JPH09143427A - 熱硬化性塗料組成物 - Google Patents

熱硬化性塗料組成物

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JPH09143427A
JPH09143427A JP30632195A JP30632195A JPH09143427A JP H09143427 A JPH09143427 A JP H09143427A JP 30632195 A JP30632195 A JP 30632195A JP 30632195 A JP30632195 A JP 30632195A JP H09143427 A JPH09143427 A JP H09143427A
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JP
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acid
blocked isocyanate
acrylic resin
resistance
isocyanate
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JP30632195A
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Satoshi Owada
聡 大和田
Yoshihiro Kimura
嘉宏 木村
Minoru Nagai
実 永井
Tadanao Kurimoto
忠直 栗本
Yoshiko Natsume
佳子 夏目
Yoshinori Narita
義則 成田
Yoshinao Yazawa
由尚 矢沢
Masataka Muramatsu
正隆 村松
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Toyota Motor Corp
Aisin Chemical Co Ltd
Original Assignee
Toyota Motor Corp
Aisin Chemical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 塗装仕上り性、耐酸性雨性等に優れ、自動車
の上塗り塗料等として適した熱硬化性塗料組成物を提供
する。 【解決手段】 酸・水酸基含有アクリル樹脂と、エポキ
シ基・水酸基含有アクリル樹脂と、架橋樹脂としてのブ
ロックイソシアネートとを主剤として含み、そのブロッ
クイソシアネートとして、イソホロンジイソシアネート
IPDIをイソシアネート成分とするブロックイソシア
ネート(A)と、テトラメチルキシリレンジイソシアネ
ートTMXDI及びヘキサメチレンジイソシアネートH
DIのうちの1種以上をイソシアネート成分とするブロ
ックイソシアネート(B)とを併用して使用する。耐酸
性(耐酸性雨性)と共に耐候性及び耐衝撃性に優れ、ま
た鮮映性、耐焼付黄変性等の塗装仕上り性、耐水性、耐
溶剤性等にも優れた塗膜を得ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する分野】本発明は熱硬化性塗料組成物に関
するものであり、特に、自動車等の上塗り塗料等として
好適な、耐酸性雨性、塗装仕上り性等に優れた熱硬化性
塗料組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車の塗装仕上げは、主に防錆のため
の電着塗装による下塗り塗装、下塗り塗装塗膜と上塗り
塗装塗膜との密着性の向上、塗り肌品質(平滑性)の向
上等を目的とする中塗り塗装、及び上塗り塗装を順次施
すことによって、一般に行われている。ここで、上塗り
塗装は車体に光沢感、平滑感、肉持ち感等の美観を与
え、その商品価値を向上することを目的として行われ、
そのために、光沢、鮮映性等の塗装仕上り性において優
れていることが要求される。また、この美観は長期間に
亘って保持される必要があるため、上塗り塗装による塗
膜は耐候性、耐水性、耐溶剤性、耐衝撃性等に優れてい
ることも要求される。
【0003】そこで、従来から一般に、このような上塗
り塗装に使用する塗料としては、塗装仕上り性が良好で
あり、また、耐候性等の各種の塗膜性能にも優れた塗料
である熱硬化性のアクリル系樹脂塗料が使用され、具体
的には、メラミン樹脂を架橋樹脂とするメラミン樹脂硬
化型アクリル樹脂を主剤(塗膜形成剤,ビヒクル)とす
る塗料が一般に使用されている。なお、この骨格樹脂で
あるアクリル樹脂は、アクリル系単量体を主成分とする
ビニル系単量体の共重合体からなり、メラミン樹脂のメ
チロール基とエーテル結合により結合する水酸基をその
分子中に含有している。
【0004】ところで、近年では、森林が枯れる等、酸
性雨による被害が社会的にも深刻な問題となっており、
風雨に晒される自動車車体等の上塗り塗装塗膜について
も、この酸性雨による劣化の恐れが問題となってきてい
る。特に、上記のメラミン樹脂硬化型塗料の塗膜は、メ
ラミン樹脂と水酸基含有アクリル樹脂との架橋結合が酸
に比較的弱いエーテル結合であるため、長期間酸性雨に
触れると、凹み、シミ、変色等が発生したり、更には、
塗膜の破壊へと進行する可能性もある。
【0005】そのため最近では、例えば、特開平2−2
42867号公報にみられるように、水酸基含有アクリ
ル樹脂の架橋樹脂(硬化剤)として、そのメラミン樹脂
の少なくとも一部に代えて、ブロックイソシアネートを
用いたブロックイソシアネート硬化型塗料が開発されて
いる。なお、このブロックイソシアネートはイソシアネ
ート成分をブロック剤でブロックしたものであり、その
イソシアネート成分としては、ヘキサメチレンジイソシ
アネート(HDI)等のジイソシアネート、または、そ
のイソシアヌレート体、アダクト体等が用いられ、ま
た、ブロック剤としては、メチルエチルケトンオキシム
(MEKO)が最も普通に用いられている。そして、こ
のようなブロックイソシアネート硬化型塗料によれば、
架橋樹脂となるイソシアネート成分とアクリル樹脂の水
酸基とは、酸に強いウレタン結合を形成するため、耐酸
性(耐酸性雨性)に優れた塗膜を形成することができ
る。また、この塗料は、イソシアネート基がブロックさ
れているため、貯蔵安定性にも優れている。
【0006】なお、このような水酸基含有アクリル樹脂
を骨格樹脂とし、またブロックイソシアネートを架橋樹
脂とするブロックイソシアネート硬化型塗料について
は、他にも、特開平2−242867号公報、特開平3
−172638号公報、特開平4−130168号公
報、特開平4−170482号公報、特開平4−246
483号公報、特開平5−25431号公報、特開平5
−202335号公報、特開平5−295322号公報
等において、種々の変形または態様で開示されている。
【0007】また、これとは別に、耐酸性に優れた塗料
組成物として、カルボキシル基を分子中に含有するアク
リル樹脂とエポキシ基を分子中に含有するアクリル樹脂
との組合せを主剤とする酸/エポキシ硬化型塗料も知ら
れている。つまり、この酸/エポキシ硬化型塗料の場合
も、酸に比較的強いエステル結合が形成されるため、耐
酸性に優れた塗膜を形成することができる。また、硬化
反応時に副生成物が生じないことも、この塗料の利点で
ある。なお、このような酸/エポキシ硬化型塗料につい
ては、例えば、特開平1−139653号公報に開示さ
れている。
【0008】更に、特開平2−145666号公報に
は、酸/エポキシ硬化型樹脂とブロックイソシアネート
硬化型樹脂とを複合した形態である酸/エポキシ/ブロ
ックイソシアネート硬化型樹脂を主剤とする塗料が開示
されている。具体的には、この塗料は、酸・(水酸基)
含有アクリル樹脂と、エポキシ基・(水酸基)含有アク
リル樹脂と、ブロックイソシアネートとを主剤とするも
ので、カルボキシル基とエポキシ基との反応によるアク
リル樹脂相互の架橋と、ブロックイソシアネートによる
アクリル樹脂間の架橋とにより、硬化される。そして、
これらの架橋結合は酸に強い結合であるため、形成され
た塗膜は耐酸性に優れている。
【0009】なお、特開平5−171103号公報に
は、上記の塗料におけるブロックイソシアネートをアミ
ノ樹脂(メラミン樹脂)に代えた形態である酸/エポキ
シ/アミノ樹脂(メラミン樹脂)硬化型塗料が開示され
ている。そして、同公報には、この塗料によって耐酸性
に優れた塗膜を形成できることが記載されているが、ア
ミノ樹脂の配合量が多いとその耐酸性が低下することも
記載されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】このように、メラミン
樹脂硬化型アクリル系塗料は、光沢、硬度、耐溶剤性、
耐水性、耐候性、耐衝撃性、鮮映性、耐焼付黄変性、等
