JPH08319348A - ポリアリーレンスルフィド及びその製造法 - Google Patents

ポリアリーレンスルフィド及びその製造法

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JPH08319348A
JPH08319348A JP7151165A JP15116595A JPH08319348A JP H08319348 A JPH08319348 A JP H08319348A JP 7151165 A JP7151165 A JP 7151165A JP 15116595 A JP15116595 A JP 15116595A JP H08319348 A JPH08319348 A JP H08319348A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 射出成形時のバリ発生量が著しく少なく、か
つ溶融粘度の剪断速度依存性が高く成形性に優れたPA
Sを提供する。 【構成】 溶融粘度V6 が300〜4000ポイズであ
り、かつ溶融粘度V6 と剪断感度Nが下記式(I) 【数1】 N−0.323logV6 ≧0.470 (I) で示される関係を有するポリアリーレンスルフィド。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ポリアリーレンスルフ
ィド(以下、PASと略すことがある)及びその製造法
に関する。
【0002】
【従来の技術】PASに分岐構造を導入して高分子量化
する方法としては、例えば従来法による低分子量PAS
(特公昭45‐3368号公報)を熱酸化処理して架橋
する方法、あるいは反応系にポリハロ芳香族化合物等の
分岐剤を添加して重合反応を行う方法(米国特許第40
38261号明細書)が知られている。しかし、前者の
方法では、PASの分岐、架橋の制御が困難であり、得
られたPASの成形性が悪く、後者の方法では、高分岐
度の高分子量PASを得ようとすると、成形時における
PASのゲル化や流動性の低下が避けられなかった。
【0003】特公平6‐45693号公報には、アルカ
リ金属硫化物、ジハロゲン芳香族化合物及び官能基を3
個以上有する芳香族化合物を反応させるに際して、これ
ら物質のモル比を所定範囲にすることにより、十分高分
子量でありながら溶融流動性に優れて成形加工性が容易
であり、しかも成形加工時にバリ等の発生がなく、着色
のない優れた成形品に加工することができるPASの製
造法が開示されている。しかし、該発明は、ジハロゲン
芳香族化合物対アルカリ金属硫化物のモル比が大きく、
また、成形加工時におけるバリ発生の低減の効果は未だ
十分であるとはいえなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、射出成形時
のバリ発生量が著しく少なく、かつ溶融粘度の剪断速度
依存性が高く成形性に優れたPAS及びその製造法を提
供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決すべく、鋭意検討を重ねた。その結果、アルカリ
金属硫化物、ジハロゲン芳香族化合物及び官能基を3個
以上有する芳香族化合物を所定のモル比で仕込み、かつ
ジハロゲン芳香族化合物が所定の反応率の時点で所定量
の分子量調節剤を反応系に添加することにより、射出成
形時のバリ発生量が著しく少なく、かつ溶融粘度の剪断
速度依存性が高く成形性に優れたPASが得られること
を見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】即ち、本発明は、溶融粘度V6 が300〜
4000ポイズであり、かつ溶融粘度V6 と剪断感度N
が下記式(I)
【0007】
【数2】 N−0.323logV6 ≧0.470 (I) で示される関係を有するポリアリーレンスルフィドであ
る。
【0008】本発明のPASの溶融粘度V6 は、上限が
4000ポイズ、好ましくは3000ポイズであり、下
限が300ポイズ、好ましくは500ポイズ、特に好ま
しくは800ポイズである。溶融粘度V6 が、上記下限
未満では射出成形時のバリ発生が著しく、上記上限を超
えては成形性が悪化し好ましくない。ここで、溶融粘度
6 は、フローテスターを用いて300℃、荷重20k
gf/cm2 、L/D=10で6分間保持した後に測定
した粘度(ポイズ)である。
【0009】本発明のPASは、溶融粘度V6 と剪断感
度Nが上記の式(I)で示される関係を満たすことが必
要である。該関係を満たすことにより、PASは射出成
形時のバリ発生量が著しく少なく、かつ成形性に優れ
る。剪断感度Nは、その下限が1.27、好ましくは
1.45、特に好ましくは1.50である。上記下限未
満では、射出成形時のバリ発生が著しい。ここで、剪断
感度Nは、フローテスターを用いて300℃、L/D=
10で6分間保持した後における剪断速度及び剪断応力
を荷重を変数として測定し、下記式(II)に基き、剪断
速度及び剪断応力の対数を夫々縦軸、横軸にプロットし
て、その直線の傾きから求めた値である
【0010】
【数3】SR=K・SSN (II) [ここで、SRは剪断速度(秒-1)、SSは剪断応力
(ダイン/cm2 )、そしてKは定数を示す]。
【0011】上記本発明のPASは、好ましくは下記の
方法で製造することができる。
