JPH08690B2 - 安定化された合成ゼオライト及びその製造法 - Google Patents

安定化された合成ゼオライト及びその製造法

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JPH08690B2
JPH08690B2 JP4327090A JP4327090A JPH08690B2 JP H08690 B2 JPH08690 B2 JP H08690B2 JP 4327090 A JP4327090 A JP 4327090A JP 4327090 A JP4327090 A JP 4327090A JP H08690 B2 JPH08690 B2 JP H08690B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、水に対して自己崩壊現象のない安定化した
合成ゼオライト及びその製造法に関する。
[従来の技術] ゼオライトは、固有の細孔径、表面電場、イオン交換
能、吸着分離能などを持っており、極めて有用な機能性
材料として注目を集めている。とりわけ合成ゼオライト
は、合成物質の特徴である均質な製品が多量に製造出
来、加えて安定に供給可能なことから広範に利用されて
きている。
合成ゼオライトは一般に、ケイ酸ソーダ、アルシン酸
ソーダ及び苛性ソーダの溶液を混合、熟成し、生成した
ゲルをろ別、水洗及び乾燥して作られている。
[発明が解決しようとする課題] 従来市販されている合成ゼオライトは、製造工程の後
段で水洗されているにも拘らず、これを水に分散すると
分散液が強いアルカリ性を呈する。合成ゼオライトは洗
剤のビルダーとして多量に用いられており、この場合に
は合成ゼオライトがアルカリ性を与えることはむしろ利
点となる。合成ゼオライトは、吸着性、触媒、担体、イ
オン交換材、充填剤などとしても用いられ、これらの分
野のあるものにおいては合成ゼオライトの塩基性は欠点
となる。
後記の実施例で述べるように、本発明者及び国内外の
ゼオライト製造業者が作った合成ゼオライトについて調
べたところ、50g/の合成ゼオライト分散物を37℃で24
時間保持するとpH約10以上となり、分散液中に約8〜40
ppmのアルミニウムの存在が確認された。同様に50g/
の合成ゼオライト分散物を80℃で24時間保持するとpH約
11以上となり、分散液中に約10〜50ppmのアルミニウム
の存在が確認された。合成ゼオライトを改めて多量の水
で洗浄した後に同様に試験しても、やはり分散液は強い
アルカリ性を示すことが判った。そこで合成ゼオライト
を希酸で中和した後に分離、水洗し、同様に水中に分散
すると分散液はやはりアルカリ性であった。調査した合
成ゼオライトは、全てこのように強い塩基性とアルミニ
ウムの溶出を示した。また、ある合成ゼオライトを50g/
の濃度で分散させた液100ml(放置すると24時間後のp
Hが11となる)に対して、1規定塩酸を一滴(0.03ml)
滴下したところ、24時間後のpHは11程度であり、塩酸を
滴下しない場合と同じになった。また、別途に1規定の
苛性ソーダ水溶液の一滴(0.03ml)を上記と同様のゼオ
ライト分散液に滴下した場合も、24時間後のpHは11であ
った。
一方、或る天然ゼオライトを水に分散するとpHは6.8
であり、アルミニウム濃度は検出限界(0.5ppm)以下で
あった。同じゼオライト分散物に1規定塩酸を滴下する
とpHは直ちに5.0になり、24時間後も同じであった、他
方、同じゼオライト分散物に1規定苛性ソーダを滴下す
るとpHは直ちに9.0になり、24時間後も同じであった。
以上の様に、従来の合成ゼオライトは天然ゼオライト
と違って著しいアルカリ性を呈し、合成ゼオライトを慣
用の如く水洗又は中和しても、依然として著しいアルカ
リ性を示す。これは合成ゼオライトが徐々に自己崩壊し
ているか、又は合成ゼオライトの製造時に封じ込められ
たアルカリ性物質が徐々にゼオライトから滲出してくる
ためであると考えられる。しかし天然ゼオライトにおい
ては莫大な時間のうちに、ゼオライトの不安定な構造又
はアルカリ性物質が雨水で洗われるなどして除去されて
しまっているのであろう。
従って本発明は、合成ゼオライトの水及び空気中の湿
気に対する不安定性を解消し、水に分散したときに分散
液がアルカリ性を呈さないところの合成ゼオライトを提
供することを目的とする。
[課題を解決するための手段] 本発明者は、アルミノシリケート等のゲル形成性物質
を融解含有する酸性水性液に合成ゼオライトを浸漬し、
酸を加えて浸漬液のpHを7以下に保持しながら、浸漬液
のpHが一定になるまで浸漬を続け、次に必要なら合成ゼ
オライトを液から分離し、洗浄することなくまたは洗液
のpHが実質的にpH約6.5を越えない条件で洗浄した後に
加熱乾燥することによって、表面が上記ゲル形成物質の
半透性ゲルで覆われ、安定化された合成ゼオライトが得
られることを見出した。
すなわち本発明は、表面が半透性のゲルで覆われた合
成ゼオライトである。
また本発明は、合成ゼオライト50g/の濃度で蒸溜水
中に分散し、少なくとも30℃で24時間保持した後の分散
水のpHが5〜7であることを特徴とする合成ゼオライト
である。
さらに本発明は、アルミノシリケート、ケイ酸、ケイ
酸塩、アルミン酸塩、アルミナ、及び、半透膜の性質を
有するゼラチン、寒天、アルギン酸ソーダ、各種セルロ
ース誘導体を包含する天然高分子、及び、半透膜の性質
に有するPVA誘導体、再生セルロース誘導体、アクリル
酸誘導体、メラミン樹脂誘導体、フェノール樹脂誘導体
を包含する合成高分子より選ばれた一以上の物質を溶解
含有する酸性水性液に合成ゼオライトを浸漬し、浸漬液
のpHを約7以下の所定の値に保つように酸を追加し、も
はや酸を追加しなくてもほぼ一定のpHを少くとも1時間
持続するまで浸漬を持続し、次に合成ゼオライトを洗浄
することなくまたは洗液のpHが実質的にpH約6.5を越え
