JPH08326877A - 終減速機の潤滑装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、ドライブピニオンシャフトの推進
軸側端部を軸支する第１軸受側の潤滑を確実に果たし得
ることを目的としている。 【構成】 このため、一端部位がフランジ部を介して推
進軸に連絡されるとともに他端部位にデファレンシャル
ギヤに連絡するリングギヤに噛合するドライブピニオン
ギヤが設けられたドライブピニオンシャフトを有し、ド
ライブピニオンシャフトの推進軸側端部を軸支する第１
軸受を設け、ドライブピニオンシャフトのデファレンシ
ャルギヤ側端部を軸支する第２軸受を設け、終減速機の
デフキャリアとフランジ部間にドライブピニオンオイル
シールを設け、第１、第２軸受間に潤滑油を供給する潤
滑油供給通路を配設する終減速機の潤滑装置において、
第１、第２軸受間且つドライブピニオンシャフト外周部
位に、第１軸受と第２軸受との夫々側に潤滑油を分割し
第１軸受側に所定の油面レベルを確保するオイルシール
を設けている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は終減速機の潤滑装置に
係り、特にドライブピニオンシャフトの推進軸側端部を
軸支する第１軸受側の潤滑を確実に果たす終減速機の潤
滑装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】自動車等の車両、例えば、前置き内燃機
関後車輪駆動方式の車両に搭載された内燃機関の駆動力
は、変速機により所望のトルク・回転数に変換して取り
出され、推進軸を介して終減速機により夫々左右アクス
ル軸に伝達され、左右車輪を駆動する。

【０００３】前記終減速機は、推進軸にドライブピニオ
ンシャフトの一端が連結されており、このドライブピニ
オンシャフトの他端側にドライブピニオンギヤが固設さ
れ、このドライブピニオンギヤがリングギヤに噛合して
いる。このリングギヤは、デフケースに固定されてい
る。

【０００４】このデフケース内には、デフピニオンシャ
フトに支持された第１、第２デフピニオンギヤが取付け
られている。この第１、第２デフピニオンギヤには、第
１、第２デフサイドギヤが噛合している。この第１、第
２デフサイドギヤは、車両の左右方向に指向する第１、
第２アクスルシャフトに夫々連絡されている。

【０００５】前記デフケースは、デフサイドベアリング
たる第１、第２デフサイド円錐ころ軸受を介してデフキ
ャリヤの第１、第２デフサイドベアリングボス部に支持
されている。

【０００６】前記終減速機の潤滑装置としては、実公昭
５８−５６４５１号公報に開示されるものがある。この
公報に開示される車両用ディファレンシャル装置の潤滑
構造は、ディファレンシャルキャリヤに形成されている
オイルリターンホールの出口側の開口部と、キャリヤの
内部で回転自在に支持されているドライブピニオンシャ
フトのドライブピニオンが位置する個所との間に、これ
らを上下方向に関して区画することでオイルリターンホ
ールの出口から排出されるオイルの流れと、ドライブピ
ニオンの回転によって連れまわりするオイルの流れとの
干渉を避ける隔壁をキャリヤの内壁から一体に形成し、
しかも隔壁によって区画されたオイルリターンホールの
延長部分の流通断面積をオイルリターンホールと比較し
て実質的に変化しないように設定し、フロントベアリン
グおよびフロントオイルシールに対する冷却ならびに潤
滑効果を良好に保持し、ベアリングおよびオイルシール
の摩耗や損傷を防止している。

