JP2016163695A - 医療用材料の製造方法、医療用材料、及び癒着防止材 - Google Patents

医療用材料の製造方法、医療用材料、及び癒着防止材 Download PDF

Info

Publication number
JP2016163695A
JP2016163695A JP2016034046A JP2016034046A JP2016163695A JP 2016163695 A JP2016163695 A JP 2016163695A JP 2016034046 A JP2016034046 A JP 2016034046A JP 2016034046 A JP2016034046 A JP 2016034046A JP 2016163695 A JP2016163695 A JP 2016163695A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
medical material
raw material
water
molded body
medical
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2016034046A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6474360B2 (ja
Inventor
康幸 礒野
Yasuyuki Isono
康幸 礒野
泰晴 野一色
Yasuharu Noisshiki
泰晴 野一色
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Dainichiseika Color and Chemicals Mfg Co Ltd
Original Assignee
Dainichiseika Color and Chemicals Mfg Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Dainichiseika Color and Chemicals Mfg Co Ltd filed Critical Dainichiseika Color and Chemicals Mfg Co Ltd
Publication of JP2016163695A publication Critical patent/JP2016163695A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6474360B2 publication Critical patent/JP6474360B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Medicinal Preparation (AREA)
  • Materials For Medical Uses (AREA)

Abstract

【課題】原料であるポリアニオン性多糖類本来の特性が保持されているとともに、化学架橋剤を用いる必要がないため安全性が高く、かつ、適度な柔軟性及び伸縮性を有する医療用材料を製造する方法を提供する。
【解決手段】ポリアニオン性多糖類の水溶性塩及びグリセリンを含有する原材料からなる原料成形体を、酸無水物を含む処理液で処理し、原料成形体を水不溶化させる工程を有する医療用材料の製造方法である。
【選択図】なし