ない条件で洗浄した後に加熱乾燥することを特徴とす
る、安定化された合成ゼオライトの製造法である。
本発明において、ゲル形成性物質を溶解した酸性溶液
中で酸処理を行うこと、浸漬液のpHが7以下で一定とな
るのを確認すること、及び酸処理後に洗浄することなく
またもし洗浄するのなら洗液のpHが6.5を相当時間に亘
って越えない条件での洗浄を行い、加熱乾燥することが
重要な要件である。ゲル形成性物質を酸性処理液に溶解
させておくことにより、これからゲルの膜がゼオライト
上に生じ、従ってゼオライトが著しく安定化される。ま
た従来のような単なる水洗、単なる中和では本発明の目
的を達成せず、また本発明と同様の浸漬処理をしても、
次に大量の水で洗浄して洗浄液のpHが6.5を越えてから
(特に中性になってから)加熱乾燥したのでは本発明の
目的は達成されない。一方、本発明に従い浸漬処理後に
洗浄を行わずにまたは洗液のpHが6.5を実質上越えない
条件で洗浄し、加熱乾燥を一旦行ったあとでは、合成ゼ
オライトを大量の水で洗浄しても合成ゼオライト分散液
はアルカリ性を呈しない。このことは全く予測されなか
ったことである。
本発明において合成ゼオライトは、総ての合成ゼオラ
イトを包含する。合成ゼオライトは一般には、Al2O3
基準にしてxM2/nO・Al2O3・ySiO2・zH2Oで表わされ
る。Mは1価又は2価の金属、特にナトリウム及びカリ
ウムのようなアルカリ金属であり、nはその原子価であ
る。x,y及びzは夫々、金属酸化物の係数、二酸化ケイ
素の係数及び結晶水の数を示す。合成ゼオライトは、組
成比、細孔径、比表面積などの異る多種のものが知られ
ている。合成ゼオライトの典型的なものとしてA型ゼオ
ライト(SiO2/Al2O3=1.4〜2.4)、X型ゼオライト(Si
O2/Al2O3=2〜3)、Y型ゼオライト(SiO2/Al2O3=3
〜6)、モルデナイト(SiO2/Al2O3=9〜10)などが挙
げられる。
上記式中のMは一般にナトリウム又はカリウムである
が、Mの一部又は全部が鉄、亜鉛、銅、錫、銀、バナジ
ウム、タングステン、ニッケル、モリブデン、アンチモ
ン、クロムなどの重金属、カルシウム、マグネシウム、
リチウム、アルミニウムなどの軽金属、又はアンモニウ
ムイオンにより置換されていてよい。
ここで用いられるゲル形成性無機物質の好ましい例
は、アルミノシリケート、ケイ酸、ケイ酸塩、アルミン
酸塩、及びアルミナ等である。これらは、例えば、ケイ
酸、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ア
ルミニウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸ソーダ、水ガラス
等の各種ケイ酸塩類、アルミン酸ソーダ、アルミン酸カ
ルシウム、アルミン酸マグネシウム等の各種アルミン酸
塩類、ゼオライト、長石、雲母等の各種アルミノシリケ
ート、及びアルミナ等である。ゼオライト及びアルミナ
のような難溶物の場合は、これらを強酸または強アルカ
リ等で加熱するなどの方法で溶かした溶解性成分を使用
する。例えばゼオライトは濃硝酸に溶かし(ゼオライト
はpH2以下の酸に溶ける)て用いれば良い。アルミノシ
リケートを用いる場合、被処理ゼオライトと同種のゼオ
ライトを溶解して用いることが好ましい。また、珪石
粉、珪砂、珪藻、コロイダルシリカ等の天然のケイ素化
合物、含アルミニウム化合物等を使用することもでき
る。これら公知の無機性ゲル形成物質を用いることも可
能である。
同様に、ゲル形成性有機物質の好ましい例として、半
透膜の性質を有するゼラチン、寒天、アルギン酸ソー
ダ、各種セルロース誘導体などの天然高分子、及び、半
透膜の性質を有するPVA誘導体、再生セルロース誘導
体、アクリル酸誘導体、メラミン樹脂誘導体、フェノー
ル樹脂誘導体などの合成高分子等を挙げることができ
る。
上記本発明に有効なゲル形成性物質は単独または併用
して用いることが出来る。
尚、少量の硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム等の無
機多価塩類、シュウ酸ナトリウム、酒石酸ナトリウムカ
リウム等の有機酸塩を併用することによって、安定な合
成ゼオライト粒子を得ることも出来る。
一般に、これらのゲル形成性物質は合成ゼオライト全
体量に対して好ましくは0.001〜100重量%、より好まし
くは0.01〜10重量%、特に0.01〜1重量%の量で存在す
る。
合成ゼオライトを浸漬する酸性水性液は、無機酸及び
/又は有機酸の水性液である。例えば、塩酸、硫酸、硝
酸、燐酸などの無機酸、及び蟻酸、酢酸、シュウ酸、酒
石酸などの有機酸を用いることが出来る。本発明には以
上のように種々の慣用の酸を使用することが出来るが、
中でも弱酸、例えば酢酸、蟻酸、酒石酸、アジピン酸、
炭酸、ホウ酸等が好ましい。ゼオライトを分散させた蒸
溜水に例えば2N硝酸または2N酢酸を少量ずつ添加する
と、硝酸を添加した場合には分散液の増粘及びかなりの
発泡が観察されるが、酢酸を添加した場合には少量の発
泡があるのみであり、しかもゼオライト分散液のpHがほ
ぼ一定になるのが早い。この理由としては、ゼオライト
を分散させた浸漬液に強酸を添加(追加)する場合、撹
拌が不十分だと浸漬液のpHが局部的に低くなり、ゼオラ
イトの一部が急速に侵される(ゼオライトはpH約4以下
で分解する)のに対し、酢酸、蟻酸、炭酸のような弱酸
を使用する場合には浸漬液pHの局部的低下が小さいので
ゼオライトの急激な分解が殆ど起こらないこと、また従
って添加した弱酸がゼオライトの分解に費やされずに穏
やかに本発明の処理を進行させるのであろう。無機酸及
び有機酸を併用することも出来、又2種類以上の無機酸
又は有機酸を混合使用してもよい。溶媒は一般に水であ
り、少量の有機溶媒及び/または界面活性剤を含んでも
よい。浸漬液の当初のpHは7以下、好ましくは4.0〜6.