【0012】即ち、極性溶媒中で(A)アルカリ金属硫
化物と(B)ジハロ芳香族化合物と(C)官能基を3個
以上有する芳香族化合物を反応させてポリアリーレンス
ルフィドを製造する方法において、(A)/(B)のモ
ル比が0.970〜1.020であり、(C)/(A)
のモル比が0.002〜0.015であるように上記
(A)、(B)及び(C)を反応系に仕込み、かつ反応
系内の(B)の反応率が50〜95%の時点で仕込み
(A)アルカリ金属硫化物に対してモル比で0.001
〜0.02の(D)分子量調節剤を反応系に添加するこ
とを特徴とするポリアリーレンスルフィドの製造法であ
る。
【0013】特公平6‐45688号公報には、(A)
アルカリ金属硫化物、(B)ジハロゲノ芳香族類及び任
意的な(C)トリ又はテトラハロゲノ芳香族を適宜反応
促進剤類の存在下に反応させてPASを製造する方法に
おいて、(D)モノメルカプト化合物を反応混合物に加
えることを特徴とする方法が記載されている。(C)は
任意成分であり[(B)に対して0〜5モル%]、実施
例においても使用されていない[(D)を加えていない
比較例(実施例1)においてのみ(C)を用いてい
る]。また、{(B)+(C)}:(A)のモル比は、
0.75:1〜1.25:1の範囲内である。該記載に
基いて算出すれば、(A)/(B)のモル比は0.8〜
1.4であり、実施例においては、(A)/(B)のモ
ル比は1.042である。このように、上記先行技術は
上位概念に相当するが、上記公報中に本発明の方法の構
成は具体的に開示されていない。また、上記先行技術の
方法の効果は、製造されたPASの融解粘度の再現性が
良いこと、及び融解安定性が高くかつ腐食性の低いPA
Sが得られることである。これに対して、本発明の方法
の効果は、射出成形時のバリ発生量が著しく少なく、か
つ溶融粘度の剪断速度依存性が高く成形性に優れたPA
Sが得られることにある。このように、本発明のPAS
製造法は、上記先行技術とは別異の優れた効果を奏する
ものである。
【0014】本発明のPAS製造法において、(A)ア
ルカリ金属硫化物/(B)ジハロ芳香族化合物のモル比
は、下限が0.970、好ましくは0.980であり、
上限が1.020、好ましくは1.000である。上記
下限未満では、PASの溶融粘度V6 が著しく低く、成
形品のバリ長も低減できない。また、PASの分岐度も
低い。上記上限を超えては、PASが解重合を起こすの
で好ましくない。(C)官能基を3個以上有する芳香族
化合物/(A)アルカリ金属硫化物のモル比は、下限が
0.002、好ましくは0.003であり、上限が0.
015、好ましくは0.01である。上記下限未満で
は、PASの溶融粘度V6 が著しく低く、成形品のバリ
長も低減できない。また、PASの分岐度も低い。上記
上限を超えては、PASの分岐、架橋が進行し過ぎて成
形時においてPASのゲル化が生じ成形性が悪化する。
【0015】本発明の方法において、(D)分子量調節
剤は、反応系内の(B)ジハロ芳香族化合物の反応率の
上限が95%、好ましくは90%、下限が50%、好ま
しくは70%、特に好ましくは80%の時点で添加され
る。添加時の(B)ジハロ芳香族化合物の反応率が上記
下限未満では、分岐構造の導入が不十分であり、成形品
のバリ長も低減できない。上記上限を超えると、極度に
溶融粘度V6 が高くなりゲル化して成形不能となる。重
合反応系に添加する(D)分子量調節剤は、(A)アル
カリ金属硫化物に対してモル比で、下限が0.001、
好ましくは0.002、特に好ましくは0.004であ
り、上限が0.02、好ましくは0.01、特に好まし
くは0.008である。上記範囲外では、一定の溶融粘
度V6に対する剪断感度Nは相対的に低いものしか得ら
れないため、得られたPASのV6 とNは式(I)の関
係を満足せず、成形品のバリ長を低減することができな
い。(D)の添加は、上記の反応率の範囲内であれば、
1回で全量をまとめて添加してもよいし、あるいは数回
に分けて添加してもよい。該添加は、(D)をそのま
ま、あるいは使用する極性溶媒(例えば、N‐メチル‐
2‐ピロリドン)に溶解して、加圧注入機を用いて反応
缶内に圧入することにより行うことができる。
【0016】本発明の(D)分子量調節剤としては、以
下に掲げるものを使用することができる。例えば、モノ
又はジハロ芳香族化合物例えばモノクロロベンゼン、モ
ノブロモベンゼン、m‐ジクロロベンゼン等;メルカプ
ト基を1又は2個有する芳香族化合物例えばチオフェノ
ール、1,4‐ジチオフェノール、モノクロロチオフェ
ノール等;ジスルフィド化合物例えばジフェニルジスル
フィド、p,p´‐ジトリルジスルフィド、ジベンジル
ジスルフィド、ジベンゾイルジスルフィド、ジチオベン
ゾイルジスルフィド等;電子吸引基(例えばカルボキシ
ル基、ニトロ基、スルホニル基、カルボニル基等)を有
するハロ置換芳香族化合物例えばニトロクロロベンゼ
ン、ジクロロジフェニルスルホン、4,4´‐ジクロロ
ベンゾフェノン等が挙げられる。好ましくは、(D)分
子量調節剤として、チオフェノール、ジフェニルジスル
フィド又はm‐ジクロロベンゼンから成る群から選ばれ
た少なくとも一つのものを使用し得る。
【0017】(A)アルカリ金属硫化物は公知であり、
例えば、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウ
