線形光素子に入射させ、前記
の非線形光学材料の非線形光学特性を利用して前記複数
種の光をそれぞれ別個に光制御するという本発明の光制
御方法に基づいて上記の非線形光素子を駆動させること
により、複数種の光に対してもそれぞれ別個に光制御を
行うことができる。
【0092】本発明の方法による光制御は、本発明の非
線形光素子を構成している非線形光学材料(本発明の非
線形光学材料)における光吸収ピークまたはその近傍の
波長を有する光を所望数多重化したものを上述した光制
御方法Iにおける被制御光として用い、当該被制御光を
構成している各光の入射強度をそれぞれ調整することに
より行うことができる。このときの被制御光を構成する
各光は、アスペクト比の差異に起因する粒子の光吸収ピ
ーク波長の違いが当該粒子の長軸方向に平行な直線偏光
(電場の振動方向が粒子の長軸方向と同じである直線偏
光)に対して特に顕著であることから、粒子の長軸方向
に平行な直線偏光(電場の振動方向が粒子の長軸方向と
同じである直線偏光)であることが好ましいが、粒子の
長軸方向と直線偏光の電場の振動方向とは概ね10度の
範囲内でずれていてもよい。また、上述したと同様にし
て波長が異なる複数種の光を多重化したものを上述した
光制御方法IIにおける被制御光および制御光としてそれ
ぞれ用い、制御光を構成している各光の入射強度をそれ
ぞれ調整することによっても、本発明の方法により光制
御することができる。
【0093】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。 実施例1 マトリックスとなるガラスの原料として30モル%のB
23 と68モル%のPbOと2モル%のSnOとから
なる組成物を用い、この組成物100モル%に対して粒
子の原料としてのCu2Oを1モル%(Cuとして2モ
ル%)混合したものを、耐火性ルツボ中で1000℃に
おいて15分間加熱して均一なガラス融液とした後、鉄
板上にキャストしてガラスを得た。次に、上記のガラス
について、350℃で8時間熱処理した後に更に430
℃で1時間熱処理するという熱処理を6回繰り返した。
【0094】このようにして得られたガラスをX線回折
法を用いて測定したところ、Cu結晶ピークが観察さ
れ、Cu粒子分散ガラスが得られたことが確認された。
さらに、このCu粒子分散ガラス中に分散しているCu
粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、
各Cu粒子は球状を呈していたが、径からみて多種のC
u粒子が分散していた。Cu粒子の粒径分布を図1に示
す。なお、マトリックスであるガラスの屈折率は1.9
8であった。
【0095】上記のCu粒子分散ガラスから15mm×
25mm×1mmの試料を切り出し、この試料を油圧ク
リップに装着して、590℃に加熱しながら1170k
g/cm2 の応力で一方向に延伸して、目的とする本発
明の非線形光学材料Iを得た。この非線形光学材料Iを
TEMで観察したところ、Cu粒子は棒状に変形してお
り、アスペクト比(長軸方向の長さ/短軸方向の長さ)
が3:1〜18:1の範囲に含まれる多種のCu粒子が
実質的に一方向に配向した状態で分散していた。そし
て、当該非線形光学材料IにおけるCu粒子のアスペク
ト比分布を図2に示すように、アスペクト比が7:1〜
17:1の範囲内にあるCu粒子のひん度(出現ひん
度;以下同じ。)は本発明でいう「ほぼ同じひん度」で
あった。なお、この非線形光学材料Iに占めるCu粒子
の割合は、0.005体積%であった。
【0096】次に、上記の非線形光学材料I(厚さ10
μm)を、ミラーの反射率75%、共振器長0.2mm
のファブリ・ペロー共振器に挿入して、ファブリ・ペロ
ー共振器型の光双安定スイッチ素子を作製した。図3に
示すように、この光双安定スイッチ素子1は、反射率が
75%である2枚のミラー2を共振器長が0.2mmと
なるように互いに対向させ配置してなるファブリ・ペロ
ー共振器に、上記の非線形光学材料I(符号3で示す)
を当該非線形光学材料3中のCu粒子の長軸方向が鉛直
方向を向くようにして挿入したものであり、非線形光学
材料3はその厚さ方向に光が透過するように2枚のミラ
ー2の間に配置されている。
【0097】この光双安定スイッチ素子に、表1に示す
直線偏光を多重化してなる被制御光を各直線偏光の電場
の振動方向がCu粒子の長軸方向と同じになるようにし
ながらその入射光強度を種々変えて入射させて、当該光
双安定スイッチ素子からの出射光強度を各直線偏光毎に
測定した。その結果、図4に示す光履歴特性が観察さ
れ、当該光双安定スイッチ素子は各直線偏光に対して入
射光強度200mW付近でそれぞれ別個に非線形光学応
答を示した。
【0098】実施例2 マトリックスの原料としてシリコンアルコキシド(Si
