JPH08325481A - 粉体塗料用樹脂組成物 - Google Patents

粉体塗料用樹脂組成物

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JPH08325481A
JPH08325481A JP27280695A JP27280695A JPH08325481A JP H08325481 A JPH08325481 A JP H08325481A JP 27280695 A JP27280695 A JP 27280695A JP 27280695 A JP27280695 A JP 27280695A JP H08325481 A JPH08325481 A JP H08325481A
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久男 池田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】耐衝撃性、耐候性等に優れた硬化物性を与える
粉体塗料用樹脂組成物を提供する。 【解決手段】下記(A)成分、(B)成分、及び(C)
成分; (A)1000〜20000の数平均分子量、5〜20
0の酸価、及び30〜120℃のガラス転移温度を有す
るカルボキシル基含有樹脂、(B)式(1): 【化1】 で表されるトリス(β−メチルグリシジル)イソシアヌ
レート、及び(C)開環重合抑制剤として、式(2): 【化2】 で表される結合を分子中に有するアミン、及びオニウム
塩より成る群の中から選ばれた少なくとも1種の化合
物、を含有する粉体塗料用樹脂組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高い耐衝撃性や耐
候性等を兼ね備えた、カルボキシル基含有樹脂とエポキ
シ基を有する硬化剤を利用した粉体塗料用樹脂組成物に
関する。
【0002】
【従来の技術】現在、粉体塗料用樹脂としてエポキシ系
樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリ
塩化ビニール系樹脂、ポリエチレン系樹脂などが用いら
れている。近年塗膜の物理的特性、平滑性の点から熱硬
化性樹脂が主流となっている。しかし、熱硬化性樹脂
は、縮合系樹脂を用いた場合やブロックイソシアネート
を硬化剤に用いた場合は、硬化時に縮合脱離成分やブロ
ック剤等がガスとなって発生し、塗膜に気泡を生じやす
いという欠点がある。
【0003】そこで粉体塗料に用いられる好ましい硬化
剤としては、硬化反応時に脱離成分のないポリグリシジ
ル化合物があげられる。しかしながら一般のグリシジル
化合物、例えば、ビスフェノール型ジグリシジルエーテ
ルを硬化剤として用いる場合は、低分子量型のビスフェ
ノール型ジグリシジルエーテルは室温で液体であり、カ
ルボキシル基含有樹脂と溶融混練し、粉砕して粉体塗料
化した際に粉末が貯蔵中に融着(ブロッキング)すると
いう問題を生じる。
【0004】一方、高分子量型のビスフェノール型ジグ
リシジルエーテルは、単位重量部当たりの官能基(エポ
キシ基)数が少ないために、高添加量になりコストの上
で不利となるので好ましくない。また、高分子量型のビ
スフェノール型ジグリシジルエーテルを多量に添加する
と、塗料の溶融粘度が高くなり、塗膜の平滑性が損なわ
れるという問題も生じる。
【0005】つまり、硬化剤としては、通常室温付近で
は固体であり、溶融粘度が低い事、更に単位重量部当た
りの官能基数が多いことが好ましいのである。この様な
硬化剤として、一分子中に3個のグリシジル基或いはこ
れに類似の官能基を有する化合物は、例えば、トリグリ
シジルイソシアヌレートやトリス(β−メチルグリシジ
ル)イソシアヌレートが挙げられる。
【0006】トリグリシジルイソシアヌレートは、結晶
性が高い為、融点は100〜140℃と高い。その為に
カルボキシル基を含有する樹脂と均一に混練するには、
ある程度高い温度(融点付近の温度)で混合する必要が
あるが、このトリグリシジルイソシアヌレートは反応性
が高く、混練時の温度でも、カルボキシル基とグリシジ
ル基の硬化反応が幾らか進み、粉体塗料化し、焼付け時
(熱硬化時)にフロー性(流動性)が僅かではあるが低
下し、塗膜表面にオレンジピールと呼ばれる肌あれが発
生する場合があった。
【0007】一方、トリス(β−メチルグリシジル)イ
ソシアヌレートは、融点が70〜100℃であり、カル
ボキシル基を含有する樹脂と100℃付近、或いはそれ
以下の比較的低温で、均一な混練が可能となる為に、混
練時の硬化反応を抑制できるので上記の問題は起こらな
い。このトリス(β−メチルグリシジル)イソシアヌレ
ートを用いた例として、特開昭49−24244号公報
には、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル、ジヒドロ
キシアルコール、多価カルボン酸等より合成される酸価
30〜200のポリエステル樹脂、及びトリス(β−メ
チルグリシジル)イソシアヌレートからなる粉体塗料用
樹脂組成物が開示されている。
【0008】特開昭49−94722号公報には、遊離
ヒドロキシル基含有ポリエステル樹脂、酸無水物、及び
トリス(β−メチルグリシジル)イソシアヌレート等の
エポキシ化合物からなる粉体塗料用樹脂組成物の製造法
が開示されている。特開昭50−19832号公報に
は、側鎖にエステル結合を介してカルボキシル基を含有
したポリエステル樹脂と、トリス(β−メチルグリシジ
ル)イソシアヌレート等のエポキシ化合物とからなる粉
体塗料用樹脂組成物の製造法が開示されている。
【0009】特開昭51−44130号公報には、遊離
のフェノール性水酸基を有するポリエステル樹脂と、2
個以上のグリシジル基を有する融点30〜250℃の化
合物、トリス(β−メチルグリシジル)イソシアヌレー
ト等のエポキシ化合物、又はエポキシ基を有する化合物
とラジカル共重合する単量体とから成る粉体塗料用樹脂
組成物が開示されている。この組成物には、触媒として
テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルア
ンモニウムクロライド等のテトラアルキルアンモニウム
塩、イミダゾール、2−メチル−4−エチル−イミダゾ
ール、2−メチル−イミダゾール等のイミダゾール類、
トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン等の第三
アミン類、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛等の有
機カルボン酸を添加する事が出来るものである。
【0010】特開昭51−12823号公報には、(メ
チル)グリシジル基を有するビニル系単量体、(メチ
ル)グリシジル基を有する不飽和ポリエステル、及び他
のビニル系単量体から成る重合体に、多価カルボン酸を
配合した粉体塗料用組成物が開示されている。この組成
物は、硬化反応を促進する為に酸、アルカリ、アミン等
を添加する事が出来るものである。
【0011】特開昭52−69935号公報には、カル
ボキシル基含有ポリエステルと、トリグリシジルイソシ
アヌレート又はトリス(β−メチルグリシジル)イソシ
アヌレートに、酸価の低い特定のポリエステルを添加し
た粉体塗料組成物が開示されている。特開平4−638
72号公報には、カルボキシル基含有樹脂と、分子中に
2個以上のカルボキシル基を有するポリエステルオリゴ
マーにトリス(β−メチルグリシジル)イソシアヌレー
ト等のエポキシ化合物を付加させ1分子中に2〜6個の
グリシジル基を有するポリグリシジル化合物を含有した
粉体塗料組成物が開示されている。この組成物は、イミ
ダゾール等の硬化触媒を含有するものである。
【0012】特開平4−288373号公報には、基体