ム、硫化ルビジウム、硫化セシウム及びこれらの混合物
が挙げられる。これらの水和物及び水溶液であっても良
い。また、これらにそれぞれ対応する水硫化物及び水和
物を、それぞれに対応する水酸化物で中和して用いるこ
とができる。安価な硫化ナトリウムが好ましい。
【0018】(B)ジハロ芳香族化合物は、例えば特公
昭45‐3368号公報記載のものから選ぶことができ
るが、好ましくはp‐ジクロロベンゼンである。又、少
量(20モル%以下)のジフェニルエーテル、ジフェニ
ルスルホン又はビフェニルのパラ、メタ又はオルトジハ
ロ物を1種類以上用いて共重合体を得ることができる。
例えば、o‐ジクロロベンゼン、p,p´‐ジクロロジ
フェニルエーテル、m,p´‐ジクロロジフェニルエー
テル、m,m´‐ジクロロジフェニルエーテル、p,p
´‐ジクロロジフェニルスルホン、m,p´‐ジクロロ
ジフェニルスルホン、m,m´‐ジクロロジフェニルス
ルホン、p,p´‐ジクロロビフェニル、m,p´‐ジ
クロロビフェニル、m,m´‐ジクロロビフェニルであ
る。
【0019】(C)官能基を3個以上有する芳香族化合
物は、例えば特公平6‐45693号公報記載に記載さ
れているものを使用することができる。(C)官能基を
3個以上有する芳香族化合物とは、芳香族環に結合した
反応性官能基を3個以上、好ましくは3〜4個、特に好
ましくは3個有する芳香族化合物である。該反応性官能
基としては、例えばアミノ基、ヒドロキシル基、メルカ
プト基、カルボキシル基、スルホニル基、スルフィノ
基、スルファモイル基、ヒドラジノ基及びカルバモイル
基等の活性水素含有基、ハロゲン原子、並びにニトロ基
等を挙げることができる。上記反応性官能基中、アミノ
基、ハロゲン原子、ニトロ基が好ましい。ハロゲン原子
としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等の各原子が挙
げられ、塩素原子が好ましい。芳香族環に結合する上記
反応性官能基は夫々同一であっても異なっていてもよ
い。また、上記(C)の芳香族化合物としては、ベンゼ
ン類、ビフェニル類、ジフェニルエーテル類、ジフェニ
ルスルフィド類、ナフタレン類等を挙げることができ、
ベンゼン類が好ましい。
【0020】(C)官能基を3個以上有する芳香族化合
物としては、好ましくは活性水素含有ハロゲン芳香族化
合物、ポリハロゲン芳香族化合物及びハロゲン芳香族ニ
トロ化合物等を使用することができる。
【0021】活性水素含有ハロゲン芳香族化合物として
は、例えば、2,6‐ジクロロアニリン、2,5‐ジク
ロロアニリン、2,4‐ジクロロアニリン、2,3‐ジ
クロロアニリン等のジハロアニリン類;2,3,4‐ト
リクロロアニリン、2,4,6‐トリクロロアニリン、
3,4,5‐トリクロロアニリン等のトリハロアニリン
類;2,2´‐ジアミノ‐4,4´‐ジクロロジフェニ
ルエーテル、2,4´‐ジアミノ‐2´,4‐ジクロロ
ジフェニルエーテル等のジハロアミノジフェニルエーテ
ル類等のアミノ基含有ハロゲン芳香族化合物、及びこれ
ら化合物中のアミノ基がメルカプト基やヒドロキシル基
に置き換えられた化合物等が挙げられる。また、これら
の活性水素含有ハロゲン芳香族化合物中の芳香族環を形
成する炭素原子に結合した水素原子が、他の不活性基例
えばアルキル基等の炭化水素基に置換しているアミノ基
含有ハロゲン芳香族化合物も使用することができる。上
記の活性水素含有ハロゲン芳香族化合物中、活性水素含
有ジハロ芳香族化合物を好適に使用することができ、な
かでもアミノ基含有ジハロ芳香族化合物が好ましく、特
に好ましいのはジクロロアニリンである。
【0022】ポリハロゲン芳香族化合物としては、例え
ば1,2,4‐トリクロロベンゼン、1,3,5‐トリ
クロロベンゼン及び1,4,6‐トリクロロナフタレン
等が好ましく、1,2,4‐トリクロロベンゼン、1,
3,5‐トリクロロベンゼンが特に好ましい。
【0023】ハロゲン芳香族ニトロ化合物としては、例
えば2,4‐ジニトロクロロベンゼン、2,5‐ジクロ
ロニトロベンゼン等のモノ又はジハロニトロベンゼン
類;2‐ニトロ‐4,4´‐ジクロロジフェニルエーテ
ル等のジハロニトロジフェニルエーテル類;3,3´‐
ジニトロ‐4,4´‐ジクロロジフェニルスルホン等の
ジハロニトロジフェニルスルホン類;2,5‐ジクロロ
‐3‐ニトロピリジン、2‐クロロ‐3,5‐ジニトロ
ピリジン等のモノ又はジハロニトロピリジン類、あるい
は各種ジハロニトロナフタレン類等が挙げられる。
【0024】本発明の方法において、上記(C)官能基
を3個以上有する芳香族化合物は、一種単独で使用して
もよく、また二種以上を併用してもよい。
【0025】本発明の方法で使用する極性溶媒は、PA
S重合のために知られており、例えば特公平6‐456
93号公報に記載されているもの、例えば有機アミド化
合物、ラクタム化合物、尿素化合物、環式有機リン化合
物等を使用することができる。該極性溶媒の具体例とし
て、N,N‐ジメチルホルムアミド、N,N‐ジメチル
アセトアミド、N,N‐ジエチルアセトアミド、N,N
‐ジプロピルアセトアミド、N,N‐ジメチル安息香酸
アミド、カプロラクタム、N‐メチルカプロラクタム、
N‐エチルカプロラクタム、N‐イソプロピルカプロラ
クタム、N‐イソブチルカプロラクタム、N‐ノルマル
プロピルカプロラクタム、N‐ノルマルブチルカプロラ
