【発明の詳細な説明】
モニックアシッドの酵素的調製
本発明は、シュードモニックアシッド(Pseudomonic acids)およびそのエス
テルの対応するモニックアシッド(monic acid)への変換方法に関する。
シュードモニックアシッドはよく知られた抗菌性を有する。既知のシュードモ
ニックアシッドはテトラヒドロピラニル化合物であるシュードモニックアシッド
A(ネイチャー(Nature)、1971年、第234巻、416頁;ジャーナル・
オブ・ケミカル・ソサイエティー・パーキン・トランザクションズI(JCS Perk
in Trans.I)、1977年、294頁)、シュードモニックアシッドB(ジャー
ナル・オブ・ケミカル・ソサイエティー・パーキン・トランザクションズI、1
982年、2827頁)、シュードモニックアシッドC(ジャーナル・オブ・ケ
ミカル・ソサイエティー・パーキン・トランザクションズI、1982年、28
27頁)、およびシュードモニックアシッドD(ジャーナル・オブ・ケミカル・
ソサイエティー・パーキン・トランザクションズI、1983年、2655頁)
を包含する。
特に、本発明は、シュードモニックアシッドA(ムピロシン)(I)の
モニックアシッドA(II)への変換、または
シュードモニックアシッドC(III)、またはそのメチルエステルの
モニックアシッドC(IV)への変換方法を提供する。
モニックアシッドは、特に医薬上、生物学的に活性な化合物を製造するための
出発物質として有用である。ビーチャム・グループ・パブリック・リミテッド・
カンパニー(Beecham Group plc)GB 1 587 058は、モニックアシッド
の化学的製造を記載している。化学的製法に伴う一つの問題点は生成物の抽出に
関するものであった。
そこで、シュードモニックアシッドをモニックアシッドに化学的に加水分解す
る方法に代わるものに対する要求がある。多くの加水分解酵素が知られているが
、驚くべきことに、本発明者らは、今までに試した60かそこらの一般に入手で
きる、動物、植物、および微生物の加水分解酵素(例えば、シグマ・ケミカル・
カンパニー(Sigma Chemical Company)、プール、ドーセットより入手)がいず
れも適切な活性を有さないことを見いだした。例えば、サブチリシンE.C.3.
4.
21.14は、シュードモニックアシッドAのアナログに由来の9−ヒドロキシ
ノナン酸エステルを加水分解しないことが判明した(シム(Sime)ら、1987
年、テトラヘドロン・レターズ(Tet.Lett.)第28巻(43)、5169−7
2頁)。
フレール(Freer)ら(シンセシス・アンド・アプリケーションズ・オブ・ア
イソトピカリー・ラベルド・コンパウンズ(Synthesis and Applications of Is
otopically labelled compounds)、(1988年)、プロシーディングズ・サ
ード・インターナショナル・シンポジウム(Proceedings 3rd International sy
mposium)、エルゼビア(Elsevier))は、哺乳動物酵素(ブタの肝エステラー
ゼ)を用いて、[2−14C]ムピロシンを[2−14C]モニックアシッドに変換
した。本発明者らは、これも所望のレベルの活性を提供しないことを見いだした
。
本発明者らは、現在、本発明プロセスにおいて使用に適した酵素が、ある種の
アクチノマイセツ(Actinomycetes)、特にキタサトスポリア(Kitasatosporia
)、キブデロスポランギウム(Kibdelosporangium)種、およびあるストレプト
ミセス(Streptomyces)種から由来することを見いだした。
従って、本発明は、対応するシュードモニックアシッドまたはそのエステルを
適当な微生物からの加水分解酵素と接触させることからなる、モニックアシッド
の製造方法を提供する。
シュードモニックアシッドのエステルは、本発明の加水分解酵素によって分解
され、対応するモニックアシッドを製造するものを包含する。適当なエステルは
、(C1−C6)エステル、特にメチルエステルを包含する。
本発明はまた、シュードモニックアシッドのモニックアシッドへの変換能を有
する微生物のスクリーニング方法であって、微生物をシュードモニックアシッド
と一緒にインキュベートし、シュードモニックアシッド標品と比較して抗菌活性
の喪失をアッセイすることによる方法を提供する。
特に適当な微生物は、エス・リビダンス(S.lividans)、特にエス・リビダン
ス(S.lividans)NCIMB11416、エス・グリセオフスクサス
(S.griseofuscsus)ATCC23916、およびエス・アンボファシエンス(S