5、特に4.5〜6.0とし、浸漬処理の進行につれてpHが上
がるので酸(溶液)によりpHを調節する。
浸漬処理法は任意である。たとえば、撹拌機付き容器
に酸性水性液を入れ、アルミノシリケート等のゲル形成
性物質(もしくはそれらを溶解した液)を加える。ゲル
形成性物質(以下、添加物と呼ぶ)を先に酸に溶解し、
これを蒸溜水に加えて浸漬液としても良い。次いで、撹
拌下に合成ゼオライトを徐々に加えて分散させる。その
際に分散液のpHは上昇するので、pH7以下の所定のpHに
維持するよう酸を適宜添加する。アルミノシリケート等
の添加物を溶解した酸性液を添加しても良い。通常、添
加物を浸漬液もしくはゼオライトに予め含ませておく方
法(先添加法)が採用されるが、ゼオライト分散液に添
加物を後から加える後添加法を取ることができる。総て
のゼオライトを分散させた後にも撹拌を続けながら、所
定のpHを維持するよう酸を添加する。もはや酸を加えな
くともpH値がほぼ一定(±0.5、好ましくは±0.3)とな
るのを確認してから浸漬処理を終える。一般に浸漬処理
は、酸を加えなくともpH値がほぼ一定になってから1時
間以上、好ましくは3時間以上続ける。処理時間を長く
すると、製品ゼオライトの安定性がより良くなる。処理
条件を例示すると、合成ゼオライトを最終的に5〜40重
量%の濃度とし、全合成ゼオライト量に対して0.001〜1
0重量%の量の添加物(ゲル形成性物質)と共に、100〜
2000rpmの緩かな撹拌の下で、10〜50℃にて浸漬処理を
行う。合成ゼオライトの濃度を極端に低くし、温度を高
めると、処理時間を短縮できる。撹拌速度は処理時間に
少ししか関係しない。
上記とは逆に、予めゼオライトを水に懸濁し、所定量
の添加物(溶液)を加えた後、これに酸を少しずつ添加
して浸漬処理を行うこともできる。処理pH、時間等は上
記と同様である。
また、合成ゼオライトの浸漬処理を、合成ゼオライト
の製造工程の最終工程として行うこともできる。すなわ
ち、ケイ酸ソーダ、アルミン酸ソーダ及び苛性ソーダの
水溶液から生成したゼオライトゲルを含む反応後のスラ
リーを分別し、生成ゼオライトに酸及びゲル形成性物質
を加えることにより、上述のような浸漬処理を行うこと
ができる。好ましくは、スラリーからゼオライトを分離
し、水洗するという従来の工程を行ったうえで、ゼオラ
イトスラリーを酸性水に添加して浸漬処理を行う。
酸による浸漬処理において重要なことは、通常の中和
処理の如き短時間で終了するのではなく、酸の添加なし
で液pHが少くとも1時間、好ましくは少くとも3時間ほ
ぼ一定となるまで、処理を継続することである。なお、
合成ゼオライトの種類及び製造法によって、任意のpH値
で所定時間一定にならないことがある。そのような場合
には、意図するpH値を種々変更して(一般にはより酸性
側にして)浸漬処理を行えば、酸添加なしで一定pHが達
成できるpH値が見い出される。
上記のように合成ゼオライトを添加物と共に酸性水性
液中に十分な時間浸漬した後、通常、合成ゼオライトを
液から分離する。分離は、ろ過、デカンテーションなど
任意の方法で行うことができる。
分離したゼオライトは、洗浄することなく加熱乾燥に
付される。あるいは、任意的に、洗液のpHが6.5を実質
上越えない条件下で洗浄することも出来る。洗浄操作に
おいて重要なことは、洗液のpHが6.5を実質上越えない
条件下で洗浄を行うことである。ここで“pHが6.5を実
質上越えない”とは、洗液のpHが洗浄終了時に6.5以下
となることを意味するものであり、洗液のpHが短時間6.