クタム、N‐シクロヘキシルカプロラクタム、N‐メチ
ル‐2‐ピロリドン、N‐エチル‐2‐ピロリドン、N
‐イソプロピル‐2‐ピロリドン、N‐イソブチル‐2
‐ピロリドン、N‐ノルマルプロピル‐2‐ピロリド
ン、N‐ノルマルブチル‐2‐ピロリドン、N‐シクロ
ヘキシル‐2‐ピロリドン、N‐メチル‐3‐メチル‐
2‐ピロリドン、N‐エチル‐3‐メチル‐2‐ピロリ
ドン、N‐メチル‐3,4,5‐トリメチル‐2‐ピロ
リドン、N‐メチル‐2‐ピペリドン、N‐イソプロピ
ル‐2‐ピペリドン、N‐エチル‐2‐ピペリドン、N
‐メチル‐6‐メチル‐2‐ピペリドン、N‐メチル‐
3‐エチル‐2‐ピペリドン、テトラメチル尿素、N,
N´‐ジメチルエチレン尿素、N,N´‐ジメチルプロ
ピレン尿素、1‐メチル‐1‐オキソスルホラン、1‐
エチル‐1‐オキソスルホラン、1‐フェニル‐1‐オ
キソスルホラン、1‐メチル‐1‐オキソホスホラン、
1‐ノルマルプロピル‐1‐オキソホスホラン及び1‐
フェニル‐1‐オキソホスホラン等が挙げられる。これ
らの溶媒は、夫々単独でもよいし、2種以上を混合して
用いてもよい。上記極性溶媒中、非プロトン性の有機ア
ミド若しくはラクタム類が好ましく、そのなかでもN‐
アルキルラクタム及びN‐アルキルピロリドンが好まし
く、N‐メチルピロリドンが特に好ましい。極性溶媒中
で(A)アルカリ金属硫化物と(B)ジハロ芳香族化合
物と(C)官能基を3個以上有する芳香族化合物を反応
させてPASを製造する方法自体は公知である。好まし
くは反応中、反応缶の気相部分を冷却することにより反
応缶内の気相の一部を凝縮させ、これを液相に還流せし
める方法(特開平5‐222196号公報)が用いられ
る。
【0026】上記方法において、還流される液体は、水
とアミド系溶媒の蒸気圧差の故に、液相バルクに比較し
て水含有率が高い。この水含有率の高い還流液は、反応
溶液上部に水含有率の高い層を形成する。その結果、残
存のアルカリ金属硫化物(例えばNa2 S)、ハロゲン
化アルカリ金属(例えばNaCl)、オリゴマー等が、
その層に多く含有されるようになる。従来法においては
230℃以上の高温下で、生成したPASとNa2 S等
の原料及び副生成物とが均一に混じりあった状態では、
高分子量のPASが得られないばかりでなく、せっかく
生成したPASの解重合も生じ、チオフェノールの副生
成が認められる。しかし、本発明では、反応缶の気相部
分を積極的に冷却して、水分に富む還流液を多量に液相
上部に戻してやることによって上記の不都合な現象が回
避でき、反応を阻害するような因子を真に効率良く除外
でき、高分子量PASを得ることができるものと思われ
る。但し、本発明は上記現象による効果のみにより限定
されるものではなく、気相部分を冷却することによって
生じる種々の影響によって、高分子量のPASが得られ
るのである。
【0027】該方法においては、従来法のように反応の
途中で水を添加することを要しない。しかし、水を添加
することを全く排除するものではない。但し、水を添加
する操作を行えば、本発明の利点のいくつかは失われ
る。従って、好ましくは、重合反応系内の全水分量は反
応の間中一定である。
【0028】反応缶の気相部分の冷却は、外部冷却でも
内部冷却でも可能であり、自体公知の冷却手段により行
える。たとえば、反応缶内の上部に設置した内部コイル
に冷媒体を流す方法、反応缶外部の上部に巻きつけた外
部コイルまたはジャケットに冷媒体を流す方法、反応缶
上部に設置したリフラックスコンデンサーを用いる方
法、反応缶外部の上部に水をかける又は気体(空気、窒
素等)を吹き付ける等の方法が考えられるが、結果的に
缶内の還流量を増大させる効果があるものならば、いず
れの方法を用いても良い。外気温度が比較的低いなら
(たとえば常温)、反応缶上部に従来備えられている保
温材を取外すことによって、適切な冷却を行うことも可
能である。外部冷却の場合、反応缶壁面で凝縮した水/
アミド系溶媒混合物は反応缶壁を伝わって液相中に入
る。従って、該水分に富む混合物は、液相上部に溜り、
そこの水分量を比較的高く保つ。内部冷却の場合には、
冷却面で凝縮した混合物が同様に冷却装置表面又は反応
缶壁を伝わって液相中に入る。
【0029】一方、液相バルクの温度は、所定の一定温
度に保たれ、あるいは所定の温度プロフィールに従って
コントロールされる。一定温度とする場合、 230〜275
℃の温度で 0.1〜20時間反応を行うことが好ましい。よ
り好ましくは、 240〜265 ℃の温度で1〜6時間であ
る。より高い分子量のPASを得るには、2段階以上の
反応温度プロフィールを用いることが好ましい。この2
段階操作を行う場合、第1段階は 195〜240 ℃の温度で
行うことが好ましい。温度が低いと反応速度が小さす
ぎ、実用的ではない。 240℃より高いと反応速度が速す
ぎて、十分に高分子量なPASが得られないのみなら
ず、副反応速度が著しく増大する。第1段階の終了は、
重合反応系内ジハロ芳香族化合物残存率が1モル%〜40
モル%、且つ分子量が 3,000〜20,000の範囲内の時点で
行うことが好ましい。より好ましくは、重合反応系内ジ
ハロ芳香族化合物残存率が2モル%〜15モル%、且つ分
子量が 5,000〜15,000の範囲である。残存率が40モル%
を超えると、第2段階の反応で解重合など副反応が生じ