.ambofaciens)ATCC23873、およびキブデロスポランギウム・アリダム
(Kibdelosporangium aridum)ATCC39922を包含する。キタサトスポリ
ア(Kitasatosporia)NCIMB40568株は新規微生物であり、それ自体が
、本発明のさらなる態様を形成する。この株は、1993年6月14日にナショ
ナル・コレクション・オブ・インダストリアル・アンド・マリン・バクテリア(
National Collection of Industrial and Marine Bacteria)(NCIMB)、
アバディーン(Aberdeen)、スコットランド(Scotland)に受託番号NCIMB
40568で寄託された。
キタサトスポリア(Kitasatosporia)種NCIMB40568は、灰色胞子形
であり、以下の性質:細胞壁ペプチドグリカン:LL−A2pm/メソ−A2pm[バ
ハナン・アール・イー(Buchanan,R.E.)およびギボンズ・エヌ・イー(Gibbo
ns,N.E.)、バージェイズ・マニュアル・オブ・デターミネイティブ・バクテ
リオロジー(Bergey's manual of Determinative Bacteiology)]を有する。
本発明による微生物培養用の培地は、適切には、無機塩と共に同化炭素源およ
び窒素源を含有する。適切な窒素源は、コーンスティープリカー、酵母抽出物、
大豆粉、肉抽出物、綿実、小麦粉、麦芽、蒸溜器乾燥可溶物、アミノ酸、蛋白質
水解物、およびアンモニウムおよび硝酸性窒素を包含する。適当な炭素源は、グ
ルコース、ラクトース、マルトース、デンプン、グリセロールおよび糖蜜(例え
ば、フォウラーズ(Fowler's))を包含する。
適当には、培地はまた、アルカリ金属イオン(例えば、ナトリウム)、ハロゲ
ンイオン(例えば、塩素)およびアルカリ土類金属イオン(例えば、カルシウム
およびマグネシウム)ならびに鉄およびコバルトのごとき微量元素を含有する。
適当には、細胞を遠心または濾過により収穫する。
本発明のバイオトランスフォーメーション/プロセスを、全細胞、無細胞抽出
物、浸透可能とされた細胞、または微生物から単離された酵素、あるいはこれら
のうちのいくつかの固定化された形態を用いて行うことができる。
バイオトランスフォーメーションを細胞全体を用いて行う場合、微生物は、生
育培養、静止培養、洗浄菌糸体、固定化細胞、またはプロトプラストの形態であ
ってもよい。
無細胞抽出物を用いる場合、適切には、物理的および/または化学的、または
酵素的溶解、または他の破壊方法、好ましくは超音波によって無細胞抽出物が製
造され、次いで、所望によりその後、細胞の破片を除去し、溶液中に酵素活性を
残存させる。
酵素は、適当には、以下の実施例に従って製造される。酵素は、通常の方法、
特に好気条件下、適当な液体または半固体培地中で微生物を培養することによっ
て製造してもよい。培養条件は、温度が5ないし50℃の範囲で、pHは3ない
し9の範囲、好ましくは6−8、最も好ましくは7.2であろう。
酵素を単離し、精製された形態、純粋でない状態で得られた場合、部分的に精
製された形態にて、破壊細胞調製物からの濾液として、または粗細胞ホモジネー
トとして使用してもよい。最適には、酵素を、例えば、少なくとも精製し、出発
物質または酵素の分解も触媒するかもしれない他の酵素を除去する。
本発明のさらなる態様において、ストレプトミセス/キタサトスポリア/キブ
デロスポランギウムからの菌糸体を、以下の実施例5および/または7(および
6)に従って、遠心し、細胞を破壊し(超音波)、続いて、分画およびクロマト
グラフィーを行って処理することで得られる、シュードモニックアシッドのモニ
ックアシッドへの加水分解能を有する酵素を提供する。
最適には、例えば、フォガーティ・アンド・ケリー(Fogarty & Kelly)編の
マイクロバイアル・エンザイムズ・アンド・バイオテクノロジー(Microbial En
zymes and Biotechnology)、369−394頁中、ポウェル(Powell)(19
90年)によって議論された方法のように、酵素を不溶性の支持体に固定化する
。この方法は、収率および処理量を増大させる利点を提供する。
出発物質のシュードモニックアシッドはGB1,395,907に記載された方
法によって製造することができる。
バイオトランスフォーメーションを細胞全体を用いて行う場合、インキュベー
ション培地は、静止細胞培地:1リットルの脱イオン水(pH6.5、またはpH
調整した水系)中、KH2PO4(2g)、K2HPO4(1.5g)、KCl(0.
