JP2006291097A - ヒアルロン酸誘導体、およびその製造法 - Google Patents

ヒアルロン酸誘導体、およびその製造法 Download PDF

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伸彦 由井
Toru Otani
亨 大谷
Shuhei Yoshida
周平 吉田
Ryoji Kawabata
良二 河端
Takeshi Nakama
剛 名嘉真
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Abstract

【課題】医療、食品、化粧品分野などに使用することも可能な、下記の要件を充足する新規なヒアルロン酸誘導体とその製造方法の提供。
水に可溶。
ヒアルロニダーゼにより分解されにくい。
非水系溶媒で化学修飾可能。
疎水性化合物と親和性を有する。
【解決手段】下記式(1)で表される繰り返しユニットを有するヒアルロン酸誘導体。
式(1):
Figure 2006291097

式(1)で表される繰り返しユニットの少なくとも5つに1つはRが式(2)である。
Figure 2006291097

式(2):
【選択図】なし

Description

本発明は、ヒアルロン酸誘導体及びその製造方法に関する。
ヒアルロン酸は、N-アセチル-D-グルコサミンとD-グルクロン酸が交互に結合してできた直鎖状の高分子多糖であり、多数の遊離カルボキシル基と多数の遊離ヒドロキシル基を有するために水に対する親和性に富み、水に溶けて高粘度の水溶液を形成する。この遊離カルボキシル基と遊離ヒドロキシル基を封鎖することにより物性の異なるヒアルロン酸を入手することが期待される。そのために、医療、食品、化粧品分野などに使用することを目的として、ヒアルロン酸またはその塩(以下「ヒアルロン酸(塩)」と記述する)の化学修飾が行なわれているが、これまでは、下記の要件を充足するヒアルロン酸誘導体は得られていなかった。
1)水に可溶。
2)ヒアルロニダーゼ(ヒアルロン酸分解酵素)により分解されにくい。
3)非水系溶媒で化学修飾可能(水および/または原料のヒアルロン酸(塩)に由来する発熱性物質、抗原性物質の混入又は産生を防ぐため)。
4)疎水性化合物と親和性を有する。
たとえば、特許文献1には、ヒアルロン酸(塩)とカチオン性化合物との複合体を非水系溶媒に溶解し、次いでこの複合体をO−アシル化反応、アルコキシ化反応または架橋化反応に供することにより得られたヒアルロン酸誘導体が開示されている。このヒアルロン酸誘導体は、反応による分子量低下が抑制され、ヒアルロン酸(塩)本来の保湿性、高粘性といった特性が保持されている。さらに、このヒアルロン酸誘導体には、事実上発熱物質や抗原物質の混入がない。しかしながら、特許文献1に開示されたヒアルロン酸誘導体は1)の要件を満たさない。
特許文献2には、ヒアルロン酸(塩)とカチオン性化合物との複合体を非水系溶媒に溶解し、次いでこの複合体を酸ハロゲン化物と反応させてn−アルカノイル化させることにより疎水性が付与されたヒアルロン酸誘導体が開示されている。しかしながら、このヒアルロン酸誘導体は、n−アルカノイル基の導入量が増えると水に不溶性になり1)を満たさない。
特許文献3には、有機塩基の存在下、水及び非プロトン性溶媒中において、ヒアルロン酸(塩)とカチオン性化合物との複合体を、コハク酸無水物を用いて処理したヒアルロン酸のコハク酸ヘミエステルが開示されている。しかしながら、特許文献3に開示されたヒアルロン酸誘導体(ヒアルロン酸のコハク酸ヘミエステル)は、前述の4)および2)の要件を満たさない。
特開2002−356501 特願2002−285769 特願平8−533769
本発明の目的は、医療、食品、化粧品分野などに使用することも可能な、下記の要件を充足する新規なヒアルロン酸誘導体とその製造方法を提供することである。
1)水に可溶。
2)ヒアルロニダーゼ(ヒアルロン酸分解酵素)により分解されにくい。
3)非水系溶媒で化学修飾可能(水および/または原料のヒアルロン酸(塩)に由来する発熱性物質、抗原性物質の混入又は産生を防ぐため)。
4)疎水性化合物と親和性を有する。
本発明は、下記の構成を有する。
1)下記式(1)で表される繰り返しユニットを有するヒアルロン酸誘導体。
Figure 2006291097
式(1):
Figure 2006291097
