JPH0990447A - 非線形光学材料およびその製造方法 - Google Patents

非線形光学材料およびその製造方法

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JPH0990447A
JPH0990447A JP26646595A JP26646595A JPH0990447A JP H0990447 A JPH0990447 A JP H0990447A JP 26646595 A JP26646595 A JP 26646595A JP 26646595 A JP26646595 A JP 26646595A JP H0990447 A JPH0990447 A JP H0990447A
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substrate
optical material
fine particles
nonlinear optical
heat treatment
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Tooru Kineri
透 木練
Masami Mori
匡見 森
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 性能係数χ(3) /α(α;吸収係数)の値が
大きく、特に、非共鳴領域においてχ(3) /α値が大き
い非線形光学材料と、その製造方法とを提供する。 【構成】 透光性の基板中に少なくとも1種の金属微粒
子が孤立分散しており、前記基板が単結晶または平均結
晶粒径5μm 以上の多結晶である非線形光学材料。この
非線形光学材料は、イオン注入法により基板中に金属イ
オンを注入した後、基板に熱処理を施して製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、三次非線形光学材料お
よびその製造方法に関する。この三次非線形光学材料
は、光スイッチや光波長変換素子等に利用される。
【0002】
【従来の技術】従来、金属微粒子を分散させた三次非線
形光学材料としては、ルビーガラスと呼ばれている金微
粒子分散ガラスが知られている。このガラスは、通常、
溶融法で製造され、ガラスを成形した後に熱処理を施す
ことで、ナノオーダーの金微粒子を析出させている。し
かし、このガラスの3次の非線形感受率χ(3) は10-1
1esu程度と小さい。この理由は、ガラス中の金の体積分
率が10-5程度と低濃度であるためと考えられる。した
がって、非線形感受率を高めるためには金微粒子濃度を
高めることが一つの方法であると考えられるが、溶融法
で製造する場合、溶解度の制限により高濃度化には限界
がある。
【0003】この問題を解決するために、高濃度化と組
成制御とが比較的容易であるスパッタ法やイオン注入法
についての提案がなされている。
【0004】例えば、次世代産業基盤技術・第2回光電
子材料シンポジウム予稿集P139−147,1991
には、スパッタ法やイオン注入法を用いてSiO2 ガラ
スマトリックス中にAu微粒子を分散させる方法が、特
開平6−3501号公報には、スパッタ法により強また
は高誘電体マトリックス中に金属微粒子を分散させる方
法が、特開平7−199247号公報には、ゾル−ゲル
法を用いて強または高誘電体マトリックス中に金属微粒
子を分散させる方法が、特開平5−330854号公
報、同5−330858号公報および同6−35015
号公報には、それぞれAg、CuおよびPの各微粒子を
イオン注入法を用いて石英ガラスマトリックス中に分散
させる方法が記載されている。
【0005】しかし、光学的非線形性を向上させる因子
としては、上記のχ(3) 値よりもχ(3) /α(α;吸収
係数)値が重要である。χ(3) /α値は性能指数と称さ
れる。χ(3) 値が大きくても、必ずしもχ(3) /α値が
大きいとは限らない。χ(3)値および吸収係数αは非線
形光学材料中の金属微粒子の濃度に依存し、金属微粒子
の濃度が高くなるとχ(3) 値は大きくなるがαも大きく
なってしまう。したがって、大きなχ(3) /α値を得る
ためには、χ(3) を大きくすると共に、αを小さくする
かαの増大を抑える必要がある。
【0006】一方、一般に共鳴吸収ピーク位置において
χ(3) 値およびαは最も大きくなる。また、一般にχ
(3) 値およびαは共鳴吸収ピーク位置から離れるにした
