JPH09143426A - 熱硬化性塗料組成物 - Google Patents

熱硬化性塗料組成物

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JPH09143426A
JPH09143426A JP7306322A JP30632295A JPH09143426A JP H09143426 A JPH09143426 A JP H09143426A JP 7306322 A JP7306322 A JP 7306322A JP 30632295 A JP30632295 A JP 30632295A JP H09143426 A JPH09143426 A JP H09143426A
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JP
Japan
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acrylic resin
coating composition
resin
acid
hydroxyl group
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Application number
JP7306322A
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English (en)
Inventor
Satoshi Owada
聡 大和田
Yoshihiro Kimura
嘉宏 木村
Junichi Matsushima
淳一 松嶋
Takuya Muranaka
拓也 村中
Takahiro Tsubouchi
隆浩 坪内
Koji Heta
浩司 部田
Masataka Muramatsu
正隆 村松
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Toyota Motor Corp
Aisin Chemical Co Ltd
Original Assignee
Toyota Motor Corp
Aisin Chemical Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐酸性だけでなく、光沢、硬度、耐候性等の
塗膜性能も良好に確保することができ、しかも、貯蔵安
定性に優れた熱硬化性塗料組成物を提供する。 【解決手段】 酸・水酸基含有アクリル樹脂と、エポキ
シ基・水酸基含有アクリル樹脂とを主剤として含む熱硬
化性塗料組成物、または、これに更に架橋樹脂としての
メラミン樹脂等のアミノ樹脂或いはブロックイソシアネ
ートを配合した熱硬化性塗料組成物において、その塗料
組成物の全固形分に対して0.3〜10.0重量%の割
合で有機錫系化合物を添加する。酸/エポキシ硬化型樹
脂を主剤とするため、耐酸性だけでなく、光沢等にも優
れた塗膜を形成することができる。また、ジブチル錫ジ
ラウレート等の有機錫系化合物の添加によって、エポキ
シ基とカルボシル基との常温下での反応が抑制され、貯
蔵安定性が向上する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する分野】本発明は自動車の上塗り塗料等と
して好適な熱硬化性塗料組成物に関するものであり、特
に、貯蔵安定性を向上した酸/エポキシ硬化型の熱硬化
性塗料組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車の塗装仕上げは、主に防錆のため
の電着塗装による下塗り塗装、下塗り塗装塗膜と上塗り
塗装塗膜との密着性の向上、塗り肌品質(平滑性)の向
上等を目的とする中塗り塗装、及び上塗り塗装を順次施
すことによって、一般に行われている。ここで、上塗り
塗装は車体に光沢感、鮮映性、肉持ち感等の美観を与
え、その商品価値を向上することを目的として行われ、
そのために、光沢、鮮映性等の塗装仕上り性において優
れていることが要求される。また、この美観は長期間に
亘って保持される必要があるため、上塗り塗装による塗
膜は耐候性、耐溶剤性、耐水性等に優れていることも要
求される。
【0003】そこで、従来から一般に、このような上塗
り塗装に使用する塗料としては、塗装仕上り性が良好で
あり、また、耐候性等の各種の塗膜性能にも優れた塗料
である熱硬化性のアクリル系樹脂塗料が使用され、具体
的には、アミノ樹脂として代表的なメラミン樹脂を架橋
樹脂とするメラミン樹脂硬化型アクリル樹脂を主剤(塗
膜形成剤,ビヒクル)とする塗料が一般に使用されてい
る。なお、この骨格樹脂であるアクリル樹脂は、アクリ
ル系単量体を主成分とするビニル系単量体の共重合体か
らなり、メラミン樹脂のメチロール基とエーテル結合に
より結合する水酸基をその分子中に含有している。
【0004】ところが、近年では、森林が枯れる等、酸
性雨による被害が社会的にも深刻な問題となっており、
風雨に晒される自動車車体等の上塗り塗装塗膜について
も、この酸性雨による劣化の恐れが問題となってきてい
る。特に、上記のメラミン樹脂硬化型塗料の塗膜は、メ
ラミン樹脂と水酸基含有アクリル樹脂との架橋結合が酸
に比較的弱いエーテル結合であるため、長期間酸性雨に
触れると、凹み、シミ、変色等が発生したり、更には、
塗膜の破壊へと進行する可能性もある。
【0005】そのため最近では、例えば、特開平2−2
42867号公報にみられるように、水酸基含有アクリ
ル樹脂の架橋樹脂(硬化剤)として、そのメラミン樹脂
の少なくとも一部に代えて、ブロックイソシアネートを
用いたブロックイソシアネート硬化型塗料が開発されて
いる。そして、このようなブロックイソシアネート硬化
型塗料によれば、架橋樹脂となるイソシアネート成分と
アクリル樹脂の水酸基とは、酸に強いウレタン結合を形
成するため、耐酸性(耐酸性雨性)に優れた塗膜を形成
することができる。
【0006】また、これとは別に、耐酸性に優れた塗料
組成物としては、例えば、特開平1−139653号公
報にみられるように、カルボキシル基を分子中に含有す
るアクリル樹脂とエポキシ基を分子中に含有するアクリ
ル樹脂との組合せを主剤とする酸/エポキシ硬化型塗料
も知られている。この塗料組成物によれば、カルボキシ
ル基を含有するアクリル樹脂とエポキシ基を含有するア
クリル樹脂とは、カルボキシル基とエポキシ基とが酸に
比較的強いエステル結合を形成することによって架橋す
るため、耐酸性に優れた塗膜を形成することができる。
また、この酸/エポキシ硬化型塗料によれば、光沢、硬
度、及び耐候性等の自動車の上塗り塗膜に要求される各
種の性能も良好に満たすことができる。なお、このよう
な酸/エポキシ硬化型塗料において、それらのアクリル
樹脂は、下塗り塗膜との密着性を高めるために、水酸基
も一般に含有している。
【0007】更に、このような酸/エポキシ硬化型樹脂
については、例えば、特開平5−171103号公報に
みられるように、メラミン樹脂等のアミノ樹脂を架橋樹
脂として更に配合した酸/エポキシ/アミノ樹脂硬化型
塗料が知られている。具体的には、この塗料は、酸・水
酸基含有アクリル樹脂と、エポキシ基・水酸基含有アク
リル樹脂と、アミノ樹脂とを主剤とするものである。そ
して、この塗料によれば、アクリル樹脂間の架橋が、カ
ルボキシル基とエポキシ基との結合に加えて、アミノ樹
脂のメチロール基とアクリル樹脂の水酸基との結合によ
ってもなされるので、高い架橋密度を得ることができ、
塗膜の耐溶剤性及び耐水性をより向上することができ
る。
【0008】また、例えば、特開平2−145666号
公報にみられるように、上記の塗料における架橋樹脂で
あるアミノ樹脂を、ポリイソシアネート成分をブロック
剤でブロックしたブロックイソシアネートに代えた酸/
エポキシ/ブロックイソシアネート硬化型塗料も知られ
ている。そして、この塗料によれば、同様に、イソシア
ネート成分とアクリル樹脂の水酸基との結合によって高
い架橋密度を得ることができ、塗膜の耐溶剤性及び耐水
性をより向上することができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】このように、メラミン
樹脂硬化型アクリル系塗料は、光沢、硬度、耐溶剤性、
