JPH0876A

JPH0876A - 茸類栽培用駒

Info

Publication number: JPH0876A
Application number: JP6158170A
Authority: JP
Inventors: Toru Oda; 徹織田; Norifusa Ogura; 範房小倉; Yoshitaka Hayashi; 義孝林
Original assignee: Individual
Current assignee: Individual
Priority date: 1994-06-17
Filing date: 1994-06-17
Publication date: 1996-01-09

Abstract

(57)【要約】【目的】原木に打ち込んで使用する茸類栽培用の駒に
ついて、茸類の良好な成育が得やすく、しかも栽培作業
及び製造作業が容易な駒とする。【構成】合成繊維不織布シートのプレス成形によって得
られた小袋１に、茸菌が植菌された菌体支持体２を充填
し、かつ開口部に蝋７を流し込んで封止する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、茸類の栽培において、
植菌されて原木に打ち込まれる駒に関する。更に詳しく
は、鋸屑等の粉粒状の菌体支持体を用いた駒に関する。

【０００２】

【従来の技術】茸類の栽培において、茸菌の培養床とし
て、鋸屑等の粉粒状の菌体支持体を用いることが行われ
ている。

【０００３】例えば、筒状に丸めた不織布内に茸菌を植
菌した菌体支持体を充填したり、２枚の不織布間に植菌
した菌体支持体を挟み込み、これらを培養した後、適宜
に切断して、原木の穴や溝に埋め込むことが知られてい
る（特公昭６２−４７４９３号公報）。

【０００４】しかしながら、このような培養は、菌体支
持体がばらけやすく、取り扱い性が悪いことに加え、菌
体支持体内に雑菌が侵入しやすく、茸類の成育が妨げら
れやすい問題がある。

【０００５】また、合成樹脂シートに多数の凹部を形成
し、この凹部に植菌した菌体支持体を充填すると共に、
凹部に多数の小孔を形成し、凹部をシートから切り離し
て、これを駒として原木の穴に打ち込むことも知られて
いる（特開平２−２５５０１８号公報）。

【０００６】この場合、菌体支持体が凹部内に収容され
ているのでばらけにくく、取り扱い性はよいが、凹部に
多数の小孔を設けるのに多大の手間を要するばかりか、
凹部が開放されているので雑菌が侵入しやすい問題があ
る。

【０００７】上記のような問題のない駒として、合成繊
維不織布シートのプレス成形によって得られた小袋を用
いた駒が知られている。これは、図４に示されるよう
に、小袋１の開口部周縁が側方に張り出した鍔部３とな
った小袋１内に、植菌された湿った粉粒状の菌体支持体
２が充填されており、更に、小袋１の開口部を覆う、合
成樹脂フィルムの蓋材４と、小袋１の鍔部３との間が融
着によりシールされた駒である（特開平５−３０４８３
１号公報）。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記図
４に示される駒にも次のような問題がある。

【０００９】（１）茸類は、小袋１の鍔部３と蓋材４間
のシールを破って外に生え出て来るので、強固なシール
はこの茸類の育成を妨げ、またシールが弱過ぎると蓋材
４が剥れて小袋１内に雑菌が侵入し、やはり茸類の成育
が妨げられる。従って、蓋材４のシール強度調整が難し
く、この調整不良によって茸類の成育が妨げられやす
い。

【００１０】（２）図５（ａ）に示されるように、単に
原木５に開けた穴に打ち込んだだけでは、鍔部３が原木
５表面上に出っ張った状態となって茸類の着床が悪くな
るので、図５（ｂ）に示されるように、駒を打ち込む穴
の開口部周囲に鍔部３を受け入れる座ぐりを設ける必要
があり、原木５への穴開け作業に手間がかかる。

【００１１】（３）図５（ｂ）のように座ぐりを形成し
て鍔部３を収容しても、外部から水分の供給を行う際
に、鍔部３と座ぐり間の隙間を通らなければ水分が内部
に浸入できず、水分が小袋１内へ届きにくい。

【００１２】（４）図４に示されるように、小袋１内に
充填された粉粒状の菌体支持体２と蓋材４間に空間６が
残りやすく、この空間６が雑菌繁殖の原因となる。

【００１３】本発明は、このような従来の問題点に鑑み
てなされたもので、茸類の良好な成育が得やすく、しか
も栽培作業及び製造作業が容易な駒とすることを目的と
する。

【００１４】

【課題を解決するための手段及び作用】このために本発
明では、合成繊維不織布シートのプレス成形によって得
られた小袋内に、茸菌が植菌された粉粒状の菌体支持体
を充填し、小袋の開口部を、開口部内に充填した蝋で封
止することで駒を構成することとしているものである。

【００１５】更に本発明の具体的態様を図１及び図２に
基づいて説明する。

【００１６】図１において、１は合成繊維不織布シート
からプレス成形された小袋で、この小袋１内には植菌さ
れかつ一定の水分を含有する湿った粉粒状の菌体支持体
２が充填されている。また、小袋１の開口部は、蝋７で
封止されている。