2g)、MgCl2・6H2O(0.2g)、Na2SO4・10H2O(0.22g)、
グルコース(1.0g)からなる。
バイオトランスフォーメーションを無細胞抽出物を用いて行う場合、インキュ
ベーション培地は適当な緩衝液からなる。
酵素反応混合物は、基質に加えて、1つまたはそれ以上の他の補因子、例えば
金属イオンまたは安定剤、例えばチオールを含有してもよい。
本発明プロセスは、適当には、水性培地中で行われ、反応混合物を適当にはp
H4−9の範囲、より適当には6ないし8、好ましくは7.2付近、例えばpH7
.4に維持する。適当には、pHを、緩衝剤を用いて、または好ましくは酸または
塩基滴定物の添加により調整する。反応温度は、一般には、好ましくは5−50
℃、より好ましくは22−45℃、最も好ましくは32−37℃の範囲とするべ
きである。
別法として、反応を有機溶媒中、または有機溶媒、例えば、アセトン、メチル
イソブチルケトン(MIBK)の存在下で行うことができる。
反応時間は、反応物質ならびに補因子の濃度、温度およびpHのごとき因子に
依存する。
反応終了後、産物を通常の方法および以下の実施例に示すようにして単離でき
る。最初の精製は、簡便にはクロマトグラフィー工程を包含する。
次に実施例を用いて本発明を説明する。
実施例1−スクリーニングおよびアッセイ方法1.1 一次スクリーニング:
バイオトランスフォーメーションは抗菌活性の喪失を伴うので、これをシュー
ドモニックアシッドのモニックアシッドへの変換能を有する微生物を同定するた
めのアッセイの基本原理として用いた。(例えば、寒天プレートからの生育した
アクチノミセツ菌糸体を)24穴マイクロタイタープレート中に分注された3x
1ml体積のG1培地(実施例2)に植菌し、次いで、振盪しながら4日間28
℃でインキュベートした。植菌しなかった対照プレート(G1培地のみ含有)も
インキュベートした。0.05mg/mlのシュードモニックアシッドをプレー
トに添加し、プレートを再び24時間インキュベートした。次いで、50μlの
培地(2系にして)を、適当なシュードモニックアシッド感受性株、例えばスタ
フィロコッカス・オーレウス(Staphylococcus aureus)(例えば、V573)
またはイー・コリ(E.coli)(例えば、ESS株)を含有するバイオアッセイ
プレートに添加した。一晩37℃でインキュベーションした後、阻害域を測定し
た。1.2 二次スクリーニング
基質濃度を上昇させながら、インキュベーションを行い、高濃度の基質で所望
される変換能を有する培養を見いたした。G1培地(実施例2)(100ml)
を含有するフラスコ(500ml)に、水中0.02%ツイン(Tween)80中の
1.5mlの培養/菌糸体を各々植菌した。そのフラスコを28℃で4日間振盪
し(240rpm)、次いで、内容物を遠心し、次いで、静止細胞培地に再懸濁
させた(実施例2)。種々の生育密度を補うために、培養物を2ないし6xブロ
ス密度の間で再懸濁させた(生育後得られた元来の細胞密度は、1xブロス細胞
密度に等しい)。濾過滅菌後、0.05M NaH2PO4(pH7.0)中のシュー
ドモニックアシッド(10mg/ml)を各々のフラスコに添加し、最終濃度0
.5mg/mlとした。28℃で24時間振盪後、フラスコの内容物を遠心し、
上清の体積を測定し、その一部をHPLC解析用に採取した(実施例2)。
特に良好な結果が2種の培養で得られた:キタサトスポリア(Kitasatosporia
)NCIMB40568(モニックアシッドに87%変換、ブロス細胞密度は2
)およびキブデロスポランギウム・アリダム(Kibdelosporangim aridum)AT
CC39922(76.9%変換、ブロス細胞密度は2)。ストレプトミセス・
リビダンス(Streptomyces lividans)NCIMB11416でも匹敵する結果
