JPH08335506A - 高保磁力鉄基永久磁石及びボンド磁石 - Google Patents
高保磁力鉄基永久磁石及びボンド磁石Info
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Abstract
ェライトや既存のナノコンポジット磁石では達成できな
い700kA/m以上の固有保磁力(iHc)を有し、
かつ耐酸化性に優れた高保磁力鉄基永久磁石及びボンド
磁石の提供。 【構成】 FeとBを主成分とし、少量の希土類元素の
Nd,Pr,Dy、Crを7原子%を越えて含有する合
金を急速凝固法により非晶質化した後、結晶化熱処理を
施し、軟磁性相、硬磁性相および非磁性相が数十nmの
スケールで混在した金属ナノコンポジットを生成させ、
これを粉砕することにより、高保磁力で耐酸化性に優れ
たボンド磁石用磁石粉末を得る。 【効果】 PPSやナイロン66などの高融点熱可塑性
樹脂と混練し、高耐熱性の射出成形ボンド磁石を実現で
きる。
Description
い耐食性並びに耐熱性が要求され、しかも高保磁力が必
要な自動車、家庭用電化製品等に使用可能な磁石材料
で、ボンド磁石として利用可能な高保磁力鉄基永久磁石
及びボンド磁石に関する。
に使用されている永久磁石は、特殊な用途を除き、酸化
鉄を原料とするハードフェライト磁石が圧倒的な占有率
を占めている。ハードフェライト磁石の価格的利点、お
よび昇温時の減磁耐力への信頼性が、その主たる理由で
あると考えられる。しかし、ハードフェライトはセラミ
ックス材料であるため、複雑な形状に加工することが困
難であり、この点を改善するためハードフェライトの樹
脂ボンド磁石化すると、磁気特性が不十分となる難点が
あった。
磁耐力の良さの理由は、保磁力の温度係数が正であり、
室温では400kA/m程度の真の保磁力(iHc)で
も、昇温時に不可逆熱減磁を起こしにくいことによる。
他の永久磁石材料はHcjの温度係数が負であるため、
低パーミアンス係数での使用に耐え、機器の小型軽量化
にも寄与できる材料としては、昇温時の減磁耐力を確保
するために、およそ700kA/m程度以上のiHcを
有することが望まれる。
石材料は、工業的には希土類元素を含有するいわゆる
「希土類磁石」に限られている。例えば、SmCo5は
5μm程度の微粉末にして樹脂と混合し磁界中で成形す
ることにより異方性ボンド磁石とすることができ、ま
た、Sm(Co,Fe,Cu,Zr)z (z〜7)は
更に粒度の粗い100μm程度の粉末にして同様に異方
性ボンド磁石として使用できる。しかし、原料のSmお
よびCoは資源的に緊迫しており国際情勢等により価格
が大きく変動するため、工業製品としては安定供給に不
安がある上、単価も高い。
有する化合物相を主相とする鉄基の磁石材料が開発さ
れ、超急冷法により直接結晶質に急速凝固させた結晶粒
径300nm程度の等方性の永久磁石材料を400μm
以下程度に粉砕したものが工業化され、樹脂ボンド磁石
として広く用いられている(USP.4802931
号)。
源的に豊富なFeとNdとを主成分とするため価格が安
くしかも安定している。また、最近は、水素処理により
異方性の再結合集合組織にしたNd2Fe14B系の磁粉
の製造方法も提案されている(特開平2−4901号公
報)。
Fe14B基材料は鉄系の化合物を主相とするため高湿度
環境下では錆びやすく、しかも酸化傾向がSmよりも格
段に激しいNdを12〜13原子%も含有しているため
酸化しやすく、微粉状態での着火性が問題になることも
多く、また、樹脂と混合する際の粉末の酸化による特性
劣化も無視できない。
ノコンポジット磁石が提案されている(特開昭63−1
00155号公報)。この材料は、希土類化合物の硬磁
性金属相の超微細結晶が、より高磁化、高キューリー温
度、高耐食性の軟磁性金属相の超微細結晶マトリックス
中に均一に分散された、ナノコンポジット組織を有し、
高い磁化、良好な温度特性、高耐食性を有するが、保磁