耐水性、及び耐候性等の自動車の上塗り塗装塗膜に求め
られる塗膜特性を良好に満たすものであるが、耐酸性
(耐酸性雨性)が悪い。これに対して、酸・水酸基含有
アクリル樹脂とエポキシ基・水酸基含有アクリル樹脂と
を主剤とする塗料、または、これに架橋樹脂としてアミ
ノ樹脂またはブロックイソシアネートを更に配合した塗
料によれば、酸に比較的強いエステル結合が形成される
ため、良好な耐酸性が得られる。しかも、メラミン硬化
型塗料と同様に、光沢等の塗膜性能も良好に確保するこ
とができる。
【0010】しかしながら、この酸/エポキシ硬化型塗
料組成物は、それにおけるカルボキシル基とエポキシ基
との架橋反応が常温においてもある程度進行するため、
貯蔵安定性が悪い。即ち、長い間放置されると、その粘
度が増大する。特に、夏期のように環境温度が高い場合
や、固形分濃度が高い原液の場合には、粘度の増大は著
しい。そして、このように塗料粘度が増大すると、特
に、固形分が多いソリッドカラー塗料の場合には、塗装
仕上り性や塗膜品質の低下を招く恐れがある。
【0011】なお、この粘度の増大は、架橋樹脂として
アミノ樹脂またはブロックイソシアネートが配合された
場合には、ある程度抑制される。この理由については、
酸・水酸基含有アクリル樹脂とエポキシ基・水酸基含有
アクリル樹脂との間に架橋樹脂が介在して、カルボキシ
ル基とエポキシ基との反応が阻害されるためであると考
えられる。しかし、このような塗料の場合でも、その貯
蔵安定性には限界があり、特に、原液の状態で長期間貯
蔵するには十分なものではない。
【0012】このように、酸/エポキシ硬化型塗料は、
耐酸性を有するだけでなく、光沢等の塗膜性能において
も良好なものであるが、貯蔵安定性が悪いという不具合
を有するため、自ずとその使用用途が限定されるもので
あった。
【0013】そこで、本発明は、耐酸性だけでなく、光
沢、硬度、耐候性等の塗膜性能も良好に確保することが
でき、しかも、貯蔵安定性に優れた熱硬化性塗料組成物
の提供を課題とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記の課
題の解決のために、耐酸性等に優れた酸/エポキシ硬化
型塗料を基本とし、その欠点である貯蔵安定性を改善す
べく種々の模索と検討を重ねた。そして、その結果、酸
/エポキシ硬化型塗料組成物に、有機錫系化合物を所定
量添加することによって、各種の塗膜性能の低下を伴う
ことなく、その貯蔵安定性を向上できることを見出し、
また確認した。
【0015】即ち、請求項1にかかる熱硬化性塗料組成
物は、カルボキシル基と水酸基とを分子中に含有する酸
・水酸基含有アクリル樹脂と、エポキシ基と水酸基とを
分子中に含有するエポキシ基・水酸基含有アクリル樹脂
とを主剤として含む熱硬化性塗料組成物において、その
塗料組成物の全固形分に対して0.3〜10.0重量%
の割合で有機錫系化合物を添加してなるものである。
【0016】また、請求項2にかかる熱硬化性塗料組成
物は、カルボキシル基と水酸基とを分子中に含有する酸
・水酸基含有アクリル樹脂と、エポキシ基と水酸基とを
分子中に含有するエポキシ基・水酸基含有アクリル樹脂
と、架橋樹脂としてのアミノ樹脂とを主剤として含む熱
硬化性塗料組成物において、その塗料組成物の全固形分
に対して0.3〜10.0重量%の割合で有機錫系化合
物を添加してなるものである。つまり、この請求項2の
熱硬化性塗料組成物は、請求項1の熱硬化性塗料組成物
に、更にアミノ樹脂を配合したものである。
【0017】請求項3にかかる熱硬化性塗料組成物は、
カルボキシル基と水酸基とを分子中に含有する酸・水酸
基含有アクリル樹脂と、エポキシ基と水酸基とを分子中
に含有するエポキシ基・水酸基含有アクリル樹脂と、架
橋樹脂としてのブロックイソシアネートとを主剤として
含む熱硬化性塗料組成物において、その塗料組成物の全
固形分に対して0.3〜10.0重量%の割合で有機錫
系化合物を添加してなるものである。つまり、この請求
項3の熱硬化性塗料組成物は、請求項1の熱硬化性塗料
組成物に更にブロックイソシアネートを配合したもので
ある。
【0018】このように、これらの請求項にかかる熱硬
化性塗料組成物においては、酸・水酸基含有アクリル樹
脂とエポキシ基・水酸基含有アクリル樹脂とを主剤とし
て含むため、耐酸性に優れるだけでなく、光沢、硬度、
耐候性等においても良好な塗膜を形成することができ
る。そして、有機錫系化合物が特定の割合で添加されて
いるので、後述の試験結果からも分かるように、貯蔵安
定性を有効に改善することができる。この理由について
は、その有機錫系化合物が酸・水酸基含有アクリル樹脂
のカルボキシル基をブロックし、それによって、カルボ
キシル基とエポキシ基との反応が抑制されるためである
と考えられる。
【0019】なお、請求項2及び請求項3の熱硬化性塗
料組成物においては、架橋樹脂としてアミノ樹脂または
ブロックイソシアネートが更に含まれているので、架橋
密度がより高められ、耐溶剤性及び耐水性をより向上す
ることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、この熱硬化性塗料組成物に
ついて、更に詳細に説明する。
【0021】上記のように、請求項1にかかる熱硬化性
塗料組成物は、酸・水酸基含有アクリル樹脂と、エポキ
シ基・水酸基含有アクリル樹脂とを主剤、即ち、塗膜形
成剤(樹脂成分)として含み、更に、有機錫系化合物を
添加して形成される。また、請求項2及び請求項3にか
かる熱硬化性塗料組成物は、上記請求項1にかかる熱硬
化性塗料組成物に、更に、主剤として、上記アクリル樹
脂に対する架橋樹脂であるアミノ樹脂またはブロックイ
ソシアネートを配合して形成される。これらの各成分に
ついて詳細に説明する。
【0022】〔酸・水酸基含有アクリル樹脂〕酸・水酸
基含有アクリル樹脂は、分子中にカルボキシル基と水酸
基とを含有するアクリル樹脂(アクリル系共重合体)で
あり、酸/エポキシ硬化型樹脂の一方の樹脂成分をなす
と共に、アミノ樹脂またはブロックイソシアネートから
なる架橋樹脂を配合する場合には、これらに対する骨格
樹脂をなすものである。そして、この酸・水酸基含有ア
クリル樹脂は、アクリル系ビニル単量体を主成分とし、
また、カルボキシル基を含有するビニル単量体と、水酸
基を含有するビニル単量体とを含む単量体成分を共重合
して得られる。
【0023】ここで、アクリル系単量体としては、メチ
ルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチル
アクリレート、ラウリルアクリレート、2−エチルブチ
ルアクリレート等のアクリル酸の炭素数1〜24のアル
キルエステル類、メチルメタクリレート、n−ブチルメ
タクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチル
ヘキシルメタクリレート、デシルメタクリレート、ステ
アリルメタクリレート等のメタクリル酸の炭素数1〜2
4のアルキルエステル類を挙げることができる。そし
て、これらのアクリル系単量体はその任意の1種を単独
で、または2種以上を適宜組み合わせて使用することが
できる。しかし、これらの中でも、n−ブチルアクリレ
ート、n−ブチルメタクリレート等、アクリル酸または
メタクリル酸の比較的低アルキルエステルが一般に好適
に用いられる。
【0024】また、カルボキシル基を含有する単量体と
しては、アクリル酸またはメタクリル酸が一般的である
が、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸等
のその他のエチレン性不飽和カルボン酸を使用すること
ができる。そして、これらの単量体についても、その任
意の1種を単独で、または適宜に組み合わせて用いるこ
とができる。
【0025】更に、水酸基を含有する単量体としては、
2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエ
チルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレー
ト、ヒドロキシプロピルメタクリレート等のアクリル酸
・メタクリル酸の炭素数2〜24のヒドロキシアルキル