(式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立して式(2)またはHであり、式(1)で表される繰り返しユニットの少なくとも5つに1つはRが式(2)であり、Rは独立してカチオン性化合物、H、または一価の金属イオンである。)式(2):
(式(2)中、Rは、独立して炭素数3〜20のアルキレン、またはアリーレンである。)
2)式(1)で表される繰り返しユニットの少なくとも3つに1つは、Rが式(2)である前記第1項記載のヒアルロン酸誘導体。
3)R6が、独立して炭素数3〜10のアルキレン、またはフェニレンである前記第1項記載のヒアルロン酸誘導体。
4)Rが、独立して炭素数3〜6のアルキレン、またはフェニレンである前記第1項記載のヒアルロン酸誘導体。
5)R5が、一価の金属イオンである前記第1項記載のヒアルロン酸誘導体。
6)一価の金属イオンが、ナトリウムイオンである前記第5項記載のヒアルロン酸誘導体。
7)R5が、カチオン性化合物である前記第1項記載のヒアルロン酸誘導体。
8)カチオン性化合物が、第4級アンモニウム塩である前記第7項記載のヒアルロン酸誘導体。
9)平均分子量が5000〜300万の範囲である前記第1項記載のヒアルロン酸誘導体。
10)ヒアルロン酸に比べ、ヒアルロニダーゼによる分解速度が遅い前記第1項〜第9項のいずれか1項記載のヒアルロン酸誘導体。
11)下記式(3)で表される化合物の1種以上を用い、ヒアルロン酸またはその塩とカチオン性化合物との複合体を、非水系溶媒中でエステル化するヒアルロン酸誘導体の製造方法。
式(3):
Figure 2006291097
(式(3)中、Rは、炭素数3〜20のアルキレン、またはアリーレンである。)
12)Rが、炭素数3〜10のアルキレン、またはフェニレンである前記第11項記載のヒアルロン酸誘導体の製造方法。
13)カチオン性化合物が第4級アンモニウム塩である前記第11項記載のヒアルロン酸誘導体の製造方法。
14)非水系溶媒が、クロロホルム、トルエン、塩化メチレン、ヘプタン、およびジメチルホルムアミドから選ばれる1種以上である前記第11項記載のヒアルロン酸誘導体の製造方法。
本発明のヒアルロン酸誘導体は、下記の要件を充足し、医療、食品、化粧品分野などに使用することも可能である。具体的には医療では関節炎の治療組成物、ドラッグデリバリーシステム(例えば子宮内膜症の局所投与製剤)の医療用基材として使用することが可能である。また、本発明の製造方法であれば、非水系溶媒中で本発明のヒアルロン酸誘導体を容易に製造することが可能である。
1)水に可溶。
2)ヒアルロニダーゼ(ヒアルロン酸分解酵素)により分解されにくい。
3)非水系溶媒で化学修飾可能(水および/または原料のヒアルロン酸(塩)に由来する発熱性物質、抗原性物質の混入又は産生を防ぐため)。
4)疎水性化合物と親和性を有する。
以下、本発明を詳細に説明する。
式(1):
Figure 2006291097
式(1)において、R〜Rは、それぞれ独立して式(2)またはHであり、式(1)で表される繰り返しユニットの少なくとも5つに1つはRが式(2)であり、Rは独立してカチオン性化合物、H、または一価の金属イオンである。
本発明においては、式(1)で表される繰り返しユニットの少なくとも5つに1つは、Rが式(2)である。該ユニットの少なくとも3つに1つRが式(2)であれば、疎水性化合物と親和性が大きくなり、疎水性薬剤の担持能が増す。また、酵素による分解速度が遅いことから、疎水性薬剤の長期にわたる徐放期間を達成することができる。
は、独立してカチオン性化合物、H、または一価の金属イオンである。本発明のヒアルロン酸誘導体は、Rがカチオン性化合物である場合には有機溶媒可溶になり、Rが一価の金属イオンである場合には水可溶となる。
本発明においてカチオン性化合物は、具体的には、第4級アンモニウム塩、アミノ基を2個以上有するアミノ酸、ペプチド、ポリアミノ酸の塩、およびアミノ基を有する糖質の塩などであり、好ましくは第4級アンモニウム塩である。第4級アンモニウム塩とヒアルロン酸との複合体は有機溶媒に溶解する。さらに該複合体は調製簡便である。