がって減少するが、この減少の度合いはχ(3) 値のほう
が大きい。このため、一般に共鳴吸収ピーク位置におい
て最も大きなχ(3) /α値が得られる。しかし、共鳴吸
収ピーク位置では、レーザー光をより吸収しやすくなる
ために非線形光学材料の熱的ダメージが大きくなる。し
たがって、共鳴吸収ピーク位置から離れた領域における
χ(3) 値の減少の度合いを小さくできれば、非線形光学
材料の熱的ダメージの小さい領域で大きなχ(3) /α値
が得られることになる。
【0007】しかし、上記した各提案では、αの増大を
抑えることや、共鳴吸収ピーク位置から離れた領域にお
いてχ(3) 値を大きくするという着目はなされていな
い。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、性能
係数χ(3) /α(α;吸収係数)の値が大きく、特に、
非共鳴領域においてχ(3) /α値が大きい非線形光学材
料と、その製造方法とを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(6)の本発明により達成される。 (1)透光性の基板中に少なくとも1種の金属微粒子が
孤立分散しており、前記基板が単結晶である非線形光学
材料。 (2)透光性の基板中に少なくとも1種の金属微粒子が
孤立分散しており、前記基板が平均結晶粒径5μm 以上
の多結晶である非線形光学材料。 (3)前記基板の波長633nmにおける屈折率が1.5
以上である上記(1)または(2)の非線形光学材料。 (4)前記基板の透過スペクトルにおいて、波長400
〜700nmでの平均透過率が20%以上である上記
(1)〜(3)のいずれかの非線形光学材料。 (5)前記金属微粒子がAu、AgまたはCuから構成
される上記(1)〜(4)のいずれかの非線形光学材
料。 (6)上記(1)〜(5)のいずれかの非線形光学材料
を製造する方法であって、イオン注入法により基板中に
金属イオンを注入した後、基板に熱処理を施す工程を有
する非線形光学材料の製造方法。
【0010】
【作用および効果】本発明の非線形光学材料では、金属
微粒子が透光性基板中に3次元的に閉じ込められた結
果、例えば金属微粒子の表面プラズモンの励起と量子サ
イズ効果とで非線形性が現れる。この結果、光双安定性
とpsオーダーの光緩和時間とをもつ非線形光学材料が実
現し、光スイッチやTHG等の光波長変換素子に適用で
きる。
【0011】本発明では、金属微粒子を分散させるマト
リックス材料として単結晶基板または所定の平均結晶粒
径を有する多結晶基板を用い、イオン注入法を利用して
金属イオンを基板中に注入し、その後、熱処理を施すこ
とで、ナノメートルオーダーの金属微粒子が基板中に均
一に析出して孤立分散した構造を形成することができ
る。このため、三次非線形光学特性に優れた非線形光学
材料が実現する。
【0012】具体的には、このような基板をマトリック
スとして用いることで、従来のように結晶粒径の小さい
多結晶薄膜やアモルファス状態のガラスをマトリックス
とする場合に比べ、金属微粒子とマトリックスとの相互
作用が理想的な状態に近づき、マトリックスの誘電率お
よび屈折率も向上する。また、これらの基板中に孤立分
散した金属微粒子の形状は球形に近く、金属微粒子の粒
度分布および分散状態も良好となる。このため本発明の
非線形光学材料では、金属微粒子濃度を低くした場合で
も従来のものと同等のχ(3) 値が得られ、金属微粒子濃
度を同等とした場合には、従来のものよりも著しく大き
なχ(3) 値が得られる。したがって、本発明の非線形光
学材料では、極めて大きなχ(3) /α値が得られる。ま
た、共鳴吸収ピーク位置から離れた領域におけるχ(3)
値の減少が小さいため、この領域においても大きなχ
(3) /α値を得ることができる。このため、レーザー光
の吸収による非線形光学材料の熱的ダメージを少なくす
ることができる。
【0013】また、多結晶薄膜をマトリックスとする従
来の非線形光学材料では、多結晶薄膜の組成および組織
構造の制御が難しいため、良好な非線形光学特性を安定
して得ることが困難である。これに対し本発明では、所
望の組成および組織構造が安定して得られるバルク体の
多結晶をマトリックスとして用いるため、良好な非線形
光学特性を安定して得ることができる。
【0014】
【具体的構成】以下、本発明の具体的構成について詳細
に説明する。
【0015】本発明の非線形光学材料は、透光性の基板
をマトリックスとし、この基板中に少なくとも1種の金
