JPH09143101A - 光学活性カルボン酸の製造法 - Google Patents

光学活性カルボン酸の製造法

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JPH09143101A
JPH09143101A JP7305453A JP30545395A JPH09143101A JP H09143101 A JPH09143101 A JP H09143101A JP 7305453 A JP7305453 A JP 7305453A JP 30545395 A JP30545395 A JP 30545395A JP H09143101 A JPH09143101 A JP H09143101A
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 ラセミのカルボン酸から光学分割剤を用い
て、ジアステレオマー塩を分割する方法。 【解決手段】(A)ラセミカルボン酸と光学分割剤を有
機溶媒中で混合し、固液分離により光学活性カルボン酸
と光学分割剤のジアステレオマー塩を結晶として分離す
る工程、(B)固液分離した有機溶媒母液中に残った光
学対掌カルボン酸と光学分割剤を、アルコール共存下
で、クロル化剤と接触させ、光学対掌カルボン酸エステ
ルと光学分割剤塩酸塩結晶を光学分割剤塩酸塩から分割
剤回収工程、(C)母液中に残った光学対掌カルボン酸
エステルラセミカルボン酸として回収するラセミ化、加
水分解工程、(D)結晶として分離された光学分割剤塩
酸塩を遊離の光学分割剤にして回収する分割剤遊離工
程、(E)回収されたラセミカルボン酸と光学分割剤を
光学分割工程(A)へリサイクルする工程、からなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】光学活性カルボン酸類は医薬
中間原料、液晶原料、その他合成原料として有用であ
る。本発明は、ジアステレオマー塩分割を用いて光学活
性カルボン酸を製造する際の不用な光学対掌カルボン酸
類と分割剤から、高収率で分割剤を回収すると共に、不
用な光学対掌カルボン酸類を有用なラセミのカルボン酸
類に変換してリサイクルする方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、光学活性カルボン酸類の製造法に
はジアステレオマー塩分割法、リパーゼ、エステラーゼ
等酵素を用いる方法、不斉合成法などがあるが、ジアス
テレオマー塩分割法は汎用性があり、特殊な装置も必要
としないので、工業的に広く採用されている。たとえば
光学活性テトラヒドロフランカルボン酸類の製造法とし
てラセミ体のテトラヒドロフランカルボン酸類をジアス
テレオマー塩分割する方法が知られている。具体的に
は、テトラヒドロフラン−2−カルボン酸は(1)光学
活性1−フェニルエチルアミンなどを分割剤として光学
分割する方法(特開平3−7272号公報)、(2)光
学活性1−(4−ハロゲノフェニル)エチルアミンを分
割剤として光学分割した後、光学活性テトラヒドロフラ
ン−2−カルボン酸・光学活性1−(4−ハロゲノフェ
ニル)エチルアミンとの塩を水酸化ナトリウムで解塩
し、エーテルで光学活性1−(4−ハロゲノフェニル)
エチルアミンを抽出後、塩酸で酸性にしてから、光学活
性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸をエーテルで抽
出する方法(特開平1−216983)等が、また、テ
トラヒドロフラン−3−カルボン酸は(3)キニンを分
割剤として光学分割する方法(J.Org.Che
m.,27,p921.(1962))等が知られてい
る。
【0003】光学分割後、それぞれのジアステレオマー
塩は解塩されて、光学活性カルボン酸類と分割剤に分離
される。このとき、水及び有機溶媒のいずれにも溶けや
すい性質を持つカルボン酸類のジアステレオマー塩から
収率よく、簡単な操作でカルボン酸類を単離するのは一
般的に難しい。テトラヒドロフランカルボン酸類は水及
び有機溶媒のいずれにも溶けやすい性質を持つ代表的な
カルボン酸であるが、従来、その単離法としては、
(2)のエーテルで抽出する方法や、(4)強酸性カチ
オンイオン交換樹脂を用いる方法(特開平4−9508
3号公報)が提案されている。
【0004】また、光学活性テトラヒドロフランカルボ
ン酸類をラセミ化する方法は濃厚な大過剰の水酸化ナト
リウム水溶液を用いて高温で加熱する方法、例えば、
(5)光学活性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸を
100℃以上に加熱する方法(特開平2−124881
号公報)が知られているに過ぎない。
【0005】実際の工業生産では光学分割、解塩、ラセ
ミ化、リサイクルの各工程を繋いで実施しなければなら
ないが、上記の単位操作の例に沿って行うと下記に示す
ような不便さが生じる。
【0006】例えば、光学分割後、不用な光学対掌カル