エステル類、N−メチロールアクリルアミド、N−メチ
ロールメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリ
ルアミド、N−ジヒドロキシエチルメタクリルアミド等
のアクリル酸・メタクリル酸の炭素数1〜12のヒドロ
キシアルキルアミド類等が挙げられる。そして、これら
の水酸基含有ビニル単量体は、その任意の1種を単独
で、または2種以上を適宜組み合わせて使用することが
できる。ただし、これらの中でも、2−ヒドロキシエチ
ルメタクリレート等が最も一般的であり、また好適に使
用することができる。
【0026】なお、これらの単量体の他に、スチレン、
ビニルトルエン等の芳香族系ビニル単量体や、アクリル
ニトリル、メタクリルニトリル、アクリルアミド、酢酸
ビニル等のビニル系非官能性単量体も、適宜組み合わせ
て用いることができる。例えば、スチレン、またはビニ
ルトルエンの使用は、樹脂塗膜の耐酸性をより高める点
で好ましいものである。
【0027】そして、これらの単量体成分を共重合して
得られた酸・水酸基含有アクリル樹脂は、その平均分子
量(数平均分子量)において500〜50000程度で
あることが好ましく、また、1500〜15000程度
であることがより好ましい。この平均分子量が余り少な
く一般に500よりも小さいと、十分に硬化した樹脂塗
膜を形成することが困難となり、また逆に、その平均分
子量が余り大きく一般に50000を越えると、溶解性
が低下しまたは塗料の粘度が高くなり、塗料の調製が困
難となる。
【0028】また、この酸・水酸基含有アクリル樹脂の
酸価と水酸基価とは、特に重点的に要求される塗膜性能
等に応じて適宜決めることができるが、一般に、その酸
価は30〜130(mgKOH/g)が好ましい。この酸価が余
り少なく一般に30よりも小さいと、エポキシ基・水酸
基含有アクリル樹脂との架橋密度が不足する傾向とな
り、硬化性等における実用上十分な塗膜性能を得ること
が困難となる。また逆に、この酸価が余り多く一般に1
30を越えると、樹脂粘度が高くなり、エポキシ基・水
酸基含有アクリル樹脂等の他の樹脂成分との相溶性が低
下する傾向となる。そのため、その酸基は、一般に30
〜130が好ましく、また、60〜110程度がより好
ましい。また、水酸基価についても同様であり、これが
余り少ないと、実用上十分に硬化した塗膜を得ることが
困難となり、また逆に、これが余り高いと、他の樹脂成
分との相溶性が低下する傾向となる。そのため、この水
酸基価は、一般に10〜100(mgKOH/g)が好ましく、
より好ましくは20〜70、更に、最も好ましくは20
〜50である。
【0029】〔エポキシ基・水酸基含有アクリル樹脂〕
エポキシ基・水酸基含有アクリル樹脂は、分子中にエポ
キシ基と水酸基とを含有するアクリル樹脂(アクリル系
共重合体)であり、上記の酸・水酸基含有アクリル樹脂
と酸/エポキシ硬化型樹脂を形成すると共に、アミノ樹
脂またはブロックイソシアネートからなる架橋樹脂を配
合する場合には、それと共同してこれらに対する骨格樹
脂を形成する。そして、このエポキシ基・水酸基含有ア
クリル樹脂は、カルボキシル基を含有するビニル単量体
に代えてエポキシ基を含有するビニル単量体を用いる他
は、酸・水酸基含有アクリル樹脂と同様に、アクリル系
ビニル単量体を主成分とする単量体成分を共重合して得
られる。
【0030】ここで、エポキシ基含有ビニル単量体とし
ては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレ
ート、3,4−エポキシシクロヘキシルアクリレート、
3,4−エポキシシクロヘキシルメタクリレート等のア
クリル系単量体の他にも、例えば、アリルグリシジルエ
ーテル等が挙げられる。そして、これらのエポキシ基含
有ビニル単量体は、それぞれ単独で、または適宜組み合
わせて使用することができる。しかし、一般には、グリ
シジル(メタ)アクリレートが最も普通に使用される。
【0031】そして、このエポキシ基含有ビニル単量体
を含む単量体成分を共重合して得られたエポキシ基・水
酸基含有アクリル樹脂は、その平均分子量(数平均分子
量)において、酸・水酸基含有アクリル樹脂の場合と同
様に、一般に500〜50000程度であることが好ま
しく、1500〜15000程度であることがより好ま
しい。ただしここで、これらの酸・水酸基含有アクリル
樹脂とエポキシ基・水酸基含有アクリル樹脂とは、その
一方の分子量を比較的大きくすると共に、他方の分子量
を比較的小さくすることができる。これによって、それ
らのアクリル樹脂の相溶性を高め、それらの相互の架橋
反応を良好に行わせることができる。
【0032】また、このエポキシ基・水酸基含有アクリ
ル樹脂のエポキシ当量と水酸基価とは、酸・水酸基含有
アクリル樹脂との対応等を考慮して適宜決めることがで
きるが、一般に、そのエポキシ当量は200〜1000
程度であることが好ましい。即ち、エポキシ当量が余り
小さいと、カルボキシル基との反応が局部的に過剰とな
り、塗膜の硬化時に硬化ひずみが生じる恐れがあり、ま
た逆に、エポキシ当量が余り大きいと、架橋密度が不足
する傾向となり、実用上十分な塗膜の硬化性を得ること
が困難になる。そのため、エポキシ当量は、一般に20
0〜1000程度であることが好ましく、また、より好
ましいのは250〜500程度である。なお、このエポ
キシ当量は、エポキシ基1グラム当量を含む樹脂の質量
(g)数(エポキシ基1個当たりの樹脂の分子量)で表
される。なお、このアクリル樹脂の水酸基価は、酸・水
酸基含有アクリル樹脂と同じ程度であることが好まし
く、一般に10〜100程度が好ましい。また、より好
ましいのは20〜70であり、更に、最も好ましいのは
20〜50である。
【0033】そして、本発明の熱硬化性塗料組成物にお
いて、これらの酸・水酸基含有アクリル樹脂とエポキシ
基・水酸基含有アクリル樹脂とは、それらのカルボキシ
ル基(酸)とエポキシ基とが等当量となるような割合、
つまり、酸・水酸基含有アクリル樹脂に含まれるカルボ
キシル基とエポキシ基・水酸基含有アクリル樹脂に含ま
れるエポキシ基とのモル比(個数比)がほぼ1:1にな
るような割合、を基本として配合される。即ち、酸・水
酸基含有アクリル樹脂とエポキシ基・水酸基含有アクリ
ル樹脂とは、カルボキシル基とエポキシ基とのモル比
(個数比)が1:2〜2:1となるような割合で、一般
に配合することができる。
【0034】〔有機錫系化系物〕有機錫系化合物は、ポ
リ塩化ビニルの安定化剤として一般に用いられているも
のであるが、ここでは、上記のアクリル樹脂からなる酸
/エポキシ硬化型塗料の貯蔵安定性を高めるための添加
剤として用いられる。
【0035】この有機錫系化合物としては、モノブチル
錫トリアセテート、モノオクチル錫トリアセテート等の
モノオルガノ錫化合物、ジブチル錫の塩、或いはジブチ
ル錫オキシド等のジオルガノ錫化合物、トリフェニル錫
アセテート、トリブチル錫ヘキセート等のトリオルガノ
錫化合物、テトラメチル錫、テトラブチル錫等のテトラ
オルガノ錫、及びヘキサメチルオルガノ錫等のヘキサオ
ルガノ錫化合物、更には、テトラ−n−ブチル−1,3
−ジアセチルオキシジスタノキサン、テトラ−n−プロ
ピル−1,3−ジアセチルオキシジスタノキサン等のス
タノキサン類等を挙げることができる。そして、これら
の有機錫系化合物は、その任意の1種を単独で、または
適宜に組み合わせて用いることができる。しかし、これ
らの中でも、ジオルガノ錫とカルボン酸との塩を好適に
用いることができる。ここで、そのカルボン酸として
は、酢酸、オクタン酸、ラウリン酸等の脂肪族モノカル
ボン酸、或いはマレイン酸、フタル酸等のジカルボン酸
等を挙げることができる。そして、具体的には、ジブチ
ル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル
錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル
錫マレエート、ジブチル錫フタレート等が挙げられる。
【0036】このような有機錫系化合物が酸/エポキシ
硬化型塗料の貯蔵安定性に及ぼす作用については、次の
ように考えられる。
【0037】即ち、このような有機錫系化合物は、有機