属微粒子が孤立分散したものである。
【0016】マトリックスである基板は、単結晶体であ
るか多結晶体である。多結晶体である場合、その平均結
晶粒径は、5μm 以上、好ましくは10μm 以上であ
る。平均結晶粒径が小さすぎると、χ(3) が大きくなら
ず、本発明の効果が実現しない。なお、平均結晶粒径の
上限は特にないが、通常、平均結晶粒径は500μm 以
下である。
【0017】基板の波長633nmにおける屈折率は、
1.5以上であることが好ましい。基板の屈折率が低す
ぎると非線形光学特性が不十分となる。
【0018】基板の透過スペクトルにおいて、波長40
0〜700nmでの平均透過率は好ましくは20%以上、
より好ましくは40%以上である。基板の平均透過率が
低すぎると非線形光学特性が不十分となる。
【0019】基板の厚さは特に限定されず、用途に応じ
て適宜決定すればよく、その際に上記した平均透過率が
得られればよいが、通常、10μm 〜10mm程度であ
る。なお、この場合の基板の厚さとは、入射光の透過方
向の厚さであり、前記透過率もこの方向における透過率
である。
【0020】基板が単結晶である場合、誘電率は結晶面
方位によって異なるため、高誘電率が得られる結晶面方
位を利用することが好ましい。
【0021】基板構成材料の誘電率は、好ましくは8以
上、より好ましくは10以上である。誘電率が低すぎる
と、非線形光学特性が不十分となる。なお、この誘電率
は、バルクの多結晶体の常温での誘電率である。
【0022】基板の具体的構成材料としては、CaTi
3 、BaTiO3 、PbTiO3、KTaO3 、Na
TaO3 、SrTiO3 、CdTiO3 、KNbO3
LiNbO3 、LiTaO3 、PZT(PbZrO3
PbTiO3 系)、PLZT(La23 が添加された
PbZrO3 −PbTiO3 系)等のペロブスカイト型
化合物が好ましい。PLZTは、PbZrO3 −PbT
iO3 系の固溶体であるPZTにLaがドープされた化
合物であり、ABO3 の表記にしたがえば(Pb0.89
0.91La0.110.09)(Zr0.65Ti0.35)O3 で示さ
れる。また、PbTa26 、BaTa26 などのタ
ングステンブロンズ型化合物や、これらの固溶体も好ま
しい。また、TiO2 、Al23 、MgO、ZnO、
ZrO2、Si34 、SiAlON、LaSiON、
CeSiONも好ましい。これらのうち、単結晶が得ら
れやすい材料は、上記ペロブスカイト化合物のうちPZ
TおよびPLZT以外のものと、TiO2 、Al2
3 、MgO、ZnOおよびZrO2 とである。
【0023】本発明の非線形光学材料が含有する金属微
粒子には、Au(共鳴吸収ピーク位置約520nm)、A
g(同約370nm)またはCu(同約630nm)を用い
ることが好ましいが、この他の各種単一金属や合金も使
用でき、特に限定されるものではない。これらにおいて
は、後述する熱処理により金属の微粒子が適度に成長
し、これにより非線形光学特性が向上する効果が得られ
るとともに、プラズマ共鳴吸収ピーク位置のシフト効果
も得られる。
【0024】金属微粒子の平均粒径は、好ましくは1〜
100nm、より好ましくは2〜20nmである。このよう
な平均粒径において量子サイズ効果が実現する。非線形
光学材料中における金属微粒子の含有率は、好ましくは
1〜80vol%、より好ましくは2〜20vol%である。金
属微粒子の含有率が低すぎると非線形光学材料としての
有用性がうすれ、含有率が高すぎるとバルク的な性質が
大きくなるために光学的非線形性が小さくなる。なお、
金属微粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡画像から求
めるか、X線回析スペクトルからシェラーの式によって
求めることができる。また、金属微粒子の含有率は、化
学分析や蛍光X線分析等から求めればよい。
【0025】次に、上記非線形光学材料を製造する方法
を説明する。この方法は、イオン注入法により単結晶ま
たは多結晶の基板中に金属イオンを注入した後、基板に
熱処理を施す工程を有する。
【0026】単結晶基板を製造する方法は特に限定され
ないが、通常、引き上げ法等の液相成長法を用いること
が好ましい。
【0027】多結晶基板を製造する方法も特に限定され
ないが、通常、焼結法(ホットプレス法)を用いること
が好ましい。
【0028】イオン注入法は、例えば前記の光電子材料