ボン酸を単離するには、光学活性カルボン酸類が水及び
有機溶媒のいずれにも溶けやすい性質を持つ場合、
(2)の解塩法は有機アミン塩からアルカリ金属塩に変
え、さらに低沸点で引火しやすいエーテルを使用するの
で操作も多く実用的ではないし、(4)の方法は単離し
た水溶液中光学活性カルボン酸の濃度が2.4%と低い
うえに回収率はそれほど高くない。また、単離した光学
活性カルボン酸を高濃度のラセミ化工程へ移行するには
抽出溶媒を完全に除去したり、膨大な水を濃縮せねばな
らない。また、(5)のラセミ化法は濃厚な過剰の水酸
化ナトリウム水溶液などの強塩基が必要であり、十分な
ラセミ化率を得るには140℃以上の厳しい加熱条件が
必要である。よって、耐蝕性、耐圧性に優れた反応装置
が必要などの制約を受ける上に、回収率も必ずしもよく
ない。次いで、ラセミ化工程からリサイクル分割工程へ
ラセミカルボン酸類を移行するには、ラセミ化後、ラセ
ミカルボン酸ナトリウム水溶液からラセミカルボン酸を
再度水から単離することが必要である。特にカルボン酸
類が水及び有機溶媒いずれにも溶けやすいカルボン酸で
あれば単離は非常に難しくなるので、繁雑な操作が不可
欠であり、工程数はさらに増加することになり兼ねな
い。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ラセミ体のカルボン酸
類から光学分割剤を用いて、それぞれのジアステレオマ
ー塩を作り、それら塩の溶解度差を利用して光学活性カ
ルボン酸を製造するジアステレオマー塩分割法では、所
望の光学活性カルボン酸収率は理論的にはラセミ体の5
0%となり、工業的製造法としては不十分である。そこ
で、不用な光学対掌体をラセミ化して光学分割の原料と
してリサイクルする事が必須であるが、通常、不用な光
学対掌体をラセミ化工程へ回す以前に分割剤とのジアス
テレオマー塩を分離して、不用な光学対掌体を遊離状態
にしなければならない。と同時に分割剤も収率よく回収
することが必要である。従って、光学分割後の母液に残
った光学対掌体と光学分割剤の分離工程とラセミ化工程
との効率のよい連結、すなわち、操作性の簡略化や工程
の省略はカルボン酸の回収率を上げ、経済性の向上に大
きく貢献する。
【0008】したがって、本発明の目的は光学分割後の
母液に残った不用な光学対掌カルボン酸と分割剤の塩か
ら、分離工程とラセミ化工程を円滑に連結することによ
って、高収率で分割剤を回収すると共に、不用な光学対
掌カルボン酸を有用なラセミのカルボン酸に変換してリ
サイクルする光学活性カルボン酸の工業的な製造法を提
供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者らは上
記に示した光学分割後の母液に残った不用な光学対掌カ
ルボン酸と分割剤の塩から、分離工程とラセミ化工程を
円滑に連結して、有用なラセミのカルボン酸に変換して
リサイクルする光学活性カルボン酸類の工業的な製造法
を鋭意検討した結果、この目的は有機溶媒中で光学分割
後、固液分離した有機溶媒母液中に残った光学対掌カル
ボン酸と光学分割剤をアルコール共存下クロル化剤と接
触させることにより、分離と同時に光学対掌カルボン酸
をエステル化し、そのエステルをラセミ化・加水分解し
てラセミカルボン酸を分割工程へリサイクルすることに
よって達成することができた。すなわち、(A)ラセミ
カルボン酸と光学分割剤を有機溶媒中で混合し、固液分
離により光学活性カルボン酸と光学分割剤のジアステレ
オマー塩を結晶として分離する工程、(B)固液分離し
た有機溶媒母液中に残った光学対掌カルボン酸と光学分
割剤を、アルコール共存下で、クロル化剤と接触させる
ことにより、光学対掌カルボン酸エステルと光学分割剤
塩酸塩にした後、固液分離により光学分割剤塩酸塩を結
晶として分離する分割剤回収工程、(C)母液中に残っ
た光学対掌カルボン酸エステルをラセミ化触媒共存下で
ラセミ化した後、加水分解してからラセミカルボン酸と
して回収するラセミ化工程、(D)結晶として分離され
た光学分割剤塩酸塩を遊離の光学分割剤にして回収する
分割剤遊離化工程、(E)回収されたラセミカルボン酸
と光学分割剤を光学分割工程(A)へリサイクルする工
程からなることを特徴とする光学活性カルボン酸の製造
法である。製造フローの概略を図1に示す。
【0010】本発明によれば、光学対掌な光学活性カル
ボン酸と分割剤とのジアステレオマー塩を実質的に水の
存在しないアルコールを含む有機溶媒中で、クロル化剤
と接触させる事により、解塩とエステル化を同時に進行
させて、析出した光学分割剤塩酸塩を固液分離により高
収率で回収するとともに、光学対掌カルボン酸エステル
を瀘液に分離することができるので、連続的に光学対掌
カルボン酸エステルをラセミ化工程へ移行することによ
り、分離工程とラセミ化工程を円滑に連携できる。しか
も、本発明のラセミ化は非常に穏和な条件なので、ラセ
ミカルボン酸エステルの回収率も高い。ラセミ化後、加