が得られた。さらに、基質濃度が2、および5.5mg/mlでのインキュベー
ションも少数の陽性培養について行った。1.3 抽出および解析
NaClを加え、冷却した(0−5℃)上清を飽和させることにより抽出を行い
、5M HClを用いてpHを3.0に変更した。酢酸エチルを溶媒抽出に用い(3
x1/3倍容量)、次いで、MgSO4で乾燥し、ロータリーエバポレーションに
付す前に濾過した。少量(0.5ml)を一晩冷却下で放置して結晶を生成し、
次いで、それを乾燥した。HPLCによる純度アッセイ(実施例2)および1N
MRは、その構造がモニックアシッドであることを確認した。
1HNMR(250MHz)解析では、試料を重水素化DMSO中で操作し、
モニックアシッド標品と比較した。
実施例2−キタサトスポリア(Kitasatosporia)種を用いる全細胞系反応
キタサトスポリア(Kitasatosporia)種NCIMB40568の0.02%ツ
イン80を含有する水(1.5ml)中菌糸体懸濁液を用いて、G1培地(10
0ml)を含有する500mlのエルレンマイヤーフラスコに植菌した。G1培
地は、pH6.8に調整された脱イオン水(1L)中、デキストリン(30g)、
フォウラーズ(Fowler's)糖蜜(20g)、細菌学上のペプトン(7g)からな
る。フラスコを28℃で4日間振盪し、その後、ブロスを遠心し、次いで、25
0mlのフラスコ中の静止細胞培地(25ml)(pH6.5に調整された脱イオ
ン水(1L)中、KH2PO4(0.5g)、K2HPO4(1.5g)、KCl(0.
2g)、MgCl2・6H2O(0.2g)、Na2SO4・10H2O(0.22g)お
よびグルコース(1.0g))に再懸濁させた。0.05M NaH2PO4(pH7.
0)中のシュードモニックアシッド(10mg/ml)を最終濃度500μg/
mlになるように添加した。
28℃で24時間振盪後、フラスコの内容物を遠心し、その一部をHPLC(
HPLCアッセイ:−C18カラム4.6x250mm、30%MeOH/0.0
5M NaH2PO4(pH4.8)、230nm、1.5ml/分、モニックアシッ
ドRt=4.9分)により解析した。これにより、基質がモニックアシッドに8
7%変換されたことが確認された。1HNMR解析(250MHz)を行い、そ
の構造がモニックアシッドであることを確認した。
実施例3−キタサトスポリア(Kitasatosporia)種を用いる無細胞系反応
キタサトスポリア(Kitasatosporia)種NCIMB40568を、実施例2に
おいて前記したごとくG1培地を含有するフラスコ中に植菌し、28℃で48時
間フラスコを振盪した。この種培養フラスコからのブロス2mlを用い、各々、
100mlのG1培地を含有する別の6つのフラスコに植菌した。そのフラスコ
を28℃で72時間振盪し、その後、ブロスを遠心し、上清を除き、細胞を60
mlの0.2Mトリス/HCl緩衝液(pH7.4)に再懸濁させた。細胞を10
mlバッチ中で超音波を用いて(MSEソニプレップ(MSE Soniprep)、20秒
間入、40秒間切の5サイクル)破壊し、この破壊された細胞懸濁液を遠心し、
上清を残した。250μlの細胞上清に250μlのシュードモニックアシッド
溶液(8mg/ml、0.3Mトリス/HCl緩衝液(pH7.4)中)を添加し
た。その反応物を37℃で24時間振盪しながらインキュベートした。次いで、
メタノール(500μl)を添加し、その混合物を氷中で10分間冷却した。沈
澱したタンパク質を遠心によって除去し、上清を、実施例2に記載のごとくモニ
ックアシッドについてアッセイした。モニックアシッドを基質変換92%で同定
した。
実施例4−エス・リビダンス(S.lividans)を用いる無細胞系反応
ストレプトミセス・リビダンス(Streptomyces lividans)NCIMB114
