JPH09103452A - 重度障害者用排便ベッドおよび排便ユニット - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 既存施設においても水洗便器を使用しつつコ
ストをかけずに重度身障者の排便処理を可能とすると同
時に、身障者の精神的負担を軽減すること。 【解決手段】 樹脂成形したベッド本体の略中央部に排
便用開口を設け、当該開口に排泄物を水洗便器へ流下さ
せる垂下パイプを連設する一方、ベッド本体の上面を外
周部から前記開口にむけて緩傾斜させる。また洗浄の便
に供するため、ベッド上面の外周縁部にシャワー水の漏
出を防止する低寸の壁部を設けることがある。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、とくに重度障害者の介
護施設で使用する排便用設備に関する。

【０００２】

【従来の技術】介護施設における排便処理は、熟練した
スタッフにとっても心理的苦痛を伴う作業である。従
来、介護を要する人に対する排便処理は、オムツ使用、
オマル使用などがあるが、臭いの問題があるため、近
時、水洗便器を使用した処理が提案されるに至った。

【０００３】図５は、水洗便器を使用した従来の排便処
理システムを示すものである（特開平２−２７２１２０
号公報）。これは病人等の居室の床１に水洗便器２を設
け、ベッド３に設けた蓋３を開閉することで水洗便器２
の随時利用を可能とし、居室内の臭いの問題を解決した
ものである。

【０００４】また図６は、ベッド５に排便開口６を設
け、ポンプ７を利用してタンク８に排泄物を貯留するも
のである（実開昭５１−３１０９１号公報）。水洗便器
の利用ではないが、タンク８に排泄物を貯留させるため
臭いの問題は同様に解決するとが出来る。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】ところで、各種介護施
設ではこれらのシステムは一般的に利用されるに至って
いない。コストが嵩むからである。潤沢な公的資金を使
える新築の高齢者介護施設では、居室ごとに水洗便器を
設ける図５の方式も（特開平２−２７２１２０号）一部
で採用されているが、既存の施設では従来通りオマルや
オムツを使用してスタッフが個別に介護するのが実情で
ある。また図６に示したタンク貯留式（実開昭５１−３
１０９１号）は、汚物を捨てるための別途の作業負担が
あり、コストが嵩むこととも相俟って、必ずしも望まし
い処理システムではない。

【０００６】また、これらの排便処理の問題は別にあ
る。なぜなら従来の排便処理システムは、主として高齢
者や痴呆症患者を対象とした方式であり、それらの場合
には、居室内での排便を習慣づけても、どちらかといえ
ば心理的抵抗感も少なく、スタッフの作業負担も軽減で
きる場合もあった。しかしながら、下肢上肢の運動機能
に障害があるものの意識が健常人と異ならない重度障害
者、例えば頸椎損傷等の事故に起因する障害者の場合
は、複数の人間が同居する同じ部屋の中で排便すること
には耐え難い心理的抵抗がある。彼らは下肢の運動機能
を喪失しているとはいえ、意識は明瞭であり、年齢的に
若い人もあり、また高学歴者や社会的に高い地位あった
人も少なくないからである。排便行為を恥ずかしいと思
うかどうかは個人の意識のあり方であるが、少なくとも
わが国における一般的な健常成人は、同居者のいるなか
で排便することには少なからずの抵抗があり、十分な改
善余地を残していた。これは現在のところ一般的である
オマル使用やオムツ使用の場合にはなおさらである。

【０００７】そこで本発明の目的は、既存施設において
も水洗便器を使用しつつコストをかけずに重度身障者の
排便処理を可能とすると同時に、身障者の精神的負担を
軽減することにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】前記目的を達成して課題
を達成するため、本発明に係る排便ベッドは、樹脂成形
したベッド本体の略中央部に排便用開口を設け、当該開
口に排泄物を水洗便器へ流下させる垂下パイプを連設す
る一方、ベッド本体の上面を外周部から前記開口にむけ
て緩傾斜させる。また洗浄の便に供するため、ベッド上
面の外周縁部にシャワー水の漏出を防止する低寸の壁部
を設けることがある。

【０００９】また、これら排便ベッドを使用する専用個
室を設ける際には、床面全面に石材または樹脂材を設け
てなる排便室に前記排便ベッドを配するとともに、該排
便室内に水洗便器ユニットおよびシャワー設備を設け、
排便ベッドの垂下パイプを水洗便器本体の上方に位置さ
せる一方、水洗便器ユニットの操作スイッチおよびシャ
ワー設備の操作スイッチおよびシャワーグリップを排便
ベッド近傍に位置させる。

【００１０】

【作用】本発明に係る排便ベッドは、重度障害者を一般
のトイレで排便させることを企図する。車椅子や移動ベ
ッドによってトイレまで移動させ、排便用ベッドへ身体
を移る練習をさせ、通常のトイレで健常人と同じような
排便を促す。このため排便ベッドは、水洗トイレに設置
する。

