JP2016163695A - 医療用材料の製造方法、医療用材料、及び癒着防止材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリアニオン性多糖類の水溶性塩及びグリセリンを含有する原材料からなる原料成形体を、酸無水物を含む処理液で処理し、原料成形体を水不溶化させる工程を有する医療用材料の製造方法である。
【選択図】なし
Description
[1]ポリアニオン性多糖類の水溶性塩及びグリセリンを含有する原材料からなる原料成形体を、酸無水物を含む処理液で処理し、前記原料成形体を水不溶化させる工程を有する医療用材料の製造方法。
[2]前記ポリアニオン性多糖類が、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、及びアルギン酸からなる群より選択される少なくとも一種である前記[1]に記載の医療用材料の製造方法。
[3]前記酸無水物が、無水酢酸及び無水プロピオン酸の少なくともいずれかである前記[1]又は[2]に記載の医療用材料の製造方法。
[4]前記[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法によって製造された医療用材料。
[5]前記[4]に記載の医療用材料に多価アルコール又は多価アルコール水溶液が保持されてなる癒着防止材。
本発明の医療用材料の製造方法は、ポリアニオン性多糖類の水溶性塩及びグリセリンを含有する原材料からなる原料成形体を、酸無水物を含む処理液で処理し、原料成形体を水不溶化させる工程(水不溶化工程)を有する。以下、その詳細について説明する。
次に、本発明の癒着防止材の製造方法について説明する。本発明の癒着防止材の製造方法は、前述の医療用材料に多価アルコール又は多価アルコール水溶液を保持させる工程を有する。多価アルコールの具体例としては、エチレングルコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、メチルグリセロール、ポリオキシエレングリコシド、マルチトール、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、還元水飴、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、バリン、プロピレングリコール、グリセリン(グリセロール)、ポリグリセリン、グリセリン脂肪酸エステル等を挙げることができる。なかでも、グリセリン、キシリトール、ソルビトール、低分子ポリエチレングリコール等、医療分野や食品分野で使用されている多価アルコールが好適に用いられる。これらの好適に用いられる多価アルコールは、市場から入手してそのまま使用できる。グリセリン、ソルビトール等については、日本薬局方に適合したものを用いることが望ましい。グリセリンは、静脈への注射剤としても使用されるほど安全性の高い素材であるために特に好ましい。
注入材は、前述の医療用材料のうち、その形状が粉末状又は粒子状の医療用材料を含有する。注入材は、水不溶化していないヒアルロン酸の水溶性塩の水溶液等の液媒体をさらに含有してもよい。注入材を構成する医療用材料は、前述の通り、化学的架橋剤を用いることなく製造されうるものであり、原料であるポリアニオン性多糖類本来の特性が保持されているため、安全性に優れている。また、注入材は粉末状又は粒子状の医療用材料を含有するために流動性が高く、粉末又は粒子の粒径を適宜調整することで、患部等に注射針を経由して容易に注入することができる。このため、注入材は、例えば、関節変形治療用関節内注入剤、及び皮下注入剤等として有用である。
徐放性製剤は、前述の医療用材料と、薬学的に許容される有効成分とを含む。徐放性製剤を構成する医療用材料は、前述の通り、化学的架橋剤を用いることなく製造されうるものであり、原料であるポリアニオン性多糖類本来の特性が保持されているため、安全性に優れている。また、医療用材料は生体内で徐々に分解して吸収されるので、有効成分を徐々に放出することができる。なお、有効成分の種類は薬学的に許容されるものであれば特に限定されない。