本発明において好ましく使用することができる第4級アンモニウム塩は、アルキル基のうちの少なくとも1個が炭素数8個以上からなるものである。具体的には、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド(Distearyldimethylammonium Chloride)、ジオレイルジメチルアンモニウムクロライド(Dioleyldimethylammonium Chloride)、セチルピリジニウムクロライド(Cetylpyridinium Chloride)、セチルトリメチルアンモニウムクロライド(Cetyltrimethylammonium Chloride)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(Cetyltrimethylammonium Bromide)、ジテトラデシルジメチルアンモニウムブロミド(Ditetradecyldimethylammonium Bromide)、ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(Didodecyldimethylammonium Bromide)、ジデシルジメチルアンモニウムブロミド(Didecyldimethylammonium Bromide)、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド(Octadecyltrimethylammonium Chloride)、ノルマルオクタデシルトリメチルアンモニウムブロミド(n-Octadecyltrimethylammonium Bromide)、トリドデシルメチルアンモニウムクロライド(Tridodecylmethylammonium Chloride)、トリオクチルメチルアンモニウムブロミド(Trioctylmethylammonium Bromide)、ジオクタノイルL−アルファー−フォスファチジルコリン(Dioctanoyl L-α-Phosphatidylcholine)、ジラウロイル L−アルファー−フォスファチジルコリン(Dilauroyl L-α-Phosphatidylcholine)、1,2−ジミリストイル−3−トリメチルアンモニウムプロパン(1,2-Dimyristoyl-3-Trimethylammonium Propane)、1,2−ジオレオイル−3−トリメチルアンモニウムプロパン(1,2-Dioleoyl-3-Trimethylammonium Propane)、1,2−ジパルミトイル−3−トリメチルアンモニウムプロパン(1,2-Dipalmitoyl-3-Trimethylammonium Propane)、1,2−ジステアロイル−3−トリメチルアンモニウムプロパン(1,2-Distearoyl-3-Trimethylammonium Propane)、ベンザルコニウムクロライド(Benzalkonium Chloride)、ベンゼトニウムクロライド(Benzethonium Chloride)などである。
本発明において好ましく使用することができる一価の金属イオンは、ナトリウムイオンである。
式(2):
Figure 2006291097
式(2)においてRは、炭素数3〜20のアルキレン、またはアリーレンである。
が炭素数3〜10のアルキレン、またはフェニレンであれば、化学修飾によりカルボキシル基を増やすことで、水溶性を維持しつつ疎水核を形成することができる。炭素数3〜10のアルキレンは、プロピレン、ブチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレンなどである。フェニレンとしては、フェニレン、4−カルボキシフェニレン、4−ヒドロキシフェニレン、4−メチルフェニレンなどである。特にプロピレン、ブチレン、2−メチルプロピレン、2,2−ジメチルプロピレン、フェニレンなどは分子内で酸無水物を形成している原料を用いることができるため副反応や不純物の混入が生じにくくより好ましい。
本発明のヒアルロン酸誘導体の分子量は特に限定されるものではないが、HPLC法により測定される平均分子量が5000〜300万の範囲であることが好ましく、より好ましくは5000〜150万の範囲である。
該HPLC法による平均分子量の測定には、多糖類の分子量測定に適する任意のカラムを用いることができるが、例えばShodex Ionpak KS806およびIonpak KS-G等のカラムを用いることが好ましい。この場合、溶出液としては0.2mol/lの塩化ナトリウム水溶液を用い、流速1.0ml/分で流し、ヒアルロン酸誘導体の検出は206nmで行うことができる。平均分子量は分子量既知のヒアルロン酸ナトリウムで作製した検量線より計算できる。
本発明のヒアルロン酸誘導体は、ヒアルロニダーゼによる分解を受けにくいものである。その分解速度は、ヒアルロン酸よりも遅いことが好ましい。分解速度はE型回転粘度計で100rpm、25℃の条件でヒアルロニダーゼ濃度100U/mlで粘度を測定することによって求めることができる。