溶媒に溶解して、錫原子が正電荷を有する。一方、上記
の酸・水酸基含有アクリル樹脂中に含まれるカルボキシ
ル基は極性を有しており、陰性元素である2個の酸素原
子は、いずれもいくらか負の電荷を帯びている。そのた
め、正電荷を有する錫原子と、負に帯電している酸素原
子との間に静電引力が働き、この静電引力によってカル
ボキシル基がブロックされ、その反応性が阻害される。
したがって、この有機錫系化合物を添加することによっ
て、カルボキシル基とエポキシ基との常温における架橋
反応が抑制され、その結果、酸/エポキシ硬化型塗料の
貯蔵安定性が向上されると考えられる。
【0038】そして、この有機錫系化合物は、その添加
量が多い程、塗料組成物の貯蔵安定性をより向上するこ
とができる。そのため、実用上十分な貯蔵安定性を得る
ために、一般に、塗料組成物の全固形分に対して0.3
重量%以上の割合で添加することが好ましい。しかし、
その添加量が余り多くても、それによる貯蔵安定性の向
上効果は飽和状態となる傾向にある。そのため、この有
機錫系化合物は、経済性も考慮して、10.0重量%を
限度として、それ以下の割合で使用することが好まし
い。即ち、有機錫系化合物の添加量は塗料組成物の全固
形分に対して、一般に0.3〜10.0重量%が好まし
く、1.0〜5.0重量%がより好ましい。
【0039】〔アミノ樹脂〕上記の酸・水酸基含有アク
リル樹脂及びエポキシ基・水酸基含有アクリル樹脂に対
する架橋樹脂(硬化剤)として使用するアミノ樹脂は、
アミンとアルデヒドとを付加または付加縮合することに
よって一般に得ることができる。
【0040】ここで、アミンとしては、例えば、メラミ
ン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステ
ログアナミン、スピログアナミン、及びジシアンジアミ
ド等を挙げることができる。また、アルデヒドとして
は、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセト
アルデヒド、及びベンズアルデヒド等を使用することが
できる。そして、これらの中でも、メラミンとホルムア
ルデヒドとの反応によって得られるメラミン樹脂は最も
代表的なものであり、特に好適に用いることができる。
【0041】なお、このようなアミンとアルデヒドとを
付加または付加縮合させて得られるアミノ樹脂は、生成
したメチロール基を適当なアルコールによって少なくと
も部分的にエーテル化して、一般に使用することができ
る。このエーテル化に用いられるアルコールとしては、
メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルア
ルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコ
ール、iーブチルアルコール、2−エチルブタノール、
2−エチルヘキサノール等を挙げることができる。そし
て、アミノ樹脂としては、これらのアルコールによって
少なくとも部分的にエーテル化したアルキルエーテル化
メラミン樹脂を特に好適に用いることができる。
【0042】また、このようなアミノ樹脂は、その平均
分子量(数平均分子量)において、一般に400〜40
00程度であることが好ましく、また、600〜150
0程度であることがより好ましい。この平均分子量が余
り少なく一般に400よりも小さいと、十分に硬化した
樹脂塗膜を形成することが困難となり、また逆に、その
平均分子量が余り大きく一般に4000を越えると、溶
解性が低下しまた塗料の粘度が高くなり、塗料の調製が
困難となる。
【0043】そして、このようなアミノ樹脂を、架橋樹
脂として、骨格樹脂である上記のアクリル樹脂に配合す
ることによって、アクリル樹脂の分子間の架橋が、カル
ボキシル基とエポキシ基との結合に加えて、アミノ樹脂
とのエーテル結合によってもなされるので、高い架橋密
度を得ることができ、塗膜の耐溶剤性及び耐水性をより
高めることができる。また、カルボキシル基とエポキシ
基との間にアミノ樹脂が介在して、カルボキシル基とエ
ポキシ基との反応が阻害されるため、貯蔵安定性もより
改善される。
【0044】そして、このような作用を十分なものとす
るために、アミノ樹脂は上記のアクリル樹脂及び有機錫
系化合物の全固形分に対し、3重量%以上の割合で配合
することが好ましい。ただし、このアミノ樹脂の配合量
が多すぎると、耐酸性が低下する傾向があり、20重量
%以下の割合で配合することが好ましい。
【0045】〔ブロックイソシアネート〕上記のアクリ
ル樹脂に対する架橋樹脂(硬化剤)としては、上記のア
ミノ樹脂と同様に、ブロックイソシアネートを使用する
ことができる。なお、ブロックイソシアネートは、1分
子中に少なくとも2個のイソシアネート基(NCO)を
有するポリイソシアネート化合物からなるイソシアネー
ト成分をブロック剤でブロックしたものである。
【0046】そのようなポリイソシアネート化合物とし
ては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HD
I)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の
脂肪族ジイソシアネート類、4,4’−ジフェニルメタ
ンジイソシアネート(MDI)、2,4−または2,6
−トリレンジイソシアネート(TDI)、m−またはp
−キシリレンジイソシアネート、m−またはp−フェニ
レンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート等
の芳香族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネ
ート、水添MDI、水添TDI等の環状脂肪族ジイソシ
アネート類等のジイソシアネート化合物、または、これ
らのジイソシアネート化合物のビューレット体、イソシ
アヌレート体、或いはトリメチロールプロパン等の多価
アルコールとのアダクト体(付加体)、更には比較的低
分子のウレタンプレポリマ等を挙げることができる。
【0047】また、これらのポリイソシアネート化合物
は、その遊離のイソシアネート基をブロック剤によって
部分的にまたは完全にブロックしたブロックイソシアネ
ートとして使用される。ここで、ブロック剤としてはメ
チルエチルケトンオキシム(MEKO)、アセトンオキ
シム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキ
シム、ベンゾフェノンオキシム等のオキシム類、メタノ
ール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコ
ール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘ
キサノール等のアルコール類、ε−カプロラクタム、γ
−ブチロラクタム、β−プロピオラクタム等のラクタム
類、フェノール類、アセチルアセトン、アセト酢酸エチ
ル、マロン酸メチル、マロン酸エチル等の活性メチレン
化合物、等が挙げられる。これらの中でも、MEKOは
最も代表的なものであり、一般に好適に用いることがで
きる。
【0048】そして、このようなブロック剤でブロック
したブロックイソシアネートを、上記の酸・水酸基含有
アクリル樹脂及びエポキシ基・水酸基含有アクリル樹脂
に対して、架橋樹脂として配合することによって、アク
リル樹脂の分子間の架橋がカルボキシル基とエポキシ基
との結合に加えて、ブロックイソシアネートのイソシア
ネート成分との結合によってなされるので、高い架橋密
度を得ることができ、塗膜の耐溶剤性及び耐水性をより
高めることができる。また、カルボキシル基とエポキシ
基との間に、ブロクイソシアネートが介在してカルボキ
シル基とエポキシ基との反応が阻害されるため、貯蔵安
定性もより改善される。
【0049】そして、このようなブロックイソシアネー
トは、上記の酸・水酸基含有アクリル樹脂及びエポキシ
基・水酸基含有アクリル樹脂に対して、それらのアクリ
ル樹脂の水酸基と有効イソシアネート基(有効NCO)
とのモル比(個数比)が一般に1:0.2〜1:2.0
となるような割合で、好ましくは1:0.4〜1:1.