Description

本発明は、医療用材料の製造方法、医療用材料、及び癒着防止材に関する。
ヒアルロン酸やアルギン酸等のポリアニオン性多糖類は、適度な粘性、粘着性、保湿性、及び生体適合性を示すことが知られている。このため、これらのポリアニオン性多糖類及びその塩は、医療用材料、食品用材料、及び化粧品用材料等の原材料として幅広く用いられている。
なかでもヒアルロン酸は、保水性などの特徴的な物性に優れているとともに、安全性及び生体適合性が高いことから、食品、化粧品、及び医薬品等の様々な用途に利用されている。例えば医療分野では、ヒアルロン酸は関節潤滑剤や癒着防止材の原料などに利用されている。但し、原料となるヒアルロン酸ナトリウムは水溶性が高いため、用途によっては何らかの不溶化処理を施す必要がある。
これまで、カルボキシ基を利用した架橋反応によりヒアルロン酸ナトリウムを水不溶化させる方法について種々検討されている。例えば、特許文献1には、カルボジイミドを用いた架橋反応により、ヒアルロン酸やカルボキシメチルセルロース等のポリアニオン性多糖類の非水溶性誘導体を製造する方法が記載されている。
また、特許文献2及び3には、多価カチオンを用いてイオン結合させることにより、ヒアルロン酸やカルボキシアルキルセルロース等のポリアニオン性多糖類を水不溶化させる方法が記載されている。さらに、特許文献4には、金属塩を用いてカルボキシメチルセルロースをイオン交換し、水不溶化フィルムを得る方法が記載されている。
そして、特許文献5には、ヒアルロン酸ナトリウム水溶液を酸性条件下で−20℃に冷却し、分子内架橋を形成させて水不溶化する方法が記載されている。また、特許文献6には、粉末状ヒアルロン酸と無水酢酸とを濃硫酸の存在下で反応させてアセチル化することが記載されている。さらに、特許文献7には、アルコールを含む酸性の液を用いてヒアルロン酸ゲルを製造する方法が記載されている。
特表2003−518167号公報 特開平5−124968号公報 特開2008−13510号公報 特開平6−128395号公報 特開2003−252905号公報 特開平8−53501号公報 特開平5−58881号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法では架橋剤を用いるため、医薬品等の人体に付与される用途等の安全性を考慮する場合には適用が困難な場合が多い。また、特許文献2〜4には、得られたフィルム等の水不溶性の程度については一切記載されていない。
さらに、特許文献5に記載の方法では、ヒアルロン酸ナトリウム水溶液のpHを1.2程度に調整する必要があるとともに、粘度が著しく上昇するため、成形等の取扱いが困難である。また、長期間にわたって凍結乾燥するため、冷却に要する電力コストの面においても課題があった。さらに、ヒアルロン酸ナトリウム水溶液を酸性条件下におくと粘度が急激に上昇するため、成形が困難になり、用途が限定される場合がある。なお、特許文献5においては、分子内の架橋構造を確認しているが、不溶化の程度については言及していない。
また、特許文献6には、得られたヒアルロン酸のアセチル化物の水不溶性の程度については一切記載されていない。さらに、特許文献7に記載の方法で得られるヒアルロン酸ゲルは多量の水分を含むため、持ち上げることも難しい。このため、成形体の形状を維持したまま不溶化することは困難である。
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、原料であるポリアニオン性多糖類本来の特性が保持されているとともに、化学架橋剤を用いる必要がないため安全性が高く、かつ、適度な柔軟性及び伸縮性を有する医療用材料を製造する方法を提供することにある。また、本発明の課題とするところは、上記の方法によって製造される医療用材料及び癒着防止材を提供することにある。
すなわち、本発明によれば、以下に示す医療用材料の製造方法が提供される。
[1]ポリアニオン性多糖類の水溶性塩及びグリセリンを含有する原材料からなる原料成形体を、酸無水物を含む処理液で処理し、前記原料成形体を水不溶化させる工程を有する医療用材料の製造方法。
[2]前記ポリアニオン性多糖類が、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、及びアルギン酸からなる群より選択される少なくとも一種である前記[1]に記載の医療用材料の製造方法。
[3]前記酸無水物が、無水酢酸及び無水プロピオン酸の少なくともいずれかである前記[1]又は[2]に記載の医療用材料の製造方法。
また、本発明によれば、以下に示す医療用材料が提供される。
[4]前記[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法によって製造された医療用材料。
さらに、本発明によれば、以下に示す癒着防止材が提供される。
[5]前記[4]に記載の医療用材料に多価アルコール又は多価アルコール水溶液が保持されてなる癒着防止材。
