JPH0853501A - アセチル化ヒアルロン酸の製造方法及び精製方法 - Google Patents

アセチル化ヒアルロン酸の製造方法及び精製方法

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Abstract

(57)【要約】 【構成】 粉末状ヒアルロン酸を無水酢酸溶媒液に懸濁
し、さらに濃硫酸を加えてアセチル化することを特徴と
するアセチル化ヒアルロン酸の製造方法及び粗アセチル
化ヒアルロン酸をアセトン水溶液に添加し、乳酸ナトリ
ウムを加えて溶解させ、さらに高濃度アセトンを加えて
高純度アセチル化ヒアルロン酸を沈殿させて得ることを
特徴とするアセチル化ヒアルロン酸の精製方法。 【効果】 安価に高純度のアセチル化ヒアルロン酸を得
ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はアセチル化ヒアルロン酸
の製造方法及び精製方法、特にヒアルロン酸のアルコー
ル性水酸基にアセチル基を高率で結合させたアセチル化
ヒアルロン酸の製造方法、精製方法の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】ヒアルロン酸は生体由来の高分子物質で
あり、高い増粘性、粘張性、曳糸性等の特異的な物性を
有しており、しかも生体適合性が高いことから各種分野
での応用が期待されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ヒアル
ロン酸は強水溶性であり、このため有機溶媒系での増粘
剤、油性基剤中での各種乳化安定剤、リポソームの被覆
強化剤、生体への埋め込み基剤、カプセル基剤等への用
途が期待されていながら、充分な応用が出来ないもので
あった(特開平3−143540、特開昭54−363
88等参照)。
【0004】一方、例えば特開平3−143540号公
報には、ヒアルロン酸の繰り返し単位にアセチル基等の
アシル基を導入した乳化安定剤が示されている。しかし
ながら、このヒアルロン酸誘導体は修飾率が極めて低
く、アシル基/N−アセチル基の比率が数分の1以下で
ある。すなわち、数個ないし数十個の繰り返し単位に一
つのアシル基が導入されているのみであり、このような
修飾率では、パルミトイル基等の高油性アシル基を導入
しなければ乳化剤としての機能を事実上奏することは出
来ず、しかも前記ピリジン系を用いるため、修飾率を高
くしようとすればヒアルロン酸の分解等を生じてしま
う。
【0005】そこで、本発明者らは以前に特開平6−9
707号に示すようなアセチル化ヒアルロン酸の製造方
法を提案している。この製造方法は温和な条件で高アセ
チル化率を得られる点で極めて優れた方法であるが、他
方で高価な薬剤を使用するため、より簡便で安価なアセ
チル化ヒアルロン酸の製造方法が求められていた。本発
明は前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、そ
の目的はヒアルロン酸の本来有する機能を保持し、各種
特異な物性を有するアセチル化ヒアルロン酸の安価な製
造方法及び精製方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に本発明者が鋭意検討した結果、無水酢酸及び濃硫酸の
存在下でヒアルロン酸を反応させることにより、安価に
アセチル化ヒアルロン酸を製造できることを見出し、本
発明を完成するに至った。
【0007】すなわち、本出願にかかるアセチル化ヒア
ルロン酸の製造方法は、粉末状ヒアルロン酸を無水酢酸
溶媒に懸濁し、さらに濃硫酸を加えてアセチル化するこ
とにより下記化2に示すアセチル化ヒアルロン酸を得る
ことを特徴とする。
【化2】 前記方法において、無水酢酸溶媒には酢酸が混合され、
酢酸:無水酸酸の混合比は1:4〜1:1であることが
好適である。この場合、アセチル化率の高い高度アセチ
ル化ヒアルロン酸が得られる。また、無水酢酸溶媒には
酢酸が混合され、酢酸:無水酸酸の混合比は2:1〜
4:1であることが好適である。この場合、アセチル化
の進行が緩和となり、アセチル化率の微調整が容易であ
る。また、溶媒に対し濃硫酸は2〜7容量%添加させる
ことが好適である。
【0008】一方、本発明にかかるアセチル化ヒアルロ
ン酸の精製方法は、粗アセチル化ヒアルロン酸をアセト
ン水溶液に添加し、乳酸ナトリウムを加えて溶解させ、