(OC254 )を用い、このシリコンアルコキシドを
メタノールに溶解させて、ゾル溶液(シリコンアルコキ
シドの濃度:5モル%)を調製した。次いで、80℃の
温度環境下で上記のゾル溶液に加水分解、脱水縮合反応
を生じさせて、ゲル体を得た。このゲル体から100m
m×40mm×10mmの板状試料を切り出し、温度傾
斜板を用いて、当該板状試料についての一端が850℃
で他の一端が700℃になる温度勾配の中で6時間加熱
して、多孔質シリカガラスを得た。このようにして得ら
れた多孔質ガラスをTEMで観察し、当該多孔質ガラス
における細孔の孔径分布を求めた。この結果を図5に示
す。図5に示したように、上記の多孔質ガラスにおける
細孔の孔径分布には2つの大きなピークがあり、850
℃で加熱した側における平均細孔径は4nm、700℃
で加熱した側の平均細孔径は12nmであった。
【0099】次に、粒子の出発原料としてAuCl3
用い、水とメタノールとの1:1(体積比)混合溶液に
前記のAuCl3 をその濃度が0.01wt%となるよ
うに溶解させて所望の溶液を得、この溶液に上記の多孔
質シリカガラスを浸漬した後に引き上げ、乾燥させて、
細孔内に粒子の原料が堆積した多孔質シリカガラスを得
た。この後、細孔内に粒子の原料が堆積した前記の多孔
質シリカガラスを1000℃で8時間熱処理して、Au
粒子が分散した無孔質のシリカガラス(以下「Au粒子
分散シリカガラス」という)を得た。このAu粒子分散
シリカガラス中に含まれているAu粒子をTEMで観察
したところ、各Au粒子はほぼ球状を呈していたが、径
からみて多種のAu粒子が分散していた。Au粒子の粒
径分布を図6に示す。なお、マトリックスであるシリカ
ガラスの屈折率は1.44であった。
【0100】上記のAu粒子分散シリカガラスから実施
例1と同様にして試料を切り出し、延伸時の加熱温度を
1250℃、応力を980kg/cm2 とした以外は実
施例1と同様にして、目的とする本発明の非線形光学材
料Iを得た。この非線形光学材料IをTEMで観察した
ところ、Au粒子は棒状に変形しており、アスペクト比
が1.2:1〜100:1の範囲に含まれる多種のAu
粒子が実質的に一方向に配向した状態で分散していた。
当該非線形光学材料IにおけるAu粒子のアスペクト比
分布を図7に示す。図7に示したように、この非線形光
学材料IにおけるAu粒子のアスペクト比分布には、ア
スペクト比2.5:1と4.2:1の2箇所に大きなピ
ークがあった。なお、この非線形光学材料Iに占めるA
u粒子の割合は0.1体積%であった。
【0101】次に、上記の非線形光学材料I(厚さ10
μm)を用いて実施例1と同様にしてファブリ・ペロー
共振器型の光双安定スイッチ素子を作製し、被制御光と
して表1に示す直線偏光を多重化したものを用いた以外
は実施例1と同様にして、当該光双安定スイッチ素子か
らの出射光強度を各直線偏光毎に測定した。その結果、
図8に示す光履歴特性が観察され、当該光双安定スイッ
チ素子は各直線偏光に対してそれぞれ別個に非線形光学
応答を示した。
【0102】実施例3 マトリックスとなるガラスの原料として20モル%のB
23 と70モル%のSiO2 と10モル%のLi2Oと
からなる組成物を用い、この組成物を耐火性ルツボ中で
1450℃において6時間加熱して均一なガラス融液と
した後、鉄板上にキャストしてガラスを得た。このガラ
スについて、750℃で1時間熱処理した後に更に65
0℃で120時間熱処理するという熱処理を3回繰り返
し、これによって当該ガラスを分相させた後、酸処理を
施してアルカリを多く含む相を溶出させて、多孔質ガラ
スを得た。この多孔質ガラスをTEMで観察し、当該多
孔質ガラスにおける細孔の孔径分布を求めた。この結果
を図9に示す。
【0103】次に、粒子の出発原料としてAgNO3
用い、このAgNO3 をその濃度が5wt%となるよう
に水に溶解させて所望の溶液を得、この溶液中に上記の
多孔質ガラスを浸漬した後に引き上げ、乾燥させて、細
孔内に粒子の原料が堆積した多孔質ガラスを得た。この
後、細孔内に粒子の原料が堆積した前記の多孔質ガラス
を950℃で12時間熱処理して、Ag粒子が分散した
無孔質のガラス(以下「Ag粒子分散ガラス」という)
を得た。このAg粒子分散ガラス中に含まれているAg
粒子をTEMで観察したところ、各Ag粒子はほぼ球状
を呈していたが、径からみて多種のAg粒子が分散して
いた。Ag粒子の粒径分布を図10に示す。なお、マト
リックスであるガラスの屈折率は1.49であった。
【0104】上記のAg粒子分散ガラスから実施例1と
同様にして試料を切り出し、延伸時の加熱温度を108
0℃、応力を2340kg/cm2 とした以外は実施例
1と同様にして、目的とする本発明の非線形光学材料I