の自動車の上塗り塗装塗膜に求められる塗膜特性を良好
に満たすものであるが、耐酸性(耐酸性雨性)が悪い。
そのため、上記のように、これに代わる耐酸性に優れた
塗料として、アクリル樹脂を骨格樹脂とする種々の熱硬
化性塗料組成物が提案されている。
【0011】しかしながら、メラミン樹脂に代えてブロ
ックイソシアネートを用いたブロックイソシアネート硬
化型塗料は、架橋密度を高くすることが困難であり、ま
た、低温硬化性にも劣る傾向にある。そのため、架橋密
度が不足する傾向となり、特に、省エネルギのためにそ
れの焼付乾燥を比較的低温度で行った場合には、それに
よって形成された塗膜は耐酸性に優れ、また光沢、硬度
等も良好ではあるが、耐溶剤性と耐水性とが不十分とな
る傾向がある。
【0012】また、酸/エポキシ硬化型塗料組成物は、
優れた耐酸性が得られる点はブロックイソシアネート硬
化型塗料の場合と同じであるが、エポキシ基とカルボキ
シル基との架橋反応によって新たに水酸基が生じるた
め、耐溶剤性と耐水性とが低下する傾向がある。また、
この塗料によれば、その硬化時に副生成物が発生しない
ため、本来的には仕上り性のよい塗膜が形成される。し
かし、この塗料は広い温度範囲で硬化が進むため、例え
ば、メラミン樹脂硬化型塗料からなるメタリックベース
コートの上塗りクリヤーとして使用される場合、そのベ
ースコートとの硬化バランスが悪く、それによって特に
鮮映性が低下する。更に、この塗料は、エポキシ基とカ
ルボキシル基との反応が常温においてもある程度進行す
るため、貯蔵安定性が悪い。
【0013】これらの酸/エポキシ硬化型塗料及びブロ
ックイソシアネート硬化型塗料に対して、これらを複合
した形態の塗料である上記の酸/エポキシ/ブロックイ
ソシアネート硬化型塗料によれば、それらの短所または
欠点を有効に改善することができる。即ち、酸・(水酸
基)含有アクリル樹脂と、エポキシ基・(水酸基)含有
アクリル樹脂との架橋は、それらのカルボキシル基とエ
ポキシ基との反応の他に、ブロックイソシアネートによ
っても行われる。そのため、特に各アクリル樹脂が水酸
基を含有する場合には、十分に架橋密度を高くすること
ができ、また、同時に硬化性についても改善される。し
たがって、この塗料によれば、耐酸性に優れ、耐溶剤
性、耐水性にも優れ、更には鮮映性が良好である塗膜を
得ることができ、しかも、貯蔵安定性も良好である。
【0014】ところが、このような塗料であっても、そ
の耐酸性は、過酷な酸性条件下ではなお不十分なもので
あった。即ち、夏期の炎天下において車体に一時的に酸
性雨が降りかかったような場合、車体に付着した酸性雨
は濃縮されて強酸性の水滴となり、しかも高温下で上塗
り塗装塗膜に作用することになる。そして、ブロックイ
ソシアネートのイソシアネート成分としてはHDIが最
も一般的に使用されるが、このようなブロックイソシア
ネートを用いた場合、そのような過酷な酸性条件に対し
ては、耐酸性が十分ではなかった。
【0015】そして、そのような過酷な酸性条件に対す
る優れた耐酸性は、イソホロンジイソシアネート(IP
DI)をイソシアネート成分とするブロックイソシアネ
ートを使用することによって得られることが分かった。
これは、IPDIに含まれる3個のメチル基が撥水作用
を生じるためであるとも考えられる。しかし、このIP
DIをイソシアネート成分とするブロックイソシアネー
トの使用は、同時に、塗膜の耐衝撃性と耐候性とを低下
させるものであった。
【0016】そこで、本発明は、優れた耐酸性(耐酸性
雨性)だけでなく、光沢、硬度、耐溶剤性、耐水性、耐
候性、耐衝撃性、鮮映性、耐焼付黄変性等の塗膜性能を
良好に確保することができ、しかも良好な貯蔵安定性を
有する熱硬化性塗料組成物の提供を課題とするものであ
る。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、耐酸性の
他に、光沢、鮮映性等の塗装仕上り性等も良好であり、
また貯蔵安定性も良好である酸/エポキシ/ブロックイ
ソシアネート硬化型樹脂塗料に着目し、それを更に改善
するために、特に、そのブロックイソシアネートのイソ
シアネート成分について種々の模索と検討とを重ねた。
そしてその結果、そのブロックイソシアネートとして、
特に優れた耐酸性を与えることができるIPDIをイソ
シアネート成分とするブロックイソシアネート(A)
と、耐酸性には比較的劣るが、特に優れた耐候性と耐衝
撃性とを与えることができるTMXDIまたはHDIを
イソシアネート成分とするブロックイソシアネート
(B)とを併用することによって、これらの優れた塗膜
性能が、他の塗膜性能の低下を伴なうことなく同時に得
られることを見出だし、また確認した。
【0018】即ち、本発明にかかる熱硬化性塗料組成物
は、カルボキシル基と水酸基とを分子中に含有する酸・
水酸基含有アクリル樹脂と、エポキシ基と水酸基とを分
子中に含有するエポキシ基・水酸基含有アクリル樹脂
と、架橋樹脂としてのブロックイソシアネートとを主剤
として含み、そのブロックイソシアネートが、イソホロ
ジイソシアネート(IPDI)をイソシアネート成分と
するブロックイソシアネート(A)と、テトラメチルキ
シリレンジイソシアネート(TMXDI)及びヘキサメ
チレンジイソシアネート(HDI)のうちの1種以上を
イソシアネート成分とするブロックイソシアネート
(B)との併用系からなるものである。
【0019】このように、この熱硬化性塗料組成物にお
いては、酸・水酸基含有アクリル樹脂とエポキシ基・水
酸基含有アクリル樹脂からなる酸/エポキシ硬化型樹脂
に架橋樹脂としてのブロックイソシアネートを配合し
て、架橋密度が高く、しかも硬化性が改善された酸/エ
ポキシ/ブロックイソシアネート硬化型樹脂を形成する
と共に、そのブロックイソシアネートとして、優れた耐
酸性を与えることができるブロックイソシアネート
(A)と、優れた耐候性及び耐衝撃性とを与えることが
できるブロックイソシアネート(B)とを併用している
ので、貯蔵安定性が良好であるだけでなく、十分な光沢
と硬度とを有し、また、耐溶剤性及び耐水性に優れ、更
に、鮮映性、耐焼付黄変性等の塗装仕上り性も良好であ
り、しかも、優れた耐酸性(耐酸性雨性)を、優れた耐
候性及び耐衝撃性と共に有する塗膜を形成することがで
きる。なお、貯蔵安定性が改善されるのは、カルボキシ
ル基とエポキシ基との反応が、これらの間にブロックイ
ソシアネートが介在することによって阻害され、抑制さ
れるためであると考えられる。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、この熱硬化性塗料組成物に
ついて更に詳細に説明する。
【0021】上記のように、本発明にかかる熱硬化性塗
料組成物は、酸・水酸基含有アクリル樹脂と、エポキシ
基・水酸基含有アクリル樹脂と、特定のブロックイソシ
アネートの併用系とを主剤、即ち、塗膜形成剤(樹脂成
分)として含み、形成される。これらの各成分について
詳細に説明する。
【0022】〔酸・水酸基含有アクリル樹脂〕酸・水酸
基含有アクリル樹脂は、分子中にカルボキシル基と水酸
基とを含有するアクリル樹脂(アクリル系共重合体)で
あり、酸/エポキシ硬化型樹脂の一方の樹脂成分をなす
と共に、ブロックイソシアネートからなる架橋樹脂に対
する骨格樹脂をなすものである。そして、この酸・水酸
基含有アクリル樹脂は、アクリル系ビニル単量体を主成
分とし、また、カルボキシル基を含有するビニル単量体
と、水酸基を含有するビニル単量体とを含む単量体成分
を共重合して得られる。
【0023】ここで、アクリル系単量体としては、メチ
ルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチル
アクリレート、ラウリルアクリレート、2−エチルブチ
ルアクリレート等のアクリル酸の炭素数1〜24のアル
キルエステル類、メチルメタクリレート、n−ブチルメ
タクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチル
ヘキシルメタクリレート、デシルメタクリレート、ステ
アリルメタクリレート等のメタクリル酸の炭素数1〜2
4のアルキルエステル類を挙げることができる。そし
て、これらのアクリル系単量体はその任意の1種を単独
で、または2種以上を適宜組み合わせて使用することが
できる。しかし、これらの中でも、n−ブチルアクリレ
ート、n−ブチルメタクリレート等、アクリル酸または
メタクリル酸の比較的低アルキルエステルが一般に好適
に用いられる。
【0024】また、カルボキシル基を含有する単量体と
しては、アクリル酸またはメタクリル酸が一般的である
が、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸等
のその他のエチレン性不飽和カルボン酸を使用すること
