JPH08326776A - 摩擦材を両面に具えたプレートと片面に具えたプレートを組み合わせた多板摩擦係合装置 - Google Patents

摩擦材を両面に具えたプレートと片面に具えたプレートを組み合わせた多板摩擦係合装置

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JPH08326776A
JPH08326776A JP7155605A JP15560595A JPH08326776A JP H08326776 A JPH08326776 A JP H08326776A JP 7155605 A JP7155605 A JP 7155605A JP 15560595 A JP15560595 A JP 15560595A JP H08326776 A JPH08326776 A JP H08326776A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 摩擦熱を吸収する熱容量を高めた多板摩擦係
合装置の提供。 【構成】 多板摩擦係合装置50は交互に配列された外
歯プレート53,54,55と内歯プレート56,57
とが摩擦材62を介して係合することによってトルク伝
達を行なうようになっており、摩擦材62は、配列の始
めと終わりに位置する外歯プレート53,55以外の外
歯プレート54のコアプレート74の片面と、配列の始
めに位置する内歯プレート56のコアプレート76の両
面と、残りの内歯プレート57のコアプレート77の片
面とに固着されている。摩擦熱は、摩擦板が接触する外
歯プレート53,55とコアプレート74,77とに吸
収される。外歯プレート53,55の背面から摩擦熱が
逃がされる。これによって、多板摩擦係合装置50の熱
容量が高められる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車のオートマッチ
クトランスミッション、産業用若しくは建設機械用のト
ランスミッション等に使用され、摩擦熱を吸収する熱容
量を高めるための多板摩擦係合装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、図5に示すように、この種の多板
摩擦係合装置10は、外歯プレート(メイティングプレ
ート)21,22,22,23と、コアプレート14の
両面に摩擦材25,25が固着された内歯プレート(摩
擦板)24,24,24とが交互に配列されたトルク伝
達構造20を有している。
【0003】トルク伝達構造20は、ピストン15を図
5において矢印A方向に移動させて、外歯プレート2
1,22,23と内歯プレート24を圧接させることに
よってトルクを伝達し、矢印B方向に移動させて上記圧
接を解除させることによってトルクの伝達を断つように
なっている。外歯プレート21,22,23と内歯プレ
ート24とが接するとき、外歯プレート21,22,2
2,23と、摩擦材25とに、摩擦熱が発生する。
【0004】ところが、摩擦材25は断熱性の材質から
なっているため、大部分の摩擦熱は、内歯プレート24
のコアプレート14には伝わらず、摩擦材25が接触す
る相手の部材、すなわち、外歯プレート21,23の片
面と外歯プレート22の両面とに吸収される。そこで、
外歯プレートの熱容量を大きくするためには、外歯プレ
ートの厚みを大きくすることが効果的である。
【0005】摩擦材が接触する相手部材の厚みと接触面
の温度との関係を実験によって求めて、そのデータをグ
ラフにしたのが図7である。グラフの横軸は接触面の単
位面積当たりの吸収エネルギー(Kg・m/平方cm)
を相手部材の厚みの値で割って得られた値(qv)を示
し、縦軸は接触面の最高温度(Tmax℃)を示してい
る。図7のグラフによると、相手部材の厚みが厚い程、
接触面の温度が低いことがわかる。すなわち、摩擦材に
接触する相手プレートの厚みとその熱容量は、比例関係
にあることがわかる。
【0006】従って、外歯プレートの厚みを厚くする
と、摩擦材の温度上昇を抑制してトルク伝達構造の寿命