やすく、一方、1モル%未満では、最終的に高分子量P
ASを得難い。その後昇温して、最終段階の反応は、反
応温度 240〜270 ℃の範囲で、1時間〜10時間行うこと
が好ましい。温度が低いと十分に高分子量化したPAS
を得ることができず、また 270℃より高い温度では解重
合等の副反応が生じやすくなり、安定的に高分子量物を
得難くなる。
【0030】実際の操作としては、先ず不活性ガス雰囲
気下で、アミド系溶媒中のアルカリ金属硫化物中の水分
量が所定の量となるよう、必要に応じて脱水または水添
加する。水分量は、好ましくは、アルカリ金属硫化物1
モル当り0.5〜2.5モル、特に0.8〜1.2モル
とする。2.5モルを超えては、反応速度が小さくな
り、しかも反応終了後の濾液中にフェノール等の副生成
物量が増大し、重合度も上がらない。0.5モル未満で
は、反応速度が速すぎ、十分な高分子量の物を得ること
ができないと共に、副反応等の好ましくない反応が生ず
る。
【0031】反応時の気相部分の冷却は、一定温度での
1段反応の場合では、反応開始時から行うことが望まし
いが、少なくとも 250℃以下の昇温途中から行わなけれ
ばならない。多段階反応では、第1段階の反応から冷却
を行うことが望ましいが、遅くとも第1段階反応の終了
後の昇温途中から行うことが好ましい。冷却効果の度合
いは、通常反応缶内圧力が最も適した指標である。圧力
の絶対値については、反応缶の特性、攪拌状態、系内水
分量、ジハロ芳香族化合物とアルカリ金属硫化物とのモ
ル比等によって異なる。しかし、同一反応条件下で冷却
しない場合に比べて、反応缶圧力が低下すれば、還流液
量が増加して、反応溶液気液界面における温度が低下し
ていることを意味しており、その相対的な低下の度合い
が水分含有量の多い層と、そうでない層との分離の度合
いを示していると考えられる。そこで、冷却は反応缶内
圧が、冷却をしない場合と比較して低くなる程度に行う
のが好ましい。冷却の程度は、都度の使用する装置、運
転条件などに応じて、当業者が適宜設定できる。
【0032】こうして得られたPASは、当業者にとっ
て公知の後処理法によって副生物から分離される。
【0033】本発明の方法において、上記のようにして
得られたPASに、更に酸処理を施すこともできる。該
酸処理は、100℃以下の温度、好ましくは40〜80
℃の温度で実施される。該温度が上記上限を超えると、
酸処理後のPAS分子量が低下するため好ましくない。
また、40℃未満では、残存している無機塩が析出して
スラリーの流動性を低下させ、連続処理のプロセスを阻
害するため好ましくない。該酸処理に使用する酸溶液の
濃度は、好ましくは0.01〜5.0重量%である。ま
た、該酸溶液のpHは、酸処理後において、好ましくは
4.0〜5.0である。上記の濃度及びpHを採用する
ことにより、被処理物であるPAS中の‐SX(Xはア
ルカリ金属を示す)及び‐COOX末端の大部分を‐S
H及び‐COOH末端に転化することができると共に、
プラント設備等の腐食を防止し得るため好ましい。該酸
処理に要する時間は、上記酸処理温度及び酸溶液の濃度
に依存するが、好ましくは5分間以上、特に好ましくは
10分間以上である。上記未満では、PAS中の‐SX
及び‐COOX末端を‐SH及び‐COOH末端に十分
に転化できず好ましくない。上記酸処理には、例えば酢
酸、ギ酸、シュウ酸、フタル酸、塩酸、リン酸、硫酸、
亜硫酸、硝酸、ホウ酸、炭酸等が使用され、酢酸が特に
好ましい。該処理を施すことにより、PAS中の不純物
であるアルカリ金属、例えばナトリウムを低減できる。
従って、製品使用中のアルカリ金属、例えばナトリウム
の溶出及び電気絶縁性の劣化を抑制することができる。
【0034】上記のようにして製造された本発明のPA
Sは、例えば電気・電子部品、自動車部品、塗料や接着
剤、フィルム、繊維等に有用である。
【0035】本発明のPASを成形加工する際には、慣
用の添加剤、例えばカーボンブラック、炭酸カルシウ
ム、シリカ、酸化チタン等の粉末状充填剤、又は炭素繊
維、ガラス繊維、アスベスト繊維、ポリアラミド繊維等
の繊維状充填剤を混入することができる。
【0036】以下、本発明を実施例により更に詳細に説
明するが、本発明はこれら実施例により限定されるもの
ではない。
【0037】
【実施例】実施例において、ポリフェニレンスルフィド
(以下ではPPSと略すことがある)の溶融粘度V
6 は、島津製作所製フローテスターCFT‐500Cを
用いて測定した値である。
【0038】剪断感度Nは、上記と同一のフローテスタ
ーを用いて剪断速度及び剪断応力を測定して求めた値で
ある。
【0039】パラジクロルベンゼン(以下ではp‐DC
Bと略すことがある)の反応率は、ガスクロマトグラフ
ィーによる測定結果から算出した。ここで、p‐DCB
の反応率は下記式により求めた。
【0040】
【数2】p‐DCBの反応率(%)=(1−残存p‐D
CB重量/仕込p‐DCB重量)×100 バリ長は以下のようにして測定した。PPS60重量部
とガラスファイバー(CS 3J‐961S、商標、日
東紡績株式会社製)40重量部を加えて、ヘンシェルミ
キサーで5分間予備混合した後、35mmφ一軸押出機
を使用して、シリンダー温度320℃、回転数250r
pmで溶融押出し、ペレットを作成した。更に出来上が
ったペレットから、シリンダー温度320℃、金型温度
130℃に設定した射出成形機により、射出速度50c