5を越えても、本発明が目的とする安定化された合成ゼ
オライトを得ることが出来る。洗浄操作には酸性水性液
を用いることが出来る。酸としては、浸漬処理に使用可
能ないずれの酸をも使用することができる。酸性水性液
のpHは、浸漬時のpHに近似またはそれ以下であることが
好ましいが、より高くなっても良い。少量の水で洗浄す
ることも出来る。浸漬処理時のpH及ひ浸漬液からの分離
方法によっては(例えば低いpHにて浸漬処理を行った場
合、あるいは浸漬液からのゼオライトの分離をデカンテ
ーションにて行った場合には)、浸漬処理時の酸がゼオ
ライト上にかなり残留している。従って洗浄操作に比較
的少量の水を用いて洗浄終了時に洗液のpHが6.5以下と
なり、本発明の目的を達成することが出来る。洗浄操作
自体は、種々の慣用の方法にて行うことが出来る。例え
ば分離した合成ゼオライトを撹拌機付き容器に入れ、洗
液を加えて撹拌、洗浄する。あるいは、分離装置中のゼ
オライトに洗液を注加して洗浄する。洗浄操作は通常、
ゼオライトに対し0.5〜100倍程度の液量の洗液を用い、
室温で行われるが、他の条件下で行うことも可能であ
る。こうした洗浄操作により、浸漬処理時にゼオライト
から生じた不純物の除去等、製品の品質向上がなされ
る。
次に、合成ゼオライトを加熱乾燥する。通常、100℃
以上、好ましくは120℃以上、特に130℃以上で、1時間
以上、好ましくは3時間以上、常圧下で、所望により減
圧下で行う。かかる加熱乾燥により、付着していた酸は
通常揮発してしまう。従って、本発明の合成ゼオライト
を水に分散したときに強い塩基性を示さない理由が、付
着酸によるのではないことが明らかである。本発明に従
い浸漬処理の後に、洗浄を行わずにまたは規定の洗浄操
作を行い、加熱乾燥した場合にのみ、本発明の効果が達
成される。浸漬処理に続いて大量の水で洗浄し、加熱乾
燥したのでは目的が達成されない。一方、本発明に従い
出来上がった合成ゼオライトを、後に大量の水で洗浄し
ても本発明の効果は失われない。
上記の、浸漬−(洗浄)−加熱乾燥の一連の操作を、
複数回繰返してもよい。
本発明の製造方法によって安定な合成ゼオライトが得
られる理由として、合成ゼオライト表面にキセロゲル被
膜の生成することが挙げられる。すなわち、浸漬処理の
間にゾル状物、ゲル状物がゼオライト粒子表面に析出
し、合成ゼオライトの加熱乾燥によりゾル状物が脱水し
てキセロゲル状になる。従来より、ケイ酸塩に酸を加え
るとゾル状のケイ酸が遊離し、このものが凝集してケイ
酸ゲルとなることが知られている。アルミナのゾル状
物、ゲル状物の存在も公知であり、これらのキセロゲル
の内のあるものは乾燥剤、吸着剤として市販されてい
る。一旦、キセロゲル膜が形成されると、これは水洗に
よっても脱落しない。しかし、加熱乾燥する前のゾル状
物は弱いので、中性及びアルカリ性雰囲気下で水洗する
と脱落するのであろう。
酸性浸漬液による長時間の浸漬処理を必要とする理由
は明瞭ではないが、この操作により、ゾル状膜が均質な
ものになると考えられる。すなわち、酸によってゼオラ
イト結晶構造の欠陥箇所からケイ素及びアルミニウム原
子団が脱落し、また、ゼオライト内部に封じ込まれらた
ゼオライト原料物質が溶出して、これらが外部から添加
されたゾル状物と一体化する。このようなゾル成分のゆ
っくりとした形成によってゾル状膜はより緻密になり、
欠陥のない被膜が出来るのであろう。この処理を行わな
いものでは、出来上った合成ゼオライトの安定性は劣
る。
本発明の合成ゼオライトを水に分散したときにキセロ
ゲル膜はいわゆる半透膜として働き、ゼオライトからア
ルミニウム及びケイ素の原子団などが水中に出てゆくの
を防ぐと考えられる。本発明の合成ゼオライトを固液比
1:100において酸性水(塩酸、pH2〜3)及びアルカリ性
水(水酸化ナトリウム、pH10〜11)に分散すると、いず
れの場合でも分散水は同じpH、たとえばpH6.8になり、
しかも合成ゼオライトは崩壊せず、分散水中にアルミニ
ウムイオンは検出されない。
以上のように本発明の合成ゼオライトは水中で極めて
安定である。本発明の合成ゼオライトを50g/の濃度で
蒸留水中に分散し、30〜40℃で24時間、好ましくは72時
間保持した後に、分散水のpHは5〜7、好ましくは6.0
〜6.8の範囲に留る。特に、ゲル形成性物質として被処
理ゼオライトと同種のゼオライト、またはセルロース誘
導体、アクリル酸誘導体のような高分子を用いて浸漬処
理を行った場合には、得られた合成ゼオライトを同様に
50g/の濃度で蒸留水中に分散し、液温を80℃として24
時間、好ましくは72時間保持した後にも、分散水のpH5
〜7、好ましくは6.0〜6.8の範囲に留る。
本発明の合成ゼオライトが安定であることは、実施例
で説明するように分散水中にアルミニウムイオンが検出
されないことからも確認される。従来の合成ゼオライト
の場合には、分散水のpHは24時間後に強いアルカリ性と
なり、アルミニウムイオンが検出される。
なお、特開昭59−203723号公報に、ゼオライトに海水
中のミネラル成分を担持させ、かつ平衡pHが10.5以下に
調整されている改質ゼオライトが記載され、平衡pHは好
ましくは9.5〜4.5とされ、実施例に平衡pH6.5の物が記
載されている。しかし、そこでの平衡pHとは5g/100mlの
水性スラリーの僅か30分間後のpH値である。本発明者が
見い出したところによると、30分間では平衡pHには達し
ない。たとえば従来の合成ゼオライトをpH2.5の塩酸で
中和したゼオライトを水に分散すると、分散水のpHは1
時間後には6.5であるが24時間後には8.9まで著しく上昇
する。従って、上記公報における「平衡pH」のゼオライ
トは本願発明を示唆していない。また上記公報における
ゼオライトの酸処理は、単に「中和処理」とのみ記載さ
れているので、本発明方法のように長時間の処理を示唆
していない。従来の合成ゼオライトを酸で中和すると、
見かけ上はすみやかに中和されるが、たとえこれを水洗
