JPH0884568A - 揚げ物用熱処理小麦粉及びその製造法 - Google Patents

揚げ物用熱処理小麦粉及びその製造法

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JPH0884568A
JPH0884568A JP6255043A JP25504394A JPH0884568A JP H0884568 A JPH0884568 A JP H0884568A JP 6255043 A JP6255043 A JP 6255043A JP 25504394 A JP25504394 A JP 25504394A JP H0884568 A JPH0884568 A JP H0884568A
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英孝 宮村
Kaoru Endo
薫 遠藤
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美子 宮崎
Hitoshi Chiba
仁司 千葉
Hirofumi Souri
浩文 宗利
Futoshi Hirasawa
太 平澤
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 含有澱粉が実質的にα化されておらず、しか
もグルテン・バイタリティが未処理小麦粉のそれを10
0としたときに90〜98%、グルテン膨潤度が未処理
小麦粉のそれを100としたときに105〜155%で
ある揚げ物用熱処理小麦粉及び密閉系高速攪拌機中で、
小麦粉を飽和水蒸気により周速度5〜20m/秒、滞留
時間2〜20秒間、品温65〜80℃の条件で加圧下熱
処理する揚げ物用熱処理小麦粉の製造法。 【効果】 より歯もろく、サクサクした食感の揚げ衣が
得られ、その食感は冷えてもあまり劣化することなく持
続する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は天ぷらやフライ等の揚げ
物用粉として好適な熱処理小麦粉及びその製造法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】天ぷら等の揚げ物の衣の食感は、できる
だけ歯もろく、サクサクしたものが望まれる。而して、
斯かる食感を得るべく従来は、揚げ物用衣液中のグルテ
ンの形成をできるだけ抑制する方法、例えば1)できるだ
け蛋白質の少ない小麦粉を使用する、2)冷水又は氷水を
用いる、3)水と揚げ物用粉をまぜ合わせるのにまま粉
(ダマ)が残る程度に太い箸を使用し、さっくりまぜ
る、4)溶いた液は冷却し、できるだけ短時間で使い切
る、5)プロテアーゼを使用する、等の方法が一般に行な
われていた。
【0003】然しながら、斯かる従来の方法ではそれほ
ど十分なグルテン形成の抑制効果は得られず、未だ満足
のいく食感の衣は得られていなかったのが実状であっ
た。特に、従来法によって得られた揚げ物食品は、冷え
るとその食感の劣化は顕著で、歯もろさがなくなり、引
きが強く、しかもサクサクした感じがなくベトついたも
のとなってしまうことは避けられなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明者は斯
かる実状に於て、より歯もろく、サクサクした食感の揚
げ衣を得ることを目的として種々研究を重ねた結果、特
定の軽度の状態に熱変性せしめた小麦粉を揚げ物用粉と
して用いれば、極めて良い結果、特に冷えても歯もろ
く、サクサクした食感が失われずに持続することを見い
出し、本発明を完成した。
【0005】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明の第1
は、含有澱粉が実質的にα化されておらず、しかもグル
テン・バイタリティが未処理小麦粉のグルタン・バイタ
リティを100としたときに90〜98%で、かつグル
テン膨潤度が未処理小麦粉のグルテン膨潤度を100と
したときに105〜155%である揚げ物用熱処理小麦
粉であり、本発明の第2は、飽和水蒸気が導入された加
圧状態の密閉系高速攪拌機中に小麦粉を導入し、周速度
5〜20m/秒、滞留時間2〜20秒間の条件で湿熱処