力が低く、700kA/mを越えるものは見い出されて
いない。
を含有するSm−Fe−N系磁石材料が開発され(特開
平2−57663号公報)、5μm以下の微粉末とする
ことにより保磁力が700kA/m近くになることが知
られているが、微粉末であるため酸化の影響を受け易く
長期間にわたる特性安定性と、Smを含み窒化処理を必
要とすることによる原料並びに製造コストの上昇、とい
う問題点もあって現在は工業化されていない。また、価
格的に最も安いハードフェライト系では保磁力は高々4
00kA/m未満である。
低く、ハードフェライトや従来のナノコンポジット磁石
では達成できない700kA/m以上、最も好適な実施
形態では800kA/m以上の固有保磁力(iHc)を
有し、かつ耐酸化性に優れた高保磁力鉄基永久磁石及び
ボンド磁石の提供を目的とする。
/m以上の固有保磁力(iHc)を有し、かつ耐酸化性
に優れた鉄基永久磁石を目的に組成、組織について種々
検討した結果、鉄とホウ素を主成分とし、Ndに代表さ
れる負のスティーブンス因子を持つ軽希土類元素を7原
子%以下含有し、さらにクロムを7原子%を越えて含有
する合金を、急速凝固法により非晶質化した後、結晶化
熱処理を施すことにより、軟磁性相、硬磁性相および常
磁性相が数十ナノメートルのスケールで混在したナノコ
ンポジット組織を生成させ、これを粉砕することによ
り、高保磁力で耐酸化性に優れたボンド磁石用磁石粉末
が得られること、当該粉末を熱可塑樹脂または熱硬化性
樹脂と混合して射出成形または圧縮成形法により高保磁
力ボンド磁石が得られることを知見し、この発明を完成
した。
の結晶構造を有する硬磁性金属相、体心立方鉄、鉄ホウ
化物の軟磁性金属相、及び室温にて常磁性金属相からな
り、各相の大きさが直径が50nm以下であるナノコン
ポジット組織を有する合金である高保磁力鉄基永久磁石
である。また、この発明は、上記の高保磁力鉄基永久磁
石において、常磁性金属相のキューリー温度が78K未
満である高保磁力鉄基永久磁石、合金を溶融状態から急
冷することにより非晶質組織に凝固させた後、結晶化熱
処理して得られる高保磁力鉄基永久磁石を併せて提案す
る。
を有する高保磁力鉄基永久磁石において、合金の組成が
RxFe100-x-y-zByCrz (R:Pr,Ndの1種ま
たは2種あるいはPr,Ndの1種または2種にDyを
Rの40at%以下含有する希土類元素)で表され、組
成(at%)を限定するx、y、zが以下の範囲である
高保磁力鉄基永久磁石を提案する。 4≦x≦7、15≦y≦20、7<z≦30
ト組織を有する高保磁力鉄基永久磁石において、合金の
組成がRx(Fe1−uCou)100-x-y-zByCrz、(R:
Pr,Ndの1種または2種あるいはPr,Ndの1種
または2種にDyをRの40at%以下含有する希土類
元素)で表され、組成を限定するx(at%)、y(a
t%)、z(at%)及びuが以下の範囲である高保磁
力鉄基永久磁石を提案する。 4≦x≦7、15≦y≦20、7<z≦30、0<u≦
0.5
基永久磁石おいて、Feの1部をM(M:Al,Si,
Cu,Ga,Ag,Auのうち1種または2種以上)に
て置換して、Mを0.01〜3at%含有する高保磁力
鉄基永久磁石、CrとCoの含有比率が原子濃度比で
0.5〜2.0である高保磁力鉄基永久磁石を併せて提
案する。
基永久磁石おいて、高保磁力鉄基永久磁石を粒径300
μm以下に微粉砕して得た磁石粉末に、結合剤を60v
ol%以下添加混合して成形固化したボンド磁石を提案
する。また、この発明は、上記のボンド磁石において、
結合剤は熱硬化性樹脂または融点が250℃以上の熱可
塑性樹脂であるボンド磁石を併せて提案する。
製造方法とともに説明する。従来、希土類元素の含有量
が少ないナノコンポジット永久磁石材料は、原料コスト
が低く、従来にない高磁化が得られる可能性が指摘さ
れ、盛んに研究されている。例えば、E.F.Knel
ler等の論文(IEEE Trans. Magn.