せずに乾燥したとしても、水に再び分散するとアルカリ
性を呈する。
本発明の合成ゼオライトは安定な中性乃至微弱酸性を
維持し、湿潤的にもpHが高まることなく安定である。そ
れ故に、体粘膜や皮膚等に接触しても低刺激性を示し、
副作用を呈することがない。従って、医薬、医療、化粧
品及び食品関係の原料、用材に使用できる。各種有機材
料、無機材料中に混入混合化した際にも、長期に亘って
構造が安定であるので、材料の物性や性状の劣化原因と
はならない。又、用途に応じてイオン交換して変性され
たすべての従来の合成ゼオライトにも本発明は適用され
る。本発明の合成ゼオライトは多くの場合、従来の合成
ゼオライトと事実上同一の機能を有し、例えば、乾燥
剤、吸着剤、イオン交換剤、各種添加剤、或は触媒、分
子フルイなどの成分分離、水処理用造粒体、担体などと
して使用できる。また、本発明の合成ゼオライトを各種
の造粒装置で造粒体として成型させても、その機能に変
化はない。
本発明の合成ゼオライトを有機高分子体に混合して用
いる場合について特に説明する。ゼオライトに抗菌性金
属イオンを担持させ、これと高分子体とを混合し、成形
する技術が知られている(特開昭59−133235号公報)。
本発明の合成ゼオライトは中性乃至微弱酸性であるの
で、高分子体の劣化をもたらすことがない。高分子体
は、たとえば合成又は半合成の有機高分子体であり、特
にポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ
塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニ
ルアルコール、ポリカーボネート、ポリアセタール、AB
S樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタンエラ
ストマー、ポリエステルエラストマーなどの熱可塑性合
成高分子、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹
脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン
樹脂などの熱硬化性合成高分子、レーヨン、キュプラ、
アセテート、トリアセテートなどの再生又は半合成高分
子などが挙げられる。合成ゼオライトを高分子体に混入
することにより、(変性)ゼオライトの機能、たとえば
吸着、乾燥、抗菌などの性質を持つ高分子成形体(塗装
及び接着剤を含め)を得ることができる。さらに、塗
料、接着剤等、pHの安定性を要求される工業資材の添加
剤として用いることもできる。合成ゼオライトを0.01重
量%以上含有する高分子成形体においては、本発明の合
成ゼオライトを用いた場合と、従来の通常の合成ゼオラ
イトを用いた場合との差異が特に顕著である。
[実 施 例] 以下で実施例により本発明を更に説明する。
実施例で用いた原料の合成ゼオライトを第1表に示
す。各合成ゼオライトは必要に応じて粉砕及び分級し
て、所望の粒子径とした。表中の含水率は、105℃で乾
燥した物の含水率である。
以下において、ゼオライトを分散した水のpH(簡単の
ためにゼオライトのpHと云うことがある)は次のように
して測定した。合成ゼオライトを常圧、105℃で2時間
乾燥し、室温に冷却後に蒸留水に50g/の濃度で分散
し、80℃(実施例1〜5、実施例8、対照例1、及び比
較例1)または37℃(実施例6〜8、対照例2、及び比
較例2)で24時間500rpmで撹拌した後、室温に放冷し、
保証電極を使用して20℃で測定した。
アルミニウムの溶出の測定は、上記の如く50g/の分
散物を80℃(実施例1〜5、実施例8、対照例1、及び
比較例1)又は37℃(実施例6〜8、対照例2、及び比
較例2)で24時間500rpmで撹拌した後に、室温にて放
冷、72時間静置し、液を0.45ミクロンメンブランフィル
ターに通過させて得た分取液について原子吸光分析方法
〔島津製作所製AA−640−13型〕で求めた。検出限界は
0.5ppmである。
対照例 1 上記の合成ゼオライト(1)〜(8)について、pH及
びアルミニウム溶出濃度を調べた。結果を第2表に示
す。
実施例 1 上記の8種の合成ゼオライト粒子それぞれを溶解して
酸性処理液に加え、対応する合成ゼオライトを浸漬処理
して本発明の合成ゼオライトを製造した。
10%硝酸水溶液を入れた酸添加装置を備えた容量2
の撹拌装置付反応槽に、イオン交換水1を入れた。一
方で、合成ゼオライト1gに対して3〜8gの濃硝酸を加
え、必要に応じて加熱して、粘凋なゼオライト溶液を調
製した。上記イオン交換水に該合成ゼオライト溶液を加
えた後、温度30℃、撹拌速度500rpmで撹拌しながら合成
ゼオライト固体粒子100gを徐々に添加して分散させた。
その間反応槽内分散液のpHは上昇するのでpH 5.5±0.3
以内を保持すべく酸添加装置より酸を継続的に添加して
反応槽内のpHをコントロールし続けた。約20分で合成ゼ
オライト粒子の添加を完結させた後、更に0.5時間酸を
加えながらpHをコントロールした。次に酸を加えなくと
もpH=5.5以下の領域に留ることを1時間確認してから
処理を終了した。この処理において、酸に溶解して加え
たゼオライトは、浸漬液に分散させたそれぞれの合成ゼ
オライトと同一のものである。
次にブッフナーろ過装置を使用して固液分離した後、
合成ゼオライトを水洗することなく130℃で4時間乾燥
して水分を除去し、次いで局方乳鉢を用いて適度に粉砕
して製品とした。
得た本発明の合成ゼオライトを蒸留水に分散させてpH
及びアルミニウム溶出濃度を測定した。結果は第3表の
通りであって、水に対する安定性はすべて極めて良好で
あった。
ここで得られた本発明に従う合成ゼオライト(5)の
電子顕微鏡写真図(2000倍)を第1図に示す。比較のた
めに、本発明に従う処理を施す前の合成ゼオライト
(5)の電子顕微鏡写真図(2000倍)を第2図に示す。
本発明に従う合成ゼオライトの表面が覆われているのが