理して該小麦粉の品温が65〜80℃になるようにした
ことを特徴とする揚げ物用熱処理小麦粉の製造法であ
る。
【0006】本発明に於ける処理前の小麦粉(未処理小
麦粉)としては、薄力小麦粉が好適なものとして挙げら
れる。
【0007】本発明の第1に係る揚げ物用熱処理小麦粉
中の澱粉は、実質的にα化されておらず、そのα化度は
未処理小麦粉のα化度とほぼ同じくβ−アミラーゼプル
ラナーゼ法での測定値が4.5〜6.5%程度である。
【0008】本発明の第1に於て、グルテン・バイタリ
ティは未処理小麦粉のグルテン・バイタリティを100
としたときに90〜98%、好ましくは91〜97.5
%、更に好ましくは92.5〜95.8%であり、例え
ば未処理小麦粉のグルテン・バイタリティが62.6%
の場合には56〜61.5%、好ましくは57〜61
%、更に好ましくは58〜60%である。グルテン・バ
イタリティが90%より低い場合には衣の食感はサクサ
クしたものとなるものの歯もろさに欠けたものとなり、
また衣の外観も花咲き状態とならない。他方、98%よ
り高い場合には衣の食感が硬く、引きが強いものとなる
と共に、サクサクした食感の欠けた張りのない湿ったも
のとなる。
【0009】尚、本発明でいうグルテン・バイタリティ
の測定方法は次の通りである。 (1)グルテン・バイタリティの測定にあたり、まず可
溶性蛋白含量の測定を行なう。可溶性蛋白含量の測定は
以下の通りである。 (1−1)100ml容のビーカーに試料(小麦粉)を約
2g精秤する。 (1−2)0.05規定酢酸を40ml加え、スターラー
を用いて室温で60分間攪拌する。 (1−3)この懸濁液を遠沈管に移し、5000rpm で
5分間遠心分離を行なった後、濾紙を用いて濾過し、濾
液を回収する。 (1−4)ビーカーを0.05規定酢酸40mlで洗い、
洗液を遠沈管に移し、5000rpm で5分間遠心分離を
行なった後、濾紙を用いて濾過し、濾液を回収する。 (1−5)上記(1−3)及び(1−4)で得られた濾
液を混合して100mlにメスアップする。 (1−6)ティケーター社(スウェーデン)のケルテッ
クオートシステムのケルダールチューブに上記1−5で
得られた液体25mlをホールピペットで入れ、分解促進
剤(成分…硫酸カリウム9:硫酸銅1)1錠及び濃硫酸
15mlを加える。 (1−7)分解は、ケルテックオートシステムのケルテ
ック分解炉(DIGESTIONSYSTEM 20 1015型)を用い、ダ
イヤル4で1時間、次いでダイヤル9又は10で1時間
行なう。 (1−8)蒸留及び滴定は、ケルテックオートシステム
に組込まれているケルテック蒸留滴定システム(KJELTE
C AUTO 1030型)で行なわれるが、(1−7)及び(1
−8は)連続的に自動的に行なわれる。尚、滴定には
0.1 規定硫酸が用いられる。 (1−9)可溶性蛋白含量は下記の計算式により求め
る。
【0010】
【数1】
【0011】(2)次に粗蛋白含量を測定する。 (2−1)ティケーター社(スウェーデン)のケルテッ
クオートシステムのケルダールチューブに、試料(小麦
粉)を約0.5g精秤して入れ、分解促進剤(日清製粉
株式会社製セフカットC5;成分…硫酸カリウム9:硫
酸銅1)1錠及び濃硫酸15mlを加える。 (2−2)分解は、ケルテックオートシステムのケルテ
ック分解炉(DIGESTIONSYSTEM 20 1015型)を用い、ダ
イヤル9又は10で1時間行なう。 (2−3)蒸留及び滴定は、ケルテックオートシステム
に組込まれているケルテック蒸留滴定システム(KJELTE
C AUTO 1030型)で行なわれるが、(2−2)及び(2
−3)は連続的に自動的に行なわれる。尚、滴定には
0.1 規定硫酸が用いられる。 (2−4)粗蛋白含量は下記の計算式により求める。
【0012】
【数2】
【0013】(3)グルテン・バイタリティの計算は、
次式により求める。
【0014】
【数3】
【0015】また、本発明の第1に於て、グルテン膨潤
度は未処理小麦粉のグルテン膨潤度を100としたとき
に105〜155%、好ましくは110〜145%、更
に好ましくは120〜135%であり、例えば未処理小
麦粉のグルテン膨潤度が1.8倍の場合には1.9〜