を得た。この非線形光学材料IをTEMで観察したとこ
ろ、Ag粒子は棒状に変形しており、アスペクト比が
1.2:1〜100:1の範囲に含まれる多種のAg粒
子が実質的に一方向に配向した状態で分散していた。そ
して、アスペクト比が3:1〜5:1の範囲内にあるA
g粒子のひん度は本発明でいう「ほぼ同じひん度」であ
った。当該非線形光学材料IにおけるAg粒子のアスペ
クト比分布を図11に示す。なお、この非線形光学材料
Iに占めるAg粒子の割合は0.5体積%であった。
【0105】次に、上記の非線形光学材料I(厚さ10
μm)を用いて実施例1と同様にしてファブリ・ペロー
共振器型の光双安定スイッチ素子を作製し、被制御光と
して表1に示す直線偏光を多重化したものを用いた以外
は実施例1と同様にして、当該光双安定スイッチ素子か
らの出射光強度を各直線偏光毎に測定した。その結果、
図12に示す光履歴特性が観察され、当該光双安定スイ
ッチ素子は各直線偏光に対してそれぞれ別個に非線形光
学応答を示した。
【0106】実施例4 マトリックスとなるガラスの原料としてSiCl4 を用
い、これを酸素雰囲気中1000℃で火炎加水分解反応
させて、多孔質シリカガラスをSi基板上に堆積させ
た。そして、この多孔質シリカガラスから100mm×
40mm×10mmの板状試料を切り出し、当該板状試
料についての一方の主表面を1100℃で6時間加熱し
た。加熱後の多孔質ガラスをTEMで観察したところ、
1100℃で加熱した主表面側の平均細孔径は5nmで
あり、当該主表面とは反対の主表面側の平均細孔径は2
6nmであった。
【0107】次に、粒子の出発原料としてSiCl4
用い、このSiCl4 蒸気に上記加熱後の多孔質シリカ
ガラスを曝露した後に乾燥させて、細孔内に粒子の原料
が堆積した多孔質シリカガラスを得た。この後、細孔内
に粒子の原料が堆積した前記の多孔質シリカガラスを1
500℃で2時間熱処理して、Si粒子が分散した無孔
質のシリカガラス(以下「Si粒子分散シリカガラス」
という)を得た。このSi粒子分散シリカガラス中に含
まれているSi粒子をTEMで観察したところ、各Si
粒子はほぼ球状を呈していたが、径からみて多種のSi
粒子が分散していた。Si粒子の粒径分布を図13に示
す。なお、マトリックスであるシリカガラスの屈折率は
1.44であった。
【0108】上記のSi粒子分散シリカガラスから実施
例1と同様にして試料を切り出し、延伸時の加熱温度を
1600℃、応力を3800kg/cm2 とした以外は
実施例1と同様にして、目的とする本発明の非線形光学
材料Iを得た。この非線形光学材料IをTEMで観察し
たところ、Si粒子は棒状に変形しており、アスペクト
比が1.2:1〜100:1の範囲に含まれる多種のS
i粒子が実質的に一方向に配向した状態で分散してい
た。そして、アスペクト比が6:1〜8:1の範囲内に
あるSi粒子のひん度は本発明でいう「ほぼ同じひん
度」であった。当該非線形光学材料IにおけるSi粒子
のアスペクト比分布を図14に示す。なお、この非線形
光学材料Iに占めるSi粒子の割合は2体積%であっ
た。
【0109】次に、上記の非線形光学材料I(厚さ10
μm)を用いて実施例1と同様にしてファブリ・ペロー
共振器型の光双安定スイッチ素子を作製し、被制御光と
して表1に示す直線偏光を多重化したものを用いた以外
は実施例1と同様にして、当該光双安定スイッチ素子か
らの出射光強度を各直線偏光毎に測定した。その結果、
図15に示す光履歴特性が観察され、当該光双安定スイ
ッチ素子は各直線偏光に対してそれぞれ別個に非線形光
学応答を示した。
【0110】実施例5 マトリックスとなるガラスの原料として32モル%のB
23 と68モル%のPbOとからなる組成物を用い、
この組成物を耐火性ルツボ中で900℃において30分
間加熱して均一なガラス融液とした後、図16に示す粒
径分布のAu粒子を当該ガラス融液に添加し、撹拌した
後に鉄板上にキャストして、Au粒子分散ガラスを得
た。このAu粒子分散ガラス中に含まれているAu粒子
をTEMで観察したところ、各Au粒子はほぼ球状を呈
していたが、径からみて多種のAu粒子が分散してい
た。Au粒子の粒径分布を図17に示す。なお、マトリ
ックスであるガラスの屈折率は1.98であった。
【0111】上記のAu粒子分散ガラスから実施例1と
同様にして試料を切り出し、延伸時の加熱温度を600
℃、応力を2120kg/cm2 とした以外は実施例1
と同様にして、目的とする本発明の非線形光学材料Iを
得た。この非線形光学材料IをTEMで観察したとこ
ろ、Au粒子は棒状に変形しており、アスペクト比が
1.2:1〜100:1の範囲に含まれる多種のAu粒
子が実質的に一方向に配向した状態で分散していた。そ