さらに高濃度アセトンを加えて高純度アセチル化ヒアル
ロン酸を得ることを特徴とする。
【0009】なお、前記乳酸ナトリウムはアセトン水溶
液に対し、1〜3重量%添加されることが好適である。
また、前記製造方法により得られた粗アセチル化ヒアル
ロン酸に対して、前記精製方法を適用することが好適で
ある。
【0010】本発明において、ヒアルロン酸とは、ヒア
ルロン酸及びヒアルロン酸塩を意味し、各種分子量のも
のを用いることができる。又、本発明にかかるアセチル
化ヒアルロン酸の製造方法において、ヒアルロニダーゼ
等の酵素処理により、オリゴヒアルロン酸から分子量1
0,000kd以上におよぶ広範囲の高アセチル化率ヒ
アルロン酸を得ることができ、又エステル化反応時間を
変えることにより修飾化率を大幅に変更することができ
る。
【0011】また、本発明にかかるヒアルロン酸精製方
法において、乳酸ナトリウムはその塩析効果によりアセ
チル化ヒアルロン酸を析出させる目的で添加される。す
なわち、例えばアセチル化ヒアルロン酸の溶解可能な8
0%アセトン水溶液に予め乳酸ナトリウムを溶解させて
おく。さらにアセトンを添加してアセトン%を92%ま
で上昇させると、前記アセチル化ヒアルロン酸の溶解度
が急激に減少してアセチル化ヒアルロン酸がゲル状沈殿
として析出する。この塩析に利用する塩類に関して、酢
酸ナトリウム、クエン酸3ナトリウム、グルタミン酸ナ
トリウム、塩化ナトリウム、ピロリドンカルボン酸ナト
リウム、酒石酸ナトリウム、グリシン、硫酸マグネシウ
ム、塩化カリウムを検討した結果、酢酸ナトリウムには
多少の塩析効果が認められたが、他の物にはほとんど効
果が認められず、一方で乳酸ナトリウムには極めて良好
な効果が認められた。
【0012】本発明にかかる精製方法は、本発明にかか
る製造方法で製造したアセチル化ヒアルロン酸独自の溶
媒溶解性を利用したものであり、特に本発明にかかる製
造方法及び精製方法を組合せることにより、高純度のア
セチル化ヒアルロン酸を収率よく得ることができる。
【0013】乳酸ナトリウムの添加量に関しては、増量
によりアセチル化ヒアルロン酸の回収率は向上するが、
その後の工程であるエタノールによる乳酸ナトリウムの
除去が困難となる場合がある。このため、アセトン%上
昇によりアセチル化ヒアルロン酸をゲル状沈殿として析
出させる際のアセトンの添加量をコントロールして、ア
セチル化ヒアルロン酸の回収率が高く且つ乳酸ナトリウ
ムの残存率が低くなるような必要最小限の乳酸ナトリウ
ムの添加量を検討した結果、アセトン水溶液に対し1〜
3重量%添加することを決定したのである。
【0014】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づき説明する。
尚、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。実施例1 アセチル化ヒアルロン酸の製造方法 300ml容のガラス製三角コルベンに20mlの市販の特
級酢酸及び80mlの無水酢酸を入れ、6gのバイオヒア
ロ12(分子量約1200kdのヒアルロン酸,資生堂
(株)製)の微細粉末を攪拌しながら少しずつ加える。
続いて、4mlの濃硫酸をゆっくり加え、室温で1時間攪
拌してアセチル化反応を行なわせる。反応液は粘稠な白
色液体となる。ここで得られたアセチル化ヒアルロン酸
の置換度を測定した結果、3置換体であることが判明
し、これを基に収率を計算した結果、88.8%であっ
た。実施例2 アセチル化ヒアルロン酸の精製方法 3lのガラス製ビーカーに、あらかじめ2lの精製水を
入れておき、攪拌しながら上記反応液を糸状となるよう
にゆっくり加える。生じたアセチル化ヒアルロン酸の沈
殿を分取し、沈殿はさらに2lの精製水で2回同様に洗
浄する。上記沈殿を1lのガラス製ビーカーに移し、8
0%(v/v)アセトン水溶液250ml及び50%乳酸ナト
リウム水溶液9gを加え、攪拌しながら沈殿を完全に溶
解させる。続いて、アセトン400mlをゆっくり加え、
アセチル化ヒアルロン酸のゲル状沈殿を再沈殿させる。
上記沈殿を分取した後、ホモジナイザーを併用しエタノ
ール100mlを用いて10000rpmの速度で10分間
の洗浄を2回行なう。次に、減圧濾過により沈殿を分取
した後、減圧乾燥し、アセチル化ヒアルロン酸の白色粉
末を得る。
【0015】この結果、アセチル化ヒアルロン酸が6.