27,3588(1991))、本発明者らによる論
文(IEEETrans. Magn. 29,268
3(1993)、J. Appl.Phys. 73,
6488(1993)等)がある。すなわち、軟磁性相
を多量に含みこれが硬磁性相と強固な交換相互作用によ
り結合することにより、系全体があたかも単一の硬磁性
相からなるかのごとく振る舞うという特徴を有するが、
保磁力は概して低く、実用化には至っておらず、この対
策が一つの焦点である。iHcが600kA/m程度の
ものは本発明者らにより既に見い出されたが、700k
A/mを越えるものは提案されていなかった。
素を種々検討した結果、クロムにより鉄を置換すること
により、適当な製造条件の下で適量の常磁性相を分散さ
せ、保磁力を飛躍的に増大させることができることを知
見し、さらに、この常磁性相は磁気的秩序化温度(キュ
ーリー温度)が液体窒素温度(78K)以下であること
を見いだした。
磁石材料は、軟磁性相として体心立方鉄と鉄のホウ化物
を含み、硬磁性相としてはNd2Fe14B型結晶構造を
有する希土類を含有した鉄系化合物相を含有し、これら
析出相の結晶粒径はおよそ20nmないし50nmの程
度である。結晶粒の大きさはNd2Fe14Bの単磁区粒
子の臨界直径(約300nm)と比較してたいへん小さ
い。
交換相互作用により結合していることは、硬磁性相と軟
磁性相の混成ナノコンポジット材料が高磁気特性を得る
必要条件の一つである。この発明では、更にこれらに常
磁性相を分散させることにより、前記強磁性相間の交換
結合の経路を適度に抑制し有効に遮断して、ナノコンポ
ジット磁石の特質を失うことなく、保磁力を大幅に高め
ることに成功したものである。すなわち、近接する軟磁
性相と硬磁性相の間には強固な交換結合を維持しつつ、
分散した常磁性相が交換結合の経路を適度に遮断して、
コンポジットの内部で局所的に生じた磁化回転が遠距離
に伝搬することを抑制する効果により、コンポジットの
保磁力が向上するものと考えられる。
らなる多相組織の磁性体が、単に異なる保磁力を持った
強磁性体の混合物に特有な2段階の減磁挙動を示さず
に、あたかも単一の硬磁性相からなる磁性体のような滑
らかな減磁曲線を有するためには、原子磁気モーメント
の向きが揃った領域の大きさの指標である交換結合距離
(Lex)の程度に、それぞれの相の結晶粒径を小さく
する必要がある。Lexの大きさは、体心立方鉄の場合
約20nmの程度であり、両側を硬磁性相で挟まれた体
心立方鉄は20nm×2=40nm程度の大きさであれ
ば、硬磁性相の磁化の方向と同じ向きに磁化を保つこと
ができる。現実には平均粒径が50nm程度であって
も、この発明の目的に適合した保磁力が得られるので、
平均結晶粒径を50nm以下に限定する。
作用を遮断する効果が失われ、また、永久磁石は通常室
温以上で使用されるので、磁気秩序化温度(キューリー
温度)は室温よりも充分低くなくてはならない。特に、
超低温での使用が想定される場合は、冷媒として液体窒
素ないし液体空気が使用されることが多いので、常磁性
相のキューリー温度は前記冷媒温度である78K以下で
あることが好ましい。
温度をメスバウアー効果で測定すると、Cr20%含有
の場合、液体窒素温度(78K)でも常磁性であった。
この常磁性相はクロムの添加により生成され、その生成
量はクロム濃度が10原子%を越えると顕著になる。鉄
の原子核をプローブとしたメスバウアー効果により内部
磁界のない常磁性相中にある鉄の原子核の比率を測定す
ると、Cr10原子%の時はおよそ全体の21%、20
原子%の時はおよそ29%である。
晶構造は現在のところ不明であるが、鉄原子全体の20
%以上もの常磁性相が含まれるにもかかわらず、粉末X
線回折では体心立方鉄とFe2BおよびNd2Fe14Bに
帰属できる正方晶相(以上はいずれも室温で強磁性相)
の回折ピーク以外に明確な回折ピークが観察されず、バ
ックグラウンドとしてハローパターンが観察されること