【００１１】ベッドは洗浄が可能なように、本体部分を
樹脂成形する。また横臥姿勢しかとれない障害者のため
に、ベッド上面の略中央部に排便開口を設けた。排泄さ
れた汚物は、そのまま水洗トイレへ流すから、排便開口
には垂下パイプを連設して便器本体に汚物を流下させ
る。開口に連設するパイプは長い管にする必要はないか
らダイレクトに便器に汚物が流下するよう、直管のパイ
プ（垂下パイプ）を使用する。

【００１２】汚れた場合は使用後にベッドを洗浄する。
洗浄には水（温水）を使用する。このときにはシャワー
水を使用しても良いし、バケツの水で流しても良い。水
はけを良好にするため、排便開口が最も低位置となるよ
う、ベッド上面は水平面ではなく排便開口に向けて緩傾
斜させておく。傾斜の角度設定は自由である。

【００１３】排便用の専用個室を設けている場合や、床
面の洗浄が容易な水洗トイレに適用する場合は、ベッド
を洗浄するためにシャワー水をかけても、床面の排水は
容易である。しかし床面洗浄が煩わしいトイレもある。
そこで床面洗浄が煩わしい場合に適用するため、ベッド
上面の外周縁端部に低寸の壁部を設け、洗浄水がそのま
ま排便開口から水洗便器へ流下するようにしても良い。

【００１４】壁面を高くし過ぎると身体の移動が困難に
なるから、この壁面は低寸で良い。ベッド上面に注がれ
た水は排便開口から傾斜面を下って垂下パイプから水洗
便器へスムースに流下するので、低寸でも壁面は十分に
漏水機能を果たすことが出来る。

【００１５】また、この排便ベッドを使用する排便用の
専用個室を設ける際には、排便室の床面全面に石材また
は樹脂材を設けて汚物の洗浄を容易とする。面積の大き
なパネル材でも、面積の小さなタイル材でも良い。ベッ
ドは水洗便器の上に配し、垂下パイプが便器本体に位置
するようにしておく。使用者が自分で水洗便器の水を流
し、汚れたベッドの洗浄もすることが望ましいから、ス
イッチ類やシャワーグリップはベッド近傍に配する。重
度障害者は定期入浴も困難な場合が少なくないが、ベッ
ド洗浄時のシャワー水を利用して陰部洗浄も可能とな
り、衛生を保つことも可能である。

【００１６】

【実施例】以下、添付図面に基づいて本発明の実施例を
説明する。図１〜図３は、本発明に係る排便ベッドの一
例を示すものである。この排便ベッド１０は、ベッド本
体１１と脚部１２とからなり、ベッド本体１１は全体を
ＦＲＰ等の樹脂で成形する。ベッド本体１１の略中央部
には、排便開口１４を設ける。

【００１７】この排便ベッド１０は、施設内トイレの水
洗便器２０の上に配置するものであって、排便開口１４
が水洗便器２０の上方に位置するよう配置し、排便開口
１４に連設させた垂下パイプ１５の下端Ｄが水洗便器２
０に汚物を流せる位置になるよう、垂下パイプ１５の寸
法および下端位置を設定する。パイプ１５は定期的に使
い捨てしても構わないが、洗浄を容易とするためには、
素材は樹脂または金属を使用する。また固定方式は、ビ
ス止め固定でも良いが着脱容易にするため嵌入によって
配置することも出来る。

【００１８】ベッド本体１１の上面は、排便開口１４に
向けて降り勾配で緩傾斜させる。勾配角度は、横臥した
ときに不自由さがなく、洗浄水がよどみなく流れる程度
であれば特に限定されない。この実施例では、長寸方向
の勾配θ₁を例えば２．５゜に設定し、短寸方向の勾配
θ₂を例えば５゜に設定した。すなわちベッド上面は緩
やかに湾曲する陥凹形状を呈している。

【００１９】使用に際しては、ベッド上面に、図４に示
すような弾力のある防水マット１７を敷設するのが望ま
しい。防水マット１７の素材は、例えばウレタンフォー
ムを使用する。防水マット１７を敷設する場合、ベッド
上面には当該マット（１７）の動きを抑止する凹凸を設
けることが望ましい。

【００２０】また排便ベッド１０には、その上面外周縁
部にシャワー水の漏出を防止する低寸の壁部３０を設け
てある。シャワー水は、ベッド上面の傾斜面を流れ下っ
て排便開口１４から水洗便器２０へと流れるから、機能
的には必ずしも壁部３０は必要でないようにも思える。
しかしながらシャワーグリップを持っている手元が狂っ
て汚物をベッドの外へ流してしまうことも想定できるた
め、この壁部３０を設けることによってトイレ床面が汚
れる事態を確実に防止することが可能となる。壁部３０
の高さ寸法は約１〜３ｃｍ程度の低寸でよい。ベッド上
面は中央に向けて降り勾配になっているので、外周縁部
に何らかの凸壁（３０）があれば、たとえシャワー水の
勢いで汚物が外周縁部に流れようとしても、飛び出しを
確実に防止できるからである。また壁部３０が高すぎる
と、移動ベッドから排便ベッド３０へ身体を移すときに
障害となって不便である。