本発明の医療用材料の製造方法によれば、原料であるポリアニオン性多糖類本来の特性が保持されているとともに、化学架橋剤を用いる必要がないため安全性が高く、かつ、適度な柔軟性及び伸縮性を有する医療用材料を簡便に製造することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
(医療用材料及びその製造方法)
本発明の医療用材料の製造方法は、ポリアニオン性多糖類の水溶性塩及びグリセリンを含有する原材料からなる原料成形体を、酸無水物を含む処理液で処理し、原料成形体を水不溶化させる工程(水不溶化工程)を有する。以下、その詳細について説明する。
水不溶化工程で用いる原料成形体は、ポリアニオン性多糖類の水溶性塩及びグリセリンを含有する原材料を用いて形成される。ポリアニオン性多糖類は、カルボキシ基やスルホン酸基等の負電荷を帯びた1以上のアニオン性基をその分子構造中に有する多糖類である。また、ポリアニオン性多糖類の水溶性塩は、ポリアニオン性多糖類中のアニオン性基の少なくとも一部が塩を形成したものである。なお、ポリアニオン性多糖類中のアニオン性基は、多糖類の分子中に導入されたものであってもよい。
ポリアニオン性多糖類の具体例としては、カルボキシメチルセルロースやカルボキシエチルセルロース等のカルボキシアルキルセルロース、カルボキシメチルでんぷん、カルボキシメチルアミロース、コンドロイチン硫酸(コンドロイチン−4−硫酸及びコンドロイチン−6−硫酸を含む)、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、アルギン酸、ペクチン、カラギーナン、デルマタン硫酸、及びデルマタン−6−硫酸等を挙げることができる。これらのポリアニオン性多糖類は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリアニオン性多糖類の水溶性塩としては、無機塩、アンモニウム塩、及び有機アミン塩等を挙げることができる。無機塩の具体例としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;亜鉛、鉄等の金属塩等を挙げることができる。
原料成形体を形成するために用いる原材料は、ポリアニオン性多糖類の水溶性塩とともに、グリセリンを含有する。理由については明らかではないが、グリセリンを含有する原材料を用いることで、グリセリンを含有しない原材料を用いた場合に比べて、柔軟性及び伸縮性が向上した医療用材料を製造することができる。原材料中のグリセリンの含有量は、0.1〜5質量%とすることが好ましく、0.25〜3質量%とすることがさらに好ましい。また、原材料には、さらに、硫酸バリウム等の造影剤をはじめとするX線不透過剤を含有させてもよい。
原料成形体は、例えば、ポリアニオン性多糖類の水溶性塩及びグリセリンを水に溶解させて得た原材料(水溶液)を所望の形状に成形した後、乾燥等させることによって得ることができる。原料成形体の形状としては、例えば、膜状、塊状、繊維状、棒状、管状、粉末状、粒子状、及びスポンジ状等を挙げることができる。これらの形状の原料成形体を水不溶化させることによって、膜状、塊状、繊維状、棒状、管状、粉末状、粒子状、及びスポンジ状等の用途に応じた形状の水不溶性成形体を得ることができる。なお、必要に応じて、得られた水不溶性成形体をさらに成形して所望の形状に加工してもよい。
例えば、ポリアニオン性多糖類の水溶性塩の水溶液を適当な容器に流し入れた後、乾燥又は凍結乾燥することによって、膜状(シート状)又は塊状(ブロック状、スポンジ状)の原料成形体を得ることができる。また、ポリアニオン性多糖類の水溶性塩の水溶液をノズルから貧溶媒中に押し出すことによって、繊維状の原料成形体を得ることができる。ポリアニオン性多糖類の水溶性塩の水溶液を適当な管に充填した後、乾燥又は凍結乾燥することによって、棒状の原料成形体を得ることができる。また、乾燥したポリアニオン性多糖類を粉砕して粉体化することによって、粉末状又は粒子状の原料成形体を得ることができる。このように、本発明の医療用材料の製造方法によれば、ポリアニオン性多糖類を所望とする形状に成形した後に水不溶化処理するため、用途に応じた形状の医療用材料(水不溶性成形体)を得ることができる。
原料成形体を処理するために用いる処理液は、酸無水物を含有する。酸無水物の具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水コハク酸、無水酪酸、無水フタル酸、及び無水マレイン酸等を挙げることができる。なかでも、無水酢酸及び無水プロピオン酸が好ましい。これらの酸無水物は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
処理液は、水及び水溶性有機溶媒の少なくともいずれかの媒体をさらに含むとともに、この媒体中に酸無水物が溶解又は分散していることが好ましい。このような媒体中に酸無水物が溶解又は分散した処理液を使用することで、原料成形体を十分かつ速やかに水不溶化させて医療用材料を得ることができる。