2.8倍、好ましくは2.0〜2.6倍、更に好ましく
は2.2〜2.4倍である。未処理小麦粉に対するグル
テン膨潤度が105%より低い場合には衣の食感が硬
く、引きが強いものとなると共に、サクサクした食感の
欠けた張りのない湿ったものとなる。他方、未処理小麦
粉に対するグルテン膨潤度が155%より高い場合には
極めて硬く、割れにくい食感となる。
【0016】尚、本発明でいうグルテン膨潤度の測定法
は次の通りである。 (1)300ml容ビーカーに試料(小麦粉)を約10g
精秤する。 (2)0.02規定乳酸を200ml加えて、ガラス棒で
攪拌し1夜放置する。 (3)遠心分離機にかけ、回転数3000rpm で10分
間遠心分離する。 (4)上澄液を捨て、下に沈澱した固形分の重量(g)
を測定する。 (5)以下の計算式によりグルテン膨潤度を求める。
【0017】
【数4】
【0018】因に、本発明の第1に係る揚げ物用熱処理
小麦粉のミキソグラムのディベロップメント(カーブが
ピークに達するまでに要した時間)は、未処理小麦粉の
ミキソグラムのディベロップメントを100としたとき
に180〜570%程度であり、例えば未処理小麦粉の
ミキソグラムのディベロップメントが3分である場合に
は、5分20秒〜17分10秒程度となる。
【0019】尚、ミキソグラムは、ドイツ ブラベンダ
ー社製のミキソグラフ(ミキシング中の生地の物理的な
変化をグラフにする装置)を用いて常法に従い、小麦粉
30gに水20gを添加し、ミキシングすることにより
得られる。
【0020】上記の如き本発明の第1に係る揚げ物用熱
処理小麦粉は、前記本発明の第2に係る湿熱処理方法に
より効率的に製造される。湿熱処理条件が本発明の第2
に係る処理条件より緩和な場合には、未処理小麦粉に近
いグルテン・バイタリティ及びグルテン膨潤度となり、
他方これより過酷な場合には、完全熱処理小麦粉の性質
に近づくような澱粉のα化度、グルテン・バイタリティ
及びグルテン膨潤度となり、何れも本発明の目的を達成
し得ない。
【0021】
【実施例】以下実施例及び試験例を挙げて本発明を更に
説明する。
【0022】実施例1 飽和水蒸気が150kg/時の割合で吹き込まれた加圧状
態(1.2kg・重/cm 2)の密閉系高速攪拌機(特開平
3−83567号公報に開示の装置)中に、薄力小麦粉
を3トン/時の割合で供給し、周速度11m/秒、滞留
時間6秒間の条件で湿熱処理し、該小麦粉の品温を75
℃程度にして揚げ物用熱処理小麦粉を得た。得られた熱
処理小麦粉のα化度は6.2%、グルテン・バイタリテ
ィは58%、グルテン膨潤度は2.4倍、ミキソグラム
のディベロップメントは9.2分であった。因に、熱処
理前の薄力小麦粉のα化度は5.0%、グルテン・バイ
タリティは62.6%、グルテン膨潤度は1.8倍、ミ
キソグラムのディベロップメントは3分であった。この
熱処理小麦粉100重量部に、ベーキングパウダー1.
5重量部及び水170重量部を加え、攪拌して衣液を調
製し、1cmの厚さに輪切したサツマイモに均一に付着し
た後、180〜190℃の油で3分間揚げてサツマイモ
天ぷらを得た。この天ぷらの衣の外観は、花咲きが大き
く極めて良好で、触感は張りがありからりとした状態で
あり、食感も極めて歯もろく、サクサクしていた。ま
た、斯かる触感及び食感は冷えた後に於てもあまり低下
はなかった。
【0023】試験例1 飽和水蒸気の供給量及び小麦粉の品温を表1に示した条
件に代えた以外は実施例1と同様にして熱処理小麦粉を
得た。得られた各熱処理小麦粉のα化度、グルテン・バ
イタリティ、グルテン膨潤度及びミキソグラムのディベ
ロップメントを測定した結果は表1の通りであった。こ
の熱処理小麦粉を用い、実施例1と同様にしてサツマイ
モ天ぷらを得、得られた各天ぷらについて、揚げ直後の
外観、触感及び食感並びに冷えた後の触感及び食感を1
0名のパネラーで下記表3の評価基準に従って評価し
た。その結果の平均値は下記表2の通りであった。尚、
未処理小麦粉及びこれを用いて得たサツマイモ天ぷらに
ついてもそれらの測定結果を対照として併せて表1及び
表2に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
