JPH08318842A - アンチスキッド制御装置 - Google Patents

アンチスキッド制御装置

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JPH08318842A
JPH08318842A JP7130449A JP13044995A JPH08318842A JP H08318842 A JPH08318842 A JP H08318842A JP 7130449 A JP7130449 A JP 7130449A JP 13044995 A JP13044995 A JP 13044995A JP H08318842 A JPH08318842 A JP H08318842A
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control
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Shinji Matsumoto
真次 松本
Hideaki Inoue
秀明 井上
Michiki Araki
道樹 荒木
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 路面μに応じた最適な制御を行え、廉価なシ
ステムを用いても充分なアンチスキッド性能を発揮す
る、改良されたABS制御装置を提供する。 【構成】 絞りによる緩増圧効果を利用した1ch1電
磁弁により制御されるアクチュエータiとする。車輪速
情報に基づく演算処理の制御系に、緩増圧中の増圧量と
車輪のスリップ変化量より路面μ変化量を演算し、それ
を基に路面μを推定する手段fと、これに応じABS制
御内容を変更する手段gを付加する。絞りによる緩増圧
効果利用の場合の緩増圧時の増圧速度は略一定とみなせ
るというアクチュエータ特性を生かし、他のW/C圧セ
ンサ等も使わず、路面μを推定する。好適には路面μ変
化量の履歴より推定を行い、μピークをとるスリップ率
を推定し目標スリップ量を変更すると、最大μのスリッ
プを有効に活用し、μ−S特性の異なる路面でも常に路
面μがピークとなるスリップを目標に制御される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、車両のアンチスキッド
制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】車両のブレーキ液圧制御をするアンチス
キッドシステム(ABS)は、低μ路等での制動時の車
輪ロックを回避するのに効果を発揮するものであるが、
このようなシステムにおけるアクチュエータ及び制御と
して、1チャンネル当たり2個の電磁弁構成のアクチュ
エータによるもの(減圧、保持、増圧の各モードが弁開
閉の組み合わせでなされる、いわゆる3モードABS)
は、既知である。また、3位置弁を電磁弁として1チャ
ンネル当たり1個設けるものもある。ABSの装置構成
は、このように数々のものが提案されているが、アンチ
スキッド装置の普及に伴い、より廉価なシステムが望ま
れている。
【0003】このような状況から、1チャンネル当たり
2個の2位置弁を持つタイプのアンチスキッド制御装置
(3位置弁の場合は1チャンネル当たり1個でよい)に
対し、1チャンネル当たり1個の2位置弁を持つタイプ
のものもについても提案がされており、本出願人は、先
に、特願平6−279242号による、改良されたアン
チスキッド制御装置に係る技術について提案している。
このものは、絞りによる緩増圧効果を利用する2モード
ABSで、電磁弁は1チャンネル当たり1個の電磁弁で
も足りるものでもあり、装置構成及び制御の改善が図ら
れる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】一方、アンチスキッド
装置は、例えば、車輪速センサを備えて検出される車輪
速情報を基にABS制御に必要な制御情報を得るように
するのが常套であり、多くのシステムがこれを採用す
る。この場合、センシングされた車輪速より車体速を推
定し、また車輪速より車輪加速度を演算することがで
き、そして、車体速と車輪速より求めるスリップ量及び
車輪加速度により車輪の状態を判断し、車輪の状態に応
じてブレーキ圧の制御を行うことができる。
【0005】このようにABSシステムは、車輪速によ
るフィードバック(F/B)制御を行うことができる
が、この場合、車輪の状態の判断方法として、或る設定
された制御しきい値(または目標値)との比較が一般的
であり、そのしきい値などは、アンチスキッド装置を個
々の車両に適用する時にチューニングにより設定され
る。
【0006】しかるに、制動時の車輪ロック回避のブレ
ーキ液圧制御時、実際の路面μの状態は、多様であり、
図13(いわゆるμ−S特性(摩擦係数−スリップ量特
性))に示すように一定したものではない。路面とタイ
ヤの摩擦係数は、その制動中の路面の状態等で異なり、
同図にも示されるように、一般的には、乾燥した状態
(ドライ路)では大きく(図中、上部側の2つの特
性)、またぬれた状態(ウエット路等)では小さくなる
(図中、下部側の2つの特性)。このように、路面μの
状態は一定したものではないので、上記のようなチュー
ニングにより例えば或る制御しきい値を設定した場合
は、或る程度の制御はできるが、どのような路面状態で
も最適に制御されることはなくなるという問題がある。
また、そのため、路面μを推定し、アンチスキッド制御
をより最適に行うことが考えられるが、より好ましいの
は、上述の如くにより廉価なシステムが望まれる中で、
そのような要求をも同時に満たしつつこれを実現し路面
μに応じた制御の最適化を図れるようにすることであ
る。
【0007】また、特に、上述の如き1チャンネル当た
り1個の2位置弁のタイプのアンチスキッド装置の場
合、ブレーキ液の制御モードは、従来の保持の可能なア
クチュエータが減圧、保持、増圧の3モードを基本にし
た5モード(急減圧、緩減圧、保持、緩増圧、急増圧)
が行えるものであるのに対し、減圧(急減圧)と緩増圧
の2モードを基本にするものである。
【0008】しかして、このようなタイプの場合、急増
圧がないために、ABS作動時、制動場面等如何では、
不適切に一度大きく減圧してしまうと増圧が遅いため減
速度不足などが生ずるに至る場合がある(急増圧があれ
ばリカバリーが効くが、緩増圧ゆえにそのようなリカバ
リーは期待しにくくなる)。従って、必要最小限の減圧
を行うことは重要であり、そのためにも適切に路面μ推
定をし得て最適制御ができれば、かかるタイプのシステ
ムにとってABS制御の実効性をより高める上で有効な
ものとなる。
【0009】本発明は、上述のような考察を基に、絞り
による緩増圧効果を利用したアンチスキッド制御におい
て、適切に路面μに応じた最適な制御が行え、廉価なシ
ステムを用いても充分なアンチスキッド性能を発揮し得
る制御装置を実現しようというものである。また、他の
目的は、上記の本出願人の先の提案に係るアンチスキッ
ド制御装置に更なる改良を加えることの可能な、より改
良されたアンチスキッド制御装置を提供することであ
る。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明によって、下記の
アンチスキッド制御装置が提供される。即ち、絞りによ
る緩増圧効果を利用した1チャンネル当たり1電磁弁に
より制御されるアンチスキッド装置と、前記緩増圧中の
増圧量と車輪のスリップ変化量より路面μ変化量を演算
し、それを基に路面μを推定する推定手段と、該推定手
段に応じてアンチスキッド制御内容を変更する制御変更
手段とを備えてなることを特徴とするアンチスキッド制
御装置である。
【0011】また、上記において、前記推定手段は、路
面μ変化量の履歴より路面μを推定するものとしてな
る、ことを特徴とするアンチスキッド制御装置である。
【0012】また、前記制御変更は、推定手段よりμピ
ークをとるスリップ率を推定し、それに応じてアンチス
キッド制御の目標スリップ量もしくはスリップ量しきい
値か、目標車輪加速度もしくは車輪加速度しきい値かの
いずれかを変更するものである、ことを特徴とするアン
チスキッド制御装置である。