【０００７】また、実公昭６３−３２４５５号公報に開
示されるものがある。この公報に開示される自動車用終
減速機の潤滑機構は、差動装置及びこれの一側に固着し
たリングギヤを支持するキャリアに設けた筒状軸支部に
てドライブピニオンシャフトが前後一対の軸受を介して
軸支され、ドライブピニオンシャフトの一端が筒状軸支
部の一端開口部に設けたオイルシールを通してキャリア
外に延出するようにしてなる自動車用終減速機におい
て、差動装置及びリングギヤを収容する第１室内にてリ
ングギヤによって掻き上げられた潤滑油を両軸受間に形
成された第２室及び軸受とオイルシール間に形成された
第３室に導く油戻孔を筒状軸支部の一側にドライブピニ
オンシャフトと並列に設けるとともに、第３室に流入し
た潤滑油を第１室に導く油戻孔を筒状軸支部の他端にド
ライブピニオンシャフトと並列に設け、且つ油供給孔の
第３室に開口する開口部の下端を第２室に開口する下端
より所定量下方に位置させ、潤滑性を良好としている。

【０００８】更に、実開昭６０−１２８０５９号公報に
開示されるものがある。この公報に開示される車両用終
減速装置のオイルシール装置は、ファイナルドライブを
収容するハウジングと、ハウジングに形成された貫通孔
を通して設けられ、ファイナルドライブに回転力を伝達
する伝達軸と、伝達軸をその軸方向に所定間隔を隔てて
回転可能に支持する一対のころがり軸受と、ころがり軸
受の内周輪間に介挿され、内周輪間に加えられる互いに
接近する方向の締着力を受けて軸方向に弾性変形し、締
着力を維持する所定長さの筒状のスペーサとを備えた車
両用終減速装置において、貫通孔のオイルシールをする
ためのオイルシール装置であって、スペーサところがり
軸受の内周輪との間に介挿されて伝達軸に嵌合されるボ
ス部と、ボス部に一体的に形成されてスペーサの少なく
とも端部を収容する筒状部とを有するシール用スリーブ
部材と、スリーブ部材の筒状部外周面と貫通孔内周面と
の間に取り付けられた環状のオイルシールとを備えてい
る。

【０００９】

【発明が解決しようとする課題】ところで、従来の終減
速機の潤滑装置においては、図３に示す如く、図示しな
い車両に前上がり状態とすべく所定の傾斜角度αを有し
て搭載される終減速機１０２のデファレンシャルギヤ１
０４のデフケース１０６内に、デフピニオンシャフト１
０８に支持された第１、第２デフピニオンギヤ１１０−
１、１０１−２が取付けられている。

【００１０】この第１、第２デフピニオンギヤ１１０−
１、１１０−２には、第１、第２デフサイドギヤ１１２
−１、１１２−２が噛合している。この第１、第２デフ
サイドギヤ１１２−１、１１２−２は、車両の左右方向
に指向する第１、第２アクスルシャフト１１４−１、１
１４−２に夫々連絡されている。

【００１１】また、前記終減速機１０２は、一端部位が
フランジ部１１６を介して図示しない推進軸に連絡され
るとともに、他端部位にデファレンシャルギヤ１０４に
連絡するリングギヤ１１８に噛合するドライブピニオン
ギヤ１２０が設けられたドライブピニオンシャフト１２
２を有している。

【００１２】更に、ドライブピニオンギヤ１２０を固定
したドライブピニオンシャフト１２２の推進軸側端部を
軸支する第１軸受１２４を設け、ドライブピニオンシャ
フト１２２のデファレンシャルギヤ１０４側端部を軸支
する第２軸受１２６を設け、前記終減速機１０２のデフ
キャリア１２８とフランジ部１１６間にドライブピニオ
ンオイルシール１３０を設け、前記第１、第２軸受１２
４、１２６間に潤滑油を供給する潤滑油供給通路１３２
を配設している。

【００１３】そして、図４に示す如く、デフキャリア１
２８内に潤滑油戻り通路１３８を形成し、第１、第２軸
受１２４、１２６をデフケース１０６側に戻している。
このとき、図３に示す如く、第１、第２軸受１２４、１
２６間且つデフキャリア１２８の下部内壁部位に堰１４
０を形成し、前記第１軸受１２４側に流入した潤滑油の
油面レベルを、記号Ｈ０の如く確保している。なお、符
号Ｈは、終減速機１０２内の潤滑油の油面レベルであ
る。