を延ばすことができる。しかし、外歯プレート22の厚
みを厚くして熱容量を大きくしようとすると、外歯プレ
ートと内歯プレートとの配列方向の長さL1が長くなる
という問題点が生じる。
【0007】そこで、コアプレート14の両面に摩擦材
25が固着されて摩擦熱の吸収に殆ど寄与していない3
枚の内歯プレート(摩擦板)24に着目して、上記の問
題点に対処したのが、図6の多板摩擦係合装置30のト
ルク伝達構造40である。このトルク伝達構造40は、
外歯プレート41,42のコアプレート31,32の厚
みと内歯プレート44のコアプレート34の厚みとを図
5の外歯プレート22の厚みの略半分にして、コアプレ
ート31,32,34の片面に摩擦材45を固着し、外
歯プレート42,42,43のみならず、内歯プレート
44にも摩擦熱を吸収させるようにしたものである。
【0008】又、このトルク伝達構造40は、コアプレ
ート31,32,34の厚みを図5の外歯プレート22
の厚みの略半分にしてあるので、外歯プレート41,4
2,43と内歯プレート44の配列方向の長さL2を短
くすることができるようになっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところが、図6に示す
ような多板摩擦係合装置30のトルク伝達構造40は、
ピストン35に近い左端の外歯プレート41に摩擦材4
5が固着されているため、その外歯プレート41で摩擦
熱を吸収し、その背面36から摩擦熱を逃がすことがで
きない構成になっている。
【0010】これに対して、図5に示すような多板摩擦
係合装置10のトルク伝達構造20は、左端の外歯プレ
ート21に摩擦材25が固着されていないため、その外
歯プレート21で摩擦熱を吸収し、その背面16から摩
擦熱を逃がすことができる構成になっている。
【0011】従って、図6に示すようなトルク伝達構造
40は、図5の場合より全体の長さL2を短くすること
ができても、外歯プレート41で摩擦熱を吸収しその背
面36から摩擦熱を逃がすことができないため、結果的
に、図5の場合に比して、摩擦係合装置の熱容量を増加
させることができないという問題点を有している。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、交互に配列さ
れた外歯プレートと内歯プレートとが摩擦材を介して係
合することによってトルク伝達を行なう多板摩擦係合装
置において、前記摩擦材は前記配列の始めと終わりに位
置する外歯プレート以外の外歯プレートのコアプレート
の片面と、前記配列の始め又は終わりに位置する内歯プ
レートのコアプレートの両面と、残りの内歯プレートの
コアプレートの片面とに固着されている多板摩擦係合装
置により、前記の課題を解決した。
【0013】
【作用】摩擦熱は、摩擦材が接触する外歯プレートのコ
アプレートと内歯プレートのコアプレートとに吸収され
る。内歯プレートのコアプレートも摩擦熱を吸収する役
目をしているため、コアプレートの厚みが摩擦熱の吸収
に有効に利用される。但し、配列の始め又は終わりに位
置する内歯プレートは、両面に摩擦材を具えているた
め、摩擦熱を吸収することができない。しかし、配列の
始めと終わりの外歯プレートは、摩擦材を具えていない
ため、摩擦熱を吸収することができるとともに、吸収し
た摩擦熱を背面から逃がすこともできる。このことによ
って、多板摩擦係合装置の熱容量が増加する。
【0014】
【実施例】以下、本発明の実施例を図1乃至図4に基づ
いて説明する。多板摩擦係合装置50は、ドラム51、
ピストン52、複数枚の外歯プレート53,54,5
4,55、内歯プレート56,57,57等を有してい
る。これ等の内、外歯プレート53,54,54,5
5、内歯プレート56,57,57は、トルク伝達構造
70を構成している。
【0015】外歯プレート53,54,55は、ドラム
51のスプライン59に係合して、図1の矢印A、B方
向へ移動できるようになっている。内歯プレート56,
57,57も、ハブ60上のスプライン61に係合し
て、図1の矢印A、B方向へ移動できるようになってい