シンポジウム予稿集に記載されている。イオン注入法に
おける各種条件は特に限定されないが、加速エネルギー
は100 keV〜1.5 MeVとすることが好ましく、イオ
ン注入量は1×1016〜1×1017ions/cm2とすること
が好ましく、ビームカレントは20〜100nA/cm2とす
ることが好ましく、真空度は1×10-7〜1×10-8To
rrとすることが好ましい。イオンの平均注入深さは、通
常、50〜500nmとすることが好ましく、注入深さの
標準偏差は、通常、20〜100nm程度であることが好
ましい。なお、注入深さは、イオンミリングしながらX
PS(X線光電子スペクトル分析)により測定すればよ
い。
【0029】イオン注入後に施される熱処理は、イオン
注入部の結晶の乱れを修復し、金属微粒子を成長させて
孤立分散させるためのものである。熱処理は、大気中ま
たは不活性ガス雰囲気中で行なうことが好ましい。処理
温度は好ましくは500〜1200℃、より好ましくは
700〜1100℃である。処理温度が低すぎると熱処
理の効果が不十分となり、処理温度が高すぎると基板に
注入した金属が抜けやすくなる。処理時間は好ましくは
1〜20時間、より好ましくは5〜15時間である。な
お、熱処理は2回以上行なってもよく、この場合、各処
理の際の温度は異なっていてもよい。
【0030】なお、熱処理により共鳴吸収ピーク位置を
調整することができる。熱処理によって共鳴吸収位置の
シフトが生じ、シフト幅は100nmにも達する。したが
って、熱処理条件と吸収位置との関係を実験から求めて
おけば、所望の共鳴吸収ピーク位置をもつ非線形光学材
料を再現性よく得ることが容易にできる。
【0031】本発明の非線形光学材料では、通常、1×
10-6esu 以上のχ(3) 値が得られ、1×10-5esu 以
上とすることも容易である。なお、χ(3) 値は、次世代
産業基盤技術・第2回光電子材料シンポジウム予稿集P
139−147,1991に記載の位相共役型の縮退四
光波混合法(DFWM法)に準じて測定することができ
る。上記のχ(3) 値は、Nd:YAGレーザ(波長1.
06μm )の第二高調波(波長532nm)を用いたとき
の値であり、プラズマ共鳴吸収ピーク位置での値ではな
いので、プラズマ共鳴吸収ピーク波長でのχ(3) 値はさ
らに大きくなる。ただし、本発明の非線形光学材料で
は、共鳴吸収ピーク位置からかなりはずれた領域におい
てもχ(3) 値を大きくすることができる。
【0032】本発明の非線形光学材料の例えば波長53
2nmにおけるχ(3) /α値は、通常、1×10-11 esuc
m 以上、特に1×10-10 esucm 以上である。
【0033】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例を示し、本発明
をさらに詳細に説明する。
【0034】<実施例1>SrTiO3 単結晶基板に、
加速エネルギー1.2 MeV、注入量2×1016ions/c
m2、ビームカレント35nA/cm2、真空度1×107 Torr
の注入条件でAuイオンを照射した。基板は、波長63
3nmにおける屈折率が2.4であり、波長400〜70
0nmでの平均透過率が70%であり、厚さが1.0mmで
あった。イオン注入後の基板は褐色を呈していた。
【0035】イオン注入後、イオンミリングしながらX
PSにより注入深さを測定した結果、平均注入深さは1
68nmであり、注入深さの標準偏差は49nmであった。
【0036】イオン注入後の基板について、透過および
吸収スペクトルの測定を行なった。次に、Au微粒子を
析出させるために熱処理を行なった。熱処理後にも透過
および吸収スペクトルを測定した。透過スペクトルを図
1に、吸収スペクトルを図2に、熱処理条件を両図に示
す。熱処理後の基板は、青色を呈していた。Au微粒子
の析出状態をAu微粒子による吸収スペクトル形状で判
断した結果、吸収スペクトルは比較的シャープに現われ
ており、Au微粒子が比較的均一に孤立分散しているこ
とがわかった。また、透過型電子顕微鏡による観察で
も、Au微粒子が比較的均一に孤立分散していることが
確認された。
【0037】900℃で1時間熱処理した後、1100
℃で5時間熱処理した場合、基板中のAu微粒子の平均
粒径は約5nm、基板中のAu濃度は3.0vol%であっ
た。Au濃度は、蛍光X線分析により求めた。蛍光X線
分析チャートを、図11に示す。なお、図11には、以
降の実施例および比較例における蛍光X線分析チャート