【0013】また、アンチスキッド制御の増減圧指令に
対し、増圧時または減圧時の増圧量または減圧量の推定
とその後の減圧時または増圧時の減圧量または増圧量の
推定を行ことで、各周期ごとの液圧を推定しながら電磁
弁に出力する駆動パルスのデューティ比を演算する駆動
パルスデューティ比演算手段を、更に備え、前記緩増圧
中の増圧量に、該演算手段による推定増圧量が適用され
る、ことを特徴とするアンチスキッド制御装置である。
【0014】
【作用】本発明アンチスキッド制御装置は、制動時の車
輪ロック回避のアンチスキッド制御において、絞りによ
る緩増圧効果を利用した1チャンネル当たり1電磁弁の
構成により制御対象車輪の制動が制御されるが、この場
合、その推定手段及び制御変更手段を有して、その緩増
圧中の増圧量と車輪のスリップ変化量より路面μ変化量
を演算し、それを基に路面μを推定し、これに応じてア
ンチスキッド制御内容を変更する。
【0015】よって、かかる推定手段及び制御変更手段
を備えることで、絞りによる緩増圧効果を利用する場合
における、短時間での緩増圧時の増圧速度はほぼ一定と
みなせ単位時間当たりの増圧量が一定になるという特性
を活かした路面μ推定も可能で、適切に路面μに応じた
最適な制御を行わしめ得て、廉価なシステムを用いても
充分なアンチスキッド性能を発揮させるよう制御するこ
とを実現することを可能ならしめる。
【0016】この場合において、好ましくは、前記電磁
弁は2位置弁とできる。また、好ましくは、前記電磁弁
が、アンチスキッド制御時、その閉弁位置ではホイール
シリンダのブレーキ液を抜き、その閉弁位置では該ブレ
ーキ液の抜きを遮断するよう、供給されるパルス信号に
より駆動制御されるソレノイドバルブであり、マスター
シリンダから該ホイールシリンダへ至る経路には、上流
側と下流側との差圧により駆動されるバルブであって、
絞りによりアンチスキッド制御の緩増圧を行うバルブを
有する構成とすることができる。好ましくはまた、車輪
速センサからの出力より車輪速を演算する車輪速演算手
段と、車輪速より車体速を推定する車体速推定手段と、
車輪速より車輪加速度を演算する車輪加速度演算手段
と、それら車輪速と車輪加速度と推定された車体速より
増減圧量を演算する手段と、駆動パルスを出力する駆動
パルス出力手段とを備えるよう構成とすることができ
る。
【0017】また、前記推定手段は、路面μ変化量の履
歴より路面μを推定するよう構成して、本発明アンチス
キッド制御装置は実施でき、同様に上記のことを実現す
ることを可能ならしめる。この場合は、その履歴をみる
ことで、適切なμ−S特性の推定が可能となる。
【0018】また、前記制御変更は、推定手段よりμピ
ークをとるスリップ率を推定し、それに応じてアンチス
キッド制御の目標スリップ量もしくはスリップ量しきい
値か、目標車輪加速度もしくは車輪加速度しきい値かの
いずれかの変更をするよう構成して、本発明アンチスキ
ッド制御装置は実施でき、同様に上記のことを実現する
ことを可能ならしめる。加えて、この場合は、例えば、
ドライ路やウエット路等の異なるμ−S特性の路面での
対応性に優れ、最大μのスリップを有効に活用し得て、
路面μがピークとなるスリップを目標に制御可能とな
り、ホイールシリンダ液圧の込め過ぎや抜き過ぎによる
減速度減少や舵の効き低下の防止などにも効果的なもの
となる。
【0019】また、アンチスキッド制御の増減圧指令に
対し、増圧時または減圧時の増圧量または減圧量の推定
とその後の減圧時または増圧時の減圧量または増圧量の
推定を行ことで、各周期ごとの液圧を推定しながら電磁
弁に出力する駆動パルスのデューティ比を演算する駆動
パルスデューティ比演算手段を更に備えるようにすると
ともに、前記緩増圧中の増圧量に、該演算手段による推
定増圧量が適用されるよう構成して、本発明アンチスキ
ッド制御装置は実施でき、同様に上記のことを実現する
ことを可能ならしめる。
【0020】この場合にあっては、更に、その駆動パル
スデューティ比演算手段を備えることで、常に液圧を推
定しながら任意の液圧の制御可能となり、1チャンネル
当たり1個の電磁弁に対する上記駆動パルスのデューテ
ィ制御をもって、例えば任意の液圧での保持も可能な保
持モードも簡単かつ容易に達成できるなど、より効果的
なアンチスキッド制御を実現できる上、かかるデューテ
ィ比演算での処理過程で算出される当該推定増圧量が路
面μ推定に用いられることから、新たにホイールシリン
ダ圧センサを付加しないでも済み、それに要するコスト
増やそのセンサ付加に起因するフェイルセーフ対策をも
施すといったような必要がない分も、なお一層有利であ
って、より廉価なシステムで充分なアンチスキッド性能
を発揮するアンチスキッド制御装置を実現することが可
能となる。
【0021】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づき説明す
る。図1は、本発明の一実施例の構成を示す図である。
適用する車両は、本実施例では、前後輪とも左右のブレ
ーキ液圧(制動液圧)を独立に制御できる4チャンネル
アンチスキッドシステム(4chABS)のものとす
る。
【0022】図中、1はブレーキペダル、2はブレーキ
の倍力装置としてのブースタ、3はリザーバ、4はマス
ターシリンダ(M/C)をそれぞれ示し、また10,2
0は車両の左右前輪、30,40は左右後輪をそれぞれ
示す。各車輪10,20,30,40は、ホイールシリ
ンダ(W/C)11,21,31,41を備え、マスタ
ーシリンダ4とそれらホイールシリンダとの間には、車
輪ロックを回避するためのアクチュエータが設けられ
る。
【0023】図示例では、各輪ごとのチャンネルにイン
レットバルブ12,22,32,42及びアウトレット
バルブ13,23,33,43を有し、また、リザーバ
8,9と、モータ5駆動のポンプ6,7とを要素として
含み、これらを図示のように配管、接続してABS油圧
回路を構成するアンチスキッド装置が備わっている。マ
スターシリンダ4からこれらホイールシリンダ11〜4
1へ至るブレーキ液圧系において、前輪(フロント)ブ
レーキ系では、マスターシリンダ液路は、これをインレ
ットバルブ12,22個々に接続し、それらインレット
バルブ12,22からは各ホイールシリンダ側の液路を
経て前輪10,20の各ホイールシリンダ11,21に
至らしめる。後輪(リア)ブレーキ系も、同様に、マス
ターシリンダ液路は、これをインレットバルブ32,4
2個々に接続し、それらインレットバルブ32,42か
らは各ホイールシリンダ側の液路を経て後輪30,40
の各ホイールシリンダ31,41に至らしめる。
【0024】前輪の各ホイールシリンダ11,21に接
続の各ホイールシリンダ液路は、それぞれ途中から分岐
し、それら分岐液路をアウトレットバルブ13,23を
介して前輪用リサーバ8に接続するとともに、前輪用ポ
ンプ6を通して、上流側のマスターシリンダ液路へ接続
する。また、後輪の各ホイールシリンダ31,41に接
続のホイールシリンダ液路も同様、それぞれ途中から分
岐し、それら分岐液路をアウトレットバルブ33,43
を介して後輪用リサーバ9に接続するとともに、後輪用
ポンプ7を通して、上流側のマスターシリンダ液路へ接
続する。
【0025】各インレットバルブ12,22,32,4
2は、ここでは、上流側(マスターシリンダ側)と下流
側(各ホイールシリンダ側)の差圧により駆動されるイ
ンレットバルブであり絞りによる緩増圧をつくる。ま
た、アウトレットバルブ13,23,33,43のそれ
ぞれは、ここでは、ON・OFF制御の2位置電磁弁で
ある。かかるアウトレットバルブは、1チャンネル当た
り1個設けられるもので、常態(そのソレノイドへの非
通電状態)で図示の第1の位置にあってそのバルブ入出
力ポート間の接続、従って対応リザーバ8,9との接続
を断ち、その切り換え時、該入出力ポート間を接続する
第2の位置、従ってホイールシリンダを対応リザーバ
8,9へ接続させる位置をとる、2ポート2位置の電磁
弁である。これは、アンチスキッド制御時、対応ホイー
ルシリンダのブレーキ液をリザーバに導いてホイールシ
リンダ圧を減圧するのに用いられる。本実施例制御で
は、かかるインレットバルブ(メカ式)12,22,3