ができる。そして、これらの単量体についても、その任
意の1種を単独で、または適宜に組み合わせて用いるこ
とができる。
【0025】更に、水酸基を含有する単量体としては、
2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエ
チルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレー
ト、ヒドロキシプロピルメタクリレート等のアクリル酸
・メタクリル酸の炭素数2〜24のヒドロキシアルキル
エステル類、N−メチロールアクリルアミド、N−メチ
ロールメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリ
ルアミド、N−ジヒドロキシエチルメタクリルアミド等
のアクリル酸・メタクリル酸の炭素数1〜12のヒドロ
キシアルキルアミド類等が挙げられる。そして、これら
の水酸基含有ビニル単量体は、その任意の1種を単独
で、または2種以上を適宜組合わせて使用することがで
きる。ただし、これらの中でも、2−ヒドロキシエチル
メタクリレート等が最も一般的であり、また好適に使用
することができる。
【0026】なお、これらの単量体の他に、スチレン、
ビニルトルエン等の芳香族系ビニル単量体や、アクリル
ニトリル、メタクリルニトリル、アクリルアミド、酢酸
ビニル等のビニル系非官能性単量体も、適宜組み合わせ
て用いることができる。例えば、スチレン、またはビニ
ルトルエンの使用は、樹脂塗膜の耐酸性をより高める点
で好ましいものでもある。
【0027】そして、これらの単量体成分を共重合して
得られた酸・水酸基含有アクリル樹脂は、その平均分子
量(数平均分子量)において500〜50000程度で
あることが好ましく、また、1500〜15000程度
であることがより好ましい。この平均分子量が余り少な
く一般に500よりも小さいと、十分に硬化した樹脂塗
膜を形成することが困難となり、また逆に、その平均分
子量が余り大きく一般に50000を越えると、溶解性
が低下しまたは塗料の粘度が高くなり、塗料の調製が困
難となる。
【0028】また、この酸・水酸基含有アクリル樹脂の
酸価と水酸基価とは、特に重点的に要求される塗膜性能
等に応じて適宜決めることができるが、一般に、その酸
価は30〜130(mgKOH/g)が好ましい。この酸価が余
り少なく一般に30よりも小さいと、エポキシ基・水酸
基含有アクリル樹脂との架橋密度が不足する傾向とな
り、硬化性等における実用上十分な塗膜性能を得ること
が困難となる。また逆に、この酸価が余り多く一般に1
30を越えると、樹脂粘度が高くなり、エポキシ基・水
酸基含有アクリル樹脂及びブロックイソシアネートとの
相溶性が低下する傾向となる。そのため、その酸価は、
一般に30〜130が好ましく、また、60〜110程
度がより好ましい。また、水酸基価についても同様であ
り、これが余り少ないと、実用上十分に硬化した塗膜を
得ることが困難となり、また逆に、これが余り高いと、
他の樹脂成分との相溶性が低下する傾向となる。そのた
め、この水酸基価は、一般に10〜100(mgKOH/g)が
好ましく、より好ましくは20〜70、更に、最も好ま
しくは20〜50である。
【0029】〔エポキシ基・水酸基含有アクリル樹脂〕
エポキシ基・水酸基含有アクリル樹脂は、分子中にエポ
キシ基と水酸基とを含有するアクリル樹脂(アクリル系
共重合体)であり、上記の酸・水酸基含有アクリル樹脂
と酸/エポキシ硬化型樹脂を形成すると共に、それと共
同してブロックイソシアネートからなる架橋樹脂の骨格
樹脂を形成する。そして、このエポキシ基・水酸基含有
アクリル樹脂は、カルボキシル基を含有するビニル単量
体に代えてエポキシ基を含有するビニル単量体を用いる
他は、酸・水酸基含有アクリル樹脂と同様に、アクリル
系ビニル単量体を主成分とする単量体成分を共重合して
得られる。
【0030】ここで、エポキシ基含有ビニル単量体とし
ては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレ
ート、3,4−エポキシシクロヘキシルアクリレート、
3,4−エポキシシクロヘキシルメタクリレート等のア
クリル系単量体の他にも、例えば、アリルグリシジルエ
ーテル等が挙げられる。そして、これらのエポキシ基含
有ビニル単量体は、それぞれ単独でまたは適宜組み合わ
せて使用することができる。しかし、一般には、グリシ
ジル(メタ)アクリレートが最も普通に使用される。
【0031】そして、このエポキシ基含有ビニル単量体
を含む単量体成分を共重合して得られたエポキシ基・水
酸基含有アクリル樹脂は、その平均分子量(数平均分子
量)において、酸・水酸基含有アクリル樹脂の場合と同
様に、一般に500〜50000程度であることが好ま
しく、1500〜15000程度であることがより好ま
しい。ただしここで、これらの酸・水酸基含有アクリル
樹脂とエポキシ基・水酸基含有アクリル樹脂とは、その
一方の分子量を比較的大きくすると共に、他方の分子量
を比較的小さくすることができる。これによって、それ
らのアクリル樹脂の相溶性を高め、それらの相互の架橋
反応を良好に行わせることができる。
【0032】また、このエポキシ基・水酸基含有アクリ
ル樹脂のエポキシ当量と水酸基価とは、酸・水酸基含有
アクリル樹脂との対応等を考慮して適宜決めることがで
きるが、一般に、そのエポキシ当量は200〜1000
程度であることが好ましい。即ち、エポキシ当量が余り
小さいと、カルボキシル基との反応が局部的に過剰とな
り、塗膜の硬化時に硬化ひずみが生じる恐れがあり、ま
た逆に、エポキシ当量が余り大きいと、架橋密度が不足
する傾向となり、実用上十分な塗膜の硬化性を得ること
が困難になる。そのため、エポキシ当量は、一般に20
0〜1000程度であることが好ましく、また、より好
ましいのは250〜500である。なお、このエポキシ
当量は、エポキシ基1グラム当量を含む樹脂の質量
(g)数(エポキシ基1個当たりの樹脂の分子量)で表
される。なお、このアクリル樹脂の水酸基価は、酸・水
酸基含有アクリル樹脂と同じ程度であることが好まし
く、一般に10〜100が好ましい。また、より好まし
いのは20〜70であり、更に、最も好ましいのは20
〜50である。
【0033】そして、本発明の熱硬化性塗料組成物にお
いて、これらの酸・水酸基含有アクリル樹脂とエポキシ
基・水酸基含有アクリル樹脂とは、それらのカルボキシ
ル基(酸)とエポキシ基とが等当量となるような割合、
つまり、酸・水酸基含有アクリル樹脂に含まれるカルボ
キシル基とエポキシ基・水酸基含有アクリル樹脂に含ま
れるエポキシ基とのモル比(個数比)がほぼ1:1にな
るような割合、を基本として配合される。即ち、酸・水
酸基含有アクリル樹脂とエポキシ基・水酸基含有アクリ
ル樹脂とは、カルボキシル基とエポキシ基とのモル比
(個数比)が1:2〜2:1となるような割合で、一般
に配合することができる。
【0034】〔ブロックイソシアネート〕これらのアク
リル樹脂に対する架橋樹脂(硬化剤)として使用するブ
ロックイソシアネートは、イソホロンジイソシアネート
(IPDI)をイソシアネート成分とするブロックイソ
シアネート(A)と、テトラメチルキシリレンジイソシ
アネート(TMXDI)及び/またはヘキサメチレンジ
イソシアネート(HDI)をイソシアネート成分とする
ブロックイソシアネート(B)との併用系からなってい
る。なお、TMXDIはメタ体が一般的であるが、オル
ト体またはパラ体であることができ、更にはこれらの混
合物であることもできる。また、ブロックイソシアネー
ト(B)は、このTMXDIとHDIとのいずれか一方
をイソシアネート成分とすることができるが、これらの
混合物をイソシアネート成分とすることができる。つま
り、ブロックイソシアネート(B)のイソシアネート成
分は、TMXDI及びHDIのうちの1種以上であるこ
とができる。
【0035】ここで、ブロックイソシアネート(A)の
イソシアネート成分であるIPDIは、酸・水酸基含有
アクリル樹脂とエポキシ基・水酸基含有アクリル樹脂と
に架橋して、特に、耐酸性(耐酸性雨性)において優れ
た塗膜を形成する。そして、このブロックイソシアネー
ト(A)は、その優れた耐酸性を十分に確保するため
に、ブロックイソシアネート全体に対して、有効イソシ
アネート基(有効NCO)の含有量において、一般に3
0%以上の割合で用いることが好ましい。また、より好
ましいのは40%以上の割合である。なお、有効イソシ
アネート基とは、塗料の焼付乾燥時にブロック剤が解離
することによって反応可能となるイソシアネート基のこ
とである。
【0036】他方、ブロックイソシアネート(B)のイ
ソシアネート成分であるTMXDIまたはHDIは、同
様にアクリル樹脂を架橋して、特に、ブロックイソシア