水溶性有機溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、及びテトラヒドロフラン等を挙げることができる。なかでも、メタノール、エタノール、及びジメチルスルホキシドが好ましい。これらの水溶性有機溶媒は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
処理液中の酸無水物の濃度は、通常、0.1〜50質量%であり、5〜30質量%であることが好ましい。酸無水物の濃度が0.1質量%未満であると、得られる医療用材料の水不溶化の程度が不十分になる、或いは水不溶化に長時間を要する傾向にある。一方、酸無水物の濃度が50質量%を超えると、効果が頭打ちになる傾向にある。
なお、ポリアニオン性多糖類は親水性が高いため、原料成形体をより十分かつ速やかに水不溶化させる観点から、処理液が媒体として水を含有することが好ましい。処理液中の水の含有量は、原料成形体が溶解又は膨潤しない程度とすることが好ましい。具体的には、処理液中の水の含有量は、0.01〜50質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがさらに好ましい。処理液中の水の含有量が0.01質量%未満であると、メタノール以外の溶媒では不溶化が不十分となる場合がある。また、処理液中の水の含有量が50質量%超であると、得られる医療用材料の形状維持が困難となる場合がある。
水不溶化工程においては、酸無水物を含む処理液で原料成形体を処理する。原料成形体を処理液で処理することによって原料成形体がその形状を維持したまま水不溶化され、医療用材料が形成される。処理液で原料成形体を処理する方法は特に限定されないが、原料成形体の全体に処理液が接触するとともに、原料成形体の内部にまで処理液が浸透するように処理することが好ましい。具体的な処理方法としては、原料成形体を処理液中に浸漬する、原料成形体に処理液を塗布又は吹き付ける(噴霧する)等の方法を挙げることができる。
なお、粉末状又は粒子状の原料成形体を処理して水不溶化させる場合には、先ず、粉末状又は粒子状の原料成形体を、原料成形体を構成するポリアニオン性多糖類の水溶性塩の貧溶媒に分散させる。次いで、処理液を添加し、貧溶媒中に分散させた状態の粉末状又は粒子状の原料成形体と処理液を接触させ、原料成形体を処理液で処理すればよい。貧溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、及びテトラヒドロフラン等を用いることができる。これらの貧溶媒は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。なお、この貧溶媒は、粉末状又は粒子状の原料成形体が溶解しない程度の微量な水を含有していてもよい。
また、処理の際の温度は、処理液の沸点を超えない温度であればよく、特に限定されない。ポリアニオン性多糖類の分解変性を抑制する観点、及び媒体や副生成物等の揮散を抑制する観点からは、処理の際の温度は0〜80℃とすることが好ましく、0〜70℃とすることがさらに好ましく、室温(25℃)〜60℃とすることが特に好ましい。但し、処理の際に処理液が揮散しない条件、例えば、ヒートプレスや熱ローラー等により処理すれば、分解変性等が生ずることなく、より短時間で医療用材料を得ることができる。例えば、ヒートプレスや熱ローラー等により処理する場合、処理の際の温度は50〜90℃とすることが好ましく、処理時間は30分以下とすることが好ましい。水不溶化工程の後、必要に応じて水や水溶性有機溶媒等を用いて洗浄すること等によって、本発明の医療用材料を得ることができる。
ポリアニオン性多糖類のナトリウム塩を用いて形成した原料成形体を、無水酢酸のアルコール溶液で処理した場合に想定される反応を以下に示す。なお、想定した反応が水不溶化の一つの要因とはなりうるが、他の水不溶化要因との組み合わせ、あるいは全く別の要因により水不溶化している可能性もある。すなわち、本発明は想定される以下の反応によって何ら限定されるものではない。
Figure 2016163695
反応式(1)中、R1はポリアニオン性多糖類の主鎖を示し、R2はアルコールの主鎖を示す。無水酢酸はアルコール存在下で開裂する際に、ポリアニオン性多糖類のナトリウムを奪い、カルボキシ基がナトリウム塩型から酸型となる。この点については、医療用材料中のNa含量の測定、又は医療用材料のアルカリ溶液による滴定によって確認することができる。
反応系に水が存在する場合には、上記反応式(1)で示される反応の他に、下記式(2)で示される反応が同時に進行し、カルボキシ基がナトリウム塩型から酸型となると予想される。
Figure 2016163695
なお、得られる医療用材料は、分子中のすべてのアニオン性基が酸型となってはいなくてもよい。
ポリアニオン性多糖類の水溶性塩を用いて形成した原料成形体を塩酸等の無機酸や酢酸等の有機酸に浸漬しても、十分に水不溶化した医療用材料を得ることは極めて困難である。また、処理液中の酸無水物を、この酸無水物に対応する酸に置き換えても医療用材料を得ることはできない。このことから、ポリアニオン性多糖類のアニオン基が酸型に変化する以外の要因も加わり、医療用材料が得られると予想される。