明らかである。また、合成ゼオライト(5)の上記の濃
硝酸溶液をスライドグラスに塗布し、乾燥させたものの
電子顕微鏡写真図(2000倍)を第3図に示す。
実施例 2 通常の合成ゼオライト(4),(7)及び(8)を用
いて、本発明の合成ゼオライトを製造した。反応装置は
実施例1と同一のものを使用した。但し、使用した酸は
10%酢酸水溶液であった。
反応槽に1のイオン交換水を用意した。別途に、合
成ゼオライト0.2gに濃硝酸約1gを加えて温め、粘凋な合
成ゼオライト溶液を調製した。この合成ゼオライト溶液
を少量の水と共に添加し、次に温度25℃、撹拌速度500r
pmで撹拌しながら対応する合成ゼオライト粒子100gを徐
々に加えて分散させた。
その間反応槽内分散液のpHは上昇するので、pH6.3±
0.3以内を保持すべく酸を継続的に添加して反応槽内のp
Hをコントロールし続けた。約20分間で合成ゼオライト
の添加を終え、更に7時間酸を加えながらpHをコントロ
ールした。次に酸を加えなくともpH=6.3±0.3領域で留
まることを1時間確認後に処理を終了した。
ブッフナーろ過装置を使用して固液分離させた後、合
成ゼオライトを水洗することなく130℃で4時間乾燥し
て水分を除去し、次いで局方乳鉢を用いて適度に粉砕し
て製品とした。
取得した本発明の合成ゼオライト製品を蒸溜水に分散
させてpH及びアルミニウムの溶出濃度を測定した。結果
は第4表の通りであって、水に対する安定性は極めて良
好であった。
比較例 1 実施例2で用いた合成ゼオライト(4),(7)及び
(8)を用いて以下の方法で水洗処理又は中和処理を実
施した。
水洗処理 合成ゼオライト粒子100gを1のイオン交換水に加
え、充分に撹拌分散の後、ブッフナーろ過装置を使用し
て固液分離した。更にろ過装置の上部より3のイオン
交換水を注意深く数回に分割して注入し、ろ液のpHがほ
ぼ7であることを確認した。水洗を終えたゼオライト粒
子を取り出して130℃で4時間乾燥し、適度に粉砕し
た。
中和処理 合成ゼオライト粒子100gを1のイオン交換水に加
え、充分に撹拌分散した後、ブッフナーろ過装置を使用
してろ過した。次いで希硝酸を注意深く注ぎ入れ中和し
た。約5分後に中和水のpHがほぼ6.5であることを確認
してから中和を停止し、中和後のゼオライト粒子を取り
出して130℃で4時間乾燥し、適度に粉砕した。
得たゼオライトを蒸留水に分散させて、pH及びアルミ
ニウムの溶出濃度を測定した。結果は第5表の如くであ
った。第2表と比べると、pH値は殆ど改善されていず、
不安定である。そしてその結果と考えられるがアルミニ
ウムの溶出も殆んど処理前と変らぬレベルであり、自己
崩壊と認められる状況であった。即ち、水洗又は中和に
よりpHを7前後としたにも拘らず、のちに水中に分散さ
せた時点で、pHが10近くになってしまった。
実施例 3 合成ゼオライト粒子(1)に銀イオンをイオン交換に
より与え、このゼオライト−Agを使用して本発明の合成
ゼオライトを製造した。反応装置は実施例1と同一のも
のを使用した。但し、反応槽に硝酸銀添加装置を更に付
設した。
A型−ゼオライト(1)200gを反応槽に入れ、この中
に添加装置より0.5%硝酸銀水溶液1を添加した後、
温度30℃、撹拌速度500rpmで5時間撹拌混合させてイオ
ン交換反応を行ない、銀でイオン交換したゼオライトを
形成させた。次に、ろ過、水洗して過剰の硝酸銀を取り
去ると同時にpHが中和されたことを確認し、乾燥、粉砕
した。
上記、ゼオライト−Agのほぼ1/2に相当する100gにつ
いて本発明の方法を適用した。同一の反応槽にイオン交
換水1を用意し、合成ゼオライト(1)0.1gを少量の
濃硝酸に溶かして作った溶液を少量の水と共に加えた
後、30℃で500rpmで撹拌しながらゼオライト−Ag 100 g
を徐々に添加して分散させた。
その間に分散液のpHは上昇するがpH6.0±0.3以内を保
持すべく酸を継続的に添加して反応槽内をpHをコントロ
ールし続けた。約20分間で分散を終えた後、更に3時間
酸を加えながらpHをコントロールした。次に酸を加えな
くともpH=6.0±0.3領域で留ることを1時間確認してか
ら反応を終了した。
ブッフナーろ過装置を使用して固液分離した後、ゼオ
ライト−Agを水洗することなく130℃で4時間乾燥して
水分を除去し、次に局方乳鉢を用いて適度に粉砕して製
品とした。
取得した本発明の合成ゼオライト−Ag及び酸浸漬前の
それについてpH及びアルミニウムの溶出濃度を測定し
た。結果は第6表の通りであった。
水に対する安定性の差は両者間で顕著である。本発明
のゼオライト−AgではpHが中性で安定しており、アルミ
ニウムの溶出がなく、自己崩壊を認ない極めて安定な製
品であった。
実施例 4 通常の合成ゼオライト粒子を製造する過程に本発明の
方法を組入れて本発明の合成ゼオライトを製造した。反
応装置は実施例3と同一のものを用いた。ゼオライトの
原料はすべて和光純薬工業株式会社の市販品であった。
10%アルミン酸ソーダ水溶液1を反応槽の中に入
れ、温度60℃、撹拌速度1000rpmで撹拌しながら添加装
置により10%ケイ酸ソーダ水溶液0.9を徐々に1時間
にわたって注入した。その間温度及び撹拌速度はこの条
件を保持し続け、添加完結後も引き続き1時間この状態
を継続させた。その後反応槽の温度を85℃に昇温すると
同時に撹拌速度を500rpmに降下させ、8時間熟成反応を
実施して合成ゼオライト粒子を形成せしめた。冷却後に
反応槽から合成ゼオライトを取り出す訳であるが、反応
物を含む分散液の全量約1.9を2分割して、一方を
(A)通常の方法で処理し、他の一方を(B)本発明の
方法で処置した。即ち、(A)ではブッフナーろ過装置
を使用して固液分離し、多量のイオン交換水を分注して
充分に水洗を施すことにより未反応物質を除去すると共
に過剰の洗浄を行って、ろ過液がほぼ中和となったこと
を確認後に水洗を停止した。そして130℃で4時間乾燥
し、適度に粉砕して製品とした。一方、(B)では、ブ