樹脂と硬化剤と更に硬化触媒を含有した粉体塗料組成物
が開示されている。基体樹脂は、1分子中にカルボキシ
ル基を2個以上有する樹脂である。硬化剤としてはトリ
グリシジルイソシアヌレートや、1分子中に2個以上の
カルボキシル基を有するポリエステルオリゴマーにトリ
ス(β−メチルグリシジル)イソシアヌレートを付加さ
せることによって得られた1分子中に平均2〜6個のグ
リシジル基を有するポリグリシジル化合物が記載されて
いる。また硬化触媒として、トリエチルアミン等の第3
級アミン、イミダゾール、2−エチルイミダゾール等の
第2級アミノ基を有するイミダゾール化合物が例示され
ている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】特開昭49−9472
2号公報、及び特開昭51−44130号公報に記載の
遊離のヒドロキシル基、特に遊離のフェノール性水酸基
(−C64OH)をもつポリエステル樹脂は、トリグリ
シジルイソシアヌレートやトリス(β−メチルグリシジ
ル)イソシアヌレート等のエポキシ化合物を硬化剤とし
て添加して粉体塗料用組成物にした時に、フェノール性
水酸基と上記エポキシ化合物との反応によって生じるエ
ーテル結合は、フェノキシ基(−C64O−)の安定性
が高いために、光によりフェノキシ基が脱離し易くなる
ので耐候性が悪く好ましくない。また、遊離のフェノー
ル性水酸基をもつポリエステル樹脂は、このフェノール
性水酸基に由来するH+(プロトン)の影響が小さいの
で硬化剤として添加したエポキシ化合物との反応性が低
く、反応性を高める目的で第3級アミン等の硬化促進剤
を添加する方法が用いられる。
【0014】一方、特開昭49−24244号公報、特
開昭50−19832号公報、特開昭52−69935
号公報、特開平4−63872号公報、特開平4−28
8373号公報にはカルボキシル基含有樹脂と、トリグ
リシジルイソシアヌレートやトリス(β−メチルグリシ
ジル)イソシアヌレート等のエポキシ化合物を硬化剤と
して添加した粉体塗料用組成物が開示されている。
【0015】カルボキシル基を含有する樹脂と、グリシ
ジル基を含有する硬化剤からなる粉体塗料組成物におい
て、基材上で加熱硬化させる際に、その粉体塗料組成物
に硬化剤としてトリグリシジルイソシアヌレートを用い
る場合は、トリグリシジルイソシアヌレート中のグリシ
ジル基は、カルボキシル基との反応性が高く、カルボキ
シル基とグリシジル基が効率的に反応を起こし、目的と
する硬化反応が進行する。しかし、カルボキシル基を含
有する樹脂に硬化剤としてトリス(β−メチルグリシジ
ル)イソシアヌレートを用いる場合は、基材上で加熱硬
化させる時に、β−メチルグリシジル基同士の開環重合
による自己重合が起こり易く、目的とするカルボキシル
基とβ−メチルグリシジル基による硬化反応が起こり難
く、結果として硬化不足となり、得られた塗膜は耐衝撃
性や耐候性等で充分な物性を有するものではない。カル
ボキシル基含有ポリエステル樹脂では、このカルボキシ
ル基に由来するH+(プロトン)の影響が大きく、β−
メチルグリシジル基同士の開環重合による自己重合が優
先して起こるためと考えられる。
【0016】本発明は、トリス(β−メチルグリシジ
ル)イソシアヌレートを用いる事により、トリグリシジ
ルイソシアヌレートを用いる場合よりも更に良好な、焼
付け時(熱硬化時)のフロー性(流動性)の向上による
塗膜の平滑化を達成すると共に、トリス(β−メチルグ
リシジル)イソシアヌレートが抱える自己重合性の問題
を解決し、充分な耐衝撃性や耐候性等を有する塗膜が得
られる粉体塗料用樹脂組成物を提供しようとするもので
ある。
【0017】
【課題を解決するための手段】本願発明は、下記(A)
成分、(B)成分、及び(C)成分; (A)1000〜20000の数平均分子量、5〜20
0の酸価、及び30〜120℃のガラス転移温度を有す
るカルボキシル基含有樹脂、(B)式(1):
【0018】
【化9】
【0019】で表されるトリス(β−メチルグリシジ
ル)イソシアヌレート、及び(C)開環重合抑制剤とし
て、式(2):
【0020】
【化10】
【0021】で表される結合を分子中に有するアミン、
及びオニウム塩より成る群の中から選ばれた少なくとも
1種の化合物、を含有する粉体塗料用樹脂組成物であ
る。本発明の粉体塗料用樹脂組成物では、上記(A)成
分と上記(B)成分が、(B成分中のβ−メチルグリシ
ジル基)/(A成分中のカルボキシル基)の当量比で、
1.1〜2.5、好ましくは1.2〜2.0の割合に含
有する事が出来る。
【0022】また、上記(A)成分100重量部に対し
て、上記(C)成分を0.01〜10重量部、好ましく
は、0.05〜5重量部の割合に含有する事が出来る。
本願発明に用いられる(A)成分のカルボキシル基を含
有する樹脂は、数平均分子量が1000〜20000、
好ましくは2000〜10000であり、酸価が5〜2
00(KOH−mg/g)、好ましくは20〜100
(KOH−mg/g)であり、ガラス転移温度が30〜
120℃、好ましくは40〜80℃である。本願発明で
は、これらの条件を満たす限り、公知の原料及び方法を
用いて得られた如何なるカルボキシル基含有樹脂も使用
する事が出来る。中でも、上記のカルボキシル基含有樹
脂としては、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、又
はこれらの混合物を用いることが好ましい。
【0023】上記の(A)成分のカルボキシル基含有樹
脂は、脂肪族カルボン酸に基づくカルボキシル基を有す
るポリエステル樹脂、又は4.0以下のpKa値の芳香
族カルボン酸に基づくカルボキシル基を有するポリエス
テル樹脂である事が好ましい。これらのポリエステル樹
脂は、脂肪族カルボン酸に基づくカルボキシル基を与え
る酸原料として、例えば、マレイン酸、フマル酸、メサ
コン酸、イタコン酸、ハイミック酸、テトラヒドロフタ
ル酸、ヘキサヒドロフタル酸、アジピン酸、セバシン酸
等を用いる事が出来る。また、pKa値が4.0以下の
芳香族カルボン酸に基づくカルボキシル基を与える酸原
料として、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられ、
より好ましいpKa値が3.0以下の芳香族カルボン酸
に基づくカルボキシル基を与える酸原料として、テレフ
タル酸、イソフタル酸のニトロ化物、ハロゲン化物、又
はフタル酸、ピロメリト酸、トリメリト酸、若しくはこ
れらのニトロ化物、ハロゲン化物等が挙げられる。上記
のpKaの値は、酸解離定数をKaとした時、pKa=
−logKaで表される弱酸の解離指数であり、多段階
の解離を行う多価酸では第1段解離指数(pK1 )で与
えられる。上記の酸原料は、有機酸自体で用いる他に、
酸塩化物、酸エステル、酸無水物等の誘導体として用い
る事も出来る。これらの酸原料は単独で又は2種以上の
混合物として用いる事が出来る。
【0024】(A)成分にカルボキシル基を与える酸原
料は上記に記載されたものを用いることが好ましいが、
しかしポリエステル樹脂の骨格の形成に使用するポリカ
ルボン酸は分子中に少なくとも2個のカルボキシル基を
有するポリカルボン酸であれば上記の脂肪族カルボン
酸、芳香族カルボン酸に限らず如何なるポリカルボン酸
やその誘導体を使用する事が出来る。
【0025】また、アルコール原料として、例えば、エ
チレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレン
グリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコ
ール、ブタンジオール、ブテンジオール、ネオペンチル
グリコール等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上