2,42をマスターシリンダ4とホイールシリンダ1
1,21,31,41間の経路に介挿するとともに、上
記アウトレットバルブ13,23,33,43に対する
駆動制御として後述のデューティ制御を行うことによ
り、該当チャンネルにおいて、それぞれ対応車輪のホイ
ールシリンダ11,21,31,41につき、そのブレ
ーキ液圧(制動液圧P)を個々に制御する。
【0026】図示例の場合、インレットバルブ12,2
2,32,42は、上流側と下流側に差圧を生じない状
態では絞りを作用させない位置をとる。また、アウトレ
ットバルブ13,23,33,43はOFF時図示の閉
位置を維持する。かかる状態では、ブレーキぺダル1の
踏み込みにより各ホイールシリンダにマスターシリンダ
4からの液圧を供給される時、そのマスターシリンダ圧
はマスターシリンダ液路、各インレットバルブ、及びホ
イールシリンダ液路を通してそのまま伝わり、よって、
ブレーキ液圧を元圧であるマスターシリンダ液圧に向け
増圧でき、各車輪は個々に制動されて、通常のブレーキ
ングが行える。
【0027】このような制動時、各チャンネルのアウト
レットバルブ13,23,33,43は、それを開閉す
るよう作動させると、その開弁位置では対応リザーバ
8,9への分岐液路を開通させ、対応ホイールシリンダ
のブレーキ液は該リザーバへ導かれて抜かれる。また、
その閉弁位置をとる期間は該リザーバとの連通を断って
上記のブレーキ液圧の抜きを遮断する。かくして、こう
したアウトレットバルブの開閉駆動制御で、ブレーキ液
圧を対応リザーバへ逃がして低下させる減圧状態とな
る。
【0028】減圧によってリザーバ8,9に溜まったブ
レーキ液は、モータ5によって駆動されるポンプ6,7
によってインレットバルブ12,22,32,42の上
流に戻される。そして、戻されたブレーキ液は、増圧の
用に供される。アウトレットバルブの13,23,3
3,43の作動による減圧によって対応ホイールシリン
ダ側液路の圧がマスターシリンダ側液路より低下する
と、インレットバルブ12,22,32,42はその上
流側と下流側に差圧が生じて作動し、これによりマスタ
ーシリンダ4と対応ホイールシリンダとの連通は絞りが
ついた連通に切り替わり、ホイールシリンダ圧は徐々に
増圧されるものとなる。
【0029】アンチスキッド装置の各アウトレットバル
ブ13,23,33,43、及びポンプ駆動用モータ5
は、コントローラ50の出力信号によって制御し、コン
トローラ50には、各輪10,20,30,40に配し
た車輪速検出用の車輪速センサ51,52,53,54
からの信号をそれぞれ入力する。また、コントローラ5
0には、本実施例では、ブレーキスイッチ(SW)55
の信号も入力される。
【0030】上記コントローラ50は、入力検出回路
と、演算処理回路と、該演算処理回路で実行されるアン
チスキッド制御等の制御プログラム、及び演算結果等を
格納する記憶回路と、アウトレットバルブ13,23,
33,43及びモータ5に制御信号を供給する出力回路
等とを含んでなる。
【0031】本実施例では、このように、差圧駆動のメ
カ式のバルブ機構である各チャンネルごとのインレット
バルブ12,22,32,42での絞りによる緩増圧効
果を利用し、また、1チャンネル当たり1個の電磁弁で
あるアウトレットバルブ13,23,33,43によっ
て制御対象車輪の液圧が制御されるアンチスキッド装置
であり、制動時、コントローラ50は、入力情報を基
に、車輪の制動ロックを防止すべく上記のアウトレット
バルブ13,23,33,43に対する駆動制御をもっ
てアンチスキッド制御を実行する。従って、本装置で
は、各輪ごとに配設した電磁弁に駆動パルスを出力しホ
イールシリンダ液圧の減圧及び緩増圧を行う。本例の如
き4チャンネル4センサ方式のABS制御の場合、基本
的には、前後左右4輪の各チャンネルごとの車輪速情報
を得、車輪速より車体速度を推定し、車輪加速度を用い
る場合にあっては更に各輪ごと車輪速より車輪加速度を
も算出し、かかる車輪速、車輪加速度、車体速度より目
標の増減圧量を求め、対応車輪のホイールシリンダ液圧
を制御することで、制動時の車輪ロックを回避する制御
を行うことができる。
【0032】更には、コントローラ50は、上記のよう
に、1チャンネル当たり1個の2位置弁のアウトレット
バルブ13,23,33,43を使用する構成であり、
緩増圧モードと減圧モードを有して電磁弁をパルス信号
に基づき制御するABSであっても、必要に応じ、減
圧、及び増圧のみならずブレーキ液圧を所望の液圧に保
持する保持モードの達成等もできるABS制御としうる
ように、その演算処理回路においてアウトレットバルブ
13,23,33,43に対する駆動パルスのデューテ
ィ比を演算する処理をも実行し、それらの駆動制御を行
うようにする。
【0033】コントローラ50はまた、この場合、、液
圧を推定して任意の液圧に制御可能とするよう、液圧を
推定しながら駆動パルスのデューティ比を演算するとこ
ろ、これに加えて、次のような機能をも有する。
【0034】即ち、アウトレットバルブを駆動するため
の増減圧指令に対し、増圧、減圧制御の組合せの態様に
より制御量推定を行うことで、各周期ごとの液圧を推定
しながら駆動パルスのデューティ比を演算し、アウトレ
ットバルブをデューティ比に応じて制御するが、制動中
のその路面状態に合わせ、広範にどの路面状態でも最適
化制御の実現を図るべく、緩増圧中の増圧量と車輪のス
リップ変化量より路面μ変化量を演算し、それを基に路
面μし、ABS制御をより適切に行うよう、アンチスキ
ッド制御内容を変更する制御をも実行する。この場合に
おいて、かかる路面μ変化量の算出の基礎に用いるその
緩増圧中の増圧量については、上記駆動パルスのデュー
ティ比演算における増圧時の推定増圧量値を好適に適用
することができる。また、好ましくは、そのABS制御
の変更の制御では、路面μ推定手段よりμピークをとる
スリップ率を推定し、それに応じてABS制御の目標ス
リップ量(またはスリップ量しきい値)や目標車輪加速
度(または車輪加速度しきい値)を変更する。
【0035】図2に示すものは、そのようなABS制御
のための図1に示した実施例システムでの機能の概要の
一例をブロックとして表したものである。図示の如く、
制御対象車輪ごと設けられる車輪速センサ(4センサ)
からの出力より車輪速を演算する車輪速演算手段a、車
輪速より車体速を推定する車体速推定手段b、同じく車
輪速より車輪加速度を演算する車輪加速度演算手段c、
車輪速と車輪加速度と推定された車体速より増減圧量を
演算する増減圧量演算手段d、及び駆動パルスを出力す
る駆動パルス出力手段hを備えるとともに、駆動パルス
・デューティ比演算手段eを備えるアンチスキッド装置
であって、路面μ推定手段f、制御内容変更(アンチス
キッド制御変更)手段gを備えている。
【0036】路面μ推定手段fは、緩増圧中の増圧量と
スリップ変化量より路面μを演算し、それを基に路面μ
を推定する推定手段であり、制御内容変更手段gは、該
路面μ推定手段fに応じてアンチスキッド制御内容を変
更する変更手段として機能する。また、好ましくは、駆
動パルス・デューティ比演算手段eは、アンチスキッド
制御(制御内容変更手段gにより、例えば目標スリップ
が変えられる等その制御内容が変更せしめられたものを
含む)における増減圧指令に対し、電磁弁駆動パルスの
オフ/オフ(またはオン/オフ)に応じた増圧(または
減圧)時の増圧(または減圧)量の推定とその後の減圧
(または増圧)時の減圧(または増圧)量の推定を行う
ことで、各周期ごとの液圧を推定しながら電磁弁駆動パ
ルスのデューティ比を演算処理する内容のものとするこ
とができる。
【0037】ここに、車輪速演算手段a、車体速推定手
段b、車輪加速度演算手段c、増減圧量演算手段dの部
分、及び駆動パルス出力手段fは、これらによって既知
の通常のアンチスキッド制御系を構成するが、そのアン
チスキッド制御系に対し、本実施例のアンチスキッド制
御装置では、更に上記駆動パルス・デューティ比演算手
段eが具備せしめられた構成としてあるとともに、更に
は、かかる改良されたアンチスキッド制御装置におい
て、上記路面μ推定手段f、及びアンチスキッド制御内
容変更手段gを具備せしめた改良構成となっており、か