m/秒、保圧20kgf/cm2 で成形して、幅20m
m、長さ40mm、厚さ3mm、ピン穴16個、ピン穴
寸法2×2mmのコネクターを作成した。該コネクター
のピン穴部(隙間20μm)に発生したバリ長さを測定
して評価した。
【0041】
【実施例1】150リットルオートクレーブに、フレー
ク状硫化ソーダ(60.81重量%Na2 S)15.4
00kgと、N‐メチル‐2‐ピロリドン(以下ではN
MPと略すことがある)45.0kgを仕込んだ。窒素
気流下攪拌しながら209℃まで昇温して、水3.75
kgを留出させた。その後、オートクレーブを密閉して
180℃まで冷却し、p‐DCB17.730kg[N
2 S/p‐DCB(モル比)=0.980]、1,
2,4‐トリクロロベンゼン(以下では1,2,4‐T
CBと略すことがある)128.7g[1,2,4‐T
CB/Na2 S(モル比)=0.006]及びNMP1
8.0kgを仕込んだ。液温150℃で窒素ガスを用い
て1kg/cm2 Gに加圧して昇温を開始した。液温2
40℃に達した時点でオートクレーブ上部を散水するこ
とにより冷却を開始すると共に、加圧注入機を用いてチ
オフェノール65.1g[チオフェノール/Na2
(モル比)=0.005]をオートクレーブ中に添加し
た。該添加時のp‐DCBの反応率は、89.1%であ
った。チオフェノールの添加終了後、液温260℃まで
昇温し、この温度で3時間攪拌しつつ反応を進めた。次
に降温させると共にオートクレーブ上部の冷却を止め
た。オートクレーブ上部を冷却中、液温が下がらないよ
うに一定に保持した。反応中の最高圧力は、8.91k
g/cm2 Gであった。反応終了後のp‐DCBの反応
率は98.7%であった。
【0042】得られたスラリーを濾過して溶媒を除去
し、次に常法に従って温水洗浄を3回繰返した。次に、
濾過ケーキを約50℃の水によりスラリー化し、該スラ
リーに酢酸を加えてpH5に調節して酸処理を実施し
た。酸処理後、再び温水洗浄を2回繰り返した。次い
で、120℃で約5時間熱風循環乾燥機中で乾燥して白
色粉末状の製品を得た。
【0043】得られたPPSの溶融粘度V6 は680ポ
イズ、剪断感度Nは1.49であった。バリ長は、0.
011mmであった。
【0044】
【実施例2】1,2,4‐TCBの仕込量を171.6
g[1,2,4‐TCB/Na2 S(モル比)=0.0
08]とした以外は、実施例1と同一の条件で製品を得
た。チオフェノール添加時のp‐DCBの反応率は、8
8.5%であった。
【0045】得られたPPSの溶融粘度V6 は1500
ポイズ、剪断感度Nは1.57であった。バリ長は、
0.007mmであった。
【0046】
【実施例3】1,2,4‐TCBの仕込量を214.5
g[1,2,4‐TCB/Na2 S(モル比)=0.0
10]とした以外は、実施例1と同一の条件で製品を得
た。チオフェノール添加時のp‐DCBの反応率は、8
8.3%であった。
【0047】得られたPPSの溶融粘度V6 は2570
ポイズ、剪断感度Nは1.62であった。バリ長は、
0.002mmであった。
【0048】
【実施例4】p‐DCBの仕込量を17.551kg
[Na2 S/p‐DCB(モル比)=0.990]とし
た以外は、実施例1と同一の条件で製品を得た。チオフ
ェノール添加時のp‐DCBの反応率は、89.3%で
あった。
【0049】得られたPPSの溶融粘度V6 は920ポ
イズ、剪断感度Nは1.52であった。バリ長は、0.
009mmであった。
【0050】
【実施例5】p‐DCBの仕込量を17.375kg
[Na2 S/p‐DCB(モル比)=1.000]とし
た以外は、実施例1と同一の条件で製品を得た。チオフ
ェノール添加時のp‐DCBの反応率は、90.2%で
あった。
【0051】得られたPPSの溶融粘度V6 は2310
ポイズ、剪断感度Nは1.59であった。バリ長は、
0.004mmであった。
【0052】
【実施例6】チオフェノールの添加量を32.6g[チ
オフェノール/Na2 S(モル比)=0.0025]と
した以外は、実施例1と同一の条件で製品を得た。チオ
フェノール添加時のp‐DCBの反応率は、89.4%
であった。
【0053】得られたPPSの溶融粘度V6 は1030
ポイズ、剪断感度Nは1.53であった。バリ長は、
0.009mmであった。
【0054】
【実施例7】チオフェノールの添加をp‐DCBの反応
率が65.4%の時点で行った以外は、実施例2と同一
の条件で製品を得た。
【0055】得られたPPSの溶融粘度V6 は1210
ポイズ、剪断感度Nは1.49であった。バリ長は、
0.012mmであった。
【0056】
【実施例8】チオフェノールの添加をp‐DCBの反応
率が93.1%の時点で行った以外は、実施例2と同一
の条件で製品を得た。
【0057】得られたPPSの溶融粘度V6 は2750
ポイズ、剪断感度Nは1.62であった。バリ長は、
0.003mmであった。
【0058】
【実施例9】チオフェノールに代えてm‐ジクロロベン
ゼン176.4g[m‐ジクロロベンゼン/Na2
(モル比)=0.010]を使用した以外は、実施例2
と同一の条件で製品を得た。チオフェノール添加時のp
‐DCBの反応率は、90.1%であった。
【0059】得られたPPSの溶融粘度V6 は750ポ
イズ、剪断感度Nは1.50であった。バリ長は、0.