の混合物として用いる事が出来る。これらの原料は公知
の方法により重合して、(A)成分の条件を満たすカル
ボキシル基を含有するポリエステル樹脂を得る事ができ
る。
【0026】また、上記のポリアクリル樹脂は、カルボ
キシル基を与える原料として、アクリル酸、メタクリル
酸が挙げられ、これらを単独で又は混合物として使用す
る事が出来る。また、このアクリル酸、メタクリル酸に
不飽和化合物を共重合させる事が出来る。この不飽和化
合物は、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、
或いはエチレン系不飽和結合を有する単量体が挙げら
れ、例えば、アクリル酸或いはメタクリル酸のメチル、
エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチルベンジ
ル、ドデシル、ラウリル、フェニル、ヒドロキシエチル
等のエステル、フマル酸のジエチル、ジブチル等のジア
ルキルエステル、イタコン酸のジエチル、ジブチル等の
ジアルキルエステル、アクリロニトリル、アクリルアミ
ド、スチレン、ビニルトルエン等の単量体、又はジアリ
ルフタレート、ジアリルエーテル等の架橋用単量体等が
挙げられ、これらを単独で又は2種以上の混合物として
使用する事が出来る。
【0027】本願発明に使用される(B)成分は、式
(1)で表されるトリス(β−メチルグリシジル)イソ
シアヌレートであり、粉体塗料用樹脂組成物中で硬化剤
として作用する。このトリス(β−メチルグリシジル)
イソシアヌレートは、例えば、下記反応式により、イソ
シアヌール酸と、β−メチルエピハロゲノヒドリンとか
ら合成する事が出来る。但しXは、塩素原子、臭素原子
等のハロゲン原子である。
【0028】
【化11】
【0029】しかし、この方法で合成されるトリス(β
−メチルグリシジル)イソシアヌレートは、副生成物と
して二量体やエポキシ前駆体のハロゲノヒドリンが混入
する事もある。副生成物の含有量は少ない方が好ましい
が、少量の副生成物を含有しても得られる塗膜への影響
はほとんど認められない。トリス(β−メチルグリシジ
ル)イソシアヌレートの添加量は、(A)成分中のカル
ボキシル基の当量に対する上記の副生成物中のβ−メチ
ルグリシジル基も含めた全β−メチルグリシジル基の当
量比が1.1〜2.5の割合に含有する事が必要であ
る。
【0030】本願発明に用いる(C)成分は、式(2)
で表される結合を分子中に有するアミン、及びオニウム
塩より成る群の中から選ばれた少なくとも1種の化合物
である。この(C)成分は本願の粉体塗料用樹脂組成物
では開環重合抑制剤として作用する。上記(C)成分の
式(2)で表される結合を分子中に有するアミンは、鎖
状構造、或いは環状構造が挙げられるが、環状構造のア
ミンがより好ましい。この式(2)で表される結合を分
子中に有する環状アミンは、例えば、イミダゾール、イ
ミダゾール誘導体が挙げられるが、更にこの環状アミン
は式(3):
【0031】
【化12】
【0032】〔但し、mは2〜11、nは2〜3の自然
数を示す〕で示される構造を有する事が好ましい。この
様に二環構造とする事により粉体樹脂組成物を硬化させ
た時に耐水性が向上する。上記の式(3)の構造のアミ
ンとしては、例えば1,8−ジアザ−ビシクロ(5,
4,0)ウンデセン−7と、1,5−ジアザ−ビシクロ
(4,3,0)ノネン−5が挙げられる。
【0033】1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)
ウンデセン−7は、下記の式(12)で示される化合物
である。
【0034】
【化13】
【0035】1,5−ジアザ−ビシクロ(4,3,0)
ノネン−5は、下記の式(13)で示される化合物であ
る。
【0036】
【化14】
【0037】上記(C)成分のオニウム塩は、アンモニ
ウム塩、ホスフォニウム塩、アルソニウム塩、スチボニ
ウム塩、オキソニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウ
ム塩、スタンノニウム塩、ヨードニウム塩が例示され
る。更に、この(C)成分のオニウム塩は、式(4):
【0038】
【化15】
【0039】〔但し、mは2〜11、nは2〜3の自然
数を、R1 はアルキル基又はアリール基を、Y-は陰イ
オンを示す〕で示される構造を有する第4級アンモニウ
ム塩、式(5):R2345+-(但し、R2、R
3、R4及びR5はアルキル基又はアリール基を、Nは窒
素原子を、Y-は陰イオンを示し、且つR2、R3、R4
及びR5はそれぞれC−N結合により窒素原子と結合さ
れているものである)で示される構造を有する第4級ア
ンモニウム塩、式(6):
【0040】
【化16】
【0041】〔但し、R6及びR7はアルキル基又はアリ
ール基を、Y-は陰イオンを示す〕の構造を有する第4
級アンモニウム塩、式(7):
【0042】
【化17】
【0043】〔但し、R8はアルキル基又はアリール基
を、Y-は陰イオンを示す〕の構造を有する第4級アン
モニウム塩、式(8):
【0044】
【化18】
【0045】〔但し、R9及びR10はアルキル基又はア
リール基を、Y-は陰イオンを示す〕の構造を有する第
4級アンモニウム塩、式(9):
【0046】
【化19】
【0047】〔但し、mは2〜11、nは2〜3の自然
数を、Hは水素原子を、Y-は陰イオンを示す〕の構造
を有する第3級アンモニウム塩、式(10):R1112
13 14+-〔但し、R11、R12、R13、及びR14
はアルキル基又はアリール基を、Pはリン原子を、Y-
は陰イオンを示し、且つR11、R12、R13、及びR14
それぞれC−P結合によりリン原子と結合されているも
のである〕で示される第4級ホスフォニウム塩、及び式
(11):R151617+-〔但し、R15、R16
及びR17はアルキル基又はアリール基を示し、Y-は陰
イオンを示し、R1 5、R16、及びR17はそれぞれC−S
結合によりイオウ原子と結合されているものである〕で
示される構造を有する第3級スルホニウム塩である事が
好ましい。
【0048】これらのオニウム塩を選択する事は、硬化
物の高温での変色を防止する効果の点で好ましい。上記
の式(4)の化合物は、式(3)のアミンから誘導され
る第4級アンモニウム塩であり、mは2〜11、nは2
〜3の自然数を示す。特に、式(12)及び式(13)
のアミンより誘導される第4級アンモニウム塩が好まし
い。この第4級アンモニウム塩のR1は炭素数1〜1
8、好ましくは2〜10のアルキル基又はアリール基を
示し、例えば、エチル基、プロピル基、ブチル基等の直
鎖アルキル基や、ベンジル基、シクロヘキシル基、シク
ロヘキシルメチル基、ジシクロペンタジエニル基等が挙
げられる。また陰イオン(Y-)は、塩素イオン(C
-)、臭素イオン(Br-)、ヨウ素イオン(I-)等
のハロゲンイオンや、カルボキシラート(−CO
-)、スルホナト(−SO3 -)、アルコラート(−
-)等の酸基を挙げることが出来るが、塩素イオン及
び臭素イオンを対イオンとする化合物は硬化物の耐水性
を向上させ、また硬化物の高温での変色を防止する効果
の点で好ましい。上記の式(4)の化合物は市販品とし
て入手する事もできるが、例えば式(12)の化合物又
は式(13)の化合物と、臭化ブチル、塩化ベンジル等
のハロゲン化アルキル又はハロゲン化アリールとの反応
によって製造する事が出来る。
【0049】上記の式(5)の化合物は、R2345
+- で示される第4級アンモニウム塩である。この
第4級アンモニウム塩のR2、R3、R4及びR5は炭素数
1〜18のアルキル基又はアリール基であるが、耐水性
を向上させる為にR2〜R5の炭素数の総和が9以上で有
ることが好ましく、更に耐水性を向上させる為にR2
3、R4及びR5の中で少なくとも1個のアルキル基又