水分解してラセミカルボン酸を分割工程へリサイクルす
ることが可能となるので、ラセミのカルボン酸から理論
的に100%の光学活性カルボン酸が得られることにな
る。
【0011】以下、本発明の構成を詳細に説明する。
【0012】本発明の(A)分割工程において用いる光
学分割剤は、光学活性アミンであり、光学活性芳香族ア
ミン類あるいは光学活性アミノ酸アミド誘導体から選ば
れた化合物である。そのD体、L体を目的に応じて使い
分けることができる。
【0013】すなわち、本発明で用いる分割剤の具体例
としては、光学活性1−フェニルエチルアミンおよびそ
の誘導体、光学活性1−(1−ナフチル)エチルアミン
およびその誘導体、光学活性アラニンアミド誘導体、光
学活性フェニルアラニンアミド誘導体、光学活性フェニ
ルグリシンアミド誘導体などが挙げられる。
【0014】本発明の分割剤は、水と有機溶媒の両者に
可溶であるカルボン酸類に適用でき、特に光学活性テト
ラヒドロフランカルボン酸類の製造に使用することがで
きる。ここで、テトラヒドロフランカルボン酸類とは、
テトラヒドロフランの2位または3位の炭素に結合した
1つの水素がカルボキシル基で置換されたものなどが好
ましく用いられる。
【0015】本発明(A)分割工程で、原料として用い
られるカルボン酸は、テトラヒドロフランカルボン酸類
が用いられ、たとえば、光学活性テトラヒドロフラン−
2−カルボン酸を得る目的の場合に用いられるテトラヒ
ドロフラン−2−カルボン酸はフラン−2−カルボン酸
の水素添加によって工業的に製造されている。
【0016】ここで、原料として用いられるテトラヒド
ロフランカルボン酸類とは(R)−テトラヒドロフラン
カルボン酸類と(S)−テトラヒドロフランカルボン酸
類とを等量含むラセミ混合物だけでなく、いずれか一方
の光学異性体を等量以上に含む混合物などが使用でき
る。
【0017】テトラヒドロフランカルボン酸類の光学分
割は次の手順と条件で行うのが好ましい。
【0018】光学分割剤は、溶媒中でテトラヒドロフラ
ンカルボン酸類1当量に対して0.4〜1.2当量、好
ましくは0.5〜1.0当量と接触させてジアステレオ
マー塩をつくる。
【0019】ここで、使用する溶媒としては、一方のジ
アステレオマー塩を選択的に析出せしめるものであれば
よい。たとえば、水、メタノール、エタノール、1−プ
ロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−
ブタノールなどのアルコール類、アセトニトリル、テト
ラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキ
ソラン、酢酸エチル、クロロホルム、トルエン、クロロ
ベンゼンなどの有機溶媒またはこれらの混合溶媒を用い
ることができる。本発明では分割後の解塩工程でクロル
化剤を用いるので、分割溶媒中の水は少ない方がよい。
即ち、分割中の水の存在量はテトラヒドロフランカルボ
ン酸類に対して10重量%以下が好ましい。
【0020】テトラヒドロフランカルボン酸類に分割剤
を接触させる方法としては、前記溶媒にテトラヒドロフ
ランカルボン酸類および分割剤を一度に加えてもよい
し、それらを順次加えてもよい。更にあらかじめテトラ
ヒドロフランカルボン酸類と分割剤から作った塩を、前
記溶媒中に溶解させてもよい。それらを加える順序は特
に限定されるものではない。
【0021】かくして得られたジアステレオマー塩を含
む溶液を冷却および/または濃縮すると、難溶性のジア
ステレオマー塩が溶液から析出してくる。
【0022】難溶性のジアステレオマー塩を溶液から析
出させる際の温度は使用する溶媒の凝固点から沸点の範
囲であればよく、目的に応じて適宜選択できるが、通常
は0℃から100℃の範囲が好ましい。
【0023】難溶性のジアステレオマー塩の結晶は、濾
過、遠心分離などの通常の固液分離法によって容易に分
離することができる。難溶性のジアステレオマー塩の結
晶は再結晶操作を行うことにより、目的とした高純度の
ジアステレオマー塩を得ることができる。
【0024】かくして得られたジアステレオマー塩を適
当な方法で解塩することによって、(R)−テトラヒド
ロフランカルボン酸類または(S)−テトラヒドロフラ
ンカルボン酸類と分割剤を分離・採取することができ
る。
【0025】ジアステレオマー塩の解塩方法は通常知ら
れた方法、即ち水性溶媒中、酸またはアルカリで処理す
る方法、イオン交換樹脂を用いる方法などが適用でき
る。たとえば、ジアステレオマー塩を水中で水酸化ナト
リウムなどのアルカリ水溶液を添加して解塩したのちジ
クロロメタンなどの有機溶媒で抽出すると分割剤が有機
層に抽出される。次いで、分割剤を除去した水層に塩
酸、硫酸などの鉱酸を加えてpH1〜2に調整した後、
これをジクロロメタンなどの有機溶媒で抽出することに
より、目的の光学活性テトラヒドロフランカルボン酸類
が有機層に抽出されてくるので、抽出液を濃縮・蒸留す
ることによって、あるいは、ジアステレオマー塩を水性