本発明の医療用材料の製造方法においては化学的架橋剤を用いる必要がないため、得られる医療用材料を構成する分子中に科学的架橋剤に由来する官能基等の構造が取り込まれることがない。このため、上記の製造方法によって製造される本発明の医療用材料は、原料であるポリアニオン性多糖類本来の特性が保持されているとともに、安全性が高い。したがって、本発明の医療用材料は癒着防止材等として好適である。なお、本発明の医療用材料を癒着防止材の構成材料として用いる場合、医療用材料の厚さは特に限定されないが、好ましくは20〜200μmであり、さらに好ましくは60〜120μmである。
なお、本明細書における「水不溶性」とは、水に容易に溶解しない性質を意味する。より具体的には、ポリアニオン性多糖類からなる本発明の医療用材料は、水により膨潤状態とした後に乾燥する操作を2回繰り返して得た乾燥体の質量が、この操作前の乾燥質量の80%以上である。
本発明の医療用材料は、ポリアニオン性多糖類の水溶性塩及びグリセリンを含有する原材料で形成された原料成形体から、塩を構成するカチオン種の少なくとも一部を除去することで製造される。そして、本発明の医療用材料の膨潤率は、6,000質量%以下であることが好ましく、900質量%以下であることがさらに好ましく、100〜500質量%であることが特に好ましく、150〜350質量%であることが最も好ましい。このように、本発明の医療用材料のうち、膨潤率が十分に低いものについては、癒着防止材等の医療用材料の他、食品用材料や化粧品用材料として好適である。本明細書における「膨潤率」とは、「水分保持前(膨潤前)の医療用材料の質量」に対する、「水分保持後(膨潤後)の医療用材料の質量」の割合(質量%)を意味する。なお、処理液中の水の量を、例えば20質量%を超えない範囲で増加することで、比較的膨潤率の低い(例えば、6,000質量%以下の)医療用材料を製造することができる。また、処理液中の酸無水物の量を増加すること(例えば上限20質量%)で、比較的膨潤率の低い(例えば、6,000質量%以下の)医療用材料を製造することができる。
本発明の医療用材料は、化学的架橋剤を用いることなく、酸無水物を含む処理液でポリアニオン性多糖類の水溶性塩及びグリセリンを含有する原材料からなる原料成形体を処理し、原料成形体を水不溶化させて得られたものである。このため、本発明の医療用材料は、それを構成するポリアニオン性多糖類の分子が実質的に架橋していない。さらに、ポリアニオン性多糖類には、新たな共有結合が実質的に形成されていない。但し、本発明の医療用材料を構成するポリアニオン性多糖類の分子間には、水素結合、疎水結合、及びファンデルワールス力などの物理的結合が形成されていると推測される。そのような物理的結合がポリアニオン性多糖類の分子間で形成されている点については、赤外吸収スペクトルを測定することによって確認することができる。
本発明の医療用材料は、酸性からアルカリ性までの広範なpH域において安定して水不溶性なものである。但し、本発明の医療用材料は、例えばpH12以上の水性媒体に接触又は浸漬等した場合には、分子間同士の物理的結合が解離して容易に溶解しうる。
(癒着防止材及びその製造方法)
次に、本発明の癒着防止材の製造方法について説明する。本発明の癒着防止材の製造方法は、前述の医療用材料に多価アルコール又は多価アルコール水溶液を保持させる工程を有する。多価アルコールの具体例としては、エチレングルコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、メチルグリセロール、ポリオキシエレングリコシド、マルチトール、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、還元水飴、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、バリン、プロピレングリコール、グリセリン(グリセロール)、ポリグリセリン、グリセリン脂肪酸エステル等を挙げることができる。なかでも、グリセリン、キシリトール、ソルビトール、低分子ポリエチレングリコール等、医療分野や食品分野で使用されている多価アルコールが好適に用いられる。これらの好適に用いられる多価アルコールは、市場から入手してそのまま使用できる。グリセリン、ソルビトール等については、日本薬局方に適合したものを用いることが望ましい。グリセリンは、静脈への注射剤としても使用されるほど安全性の高い素材であるために特に好ましい。
医療用材料に多価アルコール又は多価アルコール水溶液を保持させる方法としては、例えば、医療用材料を多価アルコール又は所定濃度の多価アルコール水溶液に浸漬する方法等がある。すなわち、所定形状の医療用材料を多価アルコール水溶液に浸漬し、医療用材料の内部を多価アルコール水溶液で置換することで、所望とする濃度の多価アルコール水溶液を保持させて、所望とする本発明の癒着防止材を得ることができる。なお、本発明の癒着防止材の厚さは特に限定されないが、好ましくは20〜200μmであり、さらに好ましくは60〜120μmである。