2となるような割合で、配合することができる。なお、
有効イソシアネート基とは、塗料の焼付乾燥時にブロッ
ク剤が解離することによって反応可能となるイソシアネ
ート基のことである。
【0050】ところで、架橋樹脂であるこれらのアミノ
樹脂とブロックイソシアネートとは、それぞれ単独で使
用することができるが、これらを併用することもでき
る。また、これらの架橋樹脂の配合量を決めるに際し
て、その塗料組成物が、例えば、メラミン樹脂を架橋樹
脂とするメラミン樹脂硬化型塗料からなるベースコート
の上塗り塗料として用いられる場合、水酸基が過剰とな
るようにそのモル比を定めることによって、その水酸基
をベースコートのメラミン樹脂と反応させ、塗膜間の密
着性(接着性)の向上を図ることができる。
【0051】〔塗料の調製〕これらの酸・水酸基含有ア
クリル樹脂とエポキシ基・水酸基含有アクリル樹脂とを
主剤とし、有機錫系化合物を添加剤として含む熱硬化性
塗料組成物、及び、主剤として更に架橋樹脂であるアミ
ノ樹脂またはブロックイソシアネートを含む熱硬化性塗
料組成物は、そのままクリヤー塗料として、或いは、有
機系顔料または無機系顔料を配合することにより、ソリ
ッドカラー塗料(着色塗料)等として具体化することが
できる。また、これらの塗料には、その具体的用途等に
応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、或いはその他の添
加剤等を適宜配合することができる。
【0052】有機系顔料としては、ピグメントレッド等
のアゾ系、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリ
ーン等のフタロシアニン系、キナクリドン等のキナクリ
ドン系、等の顔料または染料を挙げることができる。ま
た、無機系顔料としては、酸化チタン、酸化クロム、黄
色酸化鉄、赤色酸化鉄、カーボンブラック等の一般の着
色顔料、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリ
ウム、珪酸塩、アルミニウム水和物、硫酸カルシウム等
の体質顔料に加えて、チタンコートマイカ(パールマイ
カ)及びこれを酸化チタン等で着色した着色マイカ等の
マイカ顔料、或いは、アルミニウム粉、ブロンズ粉、錫
粉、金粉、銀粉、銅粉、金属チタン粉、ステンレススチ
ール粉、ニッケル粉、クロム、酸化コバルト、硫酸マン
ガン、硫酸チタニュウム、これらの合金粉、プラスチッ
クで被覆された金属粉、箔状フタロシアニンブルー等の
鱗片状メタリック粉末(金属箔)、更には、防錆顔料等
が挙げられる。そして、これらの顔料は、必要に応じて
それらの1種以上を適宜使用することができる。
【0053】紫外線吸収剤としては、2−(2’−ヒド
ロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール
等のベンゾトリアゾール系化合物、2,4−ジヒドロキ
シベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物、ジフェ
ニルアクリレート等のアクリレート系化合物、p−オク
チル−フェニルサリシレート等のサリシレート系化合
物、2−ヒドロキシ−ナフトフェノン、ニッケル−ビス
オクチルフェニルスルフィド等のその他の化合物が挙げ
られ、これらはその1種または2種以上を組み合わせて
使用することができる。
【0054】この紫外線吸収剤は単独で使用することも
できるが、好ましくは、酸化防止剤と合わせて使用する
ことができる。そして、このような酸化防止剤として
は、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピ
ペリジル)セバケート等のヒンダードアミン系、フェノ
ール系、スルフィド系の化合物を挙げることができる。
【0055】また、シリコーンやその他の有機高分子等
の表面調整剤、シリカ微粉末等のタレ止め剤、或いはポ
リカルボン酸アミド等の増粘剤等も、必要に応じて適宜
用いることができる。更に、必要があれば、カルボキシ
ル基、エポキシ基、及び水酸基を含有しない樹脂を、主
剤成分として酸・水酸基含有アクリル樹脂及びエポキシ
基・水酸基含有アクリル樹脂に加えて使用することもで
きる。
【0056】また、この熱硬化性塗料組成物は、溶剤に
より適当な粘度に調整し、希釈して使用することができ
る。その溶剤としては、この種のアクリル樹脂塗料組成
物に一般に使用されている任意のものを使用することが
できる。例えば、ブタノール、プロパノール等のアルコ
ール系溶剤、エチレングリコールモノブチルエーテル等
のエーテル系溶剤、ソルベット100等の炭化水素系溶
剤、酢酸エチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケト
ン等のケトン系溶剤、キシレン、トルエン等の芳香族系
溶剤、等である。そして、これらの溶剤は、それぞれ単
独で、または2種以上を混合して使用することができ
る。
【0057】そして、このように調製された本発明の熱
硬化性塗料組成物は、これをスプレー塗装等によって塗
布し、次いで加熱して焼付乾燥を行うことによって、主
剤が相互に架橋され、硬化した塗膜として形成される。
なお、この場合、焼付温度が140℃程度の比較的低い
温度であっても、十分に硬化した塗膜を形成することが
できる。
【0058】
【実施例】以下、本発明を実施例及び比較例によって更
に具体的に説明する。
【0059】図1は本発明の実施例及び比較例のソリッ
ドカラー塗料の配合組成と、評価試験の結果とを示す表
図である。
【0060】即ち、本発明の熱硬化性塗料組成物を自動
車の上塗り塗装に使用するソリッドカラー塗料として具
体化し、図1に示す配合組成(固形分重量%)からなる
実施例1乃至実施例6の塗料組成物を調製した。また、
これらの実施例との対比のために、比較例1乃至比較例
3の塗料組成物も合わせて調製した。そして、これらの
実施例及び比較例の塗料組成物(ソリッドカラー塗料)
について、貯蔵安定性、及びその塗膜性能に関する各種
の評価試験を行った。
【0061】なお、ここで使用したアクリル樹脂A,
B、有機錫系化合物、アミノ樹脂、ブロックイソシアネ
ート、及びソリッドカラー塗料用の顔料分散ペースト
は、それぞれ以下の組成または成分からなる。
【0062】〈アクリル樹脂A〉アクリル樹脂Aは、カ
ルボキシル基と水酸基とを分子中に含有する酸・水酸基
含有アクリル樹脂であり、酸/エポキシ硬化型樹脂の一
方の樹脂成分をなすものである。
【0063】このアクリル樹脂Aは、スチレン20重量
部/n−ブチルメタクリレート38重量部/n−ブチル
アクリレート23重量部/2−ヒドロキシエチルメタク
リレート7重量部/アクリル酸12重量部からなる単量
体混合物(全100重量部)から得たものであり、具体
的には、この混合物にアゾイソブチルニトリル(AIB
N)2重量部を添加し、これを、120℃に保持した混
合溶剤n−ブタノール/キシレン(3/7)中に4時間
かけて滴下し反応させた後、1重量部のAIBNを5分
毎に均等に加えながら2時間保持し、更に1時間保持す
ることによって製造した。
【0064】なお、このアクリル樹脂Aの重量平均分子
量は12000であり、また、その酸価は94、水酸基
価は30である。
【0065】〈アクリル樹脂B〉アクリル樹脂Bは、上
記アクリル樹脂Aと酸/エポキシ硬化型樹脂を形成する
もう一方の樹脂成分をなすもので、エポキシ基と水酸基
とを分子中に含有するエポキシ基・水酸基含有アクリル
樹脂である。
【0066】このアクリル樹脂Bは、スチレン10重量
部/n−ブチルメタクリレート18重量部/n−ブチル
アクリレート18重量部/2−ヒドロキシエチルメタク
リレート7重量部/グリシジルメタクリレート47重量
部からなる単量体混合物(全100重量部)から得たも