ネート(A)に不足する耐衝撃性と耐候性とに優れた塗
膜を形成する。そして、このブロックイソシアネート
(B)は、これらの耐衝撃性と耐候性とを十分に確保す
るために、ブロックイソシアネート全体に対して、一般
に10%以上の割合で用いることが好ましく、20%以
上であることがより好ましい。ただし、このブロックイ
ソシアネート(B)の割合は、より優れた耐酸性を優れ
た耐衝撃性と耐候性と共に得るために、60%を限度と
することがより好ましく、更に、HDIをイソシアネー
ト成分とする場合は、耐酸性に比較的劣るため、40%
を限度とすることが好ましい。
【0037】即ち、ブロックイソシアネート(A)とブ
ロックイソシアネート(B)との相互の配合割合(併用
比)は、有効NCO含有量比において90:10〜3
0:70となるような割合が好ましい。そして、より好
ましいその有効NCO含有量比は80:20〜40:6
0であり、また、ブロックイソシアネート(B)のイソ
シアネート成分がHDIである場合には、80:20〜
60:40が更に好ましい。そして、このようにブロッ
クイソシアネート(A)と(B)とを併用することによ
り、耐焼付黄変性に若干劣る傾向があるブロックイソシ
アネート(B)のその耐焼付黄変性を改善することもで
きる。
【0038】なお、これらのブロックイソシアネート
(A)及び(B)において、IPDI、TMXDI及び
HDIは、それ自体をそのままブロックイソシアネート
のイソシアネート成分として使用することができる。し
かしながら、これらのジイソシアネート化合物は、常温
での飽和蒸気圧が比較的高い傾向にある。そのため、よ
り良い安全性の点からも、これらをビューレット体、イ
ソシアヌレート体、またはトリメチロールプロパン等の
多価アルコールとのアダクト体(付加体)、更には比較
的低分子のウレタンプレポリマ等として高分子量化し、
その揮発性を無くし或いはその蒸気圧を低下させて用い
ることが好ましい。
【0039】そして、これらのポリイソシアネート化合
物は、その遊離のイソシアネート基をブロック剤によっ
て部分的にまたは完全にブロックしたブロックイソシア
ネートとして使用される。ここで、ブロック剤としては
メチルエチルケトンオキシム(MEKO)、アセトンオ
キシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオ
キシム、ベンゾフェノンオキシム等のオキシム類、メタ
ノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアル
コール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、シクロ
ヘキサノール等のアルコール類、ε−カプロラクタム、
γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタム等のラクタ
ム類、フェノール類、等が挙げられる。これらの中で
も、MEKOは最も代表的なものであり、一般に好適に
用いることができる。
【0040】また、アセチルアセトン、アセト酢酸エチ
ル(EAA)、マロン酸メチル、マロン酸エチル等の活
性メチレン化合物をブロック剤として使用することもで
きる。これらの活性メチレン化合物は、塗料の焼付乾燥
時の変色(黄変)の原因となる窒素原子を分子中に含有
していないため、これらをブロック剤として使用するこ
とによって、耐焼付黄変性を向上することができる。更
に、これらは解離温度が低く、低温解離性にも優れてい
る。そのため、焼付温度が例えば120℃程度の比較的
低温度であっても、十分に硬化した塗膜を形成すること
ができる。そして、これらの活性メチレン化合物の中で
も、EAAは、特に好適に用いることができる。
【0041】なお、これらのブロック剤は、いずれの化
合物が用いられる場合であっても、ブロックイソシアネ
ート(A)及び(B)のそれぞれにおいて同じであるこ
とが好ましい。それによって、解離温度を等しくし、そ
れらのブロックイソシアネートのアクリル樹脂に対する
架橋反応を均質に行わせることができる。
【0042】なおまた、塗料焼付乾燥時におけるこれら
のブロックイソシアネートの架橋反応(硬化反応)を促
進するために、必要に応じて、ブロック剤の解離を促進
する硬化触媒を用いることができる。そして、そのよう
な硬化触媒としては任意のものを使用できるが、有機錫
とカルボン酸との塩である有機錫系化合物を用いること
が好ましい。ここで、有機錫としてはメチル、ブチル、
オクチル等のアルキル錫が好ましく、更にはジアルキル
錫が好ましい。また、カルボン酸としてはラウリン酸等
の脂肪族モノカルボン酸、マレイン酸、フタル酸、等が
好ましい。そこで、特に好ましい有機錫系化合物として
は、例えば、ジ−n−ブチル錫ジラウリレート等が挙げ
られる。
【0043】そして、併用系からなるこれらのブロック
イソシアネート(A)及び(B)は、上記の酸・水酸基
含有アクリル樹脂及びエポキシ基・水酸基含有アクリル
樹脂に対して、それらのアクリル樹脂の水酸基と有効N
COとのモル比(個数比)が1:0.2〜1:2.0と
なるような割合で、好ましくは1:0.4〜1:1.2
となるような割合で、配合することができる。なお、こ
のモル比を決めるに際して、その塗料組成物が、例え
ば、メラミン樹脂を架橋樹脂とするメラミン樹脂硬化型
塗料からなるベースコートの上塗り塗料として用いられ
る場合、水酸基が過剰となるようにそのモル比を定める
ことによって、その水酸基をベースコートのメラミン樹
脂と反応させ、塗膜間の密着性(接着性)の向上を図る
ことができる。
【0044】〔塗料の調製〕これらの酸・水酸基含有ア
クリル樹脂とエポキシ基・水酸基含有アクリル樹脂、及
びブロックイソシアネート(A)及び(B)の併用系と
を主剤とする熱硬化性塗料組成物は、そのままクリヤー
塗料として、或いは、有機系顔料または無機系顔料を配
合することにより、着色塗料等として具体化することが
できる。また、これらの塗料には、その具体的用途等に
応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、或いはその他の添
加剤等を適宜配合することができる。
【0045】ここで、有機系顔料としてはアゾ系、フタ
ロシアニン系等の顔料または染料を挙げることができ、
また、無機系顔料としては、酸化チタン、酸化鉄、酸化
クロム等の一般の着色顔料、炭酸カルシウム等の体質顔
料と共に、メタリック粉末或いはマイカ顔料、更には防
錆顔料、等が挙げられる。そして、これらの顔料は、要
求に応じて、それらの任意の1種以上を適宜使用するこ
とができる。
【0046】紫外線吸収剤としては、2−(2’−ヒド
ロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール
等のベンゾトリアゾール系化合物、2,4−ジヒドロキ
シベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物、ジフェ
ニルアクリレート等のアクリレート系化合物、p−オク
チル−フェニルサリシレート等のサリシレート系化合
物、2−ヒドロキシ−ナフトフェノン、ニッケル−ビス
オクチルフェニルスルフィド等のその他の化合物が挙げ
られ、これらは1種または2種以上組合わせて使用する
ことができる。
【0047】この紫外線吸収剤は単独で使用することも
できるが、好ましくは、酸化防止剤と合わせて使用する
ことができる。そして、酸化防止剤としては、ビス
(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジ
ル)セバケート等のヒンダードアミン系、フェノール
系、スルフィド系の化合物を挙げることができる。
【0048】また、シリコーンやその他の有機高分子等
の表面調整剤、シリカ微粉末等のタレ止め剤、或いはポ
リカルボン酸アミド等の増粘剤等も、必要に応じて適宜
用いることができる。更に、必要があれば、カルボキシ
ル基、エポキシ基、及び水酸基を含有しない樹脂を主剤
成分として配合することもできる。
【0049】なお、塗料組成物の調製のための溶剤とし
ては、この種のアクリル樹脂塗料組成物に一般に使用さ
れている任意のものを使用することができる。例えば、
ブタノール、プロパノール等のアルコール系溶剤、エチ
レングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶
剤、ソルベッソ100等の炭化水素系溶剤、酢酸エチル
等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン等のケトン系
溶剤、キシレン、トルエン等の芳香族系溶剤、等であ
る。そして、これらの溶剤は、それぞれ単独でまたは2
種以上を混合して使用することができる。
【0050】そして、このように調製した熱硬化性塗料