して、アスペクト比が4:1〜7:1の範囲内にあるA
u粒子のひん度は本発明でいう「ほぼ同じひん度」であ
った。当該非線形光学材料IにおけるAu粒子のアスペ
クト比分布を図18に示す。なお、この非線形光学材料
Iに占めるAu粒子の割合は0.1体積%であった。
【0112】次に、上記の非線形光学材料I(厚さ10
μm)を用いて実施例1と同様にしてファブリ・ペロー
共振器型の光双安定スイッチ素子を作製し、被制御光と
して表1に示す直線偏光を多重化したものを用いた以外
は実施例1と同様にして、当該光双安定スイッチ素子か
らの出射光強度を各直線偏光毎に測定した。その結果、
図19に示す光履歴特性が観察され、当該光双安定スイ
ッチ素子は各直線偏光に対してそれぞれ別個に非線形光
学応答を示した。
【0113】実施例6 マトリックスとなるガラスの原料として20モル%のB
23 と70モル%のSiO2 と10モル%のLi2Oと
からなる組成物を用い、この組成物を耐火性ルツボ中で
1500℃において6時間間加熱して均一なガラス融液
とした後、鉄板上にキャストしてガラスを得た。このガ
ラスに700℃,120時間の熱処理を施して当該ガラ
スを分相させた後、酸処理によってアルカリを多く含む
相を溶出させて、多孔質ガラスを得た。この多孔質ガラ
スをTEMで観察したところ、平均細孔径は21nmで
あった。
【0114】次に、図16に示したと同じ粒径分布を有
するAu粒子をイソプロピルアルコールに分散させて所
望の分散液を得、この分散液に上記の多孔質ガラスを浸
漬した後に引き上げ、乾燥させて、細孔内にAu粒子が
導入された多孔質ガラスを得た。この後、細孔内にAu
粒子が導入された前記の多孔質ガラスHを950℃で2
時間熱処理して、Au粒子が分散した無孔質のガラス
(以下「Au粒子分散ガラス」という)を得た。このA
u粒子分散ガラス中に含まれているAu粒子をTEMで
観察したところ、各Au粒子はほぼ球状を呈していた
が、径からみて多種のAu粒子が分散していた。Au粒
子の粒径分布を図20に示す。なお、マトリックスであ
るガラスの屈折率は1.49であった。
【0115】上記のAu粒子分散ガラスから実施例1と
同様にして試料を切り出し、延伸時の加熱温度を112
0℃、応力を1180kg/cm2 とした以外は実施例
1と同様にして、目的とする本発明の非線形光学材料I
を得た。この非線形光学材料IをTEMで観察したとこ
ろ、Au粒子は棒状に変形しており、アスペクト比が
1.2:1〜100:1の範囲に含まれる多種のAu粒
子が実質的に一方向に配向した状態で分散していた。そ
して、アスペクト比が4:1〜14:1の範囲内にある
Au粒子のひん度は本発明でいう「ほぼ同じひん度」で
あった。当該非線形光学材料IにおけるAu粒子のアス
ペクト比分布を図21に示す。なお、この非線形光学材
料Iに占めるAu粒子の割合は0.2体積%であった。
【0116】次に、上記の非線形光学材料I(厚さ10
μm)を用いて実施例1と同様にしてファブリ・ペロー
共振器型の光双安定スイッチ素子を作製し、被制御光と
して表1に示す直線偏光を多重化したものを用いた以外
は実施例1と同様にして、当該光双安定スイッチ素子か
らの出射光強度を各直線偏光毎に測定した。その結果、
図22に示す光履歴特性が観察され、当該光双安定スイ
ッチ素子は各直線偏光に対してそれぞれ別個に非線形光
学応答を示した。
【0117】実施例7 粒子の原料としてCu2OとAgNO3 とを用い、ガラ
スの原料組成物100モル%に対してCu2Oを0.5
モル%(Cuとして1モル%)、AgNO3 を1モル%
(Agとして1モル%)それぞれ混合した以外は実施例
1と同様にして、Cu粒子とAg粒子とが混在して分散
したガラス(以下「Cu粒子・Ag粒子分散ガラス」と
いう)を得た。このCu粒子・Ag粒子分散ガラス中に
含まれている粒子(Cu粒子およびAg粒子)をTEM
で観察したところ、各粒子は球状を呈していたが、径か
らみて多種の粒子が分散していた。粒子の粒径分布を図
23に示す。
【0118】上記のCu粒子・Ag粒子分散ガラスから
実施例1と同様にして試料を切り出し、延伸時の加熱温
度を590℃、応力を1200kg/cm2 とした以外
は実施例1と同様にして、目的とする本発明の非線形光
学材料Iを得た。この非線形光学材料IをTEMで観察
したところ、Cu粒子およびAg粒子はともに棒状に変
形しており、アスペクト比が1.2:1〜100:1の
範囲に含まれる多種の粒子が実質的に一方向に配向した
状態で分散していた。そして、アスペクト比が9:1〜
17:1の範囲内にある粒子のひん度は本発明でいう
「ほぼ同じひん度」であった。当該非線形光学材料Iに
おける粒子(Cu粒子およびAg粒子)のアスペクト比
分布を図24に示す。なお、この非線形光学材料Iに占