つ、絞りによる緩増圧効果利用の1ch1電磁弁のアン
チスキッド(ABS)・アクチュエータg(4ch)が
組み合わされる構成である。駆動パルスデューティ比演
算手段eは、上記の如く増圧量推定部と減圧推定部とを
含む構成とされ、駆動パルス出力手段fは、その駆動パ
ルス・デューティ比演算手段eにより得られるデューテ
ィ比に従う駆動パルスを該アンチスキッドアクチュエー
タgへ出力して、対応車輪の制動液圧P、従ってホイー
ルシリンダ圧を制御する。好ましくは、路面μ推定手段
fは、これを、路面μ変化量の履歴により路面μを推定
するものとすることができる。
【0038】上記車輪速演算手段a、車体速推定手段
b、車輪加速度演算手段c、増減圧量演算手段dは、本
実施例においては、図1の車輪速センサ51〜54及び
コントローラ50の一部を含んで構成される。コントロ
ーラ50はまた、駆動パルス・デューティ比演算手段
e、駆動パルス出力手段f、路面μ推定手段f、及び制
御内容変更手段gを構成し、更にアンチスキッドアクチ
ュエータgは、ソレノイドバルブとしてのアウトレット
バルブ13,23,33,43を含む、マスターシリン
ダ4とホイールシリンダ11,21,31,41の間の
図1図示のABS油圧回路によって構成される。
【0039】ここで、路面μの推定、及びこれによるア
ンチスキッド制御の変更制御についての上記構成の原理
内容等につき、図3をも参照して述べると、次のように
説明できる。絞りによる緩増圧効果利用した1ch当た
り1電磁弁により制御されるABSシステムに対し、本
発明に従う上記した構成の制御は適用できるものである
ところ、この場合、絞りによる緩増圧効果を利用するア
ンチスキッド装置では、短時間での緩増圧時の増圧速度
はほぼ一定とみなせるということに、まず、その着想の
基礎をおくものである。具体的には、そのように増圧速
度はほぼ一定とみなせるが、この増圧速度一定=単位時
間当たりの増圧量が一定になるというアクチュエータの
特性を活かすものであり、これを活かして、路面μを推
定する。
【0040】図3は、車輪の運動方程式の解析のための
モデルを表し、いま、制動時の各車輪の運動方程式を考
えると、これは、次式の如くである。
【数1】 I・(d/dt)ω=μ・W・R−k・Pw・r ・・・1 ただし、 I;車輪のイナーシャ (d/dt)ω;車輪角加速度 μ;路面μ W;輪荷重 R;車輪半径 k;ブレーキ諸元係数(パットμ,ホイールシリンダ面
積等) Pw;ホイールシリンダ圧 r;ロータ有効径
【0041】車輪の運動方程式はこのように表される
が、この式1より路面μを算出するためには、ホイール
シリンダ圧の絶対値(値Pw)が必要となり、ホイール
シリンダ圧を検出するホイールシリンダ圧センサがない
と算出が困難となり、また、圧力センサを付けるとなる
と、それだけコストや信頼性といった点に問題が生じる
ことにもなる。そこで、第二として、更にはかかる点を
も考慮し、或る時間間隔で(例えば、或る時刻t1と所
定時間間隔の或る時刻t2で)、運動方程式をたてて差
をとり、路面μの変化を算出する場合を考えると、次の
ようになる。
【0042】即ち、この場合、それぞれの時点で運動方
程式として、
【数2】 I・(d/dt)ω1 =μ1 ・W・R−k・Pw1 ・r ・・・2
【数3】 I・(d/dt)ω2 =μ2 ・W・R−k・Pw2 ・r ・・・3 が、それぞれ成立する。ここで、W,R,k,rはほぼ
一定とみなす。
【0043】従って、上記から、或る時間間隔におけ
る、時刻t1での路面μ(=μ1 )と時刻t2での路面
μ(=μ2 )の差(μ2 −μ1 )、即ち変化の程度は、
【数4】 μ2 −μ1 =[I{(d/dt)ω2 −(d/dt)ω1 }+k・r{Pw2 −Pw1 }]/(W・R) =[I{(d/dt)Vω2 −(d/dt)Vω1 }+k・r・R・ΔPw]/(W・R2) ・・・4 となり、路面μの変化量(=μ2 −μ1 )は、車輪加速
度とホイールシリンダ圧の変化量ΔPwにより算出され
ることが分かる(図11参照)。
【0044】かくて、前記アンチスキッドアクチュエー
タi(図1図示のABS油圧回路)の特性も活用して、
路面μの変化は、その時間間隔内ではW等の要素部分は
一定で変化しない(あるいは、短時間内ではほぼ一定で
実質変化しない)とする条件の下、上記の他の変化パラ
メータ値を知ることで、これらに応じたものとして式4
に基づき演算されることとなる。一方、車輪のスリップ
量は、例えば、従来既知の方法同様に車輪速より算出さ
れ、時間当たりのスリップ量の変化量も算出されるもの
である(同図参照)。
【0045】そして、路面μの変化量、スリップ量の変
化量が得られると、このスリップ量の変化量と路面μの
変化量よりスリップ変化に対する路面μの変化が分か
り、その履歴をみればμ−S特性が推定できる(同図参
照)。また、μ−S特性が分かればμピークをとるスリ
ップ量が推定可能となり、アンチスキッド制御は車輪の
スリップをそのスリップ量に合わせるように制御(可変
制御))すればよくなる。つまり、実際の路面におい
て、その路面μ特性に応じた最適なスリップ量に車輪を
制御できるようになる(路面μ推定手段f、制御内容変
更手段g)。
【0046】制動時の路面μの状態が、その制動場面の
路面いかんでたとえ大きく異なっても、以上に原理を示
したような路面μ推定、制御変更を伴う本アンチスキッ
ド制御であれば、常に、路面μに応じた最適な制御が可
能で、しかも、廉価なシステムを用いても充分なアンチ
スキッド性能を発揮することができる。
【0047】更にまた、上記式4中のホイールシリンダ
圧の変化量ΔPw(同右辺分子中のk・r・R値に対す
る乗算値(=Pw2 −Pw1 )の値として、前記駆動パ
ルス・デューティ比演算手段e(コントローラ50)に
よってなされる、増圧と減圧の組み合わせの態様により
制御時の制御量推定を行うことで所定周期ごとの電磁弁
駆動パルスのデューティ比を演算する場合におけるその
演算処理過程で算出され、用いられる当該推定増圧量値
が適用可能で、こうするときは、別途新たにホイールシ
リンダ圧センサを付加しないで済む等のことは勿論、か
かる絞りによる緩増圧効果利用した1ch当たり1電磁
弁による廉価なABSシステムとの組み合わせの効果は
より大であり、この点でも、廉価なシステムで路面μに
応じた最適な制御を行わせ得て、充分なアンチスキッド
性能を発揮させられ、その実効性は一層上がるものとな
る。
【0048】図4乃至図6は、コントローラ50により
実行される、上記の駆動パルス・デューティ比演算処
理、及び路面μ推定並びに制御内容変更処理を含むアン
チスキッド制御プログラムの一例のフローチャートであ
る。この処理は、図示せざるオペレーティングシステム
で一定時間毎の定時割り込みによって遂行される。ま
た、図7,8は、それぞれ増圧量推定、減圧量推定のた
め用いるアクチュエータモデルの一例を示す特性図であ
り、その特性データについては、コントローラ50の記
憶回路に予め格納しておくことができる。また、図9乃
至図12は、本制御内容の説明に供する図である。
【0049】以下、これらの図も参照して説明するに、
図4の制御プログラムは、車輪速の読込み、車輪加速度
の算出、疑似車体速の算出、緩増圧中か否かの判別、路
面μ変化量(Ks)の算出、μピーク推定、Ks=Ks
oの設定、目標スリップ率(S* )の算出、目標増減圧
量(ΔP* )演算、ソレノイドバルブ・駆動パルスデュ
ーティ比演算ルーチン、及び駆動パルス出力の各処理
(ステップS100〜S110)からなる。本実施例で
は、車輪速のF/BによるPD制御にてABS制御する
ものとしている。
【0050】図4において、まず、ステップS100で
は、車輪速センサ51〜54からの信号に基づき、各車
輪速Vwi(i=1〜4)を読み込む。次に、ステップ
S101において車輪速Vwiより車輪加速度Vwdを
算出する。本実施例では、例えば30msec間の速度
差から求めることにする。
【0051】続くステップS102では、疑似車体速V
iを算出する。本実施例では、通常のABSで用いられ
る方法でViを算出することにする。即ち、ここでは、
各輪の車輪速Vwにフィルタをかけ、より車体速度に近