から、この常磁性相は非晶質の残存相ではないかと考え
られる。Crはこの非晶相中に濃縮して非晶質相を安定
化している可能性が高い。
7原子%未満の試料では観察されず、それらの試料では
保磁力(HcJ)の値は600kA/m程度である。ま
た、クロムの増加に伴って常磁性相が生成しその占める
比率が高まるが、Cr添加量が多すぎると合金の磁化の
値がどんどん低下してしまう。さらに、クロム添加によ
るHcJ増強の効果は、20原子%を越えると飽和に漸近
し、30%以上添加すると磁化の値が非常に低下するの
で、Crの含有量は7原子%を越え30原子%以下に限
定する。
Nd−Fe−B系超急冷永久磁石材料の製造工程と異な
る特徴の1つは、この発明の組成領域では、合金は、非
晶質状態では磁化が低いが、熱処理により結晶化すると
磁化が増加し、同時に保磁力が増加するという現象であ
る。例えば、Nd4.5Fe57B18.5Cr20組成の非晶質
合金は、外部磁界800kA/mの時の磁化の値が10
0mT(ミリテスラ)程度であるが、900Kで420
秒熱処理すると約800kA/mのHcJが発現し、磁
化は500〜600mTに増加する。このような特徴
は、従来の直接結晶質状態の磁性薄帯を得るNd−Fe
−B系超急冷磁石の場合には認められないものであっ
て、本発明合金の非晶質状態を経由する製造工程を特徴
づける重要な点である。
鉄=ホウ素合金に若干の希土類を添加し、更に保磁力向
上のために上述のクロムを添加した合金を、溶融状態か
ら急冷凝固法により一旦非晶質組織に凝固させたのち、
これを加熱して結晶化させることにより製造される。こ
の時、急冷凝固法により得た非晶質合金中に非平衡結晶
相が含有されている場合もあるが、この非平衡相は結晶
化熱処理過程で消失し、結晶化後に得られる組織中には
含まれないので許容される。一方、溶融状態からの凝固
速度を適度に制御して最終結晶相を直接得る方法は、体
心立方鉄の粗大結晶粒を生成する傾向が強く、磁石特性
のうち保磁力、Hk、最大磁気エネルギー積などを低下
させるので、好ましくない。
生成能が高く好ましく、15原子%未満では体心立方鉄
が急冷凝固合金中に粗大結晶として結晶化する傾向が強
くなり、急冷条件が厳しくなるので好ましくない。一
方、含有量が20原子%を越えるとNd2Fe14Bが生
成せず、磁気異方性およびキューリー温度の低い立方晶
系の準安定相が結晶化する傾向があるため所期の磁気特
性が得られないので、B含有量は15原子%〜20原子
%に限定する。
と同様に負のスティーブンス因子を持つ軽希土類元素、
すなわち、Prも使用でき、Rは全量がNdまたはPr
の1種または2種とすることができる。重希土類ではT
b,Dy,Hoが負のスティーブンス因子を持つ希土類
元素であるが、磁気モーメントがNdと逆方向を向くた
め磁化が低下する。特にTb、Hoは生産量が少なく原
料コストが上がる原因となるのでそれらの使用は好まし
くない。
素の中でDyは、比較的低価格でありNd−Fe−B系
の焼結磁石では添加元素として用いられているので大量
に生産されており、入手し安いので、RとしてDyをN
dまたはPrの1種または2種と組み合せることができ
るが、その場合Dyの量は、R全量の40原子%以上と
なると磁化の低下が著しいうえ、原料コストも上昇する
ので好ましくなく、よって、Dyの量はR全量の40原
子%以下とする。
型結晶構造の晶出量とは関係があり、希土類濃度が高い
ほど晶出量は多くなるが、7原子%を越えるとNd2F
e14Bが晶出しなくなり、磁気特性の好ましくない準安
定相が晶出する組成領域が存在する。従って、Nd2F
e14B型結晶構造の硬磁性相が非晶質からの熱処理によ
り結晶化する組成は、B20原子%以下、希土類(R)
7原子%以下の領域に限られる。R量の下限値は実用材
料として求められる保磁力(iHc)の大きさにより制
限される。この発明の目的とする高保磁力、具体的には
700kA/m以上のiHcを発現させるためには、少