はアリール基は、炭素数6〜18で有ることがより好ま
しい。陰イオン(Y-)は、塩素イオン(Cl-)、臭素
イオン(Br-)、ヨウ素イオン(I-)等のハロゲンイ
オンや、カルボキシラート(−COO-)、スルホナト
(−SO3 -)、アルコラート(−O-)等の酸基を挙げ
ることが出来るが、塩素イオン及び臭素イオンを対イオ
ンとする化合物は硬化物の耐水性を向上させ、また硬化
物の高温での変色を防止する効果の点で好ましい。式
(5)の第4級アンモニウム塩は、市販品で入手する事
が可能であり、例えば塩化トリエチルベンジルアンモニ
ウム、臭化トリエチルベンジルアンモニウム、塩化トリ
オクチルメチルアンモニウム、塩化トリブチルベンジル
アンモニウム、塩化トリメチルベンジルアンモニウム等
が例示される。
【0050】上記の式(6)の化合物は、1−置換イミ
ダゾールから誘導される第4級アンモニウム塩であり、
6及びR7は炭素数1〜18であり、R6及びR7の炭素
数の総和が7以上で有ることが好ましい。例えばR6
メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、ベンジ
ル基を、R7はベンジル基、オクチル基、オクタデシル
基を例示する事が出来る。陰イオン(Y-)は、塩素イ
オン(Cl-)、臭素イオン(Br-)、ヨウ素イオン
(I-)等のハロゲンイオンや、カルボキシラート(−
COO-)、スルホナト(−SO3 -)、アルコラート
(−O-)等の酸基を挙げることが出来るが、塩素イオ
ン及び臭素イオンを対イオンとする化合物は、硬化物の
耐水性を向上させ、また硬化物の高温での変色を防止す
る効果の点で好ましい。この式(6)の化合物は、市販
品で入手する事も出来るが、例えば1−メチルイミダゾ
ール、1−ベンジルイミダゾール等のイミダゾール系化
合物と、臭化ベンジル、臭化メチル等のハロゲン化アル
キルやハロゲン化アリールを反応させて製造する事がで
きる。
【0051】上記の式(7)の化合物は、ピリジンから
誘導される第4級アンモニウム塩であり、R8は炭素数
1〜18、好ましくは炭素数4〜18のアルキル基又は
アリール基であり、例えばブチル基、オクチル基、ベン
ジル基、ラウリル基を例示する事が出来る。陰イオン
(Y-)は、塩素イオン(Cl-)、臭素イオン(B
-)、ヨウ素イオン(I-)等のハロゲンイオンや、カ
ルボキシラート(−COO-)、スルホナト(−S
3 -)、アルコラート(−O-)等の酸基を挙げること
が出来るが、塩素イオン及び臭素イオンを対イオンとす
る化合物は硬化物の耐水性を向上させ、また硬化物の高
温での変色を防止する効果の点で好ましい。この式
(7)の化合物は、市販品として入手する事も出来る
が、例えばピリジンと、塩化ラウリル、塩化ベンジル、
臭化ベンジル、臭化メチル、臭化オクチル等のハロゲン
化アルキル、又はハロゲン化アリールを反応させて製造
する事が出来る。この式(7)の化合物は例えば、塩化
N−ラウリルピリジニウム、臭化N−ベンジルピリジニ
ウム等を例示する事が出来る。
【0052】上記の式(8)の化合物は、ピコリン等に
代表される置換ピリジンから誘導される第4級アンモニ
ウム塩であり、R9は炭素数1〜18、好ましくは4〜
18のアルキル基又はアリール基であり、例えばメチル
基、オクチル基、ラウリル基、ベンジル基等を例示する
事が出来る。R10は炭素数1〜18のアルキル基又はア
リール基であり、例えばピコリンから誘導される第4級
アンモニウムである場合はR10はメチル基である。陰イ
オン(Y-)は、塩素イオン(Cl-)、臭素イオン(B
-)、ヨウ素イオン(I-)等のハロゲンイオンや、カ
ルボキシラート(−COO-)、スルホナト(−S
3 -)、アルコラート(−O-)等の酸基を挙げること
が出来るが、塩素イオン及び臭素イオンを対イオンとす
る化合物は硬化物の耐水性を向上させ、また硬化物の高
温での変色を防止する効果の点で好ましい。この式
(8)の化合物は市販品として入手する事も出来るが、
例えばピコリン等の置換ピリジンと、臭化メチル、臭化
オクチル、塩化ラウリル、塩化ベンジル、臭化ベンジル
等のハロゲン化アルキル、又はハロゲン化アリールを反
応させて製造する事が出来る。この式(8)の化合物は
例えば、N−ベンジルピコリニウムクロライド、N−ベ
ンジルピコリニウムブロマイド、N−ラウリルピコリニ
ウムクロライド等を例示することが出来る。
【0053】上記の式(9)の化合物は、式(3)のア
ミンから誘導される第3級アンモニウム塩であり、mは
2〜11、nは2〜3の自然数を示す。特に、式(1
2)及び式(13)のアミンより誘導される第3級アン
モニウム塩が好ましい。また陰イオン(Y-)は、塩素
イオン(Cl-)、臭素イオン(Br-)、ヨウ素イオン
(I-)等のハロゲンイオンや、カルボキシラート(−
COO-)、スルホナト(−SO3 -)、アルコラート
(−O-)等の酸基を挙げることが出来る。上記の式
(9)の化合物は市販品として入手する事もできるが、
例えば式(12)の化合物又は式(13)の化合物と、
カルボン酸やフェノール等の弱酸との反応によって製造
する事が出来る。カルボン酸としてはギ酸や酢酸が挙げ
られ、ギ酸を使用した場合は、陰イオン(Y-)は(H
COO-)であり、酢酸を使用した場合は、陰イオン
(Y-)は(CH3COO-)である。またフェノールを
使用した場合は、陰イオン(Y-)は(C65-)であ
る。
【0054】上記の式(10)の化合物は、R1112
1314+- の構造を有する第4級ホスフォニウム塩
である。R11、R12、R13、及びR14は炭素数1〜18
のアルキル基又はアリール基であるが、好ましくはR11
〜R14の4つの置換基の内で3つがフェニル基又は置換
されたフェニル基であり、例えばフェニル基やトリル基
を例示する事が出来、また残りの1つは炭素数1〜18
のアルキル基、又はアリール基である。また陰イオン
(Y-)は、塩素イオン(Cl-)、臭素イオン(B
-)、ヨウ素イオン(I-)等のハロゲンイオンや、カ
ルボキシラート(−COO-)、スルホナト(−S
3 -)、アルコラート(−O-)等の酸基を挙げること
が出来るが、塩素イオン及び臭素イオンを対イオンとす
る化合物は硬化物の耐水性を向上させ、また硬化物の高
温での変色を防止する効果の点で好ましい。この式(1
0)の化合物は市販品として入手する事が可能であり、
例えばハロゲン化テトラn−ブチルホスフォニウム、ハ
ロゲン化テトラn−プロピルホスフォニウム等のハロゲ
ン化テトラアルキルホスフォニウム、ハロゲン化トリエ
チルベンジルホスフォニウム等のハロゲン化トリアルキ
ルベンジルホスフォニウム、ハロゲン化トリフェニルメ
チルホスフォニウム、ハロゲン化トリフェニルエチルホ
スフォニウム等のハロゲン化トリフェニルモノアルキル
ホスフォニウム、ハロゲン化トリフェニルベンジルホス
フォニウム、ハロゲン化テトラフェニルホスフォニウ
ム、ハロゲン化トリトリルモノアリールホスフォニウ
ム、或いはハロゲン化トリトリルモノアルキルホスフォ
ニウム(ハロゲン原子は塩素原子又は臭素原子)が挙げ
られる。特に、ハロゲン化トリフェニルメチルホスフォ
ニウム、ハロゲン化トリフェニルエチルホスフォニウム
等のハロゲン化トリフェニルモノアルキルホスフォニウ
ム、ハロゲン化トリフェニルベンジルホスフォニウム等
のハロゲン化トリフェニルモノアリールホスフォニウ
ム、ハロゲン化トリトリルモノフェニルホスフォニウム
等のハロゲン化トリトリルモノアリールホスフォニウム
や、ハロゲン化トリトリルモノメチルホスフォニウム等
のハロゲン化トリトリルモノアルキルホスフォニウム
(ハロゲン原子は塩素原子又は臭素原子)が好ましい。
特にこれらのものを使用した場合は、硬化物の高温での
変色を防止する効果の点で好ましい。
【0055】上記の式(11)の化合物は、R1516
17+- で示される構造を有する第3級スルホニウム