のであり、上記のアクリル樹脂Aと同様にして製造し
た。
【0067】なお、このアクリル樹脂Bの重量平均分子
量は3000であり、また、そのエポキシ当量は30
0、水酸基価は30である。
【0068】〈有機錫系化合物〉有機錫系化合物として
は、ジ−n−ブチル錫ジラウレート(『SCAT−1』
三共有機合成(株)製)を使用した。
【0069】〈アミノ樹脂〉アミノ樹脂としては、部分
アルキルエーテル型メチロールメラミン樹脂(『スーパ
ーベッカミンL−117−60』大日本インキ化学工業
(株)製)を使用した。
【0070】〈ブロックイソシアネート〉ブロックイソ
シアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート(HD
I)のイソシアヌレート体を、ブロック剤としてメチル
エチルケトンオキシム(MEKO)を用いてブロックし
たブロックイソシアネート(『タケネートXB−72−
M6』武田薬品工業(株)製)からなる。なお、この有
効イソシアネート基の含有量(有効NCO含有量)は1
5.286重量%(固形分)である。
【0071】〈顔料分散ペースト〉顔料分散ペースト
は、上記のエポキシ基・水酸基含有アクリル樹脂Bを含
むペースト状混合物からなるものであり、溶剤(キシレ
ン)66重量部/分散剤(『BYK110』BYK社
製)42重量部/沈降防止剤(『ディスパロン420
0』楠本化成(株)製)22重量部/上記のアクリル樹
脂B(NV=70%)148重量部/酸化チタン(『C
R−95』石原産業(株)製)722重量部からなる混
合物(全1000重量部)を混練して得たものであり、
具体的には、これをサンドミルで30分間分散を行うこ
とによって製造した。
【0072】なお、この顔料分散ペーストの顔料濃度
(PWC)は85%であり、その固形分濃度(NV)は
85%である。
【0073】〔実施例1〜6〕 〈実施例1〜4〉上記の酸・水酸基含有アクリル樹脂
A、エポキシ基・水酸基含有アクリル樹脂B、有機錫系
化合物、及び顔料分散ペーストを用い、酸/エポキシ硬
化型塗料である実施例1乃至実施例4のソリッドカラー
塗料を調製した。なお、これらは請求項1の態様に相当
するものである。
【0074】ここで、これらの実施例において、酸/エ
ポキシ硬化型樹脂を形成するアクリル樹脂Aとアクリル
樹脂Bとは、顔料分散ペースト中のアクリル樹脂Bも含
めて、これらの樹脂A,B中に含まれるカルボキシル基
とエポキシ基とが実質的に等当量となるように、即ち、
アクリル樹脂A中のカルボキシル基とアクリル樹脂B中
のエポキシ基とのモル比(個数比)がほぼ1:1となる
ように配合した。そして、各実施例において、有機錫系
化合物の添加量を種々に変えて調製した。
【0075】即ち、実施例1は、アクリル樹脂A、アク
リル樹脂B、顔料分散ペースト、及び有機錫系化合物を
用い、有機錫系化合物の配合割合を、塗料組成物の全固
形分に対して0.3重量%の割合となるように添加した
ものである。具体的には、実施例1の配合組成(固形
分)は、アクリル樹脂A34.9重量%、アクリル樹脂
B11.4重量%、顔料分散ペースト53.4重量%、
及び有機錫系化合物0.3重量%からなっている。な
お、アクリル樹脂Bは、上記のように顔料分散ペースト
中にも5.5重量%(固形分)含有されているので、塗
料組成物の全固形分中にアクリル樹脂Bが占める割合
は、合計で16.9重量%である。
【0076】実施例2は、実施例1における有機錫系化
合物の配合割合をより多くして、塗料組成物の全固形分
に対して1.0重量%の割合となるように添加したもの
である。具体的には、実施例2の配合組成は、アクリル
樹脂A34.7重量%、アクリル樹脂B11.3重量
%、顔料分散ペースト53.0重量%、及び有機錫系化
合物1.0重量%からなっている。
【0077】実施例3は、有機錫系化合物の配合割合を
更に多くして、塗料組成物の全固形分に対して3.0重
量%の割合となるように添加したものである。具体的に
は、実施例3の配合組成は、アクリル樹脂A33.4重
量%、アクリル樹脂B10.7重量%、顔料分散ペース
ト52.9重量%、及び有機錫系化合物3.0重量%か
らなっている。
【0078】実施例4は、有機錫系化合物の配合割合を
より更に多くして、塗料組成物の全固形分に対して5.
0重量%の割合となるように添加したものである。具体
的には、実施例4の配合組成は、アクリル樹脂A32.
8重量%、アクリル樹脂B10.4重量%、顔料分散ペ
ースト51.8重量%、及び有機錫系化合物5.0重量
%からなっている。
【0079】〈実施例5〉上記の実施例1乃至実施例4
に対し、実施例5は、更に架橋樹脂としてアミノ樹脂を
加えて調製したものであり、酸/エポキシ/アミノ樹脂
硬化型のソリッドカラー塗料である。具体的には、実施
例2の配合組成に、更にアミノ樹脂を加えて調製したも
のである。より具体的には、実施例5の配合組成は、ア
クリル樹脂A29.2重量%、アクリル樹脂B8.5重
量%、アミノ樹脂7.8重量%、顔料分散ペースト5
3.5重量%、及び有機錫系化合物1.0重量%からな
っている。
【0080】なお、この実施例は、特に請求項2の態様
に相当するものである。
【0081】〈実施例6〉上記の実施例5に対し、実施
例6は、架橋樹脂として、アミノ樹脂に代えて、ブロッ
クイソシアネートを配合して調製したものであり、酸/
エポキシ/ブロックイソシアネート硬化型のソリッドカ
ラー塗料である。即ち、上記の酸・水酸基含有アクリル
樹脂A、エポキシ基・水酸基含有アクリル樹脂B、ブロ
ックイソシアネート、顔料分散ペースト、及び有機錫系
化合物からなる。なお、ここで骨格樹脂としてのアクリ
ル樹脂A,Bと架橋樹脂としてのブロックイソシアネー
トとは、アクリル樹脂A,B中の水酸基とブロックイソ
シアネート中の有効NCOとのモル比(個数比)が1:
0.67となる割合で配合されている。具体的には、実
施例6の配合組成は、アクリル樹脂A29.9重量%、
アクリル樹脂B8.6重量%、ブロックイソシアネート
4.4重量%、顔料分散ペースト56.0重量%、及び
有機錫系化合物1.1重量%からなっている。
【0082】なお、この実施例は、特に請求項3の態様
に相当するものである。
【0083】〔比較例1〜3〕これらの実施例に対し
て、比較例1乃至比較例3のソリッドカラー塗料は、上
記の各実施例の塗料において、有機錫系化合物の配合を
省いたものに相当する。なお、これらの比較例におい
て、酸・水酸基含有アクリル樹脂Aとエポキシ基・水酸
基含有アクリル樹脂Bとは、実施例と同様に、アクリル
樹脂A中のカルボキシル基とアクリル樹脂B中のエポキ
シ基とがモル比(個数比)において、ほぼ1:1となる
ように配合されている。
【0084】即ち、比較例1は、実施例1乃至実施例4
における有機錫系化合物の配合を省いたものに相当す
る。具体的には、比較例1の塗料の配合組成(固形分)
は、アクリル樹脂A35.4重量%、アクリル樹脂B1
1.7重量%、及び顔料分散ペースト52.9重量%か
らなっている。
【0085】比較例2は、実施例5における有機錫系化
合物の配合を省いたものに相当する。具体的には、比較
例2の配合組成は、アクリル樹脂A29.6重量%、ア
クリル樹脂B8.5重量%、アミノ樹脂7.8重量%、
及び顔料分散ペースト54.1重量%からなっている。
【0086】比較例3は、実施例6における有機錫系化
合物の配合を省いたものに相当する。具体的には、比較
例3の配合組成は、アクリル樹脂A30.6重量%、ア
クリル樹脂B8.9重量%、ブロックイソシアネート
4.5重量%、及び顔料分散ペースト56.0重量%か
らなる。即ち、アクリル樹脂A,Bとブロックイソシア
ネートとは、アクリル樹脂A,B中の水酸基とブロック
イソシアネート中の有効NCOとのモル比(個数比)が
1:0.67となるように配合されている。
【0087】なお、上記の材料成分の他に、これらの実
