JPH08319527A - はんだ密着性、めっき性に優れ、かつ洗浄が容易な銅合金およびその製造方法 - Google Patents

はんだ密着性、めっき性に優れ、かつ洗浄が容易な銅合金およびその製造方法

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JPH08319527A
JPH08319527A JP12641695A JP12641695A JPH08319527A JP H08319527 A JPH08319527 A JP H08319527A JP 12641695 A JP12641695 A JP 12641695A JP 12641695 A JP12641695 A JP 12641695A JP H08319527 A JPH08319527 A JP H08319527A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 Cu−Ni−Si系合金の特長である高強度
高導電性の特性を活かしながら、欠点である酸洗性を改
善する。 【構成】 Ni:0.4〜4.0重量%、Si:0.1
〜1.0重量%、Zn:1.0を越えて〜2.0重量
%、Cr:0.0001〜0.01重量%、Mg:0.
0001〜0.001重量%、および必要に応じて、M
n:0.01〜0.1重量%、Al:0.0001〜
0.01重量%を含有し、残部が実質的に銅および不可
避的不純物からなる銅合金であって、析出物Ni2Si
の粒径が10nm以下、不可避的不純物としてのSの含
有量が10ppm以下であるはんだ密着性、めっき性に
優れ、かつ洗浄が容易な銅合金およびその製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、リードフレーム、端
子、コネクタ、リレー用などの高強度、高導電性を有
し、かつはんだ密着性、めっき性およびめっき前処理の
酸洗が容易な析出硬化型の銅合金およびその製造方法に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】リードフレーム、端子、コネクタ、リレ
ー用などの電子部品は、小型、軽量化が進んできてお
り、使用される銅合金材料の板厚も薄くなってきてい
る。したがって、銅合金には高強度でかつ高導電性の特
性が要求される。
【0003】一方、これらの電子部品用銅合金材料は、
Sn、はんだ、Ni、貴金属(Au、Ag、Pdなど)
などのめっきが施されるが、その前処理として酸洗が施
される。この酸洗によって酸化皮膜が容易に除去される
ことが要求される。さらに電子部品の組立てにはSn、
はんだなどの接合方法が一般的に採用されているが、電
子部品の組立て中あるいは完成品が高温に曝されると、
はんだが容易に剥離する。またAgめっきにおいて、め
っき表面に異常突起が起こると半導体の組立て中にSi
チップとの接合性が劣化するなどの問題が発生する。
【0004】高強度、高導電性の特性を満足する合金と
しては、Cu−Ni−Si系合金が多く用いられてい
る。Cu−Ni−Si系合金は、Ni2Siの析出物の
直径が粗大化すると酸洗時にスマットとして表面に残存
することがある。このスマットを除去せずに、めっきを
施すと、めっきの密着性を劣化させるという不具合を生
じる。そのため、スマットを発生させないように、エッ
チング力の小さいフッ化物を含む酸洗液を用いる。この
酸洗液は Ni2Si+2NH4F・HF+4H2O →SiF4+2Ni(OH)2+NH4OH+3H2……(1) 3SiF4+3H2O=2H2SiF6+H2SiO3 …………(2) の化学反応によって生じたSiF4をイオン化し、スマ
ットを生じ難いが、Ni2Si析出物の直径が10nm
以上であると酸洗時間が長くなり、生産性が低下すると
いう問題を有している。
【0005】Cu−Ni−Si系合金は熱間加工が困難
な合金として旧来より知られており、その解決策とし
て、Mg、Cr、さらに必要に応じてMn、Al、Ca
を添加しているが、これらの元素はある量を越えると半
導体組立ての途中のめっき処理で異常突起が発生する。
【0006】この発明はこのような従来の課題を解決す
るためになされたものであり、Cu−Ni−Si系合金
の特長である高強度高導電性の特性を活かしながら、欠
点である熱間加工性、はんだの密着性、めっき性(異常
突起を生じない)、酸洗性を改善したはんだ密着性、め
っき性に優れ、かつ洗浄が容易な銅合金およびその製造
方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】この発明のはんだ密着
性、めっき性に優れ、かつ洗浄が容易な銅合金は、N
i:0.4〜4.0重量%、Si:0.1〜1.0重量
%、Zn:1.0を越えて〜2.0重量%、Cr:0.