る。外歯プレート53,54,55と、内歯プレート5
6,57,57は交互に配列され、この配列は外歯プレ
ート53で始まって、外歯プレート55で終わってい
る。
【0016】トルクを伝達する摩擦材62は、図1にお
いて、配列の中間の外歯プレート54,54のコアプレ
ート74の右側面と、左端の内歯プレート56のコアプ
レート76の両面と、残りの内歯プレート57のコアプ
レート77の右側面とに固着されている。配列の両端の
外歯プレート53,55には摩擦材が設けられていな
い。
【0017】なお、図3の多板摩擦係合装置150のト
ルク伝達構造170のように、摩擦材162の設ける場
所を、配列の中間の外歯プレート154,154のコア
プレート174の左側面と、右端の内歯プレート156
のコアプレート176の両面と、残りの内歯プレート1
57のコアプレート177の左側面とに変更してもよ
い。このトルク伝達構造170においても、配列の両端
の外歯プレート153,155には摩擦材が設けられて
いない。
【0018】次に動作を説明する。ドラム51とピスト
ン52との間に圧油が供給されると、ピストン52は、
図1の矢印A方向へ移動させられて、外歯プレート5
3,54,55と内歯プレート56,57とをストッパ
63に押し付け、外歯プレートと内歯プレートとを互い
に圧接させて、ドラム51とハブ60との間でのトルク
の伝達を行なわせる。圧油の供給を止めると、ピストン
52は、スプリング58によって図1の矢印B方向へ押
し戻されて、外歯プレートと内歯プレートとの圧接を解
除し、ドラム51とハブ60との間でのトルクの伝達を
断つ。
【0019】外歯プレート53,54,55と内歯プレ
ート56,57とが互いに接するときに生じる摩擦熱
は、摩擦材62が接触する外歯プレート53,55と、
外歯プレート54のコアプレート74と、内歯プレート
57のコアプレート77とに吸収される。両端の外歯プ
レート53,55は、吸収した摩擦熱を背面64,65
から逃がすこともできる。
【0020】図3のトルク伝達構造170も同様にし
て、摩擦熱は、外歯プレート153,155、コアプレ
ート174,177に吸収される。両端の外歯プレート
153,155は、吸収した摩擦熱を背面164,16
5から逃がすこともできる。
【0021】従って、図2、図3の多板摩擦係合装置5
0,150のトルク伝達構造70,170は、図5の従
来の2枚のコアプレート14に対応する2枚のコアプレ
ート77,177に摩擦熱を吸収させて、コアプレート
77,177の厚みを熱容量の増加に寄与させているこ
との他に、外歯プレート53,55,153,155の
背面64,65,164,165から摩擦熱を逃がすこ
とができるようになっているので、全体的に熱容量を高
めることができる。
【0022】又、トルク伝達構造70,170の外歯プ
レートと内歯プレートの配列方向の長さL3、L4は、
コアプレート77,177の厚みを図5の外歯プレート
22の厚みの略半分にしてあるので、図5の外歯プレー
トと内歯プレートの配列方向の長さL1より短く、且
つ、図6の外歯プレートと内歯プレートの配列方向の長
さL2と同じである。
【0023】なお、前述のように、熱容量は、摩擦材が
係合する相手プレートの厚みに依存しているから、本発
明による熱容量の増大は、単純な計算によっても算出可
能であり、摩擦面1面当たりの熱容量が図5、図6の場
合より、約16%増えるという結果になる。さらに、こ
のような熱容量を増加させる構造は、摩擦面を4面以上
有するトルク伝達構造において特に効果が大きい。
【0024】本発明の効果は、多板摩擦係合装置の係合
・解放動作を繰り返して得た図4のグラフによって示さ
れるように、摩擦材の摩擦係数の経時変化が少なくなる
ことからも、実証された。実験は、内径148.9m
m、外径179.6mmの摩擦材を具えた多板摩擦係合
装置を約45秒間係合状態にし、約15秒間解放状態に
する係合・解放を1サイクルとして約2000サイクル
繰り返して行なわれた。実験時の多板摩擦係合装置の入