なくとも4原子%のR量が必要である。Crを添加する
ことにより最適なR濃度はやや高濃度側に移行する傾向
にあり、少なくとも4原子%、最も好ましくは5原子%
以上が必要である。
するが、この問題は、クロムと同時にコバルトを添加す
ることにより回避できる。CoとCrの比率は、両者の
キューリー温度への寄与度は効果が(+)と(−)で絶
対値がほぼ等しいので、キューリー温度の回復のために
は、原子比でほぼ等量用いることが望ましい。すなわ
ち、合金中のCoとCrの含有比率が0.5〜2であれ
ば、磁気特性の温度依存性が良好で、保磁力の大きい永
久磁石が得られるため、特に好ましい。クロム、コバル
トなどの添加元素は鉄を一部置換する形で添加される。
は、溶融状態における合金の流動性を改善することであ
り、非晶質合金を製造する上で重要な利点となる。すな
わち、非晶質合金製造工程としてメルトスピニング法を
選択する場合、溶湯温度を比較的低く選べ、ノズルの閉
塞を大幅に低減し、安定したリボンもしくはテープ状の
非晶質合金の製造を容易にする。これらの利点は製造コ
ストの低減に非常に有利である。
ることが望ましい。この発明磁石の組成範囲では結晶化
後の合金の磁化は、FeとCoの組成比に対しスレータ
ー=ポーリング曲線のFe−Co合金のブランチと類似
の組成変化を示し、Co置換量が50%を越えると飽和
磁化の低下が著しくなると共に、合金の原料価格が上昇
して好ましくない。
なわちAl,Si,Cu,Ga,Ag,Auは、単独ま
たは複合添加して鉄基のナノコンポジット磁石において
磁気特性を向上させる効果を発揮し、CrおよびCoと
同時に添加してもその効果が認められる。特に、減磁曲
線の角型性を改善し、磁気エネルギー積を改善すること
に有効であり、Mを単独又は複合して添加でき、少なく
とも0.01原子%の添加が必要であるが、添加量は少
量で良く、3原子%を越えるとその効果が失われるばか
りか、かえって角型性の低下をもたらす。好ましくは、
0.5〜1.0原子%の添加が効果的である。
ず作製し、これを熱処理により結晶化するわけである
が、クロムの添加により非晶質状態が安定化する傾向が
あるので、クロム濃度が高いこの発明の合金では熱処理
に関して特別の配慮が必要となり、この発明の重要な側
面を形成している。一般に、Nd−Fe−B系のFe3
Bに近い組成領域では合金の非晶質の生成能が高く、N
d濃度がおよそ7原子%付近以下では、非晶質状態を加
熱昇温していくと約850K近傍でまずホウ化鉄が結晶
化する。このホウ化物はクロム濃度が5原子%未満の場
合、主として体心正方晶構造のFe3Bであるが、5原
子%以上では主としてFe2Bとなる傾向がある。
の結晶化に引き続いておよそ20K高い温度でNd2F
e14Bの第2の結晶化が起こるが、Fe3Bの結晶化に
伴う発熱により温度が上昇するので、第1の結晶化に続
いて自動的に第2の結晶化が起こる。しかし、クロム濃
度の増加と共に、この第2の結晶化温度が高温側に移動
する。クロム濃度が10原子%になると、前述のように
既に構成相が室温で常磁性の相と体心立方鉄、Fe
2B、およびNd2Fe14B構造を持った相の諸相となっ
ているが、これらの結晶化は、体心立方鉄とホウ化鉄の
結晶化がほぼ同時に進行し、次いでNd2Fe14B相が
結晶化し、クロムは残存非晶質相中に濃縮され、更に高
温で残存非晶質相の一部がクロム濃度の高いNd2Fe
14B構造に結晶化すると考えられる。常磁性相の生成が
どのクロム濃度以上で起こるかについては正確な判定は
困難であるが、およそ7原子%以上と考えられる。
晶化が2段階に分かれて進行するので、第2の結晶化過
程までに第1の結晶化過程で生じた軟磁性相が結晶粒成
長すると、所望のナノコンポジット組織とならず粗大な
軟磁性相の形成が磁石特性を低下させる要因となる。従
って、結晶化熱処理の際の昇温速度が極めて重要な製造
上の制御因子となっている。
晶化熱処理における温度の昇温は、結晶化が充分完了す