塩である。R15、R16、及びR17は炭素数1〜18のア
ルキル基又はアリール基を示す。また陰イオン(Y-
は、塩素イオン(Cl-)、臭素イオン(Br-)、ヨウ
素イオン(I-)等のハロゲンイオンや、カルボキシラ
ート(−COO-)、スルホナト(−SO3 -)、アルコ
ラート(−O-)等の酸基を挙げることが出来るが、塩
素イオン及び臭素イオンを対イオンとする化合物は硬化
物の耐水性を向上させ、また硬化物の高温での変色を防
止する効果の点で好ましい。この式(11)の化合物は
市販品として入手する事が可能であり、例えば塩化トリ
フェニルスルフォニウム、臭化トリフェニルスルフォニ
ウム、塩化トリトリルスルフォニウム等を例示する事が
出来る。
【0056】本願発明に用いる(C)成分は、上記の式
(4)の化合物、式(6)の化合物、式(7)の化合
物、式(8)の化合物、式(9)の化合物、式(10)
の化合物、及び式(11)の化合物より成る群の中から
選ばれた少なくとも1種のオニウム塩である事が好まし
い。これらのオニウム塩を用いることによって、粉体塗
料用樹脂組成物を硬化して得られる塗膜に変色が起こら
ず、また更に耐水性も向上するので好ましい。
【0057】特に、本願発明に用いる(C)成分は、上
記の式(7)の化合物、式(8)の化合物、式(10)
の化合物、式(11)の化合物、又はこれらの混合物で
ある事が変色防止効果、耐水性向上の点から更に好まし
い。そして、本願発明に用いる(C)成分は、ハロゲン
化トリフェニルモノアルキルホスフェイト、ハロゲン化
トリフェニルモノアリールホスフェイト、又はこれらの
混合物(但し、ハロゲン原子は塩素原子又は臭素原子)
である事が最も好ましい。これらのオニウム塩は、粉体
塗料用樹脂組成物を硬化して得られる塗膜の耐水性をよ
り一層向上させ、しかも最も優れた変色防止効果を有す
る。
【0058】また、本願発明に用いられる(C)成分で
ある開環重合抑制剤を常法により粉体塗料製造時に所定
量添加する方法において、(A)成分のカルボキシル基
含有樹脂、及び(B)成分の硬化剤、必要に応じて顔料
やその他の添加剤と共に(C)成分を溶融混合する第1
方法や、予め(C)成分を(A)成分のカルボキシル基
含有樹脂に内添し(B)成分やその他の成分と溶融混合
する第2方法が挙げられる。この第2方法は、例えば、
(A)成分の原料であるジカルボン酸成分とグリコール
成分、改質成分、及び重合触媒を反応容器に仕込むと同
時に(C)成分の開環重合抑制剤を添加して、(C)成
分の存在下にポリエステル樹脂を製造する事が出来る。
第2方法において、(C)成分として例えば臭化トリフ
ェニルベンジルホスフォニウムを使用する場合に、トリ
フェニルホスフィンとベンジルブロマイドを(A)成分
の樹脂の重合時に添加し、樹脂の重合と同時に臭化トリ
フェニルベンジルホスフォニウムを合成する事が出来
る。更に開環重合抑制能を有する官能基を樹脂の構造に
組み込む事もできる。また、上記の第2方法では式
(9)で示される化合物は、式(12)又は式(13)
で表される化合物と(A)成分のカルボキシル基含有樹
脂とを予め溶融混合する事により、(A)成分と式(1
2)又は式(13)の化合物が反応して式(9)で示さ
れる化合物が合成され、(A)成分中に式(9)の化合
物を内添させる事が出来る。しかし、(A)成分中で式
(12)又は式(13)の化合物より合成された式
(9)の化合物は、溶融時の熱により一部は式(12)
又は式(13)の化合物に解離する。
【0059】
【発明の実施の形態】本願発明では、所望により種々の
粉体塗料用添加剤を加える事が出来る。この任意成分と
しては、例えば、塗膜の平滑性改良剤としてアクリル酸
アルキルエステル、着色顔料として二酸化チタン、酸化
鉄等の無機顔料、カーボン、フタロシアニン、ジアゾ化
合物等の有機顔料、更にワキ防止剤、帯電防止剤、難燃
剤、可塑剤、流れ性調製剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤
等が挙げられる。
【0060】本願発明の粉体塗料用樹脂組成物の調製
は、公知の方法で行われ、例えば、(A)成分、(B)
成分、及び(C)成分、更に必要により任意成分を混合
し、70〜120℃、好ましくは70℃以上100℃未
満の温度で溶融混練を行い、冷却後、粉砕して、ふるい
分けを行って得られる。上記の溶融混練は、通常の一軸
又は二軸の押出成形機、例えば、ブス社製のコニーダー
成形機等の装置を用いて行う事が出来る。また、粉砕
は、通常の乾式粉砕機、例えば、ハンマーミルやジェッ
トミル等の装置を用いる事が出来る。得られた粉砕物
は、50〜200メッシュ、好ましくは100〜200
メッシュの分級機でふるい分けして粉末状の本願発明の
粉体塗料用樹脂組成物を得る事が出来る。
【0061】本願発明の粉体塗料用樹脂組成物は、室温
で6カ月以上保存しても粉末が貯蔵中に融着(ブロッキ
ング)を起こさず、高い保存安定性を有する。本願発明
の粉体塗料用樹脂組成物は、通常の化成処理を施したア
ルミニウム、アルマイト、鉄等の基材に用いる事が出来
る。本願発明の粉体塗料用樹脂組成物は、基材に一般の
静電粉体塗装法や流動浸漬法により付着させた後、14
0〜230℃の温度で、10分〜30分間、加熱して硬
化する事により充分な耐衝撃性や耐候性等を有する塗膜
とする事ができる。上記の加熱は、通常に用いられる熱
風循環焼き付け炉等の装置により行う事が出来る。これ
により、基材上に30〜300μmの厚みを有する膜を
形成する事が出来る。
【0062】本願発明に用いられる(A)成分のカルボ
キシル基含有樹脂は、数平均分子量が1000未満で
は、塗膜とした時の膜強度が低下し、また20000を
超える場合は、焼付け時のフロー性が低下する為に平滑
な塗膜が得られない。酸価が5未満ではカルボキシル基
含有量が少ないので、充分に硬化剤と反応する事ができ
ず、硬化性が低く充分な塗膜強度が得られない。また、
酸価が、200を超えると架橋密度が必要以上に高くな
り、耐衝撃性が低下する。ガラス転移温度が30℃以下
では貯蔵中に融着(ブロッキング)を起こし易く、12
0℃を超える場合は、混練時の硬化剤との均一混合が難
しく、また焼付け時のフロー性が低下する為に平滑な塗
膜が得られなくなる。
【0063】(A)成分のカルボキシル基を含有する樹
脂は、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、又はこれ
らの混合物を用いることが好ましく、更にこの(A)成
分は、脂肪族カルボン酸に基づくカルボキシル基を有す
るポリエステル樹脂、又は4.0以下のpKa値の芳香
族カルボン酸に基づくカルボキシル基を有するポリエス
テル樹脂が好ましい。これは硬化剤であるトリス(β−
メチルグリシジル)イソシアヌレートとの加熱による硬
化反応時に、その反応性はカルボキシル基の運動性によ
って大きく影響を受けると推定される。脂肪族カルボン
酸に基づくカルボキシル基では硬化の加熱時の運動性が
大きいのでβ−メチルグリシジル基とカルボキシル基と
の反応が効果的に達成されると考えられる。一方、芳香
族カルボン酸に基づくカルボキシル基ではカルボキシル
基の運動性が芳香環によって制約を受けるので反応性の
点で問題がある。即ち、pKa値が4.0以下の芳香族
カルボン酸に基づくカルボキシル基は、運動性及び立体
的に不利であるが、カルボキシル基の求核性が高く、β
−メチルグリシジル基との反応性が向上すると考えられ
る。また、pKa値が3.0以下の芳香族カルボン酸に
基づくカルボキシル基では求核性が更に高くなり反応性
が向上するので好ましい。
【0064】本願発明に用いられる(B)成分のトリス
(β−メチルグリシジル)イソシアヌレートは、UV吸
収波長における最大吸収波長(λmax)が、太陽光線
中にはほとんど含まれない190nm以下の波長であ
り、更に、高い結合エネルギーを有するトリアジン環を