施例及び比較例のソリッドカラー塗料には、ベンゾトリ
アゾール系の紫外線吸収剤(『チヌビン900』チバガ
イギー社製)、及びヒンダードアミン系の酸化防止剤
(『チヌビン440』チバガイギー社製)を、それぞれ
1PHRずつ添加した。また、表面調整剤として、シリ
コン系のレベリング剤(『BYK−300』BYK社
製)を0.5PHR添加した。そして、混合溶剤{酢酸
エチル/トルエン/ソルベッソ100(40/40/2
0)}を添加して、フォードカップ(FC#4)で30
秒(室温20℃)の粘度に調整した。
【0088】〔塗装板の作製〕上記のように配合組成を
変えて調製した実施例1乃至実施例6及び比較例1乃至
比較例3のソリッドカラー塗料を上塗り塗料として用
い、自動車車体の実際の塗装の場合と同様の条件によ
り、試験用塗装板を作成した。
【0089】まず、リン酸亜鉛化成処理を施した厚さ
0.8mmのダル鋼板にエポキシ系カチオン電着塗装を施
し、これにポリエステル系中塗り塗料を塗装し、これを
焼付乾燥した後、水研、脱脂して上塗り塗装の準備を行
った。なお、この電着塗装塗膜の厚さは約20μm、中
塗り塗膜の厚さは約35μmである。
【0090】そして、この準備した塗装板に実施例及び
比較例の各ソリッドカラー塗料を乾燥塗膜の厚さが35
μmとなるようにそれぞれ塗布し、次いで、セッティン
グ後、140℃×20分の加熱条件で塗膜の焼付乾燥を
行った。
【0091】〔評価試験〕次に、このように形成した実
施例及び比較例の各ソリッドカラー塗料の塗膜につい
て、自動車の上塗り塗装塗膜に求められる代表的な塗膜
性能である光沢、硬度、耐溶剤性、耐水性、及び耐候性
をそれぞれ試験し、その評価を行った。また、これと合
わせて、各ソリッドカラー塗料自体の貯蔵安定性に関す
る評価試験を行った。なお、それぞれの試験方法と評価
の基準は以下の通りである。
【0092】〈光沢〉60°/60°で鏡面反射率を測
定した。
【0093】〈硬度〉JIS K5400 8.4.2
に準拠して、鉛筆硬度を測定した。
【0094】〈耐溶剤性〉キシレン・ラビングテストを
行い、キシレンをしみ込ませたガーゼで塗膜の上を10
回ラビングし、塗膜表面を観察して以下の基準で評価し
た。 ○:異常なし。 □:僅かに傷がつく。 △:傷が目立ち、また僅かに変色する。 ×:塗膜が膨潤し、白化する。
【0095】〈耐水性〉40℃の温水中に塗装板を24
0時間浸漬し、塗膜表面を観察して次の基準で評価し
た。 ○:異常なし。 □:マイクロブリスタが発生する。 △:ブリスタが発生する。 ×:白化、或いは縮み、艶退け、その他の外観不良が生
じる。
【0096】〈耐候性〉促進耐候性試験機(SWOM)
を使用して、2000時間の促進耐候性試験を行い、試
験後の塗膜表面を観察して次の基準で評価した。 ○:異常なし。 △:光沢が低下する。 ×:クラック、或いは著しい変色や光沢の低下が生じ
る。
【0097】〈貯蔵安定性〉実施例及び比較例の各ソリ
ッドカラー塗料について、初期の粘度を室温20℃で
(A)30秒、(B)50秒にそれぞれ調整した後、
(A)及び(B)の各粘度の塗料について、それぞれ3
0℃で240時間放置した場合の粘度変化(粘度の増
加)を測定し、貯蔵安定性の評価を行った。なお、粘度
の測定はフォードカップ(FC#4)による。また、こ
こで、初期粘度(B)50秒とした場合、塗料はほとん
ど希釈されておらず、原液に近い状態のものである。
【0098】これらの評価試験の結果を、配合組成と合
わせて図1に示す。
【0099】〔試験結果〕図1のように、まず比較例に
ついてみると、比較例1の塗料は酸・水酸基含有アクリ
ル樹脂とエポキシ基・水酸基含有アクリル樹脂とを主剤
(樹脂成分)とする一般の酸/エポキシ硬化型塗料に相
当するものであるが、これにより形成された塗膜は、耐
溶剤性及び耐水性に僅かに劣るものの、光沢、硬度、及
び耐候性のいずれにおいても優れている。しかし、この
塗料は、それにおけるカルボキシル基とエポキシ基との
反応が常温においても進行するため、貯蔵安定性が悪
い。そして、この塗料をほとんど希釈せずに原液に近い
状態(初期粘度50秒)で長時間放置した場合は、粘度
が著しく増加しており(+33.4秒)、また、初期粘
度30秒に希釈した状態でも、放置後の粘度はかなり増
加している(+18.0秒)。
【0100】また、この比較例1の塗料に、更に架橋樹
脂として、アミノ樹脂またはブロックイソシアネートを
それぞれ配合した比較例2及び比較例3の塗料では、そ
れによって形成された塗膜は、光沢、硬度、耐溶剤性、
耐水性、及び耐候性のいずれの性能にも優れていると共
に、初期粘度30秒に希釈した場合では、放置後の粘度
増加も低減され、それぞれ+9.4秒及び+9.8秒に
抑えられている。即ち、架橋樹脂としてアミノ樹脂或い
はブロックイソシアネートを配合することによって、架
橋密度が高くなり、耐溶剤性及び耐水性がより向上する
と共に、粘度の増加も許容範囲に抑制されている。
【0101】しかしながら、比較例2及び比較例3の塗
料においては、ほとんど希釈せずに原液に近い状態(初
期粘度50秒)で放置した場合には、放置後の粘度がか
なり増加し、それぞれ+18.9秒,+19.7秒とな
っている。この粘度増加は、アミノ樹脂またはブロック
イソシアネートが無配合である比較例1における粘度増
加(+33.4秒)と比べて十分に小さいものである
が、貯蔵安定性としては不十分なものである。
【0102】ところが、これらの比較例1乃至比較例3
に対して、有機錫系化合物であるジ−n−ブチル錫ジラ
ウレートを配合した実施例1乃至実施例6の塗料では、
放置後の粘度の増加は、初期粘度30秒に希釈した場合
では、それぞれ+4.8秒,+3.6秒,+2.1秒,
+1.9秒,+1.0秒、及び+1.3秒であり、ま
た、原液に近い状態でも、粘度の増加は少なく、それぞ
れ+9.8秒,+8.3秒,+4.5秒,+4.0秒,
+2.6秒、及び+2.8秒である。即ち、有機錫系化
合物を配合したこれらの実施例の塗料においては、粘度
の増加は、希釈した状態では極めて少なくなると共に、
原液に近い状態でも、かなり少なく抑えられ、粘度は良
好なレベルに保持されている。即ち、これらの実施例の
塗料の貯蔵安定性は、有機錫系化合物が未添加である対
応する比較例の塗料のそれに対して、顕著に改善されて
いる。また、その一方、これらの実施例では、いずれに
おいても、光沢等の各種の塗膜性能は、対応する比較例
と同じ良好なレベルに維持されている。つまり、有機錫
系化合物の添加は、塗膜性能において、少なくとも何等
の悪影響も及ぼしていないことが分かる。
【0103】なお、これらの実施例のうち、有機錫系化
合物をその配合割合を変えて添加した実施例1乃至実施
例4からすれば、その有機錫系化合物の配合割合が多い
程、放置後の粘度増加はより少なくなる傾向が見られ
る。ただし、粘度増加にほとんど差が無い実施例3と実
施例4からすると、有機錫系化合物の配合割合が余り多
くても、粘度増加の低減効果、即ち、カルボキシル基と
エポキシ基との反応を抑制する効果は増加しない傾向も
見られる。そのため、この有機錫系化合物は、実施例1
の配合割合である0.3重量%以上であることが好まし
いが、実施例4の5.0重量%を限度としてそれ以下で
あることが好ましいことが分かる。
【0104】このように、この試験結果から、酸・水酸
基含有アクリル樹脂と、エポキシ基・水酸基含有アクリ
ル樹脂とを含む熱硬化性塗料組成物において、有機錫系
化合物を添加することによって、原液状態でも優れた貯
蔵安定性を有し、しかも光沢、硬度、耐候性等の各種の
塗膜性能も良好な塗料組成物を得ることができることが
分かる。また、これに更に架橋樹脂としてアミノ樹脂ま
たはブロックイソシアネートが配合された場合には、耐
溶剤性及び耐水性にも十分に優れた塗膜を形成すること
ができ、しかも、より優れた貯蔵安定性を得ることがで