0001〜0.01重量%、Mg:0.0001〜0.
001重量%、および必要に応じて、Mn:0.01〜
0.1重量%、Al:0.0001〜0.01重量%を
含有し、残部が実質的に銅および不可避的不純物からな
る銅合金であって、析出物Ni2Siの粒径が10nm
以下、不可避的不純物としてのSの含有量が10ppm
以下であるものである。
【0008】上記構成において、Ca:0.0001〜
0.0005重量%を含有する構成としてもよい。さら
に、Sn:0.2〜2.0重量%を含有する構成として
もよい。また上記各構成において、銅合金中のNi2
i析出物の大きさが10nm以下に制御されている構成
としてもよい。
【0009】またこの発明のはんだ密着性、めっき性に
優れ、かつ洗浄が容易な銅合金の製造方法は、上記各構
成の銅合金の鋳塊を880〜950℃の温度で厚さ15
mmまで熱間圧延し、700℃の温度で水中冷却し、つ
いで圧延材の面削りを行なった後、厚さ1.5mm以下
まで冷間圧延してコイル材とし、650〜950℃の温
度に5秒間〜5分間の連続焼鈍後、急冷して溶体化処理
し、つぎに厚さ1.5mm以下の溶体化処理材をそのま
ま、または50%以下の圧下率で冷間圧延し、450〜
550℃の温度に5分間〜5時間保持して析出処理を施
し、さらに適宜冷間圧延を施すようにしたものである。
【0010】
【作用】本発明者は、上記問題を解決するために種々の
実験を行なった結果、電子部品用材料に求められる酸洗
時のスマットの残存を、Ni2Siの析出物の大きさと
NiおよびSiの含有量を限定することにより抑制可能
であることを見出した。はんだの密着性はNi、Siの
含有量により温度450〜550℃、時間5分間〜5時
間の析出処理条件を選定することにより、導電率の測定
からNi2Siの析出量を制御し、解決する方法を見出
した。Agめっき性は、Mg、Al、Caの含有量が増
大するにしたがって劣化する。一方、これらの元素が添
加されないと、鋳塊は中・高温域で脆化し、鋳塊の熱間
加工性が劣化する。この発明では両者の課題を解決する
添加元素の成分範囲を見出したものである。
【0011】つぎに、この発明に係る銅合金の各成分の
添加理由、組成限定理由、析出物の大きさ限定理由およ
び製造条件の限定理由について説明する。
【0012】Ni:0.4〜4.0重量% Niは後述するSiとともに添加されて、銅合金の強度
および耐熱性の向上に寄与する元素である。すなわち、
NiはSiと金属間化合物Ni2Siを形成することに
より、強度および耐熱性を向上させる。Niの含有量が
0.4重量%未満の場合はその効果は小さく、また4.
0重量%を越えて含有すると、導電率が低下するととも
に酸洗時のスマットの残存が多くなるという問題が生じ
る。したがって、Ni含有量は0.4〜4.0重量%と
する。
【0013】Si:0.1〜1.0重量% SiはNiとともに添加されて、強度および耐熱性を向
上させる元素である。Si含有量が0.1重量%未満の
場合はその効果は小さく、また1.0重量%を越えて含
有されると、導電率が低下するとともに、酸洗時のスマ
ットの残存が多くなり、はんだの密着性も劣化する。し
たがって、Si含有量は0.1〜1.0重量%とする。
【0014】Zn:1.0重量%を越えて〜2.0重量
% Znは、はんだ密着性を向上させるとともに、酸洗性も
向上させる。すなわち、Znを含有する銅合金は加熱工
程でZnがCuより優先して表面に拡散、酸化される。
このため表面にはんだがめっきされている場合、Cu3
Sn金属間化合物合金層の形成が抑制される。Cu、S
nの金属間化合物が形成されると、はんだと母材の界面
で空孔が増し、はんだが剥離する。Znを含有する合金
はZnが表面にCuよりも優先して拡散することによ
り、Cu3Sn金属間化合物の形成が抑制され、はんだ
の剥離も起こらない。また加熱工程で形成されるZnの
酸化物はCuの酸化物よりも酸洗液への溶解が容易であ
り、Znを含有する合金は酸洗が容易となる。
【0015】さらにプレス打ち抜き時、Znが潤滑効果
を示し、金型の摩耗が少なく、金型寿命を向上させる。
その他にも、耐マイグレーション性、Snめっき材の耐
ウィスカー性の向上効果をも有する。Zn含有量が1.