骨格とするので耐候性に優れている。しかし、このトリ
ス(β−メチルグリシジル)イソシアヌレートのβ−メ
チルグリシジル基は、β位に位置するメチル基が電子供
与性を示す影響で、β位が水素原子であるトリグリシジ
ルイソシアヌレートのグリシジル基よりも、カルボキシ
ル基含有樹脂に起因するプロトン(H+ )によってエポ
キシ環が開環し易く、β−メチルグリシジル基同士の開
環重合が優先的に起こると考えられる。
【0065】
【化20】
【0066】その結果、β−メチルグリシジル基が消費
され、本来のカルボキシル基と硬化反応するはずのβ−
メチルグリシジル基が少なくなり、架橋不足で充分な硬
化が出来ず、良好な物性が得られない。ところが、上記
の(C)成分を添加する事により、β−メチルグリシジ
ル基同士の開環重合が促進される事を抑制(自己重合抑
制)できる事を見出した。また、トリス(β−メチルグ
リシジル)イソシアヌレートは、β位に位置するメチル
基による立体障害により、β位が水素原子であるトリグ
リシジルイソシアヌレートよりも、カルボキシル基との
反応性が低いが、上記(C)成分の添加によりその反応
を促進できる事(硬化促進)も見出した。
【0067】また、β−メチルグリシジル基とカルボキ
シル基との硬化反応の結果で生じた水酸基も、やはり、
β−メチルグリシジル基と反応し、本来のカルボキシル
基と硬化反応するはずのβ−メチルグリシジル基を少な
くする原因となり、同様に硬化不良になる。これは、ト
リグリシジルイソシアヌレートを硬化剤に使用した場合
でも同様な現象が現れるが、この場合は、(グリシジル
基)/(カルボキシル基)の当量比が1.0以下でも硬
化が可能であるのに対し、トリス(β−メチルグリシジ
ル)イソシアヌレートでは、(C)成分を添加したにも
係わらず幾分かβ−メチルグリシジル基同士が自己重合
する分を考慮に入れ、(β−メチルグリシジル基)/
(カルボキシル基)が1.1〜2.5とする事が好まし
い。仮に、(C)成分を過剰に添加すれば、この当量比
を上記のトリグリシジルイソシアヌレートの場合と同じ
割合まで減少させる事も出来るが、硬化も促進される為
にフロー性が損なわれる結果となり好ましくない。上記
の(β−メチルグリシジル基)/(カルボキシル基)が
2.5を超える場合は、架橋密度が必要以上に高くな
り、耐衝撃性が低下するので好ましくない。
【0068】また、本願発明に用いられる(C)成分
が、従来より使用されているグリシジル基とカルボキシ
ル基との硬化反応を促進させる様な通常の促進剤、例え
ば、トリエチルアミン等に代表される第3級アミン、ト
リフェニルフォスフィン、トリアルキルホスフィン等に
代表される第3級ホスフィン、三弗化ホウ素等である場
合は、自己重合抑制能力が極めて低いので好ましくな
い。更に、トリエチルアミン等に代表される第3級アミ
ンや、トリフェニルホスフィン等の第3級ホスフィンは
硬化塗膜を変色させるので好ましくない。
【0069】しかし、本発明において(C)成分がトリ
フェニルフォスフィン、トリトリルホスフィン等に代表
されるトリアリールホスフィンを用いた場合は、オニウ
ム塩に比べれば自己重合抑制能力は低下するが、第3級
アミンに比べれば自己重合抑制能力は高い。これらのト
リアリールホスフィンは、添加量に臨界的な範囲があ
り、(A)成分100重量部に対して0.5〜10重量
部の割合で使用すれば用いることも可能である。
【0070】また、三フッ化ホウ素塩として、例えば、
三フッ化ホウ素モノエチルアミン、三フッ化ホウ素モノ
ブチルアミン等の三フッ化ホウ素モノアルキルアミン塩
や、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル等の三フッ化ホウ
素エーテラートは、β−メチルグリシジル基同士の開環
重合である自己重合を促進し易く、また高温にした場合
の着色性に問題があるので好ましくない。
【0071】本願発明では、(A)成分100重量部に
対して、(C)成分の添加量は0.01〜10重量部で
あるが、これは使用時の140〜230℃の硬化温度
で、本願の粉体塗料用樹脂組成物が糸引しなくなり、ゲ
ル化するまでの時間が20秒〜30分、好ましくは1分
〜20分程度になる為の添加量範囲である。(C)成分
はβ−メチルグリシジル基同士の自己重合抑制剤である
と同時に、β−メチルグリシジル基とカルボキシル基の
硬化反応促進剤でもある。従って、(C)成分の添加量
が10重量部を超えると、ゲル化までの時間が20秒以
内となり硬化時のフロー性が無くなり平滑な塗膜が得ら
れない。また、(C)成分の添加量が0.01重量部未
満の場合は、硬化が不十分となり好ましくない。
【0072】
【実施例】下記の原料を準備した。 A1 :カルボキシル基含有ポリエステル樹脂〔DSM
(株)製、商品名P−2400、カルボキシ当量184
0g/eq、酸価30.5(KOH−mg/g)、数平
均分子量3680、ガラス転移温度は約63℃〕 A2 :カルボキシル基含有ポリエステル樹脂〔カルボ
キシ当量1130g/eq、酸価49.7(KOH−m
g/g)、数平均分子量4520、ガラス転移温度は約
75℃〕 A3 :カルボキシル基含有ポリエステル樹脂〔カルボ
キシル当量2200g/eq、酸価25.5(KOH−
mg/g)、数平均分子量4400、ガラス転移温度は
約60℃〕 B1 :トリス(β−メチルグリシジル)イソシアヌレ
ート〔エポキシ当量124g/eq〕 B2 :トリグリシジルイソシアヌレート〔日産化学工
業(株)製、商品名TEPIC、エポキシ当量105g
/eq〕 C1 :ベンジルトリフェニルホスフォニウムブロマイ
ド〔サンアプロ(株)製、商品名SA5003〕 C2 :1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウン
デセン−7〔サンアプロ(株)製、商品名DBU〕 C3 :トリフェニルスルフォニウムクロライド〔試
薬〕 C4 :N−ラウリルピリジニウムクロライド〔試薬〕 C5 :トリブチルアミン〔市販の試薬〕 C6 :トリブチルホスフィン〔試薬〕 C7 :三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体〔試薬〕 D1 :流動性付与剤〔モンサント・ケミカル(株)
製、商品名モダフローP−3〕 E1 :ワキ防止剤〔和光純薬(株)製、商品名ベンゾ
イン〕 F1 :白色顔料(主成分は酸化チタン)〔クロノス・
チタン・GMBH(株)製、商品名クロノス2160〕 (カルボキシル基含有ポリエステル樹脂A2の合成)精
留塔及び撹拌機付き反応器にテレフタル酸ジメチルエス
テル100g、ネオペンチルグリコール107g及び酢
酸亜鉛0.2gを仕込み、メタノールを系外に留去しな
がら、加熱反応し、メタノールの流出が止まった後に、
その生成物を窒素置換した撹拌機付き重合反応器に移
し、更に三酸化アンチモン0.1g、及びトリメチルホ
スフェイト0.11gを添加して、250℃で常圧反応
を30分行い、次いで約25mmHgの減圧下で30分
間反応した。ここで得られた樹脂100g、無水トリメ
リト酸10.0gを撹拌機付き重合反応器中で、180
℃で30分間反応した。得られたポリエステル樹脂は、
カルボキシ当量1130g/eq、酸価49.7(KO
H−mg/g)、数平均分子量4520、ガラス転移温
度は約75℃であった。
【0073】(カルボキシル基含有ポリエステル樹脂A
3の合成)精留塔及び撹拌機付き反応器にテレフタル酸
ジメチルエステル100g、ネオペンチルグリコール1
07g及び酢酸亜鉛0.2gを仕込み、メタノールを系
外に留去しながら、加熱反応し、メタノールの留出が止
まった後に、その生成物を窒素置換した撹拌機付き重合
反応器に移し、さらに三酸化アンチモン0.1g、及び
トリメチルホスフェイト0.11gを添加して、250
℃で常圧反応を30分行い、次いで約25mmHgの減