溶媒、水と有機溶媒の混合溶媒あるいは有機溶媒中、硫
酸、塩酸等の酸を添加して解塩した後、分割剤を硫酸
塩、塩酸塩として固液分離することによって回収し、瀘
液側に目的の光学活性テトラヒドロフランカルボン酸類
を得、次いで濃縮、蒸留することによっても容易に光学
活性テトラヒドロフランカルボン酸類を得る事ができ
る。
【0026】次に本発明(B)の分離工程は、上記
(A)の分割工程で固液分離して有機溶媒母液中に残っ
た光学対掌カルボン酸と光学分割剤を、アルコール共存
下で、クロル化剤と接触させることにより、光学対掌カ
ルボン酸エステルと光学分割剤塩酸塩とした後、固液分
離により光学分割剤塩酸塩を結晶として分離する分割剤
回収工程である。
【0027】クロル剤には塩化チオニルまたはホスゲン
が用いられ、クロル化剤との接触は有機溶媒母液中で行
う。この時、有機溶媒母液中にアルコ−ルが共存してい
なければ、クロル化剤との接触の前にアルコ−ルを添加
すればよい。アルコ−ル共存下の有機溶媒中で、クロル
化剤と接触させると、生成したカルボン酸クロリドはア
ルコール類と反応が進行してカルボン酸のエステルとな
る。そして、分割剤は分割剤塩酸塩となって析出するの
で、固液分離により分割剤を回収することができる。
【0028】共存するアルコ−ルは低級アルコ−ルが好
ましく、具体的にはメタノール、エタノール、1−プロ
パノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブ
タノールである。その量は有機溶媒母液中に存在する光
学対掌カルボン酸に対して1当量以上必要である。アル
コ−ルが1当量以下であれば光学対掌カルボン酸を全量
エステルに変換できない。
【0029】クロル化剤の使用量は有機溶媒母液中に存
在する光学対掌カルボン酸と分割剤のどちらか多いモル
数のものに対して、1.0当量以上が効率的である。
1.0当量以下では光学対掌カルボン酸のエステル化、
あるいは分割剤の塩酸塩化が不十分で、光学対掌カルボ
ン酸エステル、あるいは分割剤塩酸塩の回収率が低くな
る。経済性を考慮すると1.0〜3.0、好ましくは
1.0〜2.0当量である。
【0030】また、有機溶媒中の水は実質的に存在しな
い方がよいが、空気中の水分など操作中に混入する水な
どは許容される。水が存在すると塩化チオニルまたはホ
スゲンが水で分解するためにその使用量が増え、発生す
る塩酸や亜硫酸ガス、二酸化炭素が多くなる。従って、
水の存在量は有機溶媒母液中に存在する光学対掌カルボ
ン酸に対して20重量%以下、好ましくは、10重量%
以下がよい。分割溶媒に水が多く入っているときにはク
ロル化剤と接触させる前に濃縮などの操作で除去してお
けばよい。
【0031】有機溶媒中でクロル化剤と接触させる時の
温度は特に規制するものではないが、通常、0℃以上5
0℃以下の範囲で行うことが好ましい。温度が高いと塩
酸や亜硫酸ガス、二酸化炭素の発生が急激に起こり、ま
た副反応が併発する恐れがある。
【0032】添加の方法は任意である。有機溶媒母液中
にクロル化剤を直接添加してもよいし、クロル化剤を含
む有機溶媒を滴下してもよい。
【0033】このようにして、有機溶媒母液中に残った
光学対掌カルボン酸と分割剤を、アルコ−ル共存下でク
ロル化剤を接触させることによって析出した分割剤の塩
酸塩を、固液分離することによって、高収率でラセミ化
させることなく回収できる。一方、瀘液には光学対掌カ
ルボン酸エステルを高収率で単離回収することができ
る。この瀘液中には分割剤塩酸塩はほとんどないので、
瀘液中の光学対掌カルボン酸エステルはそのまま、ある
いは濃縮して、または蒸留して次のラセミ化工程へ回す
ことができる。
【0034】本発明(C)は前記瀘液中の光学対掌カル
ボン酸エステルをラセミ化する工程である。本発明のラ
セミ化は、格段に穏和な条件で実施可能であり、しかも
ラセミ体の回収率も高い。エステルの種類はクロル化剤
を添加する際に共存するアルコールに依存する。
【0035】ここで、本発明に於ける光学活性カルボン
酸エステル、光学活性カルボン酸とは、一方の光学異性
体が他方の光学異性体より多く含有されるカルボン酸エ
ステル、及びカルボン酸を意味し、実質的には光学純度
が20%ee以上のカルボン酸エステル、及びカルボン酸
を意味する。また、ラセミカルボン酸エステル、及びラ
セミカルボン酸とは光学純度が20%ee未満のカルボン
酸エステル、及びカルボン酸を意味する。
【0036】本発明のラセミ化は不活性な溶媒中におい
ても、また無溶媒でも実施可能である。工業的には光学
対掌カルボン酸エステルの濃度が高い方が経済的である
ので、(B)の解塩工程で得られた光学対掌カルボン酸
エステルの瀘液を、通常濃縮した濃縮液、あるいは濃縮
・蒸留精製して得た光学対掌カルボン酸エステルを原料
とする。
【0037】本工程において用いられるラセミ化触媒は
アルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属水素化物およ