0重量%以下ではそれらの効果は少なく、また2.0重
量%を越えて含有してもそれらの効果は飽和する一方、
導電率や、はんだ濡れ性が低下するという問題が生じ
る。したがって、Zn含有量は1.0重量%を越えて〜
2.0重量%とする。
【0016】Sn:0.2〜2.0重量% Snは合金の強度およびばね特性を向上させる元素であ
り、これらの特性を重視する用途に使用する場合には添
加することが望ましい。Snの含有量が0.2重量%未
満では上記効果が小さく、またSnを2.0重量%を越
えて含有すると、導電率が大幅に低下する。したがっ
て、Snの含有量は0.2〜2.0重量%とする。
【0017】Cr:0.0001〜0.01重量% Crは鋳塊の粒界を強化し、熱間加工性を高める元素で
ある。しかしその含有量が0.0001重量%未満では
その効果は少なく、また0.01重量%を越えてCrを
含有すると溶湯が酸化し、鋳造性が劣化する。したがっ
て、Crの含有量は0.0001〜0.01重量%とす
る。
【0018】Mg:0.0001〜0.001重量% Mgは熱間加工性を向上させるためにも必須の元素であ
る。すなわち、Mgは原料あるいは溶解・鋳造時に不可
避的に混入するSを合金中で高融点のMgS化合物とし
て固定する作用を有する。これにより銅合金の熱間加工
性を高めることができる。
【0019】Mg含有量が0.0001未満では上記効
果は少なく、また0.001重量%を越えて含有される
と、低融点の共晶を生じ、熱間加工性が劣化し、また溶
湯が酸化しやすくなり、湯流れ性が低下し、健全な鋳塊
が得難くなる。さらにめっき処理において、めっきの表
面に異常析出による突起が発生する。したがって、Mg
の含有量は0.0001〜0.001重量%とする。
【0020】S:10ppm以下 Sは原料、炉および樋などの耐火材、燃料または雰囲気
などから合金中に混入し、金属との化合物またはS単独
で存在し、熱間加工における加熱中または加工中に割れ
を生じさせる主原因となる。Sの含有量が10ppmを
越えると、Sがそのまま残留し、加熱のみでも粒界割れ
が生じやすくなる。またSが10ppmを越えると、単
独あるいは化合物としてめっきの表面に異常析出し、め
っきの突起が発生しやすくなる。したがって、Sの含有
量は10ppm以下に規制する。
【0021】Ca:0.0001〜0.01重量% Caは銅合金の熱間加工性を向上させる効果がある。C
a含有量が0.0001未満ではその効果は少なく、ま
た0.01重量%を越えて含有されると、鋳塊中に残留
し、健全な鋳塊が得難くなる。したがって、Caの含有
量は0.0001〜0.01重量%とする。
【0022】Mn:0.01〜0.1重量%、Al:
0.0001〜0.01重量% 前述の含有成分以外に、Mnは熱間加工性を向上させる
元素であり、Mnの含有量が0.01未満ではその効果
は少なく、また0.1重量%を越えてMnが含有される
と、鋳造時の湯流れ性が劣化して造塊歩留まりが低下す
る。
【0023】Alは溶解鋳造時に不可避的に混入するS
を合金中からAl23として除去する作用を有する。こ
のため、予めAlを含有させておくことにより、不可避
的不純物であるSをAl23化合物として除去し、S量
を10ppm以下に低減させて熱間加工性を向上させる
ことができる。またAl23は比重が軽いため、溶解時
に溶湯上部に浮上しやすい。このため、得られた鋳塊は
Al23を含有しないものとなり、めっき表面の異常突
起が生じない健全な鋳塊が得られる。
【0024】したがって、必要に応じてMn:0.01
〜0.1重量%、Al:0.0001〜0.01重量%
を含有させる。
【0025】なお、上記の含有成分および基成分のCu
以外に、Co、Fe、Ti、Zr、P、V、Nb、M
o、Ag、Wの1種または2種以上を総量で0.1重量