本発明のヒアルロン酸誘導体の製造方法は、式(3)で表される化合物を用い、ヒアルロン酸(塩)とカチオン性化合物との複合体を、非水系溶媒中でエステル化することを特徴とするものである。
式(3):
Figure 2006291097
式(3)において、R7は、炭素数3〜20のアルキレン、またはアリーレンである。
は、炭素数3〜10のアルキレン、またはフェニレンであることが好ましい。炭素数3〜10のアルキレンは、プロピレン、ブチレン、ヘキサメチレンなどである。フェニレンとしては、フェニレン、4−カルボキシフェニレン、4−ヒドロキシフェニレン、4−メチルフェニレンなどである。本発明に好ましく使用することができるアルキレンは、プロピレン、ブチレン、2−メチルプロピレン、2,2−ジメチルプロピレンなどである。Rがプロピレンや2−メチルプロピレン、2,2−ジメチルプロピレンである場合、本発明のヒアルロン酸誘導体は水に溶解しやすく、ヒアルロニダーゼによる分解も遅い。
本発明に使用するヒアルロン酸(塩)の起源は特に限定されるものではなく、鶏の鶏冠など各種動物組織由来であっても、ヒアルロン酸(塩)の生産能を有する微生物由来であってもよいが、本発明に使用するヒアルロン酸(塩)は微生物由来であることが好ましい。
ヒアルロン酸生産能を有する微生物として例えばストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・エクイシミリス(Streptococcus equisimilis)、ストレプトコッカス・エクイ(Streptococcus equi)、ストレプトコッカス・デイスガラクテイエ(Streptococcus dysgalactiae)、ストレプトコッカス・ズーエピデミカス(Streptococcus zooepidemicus)などを挙げることができる。
また本発明において原料として使用するヒアルロン酸(塩)はHPLC法により測定される平均分子量が5000から300万の範囲であることが好ましい。該HPLCによる平均分子量の測定には、多糖類の分子量測定に適する任意のカラムを用いることができるが、例えばShodex Ionpak KS806およびIonpak KS-G等のカラムを用いることが好ましい。この場合、溶出液としては0.2mol/lの塩化ナトリウム水溶液を用い、流速1.0ml/分で流し、ヒアルロン酸(塩)の検出は206nmで行うことができる。平均分子量は分子量既知のヒアルロン酸ナトリウムで作製した検量線より計算できる。
本発明において用いられる1価の金属イオンとしては、特に限定されないがアルカリ金属イオン、例えばカリウム、ナトリウムなどを挙げることができ、本発明においてはナトリウムであることが好ましい。
本発明において用いるカチオン性化合物は、具体的には第4級アンモニウム塩、アミノ基を2個以上有するアミノ酸、ペプチド、ポリアミノ酸の塩、およびアミノ基を有する糖質の塩などを挙げることができ、好ましくは第4級アンモニウム塩である。
本発明において好ましく使用することができる第4級アンモニウム塩は、アルキル基のうちの少なくとも1個が炭素数8個以上からなるものである。具体的には、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド(Distearyldimethylammonium Chloride)、ジオレイルジメチルアンモニウムクロライド(Dioleyldimethylammonium Chloride)、セチルピリジニウムクロライド(Cetylpyridinium Chloride)、セチルトリメチルアンモニウムクロライド(Cetyltrimethylammonium Chloride)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(Cetyltrimethylammonium Bromide)、ジテトラデシルジメチルアンモニウムブロミド(Ditetradecyldimethylammonium Bromide)、ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(Didodecyldimethylammonium Bromide)、ジデシルジメチルアンモニウムブロミド(Didecyldimethylammonium