きることが分かる。
【0105】ところで、本発明の熱硬化性塗料組成物に
ついては、特に、自動車車体のソリッドカラー塗料とし
て具体化した場合について説明したが、本発明を実施す
る場合には、その熱硬化性塗料組成物はこのような使
用、用途に限定されるものではなく、例えば、クリヤー
塗料等として具体化することができ、また、車両以外の
各種物品の塗装に用いることもできる。また、本発明の
熱硬化性塗料組成物は風雨に晒される自動車や屋外建造
物の上塗り塗料として特に好適なものであるが、中塗り
塗料または下塗り塗料としても適用することができ、更
には、必要に応じて、屋内物品用の塗料としても適用す
ることができる。
【0106】
【発明の効果】以上のように、請求項1にかかる熱硬化
性塗料組成物は、カルボキシル基と水酸基とを分子中に
含有する酸・水酸基含有アクリル樹脂と、エポキシ基と
水酸基とを分子中に含有するエポキシ基・水酸基含有ア
クリル樹脂とを主剤として含む熱硬化性塗料組成物にお
いて、その塗料組成物の全固形分に対して0.3〜1
0.0重量%の割合で有機錫系化合物を添加してなるも
のである。
【0107】したがって、この熱硬化性塗料組成物によ
れば、酸・水酸基含有アクリル樹脂とエポキシ基・水酸
基含有アクリル樹脂とからなる酸/エポキシ硬化型樹脂
を主剤とするため、耐酸性に優れるだけでなく、光沢、
硬度、耐酸性、耐溶剤性、耐水性等の塗膜性能を良好に
確保することができる。また、有機錫系化合物が添加さ
れているため、カルボキシル基とエポキシ基との常温下
での架橋反応が抑制され、優れた貯蔵安定性を得ること
ができる。
【0108】また、請求項2にかかる熱硬化性塗料組成
物は、カルボキシル基と水酸基とを分子中に含有する酸
・水酸基含有アクリル樹脂と、エポキシ基と水酸基とを
分子中に含有するエポキシ基・水酸基含有アクリル樹脂
と、架橋樹脂としてのアミノ樹脂とを主剤として含む熱
硬化性塗料組成物において、その塗料組成物の全固形分
に対して0.3〜10.0重量%の割合で有機錫系化合
物を添加してなるものである。
【0109】したがって、この熱硬化性塗料組成物によ
れば、アクリル樹脂間の架橋が、カルボキシル基とエポ
キシ基との結合に加えて、アミノ樹脂と水酸基との結合
によってもなされるので、架橋密度をより高めることが
でき、塗膜の耐溶剤性及び耐水性をより向上することが
できる。また、有機錫系化合物が添加されているため、
請求項1の場合と同様に貯蔵安定性を向上することがで
きると共に、アミノ樹脂がアクリル樹脂間に介在して、
カルボキシル基とエポキシ基との接触を阻害するため、
より優れた貯蔵安定性を得ることができる。
【0110】更に、請求項3にかかる熱硬化性塗料組成
物は、カルボキシル基と水酸基とを分子中に含有する酸
・水酸基含有アクリル樹脂と、エポキシ基と水酸基とを
分子中に含有するエポキシ基・水酸基含有アクリル樹脂
と、架橋樹脂としてのブロックイソシアネートとを主剤
として含む熱硬化性塗料組成物において、その塗料組成
物の全固形分に対して0.3〜10.0重量%の割合で
有機錫系化合物を添加してなるものである。
【0111】したがって、この熱硬化性塗料組成物によ
れば、アクリル樹脂間の架橋が、カルボキシル基とエポ
キシ基との結合に加えて、ブロックイソシアネートのイ
ソシアネート成分と水酸基との結合によってもなされる
ので、架橋密度をより高めることができ、塗膜の耐溶剤
性及び耐水性をより向上することができる。
【0112】また、有機錫系化合物が添加されているた
め、請求項1の場合と同様に貯蔵安定性を向上すること
ができると共に、ブロックイソシアネートがアクリル樹
脂間に介在して、カルボキシル基とエポキシ基との接触
を阻害するため、より優れた貯蔵安定性を得ることがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明の実施例及び比較例の熱硬化性
塗料組成物(ソリッドカラー塗料)の配合組成(固形分
重量%)と、それらの評価試験の結果とを示す表図であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C09D 175/04 PHR C09D 175/04 PHR (72)発明者 木村 嘉宏 愛知県西加茂郡藤岡町大字飯野字大川ケ原 1141番地1 アイシン化工株式会社内 (72)発明者 松嶋 淳一 愛知県西加茂郡藤岡町大字飯野字大川ケ原 1141番地1 アイシン化工株式会社内 (72)発明者 村中 拓也 愛知県西加茂郡藤岡町大字飯野字大川ケ原 1141番地1 アイシン化工株式会社内 (72)発明者 坪内 隆浩 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 部田 浩司 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 村松 正隆 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 カルボキシル基と水酸基とを分子中に含
    有する酸・水酸基含有アクリル樹脂と、 エポキシ基と水酸基とを分子中に含有するエポキシ基・
    水酸基含有アクリル樹脂とを主剤として含む熱硬化性塗
    料組成物において、 前記塗料組成物の全固形分に対して0.3〜10.0重
    量%の割合で有機錫系化合物を添加してなることを特徴
    とする熱硬化性塗料組成物。
  2. 【請求項2】 カルボキシル基と水酸基とを分子中に含
    有する酸・水酸基含有アクリル樹脂と、 エポキシ基と水酸基とを分子中に含有するエポキシ基・
    水酸基含有アクリル樹脂と、 架橋樹脂としてのアミノ樹脂とを主剤として含む熱硬化
    性塗料組成物において、 前記塗料組成物の全固形分に対して0.3〜10.0重
    量%の割合で有機錫系化合物を添加してなることを特徴
    とする熱硬化性塗料組成物。
  3. 【請求項3】 カルボキシル基と水酸基とを分子中に含
    有する酸・水酸基含有アクリル樹脂と、 エポキシ基と水酸基とを分子中に含有するエポキシ基・
    水酸基含有アクリル樹脂と、 架橋樹脂としてのブロックイソシアネートとを主剤とし
    て含む熱硬化性塗料組成物において、 前記塗料組成物の全固形分に対して0.3〜10.0重
    量%の割合で有機錫系化合物を添加してなることを特徴
    とする熱硬化性塗料組成物。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2020105684A1 (ja) 2018-11-21 2020-05-28 株式会社ダイセル 金属用耐候性ハードコート組成物、硬化物、及び塗装金属基材
US11898057B2 (en) 2018-11-21 2024-02-13 Daicel Corporation Weather-resistant hard coat composition for glass-substitute substrate, cured product, and laminate

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KR20210093305A (ko) 2018-11-21 2021-07-27 주식회사 다이셀 금속용 내후성 하드 코트 조성물, 경화물 및 도장 금속 기재
US11866608B2 (en) 2018-11-21 2024-01-09 Daicel Corporation Weather-resistant hard coat composition for metal, cured product, and coated metal substrate
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