圧下で30分間反応した。ここで得られた樹脂100
g、無水シクロヘキサンジカルボン酸7.8gを撹拌機
付き重合反応器中で、180℃で30分反応した。得ら
れたポリエステルは、カルボキシ当量2200g/e
q、酸価25.5(KOH−mg/g)、数平均分子量
4400、ガラス転移温度は約60℃であった。
【0074】実施例1 カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(A1)の89
1.7g、トリス(β−メチルグリシジル)イソシアヌ
レート(B1 )の90.8g、ベンジルトリフェニル
ホスフォニウムブロマイド(C1 )の4.46g、流
動性付与剤(D1)の10.0g、及びワキ防止剤(E
1)の3.0gをニーダーに入れ、90℃の温度で溶融
混合した。その後、室温に冷却し、家庭用ミキサーを用
いて粉砕した。この粉砕物を150メッシュの分級機で
ふるい分けして粉体塗料用樹脂組成物を得た。上記の配
合組成は表1に示した。
【0075】実施例2〜14 表1に示した配合成分で、実施例1と同様の方法で実施
例2〜14の粉体塗料用樹脂組成物を得た。 比較例1 カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(A1)の89
5.8g、トリス(β−メチルグリシジル)イソシアヌ
レート(B1 )の91.2g、流動性付与剤(D1)
の10.0g、及びワキ防止剤(E1)の3.0gをニ
ーダーに入れ、90℃の温度で溶融混合した。その後、
室温に冷却し、家庭用ミキサーを用いて粉砕した。この
粉砕物を150メッシュの分級機でふるい分けして粉体
塗料用樹脂組成物を得た。上記の配合組成は表2に示し
た。
【0076】比較例2〜14 表2に示した配合成分で、比較例1と同様の方法で比較
例2〜14の粉体塗料用樹脂組成物を得た。但し、比較
例5及び比較例14は溶融混合の温度を120℃で行っ
た。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
【表4】
【0081】
【表5】
【0082】
【表6】
【0083】0.6mm厚のリン酸亜鉛処理鋼板に、上
記の実施例1〜8及び比較例1〜7の粉体塗料用樹脂組
成物を、静電スプレー塗装法で60μmの膜厚で塗装
後、180℃で20分間焼き付け、上記の粉体塗料用樹
脂組成物による塗膜を得た。これらの塗膜の性能を、下
記の試験法により評価した。 試験(1):エリクセン強度試験 表面に塗膜を形成した金属板を、裏側から径20mmの
ポンチで押し出し、どの位の押し出し距離まで塗膜が耐
えられるかを調べた。そして、塗膜の亀裂や剥がれが生
じた時の押し出し距離(mm)を表した。
【0084】試験(2):衝撃試験 (JIS、K−5400、塗料一般試験方法の耐衝撃性
の試験に準ずる)先端に一定の丸みを有する撃芯と、そ
の丸みに合致するくぼみを有する受け台との間に、塗膜
を上にした試験片を置き、塗膜の表面に上記の一定の丸
みを有する撃芯(球体を含有するおもり)が衝突したと
きの塗膜の衝撃抵抗性を、われ、剥がれができるかどう
かで調べた。衝撃の強さは、落体の重さと落下距離とで
調節した。塗膜面に、われや剥がれが発生した時の落体
の重さと落下距離を記録した。撃芯の先端径は1/2イ
ンチで統一し、(おもりの重さ)×(高さ)で表示し
た。衝撃試験機は東洋テスター工業(株)製を用いた。
【0085】試験(3):表面平滑性試験 得られた塗膜面を目視で判断し、粒状物や凹凸の有無を
判断する。粒状物や凹凸が全くなければ記号(◎)で、
僅かでも存在する場合は記号(○)で、全体的に存在し
ていれば記号(×)で表す。 試験(4):耐溶剤性試験(キシレンラビング) 塗膜表面をキシレンを浸したガーゼで20往復し、膨潤
や溶解による塗膜の削れ具合を観察する。膨潤や溶解に
よる塗膜の削れが全くない場合は記号(○)で、膨潤や
溶解による塗膜の削れが幾らかでもあれば記号(×)で
表す。
【0086】上記の評価結果を表3に記載した。表3中
で、実施例1の組成物による塗膜は実施例膜1と表し、
同様に実施例2〜8の組成物による塗膜は実施例膜2〜
8、比較例1〜7の組成物による塗膜は比較例膜1〜7
と表す。
【0087】
【表7】
【0088】
【表8】
【0089】
【表9】
【0090】
【表10】
【0091】上記の実施例9〜実施例14、及び比較例
8〜比較例14の粉体塗料用樹脂組成物の各20gをテ
フロン板上に乗せ、180℃の熱風循環式オーブン中で
20分間の加熱硬化を行った。室温まで冷却後、試料を
粒径約100μm程度に成るまで冷凍粉砕した。この試
料を下記の試験(5):開環重合の比率測定、試験
(6):加熱硬化後の変色性試験に用いた。
【0092】試験(5):開環重合の比率 (粉体塗料用樹脂組成物の加熱硬化前のエポキシ価)を
(a1)、(粉体塗料用樹脂組成物の加熱硬化後のエポ
キシ価)を(a2)、(反応消費エポキシ価)を(a
3)とすれば、(a1)−(a2)=(a3)となる。
この(反応消費エポキシ価)は粉体塗料用樹脂組成物が
硬化した時に要した全体のエポキシ基の量となる。
【0093】また、粉体塗料用樹脂組成物が硬化した時
に要した全体のカルボキシル基を反応消費カルボキシル
価として(b1)で表せば、(a3)−(b1)はエポ
キシ基がカルボキシル基と反応せずに、エポキシ基同士
で開環重合を行いポリエーテルを形成した量となる。即
ち、この(a3)−(b1)が自己重合が発生した量と
なる。
【0094】開環重合の比率を、〔(a3)−(b
1)〕÷(a3)×100=(開環重合率)%で表し、
この開環重合率が高ければ自己重合が多く起こっている
事となる。従って、この開環重合率が70%以上の場合
は記号(×)で、30%以上70%未満の場合は記号
(△)で、30%未満の場合は記号(○)で表4に記載
した。なお、エポキシ基の定量方法及びカルボキシル基
の定量方法、更にエポキシ価とカルボキシル価の算出方
法は下記の通りに行った。
【0095】(5−1)エポキシ基の定量 テトラエチルアンモニウムブロマイド(試薬1級)、酢
酸(試薬1級)、無水酢酸(試薬1級)、アセトン(試
薬1級)、クリスタルバイオレット指示薬(酢酸100
ミリリットル中に100mgを溶解させた)、0.1N
過塩素酸酢酸規定液(試薬:factor=1.00
0)、テトラエチルアンモニウムブロマイド溶液(テト
ラエチルアンモニウムブロマイド70gを、酢酸500
ミリリットルとアセトン500ミリリットルに溶解して
調製した)を準備した。
【0096】上記の試料を200ミリリットルのコニカ
ルビーカーに2g精秤し、テトラエチルアンモニウムブ
ロマイド溶液100ミリリットルを加えた。その後、室
温で1時間以上試料を膨潤させてから0.1N−過塩素
酸酢酸規定液で滴定した。終点の決定は、京都電子工業
株式会社製(商品名AT−200N)電位差自動終点測
定装置により行った。
【0097】試料の滴定に要した0.1N−過塩素酸酢
酸規定液の重量(ミリリットル数)を(V1)、秤取し
た試料の重量(グラム数)を(h1)とすれば、エポキ
シ価(eq/kg)は、エポキシ価=0.1V1/h1
表される。 (5−2)カルボキシル基の定量 1,4−ジオキサン(試薬1級)、0.1N水酸化ナト
リウム水溶液(試薬:factor=1.000)を準
備した。
【0098】上記の試料を200ミリリットルのコニカ
ルビーカーに2g精秤し、1,4−ジオキサン50ミリ
リットルで、室温で1時間以上膨潤させてから蒸留水5
0ミリリットルを加えて0.1N水酸化ナトリウム水溶
液で滴定した。終点の決定は、京都電子工業株式会社製
(商品名AT−200N)電位差自動終点測定装置によ
り行った。 試料の滴定に要した0.1N水酸化ナトリ
ウム水溶液の重量(ミリリットル数)を(V2)、秤取
した試料の重量(グラム数)を(h2)とすれば、カル