める粒子の割合は0.2体積%であった。
【0119】次に、上記の非線形光学材料I(厚さ10
μm)を用いて実施例1と同様にしてファブリ・ペロー
共振器型の光双安定スイッチ素子を作製し、被制御光と
して表1に示す直線偏光を多重化したものを用いた以外
は実施例1と同様にして、当該光双安定スイッチ素子か
らの出射光強度を各直線偏光毎に測定した。その結果、
図25に示す光履歴特性が観察され、当該光双安定スイ
ッチ素子は各直線偏光に対してそれぞれ別個に非線形光
学応答を示した。
【0120】実施例8 マトリックスとなるガラスの原料として30モル%のB
23 と65モル%のPbOと2モル%のSnOと3モ
ル%のNa2Oとからなる組成物を用いた以外は実施例
1と同様にして、Cu粒子分散ガラスを得た。このCu
粒子分散ガラスから実施例1と同様にして試料を切り出
し、延伸時の加熱温度を590℃、応力を1100kg
/cm2 とした以外は実施例1と同様にして、第1の非
線形光学材料Iを得た。
【0121】上記第1の非線形光学材料Iの一方の主表
面にAg膜を、他方の主表面にAu膜を蒸着法によりそ
れぞれ形成し、これらの膜にそれぞれ電極板を設けた。
この後、前記の電極板間に100Vの直流電圧を印加し
ながら300℃で6時間熱処理して、第2の非線形光学
材料Iを得た。このようにして得た第2の非線形光学材
料Iについて電子線回折分析を行った結果、粒子の表面
はAgであった。このことから、当該第2の非線形光学
材料I中にはCuからなるコアの表面をAgで覆ってな
る複合粒子が分散していることが確認された。
【0122】また、当該第2の非線形光学材料IをTE
Mで観察したところ、複合粒子は棒状を呈し、アスペク
ト比が1.2:1〜100:1の範囲に含まれる多種の
複合粒子が実質的に一方向に配向した状態で分散してい
た。これらの複合粒子の長軸方向の長さの平均値は22
nmであった。そして、アスペクト比が6:1〜18:
1の範囲内にある複合粒子のひん度は本発明でいう「ほ
ぼ同じひん度」であった。当該第2の非線形光学材料I
における複合粒子のアスペクト比分布を図26に示す。
なお、第2の非線形光学材料Iに占める複合粒子の割合
は0.05体積%であった。
【0123】次に、上記第2の非線形光学材料I(厚さ
10μm)を用いて実施例1と同様にしてファブリ・ペ
ロー共振器型の光双安定スイッチ素子を作製し、被制御
光として表1に示す直線偏光を多重化したものを用いた
以外は実施例1と同様にして、当該光双安定スイッチ素
子からの出射光強度を各直線偏光毎に測定した。その結
果、図27に示す光履歴特性が観察され、当該光双安定
スイッチ素子は各直線偏光に対してそれぞれ別個に非線
形光学応答を示した。
【0124】実施例9 加熱時間を30分間とした以外は実施例1と同様にして
均一なガラス融液を得た後、鉄板上にキャストしてガラ
スを得た。このガラスを、予め380℃に保持しておい
た電気炉の中に入れ、この温度で2時間処理して、Cu
粒子分散ガラスを得た。このCu粒子分散ガラスをTE
Mで観察したところ、Cu粒子の平均粒径は32nmで
あった。次に、このCu粒子分散ガラスから実施例1と
同様にして試料を切り出し、この試料を実施例1と同様
にして一方向に延伸して、第1の非線形光学材料Iを得
た。当該第1の非線形光学材料IをTEMで観察したと
ころ、Cu粒子は棒状に変形しており、アスペクト比が
1.2:1〜100:1の範囲に含まれる多種のCu粒
子が実質的に一方向に配向した状態で分散していた。そ
して、Cu粒子の平均アスペクト比は3:1であった。
また、アスペクト比が2.5:1〜4:1の範囲内にあ
るCu粒子のひん度は本発明でいう「ほぼ同じひん度」
であった。なお、当該第1の非線形光学材料Iに占める
Cu粒子の割合は0.1体積%であった。
【0125】また、上記のCu粒子分散ガラスから実施
例1と同様にして試料を別途切り出し、延伸時の加熱温
度を590℃、応力を3200kg/cm2 とした以外
は実施例1と同様にして、第2の非線形光学材料I(厚
さ10μm)を得た。当該第2の非線形光学材料IをT
EMで観察したところ、Cu粒子は棒状に変形してお
り、アスペクト比が1.2:1〜100:1の範囲に含
まれる多種のCu粒子が実質的に一方向に配向した状態
で分散しており、Cu粒子の平均アスペクト比は10:
1であった。また、アスペクト比が8:1〜13:1の
範囲内にあるCu粒子のひん度は本発明でいう「ほぼ同
じひん度」であった。なお、当該第2の非線形光学材料
Iに占めるCu粒子の割合は0.05体積%であった。
【0126】次に上記第1の非線形光学材料Iと上記第
2の非線形光学材料Iとを、それぞれの非線形光学材料
I中に分散されているCu粒子の長軸方向が実質的に一
致するようにして光学的に張り合わせて、目的とする本