びアルカリ金属アミドからなる群より選ばれる塩基が好
ましい。用いられる塩基の具体例は、ナトリウムメトキ
シド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カ
リウムエトキシド、カリウムイソプロポキシド、カリウ
ム−s−ブトキシド、カリウム−t−ブトキシドなどの
アルカリ金属アルコキシド;水素化ナトリウム、水素化
カリウムなどのアルカリ金属水素化物;リチウムアミ
ド、ナトリウムアミド、カリウムアミドなどのアルカリ
金属アミドなどが挙げられる。ラセミ化触媒の使用量は
ラセミ化の温度あるいは時間、あるいは共存する未反応
の光学対掌カルボン酸類の量に影響されるが、光学対掌
カルボン酸エステルに対して0.01モル%以上が好ま
しい。また、大量に使用してもラセミ化反応にはなんら
影響を与えないが、薬品コストや単離操作等、必ずしも
有利ではない。光学対掌カルボン酸存在下では、カルボ
ン酸の当量以上添加する必要があるが、(B)の分離工
程でクロル化剤の添加によって、酸クロリドを経由して
エステル化するので、実質的に光学対掌カルボン酸の残
存量は5%以下である。従って、ラセミ化触媒の使用量
は、反応性および経済性を考慮すると光学対掌カルボン
酸エステルに対して0.01〜40モル%が好ましく、
さらに好ましくは0.01〜20モル%である。なお、
反応系中に水分が存在すると、ラセミ化触媒が失活する
ことがあるので、水分が混入しないよう十分注意するの
が好ましい。
【0038】ラセミ化反応は0℃以上で進行するが、反
応時間との兼ね合いで0℃から100℃までの範囲が好
ましい。特に好ましい温度は0℃以上から65℃未満で
ある。ラセミ化に要する時間は温度あるいはラセミ化触
媒の種類と量に関係するが、通常0.1〜30時間で終
了する。
【0039】ラセミ化反応後、公知の方法でラセミのカ
ルボン酸エステルを回収することができる。例えば、直
接蒸留するか、塩化水素などハロゲン化水素ガスでラセ
ミ化触媒を中和した後、蒸留することができる。あるい
は、触媒が少ない場合はラセミ化触媒の塩基を水で分解
した後、水と混じらない有機溶媒で抽出し、次いで蒸留
すればよい。また、ラセミのカルボン酸を得る場合に
は、ラセミ化反応後、公知の方法でラセミのカルボン酸
エステルを加水分解すればよい。例えば、ラセミ化反応
液に水を加えて加熱するか、塩酸、硫酸等の鉱酸酸性水
溶液中、あるいは水酸化ナトリウム等のアルカリ性水溶
液中で処理して加水分解する。次いで、酸性溶液にして
から水と混じらない有機溶媒で直接抽出する。必要なら
ば濃縮してから抽出する。また、中和によって生成した
無機塩を必要ならば濾別してから濃縮した濃縮液をその
まま、あるいは直接蒸留することにより、容易にラセミ
のカルボン酸を回収することができる。
【0040】かくして得られたラセミのカルボン酸は本
発明の(E)のリサイクル工程へ、光学分割の出発物質
としてリサイクルすることができる。
【0041】工程(B)で、高収率で回収した光学分割
剤の塩酸塩は工程(D)で遊離化され、遊離の光学分割
剤となる。光学分割剤の塩酸塩は有機溶媒中で塩基との
接触により、遊離の光学分割剤となり、工程(E)から
光学分割工程(A)へリサイクルする。
【0042】本工程で用いられる塩基には水酸化ナトリ
ウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどの水酸化ア
ルカリ金属塩、水酸化バリウム、水酸化カルシウムなど
の水酸化アルカリ土類金属塩、ナトリウムメトキシド、
ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウム
エトキシド、カリウムイソプロポキシド、カリウム−s
−ブトキシド、カリウム−t−ブトキシドなどのアルカ
リ金属アルコキシド、及びアンモニア、メチルアミンな
どの有機アミン類が使用できる。これらの塩基は気体、
粉末などの固体、溶媒に溶かした液体いずれの状態でも
使用できる。
【0043】ここで、使用する有機溶媒には遊離の光学
分割剤が溶けて、塩基の添加によって生成した中和塩化
物を析出させる溶媒であれば何でもよく、具体的にはメ
タノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパ
ノール、1−ブタノール、2−ブタノールなどのアルコ
ール類、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、1,4
−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、酢酸エチル、ク
ロロホルム、トルエン、クロロベンゼン、あるいはこれ
らの混合溶媒が挙げられる。少量の水が存在していても
問題はないが、多すぎると中和塩化物が溶ける傾向にあ
るので、好ましくはない。従って、塩基添加後の溶媒中
の水比率は25%以下が好ましい。また、水と混じらな