い値Vwfi(i=1〜4)を各輪で算出し、制動時/
非制動時などの条件により、各Vwfiから最も大きい
ものを選択するなどして最も車体速度に近いVwf(車
体速中間値と呼ぶ)を算出し、更にこのVwfをもとに
疑似車体速度Viを求めることとする。
【0052】次に、本プログラム例では、ステップS1
02に続くステップS103にてホイールシリンダ圧
(W/C圧)が緩増圧中か否かにより、路面μを推定す
るか否かを選択する。本実施例では、該チェックに当た
っても、後述するW/C圧の制御信号DT(DTは、パ
ルス出力周期T、例えば50msec中のアウトレット
バルブを閉じている時間であって、例えばDT=10m
secなどとして定義する)を有効に利用し、活用する
ことができ、かかるDT値が、パルス出力周期Tに等し
いか否か、即ちDT=Tが成立するか否かにより選択す
る。DT=Tの時は、アウトレットバルブは閉じっぱな
しになるため、周期Tの間は緩増圧中となる。
【0053】しかして、ステップS103のチェックの
結果、DT=Tの時は、ステップS104以下に進み、
路面μの変化量を算出する等する一方、DT≠Tの時は
ステップS110に進み、スリップ率に対する路面μの
変化量Ksを或る設定所期値Ksoとし、その後ステッ
プS106の処理に進む。
【0054】ステップS104においては、スリップ率
に対する路面μの変化量Ksを算出する。本実施例で
は、一定時間毎の定時割り込みごとに算出されている車
輪速Vwと車輪加速度Vwdと擬似車体速度Vi、及び
緩増圧中のホイールシリンダ圧変化量ΔPw/c(本プ
ログラム例では、後述するソレノイドバルブ駆動パルス
・デューティ比演算ルーチン内で算出されることとなる
W/C圧(Pw/ci)の増圧量ΔPinc値(前回
値)が用いられる)より路面μ変化量を算出する。
【0055】まず、前述の原理説明に準じ、以下の計算
により一定時間内の路面μ変化量(=μ2 −μ1 )を求
める(図3,11)。
【数5】 I・(d/dt)ω1 =μ1 ・W・R−k・Pw/c1 ・r ・・・5
【数6】 I・(d/dt)ω2 =μ2 ・W・R−k・Pw/c2 ・r ・・・6 (ここで、W,R,k,rは、ほぼ一定とみなす)
【数7】 μ2 −μ1 ={I((d/dt)ω2 −(d/dt)ω1 )+k・r(Pw/c2 −Pw/c1 )} /(W・R) ={I((d/dt)Vw2 −(d/dt)Vw1 )+k・r・R・ΔPw/c}/(W ・R2 ) =(I・Vwd+k・r・R・ΔPw/c)/(W・R2 ) ・・・7
【0056】次に、以下の計算により一定時間内のスリ
ップ率変化量(=S2 −S1 )を、車輪速Vwと擬似車
体速度Viより求める(図11)。
【数8】 S2 −S1 ={(Vi2 −Vw2 )/Vi2 }−{(Vi1 −Vw1 )/Vi2 } ・・・8 以上より、スリップ率に対する路面μの変化量Ks=
(μ2 −μ1 )/(S2−S1 )が求められる。
【0057】次に、本プログラム例では、続くステップ
S105においてμピークを推定する。本実施例では、
上記ステップS104で求めた路面μ変化量Ksが負の
値(または前記所定の設定値Kso以下)になる時のス
リップ率Soの時のμをμピークと推定する。
【0058】図11は、μピーク推定の原理も表し、こ
こでは、比較的に乾燥したドライ路とかなり低μ値のウ
エット路の場合の異なる2種のμ−S特性が例示されて
おり、かつ、それぞれで最大μのスリップ率も図示のよ
うに異なるものとなっている。図で、特性上、例えば各
スリップ率S1 ,S2 ,S3 ,S4 点、及びそれらに対
応する路面μのポイントに注目すると、上記ドライ路特
性の場合、μピークは、スリップ率S1 〜S2 ,S2
3 ,S3 〜S4 の範囲のうち、スリップ率S 3 〜S4
部分にあることが分かり、路面μ変化量Ks値は、スリ
ップ率S2 〜S 3 とスリップ率S3 〜S4 との間では、
符号が転換しており(ここでは、前者の部分は(μ3
μ2 )/(S3 −S2 )でKs>0であるが、後者の部
分は(μ 4 −μ3 )/(S4 −S3 )でKs<0とな
り、負の値を示す)、最大μはそのスリップ率S3 〜S
4 範囲にあることが分かる。
【0059】一方、上記ウエット路特性の場合、上記ド
ライ路の特性に比し、各スリップ率S1 ,S2 ,S3
4 点に対応する路面μがそれぞれ図示の如くの値
μ1 ′,μ2 ′,μ3 ′,μ4 ′である結果、μピーク
は、低スリップ率側にずれた特性のものとなっており、
スリップ率S2 〜S3 部分にあるが、このような場合
も、上記に準じ得られる路面μ変化量Ks値を用いるこ
とで、最大μはそのスリップ率S2 〜S3 範囲にあるこ
とが分かり、μピーク推定は同様に行われる。従って、
実際の制動場面での路面が、これらいずれのμ−S特性
であっても、その路面μの状態に対応して、スリップ率
に対する路面μの変化の度合いを示すKs値をみること
で、μピークのスリップ率の推定ができる。そして、こ
のような推定が行えると、基本的には、ABS作動時、
常に、実際のスリップ率がその該当する対応μ−S特性
上の最大μのスリップ率近傍となるように、ABS制御
を行わせることができる。
【0060】図4に戻り、ステップS106に進むと、
本ステップでは、目標スリップ率S * を算出する。本実
施例では、ステップS105で求めたμピーク時のスリ
ップ率Soより目標スリップ率S* =min(So,S
olmit)として求める。ここで、μピークがスリッ
プ率の非常に大きなところにある路面への対策として
(このような路面では、前後力は発生するが横力が小さ
くなり過ぎ、舵が効きにくくなる傾向を呈する)、目標
スリップ率S* を算出する際にSoに最大値の制限So
limtを設けたものである。従って、ここでは、かか
るリミットチェック処理も含められ、その結果、上記μ
ピーク推定で得られることとなる値So(実際のABS
作動時のその対応路面に応じ、推定μ−S特性ごと(例
えば、図11のそれぞれの特性ごと)、異なる値を示す
こととなる可変値)と、上記値Solmit(所定の固
定値)との2つのうち、いずれか小さい方の値のもの
が、目標値S* として選択されることなる(具体的に
は、ステップS105で得られる値Soが値Solmi
tを下まっわていれば、そのまま値Soが、また値So
が値Solmitを越えることとなる場合にあってはそ
の値Soに代え値Solmitが、それぞれ、選ばれる
ようにすることができる)。μピーク推定に基づく目標
スリップ率の設定をする態様で本制御を実施するとき、
このようにもすると、更に、よりきめ細かな制御が可能
となる。
【0061】次に、ステップS107にて、目標増減圧
量ΔP* を算出する。本実施例では、アンチスキッド制
御は、上述したように例えばPD制御とする。簡単に説
明すると、上記ステップS100〜S102で得られた
各輪の車輪速Vwと疑似車体速Viと車輪加速度Vwd
より、次式9に従って目標増減圧量ΔP* を算出する。
【数9】 ΔP* =kp×(Vw* −Vw)+kd×(Vwd* −Vwd) ・・・9
【0062】ここに、kp,kdは、それぞれ制御ゲイ
ン(比例制御ゲイン,微分制御ゲイン)であり、走行状
態に応じて変更される。また、Vw* は、車輪速の目標
値であり、ここでは、上記ステップS106で求めた目
標スリップ率の値S* を用いて、例えばVw* =Vi×
* として求める。また、Vwd* は、車輪加速度の目
標値であり、ここでは例えばVwd* =1.2gなどと
して求める。
【0063】こうして、μピークをとるスリップ率So
に着目しこれを推定して、それに合わせて目標値Vw*
が設定、変更されることでABS制御の目標増減圧量Δ
*が適切に設定される。そして、以下の処理でアウト
レットバルブに対するデューティ比制御が実行されてい
くときは、常に、路面μがピークとなるスリップを目標
に制御可能ともなる。
【0064】即ち、上述の如くに目標増減圧量ΔP*
演算したら、該算出値ΔP* を用い(図6ステップS2
09参照)、次のステップS108において、アウトレ
ットバルブ13〜43として各チャンネルに設けられて
いる電磁弁への駆動パルス出力処理(ステップS10
9)のため、ソレノイドバルブ駆動パルス・デューティ