【００１７】小袋１を構成する合成繊維不織布シート
は、短繊維製、長繊維製及び両者の混合繊維製のいずれ
でもよいが、プレス成形によって小袋１を構成するもの
であることから、少なくともプレス成形温度において１
００％以上の伸度を有するものが好ましい。また、構成
繊維間の接合に接着剤を使用した不織布シートは、接着
剤が茸菌の繁殖を阻害する場合があることから、ノーバ
インダータイプの不織布シートが好ましい。これらの不
織布は、例えば特開昭６３−１２０１５４号公報、特開
平５−３０４８３１号公報に開示されている。

【００１８】茸菌成育の観点から、不織布シートの目付
は、５０〜２５０ｇ／ｍ² が好ましく、厚みは０．１〜
０．５ｍｍ、特に０．２〜０．４ｍｍであることが好ま
しい。目付と厚みは、小さ過ぎると、成形によって得ら
れる小袋１の強度が不足し、逆に大き過ぎると、小袋１
中の菌体が原木５（図２参照）に接触しにくくなる。

【００１９】茸の良好な成育を達成するために、不織布
シートは、フラジール法（ＪＩＳ・Ｌ・１０７９法に準
ずる手法）による通気度が５〜３６０ｃｃ／ｃｍ² ／ｓ
ｅｃであることが好ましい。また、単繊維の繊度は、得
られる小袋１の必要な強度を維持しつつ多くの微細孔を
分布させ、しかも上記の通気度を得る上で、０．３〜２
０デニール、特に０．５〜１５デニールであることが好
ましい。

【００２０】上記のような不織布シートの具体例として
は、旭化成工業（株）製の「スマッシュ」（商品名）及
び同社製の「ルクサー」（商品名）が挙げられる。

【００２１】菌体支持体２に植菌される茸菌としては、
椎茸菌が一般的であるが、他にしめじ、なめこ、ひらた
け、まいたけ等、原木５（図２参照）に培養・栽培でき
る茸類の茸菌であればいずれでも用いることができる。

【００２２】菌体支持体２は粉粒状をなすもので、鋸
屑、木材切削チップ、木材粉砕チップ、これらの混合物
等が用いられ、中でも鋸屑が好ましい。菌体支持体２を
構成する木材の種類は、植菌する茸菌の種類に応じて選
択されるものである。

【００２３】小袋１の形状は、図２に示されるように、
原木５に形成した穴に打ち込める形状であれば特に制限
はなく、図１に示される指先形の他、例えば円筒形、円
錐形、角錐形等でもよいが、通常ドリルで開けられる原
木５の穴との密着性がよい指先形がましい。また、小袋
１の大きさは本発明の駒の大きさとなるもので、取り扱
いやすくする上で、開口部の直径が１０〜２０ｍｍ、深
さが１０〜３０ｍｍであることが好ましい。

【００２４】小袋１内には、植菌された菌体支持体２が
充填されているが、小袋１内での菌体支持体２の遊びを
防止すると共に、菌体支持体２を充填した小袋１が簡単
に変形しないように押し詰められていることが好まし
い。

【００２５】菌体支持体２が充填された小袋１の開口部
は、開口部内に充填された蝋７で封止されている。この
蝋７による封止は、小袋１内への雑菌の侵入を防止する
と共に、封を破っての茸類の生え出しを許容するもので
ある。この雑菌の侵入防止と茸類の生え出しの許容の両
観点から、蝋７の厚みは０．５〜３ｍｍであることが好
ましい。蝋７としては、茸菌に対する悪影響がないこと
から、植物性蝋、動物性蝋及び石油性蝋のいずれでもよ
いが、植物性蝋が好ましく、特に和蝋を主成分とするも
の（和蝋を５０重量％以上含有）が好ましい。

【００２６】本発明の駒の製造は、次のようにして行う
ことができる。

【００２７】まず、図３（ａ）に示されるように、平坦
な不織布シートをプレス成形し、小袋１となる凹部８を
多数成形する。この凹部８に、図３（ｂ）に示されるよ
うに、茸菌を植菌した菌体支持体２を充填する。充填
は、適度な湿り気を持たされた菌体支持体２を凹部８内
に押し込むようにして詰め込むと共に、凹部８の上縁か
ら０．５〜３ｍｍ程度が未充填のまま残されるように行
う。

【００２８】茸菌の植菌と菌体支持体２の充填は、次の
３つの方法のうち、いずれの方法で行ってもよい。

【００２９】（１）滅菌処理し、適当な水分量に調節し
た菌体支持体２を凹部８内に詰め込み、次に述べる蝋７
での封止の後、茸菌の培養液を不織布シートを介して染
み込ませる。