5g(収率82.5%)得られ、乳酸は0.2%残存す
るものの、酢酸、硫酸は検出されなかった。また、この
ものは90%エタノールに可溶であった。反応溶媒比の影響 次に、本発明者らは前記実施例1と基本的に同じ条件
で、前記酢酸と無水酢酸の比と、生成アセチル化ヒアル
ロン酸の粘度、アセチル化度の関係を調べた。粘度との
関係を図1に、またアセチル化度との関係を図2に示
す。
【0016】同図より明らかなように、アセチル化度は
反応開始後数時間、特に1時間以内で急激に向上する。
一方、粘度は反応開始後5〜10時間程度まで急激に低
下する。従って、高粘度のアセチル化ヒアルロン酸を得
たい場合には反応時間を1時間ないしそれ以下とし、ま
た低粘度のアセチル化ヒアルロン酸を得たい場合には反
応時間を5〜10時間の範囲で長くする事が好適であ
る。
【0017】一方、溶媒比との関係を見ると、無水酢酸
のみの場合よりも、酢酸を多少混合した方がアセチル化
の進行が向上し、特に酢酸:無水酢酸が1:4程度では
アセチル化がより効率的に進行し、酢酸:無水酢酸が
1:1程度でもほぼ無水酢酸単独の場合と同じ程度のア
セチル化進行、低粘度化が認められる。
【0018】従って、アセチル化を効率的に進行させる
場合の酢酸と無水酢酸の溶媒比は、1:4〜1:1が特
に好ましい。なお、アセチル化度を低く調整する場合に
は、むしろ酢酸:無水酢酸を1:2〜4:1程度とする
事で、時間の経過によるアセチル化度の変動が小さくな
り、調整が容易となる。反応触媒量の変化 硫酸はヒアルロン酸のアセチル化を進める際の触媒とな
るが、この反応触媒量も生成アセチル化ヒアルロン酸の
粘度、及びアセチル化率に影響を与える。前記実施例1
と同条件において、硫酸量を変えた場合の粘度との関係
(図3)及びアセチル化率との関係(図4)を調べた。
同図より明らかなように、硫酸量を増加させるとアセチ
ル化率は向上するが、粘度の低下もほぼこれに一致する
ことが理解される。
【0019】以上のようにして得られたアセチル化ヒア
ルロン酸は、粘度あるいは修飾化率等によって著しく物
性が異なり、高粘度で中程度の修飾度のものは、少量の
有機溶剤の添加のより安定なゲルをつくる等、その化粧
品基剤、あるいはドラッグデリバリーシステムの基剤と
してその応用が期待される。
【0020】又、高粘度で高度アセチル化等のものや、
低粘度のものは、かなりの濃度の有機溶剤に可溶であ
り、乳液などにも容易に配合され得る。そして、乳液等
に配合された場合、使用時の滑らかさを増すなど、種々
の効果を発揮することが出来る。又、アセチル化により
脂溶性を増加させれば、表面が脂質膜である角質層との
親和性が増し、生体適合性を向上させることが出来る。
また、本発明にかかる高アセチル化ヒアルロン酸は、化
粧品などに配合された場合にヒアルロン酸の欠点でもあ
った曳糸性が著しく低下するという利点を有する。
【0021】
【発明の効果】以上説明したように本発明にかかるアセ
チル化ヒアルロン酸の製造方法は、安価にアセチル化ヒ
アルロン酸を調製することができる。また、本発明にか
かるアセチル化ヒアルロン酸の精製方法は、アセチル化
ヒアルロン酸の精製を効率的に進めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にかかるアセチル化ヒアルロン酸の製
造方法において、酢酸と無水酢酸の溶媒比を変更した場
合の粘度との関係を示した説明図である。
【図2】 本発明にかかるアセチル化ヒアルロン酸の製
造方法において、酢酸と無水酢酸の溶媒比を変更した場
合のアセチル化率との関係を示した説明図である。
【図3】 本発明にかかるアセチル化ヒアルロン酸の製
造方法において、反応触媒量(濃硫酸)を変更した場合
の粘度との関係を示した説明図である。
【図4】 本発明にかかるアセチル化ヒアルロン酸の製
造方法において、反応触媒量(濃硫酸)を変更した場合
のアセチル化率との関係を示した説明図である。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 粉末状ヒアルロン酸を無水酢酸溶媒に懸
    濁し、さらに濃硫酸を加えてアセチル化することを特徴
    とする下記構造式化1のアセチル化ヒアルロン酸の製造
    方法。 【化1】
  2. 【請求項2】 請求項1記載の方法において、無水酢酸
    溶媒には酢酸が混合され、酢酸:無水酸酸の混合比は
    1:4〜1:1であることを特徴とする高度アセチル化
    ヒアルロン酸の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の方法において、無水酢酸
    溶媒には酢酸が混合され、酢酸:無水酸酸の混合比は
    2:1〜4:1であることを特徴とする可変アセチル化
    度ヒアルロン酸の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3記載の方法において、溶媒
    に対し濃硫酸を2〜7容量%添加することを特徴とする
    アセチル化ヒアルロン酸の製造方法。
  5. 【請求項5】 粗アセチル化ヒアルロン酸をアセトン水
    溶液に添加し、乳酸ナトリウムを加えて溶解させ、さら
    に高濃度アセトンを加えて高純度アセチル化ヒアルロン
    酸を沈殿させて得ることを特徴とするアセチル化ヒアル
    ロン酸の精製方法。
  6. 【請求項6】 請求項5記載の方法において、乳酸ナト
    リウムはアセトン水溶液に対し1〜3重量%添加する事
    を特徴とするアセチル化ヒアルロン酸の精製方法。
  7. 【請求項7】 請求項1〜4記載の方法により得られた
    粗アセチル化ヒアルロン酸に対して、請求項5記載の精
    製方法を適用することを特徴とするアセチル化ヒアルロ
    ン酸の精製方法。
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