比を演算し、これに基づき、ステップS109実行ごと
駆動パルスを出力することにより、アウトレットバルブ
のデューティ制御を実行する。上記ソレノイドバルブ駆
動パルス・デューティ比演算ルーチンの一例を示したた
ものが、図5,6である。本実施例では、常に増圧した
後減圧することで該当チャンネルのW/C圧を制御する
ものとする。
【0065】図5において、まず、ステップS200に
てマスターシリンダ圧を推定する。本実施例では、ブレ
ーキSW55のon信号にて、或る傾きでM/C圧を立
ち上げ、例えば最大M/C圧を16MPaとし、最大M
/C圧まで上昇するものとする。ここで、更に精度を向
上させるために、ABS作動中は、その減速度などに応
じてM/C圧を修正するなどとしてもよい。次に、ステ
ップS201にてW/C圧(Pw/ci)の推定を行
う。本実施例では、後述する方法で算出された前回のパ
ルスデューティ比より、W/C圧を推定するものとする
(次のステップ以降参照)。
【0066】そして、ステップS202以降でソレノイ
ドバルブ駆動パルス・デューティ比を算出する。詳しく
説明すると、まず、ステップS202でパルス・デュー
ティ比DTの初期値を設定する。本プログラム例では、
DT=0とする。なお、前述もしたが、DTは、パルス
出力周期T(例えばT=50msec)中のアウトレッ
トバルブを閉じている時間を表し、例えば、DT=10
msecなどとして定義するものであり、よって、この
場合は、上記初期値のとき、つまり、DT=0の場合は
フル減圧(T=50msecの全期間、開位置をとり、
バルブは開きっぱなし)ということになる。そしてま
た、DT≠0のとき、例えばDT=10msecの場合
なら、これは、上記周期T=50msec中、10ms
ecの間はアウトレットバルブは閉位置をとり、40m
secの間は開位置をとることを意味することになる。
【0067】次に、ステップS203では、値DTが0
か否かを判断する。ここで、DT=0の場合は、上記の
ようにフル減圧なので、ステップS204に進み、増圧
量ゼロ、即ちΔPinc=0とする。しかして、ステッ
プS206へ処理を進める。これに対し、DT≠0(D
T=Tを含む)の場合は、増圧も(もしくは増圧(緩増
圧)のみ)行うのでステップS205に進み、増圧量の
推定を行う。
【0068】この処理内容は、次のようである。即ち、
ステップS205では、例えば図7のようなアクチュエ
ータモデル(特性)により、M/C圧と現在のW/C圧
とデューティ比DTより増圧量ΔPincを算出する。
かかる値ΔPincは、次のステップS206、及び後
述のステップS209での演算に適用されるものである
が、本例では、例えばDT=5msecの時の特性を基
本として、そのアクチュエータモデル(特性)を持ち、
M/C圧と現在のW/C圧よりDT=5msecの時の
増圧量ΔPincを算出し、例えばDT=10msec
の時は、その2倍とするなどしてモデルの簡略化を行っ
ている。
【0069】ここで、本実施例では、更には、DT=T
の時の増圧量ΔPincが、次回ループでの路面μ推定
に用いられるΔPw/c値(前記式7)となる。本例に
あっては、路面μ推定に使用されるW/C圧の変化量
は、こうして上記のDT=Tのときの推定増圧量がその
まま利用できる。
【0070】次にステップS206では、W/C圧Pw
/ciとステップS205にて推定された増圧量ΔPi
ncとから増圧後のW/C圧Pw/ciM(推定中間値
と呼ぶ)を推定する。つまり、
【数10】 増圧後のW/C圧Pw/ciM=Pw/ci+ΔPinc ・・・10 より増圧後のW/C圧を算出する。
【0071】次に、ステップS207では、次式11よ
り、パルス出力周期Tからデューティ比DTを減算する
ことにより、減圧時間DTDを算出する。
【数11】DTD=T−DT ・・・11
【0072】そして、ステップS208にて減圧量の推
定を行う。本実施例では、例えば図8のようなアクチュ
エータモデル(特性)により、ステップS206で推定
した推定中間値Pw/ciMと上記で求めた減圧時間D
TDより減圧量ΔPdecを算出する。算出値ΔPde
cは、前記増圧量ΔPincとともに、次のステップS
209での演算に適用される。ここに、図8の如く、減
圧側も増圧側(ステップS205,図7)と同じく、例
えば減圧時間DTD=5msecの時の特性を基本とし
て、例えばDTD=10msecの時は、その2倍とす
るなどしてモデルの簡略化を行っている。
【0073】しかして、上述のようにして推定増圧量と
推定減圧量を得たら、次のステップS209以降(図
6)では、現在のデューティ比DTが適切かどうかを判
断する。まず、ステップS209では、前記ステップS
107(図4)で算出の目標増減圧量ΔP* と、上記ス
テップS205,S208でそれぞれ求めた推定増圧量
ΔPincと推定減圧量ΔPdecとのトータルの変化
量(つまりΔPinc−ΔPdec)との差であるΔP
nを、
【数12】 ΔPn=ΔP* −(ΔPinc−ΔPdec) ・・・12 により計算する。
【0074】次いでステップS210では、この差値Δ
Pnの正負を判断する。かかる判断の結果、ΔPn≦0
が成立しないとき、つまり、ΔPnが正の場合は、現在
のデューティ比DTでは目標の増減圧量まで増減圧され
ていない(減圧分が多い)ことになるため、ステップS
211に進み、更に、DT<Tか否かをチェックする。
その結果、DT<Tであったなら、つまり、増圧時間が
パルス出力周期Tに達しておらず、まだ増圧分を増やせ
る状態ならば、ステップS212に進み、デューティ比
をインクリメントして前記ステップS203(図5)の
上流に戻し、こうしてインクリメントした後の当該デュ
ーティ比を適用して、前述した処理に従い、もう一度推
定し直す。この場合、ステップS203→S205→S
206→S207→S208→S209という処理が繰
り返えされ、その過程で、ステップS210、及び該当
するときは更にステップS211の判別が行われること
となる。
【0075】なお、ここで、ステップS212では、1
だけインクリメント(DT=DT+1)しているが、ス
テップS205で適用するアクチュエータモデル(特
性)の基本をDT=5msec(図7)とした場合に
は、当該インクリメント処理では5インクリメントする
ようにする(この点については、後述のステップS21
4でデクリメント処理の場合に関しても同様である)。
【0076】こうして、DT<TならばDTのインクリ
メントをする。DT=Tならば、これ以上DTは大きく
できないので、DT=T(緩増圧)に決定される。この
ようにして本演算ルーチンを終了する場合は、ステップ
S109(図4)では、これに従い、周期T=50ms
ecの全期間にわたりアウトレットバルブが閉位置をと
るよう、その駆動パルス出力の態様を設定して出力処理
を実行することになる。
【0077】ステップS209で前記差値ΔPnが演算
されてステップS210へと進む場合において、逆にΔ
Pnが負またはゼロの場合は、現在のデューティで十分
に目標の増減圧量が可能であると判断できるために、ス
テップS213以下へ処理を進めて本演算ルーチンを終
了するものである。
【0078】本プログラム例では、一つ前のΔPn−1
値(目標増減圧量ΔP* と上で求めた推定増圧量ΔPi
ncと推定減圧量ΔPdecとのトータル変化量との
差)と、現在のΔPn(今回値)を比較して、小さいほ
うを選択する。つまり、ステップS203で|ΔPn|
≧|ΔPn−1|の場合は、前回のデューティ比を選択
するように、ステップS214にて値DTをデクリメン
トする。このようにすると、アンチスキッド制御に必要
な目標量ΔP* (ステップS107)に対し、前記式1
2による差値として、|ΔPn|≧|ΔPn−1|とな
るために一つ前のデューティ比を選択した方が、目標量
ΔP* に近い値に制御できるからである。よって、こう
してデューティ比DTが設定されるときは、デクリメン
ト処理が行われることから、一つ前のデューティ比に相
当するパルスデューティ比DTがステップS109(図
4)の処理に適用され、結果、それに従った駆動パルス
が出力されてデューティ制御が実行されることとなり、