【００３０】（２）滅菌処理し、適当な水分量に調整し
た菌体支持体２と茸菌を混合し、この混合物を凹部８内
に詰め込む。

【００３１】（３）適当な水分量に調整した菌体支持体
２と茸菌の混合物を適温適湿下で３０〜５０日培養し、
培養後の固まりをほぐして凹部８内に詰め込む。

【００３２】菌体支持体２の充填後、凹部８の開口部内
に蝋７を流し込んで充填し、この開口部を封止する。し
かる後に、各凹部８をその上縁で切り離すことで本発明
の駒を得ることができる。また、上記（１）又は（２）
の方法で茸菌の植菌と菌体支持体２の充填を行った場合
には、各凹部８の切り離しの前又は後で、適温適湿下で
３０〜５０日培養してから原木の穴に打ち込む。上記
（３）の方法で茸菌の植菌と菌体支持体２の充填を行っ
た場合には、やはり凹部８の切り離しの前又は後で、適
温適湿下で１〜５日放置して培養してから原木の穴に打
ち込む。

【００３３】

【実施例】

実施例１繊度４デニール、目付１５０ｇ／５０ｍ² 、厚み０．３
２ｍｍ、１３０℃の乾熱収縮率が２％、１３０℃加熱時
の破断伸度が２１０％のポリエチレンテレフタレートの
不織布シートを１３０℃に加熱してプレス成形して、開
口部直径約１４ｍｍ、深さ約２０ｍｍの指先状の凹部を
形成し、この凹部内に、適度の湿り気に調節された椎茸
菌と鋸屑の混合物を充填した。この充填後、更に凹部の
開口部内に厚さ約２ｍｍで蝋を充填して封止し、凹部の
上縁部で凹部を切り離した後、適温適湿下で４０日間培
養して本駒を得た。

【００３４】得られた本駒を、５０個の穴を開けたくぬ
ぎ原木に打ち込み、適温適湿下に放置したところ、６か
月後に５０個の椎茸を収穫することができた。また、１
回目の椎茸を収穫した後、２回目以降でも４０個の椎茸
を収穫することができた。

【００３５】比較例１実施例１と同じ不織布シートを同様にプレス成形して得
た凹部に、実施例１と同様の混合物を充填した後、凹部
の開口部側表面に、２５μｍのポリエチレンと１２μｍ
ポリエステルの複合フィルムを熱シールし、開口部の周
縁に約２ｍｍ幅の鍔部を残して各凹部を切り離した後、
適温適湿下で４０日間培養して比較駒を得た。

【００３６】得られた比較駒を、実施例１と同様に、５
０個の穴を開けたくぬぎ原木に打ち込んだところ、鍔部
は原木表面に突出した状態となった。この状態で、適温
適湿下に６か月放置したところ、４０個の椎茸しか収穫
することができなかった。また、１回目の椎茸を収穫し
た後、２回目以降は３０個の椎茸を収穫することしかで
きなかった。

【００３７】

【発明の効果】本発明は、以上説明した通りのものであ
り、次の効果を奏するものである。

【００３８】（１）適当な厚みで蝋７を充填するだけで
適切な封止を行うことができ、封止に高度な技術を要し
ないので、駒の製造が容易であると共に、一定の品質の
駒が得られる。

【００３９】（２）原木５に開ける穴は直線的なドリル
孔でよいので、原木５への穴開け作業が容易である。

【００４０】（３）原木に打ち込まれた本駒の周囲に残
されるわずかな隙間は、直線的に外部に開口しており、
外部から水分が浸入しやすいので、小袋１内への水分の
補給が容易である。

【００４１】（４）小袋１内に充填された菌体支持体２
上にはこれと接して蝋７が流し込まれているので、小袋
１内に空間が残ることがなく、小袋１内での雑菌の繁殖
を防止しやすい。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の駒の一実施例を示す一部切欠斜視図で
ある。

【図２】本発明の駒を原木の穴に打ち込んだ状態の断面
図である。

【図３】本発明の駒の製造手順の説明図である。

【図４】従来の駒を示す縦断面図である。

【図５】従来の駒を原木の穴に打ち込んだ状態の断面図
である。

【符号の説明】

１個袋２菌体支持体３鍔部４蓋材５原木６空間７蝋８凹部

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者小倉範房広島県広島市西区高須１丁目７番29号 (72)発明者林義孝徳島県徳島市八万町新貝96番地

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】合成繊維不織布シートのプレス成形によ
って得られた小袋内に、茸菌が植菌された粉粒状の菌体
支持体が充填されており、小袋の開口部が、開口部内に
充填された蝋で封止されていることを特徴とする茸類栽
培用駒。
【請求項２】蝋が和蝋を主成分とするものであること
を特徴とする請求項１の茸類栽培用駒。
【請求項３】蝋の厚みが０．５〜３ｍｍであることを
特徴とする請求項１又は２の茸類栽培用駒。
【請求項４】小袋が、プレス成形温度において１００
％以上の伸度を有し、目付５０〜２５０ｇ／ｍ² 、厚み
０．１〜０．５ｍｍ、単繊維の繊度０．３〜２０デニー
ルの不織布シートのプレス成形品であることを特徴とす
る請求項１ないし３いずれかの茸類栽培用駒。
【請求項５】茸菌が椎茸菌であることを特徴とする請
求項１ないし４いずれかの茸類栽培用駒。