組成物は、これを塗布し、次いで加熱して焼付乾燥を行
うことによって、主剤が相互に架橋され、硬化した塗膜
として形成される。なお、この場合、焼付温度が140
℃程度の比較的低い温度であっても、十分に硬化した塗
膜を形成することができる。また、上記のように、併用
系からなるブロックイソシアネートのブロック剤とし
て、活性メチレン化合物、特に、アセト酢酸エチルを用
いた場合には、更に120℃程度のより低い加熱条件で
あっても、良好な硬化塗膜を形成することができる。
【0051】
【実施例】以下、本発明を実施例及び比較例によって更
に具体的に説明する。
【0052】図1は本発明の実施例の熱硬化性塗料組成
物の主剤(樹脂成分)の配合組成と、評価試験の結果と
を示す表図である。また、図2は同じく比較例の熱硬化
性塗料組成物の主剤の配合組成と、評価試験の結果とを
示す表図である。
【0053】即ち、本発明の熱硬化性塗料組成物を自動
車の上塗り塗装に使用するクリヤー塗料として具体化
し、図1に示す配合組成(重量%)を主剤とする実施例
1乃至実施例6の塗料組成物を調製した。また、これら
の実施例との対比のために、図2に示す配合組成(重量
%)を主剤とする比較例1乃至比較例6の塗料組成物も
合わせて調製した。そして、これらの実施例及び比較例
の熱硬化性塗料組成物(クリヤー塗料)について、貯蔵
安定性を含めて、その塗膜性能に関する各種の評価試験
を行った。
【0054】なお、ここで使用したアクリル樹脂A,
B,C、及びブロックイソシアネートA(A1 ,A2
),B(B1 ,B2 ,B3 )は、それぞれ以下の組成
または成分からなる。
【0055】〈アクリル樹脂A〉アクリル樹脂Aは、カ
ルボキシル基と水酸基とを分子中に含有する酸・水酸基
含有アクリル樹脂であり、酸/エポキシ硬化型樹脂の一
方の樹脂成分をなすものである。
【0056】このアクリル樹脂Aは、スチレン20重量
部/n−ブチルメタクリレート38重量部/n−ブチル
アクリレート23重量部/2−ヒドロキシエチルメタク
リレート7重量部/アクリル酸12重量部からなる単量
体混合物(全100重量部)から得たものであり、具体
的には、この混合物にアゾイソブチルニトリル(AIB
N)2重量部を添加し、これを、120℃に保持した混
合溶剤n−ブタノール/キシレン(3/7)中に4時間
かけて滴下し反応させた後、1重量部のAIBNを5分
毎に均等に加えながら2時間保持し、更に1時間保持す
ることによって製造した。
【0057】なお、このアクリル樹脂Aの重量平均分子
量は12000であり、また、その酸価は94、水酸基
価は30である。
【0058】〈アクリル樹脂B〉アクリル樹脂Bは、上
記のアクリル樹脂Aと酸/エポキシ硬化型樹脂を形成す
るもう一方の樹脂成分をなすもので、エポキシ基と水酸
基とを分子中に含有するエポキシ基・水酸基含有アクリ
ル樹脂である。
【0059】このアクリル樹脂Bは、スチレン10重量
部/n−ブチルメタクリレート18重量部/n−ブチル
アクリレート18重量部/2−ヒドロキシエチルメタク
リレート7重量部/グリシジルメタクリレート47重量
部からなる単量体混合物(全100重量部)から得たも
のであり、上記のアクリル樹脂Aの場合と同様にして製
造した。
【0060】なお、このアクリル樹脂Bの重量平均分子
量は3000であり、また、そのエポキシ当量は30
0、水酸基価は30である。
【0061】〈アクリル樹脂C〉アクリル樹脂Cは、メ
ラミン樹脂またはブロックイソシアネート硬化型樹脂の
骨格樹脂成分をなす水酸基含有アクリル樹脂である。
【0062】そして、このアクリル樹脂Cは、スチレン
20重量部/n−ブチルメタクリレート39重量部/n
−ブチルアクリレート18重量部/2−ヒドロキシエチ
ルメタクリレート21重量部/アクリル酸2重量部から
なる単量体混合物(全100重量部)から得たものであ
り、上記のアクリル樹脂A,Bと同様に製造した。
【0063】なお、このアクリル樹脂Cの重量平均分子
量は12000であり、また、その水酸基価は90、酸
価は15である。
【0064】〈ブロックイソシアネートA(A1 ,A2
)〉ブロックイソシアネートAは、イソホロンジイソ
シアネート(IPDI)をイソシアネート成分とするも
のである。ここでは、ブロック剤が異なるブロックイソ
シアネートA1 とブロックイソシアネートA2 の2種類
を使用した。
【0065】ブロックイソシアネートA1 は、IPDI
のイソシアヌレート体を、ブロック剤としてメチルエチ
ルケトンオキシム(MEKO)を用いてブロックしたブ
ロックイソシアネート(『VESTANAT B−13
58A』ヒュルス社製)からなる。なお、このブロック
イソシアネートA1 の有効イソシアネート基の含有量
(有効NCO含有量)は12.698重量%(固形分)
である。
【0066】ブロックイソシアネートA2 は、同じくI
PDIのイソシアヌレート体を、ブロック剤としてアセ
ト酢酸エチル(EAA)を用いてブロックしたブロック
イソシアネート(『VESTANAT B−1192』
ヒュルス社製)からなる。なお、このブロックイソシア
ネートA2 の有効NCO含有量は11.794重量%
(固形分)である。
【0067】〈ブロックイソシアネートB(B1 ,B2
,B3 )〉ブロックイソシアネートBは、m−テトラ
メチルキシリレンジイソシアネート(m−TMXDI)
またはヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)をイ
ソシアネート成分とするものである。ここでは、m−T
MXDIをイソシアネート成分とするブロックイソシア
ネートB1 と、HDIをイソシアネート成分とし、ブロ
ック剤が異なる2種類のブロックイソシアネートB2 及
びブロックイソシアネートB3 を用いた。
【0068】ブロックイソシアネートB1 は、m−TM
XDIのアダクト体を、ブロック剤としてMEKOを用
いてブロックしたブロックイソシアネート(『タケネー
トXB−77−M9』武田薬品工業(株)製)からな
る。この有効NCO含有量は12.666重量%(固形
分)である。
【0069】ブロックイソシアネートB2 は、HDIの
イソシアヌレート体を、同様にMEKOでブロックした
ブロックイソシアネート(『タケネートXB−72−M
6』武田薬品工業(株)製)からなる。なお、この有効
NCO含有量は15.286重量%(固形分)である。
【0070】ブロックイソシアネートB3 は、同じくH
DIのアダクト体を、ブロック剤としてEAAを用いて
ブロックしたブロックイソシアネート(『タケネートX
B−72−M31』武田薬品工業(株)製)からなる。
この有効NCO含有量は11.000重量%(固形分)
である。
【0071】〔実施例1〜6〕上記の酸・水酸基含有ア
クリル樹脂A、エポキシ基・水酸基含有アクリル樹脂
B、及び、IPDIをイソシアネート成分とするブロッ
クイソシアネートAと、TMXDIまたはHDIをイソ
シアネート成分とするブロックイソシアネートBとの併
用系からなるブロックイソシアネートを用い、これらを
主剤(樹脂成分)とする実施例1乃至実施例6のクリヤ
ー塗料を調製した。
【0072】ここで、これらの実施例において、酸/エ
ポキシ硬化型樹脂を形成するアクリル樹脂Aとアクリル
樹脂Bとは、実質的に等当量となるように、即ち、アク
リル樹脂A中のカルボキシル基とアクリル樹脂B中のエ
ポキシ基とのモル比(個数比)がほぼ1:1となるよう
に、配合した。また、これらのアクリル樹脂A,Bに対
して、併用系からなるブロックイソシアネートAとブロ
ックイソシアネートBとは、アクリル樹脂A,B中の合
計の水酸基とそれらのブロックイソシアネートA,B中
の合計の有効イソシアネート基(有効NCO)とのモル
比(個数比)が1:0.66となるように、つまり、水
酸基が過剰となるような割合で、配合した。そして、各
実施例において、そのブロックイソシアネートA(A1
,A2 )とブロックイソシアネートB(B1 ,B2 ,
B3 )との具体的な組合せ及び相互の配合比を種々に変
えて調製した。
【0073】即ち、実施例1は、ブロックイソシアネー
トAとして、IPDIイソシアヌレート体のMEKOブ
ロック体(IPDI・MEKO)からなるブロックイソ
シアネートA1 を、ブロックイソシアネートBとして、
m−TMXDIアダクト体のMEKOブロック体(TM
XDI・MEKO)からなるブロックイソシアネートB
1 をそれぞれ用い、また、これらを、ブロックイソシア
ネートAの割合をブロックイソシアネートBよりも多く
し、有効NCO含有量比において80:20の配合比で
併用したものである。具体的には、実施例1の主剤組成
は、アクリル樹脂A:59.2重量%、アクリル樹脂
B:30.3重量%、ブロックイソシアネートA1 :
8.4重量%、及びブロックイソシアネートB1 :2.