力側の回転数は、約4000rpm、外歯プレートと内
歯プレートとを冷却する油の流量は約1000cc/m
inである。グラフの横軸は係合・解放のサイクル数を
示し、縦軸は摩擦係数μを示している。
【0025】図4のグラフにおいて、曲線Cは図1、図
3のトルク伝達構造70,170の摩擦材の摩擦係数の
変化を示し、曲線Dは図6に示す摩擦材の摩擦係数の変
化を示し、曲線Eは図5の摩擦材の摩擦係数の変化を示
している。このグラフから、図1、図3のトルク伝達構
造70,170の摩擦材の摩擦係数の変化が最も少ない
ことが判明する。このことは、図1、図3の多板摩擦係
合装置が、熱容量が大きいことによって、摩擦面の温度
上昇が抑制され、そのことによって、摩擦材の劣化が抑
制されるとともに、摩擦係数の低下が抑制され、結果的
に、摩擦係合装置としての性能を長期間保持することが
できることを示している。
【0026】なお、図2、図3のトルク伝達構造70,
170の熱容量を図5の従来のトルク伝達構造20と同
一にした場合には、図2、図3のトルク伝達構造70,
170の長さを従来のトルク伝達構造20よりも短くす
ることができる。この場合には、多板摩擦係合装置の小
形化と軽量化を図ることができる。
【0027】
【発明の効果】本発明の多板摩擦係合装置は、配列の始
めと終わりに位置する外歯プレート以外の外歯プレート
のコアプレートの片面と、配列の始め又は終わりに位置
する内歯プレートのコアプレートの両面と、残りの内歯
プレートの片面とに摩擦材を固着した構成にしたので、
外歯プレートの他に、内歯プレートにも摩擦熱を吸収さ
せることができるとともに、配列の始めと終わりに位置
する外歯プレートの背面から摩擦熱を逃がすこともでき
て、多板摩擦係合装置の熱容量を高めることができる。
又、熱容量を高めることができることによって、摩擦材
の摩擦係数の経時変化が少なくなり、多板摩擦係合装置
を長期間使用することができるようになる。さらに、外
歯プレートと内歯プレートの配列方向の長さを従来と同
一にした場合には、内歯プレートの厚みを従来よりも厚
くして、多板摩擦装置自体の剛性を高めることができ
る。逆に、熱容量を従来と略同一にした場合には、外歯
プレートと内歯プレートの配列方向の長さを短くして、
多板摩擦係合装置の小型化と軽量化を図ることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の多板摩擦係合装置の軸方向に沿った
断面図である。
【図2】 内歯プレート、外歯プレートの配列の概略図
である。
【図3】 内歯プレート、外歯プレートの他の配列の概
略図である。
【図4】 多板摩擦係合装置の係合・解放の動作回数に
対する摩擦材の摩擦係数の変化を示す実験結果のグラフ
である。
【図5】 従来の内歯プレート、外歯プレートの配列の
概略図である。
【図6】 従来の内歯プレート、外歯プレートの配列の
概略図である。
【図7】 摩擦材が接触する相手部材の厚みと接触面の
温度との関係を示す実験結果のグラフである。
【符号の説明】
50,150 多板摩擦係合装置 62,162
摩擦材 53,54,55,153,154,155 外歯プレ
ート 56,57,156,157 内歯プレート 74,174 外歯プレートのコアプレート 76,77,176,177 内歯プレートのコアプレ
ート

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 交互に配列された外歯プレートと内歯プ
    レートとが摩擦材を介して係合することによってトルク
    伝達を行なう多板摩擦係合装置において、前記摩擦材は
    前記配列の始めと終わりに位置する外歯プレート以外の
    外歯プレートのコアプレートの片面と、前記配列の始め
    又は終わりに位置する内歯プレートのコアプレートの両
    面と、残りの内歯プレートのコアプレートの片面とに固
    着されていることを特徴とする、多板摩擦係合装置。
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