16を実施例3に記載のごとく、種培養フラスコを用いて培養し、各々、100
mlのG1培地を含有する5つの産生用フラスコに植菌した。細胞を実施例3に
記載のごとく破壊し、ブロスから得られた細胞を、まず38mlの0.2Mトリ
ス/HCl緩衝液(pH7.4)に再懸濁した。250μlの細胞上清に250μ
lのシュードモニックアシッド(2mg/ml、0.2Mトリス/HCl緩衝液(
pH7.4)中)を添加した。反応物を28℃で24時間振盪しながらインキュベ
ートした。反応を実施例2に記載のごとく停止し、モニックアシッドについて
HPLCによりアッセイした。モニックアシッド産生を基質変換59%で同定し
た。
実施例5−キタサトスポリア(Kitasatosporia)種NCIMB40568由来の
半精製酵素調製物を用いる加水分解
キタサトスポリア(Kitasatosporia)種NCIMB40568を、実施例3に
おいて記載したごとく培養し、前記した超音波破壊の前に、生育培地500ml
からの菌糸体ペレットを50mlの0.2Mトリス/HCl緩衝液(pH7.4)
に再懸濁した。回収した上清を5mMジチオスレイトールおよび1%w/vの硫
酸ストレプトマイシンで処理し、次いで、0℃で30分間貯蔵した。遠心し、つ
づいて上清41mlを取り出し、その上清に5分間にわたって硫酸アンモニウム
(9.16g)を0℃で静かに撹拌しながら添加した。さらに15分間撹拌した
後、試料を遠心し、上清を残した。この上清(43ml)に硫酸アンモニウム(
5.3g)を同様にして添加した。
得られた懸濁液の一部(9ml)を遠心し、残ったペレットを2.5mlの0.
1M NaCl、10%w/vグリセロールおよび1mMジチオスレイトールを含
有する混合物に再び溶解した。ゲル濾過により脱塩した後、調製物を−20℃で
貯蔵した。
このタンパク質調製物の一部1mlを解氷し、0.2M塩化ナトリウム溶液(
1.0ml)で希釈し、得られた溶液のpHを、0.01M水酸化ナトリウム溶液
を添加することにより7.01に調整した。この撹拌した溶液に30℃でシュー
ドモニックアシッド溶液(pH7.4の脱イオン水(0.78ml)中2mg)を
添加し、得られた混合物のpHを0.01M水酸化ナトリウム溶液の添加により7
.4に維持した。
塩基を添加してモニター観察し、5時間後、シュードモニックアシッドがモニ
ックアシッドに82%変換し、この段階でのHPLCは88%の変換を示した。
10時間後、1モル等量の塩基を反応混合物に添加し、pHが一定に保たれたこ
とは、反応が停止したことを示す。反応終了時のHPLCアッセイは、モニック
ア
シッドへの96%の変換を示した。
実施例6
ストレプトミセス・リビダンス(Streptomyces lividans)NCIMB114
16からの固定化調製物を用いたシュードモニックアシッドのモニックアシッド
への変換
20%シュークロース中−70℃で貯蔵したエス・リビダンス(Streptomyces
lividans)NCIMB11416の芽胞を、1リットル当たり酵母抽出物(2
5g)、NaH2PO4・2H2O(2g)、MgSO4・7H2O(1g)、MnSO4
・4H2O(0.01g)、FeO4・7H2O(0.01g)、CaCl2・2H2O
(0.08g)およびグリセロール(15g)を含有する培地(pH6.8、40
0ml)を各々含有する5個の1リットルフラスコに植菌した。これらのフラス
コを回転振盪インキュベーター中、30℃で48時間インキュベートし、次いで
、植菌物容器に合し、次いで、1000L容量の標準型の円盤状タービン撹拌器
付き発酵装置中、800リットルのDFO3A培地(1リットル当たり、酵母抽
出物(27.5g)、グリセロール(33g)、NaH2PO4・2H2O(2.2g
)、MgSO4・7H2O(5g)、MnSO4・4H2O(0.01g)およびフォ