%まで含有していても、この発明に係るはんだ密着性、
めっき性、酸洗性、高力・高導電性などの特性が損なわ
れることはない。したがって、上記範囲内でのこれらの
成分の含有は許容されるものである。
【0026】また不可避的不純物としては、C、Sb、
Pb、MM(ミッシュメタル)などが挙げられる。
【0027】Ni2Si析出物の大きさ:10nm以下 Ni2Si析出物をCuマトリックスに均一微細に分散
させることによって、銅合金の強度を向上させることが
できる。この効果は、析出物の粒子間距離が小さいほど
大となる。したがって、銅合金の強度向上のためには粒
子間距離を小さくすることが必要となる。NiとSiの
含有量を一定値より増加させずに、Ni2Siの析出粒
子数を増加させることにより、粒子間距離を小さくする
ことが可能である。
【0028】NiおよびSiの含有量を上記のように制
限し、Znを含有させるとともに、Ni2Si析出物の
大きさを制限することによって、酸洗時のスマット残存
量およびめっき密着性などの信頼性を確保するのに必要
な限界レベルまで下げることができる。
【0029】Ni2Siの析出物の大きさが10nmを
越えると、固溶に要する時間が多くなるなどで、上記効
果は小さくなる。したがって、Ni2Si析出物の大き
さは10nm以下とする。
【0030】つぎに製造条件の限定理由について説明す
る。
【0031】固溶化処理温度、時間:650〜950
℃、5秒間〜5分間 前述のNi2Siの析出物とは、溶体化処理により、固
溶したNi、Siが固溶状態のまま、またはその後に冷
間加工を施した材料の析出処理によって母相から析出し
てくるNi2Si相のことをいう。一方、固溶化処理が
終了した時点ですでに存在するNi2Siも、析出処理
で析出したNi2Siとともに最終製品中に存在する。
この析出処理前の鋳塊の段階で存在するNi2Siは、
晶出物と析出物とが共存するものと考えられる。これら
が熱間加工時の加熱およびその後の固溶化処理の加熱で
完全に固溶せずに残存したものが晶出物Ni2Siであ
る。このような晶出物のNi2Siは、サイズが大きい
ために強度向上の寄与効果が小さく、また酸洗時のスマ
ット発生の原因にもなる。したがって、鋳造および熱間
加工を行なう場合には、その加熱条件を考慮し、鋳造時
の晶出物の発生を抑制し、また発生した晶出物の固溶を
促進するようにすることにより、熱延材の固溶化処理後
に残存する晶出物の量をも極力少なくすることが好まし
い。その後、厚さ1.5mmまで冷間圧延し、コイル材
とする。熱間圧延後の先端と後端の焼入れ遅れによる固
溶状態や結晶粒径の変動を均一化するため、コイル材を
650〜950℃の温度で、5秒間〜5分間の連続焼鈍
し、急冷して固溶化処理する。このとき650℃未満で
はNi、Siが均一に固溶せず、後の析出処理工程で析
出する均一微細なNi2Si析出物による高強度が得ら
れない。
【0032】鋳造時の凝固過程で発生する粗大なNi2
Siの晶出物や固溶化後の冷却過程で発生する粗大なN
2Siの晶出物の固溶が十分に行なわれないため、N
2Si析出物を10nm以下にすることが困難とな
る。一方、固溶化処理温度が950℃を越えると、上記
の効果が飽和するばかりでなく、二次再結晶により結晶
粒が粗大化するため、この時点の結晶粒径が製品にその
まま残り、粒界が弱くなり、曲げ加工性の劣化や疲労強
度の低下、衝撃抵抗値の低下をまねく。したがって、固
溶化処理温度は650〜950℃とする。
【0033】また、固溶化処理時間が5秒間未満では固
溶が不充分である。一方、固溶化処理時間が5分間を越
えると固溶が飽和して、その後の析出処理におけるNi
2Siの晶出物による強度の向上効果はそれ以上期待で
きず、エネルギーと生産性のロスが大きくなる。したが
って、固溶化処理時間は5秒間〜5分間とする。