発明の非線形光学材料IIを得た。そして、この非線形光
学材料II(厚さ20μm)を用いて実施例1と同様にし
てファブリ・ペロー共振器型の光双安定スイッチ素子を
作製し、被制御光として表1に示す直線偏光を多重化し
たものを用いた以外は実施例1と同様にして、当該光双
安定スイッチ素子からの出射光強度を各直線偏光毎に測
定した。その結果、図28に示す光履歴特性が観察さ
れ、当該光双安定スイッチ素子は各直線偏光に対してそ
れぞれ別個に非線形光学応答を示した。
【0127】実施例10 実施例1で得た厚さ10μmの非線形光学材料Iと実施
例2で得た厚さ10μmの非線形光学材料Iとを、前者
の非線形光学材料I中に分散されているCu粒子の長軸
方向と後者の非線形光学材料I中に分散されているAu
粒子の長軸方向とが実質的に一致するようにして光学的
に張り合わせて、目的とする本発明の非線形光学材料II
を得た。そして、この非線形光学材料II(厚さ20μ
m)を用いて実施例1と同様にしてファブリ・ペロー共
振器型の光双安定スイッチ素子を作製し、被制御光とし
て表1に示す直線偏光を多重化したものを用いた以外は
実施例1と同様にして、当該光双安定スイッチ素子から
の出射光強度を各直線偏光毎に測定した。その結果、図
29に示す光履歴特性が観察され、当該光双安定スイッ
チ素子は各直線偏光に対してそれぞれ別個に非線形光学
応答を示した。
【0128】実施例11 市販のZnS板(厚さ0.2mm,3インチφ,波長5
00nmの光の透過率60%)をスパッタ装置の基板サ
イドに8゜傾けて取り付け、真空度を10-7Torrにし
て、SnターゲットのスパッタリングとZnSターゲッ
トのスパッタリングとを順次行った。このとき、Snタ
ーゲットのスパッタリング時間は10秒とし、これによ
ってZnS板の所定面上にSnを島状に堆積させてSn
粒子を形成した。また、ZnSターゲットのスパッタリ
ング時間は40分とし、これによって、Snが島状に堆
積した面上にマトリックスとしてのZnSを層状に堆積
させた。
【0129】Snターゲットの10秒間のスパッタリン
グとZnSターゲットの40分間のスパッタリングと
を、前記ZnS板の傾斜角度のみを12゜,16゜,2
0゜,25゜,30゜に変化させて繰り返した後、Zn
Sターゲットのスパッタリングを60分間行って、目的
とする本発明の非線形光学材料IIを得た。この非線形光
学材料IIは、島状に堆積したSnと当該Snを被覆する
層状のZnSとをZnS板の所定面上に交互に5層づつ
積層した後、その上に更にZnS層を設けてなる。した
がって、この非線形光学材料IIは、実質的に、ZnS中
にSn粒子を分散させてなる光学材料をZnS板上に5
層積層したものに相当する。なお、上記非線形光学材料
IIの厚さは0.01mmである。
【0130】この非線形光学材料IIをTEMで観察した
ところ、各光学材料中のSn粒子は板状を呈していた。
そして、非線形光学材料II全体では、アスペクト比が
1.2:1〜100:1の範囲に含まれる多種のSn粒
子が実質的に一方向に配向した状態で分散しており、ア
スペクト比が2:1〜5:1の範囲内にあるSn粒子の
ひん度は本発明でいう「ほぼ同じひん度」であった。当
該非線形光学材料IIにおけるSn粒子のアスペクト比分
布を図30に示す。なお、非線形光学材料IIに占めるS
n粒子の割合は5体積%であった。
【0131】上記の非線形光学材料IIを形成した後のZ
nS板を用いて実施例1と同様にしてファブリ・ペロー
共振器型の光双安定スイッチ素子を作製した。ただし、
このときの共振器長は0.5mmとした。この後、被制
御光として表1に示す直線偏光を多重化したものを用い
た以外は実施例1と同様にして、当該光双安定スイッチ
素子からの出射光強度を各直線偏光毎に測定した。その
結果、図31に示す光履歴特性が観察され、当該光双安
定スイッチ素子は各直線偏光に対してそれぞれ別個に非
線形光学応答を示した。
【0132】
【表1】
【0133】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
任意に選択された複数種の光に対してそれぞれ別個に非
線形光学応答を示すものを得ることが容易な非線形光学
材料を提供することが可能になる。そして、この非線形
光学材料を用いた本発明の非線形光素子および当該非線
形光素子による光制御方法を実施することにより、任意
に選択された複数種の光に対してそれぞれ別個に光制御
を行うことが容易に可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得たCu粒子分散ガラス中のCu粒
子の粒径分布を示すグラフである。
【図2】実施例1で得た非線形光学材料I中のCu粒子
のアスペクト比分布を示すグラフである。