【００１４】しかし、前記潤滑油供給通路１３２を介し
て流入する潤滑油は、終減速機１０２が所定の傾斜角度
αを有して搭載されることにより、大半が第２軸受１２
６側に流れることとなり、第１軸受１２４及びドライブ
ピニオンオイルシール１３０への供給量が少なく、第１
軸受１２４に焼き付き・カジリ等が発生する惧れがあ
り、実用上不利であるという不都合がある。

【００１５】また、極低温時には、潤滑油の粘性が大と
なって流入量が低下するとともに、急傾斜登坂時には、
終減速機が更に傾斜することによって堰による潤滑油貯
留量が小となり、改善が望まれていた。

【００１６】

【課題を解決するための手段】そこで、この発明は、上
述不都合を除去するために、一端部位がフランジ部を介
して推進軸に連絡されるとともに他端部位にデファレン
シャルギヤに連絡するリングギヤに噛合するドライブピ
ニオンギヤが設けられたドライブピニオンシャフトを有
し、前記ドライブピニオンシャフトの推進軸側端部を軸
支する第１軸受を設け、ドライブピニオンシャフトのデ
ファレンシャルギヤ側端部を軸支する第２軸受を設け、
前記終減速機のデフキャリアとフランジ部間にドライブ
ピニオンオイルシールを設け、前記第１、第２軸受間に
潤滑油を供給する潤滑油供給通路を配設する終減速機の
潤滑装置において、前記第１、第２軸受間且つ前記ドラ
イブピニオンシャフト外周部位には第１軸受と第２軸受
との夫々側に潤滑油を分割し第１軸受側に所定の油面レ
ベルを確保するオイルシールを設けたことを特徴とす
る。

【００１７】

【作用】上述の如く発明したことにより、推進軸からの
駆動力は、ドライブピニオンシャフトに伝達され、ドラ
イブピニオンギヤを介してリングギヤに伝達されるとと
もに、デファレンシャルギヤに伝達される。そして、リ
ングギヤは終減速機内に収容される潤滑油を掻き上げ、
潤滑油供給通路に潤滑油を流入させ、潤滑油供給通路に
よって第１軸受と第２軸受間に潤滑油を供給させ、供給
される潤滑油は、前記オイルシールによって第１軸受と
第２軸受との夫々側に分割されて夫々流入し、第１軸受
側から流入した潤滑油は、第１軸受を通過してドライブ
ピニオンオイルシール側に流れ、オイルシールによって
所定の油面レベルに確保され、第１軸受側の潤滑を確実
に果たしている。

【００１８】

【実施例】以下図面に基づいてこの発明の実施例を詳細
に説明する。

【００１９】図１及び図２はこの発明の実施例を示すも
のである。図１及び図２において、２は図示しない車両
に前上がり状態とすべく所定の傾斜角度αを有して搭載
される終減速機、４はデファレンシャルギヤである。

【００２０】このデファレンシャルギヤ４のデフケース
６内には、デフピニオンシャフト８に支持された第１、
第２デフピニオンギヤ１０−１、１０−２が取付けられ
ている。この第１、第２デフピニオンギヤ１０−１、１
０−２には、第１、第２デフサイドギヤ１２−１、１２
−２が噛合している。この第１、第２デフサイドギヤ１
２−１、１２−２は、車両の左右方向に指向する第１、
第２アクスルシャフト１４−１、１４−２に夫々連絡さ
れている。

【００２１】また、前記終減速機２は、一端部位がフラ
ンジ部１６を介して図示しない推進軸に連絡されるとと
もに、他端部位にデファレンシャルギヤ４に連絡するリ
ングギヤ１８に噛合するドライブピニオンギヤ２０が設
けられたドライブピニオンシャフト２２を有している。