ッフナーろ過装置を使用して固液分離し、装置上部より
水洗水を加えて未反応物質を除去した。次いでろ過固相
部を少量のイオン交換水でスラリー状とさせてから、イ
オン交換水1、及び合成ゼオライトを酸に溶かした液
(処理(A)で入手した通常の合成ゼオライト0.5gの少
量の濃硝酸で加熱溶解したもの)を加え、この中に処理
(B)用の合成ゼオライトスラリーを徐々に添加して、
本発明の操作を実施した。反応条件は10%硝酸使用、常
温、撹拌速度500rpm、保持pH5.5±0.3とし、ゼオライト
の添加終了後も更に2時間酸を加えながらpHをコントロ
ールし、次いで酸を加えなくても該pHに留ることを1時
間確認した。次にフッフナーろ過装置を使用して固液分
離し、水洗せずに130℃で4時間乾燥し、次に適度に粉
砕した。
得たゼオライトのpH及びアルミニウムの溶出濃度を測
定した。結果は第7表の通りであった。
本発明の製品は水に対する安定性が際だって優れてい
ることが明らかである。
実施例 5 本実施例は、ゼオライドの酸浸漬処理後の洗浄方法
が、本発明にとって重要であることを示すものである。
合成ゼオライド粒子(1),(2)及び(3)から本発
明の合成ゼオライドを以下の方法で製造した。
5%リン酸水溶液を入れた酸添加装置を備えた容量2
の撹拌装置付反応槽にイオン交換水1を入れた。別
途に、各合成ゼオライト0.5gを濃硝酸約5gに加熱溶解さ
せ、この溶液を少量の水と共に注入した後、温度30℃、
撹拌速度500rpmで夫々対応する合成ゼオライト粒子100
gを徐々に添加して分散させた。その間、反応槽内分散
液のpHは上昇するので、pH5.0±0.3以内を保持すべく酸
添加装置より酸を継続的に添加して反応槽内のpHをコン
トロールし続けた。約30分で合成ゼオライト固体粒子の
添加を完結させた後、更に2時間酸を加えながらpHをコ
ントロールした。次にpH=5.0±0.3の領域に留ることを
1時間確認し処理を終了した。
ブッフナーろ過装置を使用して固液分離した後、220
℃で3時間乾燥して水分を除去し、次いで局方乳鉢を用
いて適度に粉砕して製品とした。
もう一つの実施例として、ブッフナーろ過装置によっ
てゼオライトを分離した後に、pH 3.8の酢酸水溶液3.0
を上から徐々に注加して洗浄(洗浄処理における洗液
の最後の1のpHは約5であった)した以外は、上記と
同じ処理を行った。
さらに、比較例として、イオン交換水3.0をろ過装
置上から徐々に注加して水洗した以外は上記二つと同じ
処理を行った。
得られた合成ゼオライトの夫々について、pH及びアル
ミニウム溶出濃度を測定した。結果を第8表に示す。水
洗を行った比較例としての合成ゼオライトは、水に対し
て不安定であり、一方、本発明の合成ゼオライトは安定
であることが明らかである。
対照例 2 表1に示した合成ゼオライト(1)〜(8)につい
て、pH及びアルミニウム溶出濃度を調べた。結果を第9
表に示す。
実施例 6 上記の8種の合成ゼオライト粒子から、本発明の合成
ゼオライトを以下の方法で製造した。
10%硝酸水溶液を入れた酸添加装置を備えた容量2
の撹拌装置付反応槽(実施例1と同一の反応装置)に、
イオン交換水1を入れた。イオン交換水の初発pHを4
に調整した。別途に、添加剤としての水ガラス(ケイ酸
としての含量35〜38%)5gをイオン交換水100mlに溶解
し、これに合成ゼオライト100gを加えた分散水を用意し
た。上記反応槽のイオン交換水を、温度30℃、撹拌速度
500rpmで撹拌しながら上記合成ゼオライト分散物を徐々
に添加して分散させた。その間に反応槽内分散液のpHは
上昇するのでpH5.0±0.3以内を保持すべく酸添加装置よ
り酸を継続的に添加して保持すべく酸添加装置より酸を
継続的に添加して反応槽内のpHをコントロールし続け
た。約20分で合成ゼオライト粒子の添加を完結させた
後、更に2時間pH=5.0±0.3の領域に保持し、次に酸を
加えなくともpHが一定であることを1時間確認してから
処理を終了した。次にブッフナーろ過装置を使用して固
液分離した後、合成ゼオライトを水洗することなく130
℃で4時間乾燥して水分を除去し、次いで局方乳鉢を用
いて適度に粉砕して製品とした。
得た本発明の合成ゼオライトを蒸留水に分散させてpH
及びアルミニウム溶出濃度を測定した。結果を第10表の
通りであって、水に対する安定性はすべて極めて良好で
あった。
本実施例で得られた合成ゼオライト(5)の電子顕微
鏡写真図(20000倍)を第4図に示す。本発明に従う処
理を施す前の合成ゼオライト(5)の電子顕微鏡写真図
(図2、20000倍)と比較すると、本発明に従う合成ゼ
オライトの表面が覆われているのが明らかである。
実施例 7 通常の合成ゼオライト(4),(7)及び(8)を用
いて、本発明の合成ゼオライトを製造した。反応装置は
実施例1、及び実施例6と同一のものを使用した。但
し、使用した酸は10%酢酸水溶液であった。
1のイオン交換水を反応槽に入れ、イオン交換水の
初発pHを5に調整した。別途に、添加剤としてのアルミ
ン酸ソーダ3gをイオン交換水100mlに溶解し、これに合
成ゼオライト100gを加えた分散物を用意した。上記反応
槽のイオン交換水を、温度35℃、撹拌速度500rpmで撹拌
しながら上記合成ゼオライト分散物を徐々に添加して分
散させた。
その間反応槽内分散液のpHは上昇するので、pH6.0±
0.3以内を保持すべく酸を継続的に添加して反応槽内のp
Hをコントロールし続けた。約20分間で合成ゼオライト
の添加を終えた後、酒石酸ナトリウムカリウム0.5gを少
量の水で溶かした溶液を加えた。更に8時間酸を加えな
がらpHを6.0±0.3にコントロールした後、酸を加えなく
ともpHがほぼ一定となることを2時間確認して処理を終
了した。
ブッフナーろ過装置を使用して固液分離させた後、合
成ゼオライトを水洗することなく150℃で3時間乾燥し
て水分を除去し、次いで局方乳鉢を用いて適度に粉砕し
て製品とした。
取得した本発明の合成ゼオライト製品を蒸溜水に分散