1重量%からなっている。
【0074】実施例2は、実施例1におけるブロックイ
ソシアネートB1 に代えて、HDIイソシアヌレート体
のMEKOブロック体(HDI・MEKO)からなるブ
ロックイソシアネートB2 を用いたものである。即ち、
ブロックイソシアネートAとしてブロックイソシアネー
トA1 を、ブロックイソシアネートBとしてブロックイ
ソシアネートB2 を用い、これらを、実施例1と同様
に、有効NCO含有量比において80:20の配合比で
併用したものである。具体的には、実施例2の主剤組成
は、アクリル樹脂A:59.4重量%、アクリル樹脂
B:30.5重量%、ブロックイソシアネートA1 :
8.4重量%、及びブロックイソシアネートB2 :1.
7重量%からなっている。
【0075】実施例3は、EAAをブロック剤とするブ
ロックイソシアネートA,Bを用いたものである。即
ち、ブロックイソシアネートAとして、IPDIイソシ
アヌレート体のEAAブロック体(IPDI・EAA)
からなるブロックイソシアネートA2 を、ブロックイソ
シアネートBとして、HDIアダクト体のEAAブロッ
ク体(HDI・EAA)からなるブロックイソシアネー
トB3 をそれぞれ用い、実施例1,2と同様に、これら
を有効NCO含有量比において80:20の配合比で併
用したものである。具体的には、実施例3の主剤組成
は、アクリル樹脂A:58.6重量%、アクリル樹脂
B:30.1重量%、ブロックイソシアネートA2 :
8.9重量%、及びブロックイソシアネートB3 :2.
4重量%からなっている。
【0076】実施例4は、実施例1と同じブロックイソ
シアネートA1 ,B1 の併用系からなるが、それらの相
互の配合比を変えたものである。即ち、ブロックイソシ
アネートA1 とブロックイソシアネートB1 との配合比
を、ブロックイソシアネートB1 の割合を比較的多く
し、有効NCO含有量比において40:60の配合比と
したものである。具体的には、実施例4の主剤組成は、
アクリル樹脂A:59.2重量%、アクリル樹脂B:3
0.3重量%、ブロックイソシアネートA1 :4.2重
量%、及びブロックイソシアネートB1 :6.3重量%
からなっている。
【0077】実施例5は、実施例2と同じブロックイソ
シアネートA1 ,B2 を、それらの相互の配合比を変え
て併用したものである。即ち、ブロックイソシアネート
A1とブロックイソシアネートB2 との配合比を、ブロ
ックイソシアネートB2 の割合を比較的多くし、有効N
CO含有量比において60:40としたものである。具
体的には、実施例5の主剤組成は、アクリル樹脂A:5
9.6重量%、アクリル樹脂B:30.6重量%、ブロ
ックイソシアネートA1 :6.3重量%、及びブロック
イソシアネートB2 :3.5重量%からなっている。
【0078】実施例6は、実施例3と同じブロックイソ
シアネートA2 ,B3 を、それらの相互の配合比を変え
て併用したものである。即ち、ブロックイソシアネート
A2とブロックイソシアネートB3 との配合比を、実施
例4と同様にブロックイソシアネートB3 の割合を比較
的多くし、有効NCO含有量比において40:60とし
たものである。具体的には、実施例6の主剤組成は、ア
クリル樹脂A:58.4重量%、アクリル樹脂B:3
0.0重量%、ブロックイソシアネートA2 :4.4重
量%、及びブロックイソシアネートB3 :7.2重量%
からなっている。 〔比較例1〜6〕 〈比較例1〉これらの実施例に対して、比較例1の塗料
は、従来のメラミン樹脂硬化型塗料に相当するものであ
り、アクリル樹脂Cとメラミン樹脂とを主剤としたもの
である。具体的には、比較例1の主剤組成は、アクリル
樹脂C:70.0重量%、メラミン樹脂:30.0重量
%からなっている。ここで、メラミン樹脂としては、
『スーパーベッカミンL−117−60』(大日本イン
キ化学工業(株)製)を使用した。
【0079】〈比較例2〉比較例2は、従来のブロック
イソシアネート硬化型塗料に相当するものであり、水酸
基含有アクリル樹脂CとブロックイソシアネートA1 と
からなる。具体的には、比較例2の主剤組成は、アクリ
ル樹脂C:65.3重量%、及びブロックイソシアネー
トA1 :34.7重量%からなっている。即ち、これら
のアクリル樹脂CとブロックイソシアネートA1 とは、
アクリル樹脂C中の水酸基とブロックイソシアネートA
1 中の有効NCOとがほぼ等モル(同数)となるように
配合されている。
【0080】〈比較例3〉また、比較例3は、酸・水酸
基含有アクリル樹脂Aとエポキシ基・水酸基含有アクリ
ル樹脂Bとを主剤とするものであり、従来の一般の酸/
エポキシ硬化型塗料に相当するものである。具体的に
は、比較例3の主剤組成は、酸・水酸基含有アクリル樹
脂A:66.0重量%、アクリル樹脂B:34.0重量
%からなる。なお、この配合割合は、アクリル樹脂A中
のカルボキシル基とアクリル樹脂B中のエポキシ基との
モル比(個数比)が1:1となる割合である。
【0081】〈比較例4〜6〉比較例4乃至比較例6
は、上記の実施例と同様に、酸・水酸基含有アクリル樹
脂A及びエポキシ基・水酸基含有アクリル樹脂Bと、架
橋樹脂としてのブロックイソシアネートとを主剤とした
ものであるが、そのブロックイソシアネートとして、単
一種のブロックイソシアネートを用いたものである。
【0082】なお、これらの比較例において、アクリル
樹脂Aとアクリル樹脂Bとは、実施例と同じく、アクリ
ル樹脂A中のカルボキシル基とアクリル樹脂B中のエポ
キシ基とがモル比(個数比)においてほぼ1:1となる
ように配合されている。また、ブロックイソシアネート
は、これらの各比較例においてその具体的種類が変えら
れているが、その配合割合は、アクリル樹脂A,B中の
水酸基とブロックイソシアネート中の有効NCOとのモ
ル比(個数比)が1:0.66となるような割合であ
る。
【0083】即ち、比較例4はブロックイソシアネート
A1 (IPDI・MEKO)のみを用いたものである。
具体的には、比較例4の主剤組成は、アクリル樹脂A:
59.2重量%、アクリル樹脂B:30.3%、及びブ
ロックイソシアネートA1 :10.5重量%からなって
いる。
【0084】比較例5はブロックイソシアネートB1
(TMXDI・MEKO)のみを用いたものである。具
体的には、比較例5の主剤組成は、アクリル樹脂A:5
9.2重量%、アクリル樹脂B:30.3重量%、及び
ブロックイソシアネートB1 :10.5重量%からなっ
ている。
【0085】比較例6はブロックイソシアネートB2
(HDI・MEKO)のみを用いたものである。具体的
には、比較例6の主剤組成は、アクリル樹脂A:60.
3重量%、アクリル樹脂B:30.9%、及びブロック
イソシアネートB2 :8.8重量%からなっている。
【0086】なお、上記の主剤成分の他に、これらの実
施例及び比較例のクリヤー塗料には、ベンゾトリアゾー
ル系の紫外線吸収剤(『チヌビン900』チバガイギー
社製)、及びヒンダードアミン系の酸化防止剤(『チヌ
ビン440』チバガイギー社製)を、それぞれ1PHR
ずつ添加した。また、表面調整剤として、シリコン系の
レベリング剤(『BYK−300』BYK社製)を0.