010mmであった。
【0060】
【実施例10】液温240℃に昇温してオートクレーブ
上部の冷却を開始した後、この液温で1時間保持したこ
と、及びチオフェノールをオートクレーブ中に添加終了
後、液温260℃での反応時間を3時間保持としたこと
以外は、実施例1と同一の条件で製品を得た。チオフェ
ノール添加時のp‐DCBの反応率は、93.8%であ
った。
【0061】得られたPPSの溶融粘度V6 は830ポ
イズ、剪断感度Nは1.57であった。バリ長は、0.
007mmであった。
【0062】
【比較例1〜3】チオフェノールをp‐DCBと同時に
オートクレーブ中に添加した以外は、夫々、実施例1〜
3と同一の条件で製品を得た。
【0063】比較例1で得られたPPSの溶融粘度V6
は310ポイズ、剪断感度Nは1.21であった。バリ
長は、0.123mmであった。
【0064】比較例2で得られたPPSの溶融粘度V6
は620ポイズ、剪断感度Nは1.32であった。バリ
長は、0.091mmであった。
【0065】比較例3で得られたPPSの溶融粘度V6
は1020ポイズ、剪断感度Nは1.40であった。バ
リ長は、0.074mmであった。
【0066】
【比較例4】チオフェノールを液温が260℃に到達し
た時点で添加した以外は、実施例2と同一の条件で製品
を得た。チオフェノール添加時のp‐DCBの反応率
は、96.2%であった。
【0067】得られたPPSの溶融粘度V6 は9800
ポイズ、剪断感度Nは1.99であった。該ポリマーは
ゲル化を起し、射出成形ができなかった。
【0068】
【比較例5】p‐DCBの仕込量を18.137kg
[Na2 S/p‐DCB(モル比)=0.958]とし
た以外は、実施例1と同一の条件で製品を得た。チオフ
ェノール添加時のp‐DCBの反応率は、88.3%で
あった。
【0069】得られたPPSの溶融粘度V6 は190ポ
イズ、剪断感度Nは1.18であった。バリ長は、0.
155mmであった。
【0070】
【比較例6】チオフェノールを添加しなかった以外は、
比較例5と同一の条件で製品を得た。 得られたPPS
の溶融粘度V6 は720ポイズ、剪断感度Nは1.33
であった。バリ長は、0.097mmであった。
【0071】
【比較例7】p‐DCBの仕込量を16.869kg
[Na2 S/p‐DCB(モル比)=1.030]とし
た以外は、実施例1と同一の条件で反応を実施した。解
重合を起こしポリマーが得られなかった。
【0072】
【比較例8】チオフェノールの添加量を286.4g
[チオフェノール/Na2 S(モル比)=0.022]
とした以外は、実施例1と同一の条件で製品を得た。チ
オフェノール添加時のp‐DCBの反応率は、87.5
%であった。
【0073】得られたPPSの溶融粘度V6 は80ポイ
ズ、剪断感度Nは1.03であった。該ポリマーは著し
く低粘度であり、成形物を得ることができなかった。
【0074】
【比較例9】チオフェノールの添加量を10.4g[チ
オフェノール/Na2 S(モル比)=0.0008]と
した以外は、実施例1と同一の条件で製品を得た。チオ
フェノール添加時のp‐DCBの反応率は、89.8%
であった。
【0075】得られたPPSの溶融粘度V6 は2300
ポイズ、剪断感度Nは1.49であった。バリ長は、
0.058mmであった。
【0076】
【比較例10】1,2,4‐TCBの仕込量を21.5
g[1,2,4‐TCB/Na2 S(モル比)=0.0
01]とした以外は、実施例1と同一の条件で製品を得
た。チオフェノール添加時のp‐DCBの反応率は、8
8.9%であった。
【0077】得られたPPSの溶融粘度V6 は190ポ
イズ、剪断感度Nは1.07であった。バリ長は、0.