【図3】実施例1で作製したファブリ・ペロー共振器型
の光双安定スイッチ素子の概略を示す側面図である。
【図4】実施例1で作製したファブリ・ペロー共振器型
の光双安定スイッチ素子の光履歴特性を示すグラフであ
る。
【図5】実施例2で得た多孔質シリカガラスにおける細
孔の孔径分布を示すグラフである。
【図6】実施例2で得たAu粒子分散シリカガラス中の
Au粒子の粒径分布を示すグラフである。
【図7】実施例1で得た非線形光学材料I中のAu粒子
のアスペクト比分布を示すグラフである。
【図8】実施例2で作製したファブリ・ペロー共振器型
の光双安定スイッチ素子の光履歴特性を示すグラフであ
る。
【図9】実施例3で得た多孔質ガラスにおける細孔の孔
径分布を示すグラフである。
【図10】実施例3で得たAg粒子分散ガラス中のAg
粒子の粒径分布を示すグラフである。
【図11】実施例3で得た非線形光学材料I中のAg粒
子のアスペクト比分布を示すグラフである。
【図12】実施例3で作製したファブリ・ペロー共振器
型の光双安定スイッチ素子の光履歴特性を示すグラフで
ある。
【図13】実施例4で得たSi粒子分散ガラス中にのS
i粒子の粒径分布を示すグラフである。
【図14】実施例4で得た非線形光学材料I中のSi粒
子のアスペクト比分布を示すグラフである。
【図15】実施例4で作製したファブリ・ペロー共振器
型の光双安定スイッチ素子の光履歴特性を示すグラフで
ある。
【図16】実施例5でAu粒子分散ガラスを得る際に使
用したAu粒子の粒径分布を示すグラフである。
【図17】実施例5で得たAu粒子分散ガラス中のAu
粒子の粒径分布を示すグラフである。
【図18】実施例5で得た非線形光学材料I中のAu粒
子のアスペクト比分布を示すグラフである。
【図19】実施例5で作製したファブリ・ペロー共振器
型の光双安定スイッチ素子の光履歴特性を示すグラフで
ある。
【図20】実施例6で得たAu粒子分散ガラス中に含ま
れているAu粒子の粒径分布を示すグラフである。
【図21】実施例6で得た非線形光学材料I中のAu粒
子のアスペクト比分布を示すグラフである。
【図22】実施例6で作製したファブリ・ペロー共振器
型の光双安定スイッチ素子の光履歴特性を示すグラフで
ある。
【図23】実施例7で得たCu粒子・Ag粒子分散ガラ
ス中の粒子の粒径分布を示すグラフである。
【図24】実施例7で得た非線形光学材料I中の粒子の
アスペクト比分布を示すグラフである。
【図25】実施例7で作製したファブリ・ペロー共振器
型の光双安定スイッチ素子の光履歴特性を示すグラフで
ある。
【図26】実施例8で得た第2の非線形光学材料I中の
複合粒子のアスペクト比分布を示すグラフである。
【図27】実施例8で作製したファブリ・ペロー共振器
型の光双安定スイッチ素子の光履歴特性を示すグラフで
ある。
【図28】実施例9で作製したファブリ・ペロー共振器
型の光双安定スイッチ素子の光履歴特性を示すグラフで
ある。
【図29】実施例10で作製したファブリ・ペロー共振
器型の光双安定スイッチ素子の光履歴特性を示すグラフ
である。
【図30】実施例11で得た非線形光学材料II中のSn
粒子のアスペクト比分布を示すグラフである。
【図31】実施例11で作製したファブリ・ペロー共振
器型の光双安定スイッチ素子の光履歴特性を示すグラフ
である。
【符号の説明】
1 光双安定スイッチ素子 2 ミラー 3 非線形光学材料I

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 光学的に透明なマトリックス中に、アス
    ペクト比が1.2:1〜100:1の範囲内で異なる複
    数種の粒子を実質的に一方向に配向した状態で分散させ
    てなり、波長が互いに異なる複数種の光に対してそれぞ
    れ別個に3次の非線形光学応答を示すことを特徴とする
    非線形光学材料。
  2. 【請求項2】 粒子が、(i) Cu,Au,Ag,Sn,
    Pt,Pd,Ni,Co,Rh,Ir,Fe,Ru,O
    s,Mn,Mo,W,Nb,Ta,Bi,SbおよびP
    bからなる群より選ばれた金属単体、前記群より選ばれ
    た金属同士の合金または前記群より選ばれた金属の1種
    もしくは複数種を総量で80モル%以上含む合金からな
    るものであるか、または、(ii) Cu,Au,Ag,S
    n,Pt,Pd,Ni,Co,Rh,Ir,Fe,R
    u,Os,Mn,Mo,W,Nb,Ta,Bi,Sbお
    よびPbからなる群より選ばれた金属単体、前記群より
    選ばれた金属同士の合金または前記群より選ばれた金属
    の1種もしくは複数種を総量で80モル%以上含む合金
    からなるコアの表面を該コアおよびマトリックスとは異