Bromide)、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド(Octadecyltrimethylammonium Chloride)、ノルマルオクタデシルトリメチルアンモニウムブロミド(n-Octadecyltrimethylammonium Bromide)、トリドデシルメチルアンモニウムクロライド(Tridodecylmethylammonium Chloride)、トリオクチルメチルアンモニウムブロミド(Trioctylmethylammonium Bromide)、ジオクタノイルL−アルファー−フォスファチジルコリン(Dioctanoyl L-α-Phosphatidylcholine)、ジラウロイル L−アルファー−フォスファチジルコリン(Dilauroyl L-α-Phosphatidylcholine)、1,2−ジミリストイル−3−トリメチルアンモニウムプロパン(1,2-Dimyristoyl-3-Trimethylammonium Propane)、1,2−ジオレオイル−3−トリメチルアンモニウムプロパン(1,2-Dioleoyl-3-Trimethylammonium Propane)、1,2−ジパルミトイル−3−トリメチルアンモニウムプロパン(1,2-Dipalmitoyl-3-Trimethylammonium Propane)、1,2−ジステアロイル−3−トリメチルアンモニウムプロパン(1,2-Distearoyl-3-Trimethylammonium Propane)、ベンザルコニウムクロライド(Benzalkonium Chloride)、ベンゼトニウムクロライド(Benzethonium Chloride)などである。
ヒアルロン酸(塩)とカチオン性化合物との複合体とはヒアルロン酸のアニオン性部位(カルボキシル基)とカチオン性化合物がイオン的に結合したものをいう。その調製法の一例を以下に説明する。
<ヒアルロン酸(塩)とカチオン性化合物との複合体の調製法>
A)ヒアルロン酸(塩)を蒸留水またはこれに相当する純水に0.01〜10重量%の濃度、好ましくは0.05〜1重量%の濃度にて溶解する。なお、本発明において、蒸留水に相当する純水とは、例えば、連続イオン交換(Electric Deionization)および逆浸透(Reverse Osmosis)等により精製した水を意味する(以下「純水」ということがある)。
B)一方、ヒアルロン酸(塩)と複合体を形成させるカチオン性化合物、好ましくは第4級アンモニウム塩を、蒸留水または純水に添加均一に分散させる。B)で調製したカチオン性化合物の水溶液中のカチオン基:A)で調製したヒアルロン酸(塩)の水溶液中のカルボキシル基のモル比が、0.5〜5:1、好ましくは0.7〜1.5:1、例えば1:1になるように2つの水溶液を混合する。なお、混合する際の温度は室温でも良いが、好ましくは使用するカチオン性化合物のゲル−液晶転移温度以上に両液を加温して行う。
混合により発生した水不溶物は通常化学実験で使用する分離法、例えば遠心分離、吸引ろ過、加圧ろ過等の方法にて混合液より回収する。回収した水不溶物は、当該カチオン性化合物のゲル−液晶転移温度以上に加温した蒸留水または純水にて洗浄した後、乾燥に供する。乾燥は、通常化学実験で使用する乾燥手段、例えば常圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等により行うことができる。
また、本発明において使用しうる非水系溶媒の例には、ジメチルホルムアミド、エタノール、メタノール、アセトン、クロロホルム、塩化メチレン、トルエン、へプタン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ジメチルスルオキシド、テトラヒドロフラン等、およびこれらの2種以上の混合溶媒が包合される。本発明においてはジメチルホルムアミド、エタノール、メタノール、アセトン、クロロホルム、塩化メチレン、トルエンもしくはヘプタン、およびこれらの混合溶媒が好ましい。非水系溶媒に溶解させるヒアルロン酸(塩)とカチオン性化合物の複合体の濃度は、特に限定するものではないが、1〜1000mmol/lの範囲であることが好ましい。
ヒアルロン酸(塩)とカチオン性化合物との複合体の非水系溶媒への溶解は、非水系溶媒に該複合体を加え、攪拌することで行う。攪拌は、通常の化学実験で行われる機器、例えばマグネティックスターラー、メカニカルスターラー、振とう式混合器等を用いて行うことができる。