アンチスキッド制御において目標量ΔP* に合わせた液
圧制御が行われる。
【0079】逆に、|ΔPn|<|ΔPn−1|の場合
(これは、上記とは逆に、式12により演算される差値
は、今回演算値の方が小さくなることを意味する)は、
パルスデューティ比DTとしては、一つ前の前回デュー
ティ比相当にものに設定するよりも、今回のデューティ
比でデューティ制御した方が、目標量ΔP* に近い値に
制御できることから、今回デューティ比を選択するため
にステップS214のデクリメントは行わずに、本ルー
チンを終了し、図4のステップS109の処理に進み、
駆動パルスを出力して、今回ループでの制御を終了する
ものである。この場合も、上記のようにして、目標によ
り近い値に制御できるパルスデューティ比DTが設定さ
れ、これが駆動パルス出力処理に適用される結果、適切
なアウトレットバルブデューティ制御が実行されること
となり、アンチスキッド制御において目標量ΔP* に合
わせた液圧制御を行うことができる。
【0080】図9に、アウトレットバルブデューティ制
御を行った場合の一例を示す。説明するに、いま、現在
のW/C圧をPw/co、現在の時刻をtoとする。D
T=0の時は(この時をn=0とする)、周期Tの間、
時刻t+Tまで減圧しつづける。この場合、目標増減圧
量ΔP* と推定増圧量ΔPincと推定減圧量ΔPde
cとのトータル変化量との差ΔPnは、ΔPo=ΔP*
+ΔPdec(o)となり、ΔPo>0でDT<Tのた
め(図6、ステップS210,211)、DTをインク
リメント(同ステップS212)して再度推定をやり直
す。これを繰り返し、例えばDT=n−1の時は、ま
ず、増圧量ΔPinc(n−1)を推定し、推定中間値
Pw/cMn−1を算出し、ΔPn−1を求める。この
時、推定される最終的なW/C圧をPw/cn−1とす
る。この時も、ΔPn−1>0でDT<Tのため、更に
推定をやり直す。次のDT=nの時も、同様に、Pw/
cMn、ΔPnを求める。この時は、はじめてΔPn≧
0となり、既述のとおり、次のステップ(同ステップS
213)で、DT=nの場合の|ΔPn|とDT=n−
1の場合の|ΔPn−1|の大きさを比較し、どちらを
選べばより目標に近い値に制御できるか判断する。図の
例の場合は、図に示すように、|ΔPn|≦|ΔPn−
1|のため、DT=nが選択される。この場合、アウト
レットバルブデューティ制御は、前述のようにその選択
に従って実行されることになる。
【0081】なお、本プログラム例に従い、上記のよう
な駆動パルスデューティ比演算(ステップS108、図
5,6)の実行によりABSアクチュエータの制御が行
われるときは、アンチスキッド制御による増減圧指令で
ある目標増減圧量ΔP* (ステップS107)に対し、
アウトレットバルブ駆動パルスのオフ/オンに応じた増
圧時の増圧量ΔPincの推定とその後の減圧時の減圧
量ΔPdecの推定を行うことで、各周期Tごとの液圧
を推定しながら駆動パルスデューティ比DTを演算する
処理を行うことができ、常に液圧を推定しながら任意の
液圧に制御可能となる。このため、基本的には、絞りに
よる緩増圧モードと減圧モードの2モード制御でも、制
御性を良くする等のことから、たとえ液圧を保持するこ
とが要求されてもこれに容易に応え得て、必要に応じ、
例えば図10のように任意の液圧での保持(増減圧の組
み合わせによる保持モード)も可能となり(図中、I
SOLは、アウトレットバルブの駆動パルスを示す)、実
質的に、1チャンネル当たり1個の電磁弁であるアウト
レットバルブに対する駆動パルスのデューティ比制御を
もって、3モードABS制御も可能で、簡単かつ廉価な
構成で効果的なABS制御が行えるものである。
【0082】従ってまた、既述の本出願人による先の提
案のアンチスキッド制御装置の場合と同様、車輪ロック
回避のブレーキ液圧制御を実現する場合において装置構
成及び制御の改善が図られ、液圧保持等のため格別のス
イッチ手段を新たに付加しないでも済み、それ故サイズ
アップ/コストアップ等をも招かずに、かつまた電磁弁
は1チャンネル当たり1個でも足り、しかも、新たにハ
ードを付け加えるとしたら必要となるであろうその付加
部分に対するフェイルセーフ対策を施す必要もない分
も、有利である。
【0083】そして、これに加えて、本実施例にあって
は、そのような絞りによる緩増圧効果を利用したアンチ
スキッド装置において、目標増減圧量ΔP* を設定する
のに、緩増圧中の増圧量と車輪のスリップ変化量より路
面μ変化量を演算し、路面μ推定を行い、μピークをと
るスリップ率Soに着目してアンチスキッド制御内容を
変更するよう(ステップS104〜S106)、制御す
ることで路面μに応じた最適な制御が行われる。
【0084】図12は、上記の本実施例制御が実行され
た場合の一例を示す、諸量のタイミングチャートであ
る。図(a)〜(d)は、それぞれ、ABS作動時にお
ける車輪速Vw、疑似車体速Vi、スリップ率S、路面
μ変化量Ks、及びW/C圧Pw/cの変化、推移を表
しており、これによって、実際の路面において、その路
面μ特性に応じた最適なスリップ量に制御できる。先に
図11では2種の代表的なμ−S特性を示したが、車輪
の状態の判断方法として既述したような手法(制御しき
い値または目標値を、アンチスキッド装置を個々の車両
に適用する時にチューニングにより或る値に設定して、
制御時、これとの比較で判断する方法)を専ら採用する
システムのものにあっては、例えば、こうした図11の
ようにμ−s特性の異なる路面であっても、スリップ量
と車輪加速度をもとに、一律、その或る設定された目標
スリップ量に合わせて制御されることとなって、必ずし
も最大μのスリップを有効に活用していたとはいえない
のに対し、本制御によれば、常に路面μがピークとなる
スリップを目標に制御可能となり、結果、そのドライ
路、ウエット路のどのような路面状態でも最適に制御さ
れ、ABS制御をより最適に行うことができるととも
に、これにより、W/C圧の込め過ぎや抜き過ぎによる
減速度減少や舵の効き低下といったこと等も防ぐことが
できる。
【0085】特に、制御モードを、急減圧と緩増圧の2
モードを基本にする1チャンネル当たり1個の2位置弁
のABSの場合、緩増圧がないが故に、もし必要以上に
一度大きく減圧してしまったとすると、W/C圧の増圧
が遅いため、その分、減速度不足などの問題が生じ、そ
のとき、急増圧モードを有する場合のようにはリカバリ
ーも効きにくい。従って、この点から、減圧時、必要最
小限の減圧を行うことが重要になってくるのであり、そ
のためには路面μが推定できることが大きなポイントと
なってくるところ、本制御に従えば、そのような要求に
も容易に応えられ、2モードABSでも減速度不足など
の事態を適切に回避することができるものである。
【0086】更に、その場合に、路面μ推定のための路
面μ変化量を計算するのに用いる緩増圧中の増圧量を、
上述の駆動パルスデューティ比DT演算(ステップS1
08)における推定増圧量(ΔPinc)値として用い
るような技術と組み合わせると、W/C圧を検出する液
圧センサを新たなハードとして付加せずに済むことは既
に述べたとおりであり、この点のおいても、それに要す
るコスト増やそのセンサ付加に起因するフェイルセーフ
対策をも施す必要がない分も、なお一層有利であって、
より廉価なシステムで充分なアンチスキッド性能を発揮
する、一層改良されたアンチスキッド制御装置を実現す
ることができる。
【0087】なお、本発明は、以上の実施例等に限定さ
れるものではない。例えば、上記制御では、ホイールシ
リンダ圧の増減サイクルからみると前回のホイールシリ
ンダ圧の増減圧サイクルの増圧時に推定した路面μをも
とに今回の増圧時での制御を決定するが、前回1回の推
定に応じてのみ路面μを推定するのではなく、数回の推
定の平均などにより制御用の目標スリップ量を求めるも
のとしてもよい。
【0088】また、例えば、上記例では路面μ推定を行
い、μピークをとるスリップ率Soに着目してABS制
御を行っているが、μピーク自体に着目し、路面μに応
じた制御変更を行ってもよい。例えば、低μ時は、目標
増減圧量ΔP* を算出する場合に、車輪加速度の目標値
Vwd* をVwd* =1.2g+β(βは路面μピーク