ボキシル価(eq/kg)は、カルボキシル価=0.1
2/h2で表される。
【0099】試験(6):加熱硬化後の変色性 上記の試料を180℃の熱風循環式オーブン中で20分
間反応して試料の変色(着色)の度合いを目視で判断
し、変色が認められない場合は(◎)印で、僅かでも変
色する場合は(○)印で、全体的に変色している場合は
(×)印で表4に記載した。
【0100】
【表11】
【0101】
【表12】
【0102】本願発明の粉体塗料用樹脂組成物は、硬化
剤にトリス(β−メチルグリシジル)イソシアヌレート
を用いている為に、トリグリシジルイソシアヌレートを
用いた場合よりも得られた塗膜面の平滑性が高く、しか
も、β−メチルグリシジル基同士の自己重合抑制剤であ
ると同時に、β−メチルグリシジル基とカルボキシル基
の硬化反応促進剤でもある(C)成分を含有するので、
β−メチルグリシジル基とカルボキシル基が充分に硬化
反応を起こす事ができ、その結果、エリクセン強度値や
耐衝撃性の試験の値で、それらを含有しない場合や、
(C)成分以外の成分を使用した場合に比べて良好な値
を示した。
【0103】
【発明の効果】本願発明の粉体塗料用樹脂組成物は、硬
化剤にトリス(β−メチルグリシジル)イソシアヌレー
トを用いる為に、当該樹脂組成物を調製するのに、カル
ボキシル基含有樹脂と70〜120℃、好ましくは70
〜100℃の比較的低い温度で均一に溶融混練する事が
可能である。従って、この溶融混練時の温度ではβ−メ
チルグリシジル基とカルボキシル基との反応が起こらな
いので、当該樹脂組成物を基体上に塗布して熱硬化させ
た場合にフロー性が高く、得られる塗膜面の平滑性が高
い。また、熱硬化時に、脱離成分がないので塗膜からガ
スが発生する心配がなく、塗膜に気泡等が生じない。更
に、(C)成分を含有する為に、β−メチルグリシジル
基同士の自己重合を防止し、β−メチルグリシジル基と
カルボキシル基の硬化反応を促進するので、得られた塗
膜は亀裂や剥離が起こり難く、耐衝撃性や耐溶剤性に優
れたものとなる。また、本願発明に用いられる(A)成
分のカルボキシル基含有樹脂のガラス転移温度は、30
〜120℃であり、トリス(β−メチルグリシジル)イ
ソシアヌレートの融点は70〜100℃であるので、本
願発明の粉体塗料用樹脂組成物は、貯蔵中に融着(ブロ
ッキング)が起こらずに高い貯蔵安定性を有する。
【0104】この様な特性を利用して、本願発明の粉体
塗料用樹脂組成物は、例えば、家電製品、外壁等の室内
・外に広く利用する事が出来る。
フロントページの続き (72)発明者 毛呂 健夫 東京都千代田区神田錦町3丁目7番地1 日産化学工業株式会社内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記(A)成分、(B)成分、及び
    (C)成分; (A)1000〜20000の数平均分子量、5〜20
    0の酸価、及び30〜120℃のガラス転移温度を有す
    るカルボキシル基含有樹脂、 (B)式(1): 【化1】 で表されるトリス(β−メチルグリシジル)イソシアヌ
    レート、及び (C)開環重合抑制剤として、式(2): 【化2】 で表される結合を分子中に有するアミン、及びオニウム
    塩より成る群の中から選ばれた少なくとも1種の化合
    物、を含有する粉体塗料用樹脂組成物。
  2. 【請求項2】 (C)成分の式(2)で表される結合を
    分子中に有するアミンが、式(3): 【化3】 〔但し、mは2〜11、nは2〜3の自然数を示す〕で
    示される構造を有する環状アミンである請求項1に記載
    の粉体塗料用樹脂組成物。
  3. 【請求項3】 (C)成分のオニウム塩が、式(4): 【化4】 〔但し、mは2〜11、nは2〜3の自然数を、R1
    アルキル基又はアリール基を、Y-は陰イオンを示す〕
    で示される構造を有する第4級アンモニウム塩、式
    (5):R2345+-(但し、R2、R3、R4
    びR5はアルキル基又はアリール基を、Nは窒素原子
    を、Y-は陰イオンを示し、且つR2、R3、R4、及びR
    5はそれぞれC−N結合により窒素原子と結合されてい
    るものである)で示される構造を有する第4級アンモニ
    ウム塩、式(6): 【化5】 〔但し、R6及びR7はアルキル基又はアリール基を、Y
    -は陰イオンを示す〕の構造を有する第4級アンモニウ
    ム塩、式(7): 【化6】 〔但し、R8はアルキル基又はアリール基を、Y-は陰イ
    オンを示す〕の構造を有する第4級アンモニウム塩、式
    (8): 【化7】 〔但し、R9及びR10はアルキル基又はアリール基を、
    -は陰イオンを示す〕の構造を有する第4級アンモニ
    ウム塩、式(9): 【化8】 〔但し、mは2〜11、nは2〜3の自然数を、Hは水
    素原子を、Y-は陰イオンを示す〕の構造を有する第3
    級アンモニウム塩、式(10):R111213 14+
    -〔但し、R11、R12、R13、及びR14はアルキル基
    又はアリール基を、Pはリン原子を、Y-は陰イオンを
    示し、且つR11、R12、R13、及びR14はそれぞれC−
    P結合によりリン原子と結合されているものである〕で
    示される第4級ホスフォニウム塩、及び式(11):R
    151617+-〔但し、R15、R16、及びR17はア
    ルキル基又はアリール基を示し、Y-は陰イオンを示
    し、R1 5、R16、及びR17はそれぞれC−S結合により
    イオウ原子と結合されているものである〕で示される構
    造を有する第3級スルホニウム塩である請求項1又は請
    求項2に記載の粉体塗料用樹脂組成物。
  4. 【請求項4】 (C)成分が、請求項3記載の式(4)
    の化合物、式(6)の化合物、式(7)の化合物、式
    (8)の化合物、式(9)の化合物、式(10)の化合
    物、及び式(11)の化合物より成る群の中から選ばれ
    た少なくとも1種のオニウム塩である請求項1に記載の
    粉体塗料用樹脂組成物。
  5. 【請求項5】 (A)成分と(B)成分が、(B成分中
    のβ−メチルグリシジル基)/(A成分中のカルボキシ
    ル基)の当量比で、1.1〜2.5の割合に含有した請
    求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の粉体塗料用
    樹脂組成物。
  6. 【請求項6】 (A)成分100重量部に対して、
    (C)成分を0.01〜10重量部の割合に含有した請
    求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の粉体塗料用
    樹脂組成物。
  7. 【請求項7】 (A)成分のカルボキシル基含有樹脂
    が、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、又はこれら
    の混合物である請求項1乃至請求項6のいずれか1項に
    記載の粉体塗料用樹脂組成物。
  8. 【請求項8】 (A)成分のカルボキシル基含有樹脂
    が、脂肪族カルボン酸に基づくカルボキシル基を有する
    ポリエステル樹脂である請求項1乃至請求項6のいずれ
    か1項に記載の粉体塗料用樹脂組成物。
  9. 【請求項9】 (A)成分のカルボキシル基含有樹脂
    が、4.0以下のpKa値の芳香族カルボン酸に基づく
    カルボキシル基を有するポリエステル樹脂である請求項
    1乃至請求項6のいずれか1項に記載の粉体塗料用樹脂
    組成物。
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