【0034】固溶化処理後の冷間圧延は、その後の時効
処理による析出硬化の効果をさらに高めるものである
が、曲げ加工性を優先させる場合は省略することもでき
る。
【0035】析出処理温度、時間:450〜550℃、
5分間〜5時間 析出処理は、固溶化処理で固溶したNi、SiをNi2
SiとしてCu母相中に均一微細に析出させることによ
り、析出硬化を得るためのものである。析出処理温度が
450℃未満の場合は、析出物の量が少なく、十分な強
度を得ることができない。また、析出処理温度が550
℃を越えると、析出物の粗大化および再固溶が起こるた
め、所期の目的の強度が得られないとともに、酸洗時の
スマット残存、はんだ付け材のはんだの剥離が起こる。
したがって、析出処理温度は450〜550℃とするこ
とが必要である。
【0036】また、析出処理における温度保持時間が5
分間未満の場合は、析出物の量が少なく、上記の効果を
十分に得ることができない。一方、5時間を越えても、
上記の効果は飽和するため、エネルギーと生産性のロス
が大きくなる。したがって、析出処理における温度保持
時間は5分間〜5時間とする。
【0037】さらに、析出処理後に、強度をさらに向上
させる目的で、適宜冷間圧延を施すことが可能である。
曲げ加工性を優先させる場合は省略することもできる。
【0038】固溶化処理後の冷却速度:固溶化処理温度
に加熱、保持後の冷却速度は、固溶化を十分に行なうた
めに大きいほどよい。速度が10℃/秒未満では、冷却
過程の高温側で粗大な析出物が形成されるため、その後
の析出処理で所期の目的の強度向上効果が得られないだ
けでなく、粗大な析出物が酸洗時にスマットとして残存
するという不具合が生じる。したがって、固溶化処理後
の冷却速度は10℃/秒以上とする。
【0039】
【実施例】下記表1に示す組成の銅合金を、高周波溶解
炉を用いて大気中で木炭被覆下で溶解し、溶製した溶湯
をカーボン製鋳型に鋳造し、厚さ50mm、幅80m
m、長さ180mmの鋳塊を得た。その後、この鋳塊の
表面の疵取りをし、950℃に加熱後、厚さ15mmま
で熱間圧延を行ない、750℃以上の温度から水中に浸
漬して急冷した。
【0040】つぎに、各圧延材の表面の酸化スケールな
どの除去をした後、冷間圧延を行ない、0.20mmの
板材を得た。その後、これらの板材を750℃の温度に
調整した塩浴中に30秒間浸漬して固溶化処理を行なっ
た後、水中に浸漬して急冷した。続いて、これらの板材
を冷間圧延して、0.15mmの板材とし、これらを5
00℃の温度で2時間加熱して析出処理を行なった。
【0041】上記のようにして製作した鋳塊および板材
に対して、鋳塊の高温シャルピー衝撃試験、板材の引張
り試験、硬さ・導電率測定、はんだの剥離試験、めっき
性および酸洗性を評価するため、以下の試験を行なっ
た。
【0042】鋳塊の一部を切断し、JIS・Z−224
2に準じ、600℃および900℃におけるシャルピー
衝撃試験を行なった。板材に対して幅10mm、長さ2
0mmの試験片を、アルカリ脱脂浴中で電解脱脂した
後、はんだの密着性、めっき性、酸洗性の評価に供し
た。
【0043】はんだの密着性の評価は、9Sn/1Pb
のはんだめっき10μmを施した後、150℃の温度で
1000時間まで加熱保持後、曲げ半径0.5mmで1
80°曲げ戻し後のはんだの剥離の有無を観察した。
【0044】めっき性の評価は、シアン浴中でAgめっ
きした後、Agめっき表面を100倍の倍率の光学顕微
鏡で観察し、大きさが10μm以上のAgの異常析出に
よる突起の有無を観察した。
【0045】Agめっきの条件は以下の通りである。
【0046】Cu下地めっき 浴組成:CuCN 42g/l、KCN 91g/l 浴温度:60℃、電流密度:5A/dm2、厚さ:0.