【００２２】更に、ドライブピニオンギヤ２０を固定し
たドライブピニオンシャフト２２の推進軸側端部を軸支
する第１軸受２４を設け、ドライブピニオンシャフト２
２のデファレンシャルギヤ４側端部を軸支する第２軸受
２６を設け、前記終減速機２のデフキャリア２８とフラ
ンジ部１６間にドライブピニオンオイルシール３０を設
け、前記第１、第２軸受２４、２６間に潤滑油を供給す
る潤滑油供給通路３２を配設する。

【００２３】そして、前記第１、第２軸受２４、２６間
且つ前記ドライブピニオンシャフト２２外周部位に、第
１軸受２４と第２軸受２４との夫々側に潤滑油を分割し
第１軸受２４側に所定の油面レベルＨ１を確保するオイ
ルシール３４を設ける構成とする。

【００２４】詳述すれば、オイルシール３４は、ドライ
ブピニオンシャフト２２外周に配設すべく環状に形成さ
れ、潤滑油供給通路３２の第１軸受２４と第２軸受２４
との夫々側に位置する供給口部３６を、第１軸受２４側
の第１供給口部３６−１と第２軸受２４側の第２供給口
部３６−２とに分割する。そして、第１軸受２４側の第
１供給口部３６−１の口部寸法Ｌ１と第２軸受２４側の
第２供給口部３６−２の口部寸法Ｌ２との関係を、図１
から明かな如く、Ｌ１＞Ｌ２に設定する。

【００２５】また、前記終減速機２のデフケース６内の
油面レベルは、図１に記号Ｈで示される如き状態にあ
る。このとき、前記第１軸受２４側に流入した潤滑油の
油面レベルを、オイルシール３４によって記号Ｈ１とす
るものである。

【００２６】つまり、第１軸受２４側に流入した潤滑油
は、第２軸受２６側への流れがオイルシール３４によっ
て遮断されていることにより、第１軸受２４を通過して
ドライブピニオンオイルシール３０側に流れるものであ
り、このオイルシール３０側に流れた潤滑油を、前記ド
ライブピニオンシャフト２２に対して略平行且つ略同一
高さ位置とすべくデフキャリア２８内に形成した潤滑油
戻り通路３８を介してデフケース６側に戻しており、前
記第１軸受２４側に流入した潤滑油の油面レベルが、オ
イルシール３４によって記号Ｈ１に確保される。

【００２７】次に作用について説明する。

【００２８】図示しない推進軸からの駆動力は、フラン
ジ部１６を介してドライブピニオンシャフト２２に伝達
され、ドライブピニオンギヤ２０を介してリングギヤ１
８に伝達され、デファレンシャルギヤ４に伝達される。

【００２９】そして、デファレンシャルギヤ４に伝達さ
れた駆動力は、第１、第２アクスルシャフト１４−１、
１４−２を駆動させる。

【００３０】このとき、前記リングギヤ１８は、デフケ
ース８内に収容される潤滑油を掻き上げ、図１に示す如
く、潤滑油供給通路３２に潤滑油を流入させ、この潤滑
油供給通路３２によって第１軸受２４と第２軸受２４間
に潤滑油を供給する。

【００３１】供給される潤滑油は、前記オイルシール３
４によって第１軸受２４と第２軸受２４との夫々側に分
割され、第１軸受２４側の第１供給口部３６−１と第２
軸受２４側の第２供給口部３６−２とから夫々流入す
る。

【００３２】そして、第１軸受２４側の第１供給口部３
６−１から流入した潤滑油は、第２軸受２６側への流れ
がオイルシール３４によって遮断されていることによ
り、第１軸受２４を通過してドライブピニオンオイルシ
ール３０側に流れ、所定の油面レベルＨ１まで達した際
に、潤滑油戻り通路３８を介してデフケース６内に戻さ
れる。

【００３３】これにより、第１軸受２４に常時最適な油
量の潤滑油を供給することができ、特に急傾斜の登坂、
極低温時の走行開始時における第１軸受２４とドライブ
ピニオンシール３０との耐久性を向上し得て、実用上有
利である。