5PHR添加した。そして、混合溶剤{酢酸エチル/ト
ルエン/ソルベッソ100(40/40/20)}を添
加して、フォードカップ(FC#4)で30秒(室温2
0℃)の粘度に調整した。
【0087】〔塗装板の作成〕上記のように主剤組成を
変えて調製した実施例1乃至実施例6及び比較例1乃至
比較例6のクリヤー塗料を上塗り塗料として用い、自動
車車体の実際の塗装の場合と同様の条件により試験用塗
装板を作成した。
【0088】まず、リン酸亜鉛化成処理を施した厚さ
0.8mmのダル鋼板にエポキシ系カチオン電着塗装を施
し、これにポリエステル系中塗り塗料を塗装し、これを
乾燥焼付した後、水研、脱脂して上塗り塗装の準備を行
った。なお、この電着塗装塗膜の厚さは約20μm、中
塗り塗膜の厚さは約35μmである。
【0089】そして、この準備した試験板に、メタリッ
クベース塗料を乾燥塗膜の厚さが15μmとなるように
塗布した後、ウェットオンウェットで、実施例及び比較
例の各クリヤー塗料を乾燥塗膜の厚さが35μmとなる
ようにそれぞれ塗布し、次いで、セッティング後、14
0℃×20分の加熱条件で塗膜の焼付乾燥を行った。な
お、実施例3及び実施例6のクリヤー塗料については、
120℃×20分の加熱条件で焼付乾燥を行った。
【0090】なお、このメタリックベース塗料はメラミ
ン樹脂硬化型塗料であり、次の配合からなるものであ
る。アクリル樹脂(『アクリディック47−712』大
日本インキ化学工業(株)製)27.3重量部、メラミ
ン樹脂(『スーパーベッカミンL−117−60』大日
本インキ化学工業(株)製)5.7重量部、アルミフレ
ーク顔料(『アルペースト7160NS)』東洋アルミ
(株)製)4.5重量部、シンナー{酢酸エチル/トル
エン/ソルベッソ100(40/40/20)}62.
5重量部。
【0091】〔評価試験〕次に、このように形成した実
施例及び比較例の各クリヤー塗料の塗膜について、その
光沢、硬度、耐溶剤性、耐水性、耐酸性、耐候性、耐衝
撃性、及び鮮映性をそれぞれ試験し、その評価を行っ
た。また別途に、実施例及び比較例の各クリヤー塗料に
ついて、耐焼付黄変性と貯蔵安定性とに関する評価試験
を行った。
【0092】なお、それぞれの試験方法と評価の基準は
以下の通りである。
【0093】〈光沢〉60°/60°で鏡面反射率を測
定した。
【0094】〈硬度〉JIS K5400 8.4.2
に準拠して、鉛筆硬度を測定した。
【0095】〈耐溶剤性〉キシレン・ラビングテストを
行い、キシレンをしみ込ませたガーゼで塗膜の上を10
回ラビングし、塗膜表面を観察して次の基準で評価し
た。 ○:異常なし。 □:僅かに傷がつく。 △:傷が目立ち、また僅かに変色する。 ×:塗膜が膨潤し、また白化する。
【0096】〈耐水性〉40℃の温水中に塗装板を24
0時間浸漬し、塗膜表面を観察して次の基準で評価し
た。 ○:異常なし。 □:マイクロブリスタが発生する。 △:ブリスタが発生する。 ×:白化、或いは縮み、艶退け、その他の外観不良が生
じる。
【0097】〈耐酸性〉塗膜上に10%硫酸水溶液0.
5mlをスポット状に滴下し、50℃で30分間放置し
た後、水洗し、塗膜表面を観察して次の基準で評価し
た。 ○:異常なし。 □:変色等はないが、スポット部分に僅かな凹みが生じ
る。 △:変色し、スポット部分に凹みが生じる。 ×:著しい変色、凹み、エッチングが生じる。
【0098】〈耐候性〉促進耐候性試験機(SWOM)
を使用して、2000時間の促進耐候性試験を行い、試
験後の塗膜表面を観察して次の基準で評価した。 ○:異常なし。 △:光沢が低下する。 ×:クラック、或いは著しい変色や光沢の低下が生じ
る。
【0099】〈耐衝撃性〉デュポン式衝撃試験を行い
(試験片である塗装板に、高さhの位置から重さ500
gの重錘を落下して衝突させ、試験片を衝撃変形させ
る)、塗膜表面に亀裂が生じる臨界高さを測定し、次の
基準で評価した。 ○:臨界高さが20cm以上。 ×:臨界高さが20cm未満。
【0100】〈鮮映性〉PGD計(鮮映度光沢度計)を
用いて、塗膜の鮮映度を測定し、次の基準で評価した。 ○:鮮映度が1.0以上。 △:鮮映度が0.3以上1.0未満。 ×:鮮映度が0.3以下。
【0101】〈耐焼付黄変性〉実施例及び比較例の各ク
リヤー塗料について、120℃×20分(アンダーベイ
ク)で焼付乾燥した場合の塗膜と、160℃×20分
(オーバーベイク)で焼付乾燥した場合の塗膜との黄色
の色差Δbを、色差計「SM−4,CH型」を用いて測
定し、その測定されたΔbの値から、次の基準で耐焼付
黄変性の評価を行った。 ○:Δbが0.2未満。 □:Δbが0.2以上0.5未満。 △:Δbが0.5以上1.0未満。 ×:Δbが1.0以上。
【0102】なお、色差Δbが0.2未満である場合、
変色(黄変)は外観上実質的に分からない。また、色差
Δbが0.2以上0.5未満の場合には、変色は詳細に
観察すれば分かるが、外観上ほとんど分からない。更
に、色差Δbが0.5以上1.0未満では、変色は外観
上目立つ程ではないが、容易に気付かれるものとなり、
また色差Δbが1.0を越えると、変色は明らかに目立
つものとなる。
【0103】〈貯蔵安定性〉実施例及び比較例の各クリ
ヤー塗料について、初期の粘度を室温20℃で30秒に
調整した後、30℃で240時間放置した場合の粘度変
化(粘度の増加)を測定し、次の基準で評価した。な
お、粘度の測定はフォードカップ(FC#4)による。 ○:+10秒未満。 △:+10秒以上15秒未満。 ×:+15秒以上。 これらの評価試験の結果を、図1及び図2に合わせて示
す。
【0104】〔試験結果〕図2のように、まず比較例に
ついてみると、比較例1の塗料は水酸基含有アクリル樹
脂Cとメラミン樹脂とを主剤(樹脂成分)とするメラミ
ン樹脂硬化型塗料であるが、これにより形成された塗膜
は、光沢が僅かに低いものの、硬度、耐溶剤性、耐水
性、耐候性、耐衝撃性、及び鮮映性のいずれも良好であ
り、また、耐焼付黄変性(焼付時の黄変が少ないこと)
及び貯蔵安定性おいても良好である。しかしながら、こ
の塗料による塗膜は、骨格樹脂としてのアクリル樹脂と
架橋樹脂(硬化剤)としてのメラミン樹脂との結合が酸
に比較的弱いエーテル結合であるため、耐酸性、即ち、
耐酸性雨性が悪い。
【0105】これに対して、架橋樹脂として、メラミン
樹脂に代えてブロックイソシアネートを使用した比較例
2の塗料では、耐酸性、即ち、耐酸性雨性に優れた塗膜
が得られている。しかし、このブロックイソシアネート
硬化型塗料は架橋密度を高くすることが難しく、また、
低温硬化性にも劣る傾向にある。そのため、140℃×
20分の焼付乾燥では、架橋密度が比較的低いこととも
相俟って、耐溶剤性と耐水性とが不十分な傾向にある。
他方また、優れた耐酸性は、酸・水酸基含有アクリル樹
脂とエポキシ基・水酸基含有アクリル樹脂とを主剤とす
る酸/エポキシ硬化型の比較例4の塗料においても得ら
れている。しかし、この比較例3の酸/エポキシ硬化型
塗料は、カルボキシル基とエポキシ基との反応によって
新たに水酸基が生じるため、耐溶剤性と耐水性とが僅か
に低下する傾向が見られる。また、この塗料は広い温度
範囲で硬化が進むため、メラミン樹脂硬化型塗料をベー
スコートとする本例の場合、そのベースコートとの硬化
のバランスが悪く、鮮映性が悪化している。更に、この
比較例3の塗料においては、カルボキシル基とエポキシ
基との反応が常温においても進行するため、貯蔵安定性
も悪い。
【0106】これらの比較例2及び比較例3の塗料に対
し、これらを組合せた形態の塗料である比較例4乃至比
較例6の塗料、即ち、酸/エポキシ/ブロックイソシア
ネート硬化型塗料では、アクリル樹脂の分子間の架橋が
カルボキシル基とエポキシ基との結合に加えて、ブロッ
クイソシアネートのイソシアネート成分の結合によって
なされるので、高い架橋密度を得ることができ、また、
硬化性に関しても、酸/エポキシ硬化型塗料とブロック
イソシアネート硬化型塗料のそれぞれ単独の場合の短所
が他方によって補われ改善される。即ち、耐溶剤性と耐
水性、及び鮮映性と貯蔵安定性において良好な結果が得
られている。
【0107】ただ、ブロックイソシアネートとして単一
種のブロックイソシアネートを使用したこれらの比較例
4乃至比較例6の塗料においては、そのブロックイソシ