させてpH及びアルミニウムの溶出濃度を測定した。結果
は第11表の通りであって、水に対する安定性は極めて良
好であった。
比較例 2 比較例1で得たゼオライトを蒸留水に分散させて、37
℃でpH及びアルミニウムの溶出濃度を測定した。結果は
第12表の如くであった。第9表と比べると、pH値は殆ん
ど改善されていず、不安定である。そしてその結果と考
えられるアルミニウムの溶出も殆んど処理前と変らぬレ
ベルであり、自己崩壊と認められる状況であった。即
ち、水洗又は中和によりpHを7前後としたにも拘らず、
のちに水中に分散させた時点で、pHが10近くになってし
まった。
実施例8 通常の合成ゼオライト(5)を用い、次の各条件
(A)カルボキシルメチルセルロースナトリウム(CMC
−Naと略す)2gをイオン交換水100mlに溶解したものを
添加物として使用 (B)ポリアクリル酸ナトリウム(重合度2700〜7500、
以下PA−Naと略す)2gをイオン交換水100mlに溶解した
ものを添加物として使用 (C)添加物使用せず それぞれにおいて下記の操作を行い、本発明の合成ゼ
オライト、及び対照例として添加物を加えずに酸処理の
みを施した合成ゼオライトを製造した。反応装置は実施
例1と同じものを使用した。また、酸として10%硝酸水
溶液を使用した。
1のイオン交換水を反応槽に入れ、イオン交換水の
初発pH5に調製した。合成ゼオライト100gを上記の添加
物の溶液に分散させたもの(または合成ゼオライトその
もの)を、上記反応槽に温度35℃、撹拌速度500rpmでの
撹拌下、徐々に添加した。
その間反応槽内分散液のpHは上昇するので、pH5.5±
0.3以内を保持すべく酸を継続的に添加して反応槽内のp
Hをコントロールし続けた。約20分間で合成ゼオライト
(分散液)の添加を終え、更に2時間酸を加えながらpH
を5.5±0.3にコントロールした後、酸を加えなくともpH
がほぼ一定となることを2時間確認して処理を終了し
た。
ブッフナー濾過装置を使用して固液分離させた後、合
成ゼオライトを水洗することなく120℃で4時間乾燥し
て水分を除去し、次いで局方乳鉢を用いて適度に粉砕し
て製品とした。
得られた合成ゼオライトを蒸溜水中に分散させ、37
℃、及び80℃にて実施例1と同様の操作により、pH及び
アルミニウムの溶出濃度を測定した。結果は第13表(37
℃の分散液に関する数値)、及び第14表(80℃の分散液
に関する数値)の通りである。37℃では各合成ゼオライ
トの水に対する安定性は全て極めて良好である。80℃に
おいては、本発明に従う製品は依然として安定である
が、対象例とした添加剤なしの製品ではpHがやや高く、
アルミニウムの溶出が確認された(但し、酸処理をして
いないものよりは安定である:第2表参照)。
本実施例で、添加物としてCMC−Na及びPA−Naを用い
て得られた合成ゼオライト(5)の電子顕微鏡写真図
(20000倍)をそれぞれ第5図及び第6図に示す。本発
明に従う処理を施す前の合成ゼオライトの電子顕微鏡写
真図(第2図、20000倍)と比較すると、本発明に従う
合成ゼオライトの表面が覆われていることが明らかであ
る。
【図面の簡単な説明】 第1図〜第6図は、ゼオライト粒子の構造を示す電子顕
微鏡写真である。うち、第2図及び第3図は比較のため
のものである。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】表面が半透性のゲルで覆われた合成ゼオラ
    イト。
  2. 【請求項2】ゲルが、アルミノシリケート、ケイ酸、ケ
    イ酸塩、アルミン酸塩、及びアルミナより選ばれた一以
    上の物質から作られたゲルであることを特徴とする第1
    項記載の合成ゼオライト。
  3. 【請求項3】ゲルが、半透膜の性質を有するゼラチン、
    寒天、アルギン酸ソーダ、各種セルロース誘導体を包含
    する天然高分子、及び、半透膜の性質を有するPVA誘導
    体、再生セルロース誘導体、アクリル酸誘導体、メラミ
    ン樹脂誘導体、フェノール樹脂誘導体を含有する合成高
    分子より選ばれた一以上の物質から作られたゲルである
    ことを特徴とする第1項記載の合成ゼオライト。
  4. 【請求項4】合成ゼオライト50g/の濃度で蒸溜水中に
    分散し、30〜40℃で24時間保持した後の分散水のpHが5
    〜7であることを特徴とする第1項記載の合成ゼオライ
    ト。
  5. 【請求項5】合成ゼオライトを50g/の濃度で蒸溜水中
    に分散し、80℃で24時間保持した後の分散水のpHが5〜
    7であることを特徴とする第1項記載の合成ゼオライ
    ト。
  6. 【請求項6】アルミノシリケート、ケイ酸、ケイ酸塩、
    アルミン酸塩、アルミナ、及び、半透膜の性質を有する
    ゼラチン、寒天、アルギン酸ソーダ、各種セルロース誘
    導体を包含する天然高分子、及び、半透膜の性質を有す
    るPVA誘導体、再生セルロース誘導体、アクリル酸誘導
    体、メラミン樹脂誘導体、フェノール樹脂誘導体を包含
    する合成高分子より選ばれた一以上の物質を溶解含有す
    る酸性水性液に合成ゼオライトを浸漬し、浸漬液のpHを
    約7以下の所定の値に保つように酸を追加し、もはや酸
    を追加しなくてもほぼ一定のpHを少くとも1時間持続す
    るまで浸漬を持続し、次に合成ゼオライトを洗浄するこ
    となくまたは洗液のpHが実質的にpH約6.5を越えない条
    件で洗浄した後に加熱乾燥することを特徴とする、安定
    化された合成ゼオライトの製造法。
  7. 【請求項7】pH約6.5以下の酸性水性液または少量の水
    で洗浄する請求項第6項記載の方法。
  8. 【請求項8】浸漬処理時において酸として弱酸を使用す
    ることを特徴とする、請求項第6項記載の方法。
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