ヒアルロン酸ナトリウム(分子量150万Da)の粉末1部及びグリセリン(日本薬局方)0.5部を含む水溶液100部を調製した。調製した水溶液100gを縦12cm×横10cmのステンレストレイに流し込み、20℃の恒温槽内で乾燥させてグリセリンを含有するヒアルロン酸ナトリウム膜を得た。得られた膜を処理液(20%無水酢酸/80%エタノール溶液)に浸漬し、50℃で1時間放置して水不溶化処理し、厚さ約100μmの水不溶性のヒアルロン酸膜を得た。得られた水不溶性のヒアルロン酸膜は、適度な柔軟性及び伸縮性を有していた。
ヒアルロン酸ナトリウム(分子量150万Da)の粉末1部を含む水溶液100部を調製した。調製した水溶液100gを縦12cm×横10cmのステンレストレイに流し込み、20℃の恒温槽内で乾燥させてヒアルロン酸ナトリウム膜を得た。得られた膜を処理液(20%無水酢酸/80%エタノール溶液)に浸漬し、50℃で1時間放置して水不溶化処理し、厚さ約100μmの水不溶性のヒアルロン酸膜を得た。得られた水不溶性のヒアルロン酸膜は、実施例1で得た水不溶性のヒアルロン酸膜に比べて、柔軟性及び伸縮性に劣るものであった。
実施例及び比較例で製造した複合膜を2cm角に切断し、直径3.5cm、深さ1.5cmの容器に入れ、PBS緩衝液(pH6.8)5mLを加えた。この容器を37℃に調整した振盪機に入れ、10〜20rpmで振盪し、経時的な状態変化を目視観察した。その結果、いずれの膜についても、72時間後であっても膜の原形が保持されており、水不溶化されていることが分かった。また、72時間後の膨潤率(膨潤膜/乾燥膜(質量比))は2.4であった。
実施例1で製造した膜を、10体積%グリセリン水溶液に浸漬した後、風乾して滅菌用袋に封入した。25kGyの放射線を照射して滅菌用袋ごと滅菌して厚さ約100μmの癒着防止膜を得た。成犬(ビーグル犬、雌、1.5歳、体重約10kg)を全身麻酔処置後に開腹し、腹側壁表皮を3cm角に剥離した。剥離部分を覆うように癒着防止膜を配置して閉腹した。2週間後、同犬を全身麻酔処置後に開腹したところ、癒着は発生していなかった。また、犬の体内に配置(埋植)した癒着防止膜は、埋植後2週間で消失していた。これは、生体内のナトリウムイオン等によって癒着防止膜を構成するヒアルロン酸のカルボキシ基が徐々に中和され、可溶性のヒアルロン酸塩に変化して溶解し、生体内に吸収されたものと推測される。これに対して、癒着防止膜を配置することなく閉腹した犬については、剥離部分と腸に癒着が生じていることが観察された。
JIS K 7311(ポリウレタン系熱可塑性エラストマーの試験方法)に準拠した引張試験を実施し、実施例1で製造した膜の引張強度を測定した。まず、蒸留水により十分膨潤させた膜をダンベルカッターにより打ち抜き、試験片を作製した。次いで、シングルコラム型の材料試験機(商品名「STA−1150」、エーアンドディ社製)を使用し、クロスヘッド速度10mm/秒で破断強度を測定し、膜のヤング率を算出した。実施例1で製造した膜のヤング率は、11.5MPaであった。また、同様の手順で測定及び算出した、比較例1で製造した膜のヤング率は25.5MPaであり、実施例1で製造した膜の方が、比較例1で製造した膜に比して伸縮性に優れていることがわかった。
Claims (5)
- ポリアニオン性多糖類の水溶性塩及びグリセリンを含有する原材料からなる原料成形体を、酸無水物を含む処理液で処理し、前記原料成形体を水不溶化させる工程を有する医療用材料の製造方法。
- 前記ポリアニオン性多糖類が、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、及びアルギン酸からなる群より選択される少なくとも一種である請求項1に記載の医療用材料の製造方法。
- 前記酸無水物が、無水酢酸及び無水プロピオン酸の少なくともいずれかである請求項1又は2に記載の医療用材料の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法によって製造された医療用材料。
- 請求項4に記載の医療用材料に多価アルコール又は多価アルコール水溶液が保持されてなる癒着防止材。
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