【００２１】図２に符号Ｓで示すように、ベッド上面の
中央部は、幅狭のウェスト形状に成形してある。これは
上半身を起こすときに、ウェスト部（符号Ｗ１，Ｗ２）
に手をかけて身体を持ち上げるようにするためである。
中央部の横幅寸法が他の一般部と同じ寸法（符号Ｌで示
す）であると、寝たまま手をかけにくく力も入れづらい
からである。尚、この中央外周部には、手すり（図示せ
ず）を設けても良い。但し、この排便ベッド１０と移動
ベッドとの間で身体を移すときには手すりは障害になる
から、手すりは着脱自在とする必要があり、身体を移動
するときや起きあがるときにいちいち看護スタッフがつ
く必要が生ずる等の不便は残る。

【００２２】この排便ベッド１０は、障害者施設のトイ
レに配置して使用する。トイレまで身体を移動させるこ
とにより、健常人と同じ生活動作を行わせるためであ
る。居室で寝たまま排便させるなど、障害者を特別扱い
し、或いは、恥ずかしい行為を強制するよりも、身体を
トイレまで移動させトイレで普通に排便させることによ
って、同室者や介護人に対する入居者の精神負担も軽く
なり、生活リズム面での積極性が生まれる。

【００２３】ベッド上面は樹脂成形してあるから汚物を
水で流すことも容易であり、ベッド上面は開口１４に向
けて緩傾斜しているから流した水はそのまま水洗トイレ
に送ることが出来る。また壁部３０を設ければ洗浄水が
床に流れ出ることもない。

【００２４】排便開口１４の形状は問わないが、本実施
例のようにベッド中央において楕円に開孔すると、ベッ
ドの使用に際していわゆる天地がなく、左右いずれの方
向からでも身体を乗せて使用することが出来る。

【００２５】このベッド１０を通常のトイレに配置して
使用する場合には、汚物を流す際にバケツの水を利用し
て対処すれば良い。しかしながら施設のトイレにも専用
ユニット（排便室）を設けると、清掃がより容易とな
る。その場合には、排便ベッド１０に位置したまま障害
者自身がシャワーを利用し、水洗を流せるよう、シャワ
ースイッチとシャワーグリップおよび水洗コック（ボタ
ンスイッチ）をベッド近傍に配置する。また床面は汚物
の洗い流しを容易にするため、少なくとも床面には樹脂
または石材のパネルを配することが望ましい。

【００２６】

【発明の効果】以上説明したように本発明に係る排便ベ
ッドによれば、既存施設においても水洗便器を使用しつ
つコストをかけずに重度身障者の排便が可能となり、し
かも身障者の精神的負担を軽減することが出来る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る排便ベッドの一例を示す部分断面
側面図である。

【図２】本発明に係る排便ベッドの一例を示す平面図で
ある。

【図３】本発明に係る排便ベッドの一例を示す正面図で
ある。

【図４】ベッド上面に配置するマットの一例を示す斜視
図である。

【図５】従来の排便ベッドの一例を示す図である。

【図６】従来の排便ベッドの他の例を示す図である。

【符号の説明】

１０ 排便ベッド １１ ベッド本体 １２ 脚部 １４ 排便開口 １５ 垂下パイプ １７ 防水マット ２０ 水洗便器

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】樹脂成形したベッド本体の略中央部に排便
   用開口を設け、当該開口に排泄物を水洗便器へ流下させ
   る垂下パイプを連設する一方、ベッド本体の上面を外周
   部から前記開口にむけて緩傾斜させたことを特徴とする
   重度障害者用排便ベッド。
2. 【請求項２】前記排便ベッドはベッド上面の外周縁部に
   シャワー水の漏出を防止する低寸の壁部を備えることを
   特徴とする請求項１記載の重度障害者用排便ベッド。
3. 【請求項３】床面全面に石材または樹脂材を設けてなる
   排便室に前記請求項１または請求項２記載の排便ベッド
   を配するとともに、該排便室内に水洗便器ユニットおよ
   びシャワー設備を設け、排便ベッドの垂下パイプを水洗
   便器本体の上方に位置させる一方、水洗便器ユニットの
   操作スイッチおよびシャワー設備の操作スイッチおよび
   シャワーグリップを排便ベッド近傍に位置させることを
   特徴とする重度障害者用排便ユニット。