溶解は、室温から溶媒の沸点付近までの温度で行うことができるが、高温でのヒアルロン酸の分子量低下を避けるために60℃以下であることが好ましい。
さらに溶解したか否かは、目視により溶液が均一になったのをもって確認する。撹拌は1〜2時間以上行うことができるが、ヒアルロン酸の分子量低下を避けるために2時間以下であることが好ましい。
ヒアルロン酸(塩)とカチオン性化合物との複合体の、非水系溶媒への溶解後に行う該複合体と酸無水物との反応は、ピリジンなどの塩基性溶剤の存在下、酸無水物を用いて行う。ここでの酸無水物とは具体的にグルタル酸、アジピン酸、シトラコン酸、フタル酸の無水物等をあげることができる。
反応の停止は、ヒアルロン酸と複合体を形成しているカチオン性化合物をナトリウム塩に交換し、溶液からヒアルロン酸誘導体を析出させることで行う。塩交換は、反応溶液と均一に混合可能な有機溶媒に有機酸のアルカリ金属塩を溶解した溶液を反応系に加えることで行う。ここではナトリウム塩に交換するために酢酸ナトリウム飽和エタノール溶液の使用が好ましい。
反応後の精製は、例えば、グルタリル化ヒアルロン酸(塩)の製造の場合は、上述のように得られたヒアルロン酸(塩)のカチオン性化合物複合体を窒素雰囲気下、ジメチルホルムアミドに溶解し、ピリジン、グルタリル酸無水物を加えて撹拌し、反応液に酢酸ナトリウム飽和エタノールを加え、析出した沈殿をアセトン/水=9/1で洗浄後、真空乾燥し、グルタリル化ヒアルロン酸(塩)を得ることができる。
本発明のヒアルロン酸誘導体の用途は特に限定されるものではないが、医薬品、食品、化粧品分野等に用いられる各種材料として使用可能である。ヒアルロン酸誘導体が生体内分解性であれば、飽和含水率を選ぶことにより生体内での分解速度を制御でき、さらに体内で代謝されるため、例えば、手術時等の保湿剤、潤滑剤、創傷被覆剤、DDS(ドラッグデリバリーシステム)材料等の医薬分野で用いることが可能である。なかでもその子宮内における分解速度が、人体(子宮)内のバイオリズムと高い相関性を示すことが期待されていることから、例えば子宮内膜症治療薬を担持する子宮内または膣内埋植用製剤のデバイスとして極めて有効に利用できる。
以下、実施例をもって本発明を詳細に説明する。
実施例1
(1)ヒアルロン酸(塩)の製造(ヒアルロン酸とジステアリルジメチルアンモニウムクロライドとの錯体の作製)
ヒアルロン酸ナトリウム(チッソ CHA、平均分子量9万、以下「CHA」ということがある) 7.125gを純水750mlに溶解するとともに、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド(以下「DSC」ということがある) 10.4gを2000mlの純水に分散させた。両液を45℃に加温後撹拌しながら混合し、5分間撹拌を続け、ヒアルロン酸とジステアリルジメチルアンモニウムクロライドとの錯体(白色固体、以下「CHA−DSC」ということがある)を遠心分離(5000rpm、室温、30分)にて回収し、45℃の温水にて洗浄した。洗浄終了後、一夜凍結乾燥、その後50℃で6時間減圧乾燥した。収量17.0g
(2)グルタリル化ヒアルロン酸(塩)(以下「GlHA」ということがある)の製造
得られたCHA−DSC480mgを60℃、窒素下でDMF50mlに溶解し、ピリジン、無水グルタル酸を加え2時間撹拌した。反応溶液に酢酸ナトリウム飽和エタノール溶液60ml加え、析出した沈殿をアセトン/水=9/1で洗浄した。これを50℃で4時間減圧乾燥して白色固体としてグルタリル化ヒアルロン酸を得た。NMRにより目的物であることを確認し、ヒアルロン酸二糖単位あたりの導入モル数(以後「DS」ということがある)を決定した。結果を表1に示した。
実施例2〜9、比較例1〜3
無水グルタル酸を表1に示した酸無水物に変えた以外は実施例1準じて各種エステル化ヒアルロン酸を製造した。NMRにより目的物であることを確認し、DSを決定した。また、ステアロイル化及びバレロイル化ヒアルロン酸は重水に溶解しないためアルカリで分解後遊離した酸をNMRにて測定しDSを決定した。結果を表1に示した。
Figure 2006291097
GlHA:グルタリル化ヒアルロン酸(塩)
MGHA:3−メチルグルタリル化ヒアルロン酸(塩)
AdHA:アジポイル化ヒアルロン酸(塩)
PhHA:フタロイル化ヒアルロン酸(塩)
SuHA:スクシニル化ヒアルロン酸(塩)
VaHA:バレロイル化ヒアルロン酸(塩)
StHA:ステアロイル化ヒアルロン酸(塩)
4.ヒアルロン酸誘導体の溶解性