アネートのイソシアネート成分の種類によって、塗膜性
能に差が生じている。即ち、イソホロンジイソシアネー
ト(IPDI)をイソシアネート成分とするブロックイ
ソシアネートA1 を使用した比較例4は、特に耐酸性に
は優れるが、耐候性と耐衝撃性に劣る傾向が見られる。
これは、架橋樹脂としてのIPDIがガラス転移温度T
gの比較的高い硬化樹脂を形成するためであると考えら
れる。その一方、テトラメチルキシリレンジイソシアネ
ート(TMXDI)またはヘキサメチレンジイソシアネ
ート(HDI)をイソシアネート成分とするブロックイ
ソシアネートB1 ,B2 を使用した比較例5及び比較例
6では、これらのイソシアネート成分が比較的低いTg
の硬化樹脂を形成するためと考えられるが、いずれも逆
に、耐候性、耐衝撃性には優れるが、耐酸性には劣る傾
向が見られる。
【0108】これらの比較例4乃至比較例6に対して、
図1のように、ブロックイソシアネートとしてIPDI
をイソシアネート成分とするブロックイソシアネートA
と、TMXDIまたはHDIをイソシアネート成分とす
るブロックイソシアネートBとを併用した実施例1乃至
実施例6の塗料によれば、いずれにおいても、耐酸性に
優れるだけでなく、耐候性と耐衝撃性にも優れた塗膜が
得られている。即ち、それらのブロックイソシアネート
A,Bをそれぞれ単独で使用した場合の塗膜性能上の短
所が他方によって補われ、改善されると共に、それぞれ
の塗膜性能上の長所が、他方によって低下されることな
く、そのまま維持されている。そして、これらの実施例
1乃至実施例6の塗料は、光沢、硬度等の塗膜性能の他
に耐焼付黄変性も良好であり、また、貯蔵安定性におい
ても良好である。
【0109】なお、これらの実施例のうちの実施例3と
実施例6は、活性メチレン化合物であるアセト酢酸エチ
ル(EAA)をブロック剤としたブロックイソシアネー
トA,Bを用いたものであるが、これらによれば、焼付
乾燥条件が比較的低温(120℃)であるにもかかわら
ず、硬度、耐溶剤性、耐水性等のいずれにおいても良好
な結果が得られている。つまり、低温硬化性に優れてい
ることを示している。しかも、このようなブロック剤の
使用の効果は焼付時の黄変性にも見られ、いずれの実施
例においても優れた耐焼付黄変性を示している。
【0110】このように、この試験結果から、酸・水酸
基含有アクリル樹脂と、エポキシ基・水酸基含有アクリ
ル樹脂と、架橋樹脂としてのブロックイソシアネートと
から主剤を形成すると共に、そのブロックイソシアネー
トとして、IPDIをイソシアネート成分とするブロッ
クイソシアネートAと、TMXDIまたはHDIのうち
1種以上をイソシアネート成分とするブロックイソシア
ネートBとを併用して用いることによって、耐酸性(耐
酸性雨性)に優れるだけでなく、耐溶剤性、耐水性、耐
候性、耐衝撃性等にも優れ、また光沢、鮮映性、耐焼付
黄変性等の塗装仕上り性も良好な塗膜を形成できるこ
と、即ち、自動車車体の上塗り塗膜に求められる各種の
塗膜性能の全てをいずれも良好に満たすことができるこ
と、更には良好な貯蔵安定性も得られること、が分か
る。
【0111】ところで、本発明の熱硬化性塗料組成物に
ついては、特に、自動車車体の上塗りクリヤー塗料とし
て具体化した場合について説明したが、本発明を実施す
る場合には、その熱硬化性塗料組成物はこのような使用
・用途に限定されるものではなく、例えば、ソリッドカ
ラー塗料等の着色塗料として具体化することができ、ま
た車両以外の各種物品の塗装に用いることもできる。ま
た、本発明の熱硬化性塗料組成物は風雨に晒される自動
車や屋外建造物の上塗り塗料として特に好適なものであ
るが、中塗り塗料または下塗り塗料としても適用するこ
とができ、更には、必要に応じて、屋内物品用の塗料と
しても適用することができる。
【0112】
【発明の効果】以上のように、本発明にかかる熱硬化性
塗料組成物は、カルボキシル基と水酸基とを分子中に含
有する酸・水酸基含有アクリル樹脂と、エポキシ基と水
酸基とを分子中に含有するエポキシ基・水酸基含有アク
リル樹脂と、架橋樹脂としてのブロックイソシアネート
とを主剤として含み、そのブロックイソシアネートが、
イソホロンジイソシアネートIPDIをイソシアネート
成分とするブロックイソシアネート(A)と、テトラメ
チルキシリレンジイソシアネートTMXDI及びヘキサ
メチレンジイソシアネートHDIのうちの1種以上をイ
ソシアネート成分とするブロックイソシアネート(B)
との併用系からなるものである。
【0113】したがって、この熱硬化性塗料組成物によ
れば、酸/エポキシ硬化型樹脂に架橋樹脂としてのブロ
ックイソシアネートを配合して、架橋密度が高く、しか
も硬化性が改善された酸/エポキシ/ブロックイソシア
ネート硬化型樹脂を形成すると共に、そのブロックイソ
シアネートとして、優れた耐酸性(耐酸性雨性)を与え
ることができるブロックイソシアネート(A)と、優れ
た耐候性及び耐衝撃性とを与えることができるブロック
イソシアネート(B)とを併用しているので、貯蔵安定
性が良好であるだけでなく、十分な光沢と硬度とを有
し、また、耐溶剤性及び耐水性に優れ、更に、鮮映性、
耐焼付黄変性等の塗装仕上り性も良好であり、しかも、
優れた耐酸性を優れた耐候性及び耐衝撃性と共に有する
塗膜を形成することができる。即ち、この熱硬化性塗料
組成物によれば、光沢、硬度、耐溶剤性、耐水性、耐酸
性、耐候性、耐衝撃性、鮮映性、耐焼付黄変性等、自動
車車体等の上塗り塗膜に求められる各種の塗膜性能の全
てを、いずれも良好に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明の実施例1乃至実施例6の熱硬
化性塗料組成物の主剤(樹脂成分)の配合組成(重量
%)と、それらの評価試験の結果とを示す表図である。
【図2】 図2は比較例1乃至比較例6の熱硬化性塗料
組成物の主剤の配合組成(重量%)と、それらの評価試
験の結果とを示す表図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 木村 嘉宏 愛知県西加茂郡藤岡町大字飯野字大川ケ原 1141番地1 アイシン化工株式会社内 (72)発明者 永井 実 愛知県西加茂郡藤岡町大字飯野字大川ケ原 1141番地1 アイシン化工株式会社内 (72)発明者 栗本 忠直 愛知県西加茂郡藤岡町大字飯野字大川ケ原 1141番地1 アイシン化工株式会社内 (72)発明者 夏目 佳子 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 成田 義則 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 矢沢 由尚 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 村松 正隆 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 カルボキシル基と水酸基とを分子中に含
    有する酸・水酸基含有アクリル樹脂と、 エポキシ基と水酸基とを分子中に含有するエポキシ基・
    水酸基含有アクリル樹脂と、 架橋樹脂としてのブロックイソシアネートとを主剤とし
    て含み、 前記ブロックイソシアネートは、イソホロンジイソシア
    ネートをイソシアネート成分とするブロックイソシアネ
    ート(A)と、テトラメチルキシリレンジイソシアネー
    ト及びヘキサメチレンジイソシアネートのうちの1種以
    上をイソシアネート成分とするブロックイソシアネート
    (B)との併用系からなることを特徴とする熱硬化性塗
    料組成物。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR101315318B1 (ko) * 2011-06-22 2013-10-08 케이에스케미칼 주식회사 자동차용 도료조성물
JP2014118430A (ja) * 2012-12-13 2014-06-30 Sumika Bayer Urethane Kk 熱硬化性塗料組成物およびその塗膜

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