も示した。Au微粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡
により確認した。
【0038】また、上記熱処理を施した基板の三次非線
形光学特性の評価を、前述したDFWM法で行なった。
光源には、Nd:YAGレーザーの第二高調波(波長5
32nm、パルス幅7ns、入射強度1MW/cm2)を用い、発
生した位相共役波は分光器を経由させて光電子増倍管で
検知し、オシロスコープで波形を取り込んだ。計算で求
めたχ(3) /α値は1.2×10-10 esucm であり、非
常に高い特性を示した。
【0039】<実施例2>SrTiO3 単結晶基板の替
わりにTiO2 単結晶基板を用いた以外は実施例1と同
様の検討を行なった。基板は、波長633nmにおける屈
折率が2.9であり、波長400〜700nmでの平均透
過率が70%であり、厚さが1.0mmであった。
【0040】イオン注入後、イオンミリングしながらX
PSにより注入深さを測定した結果、平均注入深さは1
80nmであり、注入深さの標準偏差は45nmであった。
【0041】熱処理後の基板は青色を呈しており、実施
例1と同様な傾向を示した。熱処理前後の透過スペクト
ルを図3に、吸収スペクトルを図4に、熱処理条件を両
図に示す。900℃で1時間熱処理した後、1100℃
で5時間熱処理した基板において、計算で求めたχ(3)
/α値は2.53×10-10 esucm であり、実施例1と
同様に非常に高い特性を示した。なお、金属微粒子の平
均粒径および基板中の金属濃度は、実施例1とほぼ同じ
であった。
【0042】<実施例3>SrTiO3 単結晶基板の替
わりにAl23 単結晶基板を用いた以外は実施例1と
同様の検討を行なった。基板は、波長633nmにおける
屈折率が1.7であり、波長400〜700nmでの平均
透過率が85%であり、厚さが0.5mmであった。
【0043】イオン注入後、イオンミリングしながらX
PSにより注入深さを測定した結果、平均注入深さは1
75nmであり、注入深さの標準偏差は37nmであった。
【0044】処理後の基板は紫色を呈していた。熱処理
前後の透過スペクトルを図5に、吸収スペクトルを図6
に、熱処理条件を両図に示す。900℃で1時間熱処理
した後、1100℃で5時間熱処理した基板において、
計算で求めたχ(3) /α値は1.02×10-10 esucm
であり、実施例1と同様に非常に高い特性を示した。な
お、金属微粒子の平均粒径および基板中の金属濃度は、
実施例1とほぼ同じであった。
【0045】<実施例4>SrTiO3 単結晶基板の替
わりにPLZT多結晶基板を用いた以外は、実施例1と
同様の検討を行なった。基板は、平均結晶粒径が15μ
m であり、波長633nmにおける屈折率が2.6であ
り、波長400〜700nmでの平均透過率が50%であ
り、厚さが0.3mmであった。
【0046】イオン注入後、イオンミリングしながらX
PSにより注入深さを測定した結果、平均注入深さは1
76nmであり、注入深さの標準偏差は43nmであった。
【0047】熱処理後の基板は青色を呈していた。熱処
理前後の透過スペクトルを図7に、吸収スペクトルを図
8に、熱処理条件を両図に示す。700℃で10時間熱
処理した後、800℃で1時間熱処理した基板におい
て、計算で求めたχ(3) /α値は1.54×10-10 es
ucm であり、実施例1と同様に非常に高い特性を示し
た。なお、金属微粒子の平均粒径および基板中の金属濃
度は、実施例1とほぼ同じであった。
【0048】熱処理後の基板のX線回折チャートを図1
2に示す。このX線回折チャートでは、2θ=44°付
近において、PLZTピークの左肩部にAuのピークな
いしハローが重なっていることがわかる。
【0049】<実施例5>照射イオンをAgイオンと
し、注入条件を加速エネルギー160 keV、注入量5×
1016ions/cm2、ビームカレント35nA/cm2、真空度3
×107 Torrとした以外は実施例1と同様な検討を行な
った。
【0050】イオン注入後、イオンミリングしながらX
PSにより注入深さを測定した結果、平均注入深さは2
10nmであり、注入深さの標準偏差は45nmであった。
【0051】この基板のχ(3) /α値の最大値は実施例
1のものと同等以上であり、非常に高い特性を示した。
なお、金属微粒子の平均粒径および基板中の金属濃度
は、実施例1とほぼ同じであった。
【0052】<実施例6>照射イオンをCuイオンとし