1Mリン酸緩衝液(pH5、pH7)および精製水に、実施例1〜9および比較例1〜3のヒアルロン酸誘導体を、5wt%濃度で溶解させ、60℃で2時間後の溶液状態を観察した。結果を表2に示した。
修飾基にカルボキシル基を持たない比較例2および比較例3のヒアルロン誘導体は水に溶解しなかった。
Figure 2006291097
溶解:透明 不溶:白濁
5.ヒアルロニダーゼによる分解実験
平均分子量9万のヒアルロン酸(以下「HA」ということがある)、実施例3および比較例1のヒアルロン酸誘導体を、0.14MPBS(pH4.5)に2.5wt%の濃度になるように水に溶解させた。但し、HAは5.0wt%に調製した。
各水溶液と1000U/mlヒアルロニダーゼ0.14MPBS(pH7.4)溶液を9:1の割合で混合し、E型回転粘度計で25℃における経時的に粘度を測定した。結果を表3に示した。
比較例1のヒアルロン酸誘導体は、水溶性が増加し元のHAよりも酵素分解が速くなったが、実施例3のヒアルロン酸誘導体は、HAよりも酵素分解が遅くなった。
Figure 2006291097
6.疎水性化合物徐放試験
ダナゾール1mg/mlメタノール溶液(溶液A)、ヒアルロン酸誘導体またはヒアルロン酸の1.5%純水溶液(溶液B)を調整し、それぞれ3mlずつ混合し激しく攪拌した。溶液Aと溶液Bとの混合液から減圧乾燥によりメタノールを除去した後凍結乾燥を行い、ヒアルロン酸誘導体またはヒアルロン酸とダナゾールとの混合物を得た。この混合物に純水3mlを加え溶液とした後、該溶液0.1mlを透析カセット(PIERCE製:Slide−A-LyzerMWCO:10K)に入れ、37℃、0.14Mリン酸緩衝液(pH7.4)に、1日後および14日後までに放出されたダナゾール量を測定し、1日後、14日後までに放出されたダナゾールの放出率を算出した。
Figure 2006291097

Claims (14)

  1. 下記式(1)で表される繰り返しユニットを有するヒアルロン酸誘導体。
    式(1):
    Figure 2006291097
    (式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立して式(2)またはHであり、式(1)で表される繰り返しユニットの少なくとも5つに1つはRが式(2)であり、Rは独立してカチオン性化合物、H、または一価の金属イオンである。)
    式(2):
    Figure 2006291097
    (式(2)中、Rは、独立して炭素数3〜20のアルキレン、またはアリーレンである。)
  2. 式(1)で表される繰り返しユニットの少なくとも3つに1つは、Rが式(2)である請求項1記載のヒアルロン酸誘導体。
  3. が、独立して炭素数3〜10のアルキレン、またはフェニレンである請求項1記載のヒアルロン酸誘導体。
  4. が、独立して炭素数3〜6のアルキレン、またはフェニレンである請求項1記載のヒアルロン酸誘導体。
  5. 5が、一価の金属イオンである請求項1記載のヒアルロン酸誘導体。
  6. 一価の金属イオンが、ナトリウムイオンである請求項5記載のヒアルロン酸誘導体。
  7. が、カチオン性化合物である請求項1記載のヒアルロン酸誘導体。
  8. カチオン性化合物が、第4級アンモニウム塩である請求項7記載のヒアルロン酸誘導体。
  9. 平均分子量が5000〜300万の範囲である請求項1記載のヒアルロン酸誘導体。
  10. ヒアルロン酸に比べ、ヒアルロニダーゼによる分解速度が遅い請求項1〜9のいずれか1項記載のヒアルロン酸誘導体。
  11. 下記式(3)で表される化合物の1種以上を用い、ヒアルロン酸またはその塩とカチオン性化合物との複合体を、非水系溶媒中でエステル化するヒアルロン酸誘導体の製造方法。
    式(3):
    Figure 2006291097
    (式(3)中、Rは、炭素数3〜20のアルキレン、またはアリーレンである。)
  12. が、炭素数3〜10のアルキレン、またはフェニレンである請求項11記載のヒアルロン酸誘導体の製造方法。
  13. カチオン性化合物が第4級アンモニウム塩である請求項11記載のヒアルロン酸誘導体の製造方法。
  14. 非水系溶媒が、クロロホルム、トルエン、塩化メチレン、ヘプタン、およびジメチルホルムアミドから選ばれる1種以上である請求項11記載のヒアルロン酸誘導体の製造方法。
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