い有機溶媒に遊離の光学分割剤を溶かし、中和塩化物を
水で抽出してもよい。この方法は水に溶けない分割剤に
適用できる。
【0044】回収した光学分割剤塩酸塩の遊離化は次の
様にして行う。すなわち、有機溶媒中に光学分割剤の塩
酸塩を懸濁あるいは溶解させて、塩酸塩の中和速度に見
合った速さで塩基を添加すればよい。添加速度が速すぎ
ると一部分割剤の加水分解が起こり易くなる。塩基を添
加すると塩化物が析出してくるので、これを固液分離し
て除く。あるいは水で抽出して分液し、水層を除去す
る。そして、有機溶媒層に遊離の光学分割剤が得られ
る。有機溶媒層は本発明の(E)工程へラセミのカルボ
ン酸とともにリサイクルされる。
【0045】かくしてリサイクル工程(E)で、光学分
割工程(A)の条件に合うように濃度、溶媒組成、光学
分割剤とラセミのカルボン酸のモル比を調整して光学分
割を行う。
【0046】調整方法は任意である。遊離の光学分割剤
が含まれる有機溶媒層にラセミのカルボン酸を添加した
後、所定の濃度まで濃縮、あるいは溶媒を添加して光学
分割を行う。また、遊離の光学分割剤が含まれる有機溶
媒層を所定の濃度に濃縮した後、ラセミのカルボン酸を
添加してもよいし、遊離の光学分割剤が析出する溶媒組
成に変えて固液分離によってケ−クとして分取してか
ら、ラセミのカルボン酸、溶媒を加えて調整してもよ
い。
【0047】これまで説明してきた、(A)の分割工
程、(B)の分離工程、(C)のラセミ化工程、(D)
光学分割剤遊離化工程、(E)リサイクル塩調整工程を
連続して行うことにより、理論的にはラセミのカルボン
酸を全量光学活性カルボン酸に変換できる。また、光学
分割剤はラセミ化せずに高収率で回収できるので、何回
もリサイクルできる。
【0048】
【実施例】以下、実施例により本発明を説明するが、本
発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0049】なお、実施例において得られたジアステレ
オマー塩に含まれるテトラヒドロフラン−2−カルボン
酸の光学純度は、以下の方法で求めた。ジアステレオマ
ー塩の結晶300mgに10%塩酸メタノール溶液5m
lを添加して、30分攪拌したのち、エバポレーターで
過剰の塩酸およびメタノール、水を除去した。シクロヘ
キサン1.5mlを加えて不溶物を濾過した。次いで、
シクロヘキサン層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した
後、上澄液をサンプル溶液としてHPLCに5μlを注
入して分析した。
【0050】また、実施例のテトラヒドロフラン−2−
カルボン酸エステルの光学純度は、エステル70〜80
mgをn−ヘキサン/イソプロパノール=995/5
(v/v)0.8mlで溶解してサンプル溶液とし、ラ
セミ化した場合はラセミ化反応液を一部サンプリングし
て水を加えて塩基を失活させたのち、ジクロロメタンで
エステルを抽出した。このジクロロメタン層を硫酸マグ
ネシウムで乾燥したのち、HPLCに1〜2μlを注入
して分析した。分析に使用したカラムはCHIRALC
EL OD(ダイセル製)、移動相はn−ヘキサン/2
−プロパノール=995/5(v/v)を用いた。カラ
ム温度25℃、流速1.5ml/minで、検出はUV
(220nm)で行った。テトラヒドロフラン−2−カ
ルボン酸メチルエステルのS体は9.5分、R体は1
7.4分、テトラヒドロフラン−2−カルボン酸ブチル
エステルのS体は8.0分、R体は13.4分に検出し
た。
【0051】実施例1 (A)光学分割工程 <第1晶析>(RS)−テトラヒドロフラン−2−カル
ボン酸(以下、(RS)−テトラヒドロフラン−2−カ
ルボン酸を”RS−THFC”と略記する。)92.9
g(0.80モル)とD−アラニンアニリド83.7g
(0.51モル)および1−ブタノール400mlを温
度計、コンデンサー、攪拌機を備えた4つ口1Lフラス
コに仕込み、65℃に加熱した。65℃で1時間撹拌し
たのち4時間かけて15℃に冷却した。15℃で2時間
撹拌したのち析出物を濾過し、50℃で減圧乾燥すると
白色結晶のジアステレオマー塩80.2gを得た。結晶
中のR−THFCの光学純度は91.5%eeであり、
R−THFCに対する収率は71.5%であった。
【0052】<第2晶析>この塩を1−ブタノール80
0mlを用いて82℃で加熱溶解した。4時間かけて1
5℃に冷却した。15℃で2時間撹拌したのち析出物を
濾過し、白色のwet結晶73.3g(dry結晶6
8.9g)を得た。結晶中のR−THFCの光学純度は
99.1%eeであった。
【0053】<単離・精製>上記のR−THFC・D−
アラニンアニリド塩68.0g(0.243モル、光学
純度99.1%ee)、トルエン217.6gおよびテ
トラヒドロフラン54.4gを温度計、コンデンサー、
攪拌機、ガス吹き込み口を備えた4つ口500mlのフ
ラスコに仕込み、このスラリー液に塩化水素9.7g
(0.267モル)を25〜35℃以下で吹き込み、室