ーマスター(Foamaster)TDB1(ヘンケル(Henkel))(1g)、pH6.8
)に植菌した。最初の作動条件は250rpm、30℃、15psiヘッド圧、
空気流量40m3/時間、pH6.8(アンモニア調整)であった。作動中、撹拌
を300rpmに増加させ、空気流量を80m3/時間に上昇させ、ヘッド圧を
20psiに上昇させることにより、溶解酸素レベルを飽和値の約5%に維持し
た。38時間後、フラスコを約5℃に冷却し、空気流量を減少させ、撹拌速度を
低下させた。
スラッジ除去遠心(ウエストファリア(Westphalia)モデルSAMR5036
、流速10−20/(分))に通すことにより、ブロスの体積を約120Lに減
少させた。この濃縮された菌糸体ペーストのうち40Lを、温度を30℃以下に
保ちながらホモジナイザー(APVマントン−ゴウリン(APV Manton-Gaulin)
LAB60モデル、10,000psi、1リットル/分)に通すことによりホ
モ
ジナイズした。ホモジネートに40Lの0.1M NaH2PO4(pH7.0)を添
加することにより部分的に清澄化し、スラッジ除去遠心に通した。上清(80L
)の体積を、DDS M38限外濾過装置を使用することにより約25Lにまで
減少させた。8Lのこの物質を、エス・リビダンス(S.lividans)抽出物に添加
する前に2M H3PO4でpH7.8に調整した1リットルH2O中のポリエチレン
イミン(90g)の溶液を用いて0.5%ポリエチレンイミンにした。室温で1
5分間撹拌後、混合物を4600rpm(ミストラル6000セントリフュージ
(Mistral 6000 centrifuge)、1L瓶)で20分間遠心し、ペレットを除去し
た。上清を硫酸アンモニウムで飽和レベルの65%に調整した。15分後、沈澱
を遠心(上記と同じ条件)により回収し、3Lの0.1Mリン酸緩衝液(0.03
9M NaH2PO4、0.061M Na2HPO4、pH7.0)に再懸濁した。
酵素溶液を0.5Lの0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で希釈し、200gの
(NH4)2SO4を添加し、導電率を40mSに上昇させた。400gのドゥオラ
ウニー(Chauny)、フランス)を添加し(樹脂1g当たり31mgタンパク質)
、混合物を1M NaOHでpHを7.0に制御しながら一晩撹拌し、加水分解酵素
の吸着を行った。酵素−樹脂を濾過により回収し、200mlの蒸留水でフィル
ターを洗浄し、3.5Lの0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)中0.2%グルタル
アルデヒドに添加した。混合物を1時間撹拌し、酵素−樹脂を濾過により回収し
、3.5Lの0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)を添加した。この混合物を1時間
撹拌し、酵素−樹脂を濾過により回収し、4℃で湿気中にて貯蔵した。
250gの酵素−樹脂を1リットルの0.25%シュードモニックアシッドに
添加し、1M NaOHでpHを7.4に維持しながら、混合物を32℃で撹拌した
。24時間後、酵素−樹脂を濾過により回収した。濾液をモニックアシッドにつ
いて(HPLCアッセイ:10μ C18カラム(3.9x300mm、ボンダパ
ック(Bondapak))、30%メタノール、0.05M NaH2PO4、pH3.8、
1.5ml/分、Rt=4.5分)、およびシュードモニックアシッドについて(
HPLCアッセイ:10μ C18カラム(3.9x300mm、ボンダパック、
6
7%メタノール、0.06M酢酸アンモニウム、pH6.3、1.5ml/分、Rt
=5.5分)、HPLCにより解析した。その解析により、溶液中にシュードモ
ニックアシッドは残存しておらず、モニックアシッドのモル収率は63%である