    なる物質からなるシェルで被覆してなる複合粒子であ
    る、請求項1に記載の非線形光学材料。
  3. 【請求項3】 光学的に透明なマトリックス中にアスペ
    クト比が1.2:1〜100:1の範囲内にある粒子を
    実質的に一方向に配向した状態で分散させてなる光学材
    料の積層物からなり、該積層物を構成している光学材料
    が該光学材料中に分散している粒子のアスペクト比分布
    からみて複数種に分かれ、かつ、該積層物が、波長が互
    いに異なる複数種の光に対してそれぞれ別個に3次の非
    線形光学応答を示すことを特徴とする非線形光学材料。
  4. 【請求項4】 光学的に透明なマトリックス中に径の異
    なる複数種の粒子を分散させてなる光学材料を所定の温
    度環境下で一定方向に伸長させて、光学的に透明なマト
    リックス中にアスペクト比が1.2:1〜100:1の
    範囲内で異なる複数種の粒子を実質的に一方向に配向し
    た状態で分散させてなる非線形光学材料を得ることを特
    徴とする非線形光学材料の製造方法。
  5. 【請求項5】 光学的に透明なマトリックス中に粒子の
    構成成分を導入してなる光学材料を得た後、該光学材料
    中に粒子を析出させるための熱処理を複数回行うことに
    より、光学的に透明なマトリックス中に径の異なる複数
    種の粒子を分散させてなる光学材料を得る、請求項4に
    記載の方法。
  6. 【請求項6】 細孔の孔径分布が局部的に異なる光学的
    に透明な多孔質のマトリックスの細孔内に粒子の原料を
    堆積させ、この後に熱処理を施して前記粒子の原料から
    粒子を生成させて、光学的に透明なマトリックス中に径
    の異なる複数種の粒子を分散させてなる光学材料を得
    る、請求項4に記載の方法。
  7. 【請求項7】 径の異なる複数種の粒子を添加したマト
    リックス原料から前記粒子が分散した光学的に透明なマ
    トリックスを得ることにより、または、光学的に透明な
    多孔質のマトリックスの細孔内に径が異なる複数種の粒
    子を導入した後に熱処理を施すことにより、光学的に透
    明なマトリックス中に径の異なる複数種の粒子を分散さ
    せてなる光学材料を得る、請求項4に記載の方法。
  8. 【請求項8】 粒子の材料物質を基板上に島状に堆積さ
    せる第1の工程と、マトリックスの材料物質を基板上に
    層状に堆積させる第2の工程とを、少なくとも前記第1
    の工程での前記基板の傾斜角度を変えながら同一基板の
    所定面上において複数回繰り返すことにより、光学的に
    透明なマトリックス中にアスペクト比が1.2:1〜1
    00:1の範囲内で異なる複数種の粒子を実質的に一方
    向に配向した状態で分散させてなる非線形光学材料を得
    ることを特徴とする非線形光学材料の製造方法。
  9. 【請求項9】 請求項1または請求項3に記載の非線形
    光学材料によって光路の一部または全部が形成されてい
    ることを特徴とする非線形光素子。
  10. 【請求項10】 請求項1または請求項3に記載の非線
    形光学材料によって光路の一部が形成されている非線形
    光素子に、前記非線形光学材料に3次の非線形光学応答
    が発現する波長の光を複数種多重化してなる被制御光を
    入射させ、前記非線形光学材料の非線形光学特性を利用
    して前記複数種の光をそれぞれ別個に光制御することを
    特徴とする、非線形光素子による光制御方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US5433260A (en) * 1992-07-27 1995-07-18 Pacific Coast Technologies, Inc. Sealable electronics packages and methods of producing and sealing such packages
JP2007223030A (ja) * 2006-02-21 2007-09-06 Samsung Electro Mech Co Ltd ナノ複合材料及びその製造方法
JP2020106606A (ja) * 2018-12-26 2020-07-09 大日本塗料株式会社 電磁波調整用分散体及び電磁波調整素子
KR20200124000A (ko) * 2019-04-23 2020-11-02 인하대학교 산학협력단 온도감응성 고분자 박막을 갖는 광공진기를 포함하는 컬러 필터

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