(注入材)
注入材は、前述の医療用材料のうち、その形状が粉末状又は粒子状の医療用材料を含有する。注入材は、水不溶化していないヒアルロン酸の水溶性塩の水溶液等の液媒体をさらに含有してもよい。注入材を構成する医療用材料は、前述の通り、化学的架橋剤を用いることなく製造されうるものであり、原料であるポリアニオン性多糖類本来の特性が保持されているため、安全性に優れている。また、注入材は粉末状又は粒子状の医療用材料を含有するために流動性が高く、粉末又は粒子の粒径を適宜調整することで、患部等に注射針を経由して容易に注入することができる。このため、注入材は、例えば、関節変形治療用関節内注入剤、及び皮下注入剤等として有用である。
(徐放性製剤)
徐放性製剤は、前述の医療用材料と、薬学的に許容される有効成分とを含む。徐放性製剤を構成する医療用材料は、前述の通り、化学的架橋剤を用いることなく製造されうるものであり、原料であるポリアニオン性多糖類本来の特性が保持されているため、安全性に優れている。また、医療用材料は生体内で徐々に分解して吸収されるので、有効成分を徐々に放出することができる。なお、有効成分の種類は薬学的に許容されるものであれば特に限定されない。
徐放性製剤の態様としては、例えば、シート状に成形された医療用材料に有効成分又はその溶液等を含浸させたものや、医療用材料からなるカプセルと、このカプセル内に封入された有効成分とからなるもの等を挙げることができる。シートやカプセルの厚みや形状等を適宜設定することで、生体内での徐放性を制御することができる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
(実施例1)
ヒアルロン酸ナトリウム(分子量150万Da)の粉末1部及びグリセリン(日本薬局方)0.5部を含む水溶液100部を調製した。調製した水溶液100gを縦12cm×横10cmのステンレストレイに流し込み、20℃の恒温槽内で乾燥させてグリセリンを含有するヒアルロン酸ナトリウム膜を得た。得られた膜を処理液(20%無水酢酸/80%エタノール溶液)に浸漬し、50℃で1時間放置して水不溶化処理し、厚さ約100μmの水不溶性のヒアルロン酸膜を得た。得られた水不溶性のヒアルロン酸膜は、適度な柔軟性及び伸縮性を有していた。
(比較例1)
ヒアルロン酸ナトリウム(分子量150万Da)の粉末1部を含む水溶液100部を調製した。調製した水溶液100gを縦12cm×横10cmのステンレストレイに流し込み、20℃の恒温槽内で乾燥させてヒアルロン酸ナトリウム膜を得た。得られた膜を処理液(20%無水酢酸/80%エタノール溶液)に浸漬し、50℃で1時間放置して水不溶化処理し、厚さ約100μmの水不溶性のヒアルロン酸膜を得た。得られた水不溶性のヒアルロン酸膜は、実施例1で得た水不溶性のヒアルロン酸膜に比べて、柔軟性及び伸縮性に劣るものであった。
(評価1:溶解度試験)
実施例及び比較例で製造した複合膜を2cm角に切断し、直径3.5cm、深さ1.5cmの容器に入れ、PBS緩衝液(pH6.8)5mLを加えた。この容器を37℃に調整した振盪機に入れ、10〜20rpmで振盪し、経時的な状態変化を目視観察した。その結果、いずれの膜についても、72時間後であっても膜の原形が保持されており、水不溶化されていることが分かった。また、72時間後の膨潤率(膨潤膜/乾燥膜(質量比))は2.4であった。
(実施例2)
実施例1で製造した膜を、10体積%グリセリン水溶液に浸漬した後、風乾して滅菌用袋に封入した。25kGyの放射線を照射して滅菌用袋ごと滅菌して厚さ約100μmの癒着防止膜を得た。成犬(ビーグル犬、雌、1.5歳、体重約10kg)を全身麻酔処置後に開腹し、腹側壁表皮を3cm角に剥離した。剥離部分を覆うように癒着防止膜を配置して閉腹した。2週間後、同犬を全身麻酔処置後に開腹したところ、癒着は発生していなかった。また、犬の体内に配置(埋植)した癒着防止膜は、埋植後2週間で消失していた。これは、生体内のナトリウムイオン等によって癒着防止膜を構成するヒアルロン酸のカルボキシ基が徐々に中和され、可溶性のヒアルロン酸塩に変化して溶解し、生体内に吸収されたものと推測される。これに対して、癒着防止膜を配置することなく閉腹した犬については、剥離部分と腸に癒着が生じていることが観察された。
(評価2:伸縮性試験)
JIS K 7311(ポリウレタン系熱可塑性エラストマーの試験方法)に準拠した引張試験を実施し、実施例1で製造した膜の引張強度を測定した。まず、蒸留水により十分膨潤させた膜をダンベルカッターにより打ち抜き、試験片を作製した。次いで、シングルコラム型の材料試験機(商品名「STA−1150」、エーアンドディ社製)を使用し、クロスヘッド速度10mm/秒で破断強度を測定し、膜のヤング率を算出した。実施例1で製造した膜のヤング率は、11.5MPaであった。また、同様の手順で測定及び算出した、比較例1で製造した膜のヤング率は25.5MPaであり、実施例1で製造した膜の方が、比較例1で製造した膜に比して伸縮性に優れていることがわかった。
本発明の医療用材料は、癒着防止材として有用である。