【００３４】また、停止時に所定の油面レベルＨ１が確
保できることにより、走行開始直後に潤滑油の供給が遅
れても、第１軸受２４とドライブピニオンシール３０と
のカジリを効果的に防止することができ、部品の使用寿
命を長くし得て、経済的に有利である。

【００３５】

【発明の効果】以上詳細に説明した如くこの発明によれ
ば、一端部位がフランジ部を介して推進軸に連絡される
とともに他端部位にデファレンシャルギヤに連絡するリ
ングギヤに噛合するドライブピニオンギヤが設けられた
ドライブピニオンシャフトを有し、ドライブピニオンシ
ャフトの推進軸側端部を軸支する第１軸受を設け、ドラ
イブピニオンシャフトのデファレンシャルギヤ側端部を
軸支する第２軸受を設け、終減速機のデフキャリアとフ
ランジ部間にドライブピニオンオイルシールを設け、第
１、第２軸受間に潤滑油を供給する潤滑油供給通路を配
設する終減速機の潤滑装置において、第１、第２軸受間
且つドライブピニオンシャフト外周部位に、第１軸受と
第２軸受との夫々側に潤滑油を分割し第１軸受側に所定
の油面レベルを確保するオイルシールを設けたので、第
１軸受に常時最適な油量の潤滑油を供給することがで
き、特に急傾斜の登坂、極低温時の走行開始時における
第１軸受とドライブピニオンシールとの耐久性を向上し
得て、実用上有利である。また、停止時に所定の油面レ
ベルが確保できることにより、走行開始直後に潤滑油の
供給が遅れても、第１軸受とドライブピニオンシールと
のカジリを効果的に防止することができ、部品の使用寿
命を長くし得て、経済的に有利である。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の実施例を示す終減速機の装着状態の
概略断面正面図である。

【図２】終減速機の断面平面図である。

【図３】この発明の従来の技術を示す終減速機の装着状
態の概略断面正面図である。

【図４】終減速機の断面平面図である。

【符号の説明】 ２ 終減速機 ４ デファレンシャルギヤ ６ デフケース ８ デフピニオンシャフト １０−１ 第１デフピニオンギヤ １０−２ 第２デフピニオンギヤ １２−１ 第１デフサイドギヤ １２−２ 第２デフサイドギヤ １４−１ 第１アクスルシャフト １４−２ 第２アクスルシャフト １６ フランジ部 １８ リングギヤ ２０ ドライブピニオンギヤ ２２ ドライブピニオンシャフト ２４ 第１軸受 ２６ 第２軸受 ２８ デフキャリア ３０ ドライブピニオンオイルシール ３２ 潤滑油供給通路 ３４ オイルシール ３６ 供給口部 ３６−１ 第１供給口部 ３６−２ 第２供給口部 ３８ 潤滑油戻り通路

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 一端部位がフランジ部を介して推進軸に
   連絡されるとともに他端部位にデファレンシャルギヤに
   連絡するリングギヤに噛合するドライブピニオンギヤが
   設けられたドライブピニオンシャフトを有し、前記ドラ
   イブピニオンシャフトの推進軸側端部を軸支する第１軸
   受を設け、ドライブピニオンシャフトのデファレンシャ
   ルギヤ側端部を軸支する第２軸受を設け、前記終減速機
   のデフキャリアとフランジ部間にドライブピニオンオイ
   ルシールを設け、前記第１、第２軸受間に潤滑油を供給
   する潤滑油供給通路を配設する終減速機の潤滑装置にお
   いて、前記第１、第２軸受間且つ前記ドライブピニオン
   シャフト外周部位には第１軸受と第２軸受との夫々側に
   潤滑油を分割し第１軸受側に所定の油面レベルを確保す
   るオイルシールを設けたことを特徴とする終減速機の潤
   滑装置。