るために一定の反応時間を与え得るよう充分緩やかに行
われねばならないと同時に、第2の結晶化過程までに第
1の結晶化相が粒成長できないよう充分速やかに行われ
ねばならない。この相反する要請を満足する結晶化熱処
理の昇温温度は、第1の結晶化温度以上第2の結晶化温
度直上まで、10℃/分から50℃/分の範囲であるこ
とが実験の結果分かった。より具体的には、500℃か
ら定められた熱処理温度までを上記の範囲で昇温すれば
良い。
晶質合金はある程度の準安定相の結晶相を含んでいても
良い。このことは非晶質作製時の凝固速度が、合金を完
全な非晶質にするのに必要な冷却速度よりも比較的遅く
ても良いことを示している。その結果、この発明の場
合、結晶化熱処理前の非晶質合金は充分に構造緩和が進
んだものになっており、第1の結晶化温度までの昇温速
度を任意に選ぶことが許される。
金を実際に磁石部品として利用する方法をも提供する。
この発明の合金磁石は、その製造工程の特徴から薄いリ
ボンまたはフレークの形状で得られ、これらは容易に粉
砕ができて粉末として供給することができる。しかしな
がら、ナノコンポジット組織が準安定であるという特徴
のために、この粉末を圧縮成形して焼結することは通常
の圧力下では困難である。すなわち、結晶粒成長が進行
する傾向が700℃程度の低温でも見られるが、このよ
うな低温で焼結を進行させるためには高圧装置が必要と
なり、安価な材料を提供することができない。この磁性
材料を最も有効にかつ有用に利用するための方法は、樹
脂などの結合剤と混合して成形固化し、ボンド磁石とし
て用いることである。
が選択できる。その際、磁石材料の粉砕粒径は300μ
m以下が、成形体の寸法精度、磁粉の充填密度、成形体
の機械的強度、粉体の流動性などを良好に保つために適
している。粉砕粒径が300μmを越えると、磁粉の粒
径が磁気部品の寸法と同程度になる場合が起こり、磁気
的、機械的に均質な磁気部品の形成が困難になり、好ま
しくない。成形後の製品の後加工を完全に無くすかある
いは大幅に軽減するためには、極めて細いゲートを通し
て射出成形することが必要であり、良好な流動性と寸法
精度を両立する必要から磁粉の直径は100μm程度が
良く、さらには75μm以下が好ましい。
意に用いることができる。すなわち、熱硬化性樹脂と混
合して圧縮成形する方法、熱可塑性樹脂を用いて射出成
形もしくは押し出し成形する方法、などが代表的な成形
方法として知られており、この発明の磁石材料に対して
はこれらの公知の方法を適用することができる。熱硬化
性樹脂としては、一般に希土類ボンド磁石に使用されて
いるエポキシ樹脂と硬化材を使用できる。具体的には、
耐熱性を有したグリシジルエーテル型ないしグリシジル
アミン型エポキシ樹脂が好ましく、前者の例としてはビ
スフェノールA、ビスフェノールS、フェノールノボラ
ック、オルソクレゾールノボラック型などのエポキシ樹
脂が、後者の例としてはテトラグリシジル・ジアミノフ
ェニルメタン、m−アミノフェノール、p−アミノフェ
ノールなどのエポキシ樹脂が知られている。また、熱可
塑性樹脂としてはポリアミド(ナイロン)が一般的であ
り、ナイロン6やナイロン12が適している。
て高い温度にさらされる、自動車用部品や家庭用電子機
器などへの適用を目的として、高融点の熱可塑性樹脂を
用いた高特性ボンド磁石を提供することができ、使用す
る樹脂としては高融点の熱可塑性樹脂が必要とされる。
従来用いられているナイロン6やナイロン12の融点は
それぞれおよそ220℃、180℃であるが、これらよ
り融点が高いナイロン46、ナイロン66、PPS(ポ
リフェニレンサルファイド)樹脂などを使用する。これ
らの高融点樹脂の融点はそれぞれ290℃、260℃、
280℃である。
ならば、荷重0.45MPaの時、ガラス繊維で強化さ
れないナイロン6は175℃、ナイロン12は145℃
程度である。これに対し、ナイロン46は285℃、ナ
イロン66は240℃、PPS樹脂は約260℃であ