ことがわかった。酵素−樹脂をさらに3回以上再使用したが、繰り返す各反応毎
にシュードモニックアシッドの消失に要する時間が増加し、4回目の酵素反応で
は96時間かかった。4回の酵素反応を通じてモニックアシッドの平均収率は8
0%であった。
最初の酵素反応からのモニックアシッド溶液を2℃に冷却し、300gの塩化
ナトリウムで飽和した。5M HClを滴下し、pHを3.0に調整した。酢酸エチ
ル(350ml)を添加し、混合物を分離前に5分間激しく撹拌した。水層を酢
酸エチル(350ml)でさらに2回以上抽出した。酢酸エチル抽出物を合し、
MgSO4で乾燥し、ロータリーエバポレーターを用いて150mlに濃縮し(温
度は30℃以下に維持)、沈澱が生じるまで氷浴中で撹拌し、次いで、一晩2℃
で貯蔵した。
生成物を濾過し、酢酸エチルで洗浄し、減圧下で乾燥し、HPLCおよび1H
NMRにより解析した。その解析により、生成物はモニックアシッドであること
が確認された。0.6gのモニックアシッドが回収された(抽出効率55%)。
実施例7
エス・リビダンス(S.lividans)NCIMB11416からの加水分解酵素の
精製
8Lの限外濾過濃縮物(実施例6)をデオキシリボヌクレアーゼ(シグマ(Si
gma)、DN−25、320mg)で処理し、4℃で1時間放置し、遠心した(
6,000xg、30分、4℃)。固体の硫酸アンモニウム(シグマグレードI
II(Sigma grade III))を撹拌しながら添加することにより、分離した上清
を硫酸アンモニウムの30%飽和レベルにした。その上清を15分間放置し、次
いで、遠心した(6,000xg、30分、4℃)。沈澱を吸引濾過(ワットマ
ン(Whatman)GF/D濾紙)することにより除去した。濾液に硫酸アンモニ
ウムを添加して80%飽和レベルにした。15分後、懸濁液を遠心した(17,
700xg、25分、5℃)。上清の除去後、沈澱を得た。
次いで、50mMリン酸水素二ナトリウム緩衝液(pH7.0)中の1M硫酸ア
ンモニウムを2.5Lになるように添加することにより沈澱物を可溶化し、次い
で、蒸留水を添加して最終体積を5.0Lにした。この操作により、50mMリ
ン酸水素二ナトリウム緩衝液(pH7.0)中の1M硫酸アンモニウムの導電率に
等しい導電率レベルを得た。この調製物を、予め前記緩衝液で平衡化した疎水的
相互作用樹脂カラム(ブチルアガロース6XL、アフィニティ・クロマトグラフ
ィー・リミティド(Affinity Chromatography Ltd.)、8.0cmx9.0cm)
に加え、室温で作動させた。
カラムを同じ緩衝液で洗浄し、50mMリン酸緩衝液中の硫酸アンモニウム濃
度を0.1M硫酸アンモニウムにまで減少させる段階的勾配を用いて溶出した。
50μlの試料を450μlのシュードモニックアシッドA(2mg/ml、0
.2Mトリス/HCl緩衝液(pH7.4)中)に添加することにより、カラム画分
をエステラーゼ活性についてアッセイした。反応物を37℃で1時間インキュベ
ートし、メタノール(500μl)を添加した。その混合物を氷中で10分間冷
却し、沈澱したタンパク質を遠心により除去した。上清を実施例2に記載したご
とくモニックアシッドについてアッセイした。タンパク質濃度をブラッドフォー
ド(Bradford)法(アナリティカル・バイオケミストリー(Anal.Biochem.)、
1974年、第72巻、248−254頁)により決定した。
活性画分を集めて1500mlにし、限外濾過(アミコン(Amicon)YM30
)により800mlに濃縮した。この濃縮物を4℃で一晩、5Lの0.5M塩化
ナトリウムおよび10%v/vグリセロールを含有する50mMリン酸水素二ナ
トリウム(pH7.0)からなる緩衝液に対して透析(スペクトロポア(Spectrop
ore)4)した。その溶液を、予め最後の緩衝液で平衡化した金属キレートアフ