温で2時間攪拌した。過剰の塩化水素を微減圧で除去し
た後、析出したD−アラニンアニリド塩酸塩を遠心分離
して、wetケーク95.6gを得た。D−アラニンア
ニリドの回収率は98%であった。瀘液を濃縮し、次い
で、減圧蒸留してR−THFC(沸点107℃/0.8
kPa)24.9gを得た。化学純度99.5%、光学
純度99.1%eeであった。
【0054】(B)解塩工程 第1晶析の母液を温度計、コンデンサー、攪拌機、滴下
ロ−トを備えた4つ口500mlフラスコに仕込み17
2.4gまで減圧下に濃縮し、トルエン220gを加え
た。コンデンサーの上部より、微減圧で生成する塩酸ガ
スと亜硫酸ガスを除去しながら、塩化チオニル67.2
gを20〜30℃で2時間かけて滴下した。そのまま2
時間攪拌後、減圧濃縮して300gのスラリ−液を得
た。さらに20℃で1時間攪拌後、析出したD−アラニ
ンアニリド塩酸塩(dry43.5g)を固液分離し
た。D−アラニンアニリドの回収率は95%であった。
【0055】(C)ラセミ化工程 (B)解塩工程で得られた瀘液を減圧濃縮・蒸留してS
−THFCブチルエステル74〜75℃/0.3kPa
の留分82.7g得た。光学純度は51%eeであっ
た。このエステル76.0gとナトリウムメトキシド
1.0gを温度計、コンデンサー、攪拌機、滴下ロート
を備えた4つ口500mlフラスコに仕込み、窒素気流
下35℃で4時間攪拌してラセミ化を完結させた。2−
プロパノール80gと水20gを加えて攪拌しながら、
48%水酸化ナトリウム水溶液37.6gを60℃を越
えないようにゆっくり滴下した。50〜60℃で1時間
攪拌したのち、98%硫酸23.5gを40℃以下で滴
下した。滴下後1時間攪拌して析出した硫酸ナトリウム
を固液分離した。濾過液を65gまで減圧濃縮し、トル
エン90gを添加してさらに減圧濃縮することによっ
て、RS−THFCのトルエン溶液58.2g(RS−
THFC濃度87%)を得た。
【0056】(D)光学分割剤遊離化工程 (A)光学分割工程(単離・精製)と(B)の解塩工程
で回収したD−アラニンアニリド塩酸塩(dry91.
4g、0.451モル)、および1−ブタノール600
gを温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた4つ口1L
フラスコに仕込み、ナトリウムメトキシド24.4gを
20〜30℃で4分割して添加した。添加後4時間攪拌
して析出した塩化ナトリウム25.7gを固液分離し
た。濾過液のD−アラニンアニリド濃度は10.7%で
あった。
【0057】(E)リサイクル塩調整工程 (D)光学分割剤遊離化工程で得た濾過液と(C)ラセ
ミ化工程で得たRS−THFCのトルエン溶液58.2
g(RS−THFC濃度87%)を温度計、コンデンサ
ー、攪拌機を備えた4つ口1Lフラスコに仕込み、減圧
で1−ブタノールを留去して415gの濃縮液を得た。
攪拌しながら、新しいRS−THFC31.5gを50
〜65℃で滴下し、65℃で1時間撹拌したのち4時間
かけて15℃に冷却した。15℃で2時間撹拌したのち
析出物を濾過し、50℃で減圧乾燥すると白色結晶のジ
アステレオマー塩69.5gを得た。結晶中のR−TH
FCの光学純度は90.1%eeであり、R−THFC
に対する収率は70.0%であった。
【0058】実施例2 (A)光学分割工程 RS−THFC58.1g(0.500モル)、L−フ
ェニルアラニンアミド82.2g(0.500モル)と
メタノ−ル75.5gを温度計、コンデンサー、攪拌機
を備えた4つ口500mlフラスコに仕込み、60〜6
4℃で1時間攪拌した後、4時間かけて10℃まで冷却
した。同温で2時間攪拌したのち、析出した結晶を濾別
して白色結晶55.8gを得た。結晶中のR−THFC
の光学純度は89.1%eeであり、仕込R−THFC
に対する収率は79.6%であった。
【0059】(B)解塩工程 (A)工程で光学分割した母液を温度計、コンデンサ
ー、攪拌機、滴下ロートを備えた4つ口500mlフラ
スコに仕込み、減圧濃縮してメタノール37gを留出さ
せた。トルエン200gを加えて、コンデンサーの上部
より、微減圧で生成する塩酸ガスと亜硫酸ガスを除去し
ながら、塩化チオニル37.9gを25〜35℃で1時
間かけて滴下した。そのまま2時間攪拌後、減圧濃縮し
て216gのスラリ−液を得た。さらにトルエン200
gを添加して20℃で2時間攪拌後、析出したL−フェ
ニルアラニンアミド塩酸塩(dry58.0g)を固液
分離した。L−フェニルアラニンアミドの回収率は94
%であった。
【0060】(C)ラセミ化工程 (B)解塩工程で得られた瀘液を減圧濃縮・蒸留してS
−THFCメチルエステル61〜63℃/1.3kPa
の留分34.0g得た。光学純度は58%eeであっ
た。このエステル34.0gとナトリウムメトキシド
0.5gを温度計、コンデンサー、攪拌機、滴下ロート
を備えた4つ口500mlフラスコに仕込み、窒素気流