により変更)などとして求めるとしてもよい。
【0089】また、例えば、駆動パルスデューティ比演
算処理と組み合わせる場合において、上記例では、電磁
弁駆動パルスのオフ/オンに応じた増圧時の増圧量の推
定とその後の減圧時の減圧量の推定を行うものであった
が、これは、例えば電磁弁駆動パルスのオン/オフに応
じた減圧時の減圧量の推定とその後の増圧時の増圧量の
推定を行う態様でもよく、その他の更に改良された態様
のものにも広く適用可能である。い。
【0090】また、上記では4チャンネルABSを例と
したが、そのほか3チャンネルABSでも同様に本発明
は適用できることは勿論である。また、例えば、インレ
ットバルブとアウトレットバルブによるABSアクチュ
エータの好適例を図1に示したが、それは、図示のもの
に限られるものではない。
【0091】
【発明の効果】本発明によれば、制動時の車輪ロック回
避のアンチスキッド制御において、絞りによる緩増圧効
果を利用する1チャンネル当たり1電磁弁構成の場合
に、緩増圧中の増圧量と車輪のスリップ変化量より路面
μ変化量を演算し、それを基に路面μを推定し、これに
応じてアンチスキッド制御内容を変更することができ、
絞りによる緩増圧効果を利用する場合における、短時間
での緩増圧時の増圧速度はほぼ一定とみなせ単位時間当
たりの増圧量が一定になるという特性を活かした路面μ
推定も可能で、適切に路面μに応じた最適な制御を行わ
しめ得て、廉価なシステムを用いても充分なアンチスキ
ッド性能を発揮させるよう制御することができるアンチ
スキッド制御装置を提供することができる。
【0092】この場合において、好ましくは、前記電磁
弁は2位置弁とする構成として、本発明は実施でき、ま
た、好ましくは、前記電磁弁が、アンチスキッド制御
時、その閉弁位置ではホイールシリンダのブレーキ液を
抜き、その閉弁位置では該ブレーキ液の抜きを遮断する
よう、供給されるパルス信号により駆動制御されるソレ
ノイドバルブであり、マスターシリンダから該ホイール
シリンダへ至る経路には、上流側と下流側との差圧によ
り駆動されるバルブであって、絞りによりアンチスキッ
ド制御の緩増圧を行うバルブを有する構成として、本発
明は実施できる。好ましくはまた、車輪速センサからの
出力より車輪速を演算する車輪速演算手段と、車輪速よ
り車体速を推定する車体速推定手段と、車輪速より車輪
加速度を演算する車輪加速度演算手段と、それら車輪速
と車輪加速度と推定された車体速より増減圧量を演算す
る手段と、駆動パルスを出力する駆動パルス出力手段と
を備えるよう構成して、本発明は実施できる。
【0093】また、請求項2記載の如く、路面μ変化量
の履歴より路面μを推定するよう構成して、本発明は実
施でき、同様に上記を実現することができる。この場合
は、その履歴をみることで、適切なμ−S特性の推定が
できる。
【0094】また、請求項3記載の如く、推定手段より
μピークをとるスリップ率を推定し、それに応じてアン
チスキッド制御の目標スリップ量もしくはスリップ量し
きい値か、目標車輪加速度もしくは車輪加速度しきい値
かのいずれかの変更をするよう構成して、本発明は実施
でき、同様に上記を実現することができる。加えて、こ
の場合は、例えば、ドライ路やウエット路等の異なるμ
−S特性の路面での対応性に優れ、最大μのスリップを
有効に活用し得て、路面μがピークとなるスリップを目
標に制御可能となり、ホイールシリンダ液圧の込め過ぎ
や抜き過ぎによる減速度減少や舵の効き低下の防止など
にも効果的である。
【0095】また、請求項4の場合は、その駆動パルス
デューティ比演算手段を更に備えるようにするととも
に、前記緩増圧中の増圧量に、該演算手段による推定増
圧量が適用されるよう構成して本発明は実施でき、同様
に上記を実現することができるとともに、この場合にあ
っては、更に、その駆動パルスデューティ比演算手段を
備えることで、常に液圧を推定しながら任意の液圧の制
御可能となり、1チャンネル当たり1個の電磁弁に対す
る上記駆動パルスのデューティ制御をもって、例えば任
意の液圧での保持も可能な保持モードも簡単かつ容易に
達成できるなど、より効果的なアンチスキッド制御を実
現できる上、かかるデューティ比演算での処理過程で算
出される当該推定増圧量が路面μ推定に用いられること
から、新たにホイールシリンダ圧センサを付加しないで
も済み、それに要するコスト増やそのセンサ付加に起因
するフェイルセーフ対策をも施すといったような必要が
ない分も、なお一層有利であって、より廉価なシステム
で充分なアンチスキッド性能を発揮するアンチスキッド
制御装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の構成を示すシステム図であ
る。
【図2】同例での制御内容の基本構成の一例を表す機能
ブロック図である。
【図3】路面μ推定等の原理説明に供する図である。
【図4】同例のコントローラにより実行される制御プロ
グラムの一例を示すフローチャートである。
【図5】同プログラムにおけるソレノイド・バルブ駆動
パルス・デューティ比演算ルーチンの一例にして、その
一部を示すフローチャートである。
【図6】同じく、他の一部を示すフローチャートであ
る。
【図7】同ルーチンに適用できる、増圧量推定のために
用いるアクチュエータモデルの一例を示す図である。
【図8】同じく、同ルーチンに適用できる、減圧量推定
のために用いるアクチュエータモデルの一例を示す図で
ある。
【図9】同じく、その駆動パルスデューティ比演算ルー
チンによる制御の説明に供する線図である。
【図10】液圧の保持をも行わせた場合での、2モード
ABS制御の概要を例示する図である。
【図11】μピークの推定、路面μ変化量等の説明の用
に供する説明図である。
【図12】制御内容の説明に供するタイミングチャート
の一例である。
【図13】μ−S特性の各種例を示す図である。
【符号の説明】
1 ブレーキペダル 2 ブースタ 3 リザーバ 4 マスターシリンダ 5 モータ 6,7 ポンプ 8,9 リザーバ 10,20 左右前輪 11,21,31,41 ホイールシリンダ 12,22,32,42 インレットバルブ(メカ式) 13,23,33,43 アウトレットバルブ(電磁
弁) 30,40 左右後輪 50 コントローラ 51,52,53,54 車輪速センサ 55 ブレーキスイッチ(SW)

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 絞りによる緩増圧効果を利用した1チャ
    ンネル当たり1電磁弁により制御されるアンチスキッド
    装置と、 前記緩増圧中の増圧量と車輪のスリップ変化量より路面
    μ変化量を演算し、それを基に路面μを推定する推定手
    段と、 該推定手段に応じてアンチスキッド制御内容を変更する
    制御変更手段とを備えてなることを特徴とするアンチス
    キッド制御装置。
  2. 【請求項2】 前記推定手段は、路面μ変化量の履歴よ
    り路面μを推定するものとしてなる、ことを特徴とする
    請求項1記載のアンチスキッド制御装置。
  3. 【請求項3】 前記制御変更は、 推定手段よりμピークをとるスリップ率を推定し、それ
    に応じてアンチスキッド制御の目標スリップ量もしくは
    スリップ量しきい値か、目標車輪加速度もしくは車輪加
    速度しきい値かのいずれかを変更するものである、こと
    を特徴とする請求項1、または請求項2記載のアンチス
    キッド制御装置。
  4. 【請求項4】 アンチスキッド制御の増減圧指令に対
    し、増圧時または減圧時の増圧量または減圧量の推定と
    その後の減圧時または増圧時の減圧量または増圧量の推
    定を行ことで、各周期ごとの液圧を推定しながら電磁弁
    に出力する駆動パルスのデューティ比を演算する駆動パ
    ルスデューティ比演算手段を、更に備え、 前記緩増圧中の増圧量に、該演算手段による推定増圧量
    が適用される、ことを特徴とする請求項1、請求項2、
    または請求項3記載のアンチスキッド制御装置。
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