る。そこで、この発明の高融点樹脂の融点を従来樹脂と
区別するため250℃以上に限定するが、樹脂の種類は
ここに例示したものに限定されるものではなく、強靭化
のためにより他の樹脂と混合、すなわちアロイ化するな
どの種々設計が可能である。
の樹脂粉末と磁粉とを予め混合した後、加熱して樹脂を
溶融され、充分な剪断応力を加えながら混練する。この
時の温度はナイロン6および12の場合で約200〜2
50℃、ナイロン46ないし66やPPSなどの高融点
樹脂の場合約300℃以上である。従って、この発明に
よる磁石材料の極めて好ましい利用方法として、75μ
m程度以下に微粉砕してPPSやナイロン66などの高
融点熱可塑性樹脂と混練することにより、今までのNd
−Fe−B系超急冷合金磁石粉末(MQP−B粉、GM
製)では磁粉の易酸化傾向のために実現困難であった、
高耐熱性のボンド磁石を実現することができる。
た耐酸化性を有し、しかも高保磁力であり、保磁力の温
度係数が絶対値において小さいため不可逆熱減磁率が小
さい、すなわち、耐熱性に優れているので、硬化処理も
しくは混練・成形工程を高温下で行うことができる。ま
た、同じ理由により、比較的細かい粉末を用いても、発
火性が低く粉塵爆発を起こしにくい。従って、例えば射
出成形の際にゲート径が小さい、あるいは微小部品であ
って、磁粉の粒度に上限があるような場合に対しても、
従来のNd−Fe−B系超急冷磁石材料より細かく微粉
砕ができ、安定なコンパウンドを製造することが可能で
ある。
率が高いほど高い磁気特性が得られることはいうまでも
ないが、成形方法によっても好ましい混合比率は異な
る。圧縮成形の場合、高い磁気特性が求められることが
多く、成形体の強度が低下しない範囲でできるだけ少量
の樹脂を混合することが望ましい。また、樹脂量を不必
要に多くすると、成形時に樹脂が金型から沁みだして、
バリなどの生成原因となったり成形体の表面の平滑性が
失われたりするので好ましくない。射出成形において
も、樹脂比率が高くなるに従い、磁化、残留磁束密度、
磁気エネルギー積など、磁粉比率に依存する磁気特性が
低下するのは明白であり、60%を越えて混合すると、
ハードフェライトを原料とした高充填ボンド磁石の代表
的な特性にも満たなくなるので、本発明の意義が失われ
る。
ニング装置を用いて周速度20m/sで回転する銅製ロ
ール上に口径0.8mmの石英ノズルより吹き付け、幅
約2.5mmのテープ状非晶質合金を得、これを305
μm以下に粗粉砕した後、15℃/分の昇温速度でアル
ゴン雰囲気中で加熱し、900℃〜915℃に約5分間
保持して冷却した。このようにして得た結晶質の粉末の
磁気特性を試料振動型磁力計を用いて測定したところ、
表1および表2に示す数値を得た(反磁界補正無し)。
さらに50μm程度に粉砕してアルミニウムフォイル上
に接着剤と供に薄く塗布し、メスバウアー効果測定用試
料とした。57Co核から放射されるガンマ線を用いて57
Fe核のメスバウアー効果を液体窒素温度(77K)で
測定し、試料中の鉄原子核の内部磁界分布を解析し、内
部磁界によるスペクトルの分裂のない成分を非磁性相の
寄与として、試料中の非磁性相の存在比率を見積もっ
た。その数値も表1に示した。
粉砕せずに900℃で結晶化して結晶質の永久磁石フレ
ークを作製し、研磨とイオンミリングにより薄片試料と
して高分解能走査型電子顕微鏡で観察し、局所分析を行
った。その結果、試料は直径10〜30nmの細かな領
域からなることが分かった。これらの領域は大部分がそ
のひとつひとつが結晶粒であり、CrはNd:Fe=
1:7に近い領域の内のあるものには濃縮されて存在
し、同じ組成比の他のものには余り含まれないことが分
かった。Crの多い部分が非磁性化していると解釈でき
る。この部分は非晶質の可能性がある。
の永久磁石粉末を得た。これを表3に示す条件で融点2
80℃のPPS樹脂と混合し、330℃で混練した後、
冷却して射出成形磁石用コンパウンドを得た。これらの