た以外は実施例5と同様な検討を行なった。
【0053】イオン注入後、イオンミリングしながらX
PSにより注入深さを測定した結果、平均注入深さは2
30nmであり、注入深さの標準偏差は50nmであった。
【0054】この基板のχ(3) /α値の最大値は実施例
1のものと同等以上であり、非常に高い特性を示した。
なお、金属微粒子の平均粒径および基板中の金属濃度
は、実施例1とほぼ同じであった。
【0055】<比較例>SrTiO3 単結晶基板の替わ
りに非晶質のSiO2 基板を用いた以外は実施例1と同
様な検討を行なった。基板は、波長633nmにおける屈
折率が1.46であり、波長400〜700nmでの平均
透過率が90%であり、厚さが1.0mmであった。
【0056】イオン注入後、イオンミリングしながらX
PSにより注入深さを測定した結果、平均注入深さは1
80nmであり、注入深さの標準偏差は52nmであった。
【0057】熱処理後の基板はピンク色を呈していた。
熱処理前後の透過スペクトルを図9に、吸収スペクトル
を図10に、熱処理条件を両図に示す。900℃で1時
間熱処理した後、1100℃で5時間熱処理した基板に
おいて、計算で求めたχ(3)/α値は1.4×10-12 e
sucm であった。なお、金属微粒子の平均粒径および基
板中の金属濃度は、実施例1とほぼ同じであった。
【0058】熱処理後の基板のX線回折チャートを図1
3に示す。このX線回折チャートには、2θ=38.2
°付近にAuのハローが認められる。
【0059】以上の結果から、マトリックスである基板
は、単結晶または多結晶であることが好ましいことがわ
かる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Auイオンを注入したSrTiO3 単結晶基板
の熱処理前後における透過スペクトルである。
【図2】Auイオンを注入したSrTiO3 単結晶基板
の熱処理前後における吸収スペクトルである。
【図3】Auイオンを注入したTiO2 単結晶基板の熱
処理前後における透過スペクトルである。
【図4】Auイオンを注入したTiO2 単結晶基板の熱
処理前後における吸収スペクトルである。
【図5】Auイオンを注入したAl23 単結晶基板の
熱処理前後における透過スペクトルである。
【図6】Auイオンを注入したAl23 単結晶基板の
熱処理前後における吸収スペクトルである。
【図7】Auイオンを注入したPLZT多結晶基板の熱
処理前後における透過スペクトルである。
【図8】Auイオンを注入したPLZT多結晶基板の熱
処理前後における吸収スペクトルである。
【図9】Auイオンを注入したSiO2 基板の熱処理前
後における透過スペクトルである。
【図10】Auイオンを注入したSiO2 基板の熱処理
前後における吸収スペクトルである。
【図11】実施例および比較例における熱処理後の基板
の蛍光X線分析チャートである。
【図12】実施例4における熱処理後の基板のX線回折
チャートである。
【図13】比較例における熱処理後の基板のX線回折チ
ャートである。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 透光性の基板中に少なくとも1種の金属
    微粒子が孤立分散しており、前記基板が単結晶である非
    線形光学材料。
  2. 【請求項2】 透光性の基板中に少なくとも1種の金属
    微粒子が孤立分散しており、前記基板が平均結晶粒径5
    μm 以上の多結晶である非線形光学材料。
  3. 【請求項3】 前記基板の波長633nmにおける屈折率
    が1.5以上である請求項1または2の非線形光学材
    料。
  4. 【請求項4】 前記基板の透過スペクトルにおいて、波
    長400〜700nmでの平均透過率が20%以上である
    請求項1〜3のいずれかの非線形光学材料。
  5. 【請求項5】 前記金属微粒子がAu、AgまたはCu
    から構成される請求項1〜4のいずれかの非線形光学材
    料。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれかの非線形光学材
    料を製造する方法であって、イオン注入法により基板中
    に金属イオンを注入した後、基板に熱処理を施す工程を
    有する非線形光学材料の製造方法。
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