下30℃で4時間攪拌してラセミ化を完結させた。2−
プロパノール48gと水12gを加えて攪拌しながら、
48%水酸化ナトリウム水溶液22.8gを60℃を越
えないようにゆっくり滴下した。50〜60℃で1時間
攪拌したのち、98%硫酸14.1gを40℃以下で滴
下した。滴下後1時間攪拌して析出した硫酸ナトリウム
を固液分離した。濾過液を40gまで減圧濃縮し、トル
エン60gを添加してさらに減圧濃縮することによっ
て、RS−THFCのトルエン溶液34.0g(RS−
THFC濃度89%)を得た。
【0061】
【発明の効果】
(1)ラセミのカルボン酸から光学分割剤を用いて、ジ
アステレオマ−塩分割する方法において、本発明によれ
ば、光学分割後の母液に残った光学対掌カルボン酸と光
学分割剤を、解塩とエステル化を同時に行うことによ
り、それぞれ高収率、高純度で光学対掌カルボン酸エス
テルと光学分割剤塩酸塩として単離することができる。
【0062】(2)本発明によれば、非常に穏和な条件
で光学対掌カルボン酸エステルを高収率でラセミ化、加
水分解できるので、高い収率でラセミのカルボン酸が回
収でき、これをリサイクルすることにより、次の光学分
割が可能である。
【0063】(3)本発明によれば、高収率、高純度で
回収した光学分割剤塩酸塩を定量的に、しかも簡単に遊
離化できるので、これを次の光学分割へリサイクルする
ことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造法を示す概略図である。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ラセミカルボン酸から光学活性カルボン
    酸を製造するに当たり、(A)ラセミカルボン酸と光学
    分割剤を有機溶媒中で混合し、固液分離により光学活性
    カルボン酸と光学分割剤のジアステレオマー塩を結晶と
    して分離する工程、(B)固液分離した有機溶媒母液中
    に残った光学対掌カルボン酸と光学分割剤を、アルコー
    ル共存下で、クロル化剤と接触させることにより、光学
    対掌カルボン酸エステルと光学分割剤塩酸塩にした後、
    固液分離により光学分割剤塩酸塩を結晶として分離する
    分割剤回収工程、(C)母液中に残った光学対掌カルボ
    ン酸エステルをラセミ化触媒共存下でラセミ化した後、
    加水分解してからラセミカルボン酸として回収するラセ
    ミ化工程、(D)結晶として分離された光学分割剤塩酸
    塩を遊離の光学分割剤にして回収する分割剤遊離工程、
    (E)回収されたラセミカルボン酸と光学分割剤を光学
    分割工程(A)へリサイクルする工程、からなることを
    特徴とする光学活性カルボン酸の製造法。
  2. 【請求項2】 光学活性カルボン酸が水と有機溶媒の両
    者に可溶であることを特徴とする請求項1記載の光学活
    性カルボン酸の製造法。
  3. 【請求項3】 光学活性カルボン酸が光学活性テトラヒ
    ドロフランカルボン酸または光学活性テトラヒドロピラ
    ンカルボン酸、あるいはそれらの誘導体であることを特
    徴とする請求項1または2記載の光学活性カルボン酸の
    製造法。
  4. 【請求項4】 光学分割剤が光学活性アミンであること
    を特徴とする請求項1、2または3記載の光学活性カル
    ボン酸の製造法。
  5. 【請求項5】 光学分割剤が光学活性芳香族アミン、ま
    たはアミノ酸アミド誘導体であることを特徴とする請求
    項4記載の光学活性カルボン酸の製造法。
  6. 【請求項6】 分割剤回収工程において、共存させるア
    ルコールが低級アルコールであることを特徴とする請求
    項1〜5のいずれか1項記載の光学活性カルボン酸の製
    造法。
  7. 【請求項7】 分割剤回収工程で用いるクロル化剤が、
    塩化チオニルまたはホスゲンであることを特徴とする請
    求項1〜6のいずれか1項記載の光学活性カルボン酸の
    製造法。
  8. 【請求項8】 ラセミ化工程で用いるラセミ化触媒が、
    アルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属水素化物およ
    びアルカリ金属アミドからなる群より選ばれる少なくと
    も1種であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか
    1項記載の光学活性カルボン酸の製造法。
  9. 【請求項9】 ラセミ化工程で用いるラセミ化触媒を、
    光学対掌カルボン酸エステルに対して0.01モル%〜
    40モル%共存させ、かつ0℃以上100℃未満の温度
    でラセミ化させることを特徴とする請求項1〜8のいず
    れか1項記載の光学活性カルボン酸の製造法。
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