コンパウンドをシリンダー温度310℃、金型温度12
0℃の射出成形機で成形しボンド磁石を作製した。これ
らのボンド磁石の磁気特性を表3に示す。
で希釈したクレゾールノボラック型エポキシ樹脂と混合
し、アルコールを蒸発させて圧縮成形用コンパウンドと
したのち、直径10mmの金型を用いて圧縮成形し、1
70℃で樹脂を加熱硬化させてボンド磁石を作製した。
このボンド磁石の磁気特性をB−H測定装置により測定
し、表4に示す磁気特性を得た。
量の希土類元素のNd,Pr,Dy、Crを7原子%を
越えて含有する合金を急速凝固法により非晶質化した
後、結晶化熱処理を施し、軟磁性相、硬磁性相および常
磁性相が数十nmのスケールで混在した金属ナノコンポ
ジットを生成させ、これを粉砕することにより、高保磁
力で耐酸化性に優れたボンド磁石用磁石粉末を得るもの
で、希土類含有量が少なく耐酸化性が良好であり、微粉
砕しても発火性が低く粉塵爆発も起こし難く、樹脂との
混合を高温で行っても磁気特性の劣化が少ないことか
ら、今までのNd−Fe−B系超急冷合金磁石粉末では
困難であった、75μm程度以下に微粉砕してPPSや
ナイロン66などの高融点熱可塑性樹脂と混練した、高
耐熱性のボンド磁石を実現できる。
Claims (9)
- 【請求項1】 Nd2Fe14B型の結晶構造を有する硬
磁性金属相、体心立方鉄、鉄ホウ化物の軟磁性金属相、
及び室温にて常磁性金属相からなり、各相の大きさが直
径が50nm以下であるナノコンポジット組織を有する
合金である高保磁力鉄基永久磁石。 - 【請求項2】 請求項1において、常磁性金属相のキュ
ーリー温度が78K未満である高保磁力鉄基永久磁石。 - 【請求項3】 請求項1または請求項2において、合金
を溶融状態から急冷することにより非晶質組織に凝固さ
せた後、結晶化熱処理して得られる高保磁力鉄基永久磁
石。 - 【請求項4】 請求項1、請求項2または請求項3にお
いて、合金の組成がRxFe100-x-y-zByCrz (R:
Pr,Ndの1種または2種あるいはPr,Ndの1種
または2種にDyをRの40at%以下含有する希土類
元素)で表され、組成(at%)を限定するx、y、z
が以下の範囲である高保磁力鉄基永久磁石。 4≦x≦7、15≦y≦20、7<z≦30 - 【請求項5】 請求項1、請求項2または請求項3にお
いて、合金の組成がRx(Fe1−uCou)100-x-y-zBy
Crz、(R:Pr,Ndの1種または2種あるいはP
r,Ndの1種または2種にDyをRの40at%以下
含有する希土類元素)で表され、組成を限定するx(a
t%)、y(at%)、z(at%)及びuが以下の範
囲である高保磁力鉄基永久磁石。 4≦x≦7、15≦y≦20、7<z≦30、0<u≦
0.5 - 【請求項6】 請求項4または請求項5において、Fe
の1部をM(M:Al,Si,Cu,Ga,Ag,Au
のうち1種または2種以上)にて置換して、Mを0.0
1〜3at%含有する高保磁力鉄基永久磁石。 - 【請求項7】 請求項5または請求項6において、Cr
とCoの含有比率が原子濃度比で0.5〜2.0である
高保磁力鉄基永久磁石。 - 【請求項8】 請求項1、請求項2、請求項3、請求項
4、請求項5、請求項6、または請求項7において、高
保磁力鉄基永久磁石を粒径300μm以下に微粉砕して
得た磁石粉末に、結合剤を60vol%以下添加混合し
て成形固化したボンド磁石。 - 【請求項9】 請求項8において、結合剤は熱硬化性樹
脂または融点が250℃以上の熱可塑性樹脂であるボン
ド磁石。
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- 1995-06-30 JP JP18841795A patent/JP3641021B2/ja not_active Expired - Lifetime
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