199mmであった。
【0078】以上の結果を表1及び2に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】 実施例1〜3は、本発明の範囲内で(C)1,2,4‐
TCB/(A)Na2Sのモル比を変化させて製造した
PPSである。これら本発明のPPSは、いずれも良好
な溶融粘度V6 と高い剪断感度Nを有しており、かつバ
リ長は、非常に短かった。また、(C)/(A)の増加
に伴い、V6 及びNが増加し、バリ長は著しく低減し
た。実施例4及び5は、実施例1と同一条件下、本発明
の範囲内で(A)Na2 S/(B)p‐DCBのモル比
を増加して製造したPPSである。いずれも良好なV6
と高いNを有しており、かつバリ長は非常に短かった。
(A)/(B)の増加に伴い、V6 及びNが増加し、バ
リ長は著しく低減した。実施例6は、実施例1と同一条
件下、本発明の範囲内で(D)チオフェノール/(A)
Na2 Sのモル比を低下させたものである。V6 及びN
が増加し、バリ長は低減した。実施例7及び8は、実施
例2と同一条件下、本発明の範囲内でチオフェノールの
添加時期を変化させたものである。チオフェノールの添
加時のp‐DCBの反応率が高くなると、V6 及びNが
増加し、バリ長は著しく低減した。実施例9は、実施例
2と同一条件下、チオフェノールに代えてm‐ジクロロ
ベンゼンを使用したものである。実施例1と同じく良好
なV6 と高いNを有しており、かつバリ長は、非常に短
かった。実施例10は、実施例1と比べて反応温度、反
応時間及びチオフェノールの添加時期を変えたものであ
る。実施例1と同程度のV6 でありながら、Nを著しく
高くすることができた。また、バリ長も低減した。一
方、比較例1〜3は、チオフェノールをp‐DCBと同
時にオートクレーブ中に仕込んで反応を進めた以外は、
夫々実施例1〜3と同一の条件で実施したものである。
いずれもV6 及びNは著しく小さく、(N−0.323
logV6 )値は本発明の範囲未満であり、かつバリ長
は非常に長かった。比較例4は、実施例2と同一条件
下、p‐DCBの反応率が本発明の範囲を超えた時点で
チオフェノールを添加したものである。得られたPPS
のV6 が著しく高く、射出成形ができなかった。比較例
5は、実施例1と同一条件下、(A)/(B)のモル比
を本発明の範囲未満にしたものである。V6 及びNは共
に著しく小さく、(N−0.323logV6 )値は本
発明の範囲未満であり、かつバリ長は非常に長かった。
比較例6は、比較例5と同一条件下、(D)チオフェノ
ールを添加しなかったものである。Nは著しく小さく、
(N−0.323logV6 )値は本発明の範囲未満で
あり、バリ長は長かった。比較例7は、実施例1と同一
条件下、(A)/(B)のモル比が本発明の範囲を超え
たものである。解重合が生じPPSを回収することがで
きなかった。比較例8は、実施例1と同一条件下、
(D)/(A)のモル比が本発明の範囲を超えたもので
ある。V6 が著しく小さく、成形不能であった。比較例
9は、実施例1と同一条件下、(D)/(A)のモル比
を本発明の範囲未満としたものである。(N−0.32
3logV6 )値は本発明の範囲未満であり、バリ長は
実施例1と比べて長かった。比較例10は、実施例1と
同一条件下、(C)/(A)のモル比を本発明の範囲未
満としたものである。V6 及びNは共に著しく小さく、
(N−0.323logV6 )値は本発明の範囲未満で
あり、バリ長は非常に長かった。
【0081】図1は、各実施例及び比較例で得られたP
PSの溶融粘度V6 と剪断感度Nの関係をグラフに示し
たものである。本発明で得られたPPS(上方のカー
ブ)は、従来のPPS(下方のカーブ)と比べて、同一
のV6 で著しく高いNを持つことが分かった。実施例7
(図1中、×印で示したもの)は、(B)p‐DCBの
反応率が65.4%の時点で(D)チオフェノールを添
加したものであり、実施例10(図1中、★印で示した
もの)は、液温240℃で1時間保持した時点[(B)
の反応率が93.8%]で(D)を添加し、更に液温2
60℃で3時間保持したものである。このように(D)
の添加時期を本発明の範囲内で変えることにより、ある
いは反応条件を変えることにより同一溶融粘度における
Nを調節し得ることが分かった。
【0082】
【発明の効果】本発明は、射出成形時のバリ発生量が著
しく少なく、かつ溶融粘度の剪断速度依存性が高く成形
性に優れたPAS及びその製造法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例及び比較例で得られたPPSの溶融粘度
6 と剪断感度Nの関係を示したものである。
【符号の説明】
●、×、★:実施例を示す。 ○:比較例を示す。 N:剪断感度を示す。 V6 :V6 溶融粘度を示す。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶融粘度V6 が300〜4000ポイズ
    であり、かつ溶融粘度V6 と剪断感度Nが下記式(I) 【数1】 N−0.323logV6 ≧0.470 (I) で示される関係を有するポリアリーレンスルフィド。
  2. 【請求項2】 極性溶媒中で(A)アルカリ金属硫化物
    と(B)ジハロ芳香族化合物と(C)官能基を3個以上
    有する芳香族化合物を反応させてポリアリーレンスルフ
    ィドを製造する方法において、(A)/(B)のモル比
    が0.970〜1.020であり、(C)/(A)のモ
    ル比が0.002〜0.015であるように上記
    (A)、(B)及び(C)を反応系に仕込み、かつ反応
    系内の(B)の反応率が50〜95%の時点で、仕込み
    (A)アルカリ金属硫化物に対してモル比で0.001
    〜0.02の(D)分子量調節剤を反応系に添加するこ
    とを特徴とする請求項1記載のポリアリーレンスルフィ
    ドの製造法。
  3. 【請求項3】 (D)分子量調節剤を反応系内の(B)
    の反応率が70〜90%の時点で反応系に添加する請求
    項2記載の方法。
  4. 【請求項4】 (D)分子量調節剤の添加量が、(A)
    アルカリ金属硫化物に対してモル比で0.002〜0.
    01である請求項2又は3記載の方法。
  5. 【請求項5】 (D)分子量調節剤が、チオフェノー
    ル、ジフェニルジスルフィド及びm‐ジクロロベンゼン
    から成る群から選ばれた少なくとも一つの物質である請
    求項2〜4のいずれか一つに記載の方法。
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