【表3】
【0027】試験例2 飽和水蒸気の供給量、周速度及び小麦粉の品温を下記表
4に示した条件に代えた以外は実施例1と同様にて熱処
理小麦粉を得た。得られた各熱処理小麦粉のα化度、グ
ルテン・バイタリティ、グルテン膨潤度及びミキソグラ
ムのディベロップメントを測定した結果及び試験例1と
同様にして行なったサツマイモ天ぷらの評価結果は表4
及び表5の通りであった。尚、対照として試験例1と同
様未処理小麦粉についての測定結果及び評価結果を併せ
て示す。
【0028】
【表4】
【0029】
【表5】
【0030】試験例3 実施例1で得たサツマイモ天ぷらに於て、油揚げしてか
ら約30分間以上経過して冷えたものを、電子レンジ
〔松下電器産業株式会社製「ナショナル NE−A 7
60」(商品名)600W〕にて100g当たり2分間
再加熱したところ、衣の食感が極めて歯もろくサクサク
していた。他方、未処理小麦粉を用いて得たサツマイモ
天ぷらを同様に再加熱したところ、歯もろさとサクサク
感が失われ、からっとした状態がなくなり、かつ食感は
引きの極めて強い劣るものであった。因に、当該電子レ
ンジ再加熱後の触感及び食感を試験例1と同様にして評
価した結果は表6の通りであった。
【0031】
【表6】
【0032】試験例4 実施例1で得られた熱処理小麦粉を用いてバッター液を
つくり、一方、対照として未処理小麦粉を用いてバッタ
ー液をつくり、各々ポテトコロッケの具材の表面に付着
させ、次いでパン粉付けをし、そのまま180℃で3分
間油で揚げ、試験例1と同様にして食感を評価した。そ
の結果は表7の通りであった。また、パン粉付けをし、
凍結(1週間)後、180℃で4分間油で揚げたものに
ついても同様に食感を評価した。その結果を表7に併せ
て示す。更に、油揚後、冷えたコロッケを電子レンジ
(試験例3で用いたものと同一)で100g当り2分間
加熱したものについても同様に食感評価した。その結果
を表7に併せて示す。
【0033】尚、ポテトコロッケは次の如く調製した。
マッシュポテト100部に水100部を加えて攪拌し、
これにひき肉20部と玉ネギ50部、食塩及びこしょう
を少量加え、油で良く炒めたものを混合した後各45g
に分割し、円型に成形してコロッケ具材を得た。一方、
小麦粉100部に対し冷水170部加え、均一になるま
で攪拌してバッター液をつくり、この液に成型したコロ
ッケ具材を浸漬し、余分の液を切り、パン粉付けをし、
以下上記の通り油揚げしてポテトコロッケをつくった。
【0034】
【表7】
【0035】
【発明の効果】本発明によれば、張りがあってからりと
した、しかもより歯もろく、サクサクした食感の揚げ衣
を得ることができると共に、その食感は冷えてもあまり
劣化することなく持続する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 宮崎 美子 埼玉県入間郡大井町鶴ケ岡5丁目3番1号 日清製粉株式会社食品研究所内 (72)発明者 千葉 仁司 埼玉県入間郡大井町鶴ケ岡5丁目3番1号 日清製粉株式会社生産技術研究所内 (72)発明者 宗利 浩文 埼玉県入間郡大井町鶴ケ岡5丁目3番1号 日清製粉株式会社生産技術研究所内 (72)発明者 平澤 太 埼玉県入間郡大井町鶴ケ岡5丁目3番1号 日清製粉株式会社生産技術研究所内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 含有澱粉が実質的にα化されておらず、
    しかもグルテン・バイタリティが未処理小麦粉のグルテ
    ン・バイタリティを100としたときに90〜98%
    で、かつグルテン膨潤度が未処理小麦粉のグルテン膨潤
    度を100としたときに105〜155%である揚げ物
    用熱処理小麦粉。
  2. 【請求項2】 飽和水蒸気が導入された加圧状態の密閉
    系高速攪拌機中に小麦粉を導入し、周速度5〜20m/
    秒、滞留時間2〜20秒間の条件で湿熱処理して該小麦
    粉の品温が65〜80℃になるようにしたことを特徴と
    する揚げ物用熱処理小麦粉の製造法。
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