Claims (5)

  1. ポリアニオン性多糖類の水溶性塩及びグリセリンを含有する原材料からなる原料成形体を、酸無水物を含む処理液で処理し、前記原料成形体を水不溶化させる工程を有する医療用材料の製造方法。
  2. 前記ポリアニオン性多糖類が、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、及びアルギン酸からなる群より選択される少なくとも一種である請求項1に記載の医療用材料の製造方法。
  3. 前記酸無水物が、無水酢酸及び無水プロピオン酸の少なくともいずれかである請求項1又は2に記載の医療用材料の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法によって製造された医療用材料。
  5. 請求項4に記載の医療用材料に多価アルコール又は多価アルコール水溶液が保持されてなる癒着防止材。
JP2016034046A 2015-02-27 2016-02-25 医療用材料の製造方法、医療用材料、及び癒着防止材 Expired - Fee Related JP6474360B2 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015038010 2015-02-27
JP2015038010 2015-02-27

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016163695A true JP2016163695A (ja) 2016-09-08
JP6474360B2 JP6474360B2 (ja) 2019-02-27

Family

ID=56876453

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016034046A Expired - Fee Related JP6474360B2 (ja) 2015-02-27 2016-02-25 医療用材料の製造方法、医療用材料、及び癒着防止材

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6474360B2 (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2019044519A1 (ja) 2017-09-04 2019-03-07 大日精化工業株式会社 医療用・美容材料の製造方法及び医療用・美容材料
JP2019037608A (ja) * 2017-08-28 2019-03-14 大日精化工業株式会社 柔軟性成形体の製造方法及び柔軟性成形体
JP2019119769A (ja) * 2017-12-28 2019-07-22 大日精化工業株式会社 水不溶性成形体の製造方法及び水不溶性成形体