1μm Agめっき 浴組成:S−930(エヌ・イー・ケムキャット製) 浴温度:60℃、電流密度:50A/dm2 酸洗性の評価はICの組立て工程中でのリードフレーム
材料が受ける加熱を想定したもので、大気中で200℃
の温度で30分間の加熱を施した材料の酸洗後のスマッ
ト残存量で行なった。これらの表面に酸化物が形成され
た材料を30重量%H2SO4+5重量%NH4F・HF
の水溶液を50℃に加熱した液中に5〜20秒間浸漬し
た。このとき発生したスマット残存量をブラシによるス
マット除去前後の重量測定によって評価した。
【0047】以上の評価結果を表2に示す。比較例の合
金No.8は600℃で固溶化処理し、急冷したもので
あり、No.13は980℃で固溶化処理し、急冷した
ものである。また比較例の合金No.10は、420℃
で析出処理し、No.13,14は580℃で析出処理
したものである。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】この実施例の合金No.1〜6は鋳塊の中
高温域でのシャルピー衝撃値が高く、板材は高い引張り
強さと硬さを有するとともに、良好な導電率を有し、は
んだの密着性、めっき性、酸洗性に優れることがわか
る。
【0051】これに対し、Ni、Siの含有量が少ない
比較例の合金No.7は、強度が不足している。一方、
Ni、Siの含有量が多い比較例の合金No.8は、強
度は優れているが、酸洗時のスマット残存量が多く、導
電率も低い。比較例の合金No.9,10は、S、Mg
が規制値よりも多く、めっき性が劣る。No.11,1
2は中高温域でのシャルピー衝撃値が低く、熱間圧延が
できなかった。
【0052】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれ
ば、従来のCu−Ni−Si系合金の高強度、高導電性
を保ちながら、熱間加工性、はんだの密着性、めっき
性、酸洗性を改善することが可能となり、電子部品用材
料としての信頼性が向上する効果は大きい。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Ni:0.4〜4.0重量%、Si:
    0.1〜1.0重量%、Zn:1.0を越えて〜2.0
    重量%、Cr:0.0001〜0.01重量%、Mg:
    0.0001〜0.001重量%、および必要に応じ
    て、Mn:0.01〜0.1重量%、Al:0.000
    1〜0.01重量%を含有し、残部が実質的に銅および
    不可避的不純物からなる銅合金であって、析出物Ni2
    Siの粒径が10nm以下、不可避的不純物としてのS
    の含有量が10ppm以下であることを特徴とするはん
    だ密着性、めっき性に優れ、かつ洗浄が容易な銅合金。
  2. 【請求項2】 Ca:0.0001〜0.0005重量
    %を含有することを特徴とする請求項1記載のはんだ密
    着性、めっき性に優れ、かつ洗浄が容易な銅合金。
  3. 【請求項3】 Sn:0.2〜2.0重量%を含有する
    ことを特徴とする請求項2記載のはんだ密着性、めっき
    性に優れ、かつ洗浄が容易な銅合金の製造方法。
  4. 【請求項4】 上記銅合金中のNi2Si析出物の大き
    さが10nm以下に制御されていることを特徴とする請
    求項1〜3のいずれかに記載のはんだ密着性、めっき性
    に優れ、かつ洗浄が容易な銅合金。
  5. 【請求項5】 上記請求項1〜3に記載の銅合金の鋳塊
    を880〜950℃の温度で厚さ15mmまで熱間圧延
    し、700℃の温度で水中冷却し、ついで圧延材の面削
    りを行なった後、厚さ1.5mm以下まで冷間圧延して
    コイル材とし、650〜950℃の温度に5秒間〜5分
    間の連続焼鈍後、急冷して溶体化処理し、つぎに厚さ
    1.5mm以下の溶体化処理材をそのまま、または50
    %以下の圧下率で冷間圧延し、450〜550℃の温度
    に5分間〜5時間保持して析出処理を施し、さらに適宜
    冷間圧延を施すことを特徴とするはんだ密着性、めっき
    性に優れ、かつ洗浄が容易な銅合金の製造方法。
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