ィニティ樹脂カラム(銅イオンで電荷した、キレーティング・セファロース・フ
ァスト・フロー(Chelating Sepharose Fast Flow)、ファルマシア(Pharmacia)
)、19.0cmx2.6cmに加えた。負荷体をこの緩衝液で洗浄し、次いで、
塩化
アンモニウム濃度を0−1Mに上昇させる緩衝液を用い、直線勾配に付した。カ
ラム画分を前記した方法と類似の方法でエステラーゼ活性をアッセイした。活性
を有する溶出画分をプールし(110ml)、限外濾過(YM30)で15ml
に濃縮した。限外濾過の間に、別の緩衝液(10%v/vグリセロール中の25
mMビス・トリス・プロパン(Bis Tris Propane)pH7.0)を緩衝液交換とし
て導入した。
濃縮物を、予め前記緩衝液で平衡化した陰イオン交換樹脂(リソースQ(Reso
urce Q)、1ml、ファルマシア)に加えた。洗浄後、0−1Mに上昇させる濃
度の塩化ナトリウムを含有するこの緩衝液を用い、直線溶出勾配に付した。酵素
活性アッセイは、溶出物中、3つの活性画分を示した。
活性画分のクマシブルー染色を用いたSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳
動(ファスト・ゲル(Phast Gel)、ファルマシア、勾配10−15%)による
解析は、最大酵素活性に関係している、中央の画分のピーク濃縮物が均質なタン
パク質であることを示した。このデータは、逆相HPLC解析(溶出液=0.0
8%トリフルオロ酢酸中の0−80%メタノールの勾配、λ=215nm)によ
り支持された。
活性画分のタンパク質アッセイは、全部で0.5mgタンパク質を示した(B
SA標品)。
実施例8
エス・リビダンス(S.lividans)NCIMB11416の加水分解酵素の分
子量の決定
最終のイオン交換精製における最大活性の画分(実施例7)は、逆相HPLC
(RP−HPLC)上で1つのピークを与えた。この物質をフィンニガン・レー
ザーマットインストルメント(Finningan Lasermatt Instrument)上でのレーザ
ー−デソープション・マス.スペクトロメトリー(Laser-desorption mass spec
trometry)(LD−MS)により解析し、全分子量(LD−MSによる)は、5
4048(+−200)ダルトンであった。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
C12R 1:465)
(C12N 9/18
C12R 1:01)
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AM,AT,AU,BB,BG,BR,
BY,CA,CH,CN,CZ,DE,DK,ES,F
I,GB,GE,HU,JP,KE,KG,KP,KR
,KZ,LK,LU,LV,MD,MG,MN,MW,
NL,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,S
E,SI,SK,TJ,TT,UA,US,UZ,VN
(72)発明者 シム,ジョン・トーマス
イギリス国サリー・アールエイチ3・7エ
イジェイ、ベッチワース、ブロッカム・パ
ーク(番地の表示なし) スミスクライ
ン・ビーチャム・ファーマシューティカル
ズ
(72)発明者 ウォロニエキ,ステファン・ローランド
イギリス国サリー・アールエイチ3・7エ
イジェイ、ベッチワース、ブロッカム・パ
ーク(番地の表示なし) スミスクライ
ン・ビーチャム・ファーマシューティカル
ズ
(72)発明者 イーンドル,デイビッド・アラン
イギリス国ウエスト・サセックス・ビーエ
ヌ14・8キューエイチ、ワージング、クラ
レンドン・ロード(番地の表示なし) ス
ミスクライン・ビーチャム・ファーマシュ
ーティカルズ