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US3272640A (en) * 1960-12-22 1966-09-13 Hercules Powder Co Ltd Water insolubilizing and insensitizing process
JPH069707A (ja) * 1992-04-21 1994-01-18 Shiseido Co Ltd 高アセチル化率ヒアルロン酸及びその製造方法
JPH0625306A (ja) * 1992-04-21 1994-02-01 Shiseido Co Ltd 溶媒不溶化ヒアルロン酸及びその製造方法
JPH0853501A (ja) * 1994-08-11 1996-02-27 Shiseido Co Ltd アセチル化ヒアルロン酸の製造方法及び精製方法
WO2013018759A1 (ja) * 2011-08-02 2013-02-07 大日精化工業株式会社 癒着防止用医用材料及びその製造方法

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US3272640A (en) * 1960-12-22 1966-09-13 Hercules Powder Co Ltd Water insolubilizing and insensitizing process
JPH069707A (ja) * 1992-04-21 1994-01-18 Shiseido Co Ltd 高アセチル化率ヒアルロン酸及びその製造方法
JPH0625306A (ja) * 1992-04-21 1994-02-01 Shiseido Co Ltd 溶媒不溶化ヒアルロン酸及びその製造方法
JPH0853501A (ja) * 1994-08-11 1996-02-27 Shiseido Co Ltd アセチル化ヒアルロン酸の製造方法及び精製方法
WO2013018759A1 (ja) * 2011-08-02 2013-02-07 大日精化工業株式会社 癒着防止用医用材料及びその製造方法

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2019037608A (ja) * 2017-08-28 2019-03-14 大日精化工業株式会社 柔軟性成形体の製造方法及び柔軟性成形体
WO2019044519A1 (ja) 2017-09-04 2019-03-07 大日精化工業株式会社 医療用・美容材料の製造方法及び医療用・美容材料
JP2019119769A (ja) * 2017-12-28 2019-07-22 大日精化工業株式会社 水不溶性成形体の製造方法及び水不溶性成形体

Also Published As

Publication number Publication date
JP6474360B2 (ja) 2019-02-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6077663B2 (ja) 水不溶性成形体の製造方法及び水不溶性成形体
Mali et al. Citric Acid Crosslinked Carboxymethyl Cellulose-based Composite Hydrogel Films for Drug Delivery.
EP1137670B1 (en) Cross-linking process of carboxylated polysaccharides
CA2970853A1 (en) Grafting of cyclodextrin by amide bonds to an ether cross-linked hyaluronic acid and uses thereof
JP6474360B2 (ja) 医療用材料の製造方法、医療用材料、及び癒着防止材
JP6374088B2 (ja) 医療用材料及び癒着防止材
JP6077424B2 (ja) 水不溶性成形体の製造方法及び水不溶性成形体
Wang et al. Pharmaceutical applications of chitosan in skin regeneration: A review
JP6298576B2 (ja) 医療用材料の製造方法、医療用材料、及び癒着防止材
US11248094B2 (en) Crosslinking of biopolymers in a semi-solid state
JP2016163696A (ja) 医療用材料及び癒着防止材
WO2016206661A1 (en) Derivatives of sulfated polysaccharides, method of preparation, modification and use thereof
US20170335021A1 (en) Biocompatible composition and method for preparing same
JP2018033559A (ja) 水不溶性成形体の製造方法、水不溶性成形体、及び癒着防止材
EP3263142A1 (en) Medical/cosmetic material and adhesion preventing material
JP2019037608A (ja) 柔軟性成形体の製造方法及び柔軟性成形体
JP2019172720A (ja) 水不溶性成形体の製造方法及び水不溶性成形体
JP2018035223A (ja) 水不溶性粉末分散液の製造方法、水不溶性粉末分散液、及び膜状成形体
JP2019037609A (ja) 癒着防止材
JP2019119769A (ja) 水不溶性成形体の製造方法及び水不溶性成形体
Monteiro Injectable hydrogel based on oxidized galactomannan from Delonix regia and n-succinyl chitosan reinforced by chitin nanocrystals
MXPA01004723A (en) Cross-linking process of carboxylated polysaccharides

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20171110

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20180731

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20180731

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20190108

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20190129

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6474360

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees